- 1二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:19:32
- 2二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:40:54
スバルの異世界転移する前の黒歴史が大量に?
- 3二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:43:46
名前日本語表記だから誰も読めないはず……もしかして中身見ちゃったのか?
- 4二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:47:25
オットーというまだ比較的冷静に対応出来る人物がいないのがキツイ
- 5二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:47:59
このレスは削除されています
- 6二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:51:56
すまねぇ…!
- 7二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:54:39
- 8二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:55:43
- 9二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:56:10
アレは死に戻りした軸の時じゃなかったけ?
- 10二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:56:55
スレ主ですが、ご都合主義で菜月昴の文字が異世界に対応していたと解釈していただければ…
- 11二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 19:58:14
コレってさぁ?死に戻り一回で一冊だから他の死に戻りの本達も見つかるのでは??
- 12二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:01:40
どの回の本を見るのが一番きついんだろうねこれ
- 13二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:04:30
オットーの「言霊の加護」はスバルの日本のジョークや慣用句も自動翻訳してしまうくらい万能なので、文字だけど漢字の「菜月昴」もワンチャン訳せる可能性がある
- 14二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:04:50
聖域で魔女の茶会見る時が一番精神適に地獄だろ
スバルの自己犠牲の精神を全部言葉にしたんだから - 15二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:08:05
- 16二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:29:16
ふと、一冊の死者の書がエミリアの目に止まった。
「なにかしら、この本」
タイトルが読めない字で、「▪️▪️・▪️」と書かれていること以外、他の死者の書と比べて何一つおかしいところは見当たらない。
しかし、エミリアの意識は自然とその本に吸い寄せられていた。
すごーく急いでスバルを迎えに行かなきゃ、と頭では理解しているエミリアだったが自分でもなぜこんなにも気になっているのか、この本にだけ時間を割こうとしているのか、その理由がわからないまま、本に自然と手を伸ばした。
まるでその本の中に大切な人がうずくまって泣いているような、そんな不思議な直観じみた奇妙な感覚が、エミリアをそうさせてしまった。
そうしてエミリアは手にした本をなんの躊躇いもなく開いた。
それが地獄の入り口になるとも知らずに___。 - 17二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:32:26
- 18二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:32:41
神小説家だぁ!!囲め!!!!
- 19二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:33:31
シュバルツが悪辣老に殺されまくる奴の一冊
- 20二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:35:00
- 21二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:35:23
普通に最初の死で
- 22二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:35:44
天才か?
- 231623/03/27(月) 20:39:30
- 24二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:44:36
- 25二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:45:24
- 26二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 20:46:51
うむむ…何とも悩ましい!
- 27二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 21:09:32
- 281623/03/27(月) 22:12:16
――意識が、暗転する。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一人の男がいた。彼は『聖域』開放のため、主人の為、仲間達の為、奔走する。
しかし...
「――『化けても被っても、ウルガルムの臭いは消せない』ってなァ!!」
気づけば片目を奪われ、監禁された。
「うたた寝の真っ最中に失礼しますけどね、動けますか、ナツキさん」
友の手を借りて脱走を試みたが、同じく逃げようとした友人も地竜も、避難民も、自分以外は殺された。
それでも彼は前に進む。そして...
