たきちゃん2

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:43:27
  • 2二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:44:51

    しかしそれは、千束がもう既に生きるのを諦めてしまったということを意味するのだろう。
    あの千束のことだ、どうせ湿っぽいのは嫌だみたいなことを思ったんだろう。
    死んでからだと、店長が千束の死を常連さんに伝えなければならぬと要らん気を回したのだ。

    だからさっさと閉店させ、伝えることから店長を解放したつものなのだ。

    馬鹿め……。生死不明のまま行方不明になる方が人の記憶に良く刻まれるとなぜわからん。
    常連たちが「千束ちゃんどうしてるんだろうね~」と気を揉むと分からんか?

    帰ったら説教してやらんといかん。

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:45:32

    >>2

    ……千束と店長は親子水入らずでどこかへ行ってしまった可能性も否定できなくなった。

    最期ぐらいゆっくりしたいよね! とか言いながらどこかへ二人で行ったとか。


    だからわたしたちに追跡されないように携帯電話を置いていったとか。


    いや……それならDAの作戦表に千束の名が載っているのはおかしい。


    わからない人です。ずっといつでも彼女はわからない人です。


    いや、嘆いていても仕方ない。ここは早く真島を捕まえないことには始まらぬ。

    クルミがまだわたしたちに手を貸してくれる。それはとても心強いところだ。


    が、しかし楠木の奴が慈悲は要らぬ、皆殺しにせよと全体に連絡していて

    わたしの願いと相反する。わたしが先に見つけなければ。

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:46:09

    >>3

    わたしたちは展望台行の階段をコツコツと昇っていく。

    ひゅう、と風が吹いて少しでもふらつけば、遥か下に落ちてしまいそうになるぐらいだ。

    自分としてはあまり高い所は得意ではないので下を見ないようにする。


    クルミからの連絡だ。千束のスマホに吉松の着信と画像があるとのこと。

    急いで見ると、拘束された吉松の画像がある。

    なるほど、吉松は誰かに囚われて、それをダシにされて千束たちはそこに

    救出にいったと。それならDAの作戦をすっぽかしたって疑問はない。


    わたしもそれには賛成する。わたしにとっては心持の悪い人間であったが

    千束にとっては恩人に他ならぬ。

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:46:54

    >>4

    こいつは旧電波塔に囚われているから、そっちに二人とも言ったのだろうというのが

    クルミの見立てだ。つまり、心臓の持ち主のところだからこれで何も問題はないと。


    確かに論理的に考えればそうに違いない。

    ただ、わたしが吉松に悪印象を持った原因が頭にちらつく。

    あやつはそんなに単純ではないような気がする。


    言葉にしようとすると詰まる。確かに吉松の奴は千束がリコリコをやっていることや

    地域の手伝いをすることを低俗だと見下している様子はあった。

    千束の大切にしていることを悪く言う奴だから、わたしは気に入らなかった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:47:29

    >>5

    ただそれだけではないはず。

    この不定感をクルミに述べても今一つ通じぬ。

    それは致し方ない。わたしのだって気のせいと言われればそうなのだから。

    千束なら大丈夫。というのはわたしも思う。

    わたしに心配されるようなことなどないだろう。


    自信を持って、これでよい。と言えない。

    それはわたしのなかの合理的ではない感情。


    しかし、一つ言えるのは、最早真島を追う必要はなくなった。ここにいる理由などないということ。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:48:03

    >>6

    ここで隊を抜けると、フキ隊長に告ぐ。

    横からキャンキャンと金魚の糞がなんか言ってくるのと

    よくわからん奴が抱き着いてきたのとで困惑する。


    また、撲られるのだろうか。と一瞬過るが

    フキ隊長は、ここから抜けたら再びDAに戻ることはできない。

    最後通牒であると述べた。

    怒ることも、猛ることもなく、淡々と。

    わたしは、ただここではもう千束は救えないとだけ言った。


    行き給え。

    フキ隊長は斯くの如く零して、わたしを放した。

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:48:43

    >>7

    延空木から旧電波塔。間反対にあるそれに一秒でも早く辿り着かんと欲す。

    階段を一段飛ばしで駆け下り、施錠された扉を壊し、

    邪魔な間仕切りを蹴り飛ばし、延空木から離れる。


    市街地を走りながらこう考えた。

    旧電波塔は廃墟と化して久しい。

    見ての通り歪んでいるし、エレベータも期待できない。

    大人の男を拘束してどこかに置くことができるだろうか?

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:49:15

    >>8

    余人の邪魔を防ぐには高い位置に陣取ることが考えられる。

    まずは高い位置に行き、そこから下っていけば一石二鳥なはず。

    展望台から攻めていけば恐らく相手の不意を突ける。


    せっせと手下を使って階段やらを警備しているだろう、それはわたしたちリコリスと同じ。

    敵がいきなり展望台に行ったら面食らうのも同じはず。


    走りながら旧電波塔を見上げる。

    斜めに傾いでいながらも、なんとか立ち姿を維持していられるのは、

    鋼鉄製の索があらゆる方向から引っ張っているからだと見える。

    なるほど、考えの一つとして持っておこう。

  • 10二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:49:44

    >>9

    旧電波塔に入ってみると男たちが伸びておるし、千束印の銃弾の粉がそこらに撒かれている。

    ははぁ、あいつめ元気だなあどと暢気に感想を抱く。

    少なくとも無理やりに連れてこられたる訳ではない。それに千束は元気いっぱいにこれらを

    叩いているんだろう。すっと嬉しくなる。


    パンくずを追って家に帰ろうとする絵本のように、

    わたしは倒れている人間を目印にしながら千束の影を追う。

    途中、途切れて扉に繋がる。

    恐る恐る開けると、ひしゃげた非常階段の跡地だ。

    そこでも真島の手下連が伸びておる。ここからどこへ行ったのかね。

  • 11二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 11:50:44

    とりあえず10まで埋めたわ……

  • 12二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 12:21:08

    >>11

    感謝

    おつかれさまです

  • 13二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:31:58

    >>10

    下を見てはいけない。動けなくなるから。

    ……ならば上に行くほかない。

    展望台に上るような奴は馬鹿と煙しかおらん。

    千束のことを誑かすような奴は馬鹿だからそれを追っていく千束は例外だ。


    ごうごうひゅうひゅうと、わたしの髪の毛を風が巻き上げていって体勢が崩れそうになる。

    どこから内部に入れるものだろうか?

    一向に分からぬ。とりあえず決戦ならばと当初予定していたように展望台に向かう。


    旧電波塔は、するりと直立しているのではなくて、ぼうぼうと生えた

    鉄骨がまるで雑草のように周囲を囲んでいる。

    展望台の近くまでは鉄骨があるも、展望台というのにはどうも近づけぬ。

    しかも、どこにいるかはこちらからでは確認できぬ。

    銃声を頼りにせんとするも、こう風が強くっちゃあ何も聞こえぬ。

  • 14二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:32:45

    >>13

    まあ、大方予想は出来ていたけれどそんなときこそあの鉄の索だ。

    展望台近くまで結ばれているのはあれしかないのだ。

    おそるおそるその索に触れる。

    ひんやりと冷たく、そして硬い。


    索、ワイヤーと言ってもその太さは人間の胴体を優に超す太さだから

    わたしがぎゅっとしがみついても問題はない。太くてよかったと思う。

    それに抱き着いて尺取虫の要領で少しずつ上に上る。

    バサバサと髪が邪魔になる。今度一遍切っちまおうかとわたしは予定しておく。

  • 15二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:33:30

    >>14

    音は聞こえにくいが、振動は伝わりやすい。

    わたしが攀じ登っている索がズズズと震える。

    なにごとかと上を見るに、展望台の窓に覆いが降りているところだ。

    ……ははぁ、そこにいるな貴様ら。

    何が目的かは知らんが、ひとりでにそうなるはずもない。

    屹度そこに誰かがいて、何らかの目的のために操作したのだ。


    恐らくは……千束の視界を奪うため。

    そんなことをする奴は現状二人しか候補はおらん。


    やっとのことで索を登り終えて鉄骨に足を着ける。

    しかしながら足場の幅は約二尺。慎重に居たい。

    そこは展望台の窓を少し見下ろす高い位置にあって、

    敵方を観察するには最もよい。

    わたしはどうやってこの中に入ろうかと考える。持っているものは何かないか?


