- 1二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:41:57
- 2二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:42:13
あっ、目もカワイイよね
- 3二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:42:35
燦燦と照りつける太陽
パルデア大陸であれば、爽やかに大地を温めてくれる恵みの源も、この東の地では少々過分な働き者になってしまう。そのおかげか、そのせいか、この国の農業は多少日照り気味であったが、概ね上手くいっていた。
古来より、農業は「天下の大本」とされる国家の最重要課題であり、その運営は天地人が力を合わせてようやく成功するものである。
この地で農業が上手くいっているのは、天に座す太陽の力だけではない。地を流れる川やそこに根ざす人々、とりわけそのリーダーの力によるものが大きかった。 - 4二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:42:50
農業執政官冲鉴は、帝の信任篤く、民衆からの評判も高い政務官であったが、彼自身もまたその信に応えようと誠心をこめて農業執政にあたる好人物であった。
「冲鉴や、此度の河川工事の件、大儀であった。朕の代で大業がなされたことを嬉しく思うぞ。他にも其方の辣腕の行先は山積みじゃ。善きに計らえ。」
「皇恩満極に御座います、陛下。御意のままに。」
一介の執政官に対する帝の言としてはいきすぎとも言えるほど。それが不自然でないほどに彼は実績を積み上げていた。
「陛下の下で農業に汗を流すこと、陛下の子たる民衆のために身を尽くすこと、どれほど身に余る光栄であろうか」
彼はそんなことを本気で考えていた。自宅の窓枠にいつの間にか住み着いていたチリーンの微笑みを見ながら、この地にもっと豊作をもたらす方法を考えていた。 - 5二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:43:17
この広大な世界のどこにでもポケモンは存在する。それはこの東の国でも例外ではなく、街の内外の至るところにその姿を見て取ることができた。
農業執政に携わる彼としては、やはり利益をもたらす水タイプや草タイプと、害をもたらす毒タイプや虫タイプについての研究は優先的な内容だった。
幸い、水タイプのポケモンを使役することによる治水工事は成功をおさめ、すでに利益を生み出している草タイプと同様、一旦の区切りをつけることはできている。
問題は害をもたらす毒と虫。 - 6二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:43:38
如何に彼らを抑え込むかは極めて重要な課題でありながら、思うような成果をあげられていない。いつの間にか彼の自宅の書斎には、毒ポケモンや虫ポケモンについての資料や考察や木簡、竹簡となって山積みになっていた。
昼夜を問わない研究も彼にとっては苦ではなかった。農業指導の後の研究も苦にはならなかった。
それも全ては敬愛する皇帝とその子たる民衆のため、この国の農業の繁栄のため。
「成果の出る可能性のあるものは全て・・・全て書き記さねば・・・」
研究用に捕らえられ、いつの間にか懐いてしまった虫ポケモンたちや毒ポケモンたちが健康を心配するほどに、彼は一身を農業研究に捧げていた。 - 7二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:43:55
なんか始まった
- 8二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:45:04
テンションの違いよ
- 9二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:45:22
ざわざわと木々が苛立っていた日だった。
太陽は相変わらず大地を照らし続け、日照りは晴天から干ばつへと名を変えようとしている。
水ポケモンの力まで借りた大規模な治水工事のおかげで、今のところは大飢饉とまではいかないものの、やはりうっすらとした不安感が民衆の間にも広がっていた。
市井の人々の間でも人望のあった彼、冲鉴はたびたび市中の声を聞きに出ていた。これも農業執政官の仕事かと言われれば、そうではないはずなのだが、農業繁栄のヒントはおもわぬところにあるものだというのが、彼の考えであった。 - 10二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:45:35
結果、彼の手元には街の人々の不満が大小さまざまな形で集まることとなった。いくら優秀な彼とはいえ、その全てを覚えておくことはできない。
そのため彼は不満の声の中でも特に重要度の高い、「皇帝に対する不満」については木簡に記しておくことにした。
敬愛する皇帝が民衆の誹りを受けているなど、彼には慙愧の極みである。自分が解決できることは早めに手を打ち、皇帝への民衆の敬慕の心を取り戻そうというのが、彼の率直な考えだった。 - 11二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:45:52
皇帝の信任篤く、民衆からの人気もある、一介の執政官。
都の高官たちからすれば、面白い存在ではない。嫌がらせに重労職につかせたのに、生き生きと働く者だから、なおおさまりが悪い。
「あの者・・・なんと言ったか、あの若造・・・」
「冲でございますな。なんとも生意気なものでございます。」
「「冲」か、土まみれの田舎者が生意気に。高貴な血筋の我らに比べれば虫けらのようなもの。まさに「冲」ならに「虫」よな。」
「あの者、研究ばかりで家には木簡竹簡が山積しているとか。「冲鉴」から「虫簡」へと改名すればよいのに。」
「読みは変わらず、「チオンジェン」か!言いよるの!はははは!!」 - 12二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:47:56
4倍弱点...
- 13二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:48:40
このレスは削除されています
- 14二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 21:49:28
農業がんばってるヤツがああなるとか尊厳破壊・・・
- 15二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:01:51
若き農業執政官は懸命に努力した。
民衆のため、皇帝のため。
税が重いと言われれば、その税を払って補い得るほどに商いが上手くいくよう知恵を貸し、
仕事がないと言われれば、方々を訪ねて斡旋し、とにかくがむしゃらに走り回った。
日々の政務と研究によって彼自身の健康はすでに失われていたが、そこにさらに粉骨砕身の労働である。見るほどに身はやつれていったが、それでも彼は止まらなかった。自宅の毒ポケモンたちは自らの毒が薬にならないことを何よりも悔やんだ。
そんな折、皇帝が病に倒れたとの報が飛んだ。聞けば毒によるものとのこと。大事を取って、今は医者以外の誰もが近づけないようになっている。皇帝の覚えめでたい冲鉴といえども例外ではなかった。 - 16二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:02:06
不幸はいつもたて続けにやって来る。
皇帝が病床に臥して都の政治機能が混乱しているところに襲い掛かったのは蝗害だった。
パルデアでは一般的なマメバッタ。この東の国では太古の昔から恐れられてきた禍の象徴であった。
農業補助のために配置されたポケモンたちも、圧倒的な数の暴力になすすべなく打ち倒され、そのあとに残ったのはほとんどが口荒らされた無惨な畑のみ。
若き農業執政官がいくら身を粉にしようとも、民衆の不満はもはや止まるはずもない。しかも肝心なときに民衆の指導者たる帝は姿が見えない。
市井の不満はやはり、彼のもとへ集まることとなった。それも、今回の不満は今までのものとは違う。怨嗟にまみれた罵詈雑言。帝への不信。政(まつりごと)への不満。
自宅の木簡竹簡は、ほんの数日の間に書架に入りきらないほどの量になってしまった。 - 17二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:03:07
あれ、これ自宅の書架ってほとんど毒の研究所と帝への不満・・・?