「どうして、こんなとこに兎……兎で、いいんだよな?」
「――――」
「が!? あ、うぉが! おお、おおおお、あがががあああ!!」
彼は死んでいく。
見知らぬうさぎの群れに全身を喰われ、生きたまま臓器を食い破られ、骨も肉も残さずぐちゃぐちゃに散らかされながら...。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そうしてーーエミリアの意識が、痛みと共に回帰する。
「キャァァァァーーー!」
「なに...これ...?」
本にくっついた魂を無理やり引き剥がすような痛みが、彼女の胸に走っていた。しかし、今のエミリアにはそんな痛みはどうだってよかった。
そんなものよりも、今しがた自分が味わった体験が、記憶が、そしてそこから生まれる困惑と混乱、恐怖の方が、問題だった。 - 29二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:15:43
ありがとう…神SS作家様…とても心に優しいSSです…
- 301623/03/27(月) 22:18:59
手足は震え、腰は抜けて、ぺたんと力なくその場に座り込む。
言葉にならない声が、喉の奥から漏れていた。
震える左手で自分の顔に触れ、自分の目が無事であることを、右手で自分の体を抱きしめて、どこも食い破られていないか確かめずにはいられなかった。
そしてどこにも問題がないのを確認すると、ほんの少しだけ落ち着くことができた。
しかし、全身の震えは未だ止まらず、恐怖を拭い去ることができそうもない。
そのまま深呼吸をして、冷静さを取り戻そうとしたが、頭の中では疑問が次々と湧き、ごちゃごちゃしていて到底正常な判断がつかない。
この死者の書は間違いなく彼、ナツキスバルの物だった。死者の書に入り込み、一体化した体験からそれだけは断言することができた。
だからこそ、より一層エミリアの頭の中は今ちんぷんかんぷんなものになっている。
「スバルが...死んだ...?」
「そんなこと...あるわけ...」
現に彼は生きている。第一、大兎は自分達で倒したはずだった。 - 311623/03/27(月) 22:20:33
訳がわからないまま、エミリアが呆然と座り尽くしていると、今度は視界の端で、また、同じようなタイトルの読めない死者の本が床に落ちているのを見つけた。
ゆっくりと、エミリアは立ち上がりその本を手に取った。
嫌な予感がしつつも、次々と溢れ出る疑問を前に、そしてそれらを拭い去るために、本を開かざるを得なかった。
次の死者の書>>40
- 32二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:24:52
- 33二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:27:55
ヤミリア回
- 34二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:30:47
6章で記憶喪失になったスバルが皆を殺そうとしたら、既に別の誰かに殺されていた回
- 35二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:32:07
- 36二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:33:45
レムが眠り姫になったのを見て衝動的に自殺する回
- 37二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:33:53
- 38二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:34:46
ペテルギウスに狂ったフリを看破されて目の前でレムの胴体と首を捻じ曲げられた時間軸
- 39二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:36:06
プレアデス監視塔の地下でラム、パトラッシュとギスギスしていた回
- 40二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:36:35
聖域で闇リア誕生した時
- 41二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:39:43
他のメンバーはどうしようかね?
ベア子とラムとメイリィアナスタシアと襟ドナとユリウス - 421623/03/27(月) 22:49:28
- 43二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:51:49
ありがとうございます!!!
- 44二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 22:53:16
- 45二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:04:01
- 46二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:21:03
襟ドナが見る死に戻りがあったら、記憶喪失スバルを赦した奴見てほしいなぁ
- 47二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:25:47
- 48二次元好きの匿名さん23/03/27(月) 23:45:54
貴方天才アル
- 49二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 00:55:51
ペテさんを見た反応が気になるな
- 50二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:10:09
そして再び、――意識が、暗転する。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
男は『聖域』開放の為、屋敷を訪れることにした。それこそが状況を打開する鍵になると信じて。そしてそこでーー
「――ベティーを、お前の手で、終わらせてほしいのよ」
信じられない言葉を聞いた。
「――あら、残念。精霊のお腹は初めて切り開いてみたのに、消えてしまうのね」
信じられない光景を見た。 - 51二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:11:13
そして小さな大精霊に『聖域』へと再び戻されて、そこでもまた、
「ね、スバル。私は、あなたが、好きです。あなたのことが、大好きです。あなたのことを考えて、あなたのことだけを考えて、ずっと一緒にいたいって、そう思います」
信じたくない言葉を聞かされた。
「――君も、私みたいになれるさ」
信じたくもない景色を見せられた。
それでも男は絶望を抱えながらも、致命傷を負いながらも、走り続ける。愛する少女の元へ。