    ――千束のお好みのあれがいくつか鞄に突っ込んであったのを思い出す。

  • 16二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:35:29

    >>15

    ここでようやっと千束に半ば確信を持って電話を掛ける。

    正確には吉松のだが。

    千束の携帯はこっちに持ってきてしまったし、助けに行ったのだから

    一緒にいるかもしれない。

    出ないな、でもそこにいることは分かってる。


    放索銃を展開して、糸の端をどこかの鉄骨に縛る。

    下は見てはならぬ。


    足場の鉄骨から飛ぶ。

    わたしの身体は縛った糸の端部を中心にして、空中を舞う。


    その数秒後に、がん! と窓に中る。

    十年整備されていなかった窓枠が歪む。

    勢いを殺さぬよう、靴の裏で窓を蹴ってまた後ろに振り子のように飛ぶ。

    人を吊るぐらいの強度があるかなんか分からぬ。

    銃把がみしりと音を立てる。


    元の足場には到底戻れないがそれでも二度、三度と窓を足で蹴る。

    足先に帰ってくる衝撃がだんだんと弱く、弱くなり

    最後に、その音を響かせ窓は破れる。

  • 17二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 14:36:15

    >>16

    丁度真島と千束とが向かい合っているところだ。都合がいい。

    一回判子を押し付けるかのように顔を蹴り踏む。

    しかし、真島と言う奴は頑丈なようで。

    それ以降、わたしの攻撃を躱して逃げてと立ち回る。

    そればかりか、わたしの握ったままの銃を勝手に操って千束を狙って滅多に撃つ。


    千束は視界を得たのなら例の弾を真島に中てる。

    真島の弾は一つたりとも当たらぬものとありせば、最早恐るるに足らず。

    わたしは時間稼ぎに来たのだから、もう役目は終わっているのだ。

  • 18二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 15:23:09

    シャッター破り、浅間山荘鉄球状態か!
    鉄球じゃなくて人間だけど

  • 19二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 16:15:51

    >>17

    ■12

    真島の馬鹿野郎は頻りに千束を撃つが、鞄で易々と防御する。

    わたしの銃で千束を撃つんじゃない。


    運が悪く鞄が弾かれどこかへ行く。弾倉がそこに入っている筈なのだと懸念したら

    真島は地獄耳だからと口を閉じさせられる。


    こちらの弾切れを見抜いていたようで、真島は自分の銃を拾うと

    バカスカ撃ってきやがる。


    千束だって負けてはいない。蔵してた弾倉を装填して撃つが

    奴は暗闇に紛れて逃げる。

    わたしも助勢しようと、奴が捨てたわたしの銃を拾って装填して撃つがそれも避けられるし

    そもそもわたしなんか目が全然よくないから、当てることは難しい。


    そのうち千束は真島の地獄耳を逆手にとって耳の近くで発砲というのをやってみている。

    奴には思いのほか効いたようで、目を回してふらふらしておる。

    ははぁ、なるほど。こりゃあ重畳。


    最終的にはとことこと歩く千束の弾すら避けらず、文字通りお縄にしてやった。

  • 20二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 16:16:36

    >>19

    わたしは細い棒で真島の鼓膜を突いてやろうとしたけれど千束にそれは止め給えと言われて

    しょんぼりとしてそれを仕舞った。


    ときに、と千束は始めた。

    わたしたちは草臥れてどっしりと展望台に横たわる。


    きみDAはどうしたんだねと。わたしは辞めて来たとだけ言う。

    辞表でも書くべきだったかな。

    私儀都合有之辞職の上リコリコに帰り申候に付左様御承知被下度候以上とでも書いて郵送してやろうか。

    しかしリコリスは辞めるだの辞めないだのという選択肢はあったのだろうか?