- 18二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:04:11
ヒィ生前のチオ虐だゾクゾクしてきた自分に嫌悪感
いいぞもっとやれ…もう性癖はとっくの昔に歪んでるんだ - 19二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:04:27
チオンジェンSSかぁ〜♡と思って見に来たらなんかすごいのが始まってる
- 20二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:07:05
人生詰んで詰んでやん…
- 21二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:08:32
ツンデツンデ…
- 22二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:13:15
すでに顛末が見える……だがそれがいい……
- 23二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:18:50
皇帝の姿はもう数か月も見えない。
その間の政はみな重臣たちが行っていた。賢帝として、その責を全うしていた皇帝とは比べるべくもないが、それでもどうにか国家機能が成立していたのは流石というべきか。
ただ、彼らはあくまで人間である。
三毒の尽きない人間なのである。
市井には朝廷への不満が渦巻き、皇帝はもはやいないも同然。誰に盛られたのかすらも分からないまま生きているのか死んでいるのかも分からない状態になってしまった。
そうしているうちにも、執政官の自宅の木簡は数を増していく。彼はいつの間にか幽鬼のような風貌に変じていたが。それを気にかける余裕は民衆にはない。
急激にもたらされた大飢饉によって、明日の糧どころか今日の口に塗る糊すら底をついた状況で、彼は自宅の虫ポケモンや毒ポケモンが出す毒液を水の代わりにして喉を潤した。
それが命を削る行為であると分からぬ彼ではない。それでもそうしなければ、その日のうちに命がついえる、そんな毎日を積み重ねてきた結果が、今の彼の風貌だった。
そんな彼が農地の様子を見に行けば、道中で倒れるのも無理はないこと。市井の厚意で畑のそばの小屋に泊めてもらったが、その日のうちに帰ることはできなかった。 - 24二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:20:11
えっ、ここからハッピーエンドになれる保険があるんですか!?
あるんですよね・・・・?
あるって言って・・・・お願い・・・・・ - 25二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:22:51
ハッピーエンド…?そこになければ無いですね
- 26二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:25:08
ハッピーエンドなら閲覧注意なんてつくはずがないんだよなぁ……
- 27二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:26:20
今まで書いてあったことだけでも閲覧注意ものでしょ?だからこっからハッピーエンドだよ
- 28二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:27:53
もうチオンジェンの存在自体がハッピーエンドへの道を閉ざしてるの見事やな…
- 29二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:29:34
ここで一度チオンジェンの図鑑説明を見てみましょう
スカーレット
王の 悪事を 木簡に 記し 処罰された 人の 恨みが 枯葉を まとい ポケモンとなった。
バイオレット
草木の エネルギーを 吸い上げる。 周囲の 森は たちどころに 枯れ果て 田畑は 不作となる。 - 30二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:29:37
最終的に主人公が幸せにしてくれるよ 現代で
え? 今の時代?
チオンジェン生誕の物語ですかね… - 31二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:31:23
えっ このただでさえ苦しい状況からさらにまだ処罰フェイズもやるんですか……?
- 32二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:35:42
「えっ・・・・?」
翌朝目が覚めた彼は看病してくれた老婆から思ってもみなかった言葉を聞いた。
「私らのようなモンが今日まで永らえてこれたのも、全部あのお方の・・・皇帝陛下のおかげさね・・・。陛下が見えんくなった途端に、都はこの荒れ様さ。わたしゃこの国のモンとして、陛下のおそばで過ごせて幸せじゃったよ」
想像だにしていなかった。民衆の不平不満を聞いていくうちに、この国の民はみな陛下を恨んでしまっていると思い込んでしまっていた。違ったのだ。陛下は偉大だったのだ。陛下のご威光は民衆の心を確かに照らしていたのだ。
「書き記さねば・・・」
もはや骨と皮だけになった体を押して、自宅へと急ぐ彼の心には一念のみがあった。
「陛下の偉大さを書き記さねば!民の敬慕の言を書き記さねば!」
そんな思いで自宅へと着いた彼の目に入ってきたのは、大量の木簡を押収していく警吏の者たちと、動かなくなった自宅のポケモンたちだった。
「農業執政官冲鉴よ、貴殿に「皇帝陛下暗殺」の件で、御名(逮捕状)が出ている。大人しくついてきてもらおう。」
「ま、待ってくれ!私は書き記さねばならないのだ!陛下のご威光を・・・・っ・・・・」
後頭部を強打され連行されていく冲鉴。彼を護送する牛車の荷台には大量の木簡が渦を巻いていた。
皇帝への不平不満を彼自身が書き記した木簡が。 - 33二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:36:42
救いは…救いはないんですか…!?
- 34二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:37:47
うわああああ!!!
なんかもう!!もう!!うわああ!! - 35二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:38:12
どうして救われないんですか(電話パオ)
- 36二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:39:05
- 37二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:39:50
はかいこうせん!!!!!!!!!!!!!!
- 38二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:41:23
とまあ、とりあえず、一旦ここまでです。続きはまた・・・
冲鉴の名前はchong jianと言いまして、
冲chongの方は単なる名字ですが、鉴の方は「監督する人」とか「指導者」って意味があります。
それではみなさん、おやすみなさい。 - 39二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:41:59
このレスは削除されています
- 40二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:42:43
ああああいいところで切られた!
とにかくお疲れ様です!!
濃い鬱展開ありがとうございます - 41二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:43:19
チオンジェン愛でて寝よう…ヒン…幸せにするからね…
- 42二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:44:19
- 43二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:50:52
ファンアートしたいけど、なに描けばいいのか分かんねえ!
- 44二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 22:58:45
もしかしてこの人、命をかけて励んでた田畑を枯らして、敬愛してた皇帝の悪評を自分で書いたことになっちゃう?辛すぎない?
