六花「人生で大切なこと」

  • 1書いてる人23/04/09(日) 18:08:47

    ここは南口のやっすいファミレス。
    ドリンクバーで粘りながら長いこと他愛のない話に花を咲かせていた宝多六花と南夢芽であったが、その内に、少しだけスマホを弄っていた夢芽がふと思い出したような調子で顔を上げ、

    「そういえば……なんですけど」
    「んー?どうしたの夢芽ちゃん」
    「六花さんて、裕太さんのこと。えっちだなって思ったことあります?」
    「げっふほぁ⁉︎」

    折しもアイスティーを傾けていた六花が盛大にむせ返った。危うく口にしていた物を飛び散らせずに収められたのは流石に乙女の嗜みといったところか。
    しばらくげほげほと咳き込んで、それが落ち着いてから彼女はようやく、目の前の友人の真意を図る機会を得た。

  • 2書いてる人23/04/09(日) 18:10:42

    「げほっ……ご……ごめん、夢芽ちゃん……えと、なんて言ったの今……」
    「裕太さんはえっちですかって話です」
    「うーわもうほんとに言ってたこの子っ……いやちょ、いっ、え、え〜っ……⁉︎なんでいきなり、そ、そんなことっ……」
    「別にエロい意味じゃないですよ?」
    「エッ……ロ、いとか、エロく、ないとか、別にそういう話じゃ、なくてさぁ……!」
    「つまりですね。六花さんは裕太さんを見てて、可愛いなって思うこと。そういうのって、ありますか?」
    「かわ……いい?裕太を……?」
    「どうですか」
    「…………。いやだからちょっと待ってってば。どうしてあたしが夢芽ちゃんにそんなこと話す流れになってんの?おかしくない?おかしいよね?」
    「今一瞬よぎってましたね、頭」
    「ちょ、ちーがっ!今のはっ、少し、冷静になろうとしてただけでっ……!」

  • 3書いてる人23/04/09(日) 18:12:18

    「ちなみに、なんですけど」
    「え〜もうなに今度はぁ……」
    「蓬は。めちゃくちゃえっちです」
    「えっ……え、っち……いやだからほんとその、え、えっちって言うの、やめてってば……」
    「例えば、蓬が家にいるときなんですけど」
    「えなにこの子急になんか一人で語り出した……」
    「蓬って、家でリラックスするときはメガネ掛けてるんですよ。夜寝る前とか、朝起きた後とか」
    「あ……あ〜なんか……なんかそれ前見た気がする。えと、なんだっけあのほら、あのー、夢芽ちゃんたちとかキャリバーさんたちとか、みーんなでウチ泊まってたとき?」
    「そのときの蓬見て、私。思いました。私の彼氏、とんでもなく可愛いなって」
    「へ、へ〜……あ、そういう。そういう……ね!あ、そういう感じの話かこれ!あーもうびっくりしたぁ……」

  • 4書いてる人23/04/09(日) 18:14:18

    「その辺、六花さん的にはどうなんですか。裕太さんは」
    「え、えぇ〜……?でも待ってそんな、今このタイミングでする、この話?色々さぁ、場所的にも問題っていうか……」
    「大丈夫です。私が保証します」
    「どっから湧いてるの、その自信……」
    「可愛いですか。可愛くないですか」
    「そ……そりゃあ、そりゃあね?そりゃあ、あたしから、すれば、えと。その、まあ、たまに?たまーに、可愛いな、って……思うことはある、けど……」
    「ほほう。それは例えば?」
    「んぇ〜……っ⁉︎た、例えば……んー例えば……例えば……あ」
    「おっ」
    「なんか、うん。あったかも……」
    「言っちゃいましょう。どーんと」
    「いや別になんかそんな大した話じゃないよ?えっと、ね?一年のとき、裕太と同じクラスだったんだけど」
    「はい」
    「そのときはまだ怪獣も出てきてなかったから、そんなに仲も良くなかったんだけど。でもなんかその頃から結構目ぇ合うことが多かったっていうか、こっち見てきてたっていうか……」
    「裕太さんが?」
    「そ〜。で、あたしがそれに気付いてそっち見ると、すぐに逸らしたりして……でもまたちらっと見てたりしてて……そのときは正直、少し……って思ってたりもしたけど……」
    「今、思うと……?」
    「……ちょっと、可愛かったかも」
    「うーわー!」
    「あーもっ、やめ、そんな大きな声出さないでって!」

