- 1二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 13:48:25
※バンブーシナリオ前提注意
※ヤエノ誕生日なのにバンブーの出番が多いのも注意
「あっ………」
数日前の話。バンブーメモリーはふとカレンダーを見て、思い出した。
「…もうすぐ、ヤエノの誕生日だ」
ヤエノムテキ。皐月賞と天皇賞・秋を制した中距離の強者の一人。そして___バンブーメモリーの、ライバルの一人。
「…っし!盛大にお祝いしなきゃ、っスね!!!」
そう言うと彼女はプレゼントを買いに街へ飛び出していった。………そう、何を買うかも定まらないまま。
「………あー…ヤエノって…何なら喜ぶのかなぁ………」
バンブーは街を歩きながら考える。
武道に使える用具?いいや、本人のこだわりがあるだろう。トレーニング用の器具?…彼女のトレーナーに無許可で買うのも如何なものだろう。いっそ可愛いぬいぐるみ?…彼女が可愛い物が大好きなのは、周りには秘密のはずだ。勝手に押し付けるわけには…
「…そういえば」
その秘密を、バンブーメモリーは知っている。
「なんで、アタシには教えてくれてるんだろう?…なんで、アタシの前では…隠さないんだろう」
気になったら止まらない。
バンブーは元きた道を引き返し、まっすぐヤエノのところへ向かった。
場所は変わり、ヤエノムテキはトレーニングをしていた。
「はっ、はっ…くっ…自己ベスト更新ならず、か…」
…一人でトレーニングに打ち込むヤエノ。周りには併走相手も何もいない。ただただ彼女は走っていた。
「…されど、今年もまた栄光を掴む為には…」
そう、トレーニングを再開しようとしていた時…
「あっ、いた!おーい、ヤエノー!!!!!」
不意に、大きく元気な…聞き慣れた声がした。
「…バンブーさん?どうかしましたか?何か用事でも…」
「はいッ!ちょっと気になることがあるんス!それで聞いてみたくて!」 - 2二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 13:48:39
「…成程。私が貴方に護り癖を見せる理由、と」
ことの次第を説明すると、ヤエノは少し考え込む。
「あ、もしかして…聞かない方がよかったやつっスか!?だったらごめんなさいっ………」
「ああ、いえ。そんなことは有りません。が…」
「が…?」
バンブーが小首を傾げると、ヤエノは少しゆっくりと話し出した。
「…私自身でも、解らぬのです。今言われてはっとしました。何故、私は貴方の前では隠したい秘密すら曝け出せるのか」
「うーん?」
ヤエノは考え込む。数秒経っただろうか。バンブーが切り出した。
「でもそれって、アタシとっても嬉しいっス!」
「…嬉しい、ですか?」
「はい!だって、ヤエノはそれだけアタシを信頼してくれてるってことじゃないっスか!」
そう言って、屈託のない笑みを浮かべるバンブーメモリー。
「…嗚呼」
「ん?どうかしたんスか、ヤエノ?」
「いいえ、なんでもありませんよ」
(………そうか。そんな貴方だから………私は)
「…ああっ!」
不意にバンブーが叫び声を上げる。
「っ!?…どうかしましたか、バンブーさん」
「いやっ、なんでもないっス!!!ただいいこと思いついてッ!!!」
「な、成程…?」
(そんなに信頼してくれている…サイコーのライバルに送る、サイコーのプレゼントは………) - 3二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 13:48:49
「………朝か」
ヤエノムテキは目覚める。カレンダーを見れば、自身の誕生日。
「…関係、ないか。今日も鍛錬を………」
寮の自室を出れば、ふと足元に一通の封筒が置かれていることに気がついた。
「………”果たし状”?」
その書き方は…いつか自分が教えた書き方だった。差出人は一発でわかった。
「どういうつもりでしょうか…バンブーさん」
午前の授業が終わり、トレーニングの時間帯になると。ヤエノは勝負服を纏い、トレーニングコースに立っていた。
「言われた通り勝負服で来ましたよ。…バンブーさん」
そこには、そちらも勝負服を纏ったバンブーメモリーがいた。
「…へへっ、待ってたっスよ、ヤエノ」
「どういうつもりですか。正装たる勝負服を着てこいと言うからには、それ相応の用事があるとお見受けします」
「その通りっス!ヤエノ…今の全力、全身全霊で、アタシと併走してください」
………ただ併走するだけの雰囲気では到底なかった。
「…それだけ、ですか?」
「あー…その前に言っておくっス。お誕生日おめでとうございます、ヤエノ!」
「ぁ…」
祝われると思ってなかった誕生日。不意に祝われ、ヤエノは少し動揺するが、すぐに落ち着いた。
「…ありがとうございます。それで…その」
「でも、アタシ達の間に…ヤエノの”親愛なる強者”であるアタシと、アタシの”サイコーのライバル”であるヤエノの間に、言葉も物も要らないと思ったっス」
「………」
「走りましょう、ヤエノ!」 - 4二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 13:48:59
「全く…相変わらずの人です」
「えっ、えっ!?アタシなにかおかしいこと言っちゃったっスか!?」
「いいえ、そんなことは有りません」
ヤエノはどこか柔らかい笑みを一瞬だけ浮かべる。が、次の瞬間…本気で走る、その時の顔になった。
「…バンブーメモリーよ。私の前で再び”親愛なる強者”と名乗ることの意味、わかっていない訳ではあるまい」
「勿論っスよ」
「…真剣勝負です。どちらかが勝ち、どちらかが負ける」
「わかってるっスよ!…サイコーの勝負にしよう、ヤエノ!!!」
2人は走り出す。
輝かしい時代の中距離に咲いた華、ヤエノムテキと、短距離に芽吹いた華、バンブーメモリー
その勝敗は、彼女達しか知らない。 - 5二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 13:50:15
ヤエノ誕生日でバンブーからのお祝いメッセージがなかったことがショックすぎる俺が書いたSSです
でもアルチヨヤエもクリークも尊いから許します!!!!!
一応過去にはこんなもの書いてました↓
【自作SSまとめ】とあるトレーナーのSS|あにまん掲示板SS読んでる?様にピックアップされたのをきっかけに作ってみたhttps://bbs.animanch.com/board/794102/?スレ画はバンブーだけどそれ以外も書くぞ!下10レスくらいは初S…bbs.animanch.com - 6二次元好きの匿名さん23/04/11(火) 14:22:16
ド真っ直ぐな気持ちが美しいですね