- 45二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 23:50:28
面白い…けど、いやーキツイッス…。
- 46二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 23:51:20
このレスは削除されています
- 47二次元好きの匿名さん23/04/05(水) 23:52:43
- 48二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 00:02:03
- 49二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 00:06:32
大作だ…
- 50二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 07:00:59
これは保守しとこ
- 51二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:22:45
彼が再び目を覚ましたとき、両手は後ろ手に縛られて柱に拘束されていた。
傍らには件の木簡が積まれている。
目の前で警吏とおぼしき人物が何かを言っているが、声が小さいのか彼の耳が遠いのか、ほとんど聞き取ることができなかった。
また彼自身も弁明のために口を開いたが、かすれるような息の音だけが出るのみで、もはや彼の喉には務めを果たすだけの力が残っていなかった。
誰にも聞こえない声で彼は、
「書き記す、書き記すのだ、陛下のご威光を書き記すのだ」と何度もつぶやいたが、その声は唇をかすかに震わすのみで、彼自身の耳にすら届くことはない。
万民に好かれる精悍な顔つきが見る影もなく、幽鬼のように落ちくぼんだ目をぎょろりと動かして周囲を見渡せば、そこは地下牢や罪人獄舎ではなく、朝廷の白州(裁判所のようなもの)であり、自身と傍らの積み上げられた木簡の間には、この間研究や日常の世話になった自宅のポケモンたちが冷たくなって横たわっていた。 - 52二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:24:13
悲鳴
そう、悲鳴である。
誰の耳に届かなかったとしても、かすれた音でしかなかったとしても、
その息の音はまさしく悲鳴であった。
やがて、警吏たちの列の奥から重臣たちが数名姿を現した。彼にとっては敬愛する帝を長年支え続けた尊敬する先達であったが、重臣たちにとっては自分たちを差し置いて帝の寵愛を受ける鼻持ちならない若造、それが彼らのいびつな関係性であった。
「秘書(政務を執る者への呼び方)よ、すでに罪状は聞いておるな?これより刑を行う。陛下の寵愛を受ける身でありながら、陛下と朝廷への悪評を書き残すなど背恩忘徳の極致である!それにあきたらず毒虫を飼いならし陛下のお命を狙うとは不届き者め!楽に死せるだけありがたいと思え!!」
重臣はまるでその場の一般警吏たち全員によく聞かせるように声を張り上げた。
真意を隠そうとでもしているような芝居がかった声であった。 - 53二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:35:15
ピィ…
- 54二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:36:27
彼はもう声が出ない。弁明のための声を出すことができない。言葉を紡ぐことができない。
筆をもって書き記すことしかできない。
だが、それも今となっては両手を縛られ、柱にくくりつけられ、処刑を待つのみとなっては不可能なこと。
敬愛する皇帝の暗殺など、自分が考えるはずがない。皇帝への不満を書き連ねたのは民衆の声を政務に反映するためであって、叛意などあるわけがない。
彼はそう叫びたかった。その身が健やかでさえあったなら、その喉が潤ってさえいたなら、間違いなく彼は皇帝への忠心と自身の潔白を訴えているだろう。
それが叶わないことが悔しい。 - 55二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:36:40
皇帝に疑われたまま死んでいくのが口惜しい。民衆の飢饉を解決しないまま死んでいくのが口惜しい。
そしてなにより、
自身の聞いた、民衆の帝への敬慕の念を書き記さぬまま消えていくのが口惜しい。
彼が喋ることができないと判断した重臣の一人がゆっくりと近づき、耳元で囁いた。妙な笑顔だった。
「陛下に疑われたまま死んでいくのが残念かね。ならば安心するといい。
陛下はすでに亡くなっている。混乱を考慮して民衆には伏せているがな。あの世で再び陛下にお仕えするといい。ああ、そうそう、
お主の毒の研究書は実に役に立ったよ。」 - 56二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:44:30
あ…ああああ"あ"あ"あ"
蹴らせろ…その役人に飛び膝蹴りさせろ…!!
お前あくタイプだろう?!なあお前あくタイプだろう 俺は多分格闘だからだいたい4倍ダメージ入るぞ
蹴らせろ俺に蹴らせろぉ…あああ… - 57二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:45:12
助けて民衆…無理?
- 58二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:47:31
勘弁してくれ
俺が厄災になりそうだ - 59二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:52:14
身を包む炎。
自らの四肢が赤黒く焼けていくのをじっと見つめる彼。
毒を喰らっていた影響か、彼の身体はすでに痛みや苦しみを伝えることを辞めている。地獄の炎熱に苦しむことがないのは不幸中の幸いか。
黒炭のようになりながらも眼前の怨敵を睨む。それが彼に残された唯一のできることであった。
痛い。
体は痛くない。心が痛い。
苦しい。
体は苦しくない。心が苦しい。 - 60二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:52:38
傍らに積み上げられた木簡は自らの罪の象徴。皇帝ではなく、他の誰でもなく、自分自身の罪の象徴である。
両の足が炭化し、ボロボロと崩れ始めてもまだ彼の意識はぼんやりと残っていた。せめて命尽きるときまでは、敵を睨もう。
この怨敵の貌を、所業を、網膜に焼き付けよう。
魂に書き記そう。
そう念力を凝らしつつ、ただ一心に、ただ一心に。
彼の身の内に溜まっていた毒はポケモンが生成したものである。人間が起こした火では焼き尽くすには至らなかった。消し炭のようになったかつての農業執政官。
その処刑場には、彼の肉体を形作っていた焼け焦げた肉片と悪臭をまき散らす毒液、毒タイプや虫タイプのポケモンの死骸、そして皇帝の悪評を書き記した木簡だけが残っていた。 - 61二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:55:08
静かに…静かに、死んでしまった
- 62二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 08:58:08
はよ復活し………………たらしたで尊厳ぐちゃぐちゃやんけ!どうすりゃええんだこんな…こんな…
- 63二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:00:38
なるほど手足が焼け焦げて落ちてるから這いつくばるカタツムリになるのか
- 64二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:04:04
- 65二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:07:30
農業執政官冲鉴は、民衆の星であった。
そんな彼が無実の罪で捕らえられとあれば民衆は黙ってはいない。
朝廷の正門前に押し掛けた城下の民たちの目に晒されたのは、「秘書冲鉴 皇帝陛下暗殺の罪により火刑に処す」の立て札と筵(むしろ)の上に乱雑に置かれた「炭・毒・木簡」だった。
城下の者たち皆が文字を読めるわけではない。
ただ「冲鉴」という名前だけは、みなが読むことができた。彼が民衆の声を聞くためなんども自己紹介をしてくれていたからである。
その名の書かれた立て札と異臭を放つ焼け炭。
何が起こったのか、想像するには難くなかった。 - 66二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:07:44
失意の中で散り散りに去って行く民衆。その中で小さな子どもが一人残った。
彼もまた冲鉴の世話になっていた者の一人で、幼くして親を亡くした彼にとって冲鉴はかけがけのない存在だった。
彼は朝廷の中で何があったのかを想像するには幼すぎた。ただ何か悲しいことがあったことだけは分かった。
木簡を手に取る。字は読めない。だが、木簡の最後に作者の名前が書かれていないと、ふと思った。
幼子は焼けた炭を毒液で濡らし、木簡の最後に2文字だけ、自分が知っている2文字だけを書き加えた。尊敬する秘所冲鉴の遺作に名前が無いのではあまりに寂しいから。
木簡にはこう記されることになった。
「皇帝の悪逆非道を残す 冲鉴」と。 - 67二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:10:37
違う…優しいけどっ…違うそうじゃない…っ!!
- 68二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:17:21
- 69二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:21:08
死後も尊厳を嬲られる冲鉴さん
えっ?まだ変身フェーズが残ってる?
ははは、そんなバカな。こんなに苦労したんだからハッピーエンドにならないとね。・・・・ね? - 70二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:26:52
- 71二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:31:51
その後の主人公捕獲からの幸せフェイズは無いんですか!?
