【SS】憧れの脚

[1 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:16:17]

お嬢のシナリオをやって、ストーリーがぶっ刺さりました
なんでそんなにぶっ刺さったのか言語化しようとしたら、最終的に「脚が速いところ」と言う小学生みたいな結論に至りました
またもやなんでそんな結論に至ってしまったのか、出力しようとして書いたSSです
トレーナーに性別に指定はありませんので、ご自由に想像頂ければ嬉しいです

[2 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:16:38]

「何ですか、この答えは」
彼女…担当ウマ娘であるダイイチルビーから渡されたのは、新聞記事の切り抜き。
『中央トレセン所属トレーナー達に聞く！担当ウマ娘の推しポイント！』
多くのトレーナーのコメントが乗っている、特集記事だ。
そう言えば、そんな特集に答えたことがあったな、と思い出す。

そこに、私のコメントが乗っていた。
─貴方の担当ウマ娘の好きな所は何ですか？
─「脚が速いところです」
その箇所を指さして、彼女は呆れたような表情を見せる。
「まるでヒーローやヒロインに夢見る、小学生か何かではないですか。その評価自体が悪いとは言いませんが、もう少しその場に相応しい言い回しは思いつかなかったのですか」

確かに、良い歳した大人が答えるコメントとは思えない。
一瞬の末脚が素晴らしいとか、いくらでも言い回しはあった筈である。
素直に申し訳ない、と謝る。
「…今度その様な特集があった際には、もう少しマシな言い方が出来る様になって頂ければ。言いたいことはそれだけです。これから私は会食がありますので。それでは」
そう言って、彼女はトレーナー室から出て行った。
しかし、指摘は最もである。
華麗なる一族を背負う彼女のトレーナーとして、これ以上の粗相は許されないだろう。
そんな彼女の側に少しでも長く居る為にも、言葉遣いを学び直すべきか。

[3 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:17:22]

取り敢えず、何故そんな小学生の様なコメントが出てしまったのか、その理由を探ることにした。
トレーナー室の椅子に座り、ゆらゆら揺れながら記憶の海をたどる。

そして、ある言葉に辿り着いた。

─最も速い者が、最も華麗である。
彼女の御母様が、王道とされる中距離路線から短距離路線へと転向を決意した彼女に告げた言葉。
…その言葉を聞いた時、思わず薄ら笑いを浮かべてしまい、身震いが止まらなかったのを覚えている。

速さは強さ、美しさ。これ以上に無い程にシンプルな図式。
今思えば恐らくそれが、私が心の底から求めていた"ウマ娘"のあり方其の物で、美しさだったのだろう。

速い者は強い。そして、カッコいい。
偉い人とやらが言うには古代からのしきたりらしいが、何故そういう帰結になるのか正直説明がつかない。
だが、その説明できない物に、どうしても惹かれる。

私は当たり前だがただの人間で、ターフを時速数十キロで走ること等到底出来はしない。
しかし、その眼の前の景色に、憧れてしまった。
彼女の脚に、夢を見てしまった。
速くて、格好良くて、強い。
そんな理想のヒーローに、出会ってしまった。

[4 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:17:34]

分不相応なことを知りながら、トレーナーに立候補した。
彼女がどれだけの期待を背負っているか、背負わされているのかも知らずに、ただただあの走りを見られるかもしれない、と言う期待を持って。

適性の壁があることをお互いに知りながら、その壁に挑もうとした。
それが打ち砕かれた時。
私が憧れたヒーローの走りは、こんな物じゃないと、思わず飛び出してしまったのを覚えている。

"輝きとは、道其の物ではなく、歩む者に宿る"
彼女の言葉を聞いた時、彼女の決意を、全力で支えたい。
彼女のことを見届けたいと本気で思った。
何より、私が彼女の走りを一番近くで見ていたかった。

常に戦うべきは自分自身、特定の誰かを意識することはないと言う彼女が少しずつ周りのライバルを意識していく変化に、誰よりも速く駆け抜けたいと、闘志を燃やす彼女の言葉に、指導者と言う立場も忘れ、両拳を握りしめたのを覚えている。

