(SS注意)キタちゃんがトレーナーの耳を触り自身の耳も触らせる話

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:19:17

    「トレーナーさんとあたしの耳って、全然違いますよね」
    「どうした急に」

     仕事をしているトレーナーさんを見つめながら、ボンヤリと呟く。すると、トレーナーさんがこっちを見つめてくれた。
     ここはトレーナー室で、あたしはソファーに座っていて、トレーナーさんとお話していた。でも、途中でトレーナーさんは仕事に集中していて口数も減っていった。集中しているのに邪魔をしたくない。感じた寂しさを見ないふりして、その様子を眺めることにした。
     少し短めの髪から見える耳。……あたしたちウマ娘と違って、小さくて動かせないらしいそれを、何となく不思議に思ってしまい、つい溢れてしまった言葉。
     しまった……。トレーナーさんお仕事してるのに手を止めさせちゃった……。

    「あっ……ごめんなさい……。お仕事中なのに……」
    「今日の分は今片付いたから大丈夫だよ」
    「そうですか……。よかった……」

     ニコリと笑うトレーナーさんの言葉にホッする。それなら大丈夫かな?さっき感じていた寂しさが顔を出している。今なら邪魔にならないよね……。触れ合うことでこの寂しさが消えるのなら、そう思って自分の心が赴くままに行動しようと思った。
     深呼吸して覚悟を決めよう。すぅ……はぁ……。うん、やるって決めたんだ。それを貫き通そう。
     姿勢を正してトレーナーさんに向き直り、そのまま勢いに身を任せた。

    「トレーナーさん、耳を触ってもいいですか……!」
    「えっ……なんで……?」

     そんなあたしの願いに当然の疑問が返ってきた。それを聞いて頭の中が冷静になった。
     なんで……と言われると、答えられない。寂しかったからです。なんて、トレーナーさんを困らせてしまうに違いないから。

  • 2二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:19:36

     寂しさ以外の理由を探したくて、頭の中がグルグルしてしまう。

    「そう……ですねぇ……。えっと……」
    「理由は出てこない?」

     本当はある。でも、言えない。言えないことの苦しさがあたし自身を傷つけていた。
     それなら、触りたいからですって言ったほうが困らせずに済んだのかな?寂しさ以外に理由があるならそれ以外にないだろう。
     ふと、トレーナーさんを見てみると、少し申し訳無さそうな表情でこちらを見ていた。……どうしてトレーナーさんがそんな顔してるんだろう?

    「困らせちゃったみたいだね……ごめんな。触っても大丈夫だよ」
    「えっ、いいんですか……?」
    「今のはこっちが意地悪だったしね……。それにキタサンなら変なことはしないと思うから大丈夫かなって。でも、痛くはしないでほしいかな」

     その好意に感謝して、トレーナーさんの後ろに回り、おずおずと耳を触ってみた。
     不思議な感覚だ。柔らかいわけでもない。でも、硬すぎることもない。同じなようで全然違う耳は自分のことだけ考えてちゃいけないよね。

    「痛くはないですか?」
    「あ、あぁ……大丈夫……」

     あたしと形が違うとしても、耳は大切な場所だ。何かがあっては大変。痛くないかを聞いてみると、なにかを必死に我慢している様子のトレーナーさん。それがすごく心配だった。不安を口に出してみる。

    「えっと……本当の事言ってほしいです」
    「いや、痛くはないよ……」
    「本当に?」
    「ほ、本当だよ……」

     震えてるトレーナーさんに、釈然としない気持ちはあるけれど、大丈夫だって言葉を信じたい。そう思い、傷つけないようにより一層丁寧に触る。
     耳の後ろ側をサワサワ。耳の前をサワサワ。その度にトレーナーさんは震えていた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:20:01