    馬鹿だねえと千束は笑う。

    ああ、馬鹿かもしれぬ。千束も復帰の機会をフイにした私に残念と思ったんだろう。

    千束の件が済んだらどうしようか。

    まだ考えてはおらぬ。

  • 21二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:39:15

    >>20

    吉松がいるということでそちらの方に向かう。

    なに、愛娘の願いだから叶えてくれる……とは思うのだが。


    吉松は真島を殺したか、と千束に訊いた。

    そんなことはしていない。と戸惑いながら千束は言う。


    千束は、吉松から助けてくれてありがとうとか、会えて嬉しいとか

    そういう言葉を期待していたんだろう。でも現実は違う。


    それを烈しく吉松は批難した。

    千束の幸せを願っているようなことを言っているがその実自分の傀儡が欲しかっただけではないか。

    文字通りそれに発条を巻いたのだと。


    そして吉松は千束を撃つ。

    そうか、娘を撃つような人間は殺しても構わぬな。

    千束は二度、孤児にされたのだ。

  • 22二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:39:48

    >>21

    わたしは吉松の顔の横辺りを撃ってこちらに注目せしむ。

    千束め、なぜこの期に及んでこいつを心配する。


    全てのネタが割れていることを千束にも教えよう。

    真島と共謀して千束をここに誘い込んだのも、千丁の銃を真島に提供したのも吉松、

    ウォールナットをしてラジアータを毀損せしめたのもお前。

    松下もお前だった。吉松の手下で松下か、滑稽だな。

    そして最も許せないのが千束の心臓を破壊したことで、それもお前だ。


    そうすれば変わってくれるはずだ。

    どうだろうか? いいや、千束はその悲し気な睫を変えてはくれなかった。


    だが、そんな終わったことはどうでもいい。

    その鞄にある人工心臓が、全てを終わらせる。


    吉松だろうが真島だろうが、そんなのはどうでもいい。千束がどうにかなれば。

    御勝手にテロでも支援でもなんでもなされ。

  • 23二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:40:36

    >>22

    吉松は愉快そうに笑ってなぜか上位を脱ぐ。

    思いがけず、その白い肌の正中線だけが濃い。

    ここに千束の人工心臓が埋められているという。


    だから自分自身を殺して引きずり出せと千束に強要する。

    千束の手に実弾入りの銃を握らせて自身の頭にぴったりと着ける。


    案の定千束はしない、できない。いつもは軽いその引き金を

    引くことすら、いいや指を掛けることすらできないのだ。

    だから、わたしが。

  • 24二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:42:13

    >>23

    千束、千束はなぜわたしを止める。

    千束退け! そいつを殺せない。その心臓、わたしが引きずり出してやる。

    千束の、わたしより大柄な身体がわたしの行き先を止める。

    一歩たりともあの心臓に辿り着くことができない。


    と思えばいきなり突き飛ばされる。

    何事かと見ると、あの看護婦の奴が出てきている。ふざけやがって。

    今日は憎い奴が何度も何度も出てくる日なのか。

    みんな寄ってたかって千束をいじめやがって、全員ぶっ殺してやろう。


    あの看護婦の奴は思いのほか強くてわたし窓までを蹴り飛ばすと

    そのまま硝子が割れて、落ちていく。

    僥倖、無秩序に伸びている鉄骨にぶちあたる。

    必死にそれを掴んで体勢を立て直すが、もうお仕舞かもしれない。


    例の看護婦はその鉄骨の上で悠々と刃をこちらに向けている。

    指でも切られてわたしはここで死ぬのだ。

  • 25二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:43:24

    >>24

    と思っているうちにまた鉄骨が揺れて、千束がそこに降り立つのが分かった。

    無茶しやがって。


    あの女と揉み合っているようで、どこからか銃声まで聞こえる。

    吉松がこっちに向けて撃っているようだ。

    もう無茶苦茶だろ、なんなんだお前ら。

    娘の進路を勝手に決めるわ、従わなきゃ命を質にして脅す。

    ふざけやがって。

    千束の願いが犯罪とか害悪なら格別、人を癒す珈琲を淹れたり

    子供たちと遊んだり、日本語を教えることの何が不満か。


    今日は攀じ登る日だ。

    千束を先に逃がして女と対する。

  • 26二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 21:47:23

    >>25

    細い足場の上だ。少しでも体勢を崩したら死ぬ。

    ああ、一緒に死のうかこの女と。

    格闘ではうまくいかぬかもしれぬが、抱き着いてこの場から落ちれば一発だ。

    およそ六百メートルの地点だから二人とも助かるまい。


    それでいい。二度とこの女が千束を害さないのだから。

    わたしは決心して奴に向かう。糞すばしっこくて捕まえることすら難しい。

    跳躍の筋肉が随分と鍛えられているようで軽く飛び越えられたり、

    蹴り飛ばされたりと、わたしは端に追い込まれる。

  • 27二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:28:01

    心中……

  • 28二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 07:56:44

    保守しとくか

  • 29二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 12:27:31

    強いなあ

  • 30二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:45:03

    ほしゅ

  • 31二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 22:41:53

    >>26

    蹴りの一撃、一撃が重い。

    その重さは千束のそれよりも何倍も重く感ぜられる。

    彼女の振るう刃がわたしの額を過る。

    避けそこなって血がわたしの視界を遮る。


    頻りに目を瞬かせるが、どんどん血は溢れて零れて涙と混じって更に瞼を開けていられない。

    そんな中で受けとめる打撃は徐々にわたしの身体を奥へ奥へと押し下げていく。

    どうしてそこまでするんだと彼女が訊くから、わたしは、簡単だ千束だからだと答える。

    彼女は吉松に使われてはいるようだけど、特に気狂いめいた思想を語ったりはしない。


    千束を永らえさせるためならなんだってしてやるとわたしは吠えた。

    そいつは少し面倒くさそうな表情をして、はは、期待しているとはこのことか

    とだけ言ってなぜか踵を返し、わたしを置いてけぼりにして展望台に走り逃げる。

    まて、話は終わっていない。

  • 32二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 00:17:41

    >>31

    あの女が千束にまた害を与えるかもしれないから追う。

    どくどくと血が流れて、くらくらと視界が揺らぐ。

    展望台まで這い上るのがやっとだ。

    割れた窓から入ると千束の弾に撃たれたのか、あの女はぐったりとしている。


    丁度いい。わたしは銃を拾い上げるとそれらに近づいて撃ちまくる。

    視界の悪さ、額が脈打つ不快さ、それから……もし本当に胸に埋め込んでいたらと

    思うとどこを狙ってやればいいのか分からなかった。


    それに、千束があの女と吉松を逃がすから、わたしを抑え込んで心臓を逃がすから

    わたしは空になった弾倉を恨めしく思いながら引き金を空に引くことしかできなかった。

  • 33二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 00:19:09

    >>32

    吉さんの代わりに生きられないとか、お別れの日がきっとくる。でも今日じゃないとか。

    もう居ないはずの人とか、なんか色々言いやがって。

    わたしはただ、お前と別れるのが嫌だと言ってるんだなぜ分からないんだ。

    今日じゃないだけで、あと六十日も起居すれば、その日が来ると分からないのか。

    誰かを殺して生き延びてもそれはもう自分ではない? そんなのわたしが千束は千束だと思っていればそれでいい。


    千束は前に言ったよな、失うことで得られることがあると。

    ではなんだ、千束を失って得られるものはどんなものなのだ。

    そんなもの、ありやしない。何物も、きみに値やしないんだ。


    狂ってるよ、きみも。

    自分の命と引き換えに、千束に殺人を犯させたい吉松と

    自分の命を犠牲にして、わたしに殺させないきみと。

    親子としか、言いようがないじゃないか。


    バラララと音を立てて旋翼機が展望台に横付けされる。

    クルミだ。口と目が乾くから早く乗れと。

    ……なんなんだよこいつら。

  • 34二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 07:55:05

    っぱたきクルよ

  • 35二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 11:00:46

    拙者いつものちさたきじゃなくなってた2人がクルミズと合流することでいつものちさたきを取り戻すあのシーンすこすこ侍で候

  • 36二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 19:58:44

    >>33

    傷だらけじゃあないか、とクルミがわたしの額に垂れた血を布で拭う。

    クルミの弱い指に触れられただけで、頭にズン、と響く。

    思わず、うっとのけ反り、クルミに謝らせてしまったから大丈夫だぜといつものように返す。

    まあしかし、苦しい嘘だ。頭から血を流していて大丈夫もあるかい。

    千束は見かねて、武器を持った奴に丸腰で向かう奴があるかと言ったから

    この次は刃を避けて見せますと答えた。


    さっきまでは興奮していて痛みが鈍かったのだが、今になって少しずつ

    ズキズキが強くなる。千束は鞄を落としちゃったのが拙かったなと言いながら

    ミズキに応急処置一式を貰う。

  • 37二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 19:59:44

    >>36

    千束はクルミから布を受け取ると、血を綺麗に拭いてくれて、消毒薬を塗る前に「ちょっと滲みるから我慢しろよ」と

    揶揄ってくるから、千束と違ってそんなのは怖がりませんと言ったら笑っていた。


    わたしたちを呼び出したのはリコリスの救出の件でだそうだ。


    リコリス救出? いつもはポイと使い捨てにするくせに「救出」たあ変な話だ。


    千束には予備の弾倉が配られる。現状これしかないので、やたら撃たないように預かる。


    それから、リコリスがテレビに映っている。これはまずいし、

    千束とミズキが言うには、リコリスがもう存在がバレてしまったのでリリベルという奴らに

    消させるらしい。千束がこの前に言っていた奴らだ。千束を殺しに色々謀っていたらしい。

    ただ、楠木の奴が交渉してそれを止めさせたという。

    ……ありがたい。

  • 38二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 21:31:43

    >>37

    ともかくも、延空木の制御をこちらの手に取り返すことが必要ということだ。

    クルミがメモリを手渡してきて、これを延空木の中枢にブッ挿して来いと指示した。


    リコリコ営業再開だと千束は快哉を叫ぶが、閉めたのはお前だろう。

    それに、リコリスを救出しに行くってことは、かなり強度の強い運動が必要で

    その分きみの寿命がどんどんと削られていくんだってことを……いいや、もう言うまい。


    延空木の制御室に向かう道すがら、クソ大柄な男たちにフキ元隊長らがボコボコにされている。

    あのフキ元隊長が捕まるとは中々の手練れだなぁとは思うけど、千束に任しておく。

    千束にかからせればどんな大男だろうが、特に問題はない。


    ――だから楠木の奴だって重用するんだけど。

  • 39二次元好きの匿名さん23/04/04(火) 21:32:14

    >>38

    制御室に這入り、千束はクルミから預かったあれを入れようとしているが

    どうやら会話を聞いているとクルミからの指示をよく理解していなかった様子。

    たしかに……千束は、携帯電話をぽちぽちする程度で、

    あとは映画を観るために操作する機械ぐらいしか扱わない。

    閉店のお知らせだって手書きだった。

    「ゆうえすびぃっ? ってなんだよ」などと言ってフキ元隊長にどやされたる。


    ああ、同情いたします。


    さっき急いで閉めた扉の向こうにリリベルの奴らがいて、

    それを破らんと躍起になっておる。ドシンドシンと音が階段を上ったこちらににまで聞こえてくる。

    あんな硬い扉を破ってくる奴は中々おるまいと思ってはいるが、あちらは男で、訓練も受けていて

    訊くところによると非常に重装備だそうだ。

  • 40二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 05:59:23

  • 41二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 09:52:10

    たきなも千束並みに大男倒して活躍したのに自分のことは無自覚なの本当たきならしい

  • 42二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 09:55:05

    信頼できない語り手のたきな

  • 43二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 10:13:04

    たきな主観だからたまに事実とちょっと違くね?てとこが出てくるのも好き
    その場にいないから無理だけどとくに戦闘に関してはクルミとかだと信頼できる語り手になれそう

  • 44二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 10:15:37

    あれがたきちゃんにはそう感じられてるのかって解釈が見れるのがおもしろい

  • 45二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 13:41:31

    リコリコメンバー以外は司令とフキしか視界に入ってないたきな

  • 46二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 16:11:13

    >>45

    自分も視界に入れてくれよ

  • 47二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:02:55

    >>39

    はやく千束にはクルミの指示を達成してほしい。

    わたしたちも挿し込み口を探してはいるものの、見慣れた形式の電算機じゃあないから

    どうしようもない。


    やっとのことで見つけたようで、えいやと挿れたらしい。

    ただ、こちら側の画面ではどうなったかはよくわからない。


    リリベル連中はとうとう扉をぶっ壊してこちらに整った斉射をしてくる。

    携えている銃はやたら銃弾を蓄えられそうなやつで厄介だ。

    わたしたちの持っている拳銃じゃ屁の突っ張りにもなりゃしない。

  • 48二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:04:17

    >>47

    なにやらあちらにも赤服が居るようで、手を上にひょいっと挙げる。

    どうやらこちらに突撃してくるようだ。

    ……指揮記号が同じであれば、であるが。


    わたしが死ぬのはいい。ただ心配なのは千束だけだ。勿論千束のことは信頼しているが、

    この人数のプロ寄りのプロと戦えるのかは心配である。


    どうしようかと思っている最中、大画面にリスの頓狂な映像が流れる。

    クルミの好きな演歌と共に。なんだこれは……。


    それから、これは唯の見世物で、全部大嘘だぞという、それまた嘘の映像が流れる。

    どうやらこの延空木内で開催される「予定」の見世物というか催し物というか、そういうことを

    言っているのだが……。


    これを流す意図がわたしには測りかねる。

  • 49二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:05:13

    >>48

    千束はまぁた余裕そうな顔をしてリリベルらの前に躍り出る。

    階段のてっぺんから彼らをにやにやとして見下ろしていて、案の定彼らの射撃は中らない。

    いや、ただの威嚇で中てる気はないのか。


    そそくさと奴らは撤退した。

    あの赤いのが千束に対して何か情感の籠った目で睨んでいたから

    千束に、知り合いかい? と訊くも特に心当たりがないらしい。

    しかしまあ恨みを買っていそうな目だったぜと言うと、

    笑った方が良かったかしらんと言って片頬を糸で釣り上げたようにヒクつかせた。

    それを笑顔を言うなら、わたしのそれは破顔だよ千束。

    やっぱり、千束には演技が似合わない。

  • 50二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:12:44

    >>49

    どうやらすべてのリリベル連中は撤収したらしくわたしたちは安全を確保された。

    夕日の落ちる延空木をわたしたちは後にすることができる。

    正直、今日はいつ死んでもおかしくなかった。

    それに、エリカ。これのお陰でわたしは旧電波塔に行くことができたのでどう感謝したらいいか分からない。


    ありがとう、あのとき。と言うと彼女は意外そうにしていた。

    しかし目をこちらにあわさない。申し訳ないことをしたなとは思うのできっと彼女の心持もよろしくないのだろうな。

    しかし、返ってきたのはこちらも感謝の言葉だった。

    わたしもよくわからない。何の話だ? 現場をほっぽり出したのはわたしで、何も感謝される謂れもないが。


    二人してまごまごしていると、フキさんの子分がきゃんと教えてくれる。

    曰く、例の人質事件の時にエリカの代わりにわたしがDAから追い出されたのでまだエリカが

    ここに残っていられるという。


    司令にちゃんと話すべきだったとエリカは詫まる。


    話してなかったのか、逆に。しかし、合点がいった。

    なるほど、そんなこともあったか。別にエリカを助けた訳じゃあないのだが、そんな風に思っている奴もいたのか。まあ最早どうでもよいが面白いので揶揄ってやるか。酷い奴だと言ってみる。


    したら奴は思いのほか反応が良い。面白い奴だ。

  • 51二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:27:27

    エリカたきなの絡みいいよなあ

  • 52二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:32:33

    エリたき好きーーーーーー

  • 53二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 23:19:46

    >>50

    千束が上機嫌にエレベーターを呼ぶ。

    彼女の知る仲間が誰一人として失われなかったことが嬉しいのかもしれないな。

    千束は、いのちだいじにを掲げているからすっかり忘れてしまうけど心の芯からリコリスだ。

    仲間の死を悲しまない訳ではないが、すぐに忘れられる強靭さもある。

    少なくとも顔見知りが死ななければ動揺はしないだろう。


    そして、わたしたちを全員籠に乗せると、下に参りますなんて百貨店のエレベーター嬢みたいなことを言う。


    ――あのとき、千束を止めなかったことをわたしは生涯後悔し続けるのだろう。


    ぽふん、と鞄がさっきまでわたしたちの居た階に、降り立つ……と表現するのが適当だろうか、

    ともかくも、投げ込まれたというか、そこに出現した。

    千束はわたしの脳が働く前に、嗚呼是! 私の鞄ではないか! と言って駆け出して取りに行く。

    フキさんが呆れた声で千束を呼ぶ。


    たきなにもらったやつ! とあの犬の飾りをこちらに向けて千束は自慢する。

    なにがしたいのかしらこの千束は……!?

    真島っ?!


    ふらりと散歩するような調子でわたしたちの籠の入口を横切る。

    そして手には機関銃。

    咄嗟に気づいてくれたのがフキ元隊長で、一気に膨張幕を鞄から展開して銃弾から一瞬早くわたしたちを守った。


    千束! 千束がまだ! 