私の願いを叶えてくれた彼女に、相応しい舞台を用意する。
華麗なる一族の末裔であり、"最も華麗なウマ娘"。
その姿を、見てほしい。熱狂して欲しい。
思えば、レースに彼女が勝つかどうかよりも、人が集まるかを気にしていた。
その走りを見れば、観客全てがその脚に魅了されると言う確信があったのだから。

[5 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:18:07]

彼女が口にする言葉がある。
『目指すべきものがあるならば、それに相応しい振る舞いを。それこそが。いずれ自身を望む姿に変えるのです』

貴方に憧れた。
貴方の走りに惹かれた。
私は、貴方になりたかったからここまでやってこられた。

私の目指すべき姿はいつだって、そこにあった。
だがどんなに憧れても、望む姿にはなれない。
私は、ウマ娘ではないのだから。

私は、私のヒーローに勝ち続けて、先頭でゴール板を駆け抜けてほしいのだから。

「そういうこと、でしたか」
測ったかのように開かれる、トレーナー室の扉。
…もしかして、今までのことを全部、口に出してしまっていたのだろうか。
「全部とは何の話でしょうか。貴方が私をヒーローだと思っている、という話でしょうか。私が勝ち続ける光景が見たいと言う話でしょうか。それとも、貴方があの状況で薄ら笑いを浮かべていたと言う話でしょうか」
……全て聞かれていた。
というか、どれだけ独り言を話していたのだろうか。
全く意識に無い。思わず青ざめる。

[6 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:18:59]

…所で、お食事は？
思わず幼稚な言い方になってしまう。
「方便です。…貴方は私の言葉を真に受けすぎる嫌いがありますので。しかしまるで…ヒーローやヒロインに夢見る、小学生か何かだと貴方を形容したそれが、事実其の物だったとは」
焦燥やら恥ずかしさが入り交じる中で私は、その事実を肯定するように頷いた。

しばらく、沈黙が続く。
色々やらかしてしまったと言う感情に支配され、今までまともに見られなかった彼女の顔を恐る恐る伺うように見ると、怒っている訳でもなく、呆れている訳でもなく、ただ目を閉じて今までの言葉を反芻しているようだった。
彼女が、口を開く。

「…どんな距離でも走れる訳ではない。どんな状況でも勝てる様な実力はない。それは3年間共に歩んできた貴方が一番…よくご存知の筈。それでも貴方は…私がヒーローだと仰るのですか」
訝しげにこちらを見ながら、彼女が問いかけてくる。

…どんなことを言われようと、私の答えは一つしかない。
共に栄光も、挫折も味わってきたからこそ、言える。
誰よりも速くて、華麗な脚を持っていると。
その走り続ける"脚"こそが私が憧れたヒーローの姿其の物なのだと。
素直に、そう伝えた。

[7 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:19:25]

滅多に表情を崩さない彼女。
一瞬だけだが、彼女が目を丸くした様に見えた。
「貴方の意図は、充分に伝わりました。…私を評価頂き、ありがとうございます」
彼女は一礼して、私にこう返す。
「しかし、咄嗟の対応。そこに普段からの在り方の差が出るのです。貴方はもう少し、言い回しを勉強するように」
思わず、はい！と大声で返事をしてしまった。
「…貴方は、私の玉条を共に守って頂く方なのですから」
その言葉を聞いて、彼女にもっと相応しい人になろう、改めて決意した。

[8 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:19:40]

そしてしばらく時が立ち、好評だったと言うことで再度特集が組まれ、私は質問に答えた。

貴方の担当ウマ娘の好きな所は何ですか？
─「脚が速いところです」　
側には、頭を抱える彼女が居た。

─憧れの脚　終わり─　

[9 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:20:26]

以下後書きです（筆者のリアル競馬観戦事情も絡めていますので閲覧にはご注意ください）

多分こういう概念は、お嬢に向ける様な物、お嬢で描く物としては正しい物ではないとは思いますが、私が彼女のシナリオで一番突き刺さったのが『最も速い者が、最も華麗』と言う御母様の言葉でした。
それはそうと笑いながらも、小さい頃に見た、サラブレッド達が速く駆け抜けていく姿に純粋に憧れや声援を送っていた頃を思い出したのだと思います。