  • 5書いてる人23/04/09(日) 18:16:56

    「いやぁ裕太さん、六花さんのこと大好きですねぇ。ていうか六花さんも、よくそんなこと覚えてますね。まだ仲良くもなかった頃なのに」
    「いやでもだってそれはほら、夢芽ちゃんだって!夢芽ちゃんだって覚えてたりするんじゃないの⁉︎蓬くんとほら、仲良くなる前のこと!」
    「いやまぁ、それはそうですけど」
    「あーはい!じゃあはい、今度は夢芽ちゃんの番ね!蓬くんの可愛いとこ、はい!」
    「えー、うーん……そうですね。これもまだ、そんなに蓬と喋ってなくて、少しずつ仲良くなり始めたかなってときの話で」
    「うんうん」
    「蓬が、あの、ダイナソルジャーで戦う練習してるときに川にダイブしちゃって、それのせいで風邪引いちゃったことがあって」
    「えっなにそれ大変じゃん、大丈夫だったの?」
    「まぁ一応は。で、私、お見舞いに行ったんです。蓬の家に」
    「え〜夢芽ちゃん優し〜……えら〜い……」
    「……で、お菓子とか持って家行って、蓬の部屋に入ったら、蓬寝てたんです。いや寝てるのかなって思ってたら私の声で起きたみたいで、布団から顔出してくれました」
    「うんうん。それで?」

  • 6書いてる人23/04/09(日) 18:18:05

    「もうえっちでしたね」
    「もうえっちでしたね⁉︎」

  • 7書いてる人23/04/09(日) 18:19:22

    「いえ、もちろんそのときはそんなこと考えてませんでしたよ?普通に心配だったし、そもそもそんな仲良くないし」
    「う、うん……」
    「でも。蓬と付き合ってる今から思い返せば。風邪引いて弱ってたあの時の蓬……めっちゃえっちでしたね……」
    「な、なんか、しみじみ呟いて良い話感出すのやめようね夢芽ちゃん……さっきから言ってること、割と最低だからね……?」
    「だって六花さん。仕方なくないですか。あの蓬が、熱で顔赤くして、目つきも気持ちとろんってなって、なんかちょっと上目遣いでこっち見てくるんですよ?可愛い過ぎません?」
    「いやでも風邪引いてるんだしさぁ……弱ってる人をそういう風に思うのはなんか……あれじゃない?」
    「でもでも。顔赤くしてる裕太さんは、ちょっと……?」
    「……ちょっと、可愛い」
    「ちょっとえっち?」
    「……ちょっと、えっち」
    「はい、言質取れましたー!」
    「ちょ待っ、今のはちがっ、乗っかっただけじゃん、夢芽ちゃんに!」

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:19:26

    あれはえっちでしたね

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:20:02

    眼鏡+αの状態だから相当ですよ

  • 10書いてる人23/04/09(日) 18:21:00

    「いやでもなんか裕太さん、照れ屋さんっぽい雰囲気出てるからな〜……。告ったときとか、めちゃめちゃ顔赤くしてそう」
    「あ〜…まぁ……ね?確かにそんな感じでは、あったけど……でもそれはあたしも同じだったっていうか……ほとんど裕太の顔、見れてなかったっていうか……」
    「……六花さん」
    「え……?」
    「今。自爆してるの、気づいてます……?」
    「えっ……あっ⁉︎ちょっ、あっ、あーっ!あーもほんと、ほんっと待って今のほんと、いやちょっとマジで違く、て……っ!」
    「へ〜……お二人の馴れ初めってそんな……へ〜……あっ、へぇ〜……」
    「夢芽ちゃんやめてその顔、ほんとにもー……!あぁもうなんであたしこんな話っ……」