彼女と再会した時には、男の命は風前の灯と化していた。が、もはや狂った彼女は、そんなことは理解できていないようだった。男が静かに瞼を閉じたその時、
「スバル――」
冷たい『死』の味が、した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ - 52二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:14:48
「――っ」
再び、エミリアは現実に回帰する。
二度目なだけあって、今回はかなり平静を保つことができた。しかし、当然だが、その胸中は穏やかではなかった。
「この本も、やっぱりスバルの...」
あまりに鮮明な体験を二度繰り返して、エミリアはその書に書かれた体験が、他でもない真実であると心で感じていた。
実を言うとエミリアはこの死者の書に入り込んでいる間、スバルの感情や感覚、体験自体は共有していたが、何を考えていたのかまではわからなかった。死者の書に入っていた時は勿論現実に帰った今、スバルが何を考えていたのか思い返そうとしても、モヤがかかったようになって一つも思い出せない。
「君は、やり直す手段を得ている。そうじゃーぁないのかね?」
「だーぁって、世界をやり直す力なんてとんでもないものだよーぉ? 時間に干渉するなんてーぇのは陰系統の究極の究極でようやくだ。ベアトリスですら、停滞を生むのが精一杯。逆行なんて、夢のまた夢だよーぉ」
ふと、死者の書で聞いたロズワールの発言が鮮明に脳裏に蘇った。 - 53二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:16:59
彼の発言とこの複数ある死者の書、そして実際に味わった彼の追体験、それらを合わせて考えると、点と点が線で繋がったような感覚と同時に、自ずと答えは出た。
「スバルは死ぬ度に、時間を戻してる...??」
その結論に至った瞬間、エミリアの頭は真っ白になり、全身には悪寒が走り、スラリと伸びた美しい手には鳥肌が立って、豊満な胸に強烈な吐き気が込み上げてきた。
「ェプッ...ゥェッ...」
監視塔での激戦後だったので、胃から吐き出されるものは何もなかったが、それでも吐き気が止まらない。
「はぁ...はぁ...」
数分後、ようやく吐き気が落ち着いて、エミリアは思考を再開した。
もし、スバルが自分の考えた通りだとしたら...いや、もはやそれが真実であるとしか、エミリアは考えられなかった。
「私は...私たちは今までずっと...」
一体何度スバルを死なせたのだろうか。どれだけ一人で苦しめたのだろうか。何回助けられてきたのか。
悪寒のせいか、震えが止まらない。
そんなことを考えていると、つい先ほどスバルの目を通して見た狂った自分のことを思い出した。 - 54二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:22:45
「あんなふうに...私が弱いから...私がもっと強かったら...」
スバルは苦しまずに、死ぬこともなく一緒に生きられたのだろうか?
答えの分かりきった自問自答が頭の中をぐるぐると回って支配している。
「...」
「もっとスバルのことを知らなきゃ...」
それが、混乱しながらも彼女が出した答えだった。
スバルを死なせてしまった過去は変えられない。
だからこそそれを知った今、受け止めて、未来へと進まなければならない。
一刻も早く彼に会いたい。力になってあげたい。が、そうしなければスバルに再び会う資格も、一緒にいる資格もない。
なによりーー
「大事なのは最初でも途中でもなくて、最後なんだから」
今なお肩を振るわせ、吐き気を堪えながら、エミリアは自分を鼓舞する為にそう呟いて、次の本を探した。
隣の本棚を見ると、都合よくそこにはまだ読んでいない彼の死者の書があった。 - 551623/03/28(火) 06:26:10
というわけで次の死者の書>>70
次でワンチャン終わらせるかも
- 56二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 06:33:43
パックに殺されようか
ペテルギウスと初会合 - 57二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 07:57:31
神過ぎる
- 58二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:26:39
始まりの死
- 59二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:44:05
ksk
- 60二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:48:20
最後の本は最初の死が良いな
- 61二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 10:54:19
まあエミリアにとっての初対面がなくなってる状態だからそれは知ってほしいよね
7章の最初の死で - 62二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 13:12:43
二章の一周目
- 63二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 14:18:48
3章でエミリアが嫉妬の魔女に心臓を潰された回
- 64二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:01:05
実際は菜月昴の死者の書はタイゲタじゃなくてメローペにありそうな気はしている
- 65二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:21:44
Ksk
- 66二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:31:51
これしてほしいんで7章の最初の死で
- 67二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 16:43:17
レムの拷問されてラムに介錯される時のやつ
- 68二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 17:04:22
7章の最初の死
- 69二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 17:10:34
っぱ、最初の死でしょ。運命の出会いは外せないよね。
- 70二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 17:13:40
一番最初の死
- 711623/03/28(火) 19:49:31
今思ったけど7章以降だと時系列的にどうなんだ...?