  • 54二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 02:24:43

    >>53

    ■13


    運悪く、だれだったかこいつ、サクラか、が真島の弾を受けた。

    どうやら太い血管を切ったらしく、血が溢れて止まらん。

    千束のぶんの余りのガーゼを当てて止血を試みるが、すぐに血に染まって役に立たなくなる。

    一秒でも早く救護班に回さないとこいつは死ぬ。


    ……そういえばこいつ、わたしに絡んできた奴だったな。

    まあここらで死なれるのは寝覚めが悪いから運ぶことぐらいまではしよう。


    展望台を行き来するエレベータならきっと早く下に辿り着けるはずだ。

    それはまでしっかりしろよ。と耳に特有の違和を感じながらもサクラを励ます。


    そして彼女は二重に運が悪い。

    エレベータが途中で停電する。

    夕暮れ時を少し過ぎた、紫色の空が辺りを包んだ。

    彼女の血が一気にどす黒いものに見えるような気がした。

  • 55二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 07:36:50

    やっと認知されたサクラ

  • 56二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 12:38:17

    かわいそうなサクラ

  • 57二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 12:55:32

    このレスは削除されています

  • 58二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:19:40

    今日はまだ来ないかな

  • 59二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 00:35:10

    >>54

    予備電源で降下せよとの指示。

    停電の原因は真島だというから、フキ元隊長は自分らも上昇してこれを討伐せんと言う。

    しかし、そうすればこのサクラの命はは散るだろう。

    ……いままでもそうしてきた。

    そうだ、リコリスなんか使い捨て。


    ――でも、フキ元隊長にとってこいつはきっと大切な人で。

    亡くしたくない人で。


    だからわたしは賭けに出る。

    わたしの話を聞いてくれるかどうかという賭けだ。


    貴方はサクラを救える。わたしは千束を救える。

    だからそのように為されるようにと。


    千束を頼むと、彼女に言われた。

    おうよ、と答えたくなるけれど、わたしは貴方の為に助けるのではない。

    あまり重い物を背負わせてくれるな。

  • 60二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 01:07:14

    >>59

    千束だったらきっと喜びそうだ。エレベータの天井を開けて

    梯子でのぼっていくようなこと。

    結構な速さで降下してしまったが故に、わたしは大分昇らなければならない。

    ひんやりとした梯子が手に響く。


    正直、もう辛い。六百メートル近い旧電波塔を攀じ登って、

    鉄骨に身体を支えて、延空木から旧電波塔にまで走ったのもある。

    少しでも気を抜くとジン、としてしまって落ちるかもしれないと思う。

    それでいて、千束と合流したら銃の引き金を引かなければならない。

    それなのに指先は疲労と、梯子の冷たさで震えてしまいきっといつもの精度は保てないかもしれない。


    もっと鍛えておけばよかったと後悔する。

    懸垂の直後に射撃の訓練を積むとか、その時は考えもつかなかったが。


    精度が少しでも狂った所為で千束に中るかもしれない。

    真島は死んだとしても別に構わぬ、千束が少し悲しむかもしれないけれど

    正直そんなことはどうでもいい。もし生かしておいたら何度でも千束の許に来るだろう。

    それは絶対に危険だ。


    千束と真島を同じ場所においてはおけない。

    その一心でわたしは一段一段昇っていく。

  • 61二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 07:50:23

    保守

  • 62二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 14:09:18

    最終話や

  • 63二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:19:34

    ワクワク

  • 64二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 23:39:21

    >>60

    ……上った先には、エレベータに乗り込むための扉があるが当然ながら閉まっている。

    そりゃあそうだ。籠が来た時にだけ開くようになっているのだから。

    どこかに突破口はないかと探すと、排気孔がぽっかりと口を開けている。

    金網で蓋をされていて通ることは想定されていなかったが、鋏でそれを切って進んでいく。

    狭い管の中を蛇のように這って進む。時折金網がまた行く手を邪魔するがそのたびに

    チマチマと切っていくため時間がかかる。


    懐中電灯があるにしたって、暗くて先が見えない。

    千束なら見えるのだろうか。少し先に垂直な孔があればわたしは落ちて死ぬ。


    千束なら死の恐怖を感じないのだろうか。

    千束はずっと涙など見せない。本当に死をなにものとも思っていないのだろうか。

    強がりでもなんでもなく、そういう性分なのだろうか。

  • 65二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 23:40:58

    >>64

    リコリスとして育てられた者は確かに明日自分が死んでいるだろうことを叩きこまれる。

    朝ごはんを一緒に食べた仲間が夜にはもう居ないことなんてザラにある。

    明日生きていられると思うな――。

    わたしだってそう思う。それでも、心の奥底では恐怖ぐらい抱く。

    敵が強ければ柱の陰でやり過ごして、帰還命令が出ればほっとすることだってある。

    千束にはそういう感傷がすっかり抜け落ちているのだろうか。


    親の言うことを聞かないというだけで、心臓が盗られてしまった千束。


    吉松は千束の好きなことを侮辱して心臓を止めようとする、千束が辛い目に遭えば奴は笑い、

    反撃すれば看護婦を差し向け、千束の人生に横やりを入れて、千束を絶望させて、

    真島を煽って……何故か? 千束が天才だからだ。


    千束は司令や、他の人たちが言うような、ただの万能の殺人機械なのか?

    違う。千束には手足も、感覚もあるし、冬の寒さを感じ夏の暑さで汗を流す。

    喜怒哀楽は人一倍にある。


    人からの感謝に対しては過剰に喜び、

    人が死んだらば涙を流して哀しみ、

    人と遊びを楽しむんだ。


    そしてそこらの人間と同じ銃弾や刃物で傷つき、同じように病気に罹る。


    けれど――千束には「怒り」というものがとんと薄いように感じる。

    自分に対して起こったことを「不当」だと思わない。だから怒らないんだろうか。


    自分の寿命が不当に短くされたと怒らない。なんでも受け容れてしまう。


    千束にとっては今ある人生があるべからざるもので、それが喪われることは「正当」なことなんだ。

  • 66二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 07:03:46

    保守保守

  • 67二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 10:15:51

    >>65

    それは千束にとってはだ。

    DAがわたしを追放した時、DAの連中がわたしに喧嘩を売ってきたとき。

    千束は彼らに交渉なり喧嘩なりを売り返して、わたしの名誉や気持ちを守ってくれた。


     千束はどういう因縁か、わたしに非常にちょっかいを掛けてくれる。不思議なものである。

    フキ元隊長も愛想をつかして――DAも年中持て余している――仲間内では味方殺しと爪弾きをする――このわたしを無暗に珍重してくれた。わたしは到底人に好かれる性ではないとあきらめていたから、他人から木の端のように取り扱われるのは何とも思わない。かえって千束のようにちやほやしてくれるのを不審に考えた。


    千束は時々、リコリコの台所で人の居ない時に「きみは真っすぐで好い性格だぜ」と褒める事が時々あった。しかしわたしには千束の云う意味が分からなかった。

  • 68二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 10:17:26

    >>67 

    好い性格なら千束以外のものも、もう少し善くしてくれるだろうと思った。

    千束がこんな事を云う度にわたしはお世辞は嫌いだと答えるのが常であった。

    すると彼女はそれだから好い性格だよと云っては、嬉しそうにわたしの顔を眺めている。

    自分の力でわたしを製造して誇ってるように見える。少々気味がわるかった。


    二人でフキ元隊長をボコボコにしてから、千束はいよいよわたしを可愛がった。

    時々は内心に、なぜあんなに可愛がるのかと不審に思った。

    つまらない、廃せばいいのにと思った。気の毒だと思った。


    それでも千束は可愛がる。折々は自分の小遣いでパンケーキやお稲荷さんを買ってくれる。

    寒い夜などはひそかにお店には出さない珈琲を仕入れておいて、いつの間にかカウンターにおいて来てくれる。

    クリームで絵を描いて。

    時には鍋焼饂飩さえ買ってくれた。ただ食い物ばかりではない。服の一式もらった。

    不必要に可愛い文具も貰った、ついでに帳面も貰った。

  • 69二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 10:19:36

    >>68

    千束が物をくれる時にはだいたい他の人たちが居ない時に限る。


    わたしは何が嫌いだと云って人に隠れて自分だけ得をするほど嫌いな事はない。

    他の人たちとは無論あまり、仲がよくないけれども、彼らに隠して千束から菓子や物を貰いたくはない。

    なぜ、わたし一人にくれて、他の人たちには遣らないのかと千束に聞く事がある。


    すると千束は澄ましたもので他の人たちは自分自身でなんとかするから構わないんだと云う。

    これは不公平である。しかし千束の眼から見るとそう見えるのだろう。全く理解できない。

    強いけれどDAの集団生活から離れて長い彼女だから仕方がない。


    単にこればかりではない。贔負目は恐ろしいものだ。

    千束はわたしをもって将来立身出世して立派なものになると思い込んでいた。

    将来はファーストになれるよとか無暗に言った。

    その癖任務に集中をする他のリコリスたちは色ばかり白くって、とても役には立たないと一人できめてしまった。

  • 70二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 10:21:37

    >>69

    こんな彼女に逢っては叶わない。

    自分の好きなものは必ずえらい人物になって、嫌いなひとはきっと落ち振れるものと信じている。

    わたしはその時から別段何になると云う了見もなかった。

    しかし千束がなるなると云うものだから、やっぱり何かに成れるんだろうかと思っていた。今から考えると馬鹿馬鹿しい。


    ある時などは「じゃあわたしはどんなものになるだろう」と千束に聞いてみた事がある。

    ところが千束にも別段の考えもなかったようだ。

    ただ真っ赤なスーパーカー乗って、立派な映写室のある家をこしらえるに相違ないと云った。


    それから千束はわたしがファーストになってたくさんの隠れ家を持ったら、また共同生活を送る気でいた。

    「ねぇ一緒に住もうよ~」と何遍も繰り返して頼んだ。

  • 71二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 10:23:06

    >>70

    わたしも何だかうちが持てるような気がして、考えておきますと返事だけはしておいた。

    ところがこの女はなかなか想像の強い女で、きみはどこが好きか、錦糸町かな? 亀戸かな。

    きっとたきなのことだから身体を鍛える設備をつけるんじゃないか、ああでもそういうのは一つでたくさんだよなどと勝手な計画を独りで並ならべていた。その時は家なんか欲しくも何ともなかった。


    車も映画用の部屋も全く不用であったから、そんなものは欲しくないと、いつでも千束に答えた。

    すると、きみは欲がすくなくって、心が奇麗だと云ってまた賞めた。千束は何と云っても賞めてくれる。

  • 72二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 12:08:44

    本編でも千束はたきなが可愛くてしょうがないって感じだったもんな

  • 73二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 15:37:28

    >>71

    千束と一緒に仕事をしていると、わたしの自慢を常連の人とかお客さんに訊かせた。

    とっても経営が上手いとか、てきぱきしているとか吹聴したこともある。

    一人で決めて一人で喋るからこっちは困ってきまりの悪い顔をするほかなかった。

    それも一度や二度ではない。折々、わたしが盤戯で負けたのに納得できないで何度も挑戦したことまで持ち出すのは閉口した。


    ただ千束は友諠に厚い奴だから、自分の友達はわたしにも友達みたいな風に考えていた。

    それは最初は当惑したけれど、それがためにわたしもあのリコリコに早く馴染めたのだった。


    ……千束は友情に厚い奴だと思っていた。

    それなのにわたしの願いは顧みてくれない。

    ならば父と子の情が勝るかというと、そういうわけではない。


    千束は独りだった。ずっと本質的に一人。

    誰とでも仲良くなるということは、その実誰とも仲良くならないということだったのか?

