【SS】仁川のキセキ

  • 1二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 17:42:45

    宝塚記念。上半期のウマ娘レースの締めくくりにして、中距離のNo.1決定戦とも称されるG1である。ファン投票の上位に入ったウマ娘達による激闘が毎年繰り広げられているが、今年は特に注目が集まっていた。

    去年の年度代表ウマ娘である『漆黒の帝王』シンボリクリスエス
    GI級6勝に芝ダート両刀の『勇者』アグネスデジタル
    前年の優勝ウマ娘・ダンツフレーム
    この頃力を付けつつあったタップダンスシチーとツルマルボーイ
    この年の春のクラシック二冠ウマ娘・ネオユニヴァース

    現役で強者と言われるウマ娘達が次々と出走を表明したのである。メディアはこぞって報道し、「宝塚記念史上、最高のメンバー」などと囃し立てた。そんな華々しいメンバーの中に、担当ウマ娘のヒシミラクルの姿があった。

    「来た…来てしまいましたぁ…」

    7万を超える観衆の歓声を聞くヒシミラクルの顔はこわばっていた。体も若干震えている。彼女はG1を2勝しているが、いずれも3000m以上の長距離だった。2200mで真価を発揮できるのか不安なのだろう。特にこの豪華メンバーの中では尚更だ。でも、ヒシミラクルは今日の為に猛特訓を積んできた。厳しいが決して張り合えない訳ではない。それに、負けられない理由もある。

    「皆の為に、奇跡起こすんだろ?」

    「…!!」

    どんなに不甲斐ない結果を残してきても諦めなかった、家族や友人・ファンの期待にこの大舞台で答える。それが宝塚記念に登録した理由だった筈だ。それに、ヒシミラクルというウマ娘は強い。それは俺自身が良く知っている。そう言い聞かせると、彼女の震えが止まった。普段の雰囲気が戻ってくる。その足はターフへと向けられる。

    「まぁ、微力を尽くします~~」

    ヒシミラクルはそう言ってにへらと笑った。

  • 2二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 17:43:09

    『史上最高の宝塚記念、スタートしました!!』

    ゲートが開き、ウマ娘が飛び出していく。ヒシミラクルは中団の後方に陣取った。二人で話し合った秘策はシンプル。それはスタートしてからすぐにロングスパートをかけ、前方への進出を始めることだ。彼女は酷くズブい。トップスピードに到達するのが遅いので、長距離でないと真価を発揮できなかった。ならば、序盤からギアを上げてしまえばいい。ステイヤーとして優秀な彼女ならスタミナの心配はしなくて良いのも大きかった。結果としてヒシミラクルは外からじわじわと位置を上げ、先頭から数バ身の距離感で最終コーナーに侵入する。

    『タップダンス先頭だ!内内から年度代表ウマ娘!シンボリクリスエスも追ってきた!』

    「使命を遂行する――――!」

    「ハッ!!帆の張りがいがあるってもんだ!」

    「ネオユニヴァース、”コントローラブル”」

    競り合う猛者たち。そんな中で徐々にスピードを上げていく白い影。どうやら、かけには勝ったようだ。その目には、確固たる勝ちへの執念がある。

    『来る!来る!ヒシミラクル!!来た!!』

    「ようやく暖まってきましたぁ~~!!」

    その確かな足取りは、スピードが鈍りつつあったタップダンスシチーとシンボリクリスエスを追い越し、先頭に躍り出る。ほっとしたのも束の間、ツルマルボーイが追いついてきていた。明らかに向こうのスピードが一回り早い。それでも尚、ヒシミラクルは諦めなかった。

    「やあああああああああああああああ~~~!!!!!!」

    ゴール直前でスピードを上げた彼女の体が僅か首の差分早くゴールを通過した。大観衆の歓声とどよめきが阪神レース場を埋めつくす。

    「やったぁ~~!!トレーナーさん~~!!!やりましたよ~~~!!!」

    へとへとになりながらも駆け寄ってくるヒシミラクルの顔は、とても晴れやかだった。抱きとめると、どや顔でサムズアップをしてくれる。今日ばかりは目いっぱい褒めてあげなければなと思った。彼女は当初の目標通り、『奇跡(ミラクル)』を起こしたのだから。

  • 3二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:07:07

    抱き合って喜ぶウマ娘とトレーナーに目を向けつつ、シンボリクリスエスは空を仰いだ。

    「……Inexperienced――――――まだまだ――研鑽が必要か」


    最後の直線。序盤までは十分な出来だった。でも、最後の最後でスピードを維持できなかった。今後どうしたものかと思案していると、タップダンスシチーが近寄ってくる。

    「フン―――ロマンじゃねぇか」

    「―――――ロマン?」

    「アイツの起こしたドでかい嵐…あれをロマンと呼ばずして何て呼ぶんだ?」

    その目はヒシミラクルに向けられ、視線が揺らぐことはない。このレースを以てヒシミラクルもまたライバルとして明確に意識したということか。その表情は新たな強敵を見つけた故の高揚がありありと見て取れる。

    「アンタもせいぜい気をつけろよ?気を抜けばアイツの荒波に飲まれちまうぜ?」

    そう言い残すと、タップダンスシチーは去っていった。成程。秋の三冠を目指すうえで、ヒシミラクルは考慮するにあまりある。

    「―――――――次は……勝つ」

    シンボリクリスエスの胸に新たな熱が灯った瞬間だった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:08:12

    以上。後に出てくる公式と違うかもしれないが、大目に見てほしい

  • 5二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:10:13

    罫線が繋がってないからタップやクリスエスのセリフ部分で変に力が抜ける

  • 6二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:15:15

    >>5

    済まぬ、エミュが難しいんだ…

  • 7二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:21:02

    むしろ立ち絵だけでよくここまで書いてるよ……


    >「ようやく暖まってきましたぁ~~!!」

    ここ好き

  • 823/03/31(金) 18:23:02
  • 9二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:23:39

    やっぱりあんたか!

  • 1023/03/31(金) 18:24:26

    >>9

    やっぱりって?

  • 11二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:28:12

    >>10

    前作も読んでたから、

    もしかしてこのひしみーの感じは同じ作者かな?と

  • 1223/03/31(金) 18:29:41

    >>7

    といっても、立ち絵の感じからブライトに似たタイプだろうなとあたりをつけて、史実の戦績やエピソードからこんな感じになるだろうなと妄想しただけなので…


    >>11

    あ、そういうのやっぱ分かるんですね

  • 13二次元好きの匿名さん23/03/31(金) 18:54:16

オススメ

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