最初のやつなら転移してから結構早いしいけるのかな? - 72二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 21:31:39
- 73二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 21:55:59
- 74二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:19:32
プレアデス監視塔の事?崩壊してなかったで
- 75二次元好きの匿名さん23/03/28(火) 22:59:35
- 76二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 00:34:28
久しぶりに小説カテ来たら面白いスレ立ってて嬉しい
文才あるよ本当に - 77二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 00:44:01
てかこの3冊肉体的最大級の苦痛→精神的最大級の苦痛(エミリアだと効果倍増)で追い詰めて運命の出会いである初回と超クリティカルヒットじゃね?
- 78二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 07:27:49
保守
- 79二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 10:28:23
- 801623/03/29(水) 15:29:36
書きかけだけどとりあえず投稿します
この後の展開どうするか迷ってるのでもうちょい時間かかるかもです
しかもロズワールの発言がきっかけで死に戻りに気けるから嫉妬さんが降臨するのも回避できてびっくりした
- 811623/03/29(水) 15:30:04
かくして、また彼女の記憶の旅が始まった。
△▼△▼△▼△
「つまり、これはあれだな」
「――異世界召喚もの、ということらしい」
一人の少年が、世界を跨いでやってきた。
明るい語調とは裏腹に、もう元の世界に帰れないと悟り、絶望を抱いていた。
そして彼は悲しいほどにーーー
「動けないようにしてから身ぐるみ剥いでやるよ。ふざけた真似しやがって……」
不運だった。
路地裏でチンピラにナイフを突きつけられ、抵抗虚しく死ぬ、その覚悟を決めていた。
「――そこまでよ、悪党」
彼は銀髪の少女に助けられ、恋に落ちた。
さっきまでの絶望もどこかに吹き飛ばすほどに、彼はその少女に、その存在に、救われていた。
「サテラとでも呼ぶといいわ」
少女の名前を死ぬまで忘れることはないと、そう断言できた。
彼は恩を少しでも返そうと、少女の探し物を手伝うことにした。
しかし、その果てにーーー
暗闇で、腹を切られて死んでしまった。
「……っていろ」
「俺が、必ず――」
救ってやると、口に出して言い切る前に、彼はそのまま事切れた。
△▼△▼△▼△ - 82二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 15:56:54
記憶の旅を終え、エミリアは現実へと引き戻される。
「キャァッ!!」
そう叫び声を上げると同時に、エミリアは自分のお腹を力いっぱい抑えた。
「お腹・・・お腹・・・傷が・・・ない・・・?」
三回目ともなると慣れたもので、自分の体に痛みも傷もなく、無事そのものであることに気づいたエミリアは深く息を吐いて、荒れた息を整えると、割とすぐに元の冷静さを取り戻すことができた。
「こんなの・・・全然知らない・・・」
エミリアが初めてスバルと出会ったのは、王都の盗品蔵であり、それ以前の出来事は記憶にない。
つまりこれは、
「無かったことに、なった記憶」
この記憶の旅でエミリアの中の疑問が、誤解が一つ解けた。
以前、エミリアはスバルと大喧嘩をしたことがあった。
なぜ自分を、そんなになってまで助けようとするのかと、その理由が分からずに尋ねたのだ。
それに対して彼は、
「俺が君のためになにかしたいと思うのは、君が俺を助けてくれたからだ……」
と、初めはそう言っていた。
その時は他ではない誰かを自分に重ねて見ているだけとしか思えなかった。
だが、今なら彼の真意が分かる。
彼は嘘なんてついていなかった。
彼は恩を返そうと、いや、自分の力になろうと、ずっとしてくれていたのだ。 - 83二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 16:02:20
「本当に・・・助けられてばっかり・・・」
エミリアの雪のように白い頬を、一筋の透明な涙が伝う。
彼は死ぬ寸前まで、自分を助けようと、救おうとしていた。
きっと、初めて出会ったあの日も、死ぬ運命にあった私を救おうと、走り回ってくれていたのだ。
そのことに、そして彼が本当に私を好きでいてくれているのを確認できたことに、エミリアは場違いかもしれないが、喜びを感じていた。
しかし、同時に自分のために彼が何度も死んでいるということに、出会ってしまったがために彼に苦しみを与え続けてしまっていることに、嬉しさをはるかに上回る深い悲しみを、罪悪感を胸に抱かずにはいられなかった。
涙は量を増し続け、紫紺の瞳からまるで洪水のように、止まることを知らずに溢れ出していた。
もし自分達が出会わなければ、彼はこんなにも苦しまずに済んだのだろうか?