  • 11書いてる人23/04/09(日) 18:22:32

    「つまり。蓬も裕太さんも、赤くなってる顔が可愛くてえっち……」
    「いやなにもつまりじゃなくない⁉︎」
    「でも可愛いんですよね?照れてる裕太さん」
    「かっ……かわ……かわ、可愛い、けどぉ……!」
    「じゃあもう、あとはどうやって男どもを照れさせるか。もうそういう話ですよ、これは」
    「いやややや全っ然そういう話じゃないし、てかてか男どもって……!」
    「大丈夫です。私。裕太さんを一発で照れさせる方法知ってます。蓬もこれでいけましたし」
    「え……な、なに、それ?」
    「あ、そこは食いつくんですね」
    「だ、だって、その、そんな言い方されたら、気になっちゃうし……」
    「ドーセーです」
    「は……?」

  • 12書いてる人23/04/09(日) 18:23:51

    「同棲、したいって言えばいいんです」
    「ど、ど、えっ、ちょっ、えっ、えぇっ…⁉︎」
    「すごいですよ。これ言った時の蓬、最高にえっちでした」
    「いっ……言ったの⁉︎夢芽ちゃんが⁉︎蓬くんに⁉︎」
    「ええ、まあ。はい。言いました。学校で」
    「学校で⁉︎」
    「あ、ちゃんと二人きりでしたから。それに、高校卒業したらって話でしたし」
    「いやそこじゃない!絶対そこじゃないから、この話の問題点!」
    「六花さんも言ってみてください。裕太さん、絶対可愛い顔してくれますよ」
    「いいいい言えるわけないじゃんそんなの!どうせいっ、同棲ってことは、ほら……その……裕太と、一緒に住むってことで……そしたら、もしかしたら、あの、け、結婚、とか……そういう、ことが……」
    「え、いいじゃないですか。何か問題あります?」

  • 13二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:24:51

    おいこの恋愛怪獣やばいぞ

  • 14書いてる人23/04/09(日) 18:25:53

    「問題なくないでしょ!だってまだあたし達、高校生でっ……!同棲とか結婚とか、そんなっ……!」
    「私は、結婚したいですよ。蓬と」
    「え……」
    「蓬以外の人なんか、考えられません。私は蓬が好きです。私に幸せを思い出させてくれた、大切な人なんです。絶対に、絶対に、私は、蓬と結婚したいです」
    「夢芽、ちゃん……」
    「六花さんは、違うんですか。六花さんは裕太さんと、結婚したくないんですか。裕太さんは……六花さんの。大切な人なんじゃ、ないですか」
    「あ……あたし……だって、あたしだって、裕太を大切に思ってる!裕太以外に結婚したい人なんてっ……そんなの、そんなのいるわけないじゃんっ……!」

  • 15書いてる人23/04/09(日) 18:27:11

    「ほら。だったら、それでいいじゃないですか」
    「で、でもでもそれとこれとは話が違うっていうか……!それに……それに、もし、急にそんな話して、裕太が、イヤな気持ちになったらっ……あ、あたしっ……」
    「大丈夫ですよ。裕太さんはそんなこと言う人じゃありません」
    「分かんないじゃん……裕太は優しいんだから口に出さなかったとしても、心で思ってるかも知れないじゃん……あたしが変なこと言ったせいで、裕太が、いなくなっちゃうかも知れないじゃん……!」
    「……怖いんですね、六花さん」
    「怖いよっ……怖くないわけないっ……裕太がどっか、あたしの手の届かないどっかに行っちゃうのが、あたしは一番怖いんだよ……いつもいつも一人で勝手に決めて、こっちを振り返りもしないで、迷わずに走っていっちゃうんだからっ……」
    「……蓬も、そんな感じです。人のことばっかり考えて、助けようと手を伸ばして、それでいつも無理して自分自身を傷つけてしまう。優しすぎるんですよ。蓬も……それに、裕太さんも」
    「……うん」

