- 1編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:01:45
- 2編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:06:34
設定各種
・世界観
『オリュンポス』と名乗る存在により日本列島を残し人類の生存圏が破壊された世界。
文化などは存続しているものの、全人口は1億人以下にまで減少し絶滅の瀬戸際にある。
侵略者は尖兵として人間を素体とした怪人『ゼラト』を用い、その怪人から世界を守る存在として『サニティーンズ』と呼ばれる少女の部隊が存在する。 - 3編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:07:04
サニティーンズ メンバーまとめ
主人公
名前:一ノ瀬 命(いちのせ みこと)
特徴:つるぺた合法ロリ
真っ黒の死んだジト目で、キレると金色の印が浮かぶ
食べ物の好き嫌いはないが人の好き嫌いは激しい
変身後の名前:イービルアイン
二人目
名前:双葉 伊織
特徴:なんか良い匂いがする、盲目、瞳が澄んでいる
変身後の名前:ブラインドツヴァイ
三人目
名前:大那聡子 (だいなそうこ)
特徴:惨忍な性格、化石発掘が趣味、悪逆無道
変身後の名前:血濡れ八咫烏
四人目
名前:アリシア・ハッピーランド
特徴:長身のモデル体型、炭酸飲料大好き、誰もが見とれるような美貌
変身後の名前:トーテスヌル
五人目
名前:賢瀞 ジュナ
特徴:一日の脳の記憶容量が55分しかない(おバカ)、八咫烏の暴挙を止めるブレーキ、ガタイがめっちゃいい
変身後の名前:メイデンヴェルク - 4編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:08:34
全32話構想。
それでは第11話、開始します。 - 5編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:23:45
初めてのスタジアムライブでのいざこざから数日。
護国組織『社』、その本部ビルに存在する『サニティーンズ』の待機室の住人とすっかり化していた大那 聡子は、起きてからずっと違和感を感じながら過ごしていた。
「そーこちゃんおはよー。みことちゃんもー」
「おう」
「ん」
同じく待機室の住人である命と共に、やってきたジュナに対して挨拶を返しつつも違和感の正体を探り続ける。
「皆オハヨー……あれ、どうしたのソーコ?ウンウン唸ってるけど」
「もしかして、べん……」
「違ェよ血祭りに上げっぞテメェ。いや朝起きてからよ、なーんか違和感が凄ェあるんだわ。それでちっとモヤッてるだけだっての」
聡子の言葉に他の皆も彼女の言う違和感について考え始め──────やがて思い当たったかのように命がそっと手を挙げて、呟く。
「……伊織?」
「……あぁ、そうだよ伊織だ。アイツ毎回ここに一番に来て、俺を叩き起こしてくるんだ。なんで忘れてたんだ?」
「じゃあ、イオリはなんで今日は遅いのかしらネ?」
「そりゃあやっぱり、べ」
「言わせねぇぞジュナテメェコラ」
ジュナにヘッドロックをかましつつ聡子がお仕置きを開始する中、伊織がいない理由について明かしたのは丁度待機室を訪れた護国組織『社』巫女統括官、中島達徳の一言だった。
「伊織は今日休暇だ。……亡くした友人の墓参りでな。皆、そっとしておいてやってくれ」
第11話
二つ葉の庵/cotyledon convent - 6編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:37:41
「墓参りだァ?そりゃこの間も行ってただろうがよ」
聡子がつっけんどんな調子で口を開く。
確かに、伊織は親友でありまた戦友でもあった旧サニティーンズのメンバーの墓参りに行っていた。
かくいう聡子もとある事情からジュナと共に伊織と共に墓参りに行っていたのだから間違いない。
「まあそうなんだが……今回は別の子だ。君らも知ってのことだろうが、旧サニティーンズは伊織を除いて『オリュンポス』の手によって死亡している」
厳島恋、多摩池咲希、九条氷空、そして雪代鞠。
この内多摩池咲希、九条氷空、雪代鞠の三名は遺体を回収出来たものの……厳島恋のみは回収さえも出来なかった。
「伊織は……『ツァール』と名乗る男の手によって……肉体を光に換えられて消滅したと言っていたよ」
親友を殺され、あまつさえその亡骸さえも消し去る所業。
人間を何とも思っていないかのような『オリュンポス』のやり方に、皆は閉口する。
「そして伊織が墓参りに行く相手も……その厳島恋だ。丁度今日が誕生日とのことらしいが」
「何処にあるの?」
「彼女の墓参りなら、今日は止めておいた方がいいが……そうだな。場所は……」
中島は懐から手帳を取り出して、伊織の親友を弔う墓がある場所の名前をゆっくりと述べていく。
その場所は─────。 - 7編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:58:23
「……」
白く大きな教会がほど近くに建っている、西洋宗教式の霊園。
その中にある真新しい墓碑の前で、双葉伊織は親友のために瞑目し暫しの間手を合わせて祈りを捧げていた。
「……今まで来れなくてごめんね、恋ちゃん。他の皆の所にはすぐ行けたんだけど、どうにも踏ん切りがつかなくってさ」
祈りを終え、十字架が彫られた墓碑に触れながら伊織は謝罪する。
と、その背後からおずおずと声が掛けられた。
「あの……もし、お嬢さん」
「はい?何でしょうか」
優しげな声の主は、嗄れ具合から察するに老人だろう。
伊織と同じく、杖を付いている音がした辺り足腰も弱いのかもしれない。
「あ、いや。少し暗い表情をしておられたのでね」
「あ……丁度、墓参りに来ていたので」
「ここのお墓に来たのは初めてかな?まだ年若いだろうに、辛いだろう」
「亡くした時は本当に……でも今は、新しい友達も出来たし、なんとかやっていけてます」
そうか……と老人は少しだけ安堵した声を上げつつ、ふと思い出したように伊織に告げた。
「そうだ君、もし時間があればでいいけど……このあと教会に来ないかい?教会の方で説教……ああ、神父さんのお話を聞くイベントがあるんだがね。一度聞いてみると良いよ」
「はい。ありがとうございます」
「いやいや。年寄りのお節介だよ、そこまで気にしないでくれ」
それじゃあ、と老人の足音がゆっくりと遠ざかっていった後、伊織は恋の墓に向き直ってゆっくりと口を開いた。
「恋ちゃん。今度は新しく出来た友達も連れてくるからね」 - 8編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 21:59:10
dice1d4=4 (4)
1.ツァール
2.ロイ
3.バイアクヘー
4.イタクァ
- 9編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:09:18
伊織と話した後、老人が杖を付きながら教会の扉を開ける。
この老人は毎年毎週、この教会の説教を聞きに訪れていた。
故に、始まる時間も誰がどの席に座っているかもよく見知っていたのだが─────今日は、違った。
「……おや、神父様は?」
「少々野暮用とのことでね」
そこにいたのは、見目麗しい男性的な印象を抱かせるすらりとした体型のショートヘアの女性。
「神父さまのお孫さんかな?いや今日は彼の説教を聞きに来たんだがねぇ」
「あぁ……説教なら、私も出来ますよ」
そう言いながら、女性はゆっくりと老人の元まで歩み寄っていく。
そして、軽く手を伸ばしながら呟いた。
オマエラ
「──────人間は、産まれるべきではなかった」
刹那、老人の頭が華奢な腕によって柘榴のように弾け飛び白い教会を鮮血に染めあげる。
「そうとも。この世界にとって産まれるべきではない異物だよお前らは。だからこそ、早急に刈り取る」
まるで汚らしいものでも扱うのように女性……イタクァは吐き捨て、手を掲げる。
それと共に辺りに飛び散った血肉が彼女の手の上に収束し、形を変え、そして──────。 - 10編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:09:52
では安価のお時間。
今回のゼラトのモチーフ、要素などを下10レスまでお願いします。 - 11二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:11:09
九条氷空
- 12二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:11:22
アリシア
- 13二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:11:33
命
- 14二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:11:53
厳島恋
- 15二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:12:57
多摩池咲希
- 16二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:13:37
ジュナ
- 17二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:14:08
先代サニティーンズの誰かのクローン
- 18二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:15:16
以前採取した遺伝子から作ったコピー
- 19二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:17:00
錆びた釘
- 20二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:17:35
天使を模した石像
- 21編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:18:41
- 22二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:22:00
オオヒキガエル
- 23二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:22:23
前サニティーンズの死体から作ったゼラト
- 24二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:22:49
- 25編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:23:39
- 26編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:24:52
アリシアと
旧サニティーンズの
dice1d3=3 (3)
1.多摩池咲希
2.九条氷空
3.雪代鞠
- 27編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:35:13
『ぁ、ヴい、縺滓律譛ャ隱槭?ョ繝?繧ュ』
血肉がしっかりした形をなし、頭部を形成していく。
金髪の頭と、白い髪を持つ人間の頭を。
背中からはばきぼきと異音を立てながら本来の人間として生えているものとは別に歪に長い腕が生え、腰からはまるで曲刀のような逆関節の足が生えていく。
「……ロイから託されたのは良いが、さほど完成度は高くないか。まあいい、こんな出来でも多少なりとも戦闘はこなせるだろうよ」
『セ縺励※縺翫a縺ァ縺ィ?』
『縺セ縺励※縺翫a縺ァ縺ィ縺』
異形の身体とは裏腹にDNAの提供者─────アリシア・ハッピーランドと雪代鞠と瓜二つの顔をした二つの頭は互いに言葉を交わしながら、ゆっくりと地面を切り刻みながら歩き始めた。 - 28二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:47:35
コワイ!