「どう、すれば・・・」
スバルがこれ以上、苦しまずにすむのだろうか?
「どうすれば・・・」
スバルがこれ以上、死なずに済むのだろうか?
答えの出ない問いが、エミリアの胸中をぐるぐると回り続けている。
罪悪感と悲しみに押しつぶされそうなエミリアの前に、答えを示すかのように、惹かれ合うかのように、一冊の死者の書があることに気づいた。 - 841623/03/29(水) 16:07:50
- 85二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 16:11:16
- 86二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 18:17:20
私は一向に構わない!
- 87二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 20:53:35
保守
- 88二次元好きの匿名さん23/03/29(水) 21:57:38
貴方はもしや、軍師ナツミ殿でありますか??
- 89二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 00:38:40
保守
- 90二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 06:15:16
感謝するありがとう
- 91二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 07:36:13
ワクワク
- 92二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 13:08:30
保守
- 93二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 13:44:53
スバルがエミリアと合流すれば、一体どんな会話が起きるか楽しみになる
- 94二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 17:54:40
神が降りてる良スレ
ありがとう - 95二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 19:40:16
ルグニカ王国王選候補者エミリアの騎士でありながら皇帝の妻にして、革命筆頭シュバルツという意味分からんあのナツミ様!?
- 96二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:12:31
保守
- 97二次元好きの匿名さん23/03/30(木) 23:38:48
保守
- 98二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 00:29:01
※※※※※※※※※※※※※※※
「スバル」
「ん?どうしたんだいエミリアたん?」
もしかしたら聞いては
エミリアはこれから発言する言葉に緊張し一呼吸おき、そして
「スバルは…スバルは私に再開するまで…、ううん、違うかな…」
「スバルは、私と会ってからこれまで何回死んじゃったの?」
「―――――――――」
エミリアの発言でナツキ・スバルの思考が停止した。
- 99二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 00:29:13
「―――っう、え……あ、あ?」
何を彼女は言っているんだ?いや、何かの聞き間違いだろうか?