  • 16書いてる人23/04/09(日) 18:28:37

    「だから、蓬と裕太さんにはあたし達が必要なんです。蓬がどんなに無理をしても、裕太さんがどこに行っちゃったとしても……あたし達が二人の、あの人たちの帰る場所になってあげないといけないんです。そうじゃないと本当に……本当にいつか、いなくなっちゃうかもしれないから……」
    「……うん。そう、だよね……。あたしが……あたしがしっかりしなきゃいけないんだ。裕太がちゃんと、あたしのところに帰って来れるように……」
    「六花さん。私、絶対に蓬と結婚します」
    「……うん」
    「だから……六花さんも。六花さんも絶対、裕太さんと」
    「うん。絶対、裕太と結婚する……」
    「約束ですよ」
    「ん。約束」
    「ありがとうございます、六花さん」
    「うん。えと、あたしの方こそ……その、ありがとう……」

  • 17書いてる人23/04/09(日) 18:29:43

    「それはさておき裕太さんがえっちだなっていう話なんですけど」
    「いや台無し!待っていまいまめっちゃ、めっちゃ真面目な話してなかったっけあたし達⁉︎今の空気どこやっちゃったの夢芽ちゃん、ねぇ⁉︎」

  • 18二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:30:37

    >>13

    脳みそもうデロッデロですよこれ

  • 19書いてる人23/04/09(日) 18:30:46

    「いやあとはもうなんか六花さんが裕太さんに逆プロポーズして裕太さんの可愛くてえっちなお顔を見れば終わる話ですから。ねぇ?」
    「ねぇ、じゃないし意味分かんないし逆プロポーズなんかしないし!夢芽ちゃんホンット最近キャラ変だかんね、マジで!」
    「でも裕太さんと結婚したいんですよね?」
    「しっ……それはっ、したい、けどぉ!でもだからってそんな」
    「だ、そうですよ。裕太さん」
    「……………」
    「……………」
    「…………は?」

  • 20二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:31:57

    うわぁーお策士ぃー

  • 21書いてる人23/04/09(日) 18:32:20

    六花は一瞬、夢芽がなにを言っているのか理解できなかった。いや、できなかったというよりも、したくなかったと言うべきだったかもしれぬ。
    夢芽は六花の顔を見ていない。ファミレスの座席に座った六花の後ろ、彼女の肩越しやや高めの空間に、その翠色の双眸を投げかけているのである。
    いる。
    気配がする。
    間違いなく、誰かがそこに立っている。
    そしてそれが誰であるか……六花は、すでに、分かってしまっていた。

    「…………ゆ、ゆう……た……?」

    振り向かないまま、六花は背後に問いかけた。
    もっとも今の彼女は、振り向くどころか顔を上げることすらできない状況ではあるのだが。

  • 22書いてる人23/04/09(日) 18:33:07

    「り……りっ……か……」

    耳慣れた少年の声が、それに応えた。
    その声もいささか、震えているようである。

    「ど……どう、して……」
    「あ……えと……夢芽さんに、呼ばれて……ふ、二人がファミレス、いるっていうから……よ、蓬も、オレと一緒に……」
    「あ……ども。こんちわっす」
    「そ……そう、なん、だ……」

    混乱する六花の脳裏に、スマホを弄る夢芽の姿がさっとよぎって消えていった。

  • 23書いてる人23/04/09(日) 18:34:06

    麻中蓬が、突っ立っている響裕太の隣をすり抜けるようにして、夢芽の隣へと着席し、

    「ゆーめ。また何か変なことやったでしょ、これ……」
    「やってないよ。ちょっと背中押しただけだし」
    「だからぁ、それが変なことだって言ってんの。二人には二人の事情があるんだから、あまり首突っ込み過ぎても良くないでしょ?」
    「……だって」
    「なにさ」
    「だって私、嬉しかった……」
    「嬉しかったって……何が?なんの話?」
    「かに……」
    「かに?」
    「蓬んちの蟹、一緒に食べようって言ってくれて、嬉しかった……」