     何度か触っている時、トレーナーさんが手を出した。えっと……どういう意味かな?よく分からず混乱してしまう。

    「す、済まない……。もう限界だ……」
    「や、やっぱり何かダメでしたか!?ごめんなさい……」

     手を出した理由は、やめてほしいの合図だったみたい。やっぱり良くなかったんですね……。慌てて手を離して謝る。

    「駄目……というか……。痛いとかではないんだけど……くすぐったくてさ……。このままじゃ笑っちゃいそうだから……その、恥ずかしくて……」

     そう言ったトレーナーさんは、顔を赤くしていて、あたしに目を合わせないようにしていた。良かった……嫌われたとかではないんだ……。そう思うと安心する。それに恥ずかしそうにしているトレーナーさんが、少し可愛く見えて何だか嬉しかった。

    「えへへ……貴重な体験が出来ました!ありがとうございます!」
    「君が満足してくれたなら良かったよ」

     あたしが触っていた耳を触りながら赤くなってるトレーナーさん。……本当はもっと触りたい。だけど、トレーナーさんからやめての合図が出たからこれでおしまい。寂しい気持ちがあるけれど仕方ないよね……。

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:20:42

     ソファーに戻って、トレーナーさんの耳を触った手で、自分の耳を撫でていると、ふと思ってしまった。もしもトレーナーさんが、あたしの耳を触ったらどんな感じなんだろうって……。どんな風に触ってくれるのかな?どんなこと考えてくれるのかな?どんな風に……。溢れる思いは止まってくれそうもない。
     その思いは自然と口に出ていた。

    「えっと……トレーナーさん……。今度はあたしの耳を……トレーナーさんが……触ってみませんか……?」
    「えっ……?えっ!?」

     動揺している様子のトレーナーさん。それを見ても、あたしの気持ちは治まってくれない。止まってくれない思いのままにトレーナーさんをじっと見つめる。

    「ダメ……ですか……?」
    「そう……だなぁ……」

     そう問いかけることで、悩ませてしまうことは分かってる。分かってるけど、そう言わずにはいられなかった。
     はじめは悩んでいる様子で下を向いていたけど、顔を上げた時にハッとした表情に変わっていた。あたしの耳を見てるような……?何となく気になって耳を触ってみる。気づいたら耳が倒れていた。あはは……これじゃあ、あたしが落ち込んでるみたいだな……。

    「そうか……だから……」
    「トレーナーさん……?」
    「……俺もウマ娘の耳がどんな感じなのか、気になってはいたんだ。だから、こっちからお願いしてもいいかな?」
    「!……ありがとうございます。トレーナーさん……」

     そう言ってくれたトレーナーさんの表情は、とても優しくて寂しさを包んでくれるみたいだった。……本当にありがとうございます。あたしのことを考えてくれて……。凄く嬉しいです……。

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:21:17

     そ、そうだ。触ってもらう準備は出来てたかな?耳は……多分大丈夫。触り心地も悪くないはず。さっきまで力なく倒れていた耳は、現金なことにもうピンと立ち上がっていた。

    「そっちに行っても大丈夫かな?」
    「は、はいっ!お願いします!」

     その言葉通り、トレーナーさんがゆっくりとこっちに来てくれた。
     カツカツ……と歩いてくる音が、何となく耳に残ってしまう。ここまで来るのに、そんなに遠くはないけれど。何故かここに来るのが遅く感じてしまう。まだかな……まだかな……。尻尾も落ち着いてくれない。
     そうしていたら、後ろ側にトレーナーさんがいるのを感じる。いよいよ始まるのかと思うとドキドキが止まらない。

    「その……お願い……しますね……?」
    「ああ……」

     耳をピョコピョコ動かして、トレーナーさんの手を誘う。トレーナーさんの手はゆっくりと近づいてくる。ドキドキしながら待っていると、耳の後ろ側に何かが当たる感覚が伝わってきた。
     どうやらそれは指みたいで、あたしの耳の先から下に向いて動いていた。まるで、ガラス細工を触るかのように、優しく繊細に触ってくれていて、くすぐったい気持ちになる。