- 72二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:35:09
処刑された罪人の亡骸や遺物を持ち去ることは重罪となる。
本来なら誰も手をつけるはずなどない。ましてや読めもしない木簡と異臭を放つ毒と炭。持ち去る者などいるはずがないと思われた。
だが、ほんの数日の間に筵の上は空っぽになった。それも彼が生前に民のために身を粉にしていたことを、他ならぬ民自身が分かっていたからであろう。
盛大に弔うことなどできない。いかに人道に則ると言えど、そんな余裕は民草にはなかった。
せめてもの弔いとして民衆は、彼が生前愛した田畑のそばに名もなき墓標を立てて、その霊を慰めることにした。
彼を、いや、彼の亡骸である炭や木簡を畑のそばの堂に埋めたのは、カタツムリが這うような季節の雨の日のことであった。
彼が治水工事を行った風景が一望できる道の傍らに埋められた。いやに土が柔らかい日であった。 - 73二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:41:37
やめてくれよ…
- 74二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:45:01
何が悲しいってここからまだ悪タイプがつく所以となるイベントが残ってることだよ
- 75二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 09:47:01
- 76二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 10:02:16
いや待てよ、この人処刑されるときも「疑われたまま死ぬのがイヤ」とか「飢饉を解決しないままがイヤ」とかだぞ、聖人かな
- 77二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 10:05:26
読みながら自分も描いてたんだけどさ
やべぇよ
チオンジェン本人より自分が怒ってる自覚がある
筆が荒すぎる - 78二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 11:04:47
どれほど深く傷つこうとも自然が歩みを止めはしない。
マメバッタの異常発生によって蝗害にみまわれたこの国も、季節が数度巡れば惨禍は鳴りを潜め、優れた治水によって再び豊年を迎えることができていた。
民衆は役人とは違う時間を生きている。長期間を見通して国家の大事にあたるため比較的ゆったりとした時間を生きる役人に比べて、庶民は毎日の商いに励む忙しく速い時間を生きている。
数年も経てば住む人も変わるもの。いつの間にか秘書冲鉴の墓標の由来を知る者も少なくなってしまった。
彼の堂にはうっそうと草花が茂り、見る者の心を愉しませてくれた。広大な田畑を見渡せるこの場所は、市井の人々にとっては忙しい毎日で濁る心を澄ましてくれる憩いの場でもあった。 - 79二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 11:05:02
彼のことを知る者が少なくなったとはいえ、それでもまだまだ零にはほど遠い。今日も数人の農民たちが、生前の彼の業績を称え、これからの実りを祈って新米を捧げにやって来ていた。
彼のおかげで民衆はささやかな供物をささげることができるほどには余裕ができていた。
民衆の時は速い。再生も早く来てくれていた。
しかし、役人の時は遅い。冲鉴を陥れた重臣は今も変わらず高席に居座り続けていた。 - 80二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 11:05:47
焙烙かよ…つらい…つらいよ…
- 81二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 11:47:31
- 82二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 12:00:11
悲しい・・・
- 83二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 12:05:00
わざわざ封印されるだけのナニカが起きるんだよな…
- 84二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:11:06
冲鉴が亡くなってから数年、このところ豊作が続いていた。
豊年は本来喜ぶべきことである。古今東西の慶事の祭りに豊作祈願が込められていることからもそれは伺える。遠いパルデアの地においてもオリーブの豊作を願う様々な祭りが催されている。
人間だけでなく、共に暮らすポケモンたちにとっても豊年は喜ばしい。
しかし熟練の農家たちは少し違和感を持ち始めてもいた。農業とは大地の力の一部を拝借する行為に他ならない。凶年ならば大地には力が残り次の年の豊年をもたらすし、豊年ならば大地の疲れ次の年の凶作を避けるための努力が必要となる。
それを民草に教え備えさせたのは冲鉴その人だった。
数年続く豊作・・・大地の力がとうの昔に尽き果てていてもおかしくない。
そのはずが田畑には不自然なまでに実りがあふれていた。
不気味な空気感を孕みながらも、田園に吹く風はあくまで爽やかに、都へと抜けていった。 - 85二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:17:41
冲鉴さんの教えが生きている
素晴らしいですね ね? - 86二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:31:27
やったー豊作が続いてるんだー、よかったー(棒)
- 87二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:31:59
- 88二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:34:51
丁寧にフラグが建てられていてすでにおつらい
- 89二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 13:55:25
ある少年がいた。
冲鉴の遺作に名を書き記したあの幼子である。
彼は冲鉴亡きあとも彼を思い毎日のようにこの墓標を訪ねていた。訪ねる人も少なくなった今でも彼は変わらずこの墓標を訪ねていた。
彼は恋をしていた。
ある高級官吏の娘だった。心根の優しく器量の良い娘だった。彼女もまた少年に恋をしていた。
親の目を盗んで街はずれのこの畑、その傍らにあるこの堂の前で落ち会い、青い愛を囁き合う、そんな日々が二人の間に流れていた。
穏やかな空気が辺りには満ちていた。幸せな空気が満ちていた。
土のふくよかな香りが、作物の青々とした匂いが、二人の幼い恋人を包んでいた。
ある時、彼女の父親である高級官吏が政争に敗れ失脚してしまった。それでも彼の家族は残った財をもって慎ましく暮らそうと努めていた。
だが、朝廷の重臣たちは朝廷の内部事情に通じ重臣たちの悪事を多く知る彼らが市井で生きることを許しはしなかった。
少年が墓標の前で見たのは、血まみれで倒れている少女の姿。すでにこと切れている彼女の片手には父親の形見が、もう片方の手には少年が渡した小さな玉の飾りが握りられていた。 - 90二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:05:27
?!玉…勾玉とか言うなよ?!
- 91二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:11:32
野郎またやりやがった…!!
- 92二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:24:12
えっこれツルギもウツワも出てくるの…???
- 93二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:24:41
- 94二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:29:00
地獄がちらついてきてる……やめろー(もっとやれー!)
- 95二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 14:29:27
- 96二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 15:30:48
失意に沈む少年。
彼を追い詰めるように、天からは雨粒が降り落ちてきた。奇しくも「彼」が埋められた日のような雨であった。
しとしとしと
しとしとしと
雨粒が地面を叩く音も聞こえないほどに少年は悲嘆にくれた。日々の疲れを癒し、心の濁りを澄ましてくれる、あの愛しい娘はもういない。自分の腕の中で血にまみれて冷たくなっている。
その血も雨で洗われて地面にに染み込んで消えていく。彼女が、彼女であったものが消えていく。
少年はとてつもない喪失感に駆られ大きく叫んだ。
叫んでしまった。
叫び声で自らの耳を覆ってしまった。雨が降っていなければ、泣き叫んでいなければ・・・
背後から近づく刺客にも気付けただろうに。朝廷の悪事を知り得る者、近しい者も皆殺しにするため、重臣は刺客を放っていた。
非道の一閃に倒れつつも、すぐには息絶えなかったのは刺客の腕が鈍かったからだろうか。少年は愛しい少女の亡骸を抱いて這って進む。どこにも行くところなどない。せめて尊敬する人の墓標で、愛しい人を抱いて眠りにつきたい。それだけが少年の願いであった。
命門(背骨の急所)を貫かれたためか、四肢が動かない。虫のように這って名もなき墓標にすがりつく。やがて静かにその命の灯も消えていった。
しとしとしと
少年と少女の血は雨とともに地面の底へと吸い込まれていった。 - 97二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 15:38:06
そのうち本国がチオンジェンの村焼き討ちにしてきそう。まあこっちには準伝説がいるから安泰だけどなガハハ(代償の草木エネルギーから目をそらしながら)
- 98二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 15:42:54
重臣くんさぁ!!!!