  • 24書いてる人23/04/09(日) 18:35:16

    「…………」
    「いきなりだったし、恥ずかしかったし……変な顔、しちゃってたし。すぐには返事、できなかったけど。でも、私、すっごく、嬉しかったんだよ、蓬……」
    「……うん。そっか」
    「あれさ……そういう、意味だったんでしょ……?」
    「いや言わせないでよ、そんなこと……」
    「……だから、六花さん達も。きっとそうなったら、幸せで、嬉しいだろうなって……それで……」
    「……優しいね、夢芽は。だけど、だめだよ。友達なんだからちゃんと、見守ってあげないとね」
    「うん。ごめん……」
    「よくできました。今度から気をつけよ?」
    「うん。そうする」
    「よしっ。それじゃあまず、六花さんに。言うことあるよね?」
    「うん。あの……六花さん……その……」

    おずおずと、夢芽が六花に口を開く。

  • 25二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:35:30

    幸せのおすそ分けってか
    夢芽ちゃんできる子

  • 26書いてる人23/04/09(日) 18:36:28

    「今の六花さんと裕太さん。めちゃめちゃ可愛くてえっちですよ」
    「はい俺たち今日はここで失礼します!二人ともまた今度ね!あ、夢芽の分のお金ここ置いとくんで!夢芽はちょっとこっち来よっか!」

  • 27二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:37:19

    多分これ夢芽的には終始割と真面目な話なんだけど浮かれポンチの所為で接続回路がおかしくなってるんだな

  • 28二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:37:44

    気ぶり怪獣浮かれポンチに改名しろ

  • 29書いてる人23/04/09(日) 18:37:53

    代金を卓に叩きつけた蓬、叫ぶや否や夢芽の首根っこを引っ掴み、慌ただしく退店していった。
    後には、席に座って俯く六花と、未だに立ち尽くしている裕太の二人だけである。
    店内の喧騒が、やけに小さく聴こえている。

    「…………」
    「…………」
    「……え、えと、六花……?」
    「……なに……」
    「そ、その……す、座っても、いい……?」
    「……いい、よ」
    「あ、ありがと……えと、じゃあ、お邪魔します……」
    「……そっちなんだ」
    「え……?」
    「……座るとこ……」
    「あ……う、うん……ごめん……えと、じゃあ、こっち……」
    「……ん……」
    「…………」

  • 30書いてる人23/04/09(日) 18:39:07

    「………ねえ」
    「な……なに?」
    「裕太……今、どんな顔してる……?」
    「え……オ、オレ?えぇっとぉ、それはぁ……」
    「お願い、教えて……あたし今、裕太の顔見れない、から……」
    「その……赤いよ。多分、とっても……」
    「……あたしの、顔は……?」
    「え、えっと、うん……六花も、同じ、かな……」
    「……そっか……」
    「……うん……」
    「…………」
    「……六花」
    「…………」
    「六花。オレ、言いたいことがあるんだ」
    「……なに……」
    「六花。オレと、けっ…結婚、してほしい」

  • 31二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:39:10

    どっちに座ろうとして
    どっちに座ったんだ!!

  • 32二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:39:45

    >>31

    正面行こうとしてあえての隣でもいい...!

    逆の王道ももちろんいい!

  • 33書いてる人23/04/09(日) 18:40:34

    六花が赤く染まった顔をさっと上げ、その日初めて、裕太の姿をその目に映した。
    裕太の頬も六花と同じく紅潮し、その呼吸は心なしか切迫していて緊張しているようであったがしかし、彼の蒼い瞳には、紛れもない決意の光が宿っている。
    その美しく強い光に、六花は何度、目を奪われてきたことだろう。裕太が走り出すときに必ず見せていた、この眩しい輝きに。
    六花がこれまで心の奥底で必死に押さえつけてきたものが、そのとき、一気に迸り出た。
    見る間に六花の両眼から熱いものが吹きこぼれてきたかと思うと、六花は、とうとう堪えきれなくなって、その想いの丈を叫びに乗せて爆発させたのである。
    「なんっ……なの、それ……!いきなり結婚してほしいって、それがどういうことか分かってるの……⁉︎そうやっていつもいつも、大事なことを自分一人で、相談もしないで、一人で勝手に決めてさぁ!あたしの気も知らないでっ、裕太が決めたことが、あたしにとってどんなに大事で大切なことかも知らないで!あたしのせいで、裕太を困らせてるかもしれないのに、なんでっ、いつもいつも、そんなにまっすぐな目ができるのっ……どうして裕太っていつもそうなの……⁉︎結婚なんて、そんなの、すごく、裕太の人生で大切なことなのにっ……!どうして、どうしてっ、自分の未来とかっ、しないといけないこととかっ、そんなにすぐ、決めちゃったりするのっ……!少しは迷ったりしろよ!少しは、イヤな顔とかっ、してよぉっ……!」