- 29編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:48:40
一方、その頃。
「ミコト、やっぱり今日行っちゃうの?伊織と鉢合わせるかもだケド」
「ん……でも、行ったほうが良いと思うから」
「まぁ、善は急げっつーしな。俺も他の奴の墓行ったし行くべきかなとは思ってたとこだ」
「もし出会ってもいおりちゃんにしょーかいしてもらえばいいだけだし!!」
「えー、ンー……?そうなのかなァ……?」
命達は、中島にそれとなく釘を刺されたにも関わらず、伊織が向かったという墓参りに自分たちも向かおうとしていた。
「……何より、私達より前に、世界を守るために戦ってた人たち。そんな人たちに顔を見せないなんて、不義理」
「……そうネ。確かにそれはワタシも思った。イイわ、そうと決まったらすぐに行きましょ!!」
「なかじまのおじさんに場所も聞いたからね!!」
「今からなら日が暮れる前に行って戻ってこれるしな」
斯くして命達は、伊織がいると中島から教わった墓地の場所にへと出発したのだった。 - 30編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/07(金) 22:49:31
申し訳ない、今日はここまでです。
合いの手、ハートなどありがとうございました。
また明日も同じ時間帯に始められればと思います。
それでは皆様、お疲れ様でした。 - 31二次元好きの匿名さん23/04/07(金) 22:55:07
おつ
- 32二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 02:07:09
お疲れ様です
- 33編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 11:01:33
21時より開始予定です。
- 34二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 11:40:39
今回はいいけど毬のような同じ旧サニティーンズ因子擦ってもあんまり真新しさがもう無いような……
伊織も乗り越えちゃったし - 35編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 21:00:11
では始めます。
- 36編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 21:15:23
「……よしっ」
別れを惜しんだため少しばかり時間がかかってしまったが、それでも墓参りを終えた伊織はゆっくりと立ち上がって先程会った老人から教えられた説教を聞こうと墓地の近くに建つ教会を目指す。
どんな話が聞けるのだろうか。
そんな思いを胸にしつつ歩を進めていた彼女の鼻腔を、嗅ぎ慣れない匂いが刺激する。
何処となく生臭い、そして同時に鉄の錆びたような芳香を漂わせており──────。
「……ッ!!」
まさか、と最悪の予想が脳裏によぎりつつも伊織は歩みを早めながら匂いの源へと急行する。
そして、一層芳香が強くなったと伊織が感じた刹那。
『繧、繧・繧ヲ繧ァ繧』
カツ、キンという金属質の何かが石畳に突き立てられる音。
「──────変身っ!!」
伊織が変身したのは、全く同時のことであった。 - 37編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 21:39:26
一方その頃。
「ここかー、いおりちゃんいるかな?」
「鉢合わせたら気まずいだろーが。バレねェように行くぞ」
命達は伊織がいるという霊園、その鉄門の前に立っていた。
「お墓の場所、何処?」
「えーと、待ってネ……」
命の問いかけにアリシアが手持ちの端末で目の前の霊園について調べ始める。
「ここの霊園は列ごとにアルファベット順で並べられてて……で、イオリが行ったっていうお墓の場所が……X列目カナ?」
「それって遠い?」
「まあ多少は時間かかるワネ」
「なら、とっとといこうぜ。伊織には悪ィが辛気臭いトコは苦手なんだ……」
そう言いながら、聡子が鉄門に手をかけた瞬間。
斬。と音を立てて聡子の左側、その肩を掠めながら鉄門の奥から門ごと切り飛ばしながら斬撃が飛んでいった。
『……』
「……そーこちゃん、大丈夫?」
「今のが大丈夫なら、テメェ相当節穴だぞ……」
「というかそれどころじゃないヨ、誰か……イオリが戦ってるんだ!!一人じゃ危ない!!」
『変身!!』
内部の異変を感じ取った四人はすぐさま変身し……友を助けるため、鉄火場へと飛び込んでいった。 - 38編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 21:40:01
ゼラト
dice7d100=74 41 11 15 43 12 90 (286)
サニティーンズ
dice10d100=3 7 82 9 10 11 58 70 36 15 (301)
- 39編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 21:55:45
『縺セ縺ッ縺セ縺』
『縺溘?繧?%繧?』
双頭のゼラトはまるで互いの息を合わせるかのように、両足の剣と両手の氷の槍での猛撃を繰り出してじわじわと伊織を追い詰めていた。
元より遠距離戦に特化している能力の伊織、押し切られていないだけ奇跡のようなものである。
だが─────そのぎりぎりの均衡も、崩れ去る時が来る。
戦闘によってひび割れ、陥没した石畳。
その窪みに伊織が足を引っ掛けてバランスを崩す。
「あ、っ……しまっ……!?」
そんな隙を敵が逃すはずもなく、ゼラトは容赦なく二本の槍を少女に向けて撃ち放ち─────。
ガギィィッ!!と耳障りな音を立てて聡子と命によって防がれる。
「無事か、伊織!?」
「さっさとやっつけよー!!」
「聡子ちゃん!?それに皆もなんで!?」
「話は後」
「今はアイツを倒すことが先決!!」
そしてここに、サニティーンズの皆が集った。
「こういう時、名乗りを上げたいよね!!」
「それは分かるけど!!」
「行くぞォ!!」
『おー!!』 - 40編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 22:15:10
まず先手を取ったのは、聡子である。
「オラァッ!」
意気揚々と巨大な金砕棒を振りかざし、一撃にてゼラトを粉砕せしめんと襲いかかった。
『繧峨⊇縺ゅ⊇縺溘』
これに対してゼラトは両手の槍をクロスさせて重い一撃を受け止め、反動で吹き飛ばされながら更に背中に生えた腕からも氷の槍を錬成し4本の鋒をサニティーンズにへと向ける。
「わぁ四刀流!!」
「いや槍だし四刀流とは違うんじゃない?」
「じゃあ四槍流?」
「言ってる場合か!?」
今度は反撃と言わんばかりにゼラトが突進。聡子に向けて4方向からの同時刺突を仕掛けた。
「そーこちゃん危ない!!」
それらの攻撃をジュナが一手に引き受け、巨大な盾で受け切るが、ゼラトは更に槍を地面に突き刺し棒高跳びのように跳躍、盾のない死角、真上方向から聡子とジュナに襲いかかり──────。
「油断大敵!!」
二人の後ろから飛び込んできたアリシアの蹴撃によって攻勢を止められる。
「……!!」
そしてゼラトの背後から音もなく命が忍びより致命の一撃を与えようとするがその瞬間、双頭の片方がぐりんと真後ろを向き、三本の穂先を一斉に彼女へ向けて牽制した。 - 41二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 22:25:23
5人に勝てるわけないだろ!
- 42編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 22:41:13
一進一退、まさに互角。
「奇襲は片方の頭が読んで対応、動きは速えーしやってられるか!」
「というか片方の頭ワタシに似て……というかモロにワタシだし!!」
「どーする?」
「力押しに決まってるだろーがっ!!行くぞジュナ!!」
再度ジュナと共に攻撃を仕掛けに行く聡子。
アリシアもそれに釣られるように動き出したが、ふと歩みを止めてゼラトに付いている自分の頭を見ながら……ゆっくりと口ずさむ。
「─────To ten ta to ta ta ten to 」
『……te n ta to ……?』
アリシアが口ずさむ歌。
まるでそれにつられるかのように、ゼラトの双頭、アリシアに似た頭も歌い始める。
『縺薙%?医?繧翫d縺昴?』
「ten ta to to ta ten to 」
『ta ta to ten ten ta to 」
片方の頭が困惑したように声を上げるが、アリシアとアリシアに似たゼラトの頭部は共鳴し合うように歌を紡ぎ続ける。
それを止めようと、再度片方の頭部が声を上げようとした瞬間─────伊織がさせじと放った光り輝く矢がその喉へと突き刺さるや否や、頭部諸共消し飛ばす。
『◐❖❖◁▽≡'❖!?』
突然のダメージに残る頭部は歌を止め、苦悶の声を上げるが────もう遅い。
悶えるゼラトの背中を命が放った漆黒の鎖が刺し貫き、その身体を引き寄せる。
「これで良い?」
「ナイスだ命。これで心置きなく……全力でぶん殴れる」
その先にいるのは、まるでバッターのように高速回転する金砕棒を構えて立つ聡子。
「いっ、けえええええええええっっっ!!!」
そして、飛んでくるゼラトに向けて全霊のフルスイングを叩き込み、一瞬にして消し飛ばしたのだった。 - 43編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 22:54:13
「……しかし、アリシア。テメェよく思いついたな?歌で動きを止めようだなんてよ」
「エヘ、ワタシ生まれた時から歌が大好きだったし……もしかしたら、ワタシの歌を聞いてくれるカモって思ったんだ」
でも、とアリシアは顎に手をやりながら思案に耽る。
「あの子は敵だったけど……ひょっとしたら分かりあえる世界もあったのカナ、とも思っちゃってネ」
「そうなったらいいね!!」
「うん、私もそう思うよ……と、着いたよ皆」
先頭を歩いていた伊織が立ち止まる。
命が伊織の前にある墓碑を眺めた後、そっと指で触れた。
「大丈夫、無事。傷一つない」
「良かった……!!」
「んじゃ、予定は大幅に狂っちまったが……祈るとするか」
そっと手を合わせ、伊織と共に闘った戦友へ黙祷を捧げる命達。
それを背後から眺めながら、伊織は心の中で恋に告げる。
(見てる、恋ちゃん。私にもこんなに新しい友達が出来たよ。私は、もう大丈夫だから……恋ちゃんはどうか、見守ってて欲しい。恋ちゃんが守りたかった日常は、私達が絶対に守るから!!) - 44編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/08(土) 22:55:32
第11話、これにて終了です。
合いの手、ハートなどありがとうございます。
それではいつものように、明日の昼頃まで次回のサブタイトルを募集させていただきます。
皆様、お付き合いいただきありがとうございました。 - 45二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 23:02:23
舞踏訓練Ⅱ/kentoro juna
- 46二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 23:03:14
六人目の兆し/■■■■■■■■■■■ ■■■
- 47二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 23:12:32
カミサマの第二月曜日/After the Genesis
- 48二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 07:40:52
八咫烏のえじき/Dyna of the Dead
- 49編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 12:40:20
振りまーす
dic1d4= - 50編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 12:40:43
ミス
dice1d4=1 (1)
- 51編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 12:41:08
12話
舞踏訓練Ⅱ/kentoro juna
21時より開始予定です。 - 52二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 13:57:03
ライブを始めとするアイカツに命の謎、オリュンポスの目的や全容
20話くらいあるけどちょっとずつ開示してかないとね
中盤あたりで強化イベや山場だってあると思うし - 53編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:01:05
では時間になったので始めます
- 54編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:15:35
「あのさあ、みことちゃん」
ふと、命に教えられながら宿題を進めていたジュナが何の気無しに呟いた。
「この間さ、変身した時に皆で名乗りたいって言ったじゃん?戦隊ものみたいに」
「ん」
「でさ?またライブとかあった時とかに皆で変身して、口上を言ってみたいなあって」
「……それ、今言う必要あった?」
命の言葉に頭を抱えながらジュナが呻く。
「んー、でもぼく一旦思ったことは言わないとすぐ忘れちゃうからさぁ……それにこの間のライブ、途中で中止しちゃったじゃん?だからまたライブないかなぁってさ……」
確かに、命やジュナが何日もかけて練習し臨んだ本番のコンサートライブは度重なるゼラトの襲撃によって中止に追い込まれてしまった。
正直なところ、不完全燃焼な感じはジュナのみならず命も感じていたのである。
「ライブか?丁度二週間後にあるぞ」
そんな折に光明を見せたのは、丁度待機室を訪れた中島の一言であった。
「ほんと!?」
「ああ。尤もそのライブなんだが─────」
12話
舞踏訓練Ⅱ/kentoro juna - 55編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:30:14
「デパート屋上でのライブ?」
その日の昼。
ビルの一階にある食堂でホットドッグを食べながら伊織がジュナから告げられた内容を反芻する。
「うん。なんかね、この間のライブを見てくれた人からお願い?みたいなのがあったみたいで」
「いつもはヒーローショーをやる場所で、代わりにあの日の続きをやってくれないかって」
ジュナの言葉を継ぎながら命が話を進める。
「……ただ、問題が一つ。そのライブの日、アリシアと聡子は来れない。私達三人だけでのライブになる」
「アリシアちゃんは分かるけど……聡子ちゃんはなんで?」
「なんかね、そーこちゃんは久しぶりに化石が掘りたいから街に戻るって。丁度休み取ったのがライブの日だったんだ」
口の周りをソースで汚しながらナポリタンを啜るジュナ。
その合間合間を縫って、アジフライ定食を食べながら命が彼女の口をティッシュで拭う。
