【SS】ホタル (ナリタタイシン)

  • 1アタシ23/04/08(土) 21:23:17

    クラヤミのなかで、ホタルのヒカリがひとり、くらりくらりとふゆうしている。

    ホタルははたしてどれくらいとおくにいるのだろうか。
    ちかづくと、ホタルはふわりとにげてしまった。
    ちぢまることのない、うんめいのようなキョリ。
    テをのばしてみても、とどくはずもない。

    ホタルをこのテにとろうとして、どろりとはしりだす。

    なまりのヨウにおもいからだ。
    やまないナミダ。

    それでも、はしりだすことをヤめることなど、できるはずもなかった。

    ミズカらのすがたすらみえることのない、ごくゲンシてきなクラヤミ。

    ニカンコウネンのあいだにひろがる、はてしないはてしないクラヤミを、ただカけてゆく。

  • 2アタシ23/04/08(土) 21:23:37

    じゅうびょう。
    いっぷん。
    いちじかん。
    いちにち。
    いちねん。
    じゅうねん。
    ひゃくねん。
    いちまんねん。
    いちおくねん。

    ながい、とほうもなくながいジカンを、みずからすらもおきざりにするかのごとく、ただひたすらにはしりつづけていた。
    かんぜんなるセイジャクのなか、はしるオトだけがクラヤミへとつたわってゆく。

  • 3アタシ23/04/08(土) 21:23:49

    ずっと、かんがえていたことがあった。

    なぜジブンははしりつづけているのか。

    かんがえて、かんがえて、かんがえた。
    しかし、ついぞカイトウがでることはなかった。
    みたされないタマシイのなか、マッシロに、こうこうとヒカリカガヤくイッテンのキョム。
    それをおおいかくそうと、ムジュンすらもはねのけようと、ただひたすらに、いとのきれたまりおねっとのように。

    むじゃきなこどものようで、げんかいをむかえたろうじんのように、りせいをなくしたけもののようで、まるでちょうぜんてきなかみのように。

  • 4アタシ23/04/08(土) 21:24:14

    クラヤミはやがてはれ、しゅういにははくぎんがひろがっている。

    からだは、はねのようにかるくなっているようだ。

    けれど、アタシははしりつづけた。

    うちゅうがぼうちょうし、ひびわれ、しんくうほうかいをおこし、なにもなくなって。
    ゆらぎがおこり、うちゅうがうまれ、あらゆるものがうまれて。

    そんなことをいくども、いくどもくりかえすなかでも、アタシはかわらずはしりつづけた。

    いつのまにか、ホタルのヒカリはみえなくなっていた。

    それでも、ホタルのヒカリをもとめつづけて、はしりつづけた。

    スガタカタチがかわっても、なんどうまれかわっても。
    アタシは、はしりつづけた。

  • 5アタシ23/04/08(土) 21:24:31

    なんおくかいめかの、うちゅうがうまれたときだった。

    ふと。からだが、うごくのを、やめた。

    しばらく、たちつくす。

    たちつくして、そして、みちなりをふりかえる。

    たどってきた、まいるすとーんもない、えいえんのクラヤミのなか。

    まるでほしぼしのように、たくさんのヒカリがただよっていた。

    たえずくりかえす、いっとうせいのヒカリ。

    ムゲンのヒカリのなかには、ミンナがいる。

  • 6アタシ23/04/08(土) 21:25:16

    ──アタシは、ヒカリにテをのばした。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/08(土) 21:26:05

オススメ

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