- 99二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 15:44:56
「それ」は「彼」ではない。
「それ」は「彼」の腹に溜まった毒液であった。断じて彼ではない。
毒液は非道の業火に焼かれても失われなかった。季節が巡っても消えることはなかった。
「それ」はただそこにあった。
「それ」の上には「彼」が書き記した木簡があった。ただ「ある」だけであった。
「それ」に何かが混じってきた。血であった。それも若い娘の血であった。愛を語り愛を聞く、優しい語り部の血であった。「それ」はその血を受け入れた。
「それ」に何かが混じってきた。血であった。少年の血であった。夢を語り徳を聞く、純朴な語り部の血であった。「それ」はその血を受け入れた。
「それ」は動き出した。真上にあった木簡を纏いながら地中から這い出てきた。周囲には草花が茂っていた。這いずり回るにつれ「それ」はその草花をも身に纏った。
雷が鳴った。稲光が「それ」を照らす。
水たまりに写った自身の姿を「それ」は初めて知得した。草木を纏い地を這うの姿を見た。
何も感じなかった。
「それ」の頭にあるのはただ一念のみ。「それ」はこうつぶやいた。
「カキシルス・・・・」と。 - 100二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 15:49:47
誕生までのオードブルが重すぎるけど、この災厄と封印が残ってんだよな・・・
- 101二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 16:02:46
えっすでに悲劇でお腹いっぱいなんですけどメインディッシュはこれからなんですか!?
- 102二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 16:10:46
- 103二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 16:14:26
やめたげてよぅ…
- 104二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 16:26:07
「それ」が最初に出会ったものは冷たくなって抱き合う若き少年少女であった。
「你们干什么呢?很冷吗?很疼吗?」
「それ」はすでに言葉を失っていた。「それ」が話す言葉は誰にも分からない。誰にも通じない。「それ」はすでに人の言葉を手放していた。無理はない、「それ」は「彼」ではないのだから。
「それ」はあてもなく進んだ。歩く足はない。だから這いずって進んだ。
ポケモンには様々な形のものがいる。足がある者もいればない者もいる。「それ」は足がないことを苦には思わなかった。
「それ」の後ろに目がついていないことは幸いなことであった。自らが通った痕の惨状を目にすることがないのだから。
「それ」は自分がなんなのか分からなかった。だから知りたいと思った。
誰かに聞けば分かると思った。だから「それ」は都へと進んだ。美しい田園風景が広がる道をただただ進んだ。ゆっくりと進んだ。
一度も振り返らずに進んだ。 - 105二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 16:56:48
おっ!これからチオンジェンが都に行ってそのパワーで人々を助けながら交流するほのぼのライフが始まるんだな?
- 106二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:13:23
- 107二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:17:00
- 108二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:26:52
チオンジェンが一番人の心あるという・・・
- 109二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:28:50
- 110二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:31:44
- 111二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 17:33:47
多分この時点ではポケモンとすら思えない異形なんやろな…
- 112二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 18:05:16
鳥肌たった。すげえ
- 113二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:03:02
神絵師たちが集まって来た・・・これでハッピーエンドになれる!
- 114二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:19:40
秘書冲鉴が無辜の罪で処刑されてから数年、彼を陥れた重臣は今も変わらずその高席に居座り続けていた。
酒池肉林の限りを尽くしでっぷりと膨らんだ腹をさすりながら酒をあおる。この酒一つをとっても庶民の生涯の稼ぎですら手が届かない値段である。
彼のもっぱらの悩みは国政に関することではなく、酒の肴が少なくなっていることであった。
政治への不満であれば民衆をあおって帝にぶつけてしまえばいい。当の帝は骨しか残っていないのだから誰も損はしない。
誰も立ち寄らなくなった帝の廟には、高貴な衣に身を包んだ白骨死体が一つだけ無造作に転がっている。
民衆の不満を逸らすはけ口として機能させるためには、すでに死去していることを明かすわけにはいかない。当然葬儀などもってのほかである。
民を愛する賢帝は重臣の奸計に倒れた。この国で最も高貴な者は誰に弔われることもなく、ひっそりと身を腐らせるのみであった。
重臣は傀儡となった側近たちに増税の草案を作れと命令した。まるで怒号のような声であった。度重なる増税にこれまで民が耐えられたのは農業改革による増収のおかげであったが、その恩恵にも限界がある。
いつの間にか民は疲弊し始めていた。
そんなときである。
穀倉地帯から都に至るまでの道の、未収穫及び貯蔵を含むすべての作物が死に絶えたとの報が入ったのは。 - 115二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:22:29
冲鉴の書き記すが「民草からの皇帝の敬慕の念を書き記したい」なのに対して現在のチオンジェンの図鑑説明が>>29なの滅茶苦茶尊厳破壊感あっていいよね何も良くない
- 116二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:24:00
うわあこれ一気に国が滅ぶやつだ
- 117二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:24:11
異形とは何か。
通常とは異なる形を指すのが本来の意味であろうが、実際にはもっとおどろおどろしいものに対して使うことが多い。
見た者に恐怖を与える。それが異形である。
その意味で言えば、「それ」はまさしく異形であった。
都にもポケモンは数多くいる。そのため都に住む者たちはある程度ポケモンに対して見識を備えている。
その彼らが言った。
「あれはポケモンではない。我らの友人では決してない。」と。 - 118二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:32:22
「それ」を見た者たちはみな悲鳴を上げた。逃げ惑った。石を投げつけた。大声で罵った。
「有什么问题呀?别害怕。不要恐怕。请告诉我您们的事情。」
「それ」の声は誰にも聞き取れない。意思の疎通は取れなかった。
「それ」は石を投げつけられ罵倒を浴びせられても逃げようというそぶりを見せなかった。
攻撃を喰らっているのに距離を詰めようとする姿に、対峙した者は得もしれぬ恐怖を感じた。 - 119二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:39:12
- 120二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:47:44
自分が何者なのか知りたかっただけなんだよねカナシイカナシイネ
- 121二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:47:49
台詞の内容が友好的っぽいのが生前の人を感じさせる…
- 122二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:51:34
このレスは削除されています
- 123二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:52:33
多分これ答えが欲しくて聞いてるんじゃなくて無意識のうわ言だよね
- 124二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 19:54:16
ヒィン…筆が止まらん…怒りも収まらん…
- 125二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:01:42
- 126二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:02:41
心配してるだけのただただ優しい人じゃん!!もっと辛いよ!