    「痛くないか?」

     心配そうな声で、あたしにそう問いかけてくれる。それがまた嬉しかった。
     大きくなる心臓の音。その音の煩わしさを、トレーナーさんの優しい手が止めてくれてるみたい。

    「トレーナーさん……凄く気持ちいいです……」
    「それなら良かったよ」

     トレーナーさんの顔は見えないけど、その声色は優しくて、さっきよりも胸が煩くて仕方ない。仕方ないはずなのに……。

    「…………」
    「キタサン?」

     撫でてもらえばもらうほどに寂しさが溢れてしまう。触れた温かさが他の部分との温度差を、強く感じてしまうようになってしまった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:21:45

     何であたしはソファーを選んだんだろう。この背もたれがなかったら、あたしはトレーナーさんに背中を預けることが出来たのに。全身に温かさを感じることが出来るのに。こんなにも近いのに何故だか遠く感じる。それがとても寂しくて仕方なかった。
     その寂しさがあたしの耳を動かしてしまった。撫でてる手に向けて耳を当ててると、トレーナーさんは驚いたのか、撫でてる手が止まってしまう。

    「あ……ごめんなさい……」
    「痛くないから大丈夫だよ。だけど、どうして?」

     問いかける言葉にあたしは何も言えない。寂しかったからです。なんて、さっきまでやってもらっていたことを考えたら矛盾している。その矛盾を言葉に出来はしない。

    「その……」
    「うん」

     だから、違う言葉で伝えようと思った。それなら今のあたしでも出来そうな気がしたから。何でもないふりをしながら言葉に乗せる。

    「耳でトレーナーさんとタッチしたかった……なんて、おかしいですよね……」
    「耳で……?」
    「変なこと言ってますよね……!忘れてくれて大丈夫です……!」
    「……」

     きっとあたしは、寂しさを紛らわす為に耳で直接繋がろうとしたんだ。手と手だったなら、握手してお互いの温もりを感じるのと同じように、あたしは耳と手を繋げたかったんだろう。……無意識の行動だったから
    分からないけど、何となくそうなんだと思える。
     でも、耳で手にタッチだなんて、おかしな事を言っているのは分かってる。どんな風に思われたかな……?どんなことを言われるのかな……?思えば思うほど不安は膨らんでいく。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 08:22:08

     そんな不安を感じながら待っていると、耳に何かが触れるのを感じる。これは……手のひら……?もしかしてトレーナーさんが……?

    「こんな感じかな?」
    「トレーナーさん……?何で……?」

     そう聞き返すと、トレーナーさんは手を離して、あたしの目の前まで来てくれた。しゃがんでくれているから、目線も同じになっている。真っ直ぐ見つめ合うあたし達。

    「俺もタッチしたかったから……なんて、おかしいよな」
    「トレーナーさん……」

     その表情はいつも通り優しくて、あたしの寂しさを包み込んでくれるものだった。

    「おかしくないです……。凄く嬉しいです……!」
    「そうか……それなら良かったよ」

     お互い見つめ合ったタイミングで笑い合う。静かだった空間が温かな雰囲気に包まれる。

    「トレーナーさん……また耳を触ってもらってもいいですか……?」
    「大丈夫だよ」

     そう言うと、今度は前から耳を触ってくれた。さっきまで感じてた寂しさはもう無くなっていた。嬉しさのあまり、トレーナーさんに抱きついた。
     トレーナーさんの胸に顔を埋めてその感触を確かめる。やっぱり優しくて温かい……。あたしの耳を触ってくれる手の温かさと同じそれを感じながら、あたしは安らぎに身を預けた。

  • 8123/04/09(日) 08:24:39

    元々は耳を触りあうイチャイチャ書きてぇ〜……から始まったはずなのに、気づいたらキタちゃんが今まで書いたことないくらい落ち込んでるしちょっとシリアス寄りの心境だし……。
    どうしてこうなったんだろう……。

    それは置いておいて、ウマ娘の耳ってかなり感情豊かに動くので今後も耳のお話を書けたら良いなと思いました。

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