スバルはエミリアの発言を受け止めて処理をするのに、時間を要していた。
しかしエミリアはそんなスバルに追い打ちをかけるように言葉を続ける。
「ごめんね、すごーく変なこと聞いているのは分かっている」
「でもね、私自信もスバルも誤魔化しちゃダメだと思っているの」
死に戻り、今まで彼が幾度も繰り返された許しがたい苦痛の連続。
「だからね、もう一度聞くね…」
そんな彼の苦しみを理解しなければ、受け止めなければ。
「スバルは一体、これまで何回…何回死に戻りを繰り返したの?」
今後エミリアは、ナツキ・スバルと同じ道を歩むことは許されない―――そう決意したのであった。 - 100二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 00:29:49
「な―――」
頭の中が未だ整理ができず、思考がかき乱れた状態でスバルは絞り出すように声を出す。
「な、何を言っているのかな、エ、エミリアたんは…、いや、その、ほらあれか…?」
「……………」
明らかに動揺しているスバルを、エミリアは冷静に見つめる。
自分とは真逆の態度を取るエミリアに、スバルはより誤魔化すことへの焦りを感じていた。
「何か怖い夢でも、見ちゃったの、かな…?あ、うんそうだよな。じゃないとこんな変な質問なんかしないもんな」
「スバル」
誤魔化せ。誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。 - 101二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 00:30:36
「いやぁーしかしエミリアたんもまだまだ子供ですな。」
「スバル」
誤魔化せ。誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
誤魔化せ。誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
「俺が死ぬ夢でも見ちゃって、もしかして現実でもそうなんじゃないかな?と不安になっちゃだんよな」
「スバル」
誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
ダメだ、彼女に、よりによって彼女に。
「でもだいじょーぶ!!俺はこの通りピンピンと存命でございます!!いやぁ、ほんと、命からがらだったけどさ」
「スバル」
誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ誤魔化せ。
「エミリアたんに会うまで、いや、いつかエミリアたんと結ばれるまで俺は死ぬことなんて出来―――」
「スバル、我慢しなくて良いんだよ」
―――――――――あ
スバルの口先は先程までの勢いをなくし、同時に膝から崩れ落ちた。
彼女の優しい一言でナツキ・スバルの心は決壊した。 - 1021623/03/31(金) 02:32:40
お待たせしました
- 103二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 02:38:22
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- 1041623/03/31(金) 02:40:53
その答えを知るために、エミリアは迷わずその本に手を伸ばし、死者の書を開いた。
そうしてーーー
エミリアの最後の記憶の旅が、始まった。
△▼△▼△▼△
男は行き詰まっていた。どん詰まりの運命に。
立ち塞がる数多の障害を前に、絶望と焦燥だけが彼の胸を焦がしていた。
ついには魔女を頼り、墓所を訪れた矢先に彼に試練が降りかかった。
『――ありうべからざる今を見ろ』
己の選択の、あったかもしれない末路を見た。
『――ありうべからざる今を見ろ』
己の選択で、悲しむ人々を大勢見た。
『――ありうべからざる今を見ろ』
己の選択が、正しかったのすら分からなくなった。
それでも男は前に進んだ。
思い人の姿を借る『色欲』の魔女の誘惑を振り払い、『強欲』の魔女との決別を心に決め、
「死にたく、ないよ……」
そんな自分の本音を、魔女・サテラに許されて。
- 1051623/03/31(金) 02:42:45
それからは、友の力を借りて、愛しい人に口付けをし、意固地な少年を数の力で打ちのめした後、館に火をつけ少女を連れ出してーーー
男は『聖域』を解放した。
男の幸福で平和な日常は、続くーーー。
プリステラで、突然の死を迎えるまでは。
△▼△▼△▼△
そして、エミリアは現実世界へと戻った。
「うっ...」
はぁはぁと、彼女の息は上がり、ただでさえ白い肌がより一層青白く変わっていく。
「気持ち悪い...」
そう呟いた彼女の指は、震えていた。
最後の瞬間、劇場型悪意に飲まれて少年を見殺しにしただけでなく、喝采をあげた。
まるで自分が自分でないような感覚だったーーーそこまで考えた時、エミリアは突然勢いよく両手で自分の頬を強く叩いた。
「よしっ」
そう短く呟いて、シリウスのことは頭の片隅のどこかに置いておくことにした。 - 1061623/03/31(金) 02:44:16