- 127二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:03:03
- 128二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:07:59
意味が違ったから122は消しました
どちらにせよつらい - 129二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:14:16
「それ」を見た者たちはみな悲鳴を上げた。逃げ惑った。石を投げつけた。大声で罵った。
「有什么问题呀?别害怕。不要恐怕。请告诉我您们的事情。」
「それ」の声は誰にも聞き取れない。意思の疎通は取れなかった。
「それ」は石を投げつけられ罵倒を浴びせられても逃げようというそぶりを見せなかった。
攻撃を喰らっているのに距離を詰めようとする姿に、対峙した者は得もしれぬ恐怖を感じた。
穀倉地帯が壊滅したことにより都の食糧事情は急変していた。すでに都に持ち込んでいた食料だけが頼みの綱であり、その保有量が多い者、つまり税を管理する者だけが明日の糧を気にしない生活を送ることができた。
重臣はこの事態を見ても特になんとも思わなかった。政争に励んでいるころの彼なら何か手を打つこともできただろうが、流れが淀めば腐るのは水も権力も同じこと、長らく続いた絶対権力によってその才気は腐り果てていた。
そんな折、城の高台から城下を見下ろしつつ酒をあおっていた彼は、城下町を進んでくる「それ」を見てしまった。
「それ」との距離はかなりのものであり、肉眼で細部まで見ることは叶わない。
それでも重臣には「それ」がなんなのかすぐにわかった。
いや、正確には「それ」が纏っているものが何なのか、すぐに気づくことができた。見覚えがあったからである。
毒の知識を授けてくれたそれに。何度も手に取ったそれに。
「彼」が書き記した「木簡」に。 - 130二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:15:38
いや待って?Google先生で出てこないってことは、これ書いてる人もしかして自力で中国語書いたってこと・・・?
- 131二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:07:32
- 132二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:07:53
「それ」がどのようにしてやって来たのかは分からない。
衛兵がいる城の中をどう進んで来たのかは分からない。
ただ確かなことは「それ」は今、重臣の前に佇んでいる。
先ほどまで何かを呟いていたようにも見えた「それ」は、押し黙ったように重臣を見つめていた。まるで観察するような視線を送っていた。
でっぷりと肥え太り満足に走ることもできなくなったこの男は、目の前の異形にただただ恐れ、慌て、罵るだけであった。
「それ」にとってこの男は別に憎い仇ではない。「それ」はあの優しい「彼」ではないのだから。ただ他の人間と形が違うと思って観察していた。なぜこんなにも太っているのか、周りの人間はみなやせ細っているのに、なぜ・・・?
知りたい。調べたい。調べたことは・・・・研究したことは・・・忘れないように・・・・
「カキシルス・・・」
「それ」はそう呟きながら男の方へと近づいていった。
「それ」にのしかかられた重臣の男は、耳や目の穴から触手を差し入れられ肉体の内部をかき回される激痛を感じながら絶命した。 - 133二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:13:03
お前が手を汚す必要は無かったのに…
- 134二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:14:40
内部調べないと分からないからね加減とか難しいよねうんうん(白目)
ダレカトメテー! - 135二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:15:53
絶命するまで怨嗟の言葉を並べていたが「それ」に通じる言葉ではなかった。男の遺体の上から下りないまま、「それ」はその場に居座り続けた。
都の中心である城に「それ」がいることによって、城邑の中には雑草の一本すら生えなくなっていた。それだけではなく、すでに収穫を終え地から離れているはずの穀物や作物までもが急速に枯れ果てていった。
一日で都の中には食料がなくなってしまった。「それ」は、「彼」が愛した民衆が飢えを満たすためにお互いの肉を喰らい合う様を眺めながら、何も言わずそこに佇んでいた。
都が滅びるまでにひと月も時は要らなかった。
骨肉を相食むという言葉を現実に体現した修羅の巷となったかつての豊穣の都。
人もポケモンも、生きたものが何もいなくなった都をゆっくりと這いながら、「それ」は知った。
自分が厄災をもたらしたのだと。 - 136二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:16:11
何度もしつこいようだが、「それ」は「彼」ではない。ただ、「彼」の残滓のようなものがあったのは事実である。
その残滓も自らの罪業に蝕まれ、「それ」の中で溶けて消えた。
残ったのは本能のみ。
ようやく「それ」は何かになれた。ポケモンになることができた。
災厄ポケモン チオンジェン
それが後世にて付けられた名である。 - 137二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:17:34
google先生、英語とかフランス語とかは正確なのに日本語とか中国語とかハングルはやたらと誤訳するよね
- 138二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:19:02
最初に地中から出てきたときはたぶん毒タイプだったんだろうけどその毒が強まりすぎてタイプが変わっちゃったんだね
- 139二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:20:26
そろそろ封印フェイズか 自力でパルデアまで行くのかそれとも捕獲されて武器としてパルデアに放り込まれるのか…
- 140二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:22:44
主人公ー!!早くこっちーー!!!
- 141二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:24:07
本編だと宝物だったものがパルデア王国(…とは言ってないんだっけか)に持ち込まれて災厄化→封印、っていう御伽話だったな
このチオさんこの後このままどこかに行くのかはたまた一度木簡として封じられて後にその形でパルデアにやってきてあの祠の中に再封印されるのか - 142二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:26:02
パルデアに行く前からポケモン化してたのか。
- 143二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:28:09
冲鉴 はもう…消えてなくなったも同然なのか
- 144二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:28:35
チオンジェンは何も語らなくなった。時折「カキシルス」とつぶやきはするが、それが何を意味するのか分からない。
チオンジェンは動かなくなった。「彼」が愛した都を背にいつまでもそこに佇んでいた。一体何を待っているのかは分からない。
チオンジェンが長い眠りについたとき、すでに都は多くが崩れ果て、まるで千年の時すら感じさせる有様になっていた。
その身に纏った木簡の文字はかすれてもはや何を書いていたのかは分からない。ただ、題号としてひと際強く書かれていた部分だけは判読することができた。
「皇帝の悪逆非道を残す 冲鉴」
この一文だけが後世に残っていく。特に作者名である「冲鉴」の2字は不思議な塗料を使ったかのように妙な存在感を示していた。 - 145二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:34:33
チオンジェンがその特性すらも鎮めるほどに深く眠りについたとき、その姿は悠久の年月を思わせる木簡の束として行商人の目に写った。
行商人はその後各地を回り、木簡と同様に妙な気配のする宝を集めて、西の地を目指した。
目指すは当時隆盛を誇っていた大パルデア王国である。
木簡は語らない。木簡は動かない。
ただただ牛車に揺られて西へと進む。
その様は奇しくも、「彼」が無実の罪で捕らえられ護送されていくときと、同じ様であった。 - 146二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:39:31
ボディ捨て去っちゃったけど現地調達するか?遺灰と毒液と男女の血液なんて依代よりは自然の産物を依代とした方がよっぽどポケモンっぽいけど
- 147二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:43:24
現地で新しくまとうものを変えるなんて
チオちゃんオシャレさんね あはははは…はぁ - 148二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:45:06
ああ次は授業でやったパルデア王国が滅びる話なのか…
- 149二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:45:32
その地に着いてからの顛末は、我々が良く知る通りである。
チオンジェンは、他の三つの厄災と共に目を覚まし、とてつもない災害をもたらした。
田畑は枯れ果て、山を木を失った。木を失った山は土砂崩れを起こし多くの町々が飲み込まれた。
防風林や防火林が枯れ果てたことにより、火の手が容易に広がる様になり、消火用の水はとても足りなかった。
人々の怨嗟の声が響く。
その様をチオンジェンは見下ろしていた。
何も言わない。
チオンジェンにできることは何もないから。
謝らない。
悪意をもって災害を起こしたのではないのだから。
災害を鎮めるためにやってきたポケモン使いにチオンジェンは久しぶりに話しかけた。
「为什么您们都讨厌我?」
何かを問いかけているようでもあったが、ポケモン使いはそれに応えることはしなかった。
抵抗することもなく、チオンジェンは暗い岩の中へと閉じ込められていった。
その姿を見たポケモン使いは、チオンジェンがどこか安心したような雰囲気を感じ取ったが、それを誰かに伝えることは生涯なかった。 - 150二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:47:13
今のままだとポケモンってより呪物に近そうだしね
- 151二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:50:50
どうして 私を 嫌うの ?