「後は場所。ここから少し遠いらしい」
「新幹線でいくんだって!!」
「新幹線!?」 - 56編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:32:14
命 dice1d100=57 (57)
伊織 dice1d100=18 (18)
ジュナ dice1d100=33 (33)
10以下で……
- 57編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:53:25
そして二週間はアッという間に過ぎ去り……ライブ当日。
新幹線の乗車券を買いに行っている中島を待っていた命とジュナは、予定していた集合時間を15分も過ぎてから息を切らせて走ってくる伊織の姿を見つけてほっと胸を撫で下ろす。
「いおりちゃん!!」
「ご、ごめん……うっかり電車で眠って乗り過ごしちゃって……新幹線はまだ来てないよね!?」
「誰か遅れることを見越して30分前を集合時間しておいて良かったな。ほら、乗車券だ」
慌てたような様子の伊織を落ち着かせようと丁度戻ってきた中島が、彼女の肩に手を置いて四人分の乗車券を持たせる。
「新幹線はまだかな?」
「多分、そろそろ」
プルルルル、プルルルル、と電車が近づいてくることを知らせるメロディーが構内に鳴り響く。
『間もなく、ニ番線に特急いかずち号が停車いたします。黄色い線までお下がりください』
アナウンスと共に銀の車体に黄色い稲妻のようなラインの走った新幹線がホームに停車する。
「新幹線楽しみだなー!!」
「楽しみなのはいいが、はしゃぎすぎるなよ?」
「それじゃ行こう、命ちゃん」
「ん」
こうして、時速五百キロとも呼ばれる日本最速の新幹線『いかずち号』に乗って命達はライブの場所にへと向かうのだった。 - 58編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 21:53:59
dice1d4=4 (4)
1.ツァール
2.ロイ
3.バイアクヘー
4.イタクァ
- 59編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 22:03:41
けたたましい音を立てて走行するいかずち号。
それを、上空より睥睨する影があった。
「……人間め。あのようなものを作るとは趣味が悪い」
そう忌々しげに吐き捨てるのは、鮮紅色に燃え上がる瞳を持つ女性、イタクァ。
「それにこの大気の汚れ方……嗚呼、反吐が出そうだ。ロイやツァールは引き延ばせと言うが、叶うならすぐにでも人類を根絶させてこの星から去りたいよ、私は」
例え己の『仕事』であろうと、無駄に長引かせるのはどうにも嫌いだ、と彼女は独りごちる。
「早々に絶滅させられてはロイ達も不都合なのだろうが……それで感じる必要のない不快を覚えさせられるのは、実に業腹だ」
イタクァが、両手を空に掲げて空間にヒビを入れる。
「故に。少々鬱憤を晴らさせてもらおうか」 - 60編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 22:04:11
ということで安価です。
今回のゼラトのモチーフ、要素などを下10レスまでお願いします。 - 61二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:18:11
アンボイナガイ
- 62二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:21:35
継ぎ接ぎだらけのテディベア
- 63二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:24:18
SL機関車
- 64二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:26:12
アースロプレウラ
- 65二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:27:45
ラフレシア
- 66二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:29:45
ロイ
- 67二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:30:01
バイアクヘー
- 68二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:39:07
注射器
- 69編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/09(日) 22:46:00
- 70二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:55:58
雪鞠以外の旧サニティーンズ
- 71二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 22:58:43
- 72二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:16:15
ヤツメウナギ
- 73二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:45:29
旧サニティーンズの遺族
- 74二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:46:19
バフォメット
- 75二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 23:53:53
マグロ
- 76二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 11:09:26
ほしゅ
もしかしてオリュンポスくん過去の成功体験を何回か反芻すると強いとか思ってない…? - 77編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 11:51:25
振りまーす
dice2d14=5 10 (15)
完成度 dice1d100=42 (42)
- 78編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 11:53:06
ラフレシア
以前採取した遺伝子から作ったコピー
遺伝子提供元は
dice1d4=3 (3)
1.多摩池咲希
2.九条氷空
3.雪代鞠
4.アリシア・ハッピーランド
- 79編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 11:54:17
鞠率クッソ高ーな、オイ。
21時より開始します - 80二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 12:25:31
やっぱオリュンポスくん過去の成功体験を繰り返すタイプじゃん!
- 81編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 21:00:51
では時間になったので開始いたします
- 82編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 21:18:00
「りんご」
「ゴリラ」
「ライフサイクルコスト」
「疼痛性障害」
「市杵島姫命」
「突撃喇叭」
「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・ク……」
『長い!?』
新幹線に乗って30分。早くも飽きが来たジュナは命や伊織も巻き込んでのしりとり遊びをしていた。
「うーん、しりとりも飽きちゃったなぁ。なかじまのおじさん、もうそろそろかな?」
「あー……後15分、ってところだな」
「十五分かぁ……うーんどうしようか」
その前に、と命が話に割り込むと手を上げて提案する。
「喉が乾いた。車内の自販機から買ってくる」
「あ、私もお願いしていい?しりとりで喉乾いちゃった」
命はいくらかの小銭を握りしめると、シートを降りて背後の車両にある自販機に向かうため連結部の自動ドアを開き─────扉の奥から漂ってきた悪臭に普段無表情な顔を思い切り顰めた。
そしてその芳香は瞬く間に車内に充満し。
「くっっさっ!!」
ジュナが思わず放った一言は、その場にいる乗客全員の心の中を端的に表現していた。 - 83編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 21:40:13
車両全体に漂う悪臭。
ものが腐った匂いというか、掃除されてない公衆便所の匂いというか─────とにかく、そういったあまり嗅ぎたくない類のものを数倍に濃くしてそれらを煮詰めたような匂いだ。
そのあまりの悪臭に、扉を開けた命は普段滅多にしないような顔をして、少々えずきながら後部車両に移ることを断念しジュナ達の元まで戻ってきた。
「いや凄い臭い……何これ……?」
「トイレでも詰まったのか?それにしてもこの匂いはキツイな……」
と、前方の車両と繋がるドアが開き、慌ただしい足取りで車掌らしき中年の男が車両を通り過ぎて後部車両へ去っていく。
その後に微かとはいえあの悪臭の残り香が漂ってきた辺り、前方車両でも似たようなことが起きているらしい。
「たいへんだなぁ」
匂いを感じないよう鼻を摘みながら詰まった声でジュナが車掌の後ろ姿を視線で追う。
そして中島もまた、何か思い当たるような節で車掌を眺めていた。
その数十秒後、後部車両の扉が開いて先程の車掌が悪臭の芳香を纏いながらまた戻ってくる。
そう何度も往復されてはたまらないのか、乗客の何人かが明らかに車掌に苛立ちの視線を向ける。
「すいません」
その車掌に一声かけて足を止めたのは、中島だった。
「はい?何でしょう」
「突然申し訳ない。私こういうものでして……」
中島が見せた名刺を拝見し、車掌の中年は軽く驚いた表情をしながら、彼に縋るような視線を送った後、ぼそぼそと耳打ちした。
「……やはり、そうですか。この悪臭、只事ではないと思いましたが」
一言そう呟いたあと、中島は命達に向き直って口を開いた。
「─────皆、出動だ」 - 84二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 21:49:16
これが無限列車編ですか(違う)
- 85編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 21:57:37
悪臭に耐えながら先頭車両、運転席の辺りにまで連れてこられた命達。
「わざわざすみません……この新幹線、『いかずち号』には乗客の方々に外の景色を楽しんで貰うため車両の上にカメラを取り付けているのですが……こんなものが映りまして」
そう言って、車掌が車両に取り付けられたカメラの電源を入れて映像を映し出す。
そこには──────車両の屋根に根を張り付かせた、巨大で色鮮やかな花弁をスカートのように広げた少女の怪物が、空気中に明らかに毒ガスのような瘴気をぶちまけている姿があった。
「ゼラト……!!」
「このまま駅のホームに到着することは出来ませんし、かといってあの怪物が放出しているガスはどうにも少しずつですが車体を溶かしているようで止めるわけにも……」
「ゼラトは何両目に?」
「7両目です。幸い乗客は少なかったので前方車両に移動させておりました」
「……という訳だ。これ以上乗客の方々を危険に晒す訳にはいかない!!変身を許可する、ゼラトを速やかに討伐せよ!!」
「りょうかいっ!!それじゃーいくよっ」
『変身!!』
ゼラト dice4d100=35 62 97 96 (290)
サニティーンズ dice6d100=63 4 27 15 23 84 (216)
- 86二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:02:26
フリー素材と化した毬ちゃん
- 87編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 22:13:12
こうして、意気揚々と出ていったサニティーンズは……ちょっと進んだ辺りで足を止め、中島達の元まで戻ってくる。
「あの……」
「ん?どうした?」
「あの悪臭の中行くんですか?戦うどころか呼吸すらままならないと思うんですけど」
「……し、車両の中から攻撃すれば問題ないだろう」
「その車両の中でも、相当臭う……」
「外出たら絶対臭さで死ぬよね」
何せ命達が乗っていたのは二両目。ゼラトがいるのは七両目である。
相当離れている上に車両内。それでもあの悪臭であったのだ。
命達が二の足を踏むのも仕方ないことだろう。
「うーん……気休めにしかならんだろうが、マスク二重、いや、三重にして行ってみたらどうだ?」
中島のアドバイスを元にしながら、陰鬱な顔で元凶のゼラトが巣食う七両目の前まで来た命達。
六両目の時点であまりの臭さに耐えきれなかった乗客はほぼほぼ前の車両に移動し、いるのは命達だけ。
ドアに手をかけようとするが、誰も開けようとしない。
六両目の時点で悪臭を越えて異臭、体調不良を起こしそうなほどのむせ返る匂いが満ちていた。
「……誰が行く?」
「ぼくやだよ……」
「私無理……」
あーだこーだと言い合いをしながら、最終的に三人一緒に行くことに決め……思い切り、七両目のドアを開け放つ。
七両目は、異臭どころか激臭であった。
対応度
命 dice1d100=73 (73)
伊織dice1d100=96 (96)
ジュナdice1d100=37 (37)
- 88二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:24:00
おい、サブタイトル的に今回の主役……
- 89編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 22:24:42
「お"え"え"え"え"え"え"え"え"……」
まず初手でジュナが吐いてダウン。
「ゔぇっ、ケコっ……っえ"」
「ゲホッ、オエッ!!ミ°」
なんとか耐えた命と伊織も正常な呼吸が出来ていない。
横隔膜が異常な拒否反応を示し咳としゃっくりと吐き気のオンパレード。刺激臭も混じっているのか目と鼻からは『タイタニック』と『ショーシャンクの空に』と『フランダースの犬』最終回を一度に纏めたレベルの涙と鼻水が滝の如く溢れ出てくるパニック状態。
もう戦闘態勢なんて取れるはずもなく、二人はジュナを引きずりながら五両目まで避難した。
「無理」
「だね」
七両目からすれば、五両目の匂いなど天国のようなものである。
と、吐いてダウンしていたジュナが復帰して開口一番。
「というか、伊織ちゃん弓あるんだから遠くから狙撃すればいいじゃん……」
『あっ』 - 90二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:28:36
ヒロインを嘔吐させる作品は名作の法則 あると思います
- 91二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:31:17
これは……ギャグ回じゃな?