  • 74二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 15:40:14

    >>73

    誰もきみに触れられない。

    でも、わたしは退かない。どんなに嫌がられたってそちらへ向かう。

    ――それがわたしのやりたいことで、最優先すべきものだから。


    排気管の出口から出て、機械制御室に降り立つ。

    なんとかボタンを押して他のエレベータが動くかどうかを確認したけれど、どうも完璧に停電させられている。畜生、真島の奴め、足止めは完璧とと言う事か。


    扉を開けて非常階段へと至る。

    遠い、遠いビルディングの灯りが際立つような、誰彼のもう一歩先の時刻。

    冷たい外気が、ずっと排気口に籠っていたわたしの頬がキリリと痛む。


    速く、早く、彼女の許に行かなければならない。

    カンカンと軽い足音がわたしの気持ちに反して響いていく。

    銃声が聞こえる。戦闘中でも、あの地獄耳はわたしの到来を聴いているのだろう。

    不意討ちを期していたのに、きっとダメになる。もういい、少しでもわたしが引きつけられれば。


    展望台に通じる鉄扉は施錠されていて、最後までわたしの行く手を阻む。

    幾つか撃ってそれをあける。

  • 75二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 16:42:57

    >>74

    千束がうつ伏せに倒れ、あまつさえ真島に踏まれ銃口を向けられている。

    何故!? 千束がそうなるなんておかしい。

    わたしの声が、わたしの意識よりも早く出る。

    千束! と呼んでしまった。


    千束はゆっくりと半身を擡げると真島を、延空木の展望台の中央にある、硝子でできたお椀のような窪みに、出来損ないの巴投げのように引きずり込む。自分自身とともに。


    どん、どん、と鈍く跳ねるような音がいくつかして二人は椀の中心に滑りゆく。

    蜘蛛の巣に囚われた虫のように見えた。

    そのお椀は、わたしの腰までの壁が柵のようになっていて容易にはわたしを入れない。


    千束を助けないとと思っても千束は横たわりながら真島を撃ち続けている。

    近づくことができない。

    それに、パラバラと二人の周囲の硝子が割れて、抜けて、地上へと吸い込まれていく。

    いつ千束の横たわるところの硝子が抜けるか分かったものじゃない。

  • 76二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 16:44:57

    >>75

    もういい、真島なんかもういいから、わたしはやっと壁を乗り越えて千束に向かおうとする。

    かちゃんと硝子のヒビの入る音がして、わたしの足元に白い糸が走る。


    戦闘中にここに銃弾が既にたくさん当たっていたのだろうか、もう脆い。

    今行くからと踏み出した瞬間に千束の周囲が全て割れて千束を六百メートル先へと吸い込む。


    させない。

    わたしは賭けて、千束が大好きだった放索銃を構え一度わたしの顔の前で索を引き出す。

    索の端にある錘を絡ませて、二度、三度か落ち行く千束に向けてそれを撃つ。

    正直、ちゃんと絡んでいるかどうかなんか分からない。

  • 77二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 16:45:37

    >>76

    千束が子供たちに読んでいた絵本、

    何人も殺したカンダタは、一匹の虫を救って一縷の糸を得たという。

    ならば一人の命を失わせなかった千束には何本の糸が救ってくれてもいいはずだ。


    ともかくもわたしは引き出した索を掴んで肩と鞄に掛けながら、またあの混凝土の壁にしがみつく。


    肩にガン! と重さがかかる。よかった! ちゃんと千束が繋がれている!


    どこかで花火が鳴って、開く音がした。目の前がいくつかの色で彩られた。

  • 78二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 17:11:56

    >>77

    千束を引き上げる。

    目を覚まさない。

    唇から息が漏れているからまだ生きてはいる。よかった。


    大分激しい運動をしたように見える。辺りは弾痕だらけ。

    混凝土は所々爆発を喰らっているようで抉れている。


    どれも真島との戦闘でついたものだろう。


    さっさと病院に連れて行かなければ。ミズキに連絡して車を寄越してもらう。

    リコリスは一般の病院には行けない。

    流石にミズキにここまで上ってきてもらうことを頼むのは忍びない。

    わたしは千束を負ぶって一段一段、非常階段を降りる。


    千束の奴、すやすやと寝息を立てやがって……この野郎。

  • 79二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 17:29:51

    >>78

    最後の一段を降りて、ふらふらと駐車場へ向かう。

    途中延空木を見上げてしまって、足が竦んだ。

    あんなところから千束が落ちていたら……と思うと、背中に感じる温かさが奇跡のように思える。


    千束を病院に運び込んで、暫くぼさっと彼女の周りの椅子に座っていると、店長が来た。

    手には、わたしが死ぬほど欲しかった鞄を持って。


    よくわからないうちに、千束はもう少し大きな病院に移されて手術を受けた。

    あの心臓の出所について、わたしは店長に訊いた。

    シンジから貰ったとだけ、彼は答える。ああ、嘘ではない筈だ、なんて思ってそれ以上訊くことはやめた。


    ただ、吉松の胸の傷というのがどうも気がかりだ。

    千束にはあんな目立つ傷はなかったように思える。いや、そこまでまじまじと見たことはないが。

    それに、一旦別人に埋め込んだものを再利用なんて出来るものなのだろうか?

    それから、わたしが本気で殺そうとしたときにだってあの鞄を離さなかった。


    ……いや千束に撃たれたときに身を旧電波塔から投げていれば、千束が殺しをしたことになるのではないか?

    殺しをさせたいんだったら、それが合理的なはずだ。

    でも、そうはしなかった。――胸の人工心臓が衝撃で壊れないように。


    いや分からぬ。ああいうのの考えることは追っても無駄だ。

  • 80二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 17:45:32

    とうとうここまで来た
    たきなの肩はだいじょうぶなんだろうか…

  • 81二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 18:05:34

    >>79

    それから、と店長に声を掛けられる。

    なんです? と返すと、なにじゃあないよ、きみも手術を受け給えなどと言われる。

    どこも悪くは……と反論しようとして肩を触れられる。


    ずきっ! っと鋭い痛みがした。

    素直に降伏するほかなさそうだ。


    横から出て来たクルミが、実はたきなの奴、頭も切ってるんだとか告げ口をして店長が頭を抱えたのは少し面白かった。


    ともかくも、わたしもまた手術を受けて入院することになってしまった。

    やれ、千束に口うるさく言ったのに自分もこれじゃあ情けないぜと思ってはいたものの、

    怪我をした状態なのは確かに良くない。


    ミズキなどは、休暇だと思ってのんびりしなさいと言って車で帰っていった。

  • 82二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 18:11:37

    >>81

    わたしは思いのほか早く恢復して、喫茶リコリコにまた出ることになった。

    閉店は辞めになったようで、常連さんを出迎えるのがわたしの仕事になった。

    千束が繋いだ縁をわたしが切る訳にもいかないから、保育園、日本語学校、組事務所の仕事もやっていく。


    毎日千束の居る病室に顔を出してはいるが、まだまだずっと眠っているようだ。

    そりゃあ心臓を取り換えるだなんて大工事なのだからそうなんだろうが……。いい加減起きてくれても良いだろう。


    千束は行方不明になった。

  • 83二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 19:12:01

    けっこう補完というか膨らませて書いている感じだね

  • 84二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 20:17:54

    たきな側描かれなかったシーンも多いもんね
    文章だと本編より湿度高い系たきなになっちゃってるのが多いけどこの淡々とした感じは本編ぽくて好き

  • 85二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 21:27:43

    >>82

    最初はアランの連中が千束を攫って行ったのではないかと思って焦ったが、クルミがケタケタと笑って画面を指さす。


    風呂敷包みを持った千束が病院の裏口から逃げている様子が克明に映し出されていた。

    ははぁ、馬鹿だなこいつはと思ってはいたけれど、そこからの足取りがちょっと分からなくなっていた。一旦どこかの安全基地に戻って仕度をしたようで、そこから大きな駅に向かってからがよくわからない。


    クルミは、千束の奴、現金を使いやがったなと苦々しそうに検索を続けている。


    クルミの捜索の手から逃げられるとは流石ファーストだと内心感心した。


    はぁ、とわたしはため息をついて、クルミにお礼を言って離れようとするが、呼び止められる。

    怒ってないのか? と。千束はキミを置いてどこかに行ってしまったんだ、無断で。

    命の恩人から逃げ出したんだぞと。


    ははあ……なるほど、そういう見方もあるか。

    わたしは悲しかったかもしれないけど、怒るというのは思いつかなかった。

    あとは、ただ心配ですとクルミに言った。


    新しい人工心臓に交換してもらったものの、充電切れとか整備不良で死んでしまったら馬鹿みたいじゃないか、と言った。

  • 86二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 21:31:18

    >>85

    そしたらクルミは何が面白かったのか分からないが、そうかいとだけ言って口の端をぴくりと歪めて笑った。

    一日でも早く見つけてやるからなと、押入れの引き戸をクルミは閉めた。


    ただ、時は過ぎるのは早い。

    わたしの着る服は相変わらず紺色だったけど、袖が短くなった。

    雪ももう一度降って、リコリコを埋めた。

    わたしは店の前の縁台に一人座って、きっと千束もこれを見くれていたらいいなと思った。


    聖誕祭とか豆まきみたいな時節の催しは保育園でやった。

    子供たちが千束を待ちわびているのが心に痛む。

    直ぐに帰ってくるから、と言って宥めた。


    何度も何度もこの台詞を吐いたけれど、そのたびに嘘をついている気持ちになる。


    桜が咲くころ、千束を取り戻さなければと本腰をあげた。

    千束に会えないことを悲しみながらも卒園しなければならなかった子供が遂には泣いてしまったからだ。


    もう休暇は終わりだ、千束。

    少しは独りで居させてやろうとは思っていたが、人を懐かせて急に消えるなんてなんて奴だ。

  • 87二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 22:04:41

    >>86

    常連の漫画家など、千束はどこへいったと毎回来ては気を揉んでいる。

    分からんから分からんとしか言いようがない。


    或る時、さしいれのクリームあんみつを持ってクルミの押し入れに近寄ってみると、なぜかクルミは大声を出しながら襖をドン! と蹴破るように開けて転がり出て来た。


    尋常ならざる気配にわたしはどうしたのか、と訊いてしまう。


    クルミが示した画像は、沙織嬢が写っているものだ。懐かしい。

    ……?! 千束?


