【SS】暴れん坊将軍U『義賊忍迅大暴れ』

1第五園長21/11/22(月) 04:59:20

毎日投稿5日目です。ねむい…

2第五園長21/11/22(月) 05:00:19

暴れん坊将軍U

「義賊忍迅大暴れ」

3第五園長21/11/22(月) 05:01:10

勧善懲悪・悪人成敗・御仕置候…。いつの時代も人に愛される物語は存在する。それはもちろんこの江戸にも……

「忍迅（にんじん）？誰だそれは」
「新さん知らないのかい！？今、江戸で大人気の小説の主人公ですよ！」
「ある時は忍び、またある時はお侍、そして今は商人だとか。その真の顔は誰も知らない、知られちゃいけないとさ」
「うちの妹もすっかりハマっちまってさぁ。貸本屋はまだか、まだかって毎日うるせぇんですよ」
「ああ、紙は貴重だからな。町民なら貸本を読むしかないのか」
「なんだい、新さんもお侍の端くれなんだねぇ…。
所詮アタシらにゃ、ちり紙がお似合いさ」
「まぁそう僻むな。それで女将さん、この忍迅の本がどうしたのだ？」
「そうだそうだ。お前さん、この本を西町の長屋に持ってってくれよ。読み終わったら貸す約束をしててね」
「えー俺ですかい？アイタタタ…、急に腹が痛くなってきやした……」
「どうせ暇してんだろう！いいから行ってきな！」
「まぁ待て。せっかくだ、俺が行ってこよう」
「へへへ、新さんありがとよ」
「悪いねぇ新さん」
「よいよい、では行ってくる」

4第五園長21/11/22(月) 05:02:05

「ここかが西町の長屋か…」
「あー！誰だオマエ！さては盗人か！？それとも辻斬りか！？よーし、アタシが相手だー！！」
「はっはっは、俺は貧乏旗本の三男坊・徳田新之助。盗人でも辻斬りでもないよ」
「おおー！アタシはビコーペガサス！！
お上に変わってこの街を守ってるんだ！
よろしくな！徳田新之助！！」
「おお、これは心強い味方だな」
ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞﾗ…
「ビコー、お客さんか？」
「トレーナー！徳田新之助が来たぞ！！」
「え、誰…？」
「やぁ御仁、俺は徳田新之助。め組の女将に頼まれて、この忍迅の本を持ってきた」
「忍迅！それを先に言え！それはアタシのだ！！」
「金は俺が出してるんだけどな…。まぁ良いや、奥で読んどいで」
「応！アタシもいつか忍迅みたいな英雄になるんだ！！」
「狭い場所ですが、お茶でも出しましょう。此方へどうぞ」
「いや、それには及ばんよ」

5第五園長21/11/22(月) 05:02:30

「おやトレーナーさん、客かい？」
「ああ大家さん、この方がビコーに忍迅の本を持ってきてくれたんですよ」
「おお、後でワシも読ませてもらおうかの」
「ははっ、構いませんよ。それより家賃の方は…」
「仕方ないのぉ…、10日だけ待ってやるわい」
「すいません本当に…」
「何、困った時は助け合いよ。ではの」

「気のいいご老体だな」
「ええ、本当に良い人ですよ」

「それで、主（あるじ）よ。金はまだなのか？」
「申し訳ございません。どうか、どうか今しばらくお待ちを」
「のう主よ、儂が誰かわかるか？」
「はい、大名貸の北森長右衛門（きたもりおさえもん）様でございます」
「そうじゃ、儂は大名貸じゃ。そして今まで、貸した金は全て取り立ててきた。その意味がわかるか？」
「はい、もちろんにございます」
（強欲ジジイが…、何食わぬ顔で法外な利子をつけおって……！）
「良いか、借りた金は返す。当たり前の事じゃ。では、励めよ」
「はっ、有難きお言葉」

6第五園長21/11/22(月) 05:03:20

「忍迅よ、まさかお前の正体がこんな小娘だったとはな…。今日こそお縄につけ！」
「ふっ、アタシは捕まる訳にはいかない！助けを呼ぶ声が聞こえる。だから、アタシはここで止まる訳には行かないんだ！！」
「言いおるのぅ。この長屋奉行・トレーナーが捕まえてくれるわ！！」

「…何をやってるんじゃ？」
「あ…、大家さん。いやこれはその…」
「決まってるだろ！忍迅ごっこだ！」
「はぁ…、お主も良い歳じゃろう。それがいっちょ前に見栄なぞ切りおって…」
「大家！正義の心がある限り、人はいつだって英雄になれるんだ！！」
「やれやれ、騒がしい奴らじゃ…。ほっほっほ」
（…守らねばな）

7第五園長21/11/22(月) 05:04:18

─翌日─
ﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝ！
「大家！大家はおるか！！」
「こ、これは北森様！どうしてこの様な所に…？」
「決まっておるだろう。貸した金を取り立てにじゃ」
「朝からウルサイなぁー……。誰だオマエ！大家を虐めるな！！」

「儂は大名貸・北森長右衛門。貸した金を取り立てにきた」
「貸した金…。まさか大家さん、いつぞやの火災の後に長屋を直したのは…」
「そうじゃ、この方から借りたお金じゃ。まさかお主らから取る訳にもいかんじゃろ」　
「つまりこの長屋は儂の物じゃ。わかったら金を出せ！なければ出ていけ！！」
「しかし北森様、昨日にまだ待ってていただけると仰ったではありませんか！」
「気が変わったのだ、まさか儂に意見する気か？」
「いえ、決してその様な事は…」

