- 1二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:12:11
「……」
椅子に座り、カチャカチャとティーカップの中のスプーンを回しながら思案する。
この部屋、旧理科実験室を貸してもらってカフェと会ってから日が長い。
…だが。
私は大してカフェと仲が良いとは言えないだろう。
それもそうだろう、そもそも私はカフェの安らぎの空間の不純物であり、何かと怪しい実験を行っては時にカフェを巻き込むこともある。
少し前に部屋全体を光らせてしまって、ある時にはちょっとした爆発騒ぎで、この前は勝手にカフェのソファーで寝て…
……まぁ端から見れば、というか本人からすればロクでもない事ばかりだろう。
しかも嗜好品すら異なるのだから共通の話題がレース位しかない、なんならそれすら喋ることはないから他愛ない世間話を仕掛ける位しかないがそれすら時にはぶった切られることもあるのだから困ったものだ。
フラワー君やデジタル君が好意的に接してくれているようにカフェにも友好的に過ごしたいが、まぁそもそも毛嫌いされている身だし何より……
「…そうだね…ふふっ」
…私より『お友だち』の方にカフェは微笑みを見せる。
まぁ好感度の差からして当然の話だ、私が優先されることは無いだろう。
今、カフェはカフェのスペースにあるソファーに居るから距離が離れてる分今のところは視線に気付かれてないが、気付いた瞬間仏頂面に戻るどころか、「…何か?」とか言って少し機嫌が下がるに違いない。
別にその事に文句はないのだが、ただ……
「…はぁ……」
少し寂しかったりもする。
構われないことには慣れているが、実質的なシェアハウスすらしてる仲の人間にここまで相手にされないと脈なしなんてものではないのだろう。
…それに、カフェは『お友だち』の方にご熱心なようだし。 - 2二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:12:42
「私なんかどうでも良いんだろうねぇ……」
ボソ…とカフェに聞こえないレベルで呟く。
元々カフェが私の友人だったわけでもない。
友人と思われるような行動を取れてないし取ってもいない。実際友人と紹介すればかなーり嫌な顔をする。
そしてカフェは『お友だち』とは元々仲が良い。
そう、アグネスタキオンとマンハッタンカフェのこの関係は自然なことだ。
なのに。
何故私は、カフェを『取られた』と思ってしまうのだろうか。
「ははっ……」
バレないように声を押し殺しつつ乾いた笑いを出す。
嫉妬だ。
醜すぎる感情。
やり場のない感情を逃がすかのようにスプーンでカチャカチャ激しくかき混ぜる。
これすら気取られようものなら本格的にカフェとの距離は縮まらない、いやもう手遅れなんじゃないのか、そもそも『お友だち』が私とカフェの壁になってるんじゃ、違うだろうあくまで私の行動を嫌っているだけだ責任転嫁はよせ。
「………」
思考が纏まらない、ぐちゃぐちゃだ。
まさかただ気になったウマ娘一人のために気が狂いそうになるとは思いもしてなかった。
いや、これは『お友だち』のせいじゃないのか?
「………」 - 3二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:13:17
そんなことに考えを巡らせていると冷めてきたせいか紅茶の底に再結晶した砂糖が溜まっていく。
いつの間にかすぐ真横にいるカフェに気付けなかったのは、私がこんな状態だからだろうか。
「あの……」
「うわぁ!?」
驚いて椅子ごと後ろに倒れそうになる。
そんな私を見てカフェは怪しげなものを見る目で見てくる。
「さっきからずっと唸って……また何を企んでいるんですか?」
「ああいや!?なんでもないさ!」
慌てて体勢を立て直す、危ないところだった。
「そうですか…あまり変なことは止めてくださいね……」
「少なくとも今はしてないよ」
「今じゃなくてもです」
目の前にカフェがいる。すぐにでも手が届く距離。いつまでも届かなくて『お友だち』に時間を割かれていくという私の嫉妬心は理性という歯止めを効かなくしていく。
気付けば、私はカフェに腕を回し抱き寄せていた。
「なっ…何を……!?」
「いや…私が一人寂しくティータイムをしているというのに、カフェは『二人』で談笑か、良いものだねぇと思ってね」
自分でもよく分からないことを口に出している気がするが今さら止めることなど出来るか。正直理屈などどうでもいい。
「私にも構ってくれないと拗ねるぞ?ほ~ら~」
「何を、言ってるんですか…!」 - 4二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:13:36
しれ~っとソファーの方にじりじりと移動していく。
そのままソファーに押し倒し自由は与えない。
「…ちなみに、今『お友だち』はいるのかい?」
「…ちょうどさっきどこかに行きました」
都合が良かったような悪いような。
「そうかい。どうせなら…見せつけてやろうと思ったのに」
私を差し置いてカフェに一番距離が近い、『アイツ』に。
「何故…!?」
押さえつけた腕がジタバタと抵抗するがそんなの許すほど今の私は優しくはない。
当然というべきか、私のことをカフェが睨み付ける。
「ククッ…たまらないねぇ……」
その怒りの目線すら今は愛おしい。
長い間お預けを食らっていたんだ。
私の嫉妬の炎は、止まることを知らない。
おわり。 - 5二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:16:33
envyということはLustとかgreedもあるんですか
- 6二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:21:29
ご想像にお任せします…!
- 7二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:39:33
私が原因だとかお友だちのせいにするなとか理性で押さえつけてたのにどんどん私を差し置いてとか言い出すのじわじわ嫉妬と欲望が爆発してってるみたいで良い…
- 8二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 22:54:07
時にはタキオン攻めも…アリだな……
- 9二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:08:57
激情家なタキオンすき
- 10二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:18:19
- 11二次元好きの匿名さん23/04/02(日) 23:59:06
あんまり感情を深く考えないタキオンがドロドロしだすの良いな…この倒錯的な感情はどうなるのやら
- 12二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:02:11
- 13二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 00:54:17
ありがとう!楽しんで貰えたなら幸いです、またいつか書いていきたいと思います
- 14二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 09:22:18
清涼感たっぷりな前作に比べてかなりタキオンが重馬場になってて笑う