  • 34書いてる人23/04/09(日) 18:43:10

    店内がしんと水を打ったように静まり返って、いったい何事かとこちらを伺う気配に満ちた。
    泣きじゃくった六花が裕太にしがみ付くようにして、彼の体を抱きしめている。
    裕太は優しく、六花のよく手入れされた素晴らしい黒髪を撫でてやり、

    「ごめん。六花。オレっていつもこうみたいだ。六花を喜ばせようって思ってるのに、何故かいつもその逆のことをしてしまう……」
    「ぐすっ……ひぐっ……」
    「だけど六花。オレはイヤじゃないよ。むしろ嬉しいんだ。六花が、そういう風に思ってくれてるってことが。困ったりなんかするわけない。オレのことを考えて、オレのことを大切に想ってくれる六花と、オレは、本当に結婚したいんだ。自分の意思で……」

  • 35書いてる人23/04/09(日) 18:44:16

    「ゆ、裕太……ゆうた、はっ、ぐすっ、それで、いいのっ……?」
    「当たり前だよ。だってオレは、六花のことが好きなんだから。好きな人と結婚したいって、それが自然でしょ?六花は……違うの?」
    「ううんっ……ううんっ!違わないっ……違わないよ……!あたしも、あたしもっ、裕太が好きっ……裕太と、絶対、結婚したいっ……!」
    「……ありがとう、六花。オレ、すごく嬉しいよ……」
    「うんっ……!」
    「それに。夢芽さんと約束しちゃったもんね。オレと結婚するって」
    「えっ……えぇっ⁉︎な、な、なんっ、でっ……」

  • 36二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:45:11

    蓬一回あの怪獣に説教しろ

  • 37書いてる人23/04/09(日) 18:45:40

    慌てきった六花が裕太からがばりと身を離した。
    それを見た裕太が安心したような笑顔を見せて、

    「あはは。良かったぁ、少しは泣き止んだ?」
    「な、泣いてなっ……えぇっ⁉︎え、て、ていうか、いつから、あたし達の、話っ……⁉︎」
    「いや結構聞いてたよ。ほら、ユニバースとユニバースって割と、移動時間早いから」
    「いやだからそうじゃなくて!そのっ……ど、どこ、からっ……」
    「……ねえ、六花」

    と、裕太がそれまでの頼もしい眼差しとは打って変わって、急に引き取られたばかりの子犬のような眼の色になった。
    そして、六花の服の袖をちょこんと掴み、躊躇いがちに、恥ずかしげに、さも消え入りそうな声で、問い掛けたものである。

    「オレって。……そんなに、えっちですかね……?」

  • 38書いてる人23/04/09(日) 18:47:30

    「ひゅっ……」

    風の鳴るような奇妙な音が六花の喉笛から響いた。
    会話を聴かれていたことへの羞恥と、恥じらう裕太の表情への衝撃、そして彼の発した単語の背徳さとが六花の中で混ぜこぜになり、そして限界を迎えた。
    一気に満面を真っ赤に火照らせた六花は、頭からぽふんと煙を吹いて、そのまま気を失って裕太の胸元へ、その顔をうずめてしまったのであった。
    その頃には周囲の人間も異常なしと見たかして、こちらの様子を盗み見ることもなく、店内は普段の賑やかさを取り戻している。
    裕太がまた、己の胸に頭を預けて気絶している六花の髪を、愛おしげに撫で付けた。

  • 39二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:48:11

    えっちに決まってんだろ!!

