- 1二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:22:19
穏やかな気候と舞い散る桜が、過ぎ去っていく季節を感じさせられる。そんな季節の移り変わりは、寂しいような……でも、嬉しいような……よくわからない複雑な気持ちにあたしをさせてくれる。
立ち止まって外を見てみると、太陽はキラキラと輝いている。今走り出したらきっと、凄く気持ちいいんだろうなぁ……。そんな風に思っちゃう。だけど――
「ふぁ〜……」
穏やかすぎるのもちょっと考えものかな。少しだけ眠たくなっちゃった。このままお外を見てると眠っちゃいそう。そうなる前に早く行かなくちゃ。
抱えた荷持を持って歩きだす。あんまり揺らしたくはないけれど、弾む気持ちのせいで荷物も一緒に揺れちゃうみたい。
「〜〜〜〜〜♪」
鼻歌混じりのステップでトレーナー室まで一直線……。なんて、ちょっと浮かれすぎかも。
でも、仕方ないよね。今話題の美味しいプリンがこの中には入ってるんだから。すごく美味しかったって皆言ってるし、これあげたらきっとトレーナーさんも喜ぶだろうなぁ……。ダイヤちゃんにこのプリンに合う紅茶も聞いたから、それも早く試したい。
あの人の笑顔を思い描きながら、一歩一歩を踏みしめて……。気がついたらトレーナー室前に着いていた。
――少しだけ深呼吸。
コンコンコン
「キタサンブラックですっ!トレーナーさん居ますか?」
「うぅん……?あぁ……大丈夫だよ……」
…………眠たそうな声。浮かれた気持ちは少しずつ落ち着いてきて、違う気持ちが生まれてきた。
凄く心配だ……。もしかしてあんまり眠れてないのかな?休ませてあげたいな……。何よりも、眠たいままじゃプリンは楽しめないよね……。
抱えた荷物を見る。……うん、こっちはまた後で楽しめばいいよね!今優先すべきはトレーナーさんを休ませること!お助けキタちゃんの出番だ! - 2二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:22:45
ゆっくりと扉を開けると、やっぱり眠たそうにしているトレーナーさんが、こっちを向いていた。何とか開いてる瞳は今にも閉じそうだ。
「どうしたんだ……キタサン……?何か用事か……?」
「用事……といえばそうですね……。取り敢えずソファに来てくださいっ!」
荷物を後ろに隠しつつソファーに来てもらう。ボンヤリした頭ではあんまり考えられないみたい。ゆっくりと立ち上がって、ゆっくり……ゆっくり……歩きだした。あたしもトレーナーさんに駆け寄り、こけないように少し体を支える。無事にソファーまで辿り着いてからゆっくりと座ってもらう。
ここでトレーナーさんを寝かせて……って、そうだ、プリンを冷蔵庫に入れなきゃ!
「ごめんなさいトレーナーさんっ。少し冷蔵庫借りますね!」
「あぁ……大丈夫だよ……」
トレーナーさんを待たせることを申し訳なく思いながら、急いで荷物を冷蔵庫に入れる。
ごめんね……少しだけ待っててね……。絶対に美味しく食べるからね……。
これで一先ずはよし!トレーナーさんをお休みさせなきゃ!決意があたしを熱くさせる。その気持ちのまま急いでソファーまで歩きだした。
「お待たせしましたっ!」
「うん……」
コクリコクリと船を漕いでいる様子で、もう全然大丈夫ではなさそうだ。いつも頑張ってるもんね……。早く横にしてあげたい……。元気になってもらいたい……。
今にも眠りだしそうなトレーナーさんを、ゆっくり寝かせ……ようとして、大切なことに気づいた。
眠るためには枕とかあったほうがいいよね?でも枕なんてないよ!どうしよう……何か良い方法は……。周りを見渡しても良いものはなさそう……。何より、このままあたしが立ち上がったら、トレーナーさんがそのままソファーで寝ちゃいそう!