8第五園長21/11/22(月) 05:13:06

「今日はなんとか帰ってもらったけど…、どうするんです？大家さん」
「心配ない、工面はつける」
「自分たちもいくらか出しますよ…、困った時はお互い様なんでしょう？」
「ううむ…、しかしな…。あの火事はお主らが越してくる前の、ボヤが原因じゃし…」
「よくわからないけど心配するな！アタシがなんとかしてやる！！この忍迅がな！」　
「ほほっ、可愛らしいのぉ…」
（忍迅、か……）

9第五園長21/11/22(月) 05:21:26

──その夜
大名貸・北森宅天井裏─

「スリからは足を洗ったのじゃがな…。許せよ」
…………
「はっはっは、上手く行ったわ…」
（何の話だ…？）
「手勢の者にボヤを起こさせ、家屋を修繕しようとする者に金を貸し、後から高額の利子をかける。ここまて上手くいくとはな…」
（こやつ……！）ｷﾞﾘｨｯ
「曲者か！？」
ﾄﾞｽｯ　ﾄﾞｽｯ　
「鼠か何かか…」

「はっはっは、はっはっはっはっ…
まっこと、酒が上手いわい！」
「申し上げます！」
「何だ！後にしろ！！」
「義賊・忍迅を名乗る者が街で小判をバラまいております！！我らの千両箱からです！」
「何ィ！？」

10第五園長21/11/22(月) 05:28:50

「追手は差し向けておりますが捕まるかは…」
「お…の…れェェい！その忍迅とやらを我が元に連れてまいれ！そっ首落としてくれるわ！！」

─翌日─
「なぁ知ってるか、昨日義賊・忍迅が現れたってよ」
「はぁ？ありゃ小説だろう？」
「それがよ、昨日の夜に街中で小判をバラまいてたとよ。あの大名貸・北森が集めてた小判を」
「はー、そんな事がねぇ…。悪どい商売してやがったからなぁ」
「へへっ、今晩が楽しみだぜ」

11第五園長21/11/22(月) 05:48:43

─その夜、北森邸・屋根上─

（よし、これで…）

ﾄﾞｼｭｯ

「う……、この矢は」

「鼠がぁ…！許さんぞ！！」

（あれは、代官・高内文次（たかうちもんじ））

「そう、か…。お前が揉み消していたのか…」

「ほっほっほ。今更気づいても遅いわい」

「北森長右衛門…！」

「様をつけんか鼠風情が！！にしても、忍迅があの長屋の大家だったとはなぁ…」

「く……！」

「まぁ金は取り返せばよい。お主にやった様にな。そうだな、とりあえずボヤを起こすか」　

「おい、あ奴を中庭に引きずり下ろせ」

ﾄﾞｼｬｯ

「ぐぅ…」

「そうだな、お主には煮え湯を飲まされた。ふむ…、。ボヤの途中で長屋の住人たちが焼け死んでも、何も可笑しくはないな…」

「や、やめろ…」

「「はーはっはっは、はーはっはっはっはっ」」

「下衆共が…」

「何奴！？」

ｼﾞｬﾘｯ…

「般若の面…？貴様ら、何のつもりだ！」

「我ら忍迅、貴様らに裁きを下す」

ｼｭﾙ……

「代官・高内！余の顔を見忘れたか！！」

ｶｰﾝｯ

12第五園長21/11/22(月) 05:57:27

「自らの欲望の為に街を燃やし、心の臓まで真黒（まくろ）に堕ちた大名貸・北森長右衛門！
其れと結託し、遂には民に刃を向けた代官・高内文次！断じて許せるものではない！！」
「潔く腹を切れぃ！」

「上様が、この様な場所に現れる筈がない…」
「者共！こやつは上様を騙る不届き者じゃ！であえ！であえ！」
ﾄﾞﾀﾄﾞﾀﾄﾞﾀ

ｽﾗｧ…
ﾁｬｷｯ
「半蔵！おその！」
「「ハッ！」」

13第五園長21/11/22(月) 06:00:46

ﾃﾞｰﾝﾃﾞｰﾝﾃﾞｰﾝ

【作業用BGM】◎良音質◎　暴れん坊将軍　殺陣のテーマ

「来るなー！来るなー！」

ｻﾞｼｭｯ

「さ、こちらに」

「あ、ああ…」

「残るは貴様のみぞ！高内！」

「ぬぁァァァ！！」

ｷﾝ！　ｶﾞｯ！

「成敗！」

ﾄﾞｼｭｯ

ﾁｬｯ　ｷﾝ

14第五園長21/11/22(月) 06:05:42

「まさか上様であらせられたとは…、ご無礼、腹を切ってお詫びしたく」
「やめよ」

「お主、スリであったか」
「はい、人の道を外れた行いをしておりましたが、殺しだけは出来ず…」
「もうよいのだ、面を上げよ」

15第五園長21/11/22(月) 06:12:46

「貴様はこのまま長屋の大家に戻るのだ。
義賊・忍迅は、現し世にいてはならんのだ」
「はっ、しかとこの胸に刻みました」

─翌朝─
「あー！大家！どこ行ってたんだ！探したぞ！！」
「探して、くれたのかい」
「当たり前だ！忍迅は誰も見捨てなかった！アタシもだ！！それが英雄だ！！」
（ああ、やはり儂は忍迅にはなれない）
「ありがとう、ありがとう……」
「大家、泣いているのか？」
「歳を取ると、涙脆くなってなぁ…」
「泣いている誰かを見逃さないのも、忍迅だ！」
「ああ、お主なら、忍迅にでも何にでもなれるだろうよ…」