年月が経ち、にわかなりにこの世界に触れて、ただ速く走ることだけがレースではなく、競馬の世界には様々なあり方や事情があると知りました。
期待し過ぎても、入れ込みすぎても良くない。
それはどう言った物にも共通していますし、それは正しいことです。

しかし、その言葉を聞いた瞬間に溢れ出たのが、ただ純粋に速くてカッコいい物を速いとか、カッコいいとまるでヒーローを見るかの様に憧れていた頃の思い出でした。
そして、それを経てのシニア安田記念の、彼女の「誰よりも先に、誰よりも速く駆け抜けたい」と言う言葉に大興奮し、マイルチャンピオンシップでの「貴方に焼き付くでしょう」と言う言葉にただ頷くしかありませんでした。
このシナリオは、私にただ好きな物に憧れ応援すると言う楽しさや、熱意と信念を持ち続け、貫く生き様の格好良さを思い出させ、改めて伝えてくれました。

言葉足らずだと言われる彼女ですが、私は充分過ぎる程に強い信頼を伝えてくれていると感じます（特にグッドエンディング後）。

改めて、読んで頂きありがとうございました。　
（入れ込みすぎては良くないのに完全に入れ込んでる私…そしてこういうのは作品の中で語るべきことだと思う私…）

[10 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:21:03]

過去作の一部になります

良ければご覧ください（SSやプレイレポート等ごちゃまぜです）

【SS】拝啓、悪の大幹部様【シナリオネタバレ・トレウマ要素注意】｜あにまん掲示板

【SS】あいについて【トレウマ】｜あにまん掲示板

パールさん育成してみた｜あにまん掲示板

【シナリオネタバレ】（お嬢を育ててみた私…）｜あにまん掲示板

[11 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:24:51]

>>10

こちらのストーリー感想スレで、「ヒーローに憧れる少年みたいなその心を大事にして欲しい」的なことを言われたのも書いた一因です

ありがとうございました　

[12 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:30:18]

きらいを漢字で書く人初めて見た

[13 1 23/03/26(日) 14:33:15]

>>12

きらいは平仮名で書くのがベターですね…

こんな所でミスをするのが大変よろしくない　

[14 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:41:56]

今日のお話も良かったです
まぁ速さと言うしかないですよね…
ルビーいいですよね…実を言うとヘリオスシナリオまではそんなにって感じでした。ただヘリオスシナリオですごく辛そうな姿が心に残ってました。
そんなルビーの印象も舞台版ので変わっていて、苦しいながらも前に進もうとする姿と吹っ切れた後のカッコよさが良かったです。
ルビーシナリオでは…迷いを断ち切って自分自身の力を信じられるようになって完成した精神になり頼もしかったです。トレーナーとの関係は焦れったいけどすごく好きな関係ですね。
長文になってしまいました…ごめんなさい…本当に良かったです、また期待しています。

[15 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 14:47:45]

オチ好き
スズトレとモルモットもそうだそうだと言っています

多くのものを背負ってるルビーや本来インテリ側のトレーナーがごくシンプルな結論に至るのいいよね

[16 1 23/03/26(日) 16:29:36]

高松宮記念見ていました

誤字やら誤表現やら文章の消し忘れやら、様々なミスに投稿してから気づくのはなんとかならないのかといつも思います

>>14

いつも感想ありがとうございます

お嬢のシナリオ本当に好きです

ヘリオスとの関係の変遷も大好きです

お互いに強く信頼しあっていることが分かるトレーナーとの関係も好きです

全部すきです（こなみかん）

>>15

最速の機能美さんと音速の貴公子さんすき

色々思い悩んだ結果、ただ速く走ると言うシンプルな結論に至るまでの過程が好きだし、その道の歩み方も格好いいです

[17 二次元好きの匿名さん 23/03/26(日) 22:29:10]

おつ　
速さは正義

[18 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 01:20:50]

ヒーローイズカミングのフレーズが浮かんだ

[19 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 09:32:08]