困り果てて下を向いたとき、ある考えが思い浮かんだ。これしかない!今にも眠りそうなトレーナーさんをみて覚悟を決める。 - 3二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:23:09
少し力を入れるだけでトレーナーさんは簡単に動かせた。トレーナーさんをあたしの膝に誘導する。そう、膝枕ならそれなりに休めるはず!……はず。本当に休めるのかな……?少し不安になってきた。それともう一つ思ったことがある。
「す、少し恥ずかしいかも……」
やってみて分かった。いつもよりも距離が近い。体温を感じる。くすぐったい。頭がグルグル回ってる。
これでもあたしは女の子だ。膝枕に照れたりだってする。それが、いつもお世話になってるトレーナーさんなんだから尚更だ。
トレーナーさんの顔が乗っている膝が少しずつ暖かくなってきた。頭も何だかポカポカする。何より、膝に乗っかっている重みが、今は心地良かった。
あたしはそうなんだけど……。
「寝ているトレーナーさんは、そんなこと思わないんだろうなぁ……」
何だか、眠っているのが少しだけ憎たらしく思えた。……まぁ、あたしが勝手に思ってるだけだから、トレーナーさんは悪くはない。悪くはないんだけど……。うん、気分の問題だ。
それはそれとして、眠っていると本当に無防備で、今なら何してもバレないんじゃないかと思えるほどだ。……起きない程度に色々触ってみようかな?小さな悪戯心が芽生えてきた。
まずは、少しだけ髪を触ってみる。フムフム……。あはは、意外にサラサラしてる……。こうやって撫でてると、何だかあたしが母さんみたい。そういえば、あたしも母さんに膝枕してもらってたっけ……。すごく温かくて……すごく安心できて……。
小さい頃を思い出して、少しだけ胸がジ〜ンとしてきた。こんな風に懐かしいって思えるのも、あたしが成長からなんだよね。成長しているのもトレーナーさんのお陰ですよ。……なんて。
「これは起きてるときにしっかりと伝えなきゃね」
「すぅ……すぅ……」
そう呟いても声は返ってこない。改めてトレーナーさんを見てみた。スヤスヤと眠っていて起きそうもない。えへへ……まだまだ触れそうかも。 - 4二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:23:35
次はほっぺたを触ってみた。ツンツン……。う~ん……ダイヤちゃんみたいなスベスベな感じではない。でも何でだろう?安心するというか……。もっと触っていたいというか……。えへへ、ツンツン……!
ほっぺたで遊んでいたら、何となく目についた唇。乾燥してるのかな?少しカサカサしてる。……くちびる。触ってみたらどんな感じなのかな?気になってきた。恐る恐る触ってみる。……ちょっと柔らかい?皆こんなものなのかな?何となく、長く触る気にはならなかった。
唇から指を離して、触った指を見つめる。何となくその指をあたしの唇へと近づけてみた。徐々に近づいていく指と唇。もう少しで触れ合う。触れ合う……。触れ合ったらどうなるの?かんせ……。
その思考に至る寸前で正気に戻れた。鼓動が大きくてうるさい。
「な、何やってるんだろう……!ダメだよね、うん……!」
全身が熱くなってきた。おかしいな?今は春だよ?何でかな?
そんな気持ちを誤魔化したくて、トレーナーさんの顔を深く見ることにした。深く観察してると目元に隈があることに気づいた。
それを見て、さっきまでの全身の熱さはゆっくりと冷えてくる。最近しっかり寝たのはいつなんだろう?いつも働いてる姿しか見ていない。いつだってあたしを支えてくれる。でもトレーナーさんは?頑張ることで恩を返せているとは思うけど、体の疲れは溜まっていく。それを解消する場所はどこなのかな?そう考えると胸の中が痛んだ。
そうだ、元々休ませたくて膝枕してるんだ。遊んでる場合じゃない。ほっぺたを叩いて気合いを入れる。よし!癒やしてあげなきゃ!
「元気になりますように……!」
ナデナデ……もっとトレーナーさんが休めますように……!想いを込めて髪を撫でていく。大丈夫、想いはきっと届くから。しっかりと休めますように……。 - 5二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:23:56
とはいえ、トレーナーさんが寝不足になる前に、これから何か出来ることってあるかな?う~ん……。これは大切なことだから、しっかりと考えなきゃね!じっくり考えて見つけた結論。
そうだ!マッサージだ!体が解れれば深く眠れるようになるはずだ。そしたら寝不足もきっと解消されるはず!寝てるときにはやるのは良くないし……。トレーナーさんが起きたら話してみよう。そう思うと燃えてきた!頑張るぞあたし!