    「どこですか!! どこですか!! ここは!」

    「お、沖縄の宮古島だ」


    クルミにあんみつを押し付けるとわたしは制服を着替えて空港へ走る。

    が、クルミからの着信が来る。だめだ、早すぎだ! 搭乗券ぐらい用意するから待ってくれと言われる。

    それに、準備なしで近づいたらまた、逃げられるかもしれないと濁されながらも説得される。


    確かにそうかもしれない。と思ってクルミに詫びて一旦リコリコに戻る。

    そこからが大変だった。

    なにしろ監視カメラやらなにやらクルミが得意なものが殆どなくて、情報を絞るのが非常に難しい。

    DAに動いてもらうと、制服を着たリコリスやら職員を動かすことになるから気づかれる。

    だから楠木の奴にどうにか店長が手配して、私服の状態のリコリスを差し向けて千束の勤務時間や住処を調べ上げてもらった。


    勤務時間は正午から十九時半、十五時からの休憩を狙えとの計画が立った。


    わたしは満を持して宮古島に飛び立つ。

  • 88二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 02:10:27

    淡々スルスル進むね

  • 89二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 09:47:41

    保守保守

  • 90二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 10:02:22

    >>87

    飛行機から降りると嫌に暑い。これが南国か、道行く人々も軽装で東京との違いを感じる。

    彼女の潜伏している地域は森に囲まれた自然豊かな……というか、自然しかないところではないか。

    どっちを見ても同じ景色だ。

    わたしなど京都か東京にばかりいたから高い建物があるのが当然だという風に育ってきた。

    こんな山のイノシシの方が人間より多そうな地域はあまり不案内だから、いろんな人に道を尋ねた。


    尤も沖縄にイノシシがいるかは知らぬ。


    十五時というと真昼で肌がじりじりと灼けて痛い。

    あの野郎、わたしをこんな田舎くんだりまで連れてきやがってと思うと少しイラっと来る。


    森を抜けて、千束の潜伏先に行こうとしたとき、向こうでがさり、と音がする。

    ははぁ、こんなクソ田舎では野生生物と共存しなきゃあいけないのか。

    犬猫は飼い主が責任を持って面倒をみなけりゃあいけない。


    逃げたら追いかけるとかね。

  • 91二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 11:30:40

    このレスは削除されています

  • 92二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 11:32:12

    このレスは削除されています

  • 93二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 12:46:19

    ちゃんとイラッとしてるのがとてもいい

  • 94二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:49:42

    大胆な田舎Disりは坊っちゃんの特権

  • 95二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:41:49

    >>90

    その生き物は悠々と歩いていたが、途中でぴたりと歩を止めた。


    わたしはそれに向かって発砲したが、生憎奴さんの方もパシパシと撃ってきやがる。

    最近の獣は道具も扱うらしいな、わたしは不勉強だったわ。


    わたしのはもう撃ち合いは諦めてえいや、と索を放つ。奇しくも向こうも同じ技を使ってやがる。


    その獣はシーサーであった。

    わたしなんかに捕まるなんて腕が鈍ってる証拠だと思った。

    声を掛け給えと言うからそんな訓練はしていませんと返した。


    やっとみつけましたよ、千束。

  • 96二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:42:13

    >>95

    索に繋がれた千束はわたしにぎゃんぎゃんと抗議をしているけれどもう逃げる気はないかと訊くと、一応、おうと言ってくれた。


    千束。ねえ、きみわかっているのかい? みんなが心配しているってことに。

    と言ったら流石の千束も先ほどの鳴き声を潜めた。


    なにか言うことはないのかい? と言うと千束はごろりんと仰向けになって唸る。

    もう逃げませんと神妙に呟いた。

    ……信じられませんねとわたしが言うと千束は笑って、じゃあそういう証拠を残しておくのはどうかと言う。

    証拠?

  • 97二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:42:55

    >>96

    千束を木に縛って写真を撮る。

    縛られている癖に莞爾たる姿は不自然だろうとわたしは言ったら千束はむすっとむくれた。

    阿呆め。なんだが間抜けな姿だ。

    これを店長に送る。捕獲完了という文と共に。


    これは常連さんに回覧され屹度笑われるだろう。

    それで少しは許してくれまいか。


    千束は島の案内を買って出た。

    わたしは、今すぐにでも千束を引っ張って東京に帰りたかったし、何より病院にぶち込みたかった。

    手術後、意識を取り戻した後に各種の点検を受けていない状態なのだ。

    まだまだ不安定だったらどうする。次の瞬間に異常が起きないなんて言えないだろう。


    だけど、飛行機の時間がどうのとか、潜伏先に荷物があるだとか色々言われて延ばされてしまった。

    極めつけなのが、今働いている所からも急に消えたらあの人たちも心配するでしょ? というような台詞を言われてしまうことだった。

    まあ、それはその通りではありますから、なんとか処理してきてくださいとだけ言った。

  • 98二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 01:10:41

    たきなは気苦労が絶えないね

  • 99二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 06:23:03

    たきちゃん視聴者的には大きな出来事だった千束の弾除けたのも千束に一発当てたのもわすれちゃってるんか。本当そういうとこだぞだな

  • 100二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 08:06:58

    肩に当てたみたいだったけどあれって非殺傷弾なのかな。実弾だったら流血では

  • 101二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 08:43:18

    >>100

    たしか赤い粉末飛んでたはず

    もともと初体験で千束が外してた的の中に当ててたから練習したらそれなりの精度で撃てるんでは

    さすがに千束に実弾は使わんだろ

  • 102二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 10:17:18

    >>94

    でもよお!宮古島は松山じゃねえしまして四国でもねえんだぜ!?

  • 103二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 12:04:57

    >>99

    たぶん千束が単純に鈍ってるとしか思ってない

  • 104二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 14:30:56

    >>103

    そういうとこー

  • 105二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:37:38

    >>97

    千束に、きみは海が好きだったのか? と訊くと、そうでもないと答えた。

    ただ何となく寒いのは嫌だからこっちに来たんだというから、猫じゃあるまいしと思った。

    猫は水辺を怖がるらしいけれど、この金色の毛並みの奴はむしろキラキラしているものに惹かれているようだ。

    波打ち際を二人で無言で歩いたり、自販機で沖縄限定なんだよ凄いだろうとジュースを買ってくれる。

    千束と相対すると、言ってやろうと思って溜めていた言葉がどこかへ流されて消えていく。


    千束は何を考えているんだろう。


    それからわたしは手を引かれて彼女の勤め先に連れていかれる。

    歓迎の杯だから何でも好きなものを頼み給えと偉そうにしているから、ではきみの一番のお勧めを持ってきなさいと言った。

    辺りは夕暮れ、丁度あの時もこんな色だった。

    千束はその夕焼けを溶かしたような杯を持って来てわたしに勧める。

    いい趣味だ。

  • 106二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:38:21

    >>105

    何故ここが分かったのかと千束が問う。

    クルミが得意とする手段が効かぬ場所だからそう訊きたいのは理解できる。


    ほら、と写真を示す。

    彼氏と続いているのね、と嬉しそうにしているが、背景に気づいて声を挙げる。

    丁度わたしがしたように。

    沙織はそのうち宇宙人とか撮っちまうに違いないと言うから、もう撮られてるでしょと思った。


    御納得いただけたようで。

    そうしたら千束は、今の私は幽霊かもしれないぜ? と手をだらりんと垂らして声を震わせる。

    そんな血色がよい太い脚がついた幽霊なんかおるかい、と思って元気そうで何よりと返してやった。


    なんで私は生きている? か、それは是非とも気になるところかもしれない。

    それよりわたしの質問に答えてもらおう。

    何故逃げたのかと。自分で点滴の針を抜きやがって、医者が頭を抱えておったぞ。

  • 107二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:20:14

    >>106

    彼女の釈明に曰く、手術されててめっちゃ痛いしこれはもう死を覚悟して、みんなに湿っぽくならないように動けるうちにいい場所を探そうかと……とまあ身勝手な理由を縷々。


    で、きみは出先で死んで行旅死亡人として処理されるつもりだったのかい?

    潜伏先で息絶えて南国の陽気に晒されたきみの死体を片付ける人の身にもなってくれよと。

    人工心臓を埋め込んだままうっかり火葬されてみろ、電池や機械が爆発して炉が破壊されて怪我人もでるんだぞと、ああ漸くため込んでいたものが沸々と音を立てて出てきそうになった瞬間、見計らったのか千束が海の方を指さす。


    真上に居た時はとっても小さかった、点にも等しい太陽がいつの間にか大きくなって海の向こうに飲み込まれていく。

    周囲は金色に染まった。千束の髪の色だ。

  • 108二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:21:20

    >>107

    そして、千束はわたしに向かって白状し給えと言う。わたしから逃げた薄情者がそんなことを。

    店長がわたしに預けた箱を見せながら、吉松のケースが店長によって回収されたことを話す。

    残念なことに、本当に残念だがきみは死なない。残念だったな、当てが外れて。


    千束は箱の中の添え書きを読んで彼を追慕しているのかもしれない。

    普通は入れないよね、と彼女は吐く。何を何になど言わなくてもわかる。

    普通は、入れないとわたしは肯定する。


    普通は、だが。しかし吉松がそうであるかどうかは分からない。

    普通ではない千束の父だ、いや、追及はしまい。


    箱の中を千束は探る。まさか紙だけではと思っていたが、彼女は短く悲鳴を上げる。

    あのフクロウの飾りが入っていた。

  • 109二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:22:08

    >>108

    あれからわたしたちは夕日が沈み切る前に浜辺へと向かった。

    千束が珍しくしおらしいから、ちゃんと食べてるかいと訊いたら何故か少し怒って食べてるよと返してきた。

    革靴でこんな砂地を歩くのなんかあまりないから、時々体勢を崩しそうになるけど千束に支えてもらう。

    どうも、と言うと千束は調子に乗って、へへっと得意げだ。


    彼女はやにわ例のフクロウの飾りを海の向こうに投げて棄てた。

    よかったのか? と問うと少し迷ったそうだ。でもちゃんと迷ったのだからいいんだ。


    それにしても、千束はわたしがあれを褒めたみたいなことを言いだす。

    そんなこと言ったっけか、はて? そんな恥ずかしいこと……と思っているとわたしの腰をまた抱き留め、ぐるりぐるりとその場で回って、えいと波打ち際にわたしを投げ捨てる。わたしはフクロウじゃあないんだぞ。