  • 40書いてる人23/04/09(日) 18:48:52

    後の日になって……。
    六花の母親が営むジャンクショップ〔絢〕に、来客があった。ちょうど留守を預かっていた六花が応対してみると、これがなんと南夢芽と麻中蓬ではないか。

    「え、どうしたの急に二人とも……?」
    「いやぁ……ちょっと、ですね。ほら、夢芽」
    「うん。えと、六花さん。これ……」

    蓬に促された夢芽が何か菓子折りのようなものを六花に手渡し、そして、深々と頭を下げた。

    「この前は……ごめんなさい。わたし、やっちゃいけないことしちゃいました」
    「え〜…⁉︎いやそんなわざわざこんな……⁉︎あたし別にそんな気にしてないよ……⁉︎それに夢芽ちゃんだって夢芽ちゃんなりに、色々考えててくれてたんだし……!」
    「でも、悪ふざけもありました。友達だからって調子乗っちゃってたんです。本当に……ごめんなさい」

  • 41二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:50:19

    家帰ってから冷静になったんだな…

  • 42書いてる人23/04/09(日) 18:51:04

    「六花さん。俺からもすみませんでした。夢芽ってばあまり友達いないから、距離感が分かってなくて……」
    「やだもうちょっと顔上げてってば二人とも!え〜なんか調子狂うなぁ……!え、ていうか蓬くんは別に悪くないよね?何も一緒になって頭下げなくてもよくない?」
    「そこは一応、彼氏ですから。責任は取らないとですよ」
    「うーわ真面目か……夢芽ちゃん、絶対蓬くん逃しちゃダメだよ?こんな良い人、絶対いないからね?」
    「はい。絶対にそうします」
    「後はまあ正直俺も裕太と六花さんのことは、ふふっ、うわこいつらもう早く結婚しろとは思ってたんで、まあそういう意味でも一応、はい」
    「あもうなんかいいや今ので。なんかすごくどうでもよくなった……え〜でもこれ美味しそう、夢芽ちゃんこれあれでしょ、あのほらあれ、バームクーヘン!」
    「はい。そんな感じのです」
    「うーん……少しおっきいかなぁ〜……よし!じゃあ、みんなで食べないっ?夢芽ちゃんも、蓬くんも!」

  • 43書いてる人23/04/09(日) 18:52:33

    「えっ……い、いいんですか?」
    「ほら、あたしとお母さんだけで食べると余っちゃいそうだし!今裕太も呼ぶからさ!はいっ、じゃあ座って座って!」
    「ええっと……じゃあ、はい……」
    「えと、じゃあ俺も、失礼して……」
    「ん〜と……裕太の電話番号は、と……あ、あと内海くんも呼ぼっかな……?あ、それと、夢芽ちゃん!」
    「あ……はい?」
    「あたし、ほんとに怒ってないからね?あのときのこと。それに少し、感謝だってしてるんだから!」
    「感謝……ですか?」
    「そ〜。んふふ……裕太の恥ずかしがってる顔、お陰様で見れましたからね〜……!」
    「えっ……そ、それは、詳しく聞いても⁉︎」
    「夢芽。本当に反省してる……?」
    「うっさい蓬。だって六花さんが自分で喋ろうとしてるんだからいーでしょ!」
    「いやそれはそうかもだけど……」

  • 44書いてる人23/04/09(日) 18:54:09

    「とにかく、女の子同士の大事な話なんだから黙ってて!それで六花さん!裕太さん、どうでした!どうなったんですか⁉︎」
    「いや食いつき。あのね、裕太ね。その……あたしに、将来、結婚しようって」
    「ひゃーーーー!」
    「おぉーーーー!」
    「いやもう結局蓬くんも一緒になってんじゃん、ほんとに君たちさぁ……」
    「そ、それでそれで!そのときの裕太さんの表情は!可愛かったですか!えっちでしたか⁉︎」
    「ううん」

    六花は、静かに被りを振り、少しの間だけ瞼を閉じた。
    その瞼の裏に、あのとき自分を見つめてくれた裕太のまっすぐな瞳の光が、鮮やかに蘇ってきた。
    目を開けた六花は、興味津々といった夢芽と蓬へ、嬉しそうに微笑んでみせた。