そんな決意を胸にしながら窓を見てみると、太陽の光が入ってきてすごくポカポカしている。やっぱり風も穏やかだ。凪いだ風は心地良くて、心まで穏やかにしてくれる。本当に……ここち……よくて……。
「ふわぁ〜……」
あれっ……?このままじゃ……あたしも……ねむっちゃいそうだ……。だめだめ……あたしがやすませるってきめたんだ……。このまま……ねちゃ……だめ……。
………………
…………
…… - 6二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:24:18
「キタちゃん……紅茶の淹れ方分かってるかな……?」
寮を急いで飛び出した親友を心配して、キタちゃんが向かったであろうトレーナー室に急ぐ。こうと決めたら即断即決。それが良いところだけど……。
紅茶の淹れ方を簡単にまとめた紙をもって私は歩く。
「心配し過ぎなのかな……?」
それでも、失敗して悲しむキタちゃんは見たくない。連絡したのに返ってこないから、何かあったのは間違いないはず……。どうか親友が悲しむことが起きていませんように……。心の中で祈りながら早足になった。
「ここだよね……」
トレーナー室前に辿り着いた。やっぱりキタちゃんからの連絡はない。
心配し過ぎだよ、ダイヤちゃん。そんなメッセージがほしい。早く私を安心させて……。どんなに待っても返ってくることはなかった。
ここにいるはずなんだ。ちょっと確認したら帰ろう。少しだけ速くなる鼓動。それを消してしまいたくて扉を叩く。
コンコンコン。
「サトノダイヤモンドです……。キタちゃんいますか……?」
……何も返ってこない。
扉を確認する。鍵は……掛かってない。鍵を閉めずに何処かに行くことなんてあるのかな?もし何処にも行ってないとして、返事がないのは何でなの?悪い考えが思い浮かんでしまう。それを打ち消したくて頭を振る。中を確認しなきゃ……。
ゆっくりと扉を開けると、そこにキタちゃんもキタちゃんのトレーナーさんも見当たらなかった。だけど、少しだけ窓が開いている。もしかしてここから?そんなことない……。きっと何処かに隠れてるんだ。
胸が苦しい。お願い……。ここにいるって声を聞かせて……。不安に押しつぶされそうになったそんなとき、
「すぅ……」
声が聞こえた。誰かいる……!大きくなる心臓の音。不安から逃げ出したくてその方向に駆け出す。そこにいたのは……。 - 7二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:25:13
「「すぅ……すぅ……」」
トレーナーさんを膝枕しながら眠っている可愛らしい親友の姿だった。どちらも穏やかな顔をしていて、とても幸せそうに見えた。その姿はホッとすると同時に少し憎たらしく思えた。
「……私は心配したんだからね。キタちゃん……」
ほっぺたをツンツンしながら言ってみるけど、くすぐったそうにするばかりで起きる様子はない。モチモチしてるほっぺたがまたなんとも憎たらしい。そこがまた可愛いんだから罪だよね。思わず笑顔が溢れた。
風が吹いている。穏やかで気持ちのいい風。それは私の頬を撫でていて、そろそろここから出たほうがいいと告げてるかのようだった。
「そろそろ行かなくちゃ」
持ってきた紙を机の上におく。それと紙が飛ばないように窓は閉めなくちゃ……。音を立てないように、静かに、静かに進む。
聞こえてくる寝息を耳にしながら窓まで辿り着いた。ゆっくりと手を伸ばして窓を閉める。……無いとは思うけど、鍵も閉めなくちゃ。
カチャリ
これで窓も閉まった。後は帰るだけかな。ゆっくりと扉まで進む。
扉を開けてから振り返る。部屋の中は静寂に包まれていて、まるで時が止まっているかのようだった。ここからはふたりの時間だ。
「帰ってきたらお話聞かせてね」
小さく呟いた言葉は部屋の中に溶けて消えていった。返ってきたのは、穏やかに眠っていることを告げている小さな寝息二つ。それにどこか安心してゆっくりと扉を閉めた。 - 8123/04/03(月) 19:32:03
キタちゃんに膝枕してもらいたい(挨拶)
はい、今回は膝枕です。なんで書いたのかは書きたかったからです。エイプリルフール?……何も考えてなくてそのまま過ぎていきました……。ネタが思い浮かばなかったです……。
とはいえ、最近イチャイチャし過ぎな気がしますね……。これはいいのだろうか……?
ダイヤちゃん久しぶりに登場しました。テンションがハッチャケてないダイヤちゃん初めて書いた気がする……。 - 9二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:33:00
夕食前の糖分助かる
- 10二次元好きの匿名さん23/04/03(月) 19:38:17