- 1二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:46:53
昨日の暖かな晴れ模様から一転、今日は朝から小雨が降り注ぐ。春に三日の晴れ無しという言葉があるように、春の天気はころころと移り変わり、気温の寒暖差も激しく、この時期はトレーニングや体調管理も含め、なかなか気を抜けない時期でもある。
特に自分が担当している子、ミスターシービーは自由奔放で、こんな雨の日でも傘もささずに散歩する。初めて、その光景を見たときは驚いたが、彼女の魅力である自由な立ち振る舞いを損なわないためだと知り、今ではすっかり慣れたものだ。
慣れたからこそ、トレーナーとして、雨に濡れて風邪ひくという事態が起きないようにサポートをしなくてはならない。いつものようにタオルや温かい飲みものなど用意しておかないと……などと考えながら、私は窓から見える灰色の雲を見てから、仕事に取り組み始めた。
仕事も終えて、雨に濡れるのお構いなしに散歩しているであろうシービーを迎えるために必要なものを持って、傘をさして外に出る。雨の様子は小雨ではあるが、昨日が晴れていて暖かった分、今日は一段と肌寒く感じる。
この気温差で濡れたままだと、風邪をひきかねないので、急ぎ足で彼女を探しに行った。今回は案外早く見つかり、トレセン学園内の満開に咲いている桜並木に佇んでいるシービーに声をかける。 - 2二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:48:30
「おーい!シービー!」
「ヤッホー、トレーナー」
彼女は私の姿を見つけると、手を挙げて出迎えてくる。桜を見上げていたためか、普段の雨の散歩に比べて、シービーの体はそこまで濡れてはいないことに少し安心したが、やはり雨に打たれたことで服はしっとりとし、髪や服には桜の花びらがついてていた。
シービーを傘の中に入れて、持ってきたタオルをに渡しながら、
「雨の日に桜を見るなんて珍しいね」
そう尋ねると、彼女はお礼を言って、タオルを受け取り、タオルで髪の毛をふきながら答える。
「桜ってさ、綺麗だから、雨の日ではどんな風に映えるのかなって思って見に来たんだよね。うん、雨と共に桜の花びらが散りゆくのは儚げなな風情があって、これはこれで楽しめたかな」
そう言って、桜の木を見ながら微笑むシービーを見て、私もつられて一緒に桜を見る。
確かに言われてみると、桜という花は花びらを散らす様も含めて美しいと言えるだろう。
雨の中で見る桜というのも、シトシトという雨音が聞こえるような光景で、桜の花びらが散る様子はいつもとまた違った趣があり、何だか新鮮な気分になる。
「雨が降ると、桜の散り際が早くなるから残念だと思っていたけど、こんな楽しみ方もあるとは思わなかったよ」
「ははっ、キミも気に入ったんだ。うん、こういう桜の有り様も悪くはないね。それに雨のおかげで、人も鳥たちもいなくて静かだし、いつもより桜をゆっくり眺められた気がするよ」 - 3二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:50:08
そう言いながら、桜の木々に目を向ける彼女の横顔を見ると、まるで一枚の絵のような情景で思わず見惚れてしまう。
「ねえ、キミ、どうしたの?アタシの顔に何かついている?」
私がずっと見ていることに気付いたのか、シービーがこちらを向いて尋ねてきた。我に返った私は慌てて視線を逸らしながら、
「あ、ああ、ごめん。シービーの髪の毛に桜の花びらがついているのが見えたから、取ってあげようと思って……」
そう誤魔化して、彼女の頭についた桜の花びらを取ってあげる。すると、彼女はくすっと笑って、
「へぇ〜、それなら最初から言えばいいのにさ……。でもまぁ、ありがと」
と言った後、くしゅんと、小さなくしゃみをする。
「冷えてきたみたいだし、そろそろ帰ろうか」
「そうだね。今日のところは満足したし、帰ってシャワー浴びたいな。ほら、キミの傘だから、キミがもっと寄らないと濡れちゃうよ」
彼女がそう言うので、肩を寄せ合うようにして、一つの傘の中に二人で入る。
いつものように雨音と二人の足音が響く中、今日は桜の花びらが付いた傘をくるりと回しながら、楽しげな鼻歌を歌う彼女に耳を傾けながら帰路につくのであった。 - 4二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 20:55:16
雨を楽しむシービー書いたつもりが、桜を楽しむ感じになってしまいました。
- 5二次元好きの匿名さん23/04/06(木) 21:05:11