    咎なくて放らる。どうやら千束の中ではわたしがそれを褒めたことになってるようだ。

  • 110二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:24:09

    >>109

    しかし、制服のまま投げられたことは抗議に値する。

    が、千束はもう頭しか出ていない太陽に向かってぼんやりと、これからなにをしようかと問いかけていた。

    ……何をすべきかなんてわからない。が、しいて言うのなら、諦めていたことからやればよろしかろう。

    まだ時間はたっぷりあるのだから。なんて弥縫策めいたことしか言えない。


    しかし千束は思いのほかそれを気に入ったようで、ワイハーに行くぞ! と意気込んでいる。

    そしてどうやら、それにはわたしもついて行くことが自明のようであった。

    空はもう紫に。今日の日はお別れ。しかし、もう物悲しくなることはないのでしょう。

    千束にはまた明日が来るのだから。

  • 111二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:34:14

    >>110

    千束の馬鹿にそういえば聞いてなかったことがある。

    死ぬのは怖くなかったのかと。

    千束は死を受け容れていたようなことばかり言っている。

    死を受容しているから、その用意をしているようなことばかり。

    もし、「生に執着してるみたいでカッコ悪いじゃん」などと彼女が言ったら今度こそ尻を蹴り上げてやる。

    「生きたいと願うことの何がわるいんだ」と。


    そうだ、ハワイにでもなんにでも行かせてやろう。

    そうすればもっとやりたいことが出てきて、死に急ぐようなことは少しはなくなるんじゃないだろうか。

    最初は東京に引っ張っていってリコリコに連れて行って常連さんやミズキ、クルミそして店長に頭を下げさせてやろうと思っていた。

    勿論それはするけれど、それが終わったのなら彼女の欲望をうんと育ててやろう。

    だからわたしの指はクルミへの連絡を取る。偽の旅券はウォールナットにある。

  • 112二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 07:11:29

    もうそろそろで終わるね

  • 113二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 12:20:14

    保守しとくぜ

  • 114二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:48:47

    >>99

    マシンガン乱射の時からクソボケだったのだよ

  • 115二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 23:38:20

    >>114

    行動力があって思い切りがよくて真っ直ぐで実は優しいクソボケ

    それがたきなだ

  • 116二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 00:57:22

    >>111

    今、リコリコは布哇で行商している。

    これも千束の願いだ。

    「あっちでもリコリコをやろう!」と言い出した時には――尤もそれぐらいは予想できてはいたのだが。

    またどこかいい店を探さなきゃなぁと思ってクルミに頼んだのだけれど、そうじゃあなかったらしい。

    ワイハと言えば海、海と言えば海の家だよたきなさん。などと自慢げに言うから、だから浜辺の物件を探してているじゃないかと返した。

    でも、そうではないらしい。


    クルミが、じゃあビールの売り子みたいに珈琲を担いで歩くのかいと千束に問うと、千束の奴真剣にそれで悩みやがった。あまり物を背負うのは勘弁願いたい。

    色々考えた結果、キッチンカーというのを一度やってみたかったということだった。

    これなら色んなところに行けるし、商品の重みで体が潰れなくて済む。

  • 117二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 01:07:19

    >>116

    しかし車にかなり金を掛けてしまったのが原因でまだ帰れそうにない。

    なにしろ千束が画用紙に絵を描いてこういうのがいいと駄々をこねて聞かなかったのだ。

    わたしは売っているままの状態でよいでしょう、と宥めたのだけど効力がない。

    泣く子と千束には勝たれぬ、とはよく言ったものだと思う。

    いいや、どっちも千束だろう。泣いているし。


    蓋を開けてみれば確かに売れ行きは悪くない。浜辺でよくカフェオレが売れる。


    アメリカでは珈琲を冷やして飲まないんだと千束は得意げにわたしに教えてくれたがここではよく売れますね、とだけ言っておいた。


    クルミは看板娘をしてくれている。お品書きを書いた板を体の前後につけて歩き回っている。

    クルミも金色の髪だから、現地の人だと思われていてよくこの環境に馴染んでいる。

  • 118二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 01:08:01

    >>117

    そして平和に喫茶店家業をやっていられるかと思ったらそうでもない。

    なんでも、千束のフアンを名乗る、奇特な人たちが日本に居た時のような依頼を持ってやってくる。

    そういう時には千束はフラの衣装を、いや衣装と言うとなぜか怒られるのだが、そういうのに着替えて相対する習慣になっていた。

    なんで着替えたんですかと訊くと、これがワイハの迷彩服だからだと満面の笑みで答えるもんだからなんといっていいのかわからない。


    そんな服を着ている布哇人はとんと見たことがない。

    むしろ、千束がいつも来ている、シャツに短いズボン、そして中に水着と言う方がよほど目立たない。

    ズボンは前を閉めたらどうかね、と忠告したらこれは水着だからいいんだという。

    でも、見てる人はそれが水着かどうかはわからないですよね。そう言葉を変えると一瞬迷ったようだったが、そのままにしているようだ。

  • 119二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 01:09:18

    >>118

    わたしにもフラの服を着ろと言ってくるが、御免蒙る。

    ただでさえ、こちらでは着慣れたリコリスやリコリコの制服がなくて、何か別の服を揃えなければならないのだから、これ以上増えると整理しづらくなる。千束から貰った服でいっぱいなのだ。少しは自分でも選べるようになったのだからこれ以上は。


    キッチンカーは日本のリコリコのように室内ではないから、店をその人だけにして秘密の会談をすることができない。

    こういうのは夜に行われる。

    そこに意気揚々と現れて千束は言うのだ。Are you in trouble ?(お困りですか)。

    それを見て困っている依頼人に、クルミがAlohaと追い撃つ。


    そしてミズキが溜息を吐いて、浮かれてんじゃねぇぞてめえらとわたしたちを指して言うのだった。

  • 120二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 07:44:51

    終わったのか?
    淡々と始まり淡々と終わったな
    おもしろかった

  • 121二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 12:22:23

    おまけとかくるかもしれん

  • 122二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:10:10

    ■14
    わたしたちは布哇から帰ってきた。
    これも千束の願いだ。なんというか、わたしたちはカルガモの親子のように千束について回っているように見える。尤もこの場合は親が千束と言うことになってしまうからちょっと癪だ。

    暫く閉めていたリコリコは少し埃っぽくて掃除のし甲斐がある。
    布哇でもよく掃除をしていたが、あれの多くは砂埃だった。
    強い風と乾いた空気がそうさせるようだった。

    千束がなにやら再開は厳かであるべきだとかなんだとか言って居ったがよくわからぬ。
    とりあえずゴミ出しに行く。厳かにゴミ出しとはどんなものだろうか。

    外で千束が、もう桜はみたかい? と訊いてくる。
    誰の所為で見られなかったのかね、という棘のある返事をしたかったけれど、厳かにという言葉に乗っかってみた。来年も見られるのだからいいじゃなあいかと言っておいた。

  • 123二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:10:45

    >>122

    そうしたら、千束はまた何か思いついたようで、今日はわたしたちだけのリコリコにします。

    と店内に駆け戻って宣言した。


    よくわからないけど、掃除日和ということにしておいた。

    ただ、千束がこの店を設計したんだと自慢している。ああ、子供の落書きのような家の絵がクルミによって示される。

    確かに大阪城は秀吉が建てたという話があるからそういうものなのだろう。


    わたしが最初にリコリコに来た時に千束が少しいなかったという話になった。

    わたしが店長をリコリスと誤認した話を千束が爆笑を以て迎える。

    名前しか知らされてないから仕方がないだろう。


    公園で千束の活動についても話してくれた。そんな思い出話を店長たちに初めてする。

    ミズキ曰く、千束は分かりづらいと。

  • 124二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:14:35

    >>123

    今はたきな、君は千束の扱いが得意だもんなとクルミが言う。

    千束はやにわウソ泣きをして「わたしはたきな様の奴隷です」としょうもないことをいう。

    わたしの言うことをまったくきかない奴隷なんかあるかい。


    ミズキが千束の泣き顔の話を持ってくる。

    ああ、ウォールナットの護衛失敗のときだ。

    あの泣き顔の写真が印刷されて保存されているのは愉快。そして保存しているのが店長なのが頗る面白い。

    クルミの腕を以てしても印刷物は消せない。


    それから、クルミが旅行鞄の中で失禁していたのではないか? という疑惑が出て来た。

    本当だろうか? 汗だとクルミが言っていたが。


    クルミとミズキは最初から仲が良くってよろしいな、と思った。

  • 125二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:19:28

    >>124

    そういえば千束とわたしは、DAに行ったときから仲良くなったように思えると言われた。

    DAで何があったのかい? とも訊かれた。

    それは……内証だ。噴水はリコリスだけのものだというらしい。そうだ。あの噴水の時の話は忌の際にでも教えてやるか。


    あれからわたしが千束化したという不名誉なレッテルが貼られる。

    慌てて否定するが、しきれなかった。水族館のことを持ち出されて……。

    でも不思議とやったことを後悔はしなかった。


    ああそういえば千束にわたしの下着を捨てられてしまった話をした。

    千束も履いていて案外気に入ったらしい。


    ああ、人工心臓を隠していた話に移った。

    確かに言う機会も中々ないよなあとも思う。

    ただ、鼓動がないのは狙撃に向いているなあと言ったら、抜群の成績だったと知る。


    たきなは女なのだから触らせてやればよいだろうとクルミは言う。

    千束だけは女同士でも触れられたくなかったらしい。

    それは済まないことをした。

    しかし、耳を胸につけたことに関してはみんなに驚かれてしまった。

  • 126二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:22:02

    >>125

    掃除の分担の話になった。

    当番は公平に分担するのが仲間ってもんだと千束は言う。

    ほうもう一度いい給え。

    不正じゃんけんについての釈明を求める。謝ってくれたからまあよしとしよう。


    千束のじゃんけんの被害者が店長とミズキで、店長はおもちゃを山ほど買わされて、ミズキは遊びに付き合わされたそうだ。


    クルミはわたしに何か被害を与えたようだけど何だったかよく思い出せない。

    ……ああ、あれか。まあよろしい。そんなこともあったな。


    bar forbiddenの話になった。

    店長は千束に隠し事をしていたことを懺悔していたようだ。

    隠し事は苦しいが、それを分け合うのが仲間とか千束が言ってる。


    ははぁ……千束め。いやこればかりは全員だ。例のパフェのことだ。

    みんなわたしのパフェについて隠し事をしていたではないか。


    知らないことがいいこともあるだろうと千束が主張を翻す。

    美味しかったらしいがもうやらないからな。


    千束が注射を怖がってた話をお返しにばらしておいた。

    隠し事はしないことにするのでしょう?