……権力者がやらかしたからです はい
君は悪くないよ…ただ熱心すぎただけなんだ 周りの悪意に気付けなかっただけなんだ - 152二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:50:53
ふう、とりあえずここまでです。明日で終われそうですね。良かった良かった。
絵師さんたち凄いですね。感想もありがとうございます。励みになります。 - 153二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:57:12
今日もチオンジェン愛でて寝よう…
何も心配しなくていいからね… - 154二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:05:05
ポケモンバトルできるのかな 周りの攻撃を弱くするってのもあるし
- 155二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:12:30
誰も傷つけないで済む場所にいって安心するチオンジェンまじで聖者
- 156二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:14:01
クオリティクッソ高いけどこの世の地獄みたいな惨状で草枯れる。
- 157二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:39:27
どうすれば良かったんだろう・・・
- 158二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 22:42:17
お疲れ様ですー!ここまででも超長いし構成もしっかり読み応えすごかった!(語彙)
可愛いとは思っていたが図鑑完成の為になくなく流れ作業で捕獲しちゃったチオンジェン、めっちゃヨシヨシしてぇ…となにかが拓けました感謝です。今度は可愛いチオちゃんとしても描きたくなるなあ
- 159二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 03:54:19
サブロムやってるところだけど四災で最初に迎えに行く子が決定した
- 160二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 07:37:22
これはもう文学よ
- 161二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 08:59:44
暗い岩の中、チオンジェンはただ佇むのみであった。
語りもせず
眠りもせず
ただただそこに佇むのみであった。
とうに消え失せた感情の残滓を弄びながら悠久の時を暗闇の中で独り過ごす。
寂しい
悲しい
暗い
それでもチオンジェンは動かない。
自らに問い、時には答え、また問う。そんな日々を膨大な時間、永遠とも思える時間続けていた。
唯一判読することのできた木簡の題号もいつしかかすれて読めなくなっていたが、チオンジェン自身は暗闇の中でそれを知ることはなかった。 - 162二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 09:08:37
悠久の時を暗闇の中で過ごすチオンジェン。
その期間はすでに「彼」の人生の時間を超え、「少年と少女」の恋の時間を超え、「それ」の時間を超えている。
暗闇の中に佇んでいるとどこからか杭が差し込まれるような痛みがあった。チオンジェンは思わず身悶えた。
杭は8回刺さってきた。その度にチオンジェンは声にならない悲鳴を上げたが、その声は誰の耳にも届くことはなかった。
杭がもたらす痛みは熱を伴ってチオンジェンを苦しめた。
悠久の時は痛みを和らげてはくれなかった。
辛かった。苦しかった。
ある時、ふいに杭が抜けるような感覚があった。もちろん杭は現実として物理的に刺さっていたわけではない。だが、確かに抜けるような感覚があった。
またしばらく経ってもう一本、さらにもう一本と杭が抜けていく感覚があった。
爽快だった。チオンジェンは誰にも分からない言葉で、誰にも聞こえない声でこう呟いた。
「謝謝・・・」と。その声が涙に震えていたとしても、それはチオンジェン自身にも分からないだろう。
非業に包まれたその生のほとんどの時間を暗闇の中で独り過ごしたチオンジェンが、次に感じたもの。
それは「光」であった。 - 163二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:06:04
「光」。そう「光」である。
「彼」が最後に見たのも炎の光であり、書き記したいと思ったのは皇帝の威光という光であった。
「少年と少女」を最後に照らしたのは稲妻の光であった。
どれも鋭い光であった。目を焼くほどの光であった。
しかし、今チオンジェンは感じている光は、暖かく、優しい、パルデアの爽やかな風とともに包み込んでくれる、そんな柔らかい光であった。
少女がいた。
相当な手練れであった。チオンジェンは緊張した。また苛められると思った。だから必死に戦った。周囲の草木に影響を及ぼす暇もなかった。集中した。目の前の少女に集中して戦った。
戦いの中でチオンジェンは、どこか無意識に「楽しい」と感じ始めていた。少女も楽しそうであった。
戦いが終わるとき、チオンジェンは再びこの暗い岩の中に閉じ込められるのが嫌になってた。あの暗い空間に独り残されるのが嫌になっていた。
少女はチオンジェンを受け入れた。
生涯で初めて人間に受け入れられた瞬間であった。 - 164二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:13:37
チオンジェンは少女に受け入れられた後も、少し怯えていた。いつまた草木を枯らす災厄と化すかも分からない。いつまた苛められるかも分からない。
そんな中で少女はチオンジェンにいろいろな風景を見せてくれた。
白銀の雪山、黄金の砂漠、深緑の密林、紺碧の空・・・
そして少女はいつも少し後ろに下がってチオンジェンを見た。
チオンジェンを風景の中に収めるように。
自然の中に居てもいい存在なんだと、語り掛けるように。
少女の仲間たちとも少し打ち解けてきた頃、少女はチオンジェンを学校に連れていくと言った。チオンジェンを見せたい人物がいるのだと言った。
チオンジェンは心配であった。少女のことは信頼してもいいと思っていたが、それでもまた苛められはしないかと恐れていた。
書簡に囲まれた空間で、チオンジェンは少女によってその女性の前に連れ出された。
そしてその女性は言った。
「ウッヒョ―――――――――――――――!!!!!」と。 - 165二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:17:12
いじめ……はしないな
- 166二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:18:07
ああ......