>>17

ありがとうございます

速い！強い！かっこいい！

それくらいがちょうどいいのかもしれません　

>>18

ありがとうございます

あのフレーズとCM、大好きです

[20 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 19:32:27]

(リアルの競馬はともかく、お嬢には入れ込んじゃっても良いと思う私…)

[21 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 23:29:23]

Q:担当の好きな所は？
A:脚が速い所

ほとんどのトレーナーは少なからず思ってるよなぁ…

[22 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 23:30:28]

>>20

（ありがとうございます…もう手遅れと言ってもいいくらい入れ込んでる私…中々難儀な私…）

[24 二次元好きの匿名さん 23/03/27(月) 23:55:36]

>>21

ありがとうございます

担当の脚が速い所が好き、と言うのは仰る通り恐らくどの担当トレーナーも思っていることだとは思います

私がお嬢のそういう点をピックアップしたのは、最も速い者が最も華麗と言う、ただただ純粋な才能への期待や憧れを肯定してくれた一言と、その憧れや期待を背負い走り抜いてくれた彼女其の物が好きになったから、なのかなあと今感想を頂いて、改めてそう考えてみました

私自身が自信を持って行動が出来ず、何かと予防線を張りがちな性分もあるので、自身の在り方に誇りを持ち行動する彼女の言葉が刺さり、少しでもこうなれたらと感じたのも彼女を推す要因としてあるのかもしれません　

纏まりのない長文となってしまい、大変申し訳ないです

[25 二次元好きの匿名さん 23/03/28(火) 00:50:52]

なんというか、このスレの対応とかコメントとかの一部だけで判断するのも安易だけど、本当にお嬢のトレーナーになるべくしてなった人って感じがするわ（勿論褒め言葉）
ウインディちゃん好きなのもちょっと意外だけど　

[26 二次元好きの匿名さん 23/03/28(火) 09:30:46]

>>25

ありがとうございます

自分に自信がない上に、あまり器用な人間ではないので対応にも不手際が多い様に思いますが、そう言って頂けて嬉しいです

ウインディちゃんも自分を強く持っている子なので、やはりそう言う子に惹かれがちなのかもしれません（ウインディちゃんが好きな理由は他にもありますが割愛します)

[27 二次元好きの匿名さん 23/03/28(火) 09:37:03]

>>25

わかる（わかる）ついて考えた上で教えてくれるし！言葉もわかりやすいし！

少しでもこうなれたら、と言うけれどお嬢を推す姿はマジルビトレじゃん？

そんなルビトレと進んでいって走り抜いた３年間を凝縮した「脚が速いところが好き」ってことっしょ？

あと「きらい」を漢字にしたのは真面目さのわざとだと思ってました…

関係性のある子がいるとどんどんガチャりたくなってやばみざわだわ

[29 二次元好きの匿名さん 23/03/28(火) 19:01:22]

>>27

あざまる水産！　

お嬢へのラビュはマジ卍なんでそこんとこシクヨロ〜☆

ちゃけばガチで何やってもガクブルなウチ、お嬢マジリスペクトキメてっから☆

んん〜〜しゅきしか言えん！！

(ヘリルビ好きなのに両方エミュ難しすぎてぴえんこえてぱおんな私…きらいがある、の表記は一応かな表記が一般的なので訂正した私…)

感想ありがとうございます

メインストーリーやSSを見る度にほしい子が芋づる式に増えていくのが嬉しい悩みですね…

[30 二次元好きの匿名さん 23/03/29(水) 00:10:06]

>>29

どうした急に　

[31 二次元好きの匿名さん 23/03/29(水) 03:36:07]

言語化に窮して小並感になるのよくわかるよ…

[32 二次元好きの匿名さん 23/03/29(水) 09:21:57]

>>30

(パリピエミュしたかったのですわ…許して…)

>>31

ありがとうございます！！

見た瞬間朝から飛び上がりそうになりました

画像の方保存させて頂きます！！

[33 二次元好きの匿名さん 23/03/29(水) 11:09:25]

>>31

カッケーお嬢と塩顔お嬢の対比が可愛い…