  • 127二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:23:07

    >>126

    //記憶とメモを頼りに書いてるから大分抜けてると思う……

  • 128二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 00:11:25

    おおアフパまで来た

  • 129二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 08:04:23

    幻の14話じゃないか

  • 130二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 12:27:56

    保守保守

  • 131二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 23:39:37

    >>126

    山岸先生から着信が来ていた。千束は一生懸命これを無視しようとしていたが、脱走後にろくに診察を受けてないんだからそろそろ行かせなければなるまいと思って、不本意ながらもお稲荷さんで釣って千束の病院に一緒に行った。

    尻に太い注射をしてもらえ! とミズキは囃し立てて千束は涙ぐんでいる。


    別に注射はなかったので千束喜びミズキは悲しむ。

    今度はあべこべになったようで面白い。


    病院脱走の件についてしこたま山岸先生に叱られたのだが……。あまり効いてないな。

    そういえば山岸先生は自分が雇った看護婦が千束を殺しかけたことを気に病んでいたらしい。

  • 132二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 23:56:25

    >>131

    千束の余命の話はわたしとクルミ以外はみんな知っていたということに少し心がずきりとする。


    そこからわたしたは秘密を持つべきじゃないよという話になって、クルミがみんなの秘密を暴いていた。と言っても大したことではない。店長の下着が赤いらしい。

    衛生の為だろうか。たまに健康の為に赤いものを着るということもあるようだからその所為か?


    そういえば、千束の晴れ着。ミズキが選んだんだということを初めて知った。

    ミズキの趣味はとてもいい。こういう華やかなものを店長が選べないわけでないとも思うがやはり同じ女が選んだ方が良い……とここまで思ってわたしなら選べたのか? という疑問が擡げて、この主題は棄却した。


    ミズキと千束は実に姉妹のようだ。喋り方も雰囲気も。

    だからミズキは千束によく似合うようなものを選べたのだろうな。

  • 133二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 06:54:50

    あれが姉妹なのはわかる

  • 134二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 10:18:45

    ちゃんと自分では選べなそうな自覚あって偉いぞ

  • 135二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 12:22:17

    慎みのあるたきちゃん

  • 136二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 22:16:16

    保守

  • 137二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 23:41:30

    待ってるよぉ

  • 138二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 04:49:16

    円盤出たら補完されるかなって

  • 139二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 16:13:40

    >>132

    クルミとミズキが空港で一緒にいた時の話を聞いた。

    ミズキが一等客車に乗せてもらえなかったのはとても面白い。

    この流れなら乗せてもらえる筈だろうに。

    クルミは足るを知り給えと言っているけれど、きみも知るべきではないかな……。

    店長は足が悪いから二等に乗せてもらっていて、わたしたちは三等だった。


    ああ、空を飛ぶと言えばミズキは免許をたくさん持っているので凄いなと言ったら

    どうやら出来ることがたくさんあるのは良いことだという信念が彼女にはあるらしい。

    わたしはリコリスの殺人許可ものしかないのだと嘆くと、ミズキはそんなものは要らんしもう使うなと慄く。

    仮にもDAの関係者なのにその反応というは、千束の性格を形作るのに本当に影響があったに違いない。


    それから、わたしについて少し誇張と誤解があったようだから訂正しておいた。

    わたしは旧電波塔でそんなに鬼気迫る様子ではなかったと思うのだけど。

    千束がそのように大げさに言い募るからみんな驚いてしまっているじゃないか……。


    クルミなどは千束の回想を聴いてなぜかわたしに恐怖して今までの無礼を詫びていた。

    本気にしないようにと言っておいたけど、多分通じていないな……。


    ただ、千束はわたしのこういう行動を好きと言ってくれる。どう受け取っていいのか分からない。

  • 140二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 16:38:45

    アフパのクルミは本当にビビってたからな

  • 141二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 16:57:44

    >>139

    あと、千束が行方不明になったときのことについてだ。

    クルミが千束を発見した時に、わたしが空港にすっ飛んで行ってしまったことをバラしやがった。

    まあ本当のことだからいいでしょう……。つい先ほど無礼を詫びていないかったか?


    アランのフクロウの飾りを捨てたことについて、クルミが何故か残念にしていた。


    競りに出せば凄い高価になると聞いてミズキの奴が、顔の色を変えていたから、

    「実は拾っておいたんだぜ」と言って揶揄ったらまんまと乗ってきた。

    やはり金の亡者だったな、ミズキという奴は。

  • 142二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 16:58:51

    >>141

    布哇の話に戻る。

    毎日飲み歩いて日焼けを避けるために車の中に閉じこもっていたミズキは千束に糾弾されていた。

    店長に仕入れはしていただろうと守られていた。店長は甘いものだ。


    千束はパソコンを開いて依頼が来ていないか確認する。

    特に来ていないとミズキは思って酒を飲みつづけ、千束はお手洗いに退散する。


    暫くして勝手口の扉が開いたと通知が来た。侵入者かとにわかに気色ばむが、内側から開いているようだ。

    布哇から依頼が来ていて、千束はそこに向かったのではないかとクルミたちは予想する。


    わたしはミズキから車の鍵を取ると、千束の向かった先に行く。

  • 143二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 16:59:25

    >>142

    ……そこは布哇ではない。


    bar forbidden。例の高級バー。

    なぜか千束の奴はこんな回りくどいことをしてみんなを撒いた。

    布哇からの依頼は嘘。千束の仕込み。遅かれ早かれクルミにはバレるだろう。


    なんでこんなところまでわたしを呼んだのかねと訊く。

    いや、これまで振り返って、きみに言ってないことがあることに気づいた。とのことだ。

    何故店で言わぬ。


    みんなの前では恥ずかしいようだった。何を言いたいのか?

    みんなの前では恥ずかしいこと……? まさかまた下着……。いや違うだろう。

  • 144二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 17:02:53

    >>143

    暫く彼女の口が動くのを待つ。無理に急かしたりはせぬ。

    魚が泳いでいるのを暫く横目で捉えて彼女の用意が出来るまでの瞬間をどこか楽しみながら居る。

    後ろの方でピアノが鳴っていて、こんなにゆったりと音楽にだけ耳を傾けたのはいつ振りだろうかと思わず感傷に浸る。

    そういえば、ここに来るときにみんなを一瞬は欺けたというわけだ。

    それぐらいには、わたしたちは成長したのだろうか、なんて。


    「……たきな、助けてくれて、ありがとう」


    いつも口やかましい彼女にしては、なんの修飾も伴わないあっさりとした言葉だった。


    ……? ああ。あれか。ずっと気に病んでいたのか? 別にきみの為じゃない。

    わたしが、きみが死ぬのはいやだ。きみに笑っていてほしかったんだ。きみが助かったならそれでいいじゃないか。

    さて、ここでなんと返すべきだろうか。

    茶化してやろうか? いいや。ここはもっとあっさりと返してやるべきだろう。

    尤もこの気持ちは、たとえ上達したとしても、演欺ではない。


    「どういたしまして」

    と。

  • 145二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 17:04:17

    >>144

    ああそれから千束の肩の傷について書くのを忘れていた。――真島の奴に踏まれて、あとで撃たれてもいたと聞いた。中々訊く機会もなかったら。

    もう大丈夫だそうだ。よかった。

    すると、たきな、きみのはどうだい? と訊かれたから、もうだめです。千束は重すぎると抗した。

    するとあいつ、「千束さんは羽の如く軽かろうが!」と宣う。もうだめだなこいつ。

    いいや、下手に「たきなの心を傷つけてしまったのではないか」と気に病まれてしまっては困るものだから言ってやろう。

    「だから、わたしの傷というのはこの肩にだけある」


    おしまい

  • 146二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 17:13:18

    乙!

  • 147二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 18:12:23

    完走乙
    合理性の追及から千束に出会って人間性を獲得していくたきちゃんが見事に坊ちゃん文体で描かれてた

  • 148二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 19:23:04

    おしまいも坊ちゃんの最後の文章ぽく終わったな
    面白かった!乙

  • 149二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 23:54:13

    ネタで3話しか書いてなかったけどみんなが楽しみにしてくれてるから最後まで書けた。
    ありがとう……。また他のを書く作業に戻るんだ……

  • 150二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 23:58:39

    おつかれ様
    おもしろかったぞ

  • 151二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:00:24

    次は『我輩は栗鼠である』書いてくれるんじゃ……?

  • 152二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:04:05

    >>151

    た、対応します……。

  • 153二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:14:36

    >>152

    本当でも冗談でも別作品でも楽しみにしてます

  • 154二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:19:04
    ふーん、恋人と見るといいんだ……|あにまん掲示板「このアニメって7年連続で放送されてるんだ……。めちゃめちゃ人気ってこと?」bbs.animanch.com

    最近だとこれかな~書いたの

    あとは彼岸花も書いたけどこれはウケなかったな

    たきなに対する好感度47になった千束も書いたな……

  • 155二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 11:43:11

    >>147

    人間性の獲得後は地の文とか描写がどんどん増えていくんだよなこれ

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