すでにシリウスは撃退され、拘束されている。
そんな人よりも、自分の騎士様のことを考えることの方がよっぽど大事なのだ。
死者の書の中で聞いた、彼の発言を思い出す。
『死にたく、ないよ……』
その一言が、世界に甚大な被害を与えた魔女たちよりも、スバルが繰り返した凄惨な『ありうべからざる未来』よりも深くエミリアの心に残っていた。
何故、気づかなかったのか。
思えば簡単なことだった。
自分がスバルを死なせたくない、苦しめないためには何ができるか、と話を複雑に考えすぎていたのだ。
今までの死者の書でもずっとスバルは死に対して恐怖を抱き続けていた。死を恐れていた。
スバルは死にたくないと思っている。
そして、自分もスバルを死なせたくないと思っている。なら、話は単純だった。
何ができるか、なんてことはきっと、どうでも良かったんだ。 - 107二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 02:46:57
ありがとうございます。
- 1081623/03/31(金) 02:51:31
「スバルを、今すぐ迎えに行かなきゃ!」
彼に会って、聞きたいこともかけたい言葉もすごーくたくさんある。
ずっと助けてくれたことへお礼を言いたい。
迷惑をかけてしまったこと、苦しみをわかってあげられなかったことを謝りたい。
もう、一人で苦しまないでと、伝えたい。
もっと自分を大事にしてと、お説教もしなければ。
それから、それから。
まだ、まだまだ、まだまだまだまだ、伝えたいことが山ほどある。
だが、それは再会してから考えればいい。
時間をいっぱい使って、ゆっくり言葉にすればいい。彼はきっと、私がそれを言い切るのを、待ってくれると思うからーー。
今すべきは彼がこれ以上苦しまぬよう、死ぬことなんてないよう、自分の心に従ってすぐに助けに行くことだと、エミリアはそう結論づけた。
もし彼と出会わなかったら、なんてことはもはやエミリアにとってどうでもいいことになっていた。
過去は変えられないが未来は変えられる。
きっとそれがーーー
「一番大事なのは最初でも途中でもなく最後、ってことだと思うから」
それが、この記憶の旅で彼女が出した答えだった。 - 1091623/03/31(金) 02:55:45
「もう、スバルを一人になんてさせない」
エミリアの瞳の涙は、もうとっくに乾いていた。
そして、カツン、カツンと、軽い足音がタイゲタに響いた。
「エミリア!こんな所で何やっとるかしら。準備ができたから、とっとと出発するのよ!」
声と足音の主は小さくて可愛い大精霊、ベアトリスだった。
「あ...うん!今行くから!」
そう答えてエミリアは涙の跡をぬぐい、ベアトリスの、そして皆の元へと駆け出した。
竜車に乗って砂漠を行く一行の頭上で、夜空の星々がまるで彼女たちを見守るかのように輝いていた。
ー完ー - 110二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 03:13:59
面白かったありがとう
- 111二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 07:29:38
お疲れ様ーよかったよ
- 112二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 10:44:26
神SSありがとうございました。
- 113二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 11:08:19
スレ主ですが、こんな神作家に制作していただけた事がとても嬉しいです!
- 114二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 13:08:25
死者の書がテーマの良い話が見たいという欲が満たされました
本当にありがとう - 115二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 15:56:37
乙
あと最後まで終わったからいうけどタイケダじゃなくてタイゲタ - 116二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 19:28:04
- 1171623/03/31(金) 19:37:50
- 118二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 19:57:03
マジかよこのスレ神作家が二人も降臨してんじゃんやべぇな
- 119二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 22:30:18
ま?
- 120二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 01:59:57
死に戻りばれ好きだから誰かさんありがとう
- 121二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 05:25:01
もしかして野生の小説家が生えてくるスレ?