- 92編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 22:45:21
狙撃という手段に思い至らなかった自分を恥じながらも、伊織が情けなさそうに声を上げる。
「でも相手が動かないとちゃんと正確な急所が分からないから……下手に撃って外の通気性良くしたらアウトだよ?」
「それはやばい」
「つまり、誰か囮が必要?」
そこまで言って、命とジュナが顔を見合わせる。
「……私はジュナを回収する役で。ジュナは一番にダウンしてたしそういう役割がいたほうが良いし、何より囮として敵からの攻撃を防ぐ防御力が私には足りない」
命、即座に正論による理論武装を構築。
囮役をジュナに押し付けて逃走を図った。
「あ"あ"あ"あ"あ"や"だよ"お"お"お"お"お"!!!」
斯くして、胴体に鎖を巻き付けてゼラトのいる七両目に泣きながら突貫するジュナ。
「お"え"え"え"え"え"え"え"え"!!!!」
「ジュナちゃん吐いて倒れた!!命ちゃん回収して気付けして!!」
七両目に入ってはゲロを吐いて倒れるジュナを命が引き寄せて回収し、気付けして再度ジュナを特攻させにいく。
「し……しぬ……」
「はい水」
「ド畜生!!」
余りに往復を繰り返す内に五両目が悪臭よりもゲロの匂いが上回り始めた頃、漸くジュナが七両目に気を保ったまま侵入に成功する。
「我はメシア。腐り果てた資本主義を根絶する」
尤も、保っているのは正気ではないのだが。
「キエエエエエエアアアアッッッ!!!」
半狂乱となりながら七両目の天井をやたらめったらに盾でガンガン叩き始めるジュナ。
下からの打撃にはさしものゼラトもたまらなかったか、車両の天井から植物に似た触手がジュナの周りに突き刺さる。
「本体見えたっ!!行けエエエエエエエエエエエッ!!!」
その瞬間をずっと弓を番えて待ち構えていた伊織が見逃すはずもなく、放たれた一射は過たず外のゼラトの急所を撃ち抜き……絶叫の後、車内の悪臭が消えていくのを伊織達は感じ取った。
「……いや、まだ臭いな?」
「あれ。ジュナのゲロ」
「……あっ」
「大きな星が、ついたり消えたりしている……彗星かな? いや違う、違うな。彗星はもっと、バァーって動くもんな……」
そしてゼラトの真下にいたジュナは、精根尽き果てた状態で気絶しながら寝言を言っていたのだった。 - 93二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 22:52:19
そういやレッスン要素……いや、あらゆる状況に置かれても最後まで目的を遂行することもアイドルに求められる資質には違いないか
- 94編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 22:54:06
数分後。
何の障害もなく駅に到着した新幹線から、牢獄から開放されたとでも言わんばかりに乗客がわっとホームにへと飛び出す。
「本当にありがとうございました。貴方方がいなければどうなっていたことか……」
「いえ、礼は彼女達に……」
車掌と中島が手を握り合う中、命達はというと─────。
「ジュナちゃーん……降りてきてよー……私達が悪かったからさぁ……」
「オデ ニンゲン キライ ニンゲン ダマス」
「でもアレが最良だった」
「それはそうだけどさ……」
戦闘で余りに非人道的な運用で酷使されたのが応えたか、新幹線を降りてから暫しの間、ホームの柱に登って二人が謝り通しになっても降りてこなかったという。 - 95編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/10(月) 22:56:35
12話、これにて終了。
舞踏(武闘)訓練だから(屁理屈)
訓練じゃない、実戦?はい……尻切れトンボ感があるけど赦して……
合いの手、ハートありがとうございました。
では明日の昼くらいまで13話のサブタイトルを募集とさせていただきます。
皆様、お付き合いいただき本当にありがとうございました。 - 96二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:03:57
おつ
正しき世界/Innocent Eden - 97二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:20:56
主神の影/Your dream is our nightmare
- 98二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 23:22:39
セカイの成り立ちのおはなし/The God
- 99二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 10:03:16
強敵 その名は/First defeat
- 100編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 12:44:23
振ります
dice1d4=2 (2)
- 101編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 12:44:50
13話
主神の影/Your dream is our nightmare
21時より開始予定。 - 102編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 21:00:20
では時間になりましたので開始します。
- 103編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 21:21:34
「いい加減……邪魔になってきたな」
何処までも闇が支配する、『オリュンポス』が巣食う空間。
その中心部にて神を僭称する四人は集い、新生サニティーンズに対する会談を始めていた。
「今までに尖兵を何体も放ったが……いずれの今代の巫女も、過去の『巫女』達とは比較にならないほどの成長を遂げている。はっきり言って危険だ」
イタクァが片手を弄りながら忌々しげに告げる。
「いつも君とは気が合わないが、今回は別だねぇ。ボクも早急にサニティーンズの始末を付けることに賛成だ」
「アラ、珍しいわネェ。いつも水と油の二人が揃ってだなんて」
やることなすことが常に正反対であったロイとイタクァが揃って同じ意見を指示していることに目を丸くするバイアクヘー。
二人の具申にツァールは目を細めて暫し黙考した後、重々しく口を開いた。
「……良いだろう。貴様ら自身で今の巫女達を確かめてこい。それが我々に抗しうる力であるなら────その場で殺せ!!」
13話
主神の影/Your dream is our nightmare - 104編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 21:33:24
「名乗り口上をやりたい?」
「うん!!」
三人でのライブも終え、すっかり元気を取り戻したジュナの一言に聡子は顔を顰めながら茶を一口。
「俺は嫌だからな。そんな今時のプ●キュアじゃあるまいし」
「ぼくらプリ●ュアみたいなものじゃん」
「……まあそれは良いとしてだ。名前とか決めてんのか?」
「それはね〜……他の皆にも聞いてちゃんと考えてるんだー」
そう言うと、ジュナは懐から紙を取り出して皆から聞いた名前を読み上げ始めた。
「えーと、まずは命ちゃんがイービルアイン」
「ヒーロー側がイービルって名乗るのおかしいだろ」
「伊織ちゃんがブラインドツヴァイ」
「……ブラインドって英語だとあんま良くない意味だけど……まあいい、次」
「アリシアちゃんがトーテスヌルで」
「トーテムポールみたいな語感してんな」
「それでぼくがメイデンヴェルク!!どう?いいと思わない?」
「いや……テメェは乗り気だろうが他の連中は乗り気なのかよ?」
乗り気度
命 dice1d100=23 (23)
伊織 dice1d100=17 (17)
アリシアdice1d100=73 (73)
ジュナdice1d50=38 (38) +50
聡子 dice1d150=9 (9) -50
- 105二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 21:35:35
アリシア以外……
- 106編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 21:45:31
「アリシアちゃん以外全然乗り気じゃなかった!!」
「だろーな!!」
「あれ、ジュナちゃんと聡子ちゃん。何の話してるの?」
丁度そこに、命と伊織、そしてアリシアが戻ってきてサニティーンズが全員集う形となる。
「いやこいつがよォ、名乗り口上がしてェって話をしててよ」
「あー、あれかぁ……私はちょっと恥ずかしいからね……」
「えー、イイじゃないノ。トーテスヌル」
(素でそれかよ……)
「聡子は、名乗るとしたら?」
「あ?」
その言葉に、聡子以外の視線が彼女に集約する。
「そう言えばそーこちゃんには聞いてなかったねー」
「確かにワタシも気になるワ」
「どういうネーミングなのかな……?」
命の問いに予想していなかったとばかりに聡子は顎に手を添えて暫く天井を見上げながら考えていたが─────ぱん、と思いついたかのように手を叩いて開口一番。
「血塗れ八咫烏」
ウケ度
命 dice1d150=6 (6) -50
伊織dice1d150=51 (51) -50
アリシアdice1d150=12 (12) -50
ジュナdice1d150=136 (136) -50
- 107二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 21:50:12
伊織は優しいネ
- 108編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 21:58:33
『それはないわ』
「えー、そうかなー?ぼくは良いと思うけど」
聡子のネーミングセンスの無さに命達の意見が異口同音となる中、ジュナだけは彼女のネーミングを称賛する。
「いやジュナちゃん、流石に血塗れ八咫烏は……」
「完全に族のネーミングのソレよネ」
「ん」
三人が口々に否定意見を返すものの、ジュナはそれにまるで動じない様子で「でもさぁ」と手を上げて呟いた。
「普段戦ってる時のそーこちゃんの様子振り返ってみてよ、しっくりこない?」
「戦ってる時の……」
「様子……?」
『ブッ殺ォオォォオオオオオッすッッッ!!!!』
『頭の天辺から爪先まで満遍なくミンチにしてやろうか、ア"ァッ!?』
『待ってたぜェ、この瞬間をよォ!!』
『周りの被害?知らねェよンなこと。敵をブッ殺してから考えるわ』
『俺の戦略?まず殴る。次にぶん殴る。その後ボコる。最後に殴り殺す。以上』
「………あぁ〜」
「オイ、なんだその間は。一人ずつ吊るすぞテメェら」
思わず納得の声を出した皆に対し、聡子は静かにブチ切れたのであった。 - 109編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:08:19
命達がそんなこんなで平和な日常を過ごしている頃。
「……さて、まずどうする?イタクァ」
「どうするとは?」
上空の空間を歪ませながら顕現したロイとイタクァは、降下しながら会話を続ける。
「どういう戦略でサニティーンズの力量を調べるか、だよぉ。ロイガーは無駄な殺しを嫌がる。いきなりアイツら殺しにかかりたいのは山々だろうけど、それやったらアイツキレるよ」
「……っち。面倒な奴め……まあいい、であれば小手調べ用の尖兵を出せば良いのだろう?」
イタクァがぱん、と手を打ち合わせると目の前の空間にヒビが大きく入り、黒い瘴気を湛えた空間が生じる。
そしてその中より、ずる、ずると這いずる音と共に現れたのは─────。 - 110編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:08:58
では今回のゼラトの安価です。
モチーフ、要素などを下10レスまで。
2つ採用となります。 - 111二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:10:11