  • 45書いてる人23/04/09(日) 18:55:20

    「裕太はね。すごく……すごく、かっこよかったよ」

    そう言うと、手にしたスマホの通話ボタンを優しくタップしたのであった。
    コール音が二回鳴り、やがて、愛しい少年の呑気な声が、六花の耳に届けられてきた。

    おわり

  • 46書いてる人23/04/09(日) 18:56:45

    おしまいです。
    お付き合いいただきありがとうございました。
    お楽しみいただけたのなら幸いです。

  • 47二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:56:58

    おつ
    とりあえずこの浮かれポンチをどうにかしろ蓬

  • 48二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:57:09

    でもやっぱエッチだと思うんですよ

    エッチとカッコイイは両立する!!

  • 49二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:57:32

    乙!面白かった

  • 50二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 18:58:51

    乙っす!
    キャストトークと相まってすげえニヤニヤしました!

  • 51二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:00:15

    そうかーバームクーヘンかー

    ・・・・・・バームクーヘンエンド…(ボソッ)

  • 52二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:01:36

    バームクーヘン食べに来た内海だけ何も知らないのである!

  • 53二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:05:27

    >>52

    つまり内海とはっすのお互いのエッチなところを暴露させられるのも観れるんですか!?

  • 54書いてた人23/04/09(日) 19:08:14

    本作は後で別のところにもアップ予定です
    でも見かけたとしてもここのことは言わずにそっとブクマを押したり、他の作品を覗いてみたりする程度に留めてくださると嬉しいです
    もし見かけたらその時はこっちでなら他の作品のことを言うのは大丈夫です
    とにかくこのSSがあにまん産だとバラすことは認めん
    裕六よもゆめのブランドに傷が付くからな……

  • 55二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:10:12

    >>54

    了解しました!

    他所での他言無用ということで!

  • 56二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:10:36

    了解!

  • 57二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:13:47

    大丈夫?この夢芽、ちせ相手に蓬のえっちさ語ったりしてない?

  • 58二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:17:03

    >>54

    ここまで素晴らしい情動溢れる文章がなんだってこんな掲示板に何個もあるんだ!!皆もっとちゃんとしたとこに投稿しろ!

    けどスレ立ててくれてありがとう!おかげでいいもん見れたよ!どこかでまた見つけたらきっと読みますとも

  • 59二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:53:21

    浮かれポンチが頭浮かれポンチで非常に良かった

  • 60書いてた人23/04/09(日) 19:54:28

    某所にアップしてきました
    みなさんコメントありがとうございます
    時間帯や規制がかかるとお返事できないので申し訳ないですが全部見させてもらってます

    いや私は響裕太くんがえっちだなって話をしたかっただけなんですよ
    信じてください

  • 61二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 19:59:18

    >>60

    それでこれをお出しできるんならそれはもう神なんですよね

    いや裕太がエッチなのはほぼ満場一致で賛同されるでしょうが

  • 62二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 20:15:17

    新作毎秒投稿よろしく

  • 63二次元好きの匿名さん23/04/09(日) 20:16:24

    終始ニヤニヤしっぱなしだったわ
    ありがとうございます

  • 64二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 07:32:56

    もっと読まれるべきスレ

  • 65書いてた人23/04/10(月) 12:18:02

    あ、まだスレ残ってた
    みなさんコメントありがとうございます。嬉しいです
    他の場所でも多くの人に読んでもらえてて嬉しいです
    なんかまたこの4人で書きたいですね

    えっちえっち!裕太えっち!
    そういうスレタイにしようと思ってましたが……やめました
    正解だったのだろうか

  • 66二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 12:22:37

    >>65

    一周回って正解だったかもしれませんねw

    色々脳に染みるので今後とも応援させていただきます!

  • 67二次元好きの匿名さん23/04/10(月) 14:26:12

    滅茶苦茶良かったです!!!


    この浮かれポンチ大怪獣、本当に反省した方が良いぞ…

オススメ

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