- 122二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 10:51:35
そうなのです
- 123二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 21:38:16
野生の神作家のためにも保守しとくぜ
- 124二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:39:18
『商人は友達と語り合う』
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オット―・スウェンが友人、ナツキ・スバルの死に戻りを知るやいなや、
彼の居る部屋へ勢いよく駆け込み、二人きりで話し合うことになった。
「どうせナツキさんのことですから、『話さない』じゃなくて『話せない』だったんでしょ?」
「あ、あぁ…」
どうせ、という単語に少し引っかかるがオットーはスバルの死に戻り事情を理解したようだ。
またどこぞの聖域であったことのように自分だけで抱え込むスバルに怒りを感じ
殴りに掛かるんじゃないかと考えたが杞憂であった。
「っう、その怒っているよな…その、ごめ」
「そこから先は言わないでください」
こんな辛いことをオット―へ知らせてしまったことへスバルは謝罪をしようとするが、
怒りを込めた表情でオットーはスバルの謝罪の言葉を遮る。
言葉だけではなく物理的に、スバルの眼前にオットーの手のひらを突き出して。
「良いですか?僕はもちろんナツキさんの死に戻りは許せません。ですが勘違いして欲しくないのは」
「勘違いしてほしくないのは…?」
「僕の許さない相手は友達にこんなことをさせているヤツです」
「―――――」
友達、オットーとスバルの関係性をもっとも示す言葉。
その言葉にスバルは不思議と心がジンっと温まる。
それとは別にオットーは怒りで心が怒りで熱くなっていた。 - 125二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:39:33
「だって、死ぬなんて普通じゃ1回限りですよ。いや死ぬ方法にも色々とありますが」
「誰だって死ぬときは安らかで平穏で、苦痛もなく憂いもなく死にたいじゃないですか!」
「でもナツキさんは何度も、何度も精神的にも肉体的にも苦しめられ殺され、そして戻されました」
聖域のとき以上にオットーの口から怒りの言葉が吐き出される。
「僕は、そんなことを友人に強いるやつを許しません。いえもっと言うなら」
次に吐き出す言葉を前にオットーは一呼吸おき
「死に戻りなんて凄いことができるなら、死ぬ前にナツキさんを助けてやれよ!!!!」
今まで以上の声量で吐き出された言葉は、
何より友人を死の状況から救い出さない者への怒りだった。
「はぁ…はぁ…すみません、一方的に熱くなってしまいましたね…」
言いたいことも終え、呼吸を整えるオット―にスバルは、
「オット―」
「何でしょうか?」
「ありがとな」
謝罪ではなく、御礼の言葉を投げたのであった。 - 126二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:40:13
死に戻りの元凶であるサテラへのオットーの怒りははもっともである。
だがお茶会で出会った彼女のことを思うと、スバルには少し受け入れがたいものであった。
もちろんスバルだって死に戻りなんかよりも、転生物にあるズルじみた能力が良いと思ったことは何度もある。
でもそれを口にしてしまうのは無粋、彼女の思いを踏みにじるのではないかと。
「な、なんでお礼の言葉ですか…?いやまぁ悪くはないですけど…お礼を言われるようなことを言ったつもりでは」
「それでもだよ、ありがとう。オット―」
でもそんなことよりも、オットーの単純に、ただただ、普通に、友人を心配してれるのが嬉しかったのだ。 - 127二次元好きの匿名さん23/04/01(土) 22:41:16
※※※※※※※※※※※※※※※
それから今後は絶対に無理をしないこと。
これまで以上に警戒をし、これまで以上に他人を頼ること約束し話し合い区切りをつけ
部屋から退出するオットーであったが、出る直前にスバルの方へ振り向き
「ところでナツキさん」
「ん?何だよ、まだ聞きたいことあるのか?」
一体何のことを聞いてくるのか、内容と答えによってはまた彼の怒りを買うのではないかと考えたが
「聖域で僕と協力し合うことになったとき、解決に至るまであなたは…」
あぁ、何だそのことかと安心する。
その質問なら大丈夫だ、だって
「安心しろよオット―。お前と協力してくれたおかげで俺は一回も死んだりなんかしてねえよ」
「―――――っ、あぁ…そうでしたか。ならちょっとだけ安心しましたよ…。」
ロズワールとの契約でもあったが、何より友達との協力だったんだ。
失敗(死に戻り)なんて許されねえよ。
そうオットーは受け止めて、友人に二度と死に戻りなんてさせないと決心したのであった。 - 128二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 03:40:19
サテラに怒りをぶつけるオットー最高ですありがとう
- 129二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:19:19
保守
- 130二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:25:05
保守
- 1311623/04/03(月) 08:11:53
- 132二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 18:13:58
保守
- 133二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 23:07:19
保守