ドロドロに溶けた肉体
- 112二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:10:51
マグマでできたスライム
- 113二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:11:24
雷を自在に降らせるキリン
- 114二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:12:50
マグマを全身に纏った熊
- 115二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:13:52
霊体ゆえに実態がない雪女
- 116二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:14:34
爆撃機に変身できる赤ずきんちゃん
- 117二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:15:48
竹を自在に操る能力を持つ闇堕ちかぐや姫
- 118二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:16:27
ダイヤモンドの甲殻を持つアルマジロ
- 119二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:16:59
機械で出来たカマキリ
- 120二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 22:17:34
マントヒヒ風の孫悟空
- 121編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:18:13
- 122編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:29:31
黒い空間を突き破るようにして出てきたのは──────鮮血のような装甲が目を引く戦闘機。しかしその姿は半透明であり、身体を通して向こう側の光景が透けて見える程だ。
「おっ、傑作の個体だぁ。出し惜しみはなしという訳だねぇ」
「これで殺せれば良し。でなければこちらが出張って直接殺す二段構えで行くぞ」
イタクァの言葉にロイはうんうんと頷いた後、牙剝くような笑みを浮かべて手を掲げる。
「足りないねぇ。もっとパーッとやろうやぁ」
次の瞬間──────二人の上空の空間が大きくひび割れると、そこから複数のゼラトが姿を表す。
アロサウルスのゼラトや茸のゼラト、狙撃手のゼラトに肉塊じみた姿のゼラト……かつてサニティーンズが戦ったゼラトも何体か混じっている。
「ボクらは元より仲が悪く、出撃して即仲違い。お互いに意思疎通をせずゼラトを大量に出しまくったせいでサニティーンズを力量の測る前にうっかり殺しちゃいました……で良いんじゃないかなぁ?」
「……それで行こうか、『不尽』のロイガー!!」 - 123編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:47:27
同時刻。護国組織『社』、管制室。
「衛星より感知信号!!ゼラトの出現信号です!!」
「数は!!」
「7……いえ、現在進行形で増殖中!!現在11!!」
「反応信号、本部に向けて進行開始!!南より3、北より6、東より2!!」
「警戒アラートを発令しろ!!国民の被害を最小限に抑えるんだ!!」
通常ではありえない数のゼラトの出現。
これに対して『社』側は動揺することなく、一つ一つ確認と作業を進めていく。
「自衛隊から出動要請が出ていますが」
「許可するが近付き過ぎず、牽制だけに留めるよう厳命を!!ゼラトには火器の類は通りが悪い、サニティーンズの出撃はどうなってる?」
「既に準備を整え出撃しております!!」
「自衛隊に連絡だ!!牽制に加えてサニティーンズの方向へゼラトを誘導するよう通達を!!」
全力で人々を守るため、大人達は自分達が為せることをひたすら懸命に実行していく。
そしてまた──────彼女達も。
「ねぇ、やっぱり名乗り口上しない?」
「まだ言ってんのか。つーかそんな暇ねェっての」
「ゼラトの大襲撃……こんなこと今までなかった」
「でも、私達ならきっと勝てる」
「そーだヨ!!ワタシ達サニティーンズなら、絶対になんとかなるなる!!」
変身するためのアニマギアを取り出しながら、五人が並び立つ。
彼女達の顔に、不安は一欠片もない。
「───────行くよ、皆!!」
『変 身 !!』 - 124編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/11(火) 22:48:20
というところで今日はここまでにさせていただきます。
皆様お付き合いいただき、また合いの手やハートなどありがとうございます。
では皆様、お疲れ様でした。 - 125二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 08:32:47
保守
- 126編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 15:11:34
21時より開始,
- 127編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 21:00:28
それでは今日も始めます。
- 128編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 21:14:47
「─────やあっ!!」
変身して早々ジュナが四人の前に躍り出るや盾を巨大化、防御態勢を整えた次の瞬間、雨霰と防壁に弾丸や胞子、瓦礫が一斉に叩きつけられる。
「随分手荒な挨拶だな……こりゃあよォ」
防壁が取り払われたサニティーンズの前に立ちはだかるのは、半透明の赤頭巾を纏う少女のゼラトを筆頭に十数体ものゼラト。
その中には過去に見た姿の個体もいくらか混じっている。
「総攻撃、なのかな」
「どうやらアイツらも相当焦ってるみたいネ……正念場って感じ」
伊織が弓をつがえ、アリシアが不敵に笑って片足を上げる。
ジュナが盾を構え、聡子が金砕棒を肩に担ぐ。
そして……命が闇から大鎌を錬成した刹那、ゼラト達が一気呵成に彼女達にへと襲いかかった。
ゼラト集団 dice10d100=91 76 57 76 69 75 36 29 4 73 (586)
サニティーンズdice10d100=12 9 61 12 49 26 33 76 37 99 (414)
- 129編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 21:34:38
「ずえりゃぁッ!!」
聡子が勢いよく突き出した巨大な両腕の篭手を、アロサウルスのゼラトが猛禽のような腕で受け止める。
かつて戦った時のように苦戦は免れないか。
……答えは、否。
「─────ジュナ!!」
「あいあーい!!『スティラコ・ストライク』ッ!!」
ガッシリと四つに組んだ状態の聡子の背中を踏み台にジュナが跳躍し、片腕の盾に仕込まれたパイルバンカーの一撃をゼラトの頭に叩き込んで粉砕する。
一方の別の場所では、アリシアが伊織を背負いながら戦場を駆け巡りつつ斬り刻み、あるいは神速の狙撃で以てゼラト達に痛烈な一撃を加えていく。
と、彼女達の前に少女の上半身と巨大な甲殻類のようなゼラトが立ちはだかるとその黄色い皮膜の翼を広げ、アリシア達の突撃を受け止める構えを見せる。
「このまま突っ切って!!」
対するアリシアも伊織の言葉通りに減速せず、真っ直ぐに吶喊。
ゼラトがそのそぞろに生えた牙を向いた瞬間、その喉を過たず伊織の矢が撃ち抜き─────。
「!!」
崩れ落ちるゼラトの背後から、鋭いレイピアを構えたマタドールのようなゼラトがアリシアに合わせるように飛びかかる。
恐らくは、盾役のゼラトと攻撃役のゼラトで役割を分担して待ち構えていたのだろう。
斯くしてその策は成り、ゼラトのレイピアは真っ直ぐにアリシア達の元にへと……
「させない」
……届くことはなく、その直前にゼラトの身体に鎖が絡みつくや、命の手によって地面に強かに叩きつけられた。 - 130編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 21:52:26
「……」
アリシア達の窮地を救って軽く息を整えた後、ふと命は自分がゼラト達に囲まれていることに気付く。
そしてその輪から少し外れた所に亡霊のように立ってこちらの様子を眺めている赤頭巾を見て、彼女はあれがゼラト達の中心であると確信した。
『✧☆■◀◀◀!!』
包囲網の中から先陣を切るかのように、鼠のゼラトが飛び出す。
「シィッ!!」
その爪撃を躱し、返す刀でゼラトの身体を腰斬した命に、今度は同時に複数方向からゼラトが襲いかかった。
前後左右死角に上空。対処しようのないであろう一斉に攻撃に対し、命が片手に力を込めて掌で地面を叩く。
『!?!!!!!?』
瞬間、命を中心とした空間に地面から槍衾のように無数の鎖が撃ち出され、ゼラト達を貫き、あるいは身体に絡みついて自由を剥奪する。
そして、動けなくなって隙を晒しているゼラト達を命は鎌を一閃。
一撃にて全てを斬って落とした。
戦いは、完全にサニティーンズ側に傾いていた。
「後は、あのゼラトを倒せば───────ッ!?」
『輝恒術式、輝光迫理』
ぽつりと響いた声と、直後に戦場をゼラト諸共に消し飛ばす光さえなければ。 - 131編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 22:07:09
瓦礫が、一瞬にして溶融する。
ゼラト達は生きているも死んでいるも問わず軒並み蒸発し、大気は強烈な熱量によって急激な膨張を果たし爆風となって周囲の建物までも破壊していく。
かくして、光の後に残ったのは────黒い繭と巨大な盾。そして、亡霊のようなゼラトのみであった。
「いやぁ、惜しいなぁ。ほんの小手調べとはいえイタクァの力を防がれるとはねぇ」
ぐつぐつと煮立つマグマに二人の人影が降り立つ。
「『輝星体』といえど、過度に力を使えば本星も疲弊する。……余り使いたくはなかったがな……!!」
イタクァが盾の裏側にいるであろう、四人の少女に対して苛立ちを顕にする。
彼女は見ていた。自分が力を放つ瞬間、ジュナが伊織達を集めて盾で全力で防御した所を。
無駄な労力を使わされたと憤るイタクァを諌めたのはロイである。
「だが実際、効果はあったとも。見給えよイタクァ」
彼が指差す先にいたのは、光の粒子となって消えていく盾と、変身が解けて倒れ込むジュナ、聡子、アリシア。
「一発受けるのが精一杯という所だったようだねぇ。それに、あの少女も」
ロイが視線を移す先には、同じく変身が解けた状態で倒れ込んでいる命の姿があった。
「ボクにとってはどちらかといえばあちらが本命だ。この機に刈り取らせてもらう」
「……ま、……まち、なさい……!!」
悠々と歩き始めた二人を止めたのは──────ふらふらとした様子で立ち上がった伊織の声であった。 - 132編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 22:27:11
「ほう、あれを受けてなお反抗するかよ、人間」
「一人程度、始末しても構わないがねぇ……この星の総熱量が変わるわけでもなし、『輝星体』としての目的達成には無駄な手だが」
「……輝星、体?」
伊織の言葉にイタクァとロイは顔を見合わせ、やがてロイがゆっくりと口を開く。
「─────星は、生きている」
「産声を上げ、大地を作り生命を作るものもいれば己のエネルギーで以て輝く星もある。この地球で暮らす人間と似たような物だ」
故に星は成長し、やがて老いて死ぬ。
光は褪せ、暗くなり、宇宙に広がる闇と一体となるが如く、死に果てる。
「だがまぁ、幾万もある『星』の中にはそうして死ぬことを拒むものもいてだねぇ。そうした星は『分身』を作り─────他の星から生命を奪って己の寿命を永らえさせるのさ」
その分身こそが、輝星体。
星の代弁者にして、星を食らう寄生虫。