- 167二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:21:01
ウルッと来てたところに突然のウッヒョーで不覚にも笑ってしまった
- 168二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:29:03
「学校に連れていく」「見せたい人物」この二文で分かってたのに!!勢いと温度差で笑っちゃったよ!!
- 169二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:43:48
レホ先空気読め
- 170二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:45:28
お尻可愛いからここまでの文才をぶちかまされるとはこのリハクの目を持ってしてもry
- 171二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 10:50:33
- 172二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 11:32:08
セクハラじゃねーか!!
- 173二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 11:44:51
あの・・・それはもう苛めではないかと・・・
- 174二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 11:59:28
- 175二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 12:08:26
いや舐めるのもアウトだよ
- 176二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 12:13:21
このお話はウッヒョーで完結したの?
もうあとは感想だけで埋めてしまってもいいの? - 177二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 12:14:54
まだ続きます。終わりのときはちゃんと「完」ってつけますね。
- 178二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 12:44:13
女性の執拗な観察から解放されたチオンジェンを連れて、少女は隣町へと移動した。
チオンジェンにとってはあっという間の移動であった。野を駆け、河を跳ぶ喜び。
なぜかチオンジェンは「懐かしい」と感じていた。
あるはずのない記憶。
幼子だった頃の感情が噴き出るようにチオンジェンの中に巡る。「彼」も「彼ら」ももういない。それでもチオンジェンは「懐かしい」と感じていた。
街に降り立った少女は、街の入り口からは少し離れた場所にチオンジェンと仲間たちを連れてきた。野営をするそうだが、少女はそれを「ぴくにっく」というのだとチオンジェンに教えてくれた。
「カキシルス」
もはや言葉を失ったチオンジェンは唯一残ったその単語だけを呟く。そこには少女の優しさを書き記したい気持ちがこもっていたが、少女はにこにこと笑うだけであった。
少女が「ぴくにっく」をすると定めた場所はオリーブの畑が一面に広がる大農園。爽やかな風がチオンジェンを包む。
「・・・・・!」
チオンジェンは何かを言いたい気持ちに駆られた。叫びたい気持ちに駆られた。
「彼」の、「彼ら」の、何かを伝えたい気持ちがあふれて止まらなかった。
「カキシルス」そうつぶやくチオンジェンのそばで少女はにこりと笑って手を引いてくれた。 - 179二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:04:55
食事にしようと少女は告げた。
仲間たちはみな喜んだ。チオンジェンも何か嬉しいことが始まるのだと思った。
チオンジェンは食事というものをしたことがない。
チオンジェン自身は知るべくもないが、「彼」の頃まで遡っても最後に口にしたのは毒ポケモンの出した毒液であった。
みなが楽しみにしている食事というものを、チオンジェンも楽しみにした。その細部まで味わって書き記したいと思っていた。
みな待ちわびる「さんどいっち」とはどんな料理なのかを。 - 180二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:24:25
「さんどいっち」を作る少女の姿をチオンジェンはゆったりと見守った。
野菜を切る姿。バターを塗る姿。
どれもが眩しく美しいと感じていた。
もはや記憶のどこにもない、尊敬する誰かを見ているような気持ちになった。
少女はパンの上に具材を並べ、整え、最後に高々とパンを掲げる。チオンジェンは分かった。これが「さんどいっち」のもっとも肝要な部分なのだと。
少女の手を離れ、下へと飛び込んでいくパン。その落下は優美で勇壮で、美しく雄々しかった。下で待ち受ける具材に力強く叩きつけられ弾むパンはさしずめ人々に受け入れられずに苦しんだあの頃のように・・・少女はそれを上からピンで突き刺し渾然一体の逸品へと昇華させた。散乱する具材、躍動するパン。これが「さんどいっち」なのかチオンジェンは感動した。
「カキシルス・・・」そう、これを書き記そう。優しい少女と雄々しい「さんどいっち」を書き記そう。後世に伝えられるように。みなが少女を思い出せるように。
背に纏った木簡に記された二字、作者である秘書「冲鉴」の二字から、淡い光のようなものが人知れず湧き出でて空へと昇って消えていった。
チオンジェンの背で木簡は、パルデアの大地を駆ける爽やかな風を受け、静かに、穏やかに揺れるのみであった。
~完~ - 181二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:26:40
最後に宇宙に行かなくてよかった
完結お疲れさまです! - 182二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:26:52
これにて完結です。いや楽しかった。これだからSS書きはやめられないですね!
- 183二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:27:10
ハッピーエンドじゃー!!!良かったね!!!
でもね……
躍動する具材とか跳ね飛ぶパンに変なモン見出すなぁ!肝要ちゃいますよそこ! - 184二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:27:56
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- 185二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:28:44
そりゃ毒しか食べたことなくて「料理」自体初めて見るんだったら、そういうものなんだって思うわな・・・w
- 186二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:29:20
よく見たら爆発してたわ どうして???
- 187二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:29:28
散乱する具材、躍動するパン。これが「さんどいっち」なのかチオンジェンは感動した。
待った
待った - 188二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:30:26
最後笑っちまったよ
本当は感動で泣くところじゃないんですか
でも幸せならオッケーです - 189二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:31:43
急にギャグを混ぜるな面白いから!!!!お疲れ様でした!!!
- 190二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:31:45
- 191二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:34:26
爆発サンドイッチでなにもかも持ってかれてる!
木簡の文字が読めない理由が経年劣化だけじゃなくてもう告発文も署名もいらないっていう心情(?)的な理由というのも良いな…不要なものを手放して新しいものを書いていくチオさんいい… - 192二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:35:46
- 193二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:36:56
全 裸 必 須 地 帯 の 人 だ っ た の か
いや過去作も今作も面白かったですいいもん見せてもらった - 194二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:46:51
お前だったのか
いつも愉快なSSを書いてくれていたのは
ありがとうございました 命が救われる
チオンジェン愛でてこよう
サンドイッチちゃんと作るからね…(爆破) - 195二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 13:49:39
農場で始まったチオンジェンの物語、農場を枯らして悲劇を産んだ怪物が最後に農場で仲間と一緒にサンドイッチ()を頬張って終わるの美しすぎる
- 196二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 15:30:47
完結おめでとうございます!
素晴らしい作品をありがとう!
全裸の方も楽しく読んでます!
これからチオンジェンに楽しい思い出が増えるといいな! - 197二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 15:45:12
次はディンルーだね!
- 198二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 15:53:00
さすがにサンドイッチの具材統一はしてない…よな?
- 199二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 18:04:22
麦餅ノ上二具材ヲ乗セ、高々ト麦餅ヲ掲ゲヨ
ソノ後、シタタカニ麦餅ヲタタキツケルコト優美
コレモッテ「サンドイッチ」ト申ス也。 - 200二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 18:08:46
チオンジェンSSスレの完走をここにカキシルス