ハッピーミーク「勤労感謝の日、かあ……」【SS】

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:37:35

    いつもお仕事を頑張ってる人たちにありがとうを伝える日、らしい。
    ……この学園のトレーナーは祝日も関係なく担当の面倒を見ているみたいだけど。
    でも、私のトレーナーに感謝を伝えるにはちょうどいい日だと思った。
    早速プレゼントでも買いに……。

    ……トレーナーって、なにを贈ったら喜んでくれるんだろう?

    服やアクセサリー……?
    いや、もしそれで喜んでくれるとしても私自身が疎い分野だ。
    どんなものがいいのかすらわからない。
    じゃあ料理……?
    ダメだ、トレーナーのほうが抜群に上手いのは私の舌とお腹がよく知っている。
    なら物以外でどこかに遊びに誘うとか……?
    ……そもそも私が知っている遊べる場所なんてほとんどないんだった。

    「……どうしよう」

    私はすっかり途方に暮れてしまった。

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:37:50

    気がつくと私はグラウンドに来ていた。
    無意識に向かう場所がいつもトレーニングしているところだなんて。
    そう考えると胸の奥がどうしようもなく寂しくなってしまった。

    「あら、ミークさんどうかなさいまして?」

    声の方を向くと、絵本に出てきたドラゴンを思わせる青色の瞳がこちらを見つめていた。
    「カワカミさん……」
    「トレーニング……というわけではなさそうですわね、制服ですし」
    返答に困っているとカワカミさんはコース脇の芝に腰を下ろした。
    「ちょうど休憩をとるところでしたの。一緒に紅茶でもいかがです?」
    「……いただきます」

    水筒に入った紅茶からふわりといい香りがした。
    一口飲むと、香りと一緒に温かさまで体中に広がっていった。
    「おいしい……」
    「それはなによりですわ!さすがファインさんからもらった紅茶ですわ~!」
    ……もしかしなくてもとんでもない高級品を飲んでしまったんじゃないだろうか。

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:38:18

    「トレーナーさんへのプレゼント、ですか……」
    紅茶の香りと温かさのおかげだろうか、ずいぶんとあっさりカワカミさんに悩みを打ち明けてしまった。
    「はい……なにかいいアイデア、ありませんか?」

    カワカミさんはひとしきり唸ったあと、がっくりと肩を落とした。
    「……私、トレーナーさんからもらってばかりでしたわ」
    「えっ、仲良さそうなのに……」
    「だってトレーナーさんはいつも私の趣味に付き合ってくれて、私はそれについつい甘えてしまっていて……」
    「…………のろけですか?」
    じいっと見つめると、カワカミさんは頬を赤く染めて頭をぶんぶんと振った。

    しばらくして少し落ち着いたのかカワカミさんが口を開く。
    「その、貴方のトレーナーのことはやっぱり貴方自身が知るべきだと思いますわ」
    「……わからないから困ってるのに」
    「こうやって悩むことも貴方と貴方のトレーナーにとって必要なことですわ、きっと」
    無責任な物言いで申し訳ないですが、とカワカミさんはぺこりと頭を下げた。
    私はもう一杯紅茶をもらった。


    さっきよりほんの少し苦く、でも温かさはそのままだった。

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:38:38

    「……お店がいっぱい」

    私はショッピングモールに来ていた。
    実際に品物を見たらなにかわかるんじゃないかと思ったのだが。
    ……現実はそう甘くないらしい。

    「あれ?ミークじゃん、どったの?」

    後ろから声をかけられる。
    振り返るとオフなのだろうか、私服姿のジョーダンさんがいた。
    そうだ、この人なら。
    「あの、ジョーダンさん」
    「ん?」

    私はジョーダンさんにプレゼントの相談をした。
    「トレーナーにあげるプレゼントねえ……」
    ジョーダンさんは指を頬に当てて考え込んだ。
    「てか、アンタがわかんないもんをアタシがわかるわけなくね……?」
    「でもジョーダンさん、いろんな人と仲良いから……」
    「アタシの友だちギャルばっかだからな~、あんま参考になんないと思うよ?」
    つい肩を落としてしまう。
    そんな私を見てジョーダンさんは。

    「別にわかんなくてもいいんじゃね?」

    あっけらかんとそう言い放った。

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:39:05

    目を丸くする私を前にジョーダンさんは話を続ける。
    「たとえばアタシとアンタだって全然違うわけじゃん?好きなものとかトレーナーとの付き合い方とか、いろいろさ」
    ジョーダンさんの指が私の胸をとんとんとつつく。

    「大事なのはさ、わかり合うことじゃなくて“わかろうと歩み寄る”ことなんだって」

    「……私には、わからないです」
    「あははっ!実はアタシもよくわかってないんだ!これトレーナーからの受け売りだし!」
    でもね、とジョーダンさんが私の手を握ってくれた。


    「ミークがトレーナーのために頑張ってるのがめっちゃいいことだってのは、わかるよ」

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:39:29

    答えが見つからないまま私は以前トレーナーと一緒に行った水族館に向かった。
    ……休館日だった。
    案内図によると近くにもう一つ水族館があるらしい。
    歩いていくと無人の券売機が見えた。
    お金を入れたが、からんと返却口から戻ってきてしまう。
    首をかしげていると隣の券売機に並んでいた小さな女の子が声をかけてきた。

    「……そっちの券売機壊れてるからこっち使った方がいいよ」

    大きな耳をぴこぴこと動かしながらタイシンさんが助けてくれた。

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:39:51

    「プレゼント、ねえ」

    もう三度目ともなればすらすらと相談できてしまった。
    タイシンさんは水槽を見つめたまま耳だけをこちらに向けていた。
    「別にそんなことしなくてもいいんじゃないの?」
    「でも……トレーナーにはちゃんとお礼を伝えたい、から」
    「……言葉で言ったって伝わんないこともあるけどね」
    そうつぶやいたタイシンさんの目は水槽の中ではなく、別の誰かを見ているようだった。

    順路を進むとクラゲのコーナーに着いた。
    ひときわ暗く、静かな一角。
    小さな窓から見える小さなクラゲをついつい目で追ってしまう。
    「……クラゲ、好きなの?」
    「えと、はい……」
    水槽の窓から差す光がタイシンさんの顔を照らす。
    「ここさ、この水族館の中でもかなり落ち着けるところなんだ」
    「わかる気がします」
    「……誰かになにかを伝えるにはちょうどいい場所なんじゃない?」
    クラゲからタイシンさんの顔に目線を移すと、彼女はにこりと微笑んだ。


    「伝わらないこともあるかもしれないけど、気持ちは言葉にしないと始まらないから」

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:40:19

    トレーナー

    私はあなたと出会うまで真っ白な存在でした

    あなたと出会えてたくさんのことを知って、たくさんの人と出会いました

    でもそれ以上に

    わかりたいことや知りたいことがもっともっと増えました

    だからトレーナー

    私の世界を拓いてくれたあなたに

    目いっぱいの感謝を伝えます

    ありがとうございますトレーナー

    大好きですトレーナー

    これからも、ずっとずっと

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:42:08
  • 10二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 22:57:18

    めっちゃよかった……しゅき……。
    ミークの最後のやつが本当に美しい。とっても素敵ですわー!
    いろんなキャラ出せるのは流石と言うほかありませんね……いつもありがとうございます……。

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 23:17:17

    ちなみにこんな風にコラ画像を使おうとしたのですが、背景や衣装の組み合わせがどうにもならず頓挫したことをここに白状します

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/23(火) 23:17:47

    良かった……ミークと桐生院は軽率にイチャついて欲しい

オススメ

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