「だからまぁ……ボクやイタクァは、一つの星そのものと取ってもらって構わない。実際本気を出せば、この星なんて早々に『殺せた』」
「こ、ころ……」
「だが死んでもらっては困る。この星とは『制約』も交わしていたし、なによりまだまだエネルギーが奪えそうだからねぇ」
「お喋りはこの程度で良いだろう、ロイ」
イタクァの声にやれやれと肩を竦めたロイは、片腕を触手に変えながら、命の胸倉を掴む。
「やめ、……やめて……!!」
「キミらは既にボクらの障害、邪魔者だ。だからこそこの場で、禍根は絶つ……!!」
そして、伊織の決死の懇願も聞き入れられずロイの触手は容赦なく命にへと突き立てられ──────
──────次の瞬間、ロイの両腕が消し飛んだ。 - 133編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 22:45:40
『は?』
その場にいた誰もが、同じ言葉を吐いた。
「……?……?!」
まるで強烈な力で捩じ切られ、緑色の液体を噴き出しながら一歩、二歩後ずさるロイ。
一方、ロイが手を離した命はゆっくりと地面に落ち……その足が、しっかと地面を捉えて立ち上がる。
ギリ、ギリと身体を軋ませながらまるでマリオネットのように不可思議な体勢から立ち上がっていく命の顔が、ロイの方をぐりんと向いた。
───────今までにないほど光り輝く紋章を顔中どころか、身体中に纏わせて。
「──────がっ、は!?」
刹那、何かを察したロイが横っ飛びに避け……それでも避けきれず、左半身を消し飛ばされる。
「ロイ!?」
「にげっ……!!退くぞッッ!!やれェゼラトォ!!全力でブッ殺───────!!」
命の片腕が、ロイの命令で戦闘機にへと変形しようとしていた赤頭巾の方へ向き、ギュッと握りしめる。
ぱん。と軽い音が響き、赤頭巾の身体が一瞬で霧散する。
地面に所在なく立っていた足は、一瞬ゆらゆらと揺れたあと、朝日に照らされた霞の如くゆっくりと消滅していった。
「何なんだ……!?お前は一体何に触れたんだ、ロイ!!」
「知らねぇ知らねェ知らねェ知らねェよォオオオオオオオオオオオッ!!ボクは違和感を感じたんだッ、その感覚に従って始末しようとしただけなんだよォオオオオオオオオオオオオオオオオ何なんだよアレはッッッ!!!」
「っち……いらん爆弾を起爆させて……!!」
半狂乱になりながら再生を続けるロイを抱えながら、イタクァが闇に包まれて姿を消す。
その後には、明らかに様子のおかしい命と意識の朦朧としている伊織だけが取り残された。
微動だにせず、その場に立っていた命がふらり、ふらりと歩き出す。
「みこ、とちゃ……まっ、いかない……で……」
伊織はその後を追おうとするが既に身体は言うことを聞かず、イタクァの攻撃により意識も限界に達しており。
「みこと、ちゃん……」
ゆっくりと小さくなっていく親友の後ろ姿を最後に、伊織の意識はプッツリと途切れた。 - 134編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/12(水) 22:47:43
第13話終了。
Your dream is our nightmare……果たしてこれはどちら側のセリフなんでしょうね……
ハートありがとうございました。
それでは14話のサブタイトルを明日の昼まで募集とさせていただきます。
皆様、お付き合いいただきありがとう御座いました。 - 135二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 22:53:06
命の在処/Twelve Zodiacal constellations
- 136二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 22:56:22
- 137二次元好きの匿名さん23/04/12(水) 23:00:39
漢の覚悟!/ロイ、荒野に死す!
- 138二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 01:03:31
ロイ殺すにはまだ早くない?
サブタイの法則外れてるし
覚醒の時/New power New hope - 139二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 01:08:06
星の代行者 宇宙(ソラ)の紋章/Earth Apostle
- 140二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 01:14:35
新たなる力/SANITEENS Evolution
- 141二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 01:23:26
ロイ!荒野に死す!!/Memento Mori
- 142二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 01:26:00
- 143二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 11:25:35
ほし
- 144二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 13:35:29
このレスは削除されています
- 145編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 13:36:29
- 146編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 13:37:13
14話
命の在処/Twelve Zodiacal constellations
分かりづらくて申し訳ない
21時より開始します - 147編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:00:20
それでは時間になりましたので開始します
- 148編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:10:26
この世に存在するあらゆるものに、魂は宿ると昔の人は言った。
石、草、物、人……世界中に魂は満ちて、営みを続けていると。
では──────その魂は、一体何処から来るのだろう。
何処で生まれ、何処に行き、死した後は何処に去るのか。私はただ……何者であるか。そして、何を為すべきなのかを知りたい。
それを知るための在処を探すため─────私は、彷徨い続ける。
14話
命の在処/Twelve Zodiacal constellations - 149編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:24:18
「……そうか。そんなことが」
ゼラト達の一斉襲撃を辛うじて退けたサニティーンズ。
だがしかし、その代償は余りに重く─────伊織を含めた四名が入院。残る一名、一ノ瀬命の失踪という事態を招くに至った。
「……命ちゃんは?」
「現在、自衛隊と警察が共同で捜索しているが……未だ発見出来ていない」
病床にいる包帯だらけの伊織から当時の顛末を聞いた中島は膝に置いていた手をギュッと握りしめる。
襲撃から伊織が目覚めるまでには、既に三日が経過していた。幅広い範囲での捜索活動は続けられているが、見つけることは叶わないだろうと彼は感じていた。
恐らく見つけられるのは─────命自身が、ここに返ってくると決めた時だとも。
(……命。君は一体──────いや、今はそんなことはどうでもいい。ただ、無事に戻ってきてくれ……!!)
自らを星の分身と称した『オリュンポス』。サニティーンズさえ歯牙にかけない存在をいともたやすく傷つけた、命の底知れぬ力に中島は畏怖を感じながらも、心の中で彼女の身を案じていたのだった。 - 150編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:39:25
「しくじったな、二人共」
どこか笑っているかのような調子で、ツァールが錆びた声で告げる。
「あんな存在がこの星にいたなど……であれば何故星がここまで追い詰められるまで出てこなかった!?」
「そもそもこの星が生めるような力ではない!!そうでなければこのボクの腕を安々と壊せるものか……!!」
実際に命の力を目の当たりにしたロイとイタクァは明らかな動揺と焦りを見せながらも、彼女の力の根源を推測し始める。
バイアクヘーは、何も言わずにずっと彼らの様子を伺っている。
「……であれば、放置する訳にもいくまい。この星の力は弱り切っている。星の力に直結している『巫女』もまた同様、我々の命には届き得ない。が、アレは別だ。何処の誰かは後回しにして、まずはどの程度の力量か図らねばなるまいよ」
dice1d4=4 (4)
1.ツァール
2.ロイ
3.イタクァ
4.バイアクヘー
- 151編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:50:23
「であれば猊下。その役目、このアタシ、バイアクヘーにお任せを」
「損な役回りをさせるなバイアクヘー。力量を図るとはいえ死ぬかもしれんぞ。それこそ、星諸共に」
『輝星体』。それは星の分身たる存在。
彼らは1個体の生命であると同時に、星そのものでもある。
彼らが破壊されて滅びる時は、彼らを生み出した星もまた同様に滅びることとなる一心同体なのだ。
「構いませんワ」
「では、ゼラトを連れて行け。ものの役には立つだろうよ、『魔閻』のバイアクヘー」
その瞬間、ツァールの声に応えるが如くバイアクヘーの肩より一対の異形の鉤爪を携えた腕が勢いよく突き出た。 - 152編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:51:18
それでは今回のゼラト安価。
モチーフ、要素などを下10レスまでお願いします。 - 153二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:52:12
九条氷空
- 154二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:52:37
前サニティーンズの遺族
- 155二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:53:08
多摩池咲希
- 156二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:53:34
マグマ
- 157二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:54:11
この前採取した遺伝子で作ったクローン
- 158二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:54:28
プテラノドンのロボット
- 159二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:54:52
桃太郎
- 160二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:55:06
多摩池咲希と厳島恋の合成
- 161二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:55:16
改造されたロイ
- 162二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:55:40
竹
- 163二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:55:52
雪代鞠以外の前サニティーンズ全載せ
- 164編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 21:56:29
- 165二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 21:57:11
モチーフ被らない?
- 166編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 22:00:23
- 167二次元好きの匿名さん23/04/13(木) 22:03:36
- 168編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 22:05:07
- 169編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 22:17:23
「お嬢ちゃん、こんな辺鄙な所で降ろしちまっていいんか?この辺見るとこなんかなーんもねぇぞ」
「ん、平気……ありがとう」
トラックの後ろの荷台に載せられていた命が降り、運転手の男に恭しく礼をする。
「そーけ?ほんならいいけどよぉ……」
ボリボリと気恥ずかしそうに頭を掻いた後、男はエンジンをかけてトラックを走らせて去っていく。
その姿が見えなくなるまで見送った後、命は息を吐きながら目の前に立ちはだかる廃業した遊園地跡を見上げる。
(……何も考えずに歩いて、ヒッチハイクを繰り返して。それで、着いたのがここ……)
『オリュンポス』のロイとイタクァと名乗る存在。彼らの不意討ちを受けてからの命の数時間の記憶は、非常に曖昧だった。
ただ覚えているのは、身体中にこれまで感じたことのないような力が湧き上がってくる感覚と全能感。
そしてそれらが過ぎ去った後に心に去来した、『ここにいてはいけない』という衝動。
その衝動のままに歩き続けて、命が辿り着いたのがこの遊園地跡である。
(……中に入ろうかな……)
ふらり、と一歩を踏み出して。
命は廃虚の中にへと歩みを進めていった。 - 170編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 22:41:56
恐らくは、何年も前に廃業したのだろう。
かつては多くの家族連れや子供を楽しませたであろうティーカップコースターやメリーゴーラウンドは、日光によってすっかり色褪せて、長らく雨に打たれ続けた結果塗装が剥げて茶色い錆が浮いてしまっている。
そんな遊園地の二度と動かない遊具達を見ながら、辺りを回っていた命の歩みが、とある場所の前で立ち止まる。
薄汚れた赤や青いゴンドラが円状に連なっている観覧車。
それだけ見ればなんてことのない遊具の一つであるが─────命の足を止めたのは、『既視感』であった。
(私には、記憶は、ない。……けど、確かに私は……この観覧車に。いや─────この遊園地を、訪れている)
ちり、ちりと頭の奥で何かがチラつく。
ゆっくりと伸びた腕が、観覧車のドアを開く。
ぎ、い、い、と軋んだ音を立てながら観覧車のゴンドラの中に命は足を踏み入れて───────。
瞬間、背後から命目掛けて放たれた氷の槍が凄まじい勢いで叩きつけられ、観覧車をゴンドラ諸共崩壊させるほどの大破壊を辺りにもたらした。 - 171編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/13(木) 22:42:35
申し訳ないが今日はここまで。
合いの手やハートなどありがとうございます。
それでは皆様、お付き合いいただきお疲れ様でした。 - 172二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 01:34:57
おつおつ
- 173二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 11:15:49
保守るマン
- 174編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/14(金) 19:13:56
すいません今日は無理そう……
明日はちゃんと再開するので、申し訳ない…… - 175二次元好きの匿名さん23/04/14(金) 19:52:38
ええんやで
毎日やってたのが偉すぎる - 176編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 00:01:37
とりあえず明日の21時には始めたい……
- 177二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 11:12:22
待機シャトル
- 178二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 19:46:49
今日はやるのかな♪
- 179編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 21:00:31
時間になったので始めます
- 180編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 21:15:35
支柱を砕かれた観覧車が轟音を立てて崩れ落ちていく。
と、その瓦礫を黒い鎖で打ち払いつつ命が崩壊から逃れ、槍が放たれた方向を睨む。
「ンッ、ン〜。流石に奇襲で殺せたらワケないわヨネェ?」
その先にいるのは、二人の男女。
くねくねとした挙動の偉丈夫、バイアクヘー。
そして、その傍らに氷の槍を携えて座り込んでいる、白髪のサイドテールに赤と青のオッドアイを持つ少女。
「……」
「マァ、アタシは威力偵察で来てるワケだから死んでもらったら拍子抜けなんだケド。ともあれ─────」
バイアクヘーがパチンと指を鳴らすと、少女が立ち上がって槍を持っていない方の手に炎の剣を錬成する。
「氷の力自体は雪代鞠の素体がベースだケド、それに加えて他の巫女の力も加えた最新鋭のゼラト……その力、味わってみるとイイワ!!」
命 dice10d100=10 47 52 82 14 65 93 21 43 99 (526)
ゼラト dice5d100=71 11 83 27 14 (206)
- 181二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 21:31:05
最新鋭()
いや、紋章出てタガが外れた命が異常なのか? - 182編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 21:32:41
少女が炎の剣と氷の槍を掲げ、命に向けて突撃する。
命が牽制として放った鉄鎖の雨を身を翻しながら躱し、その剣の鋒が命の薙ぎ払う鎌と衝突してけたたましい音を響かせた。
「……!!」
ゼラトは返す刀で片手の槍を手槍程の長さに短縮し、命の喉元を貫かんと突きを奔らせ……
『!?』
ガゴンッ!!という音を立てながら命の強烈な蹴り上げがゼラトの顎をかち上げ、それに留まらずその身体を吹き飛ばした。
ゼラトは地面に足を食い込ませ耐え抜くものの──────衝撃のダメージまでは耐え切れず、思わず地面に膝を突く。
命はこの隙を見逃す訳もなく、鎌を構えて逆襲。
ゼラトの首を狩りに鎌の一閃を振り上げると、ゼラトは炎の剣を解除してその掌で地面を叩くや否や、
『天 満 大 自 在』
轟音を立てて、地面の中よりゼラトを守るように雷が迸り命の総身を撃ち叩いた。
「雪代鞠の氷の力、多摩池咲希の炎の力。そして九条氷空の雷の力。正しく三位一体、そう安々とは崩れはしないワヨ」 - 183二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 21:33:24
ﺂﻴﻧﻮﺠﻳﺇﺍﺭﺁﻮﺪ
- 184編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 21:47:00
雷とは、凄まじいエネルギーの塊に等しい。
ものを介した感電ならばいざ知らず、直撃ともなれば……常人は即死は免れ得ない。
ましてや、ゼラトとはいえ神の力を借り受けた存在による雷だ。
それは変身によって尋常ならざる力と耐久性を得たサニティーンズであっても通用するものであり……。
「かっ……ぐ」
命が苦悶の声を上げ、痙攣を起こしながら倒れ込む。
それを見ながらゼラトは鼻血を腕で拭い、氷の槍を携えて動けない命にトドメを刺すため駆け出す。
命の痙攣は未だ収まらず、どうあがいてもゼラトの攻撃に対応出来る状態ではない。
故に、何者にも邪魔されず致命の一撃が命の胸に向けて放たれて──────。
「■■■■■■■■■■■■■」
刹那。
ゼラトの身体が、まるで上空から見えない巨大な掌で潰されたかの如く地面にめり込んだ。
『!? ……!?』
咄嗟に槍を地面に突き刺し杖代わりにしようとするものの、呆気なく砕け命の前に強制的に頭を垂れるゼラト。
その命は身体の痙攣が止まり、ゆっくりと立ち上がって……光の紋章を浮かべた顔を上げた。 - 185二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 21:57:19
どゆこと?!
- 186編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 22:03:04
『!!……ッ!!』
めき、めきめきと嫌な音を立ててゼラトの身体が軋む。
指一本すら動かせないようで、声にならない悲鳴を上げながら地面にゆっくりとめり込んでいく。
対する命は、そんなゼラトの様子を睥睨しつつ鎌をゆっくりと掲げ、断頭台の処刑人の如く振り下ろし─────
「悪いケド、ワンサイドゲームは飽き飽きなのヨ」
その黒い刃がゼラトの首元に到達する前に、戦闘を傍観していたバイアクヘーの蹴りが命の身体を吹き飛ばした。
「何万年振りかしらネェ、マジでやるなんてホントに久しぶりヨォ」
バキ、ボキと偉丈夫の姿が歪に変化していく。
元より高かった身長は更に高く外骨格を纏い。口は爬虫類のようにパックリと裂けていき、肩と腰の付根辺りにそれぞれ鋭い鉤爪が付いた手が生える。
頭部は鳥の骸骨のように硬く、虫を思わせる触角が生え、尻からは蜂のような器官が出現する。
『アナタのその力……アタシからしても理解できないワ。だからこそ、ココで不確定要素は除かせてもらうワァ!!』
バイアクヘー dice10d100=86 94 13 85 71 77 64 52 12 79 (633)
命 dice10d100=45 58 36 23 74 37 84 57 79 12 (505)
- 187二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 22:07:23
覚醒命をものともしないとかつっよ
- 188編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 22:20:18
命が腕を伸ばし、バイアクヘーに向けて攻撃をしようとする。
その瞬間に、彼女は自分が殴り飛ばされて宙を舞っていることに気付いた。
「……」
感知すら出来なかった攻撃のダメージが身体の芯に響く感覚を覚えながらも、背後にバイアクヘーが回り込んだ感覚を感じ、振り返りながら逆襲の一撃を─────。
『残念。ハ・ズ・レ・♡』
見舞う前に、更にその背後に回り込まれるや否や背中に強烈な蹴りを叩き込まれて地面に打ち付けられる。
『ンッン〜、アタシ、アナタの戦いを見てて攻略法自体は思い付いてたのヨ?』
すぐさま立ち上がり追撃に備える彼女を嘲笑うが如く、顎が撃ち抜かれ腹に膝蹴りが叩き込まれた。
『確かにアナタは強いワ。ゼラトどころかアタシより格は上のロイを追い詰める程にネェ』
ここで漸く、命はある違和感に気付いた。
─────攻撃こそ受けているのにも関わらず、バイアクヘーが攻撃をする動きどころか、バイアクヘーの姿そのものすら見えていないことに。
『だからアタシはこう言ってアゲル。アナタには攻撃もさせない。一方的にブチ殺すワ』
バイアクヘー自体はこの場にいる。
念動力などの遠距離の類か。……否。
見えないのだ。
バイアクヘーの動きが余りに速すぎて、攻撃の瞬間どころかその姿さえも、命の視界に捉えられていないのだ。
『一撃で殺せる力?そんなモノ、当たらずにやり過ごせばイイのヨ!!このアタシ、バイアクヘーならばそれが為せる。『オリュンポス』最速、光速さえも超越するアタシならば!!』 - 189編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 22:38:46
バイアクヘーの言葉と共に、回避不能の連撃が命に向けて襲いかかる。
相手の息遣いすら分かるほどの距離。
それなのに、姿すら捉えられない。
防御こそすれど、ダメージは次第に蓄積し破綻点がじわじわと近づいていく。
『そこォ!!』
「!!」
バイアクヘーの蹴撃が、命の足首に突き刺さる。
みしりと軋む音と共に命の顔が歪み、崩れ落ちていく。
圧倒的な不利、それを紙一重で凌ぎ続けていた状況。
その均衡が崩れ、不確定要素を摘み取るチャンスが訪れたことにバイアクヘーは笑みを浮かべながら命を打ち砕くために拳を振り上げ─────命が片手に、小さな黒い球体を握りしめていることに気付いた。
『!!』
次の瞬間、気付くのが一歩遅れたバイアクヘーと命の間に凄まじい爆発が起こる。
バイアクヘーはもうもうと上がる土煙から飛び退り、軽く舌打ちをした。
『何かのエネルギーを集約して爆弾じみたものを……!!』
そして、土煙が晴れた後には命の姿はなくバイアクヘーは取り逃がしたことを悟った。
自爆じみたやり方で無理矢理距離を離し、その隙に命からがら逃げ切ったのだ。
『……マァ、イイワ……戦闘能力の程度は知れた。追撃するか放置するかは猊下達に任せましょう。どのみち、あのダメージでは暫く響くだろうシネ』
地面にへばりついているゼラトを担ぎつつ、バイアクヘーは闇の中に姿を消す。
後には、最初から誰もいなかったかのようにボロボロに壊れた遊園地跡が風に揺られてきぃ、きぃと軋む音を立てていた。 - 190編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 22:45:38
「はぁ、っゲホっ……!!」
よろよろと蹌踉めきながら、山の中を彷徨う命。
変身はとうに解け、意識は殴られ蹴られのダメージで朦朧としていた。
と、ふらふらと踏み出した足がズキンと突き刺すような痛みを脳にダイレクトに伝える。
「ヅッ……!!?」
痛みに思わずたたらを踏んだのがいけなかった。
バランスを崩した命の身体は坂道を転がり落ち、その先にある崖から、下にある川に身を投げ出す形となる。
幸いにも川は深く、後頭部から川の底に頭をぶつけるということはなかったものの……体力の尽きかけていた命は、そのまま流されていく。
「っ……げ、ふ……」
全身を包む冷たさをいっそ心地よく感じながらも、流されていく命の意識は、ゆっくりと闇に落ちていったのだった──────。 - 191編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/15(土) 22:47:05
14話、これにて終了。
オリュンポスも強いんやで、方向性が違うだけで……
合いの手、ハートなどありがとうございます。
例によって明日の昼まで15話のサブタイトル安価とさせていただきます。
それでは皆様、お疲れ様でした。 - 192二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 23:08:55
お疲れー そしてニチアサお約束の水落ち
ワタシのルーツ/Her origin - 193二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 23:11:58
その目に映らずとも/It's in the our heart
- 194二次元好きの匿名さん23/04/15(土) 23:26:30
少女回想・起源迷宮/Once upon a time
- 195二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 10:00:38
ほし
- 196二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 10:00:59
再起の唄/Friends
- 197編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 12:59:33
降るかね
dice1d4=3 (3)
- 198編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 13:00:32
15話
少女回想・起源迷宮/Once upon a time
21時より開始予定。 - 199編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:00:17
それでは開始いたします。
- 200編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:16:17
──────体中が、痛い。
意識を取り戻した命が、最初に思ったことはそれであった。
芯に響くような痛みが走り、ずしりと身体が鉛のようになったかのように自由が効かない。
辛うじて川岸に漂着し、溺死という結末こそ避け得たものの……到底、動き回れるほどの体力はない。
(あた、まが……痛い……)
落ちたときか、あるいは流されていく時にに何処かにぶつけたのだろうか。突き抜けるような痛みに少女は顔を歪め、痛みに耐える。
『命、あまり遠くに行っちゃ駄目だぞ』
『はあい』
『帰ったら命の好きなハンバーグ作ってあげるからね』
ふと、痛みで朦朧とする脳内に声が響く。
聞いた憶えのない、だがしかし懐かしい気持ちが湧いてくる男女の声と自分の声。
声の主が誰なのか、命が頭を巡らせようとするが……その前に、再び彼女の意識は暗転した。
15話
少女回想・起源迷宮/Once upon a time - 201二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 21:28:37
過去編か
- 202編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:31:05
同時刻。
『オリュンポス』が居を構える異空間にて。
「それで、おめおめと帰ってきたわけかバイアクヘー。あと少しで一ノ瀬命が殺せたのだろう」
バイアクヘーの威力偵察の結果報告を聞き、イタクァは不機嫌そうな表情で不備を詰った。
それを意に介さない様子で、バイアクヘーは肩をすくめながら話を続ける。
「そうではあるケド。暫くは動けないレベルのダメージは与えたシィ、猊下に生殺与奪の是非を問うてから行動しても遅くはないのヨ」
それで、とバイアクヘーはツァールの方に向き直ると居住まいを正しながら、彼に問いかける。
「猊下。猊下はどのようにお思いで?」
ツァールはエメラルドの瞳を細め、暫しの間黙考に耽った後ゆっくりとその口を開き─────。
ツァール
dice1d100=1 (1) 1ほど静観 100ほど粛清
- 203二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 21:32:11
静観オンリー!?
- 204編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:44:40
「─────静観する」
「何だと!?」
ツァールの答えに、イタクァが噛みついた。
「バイアクヘーの報告を聞いていたのか!!尖兵止まりとはいえ、ゼラトを容易く鎮圧する存在を放置するのか!!」
「放置ではない、『静観』だ。未だアレの力の根源が不明な以上、何が起きるかは未知数。我々が直に出張るよりも、現状はゼラトで力の根源を探る方が先決だ」
「……甘いよツァール。それじゃ遅すぎる」
そこで、今まで黙り込んでいたロイガーが漸く口を開く。
「今はバイアクヘーが極限まで痛みつけ、容易く排除出来る状態だ。この好機に乗じるべきだねぇ」
「同感だ。折角殺せるチャンスを不意にするとは臆病が過ぎる」
直に命の力の片鱗を見た二名がツァールの意見に否を唱える。
「手負いの獣ほど恐ろしいものはない、という言葉があるが……そこまで言うならば貴様らが行くがいい。俺は貴様らの行動に何も言わん」
ロイ dice1d2=2 (2)
イタクァdice1d2=1 (1)
1で行く
- 205編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:47:41
「では、勝手に行かせて貰うぞツァール。貴様の意が間違いであることを証明してみせよう」
ツァールの言葉を待っていたとばかりに踵を返し、闇の中に姿を消すイタクァ。
その後ろ姿を見送りながら、ツァールは口端を歪めて呟いた。
「─────後悔するなよ、その選択を」 - 206編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 21:48:13
それでは今回のゼラトの安価です。
下10レスまでモチーフ、要素などを募集します。 - 207二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:06:21
イタクァ
- 208二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:06:37
ツァール
- 209二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:07:14
オリュンポス全部盛り
- 210二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:08:05
地球
- 211二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:11:49
珊瑚
- 212二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:12:06
時計
- 213二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:14:28
バイアクヘー
- 214二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:14:58
雪代鞠
- 215二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:15:17
ロイ
- 216二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:15:35
多頭のヘビ
- 217編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:16:49
- 218編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:17:16
もう一個
dice1d9=4 (4)
- 219二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:19:31
今回は選ばれなかったけどゼラトはデストロン怪人みたいに違う要素を持つものをいろいろ合成するのが楽しいのに何回か選ばれたそれもキャラクターモチーフばっかり候補に挙げるのは正直食傷気味……
- 220二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:20:25
えらく壮大だな 扱い切れる?
- 221二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:23:32
- 222編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:32:12
「退院はいつ頃になりそう?」
「ぼくは後三日くらいだって」
「俺も同じくらい」
「ワタシは一週間って言われたワ」
ゼラトの一斉襲撃にて傷を負い、病院に入院しているサニティーンズの四人。
命の失踪こそ知っていたが、入院中の身では探すことも難しい事実を前にまずは一刻も早く全快することを目標に日々を過ごしていた。
「命ちゃん、帰ってくるかな……」
「きっと帰ってくるよ。帰ってきたらさぁ、皆で何処かに遊びに行きたいね。遊園地とか」
「遊園地?だったらワタシ結構前に行った遊園地にまた行きたいなって思うんだケド……えーとネ、品方アミューズメントパーク……だったカナ?」
その言葉をネット上で調べた聡子が、渋い顔をして呟いた。
「……その遊園地、とっくに潰れてんぞ。ゼラトの出現で」
「え!?」
聡子が皆に見せた検索をかけたスマホの画面には、かつての盛況ぶりが嘘のように廃虚となった、命が訪れていた遊園地跡の写真が載っていた。
「なんでもゼラトの出現で死傷者多数、遊具も多数損壊。再開したはいいが死人云々で客足が遠のいてそのまま閉園だと」
その言葉に顔が曇るサニティーンズの面々。
「……悪ぃ、傷つけるつもりはなかったんだが」
「いや、ワタシが言い出しっぺだし」
「─────早く帰ってくると良いなあ、命ちゃん」 - 223編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:32:32
スレ内の口論は……止めようね!!
- 224編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:52:41
─────夢を、見ていた。
前々から、行きたいと駄々をこねていた自分の念願が叶い、両親に連れて行ってもらった遊園地。
何故今まで忘れていたのか、と思う程に鮮明に両親の姿が思い出せる。
『品方アミューズメントパーク』とでかでかと書かれたカラフルな門を潜り、カップコースターに乗ったりチュロスを買ってもらったり。
観覧車に乗って、夕日で照らされた遥か遠くの景観を眺めた後、両親の手を握りながらさて帰ろうと言う前に、自分は少し催してトイレに向かって。
そうして用を終えてトイレから出たとき、聞いたことのないような父の声が耳朶に響いた。
魂を捻り上げるような、苦悶の声を。
恐る恐る外に出ると、見知らぬ男が父の頭を掴んでいた。
エメラルドのように輝く瞳がやけに目を引く青年だった。
その青年の腕から、闇のような瘴気が父の身体を包んでいく。
それが段々と大きく歪になり、父の声が禍々しいものに変わっていく中、『逃げて』という母の声に従って私は後ろを振り返らずに走り出した。
背後から聞こえる、けたたましい悲鳴と硬いものを噛み砕くような音に耳を塞ぎながら。
そうして、遊園地を離れて必死に走って、鬱蒼とした森の中に逃げ込んで。
震えながら茂みの中に隠れている私の前に、誰かが歩いてきた。
『……取り逃がしがあるかと思えば、稚児か』
父の頭を掴んでいたあの男。エメラルドの瞳が私を睥睨する。
『去ね』
瞬間、私の身体は胴を蹴られて宙を舞い。
ごぎん、と首の骨が折れる音と共に地面にぶつかった。 - 225編集初心者マン◆bvw/mWLSaA23/04/16(日) 22:53:18
すまない、今日は遅いのでここまでに……
合いの手、ハートなどありがとうございます。
それでは皆様、お疲れ様でした。