- 11はSS初心者23/04/16(日) 00:37:01
「勝利は至上の癒し。クエストクリアです!」
クエストと。そう宣うか、あのウマ娘は。
掲示板に表示された7という着差を眺めて、強く芝を蹴り飛ばした。
チャンピオンズミーティング。
三人一組のチームとなり、九人で競い合うこのイベントは、三人のうちの誰かひとりが一着を取れば、チームの勝利となる。
個々の力で勝つでも、“チーム”が勝てるように走っても良い。
だが。オレたちは他のチームの奴らなんぞ、とっくに眼中になかった。
「Not too bad……あと一歩。──いいや、違う──!」
クビ差だけ前にいたクリスエス。表情は氷のように固く変わらないのに手袋をギリリと握りしめているのだから、その本心はバレバレだ。
皆の試練になる。冷たく在り続けることで周りに熱をもたらす。そうして走っていたくせに、試練を“与えられていた”側の奴みたいにギラギラとした目をしていやがる。
「……まあ、オレもそうか」
他の奴からしてみれば、オレだって、ウィナーズサークルで手を振っているグラスワンダーを、まるで仇敵かのように睨んでいる──そう見えるだろう。
それほどまでに、今回のチャンピオンズミーティング・アリエス杯において、グラスワンダーは他のウマ娘を圧倒していた。
あれだけの長距離で余力を十分に残し、勝負所で加速をすると、一瞬で全てのウマ娘を置き去りにする。最終直線に差し掛かる頃には、もう誰も追いつけない。
何度このパターンを味わったことか。
──だが、勝てないとは微塵も思わなかった。 - 21はSS初心者23/04/16(日) 00:37:49
「シャカール先輩、クリスエス先輩、お疲れ様でした〜」
相変わらず穏やかな顔をして、グラスはオレたちを見上げる。
「Amazing──だった。──そこには、敬意を……表そう」
「あらあら〜。そこに“は”、ですか?」
「Of course. お前の走りは……強い。──But……──これ以上負けるつもりは、ない」
クリスエスの氷のような瞳に見つめられても、グラスは嬉々として目を細めるだけ。
このイベントで何度も勝利することは、ウマ娘の頂点としてふさわしいものだろう。
だが、黄金世代の一角サマは、この程度では満足しないらしい。
同じように頂点を目指さんとする者がいたら、それをまた乗り越えて、果てまで歩み続ける。
自分だけの道をいつまでも追い続けている。そういう意味では、アイツもオレに負けず劣らずのエゴイストだろう。
「──シャカール。お前は──どうだ」
二対の青がオレを見る。
自然と、口角が上がった。
「ハッ! 決まってンだろ。次はこうはならねェ。他の奴らもお前らも、まとめて全部ブチ抜いてやるよ」
「ふふっ。ますます、次のレースが楽しみです」
「──そう来なくてはな」
ウィナーズサークルから、控え室へ足を踏み出す。
過ぎ去ったレースから、次のレースへと意識を向ける。
三者三様の笑みが浮かんではいたが、そこには無数の火花が散っていた。 - 31はSS初心者23/04/16(日) 00:38:22
みたいな、皆さんが今回のチャンミに出したウマ娘どうしの絡みが見られると聞いたのですが
(SSや概念や絵なんでも大歓迎です)(チャンミ関係でなくても日常的なやりとりでも大歓迎です) - 41はSS初心者23/04/16(日) 00:43:39
今回のチャンミでやたらグラスが圧勝してるのでふと思いついて書いてしまいました。グラスだけ距離S粘ったからそりゃ勝ちやすくなってるかもしれないですが
3人とも推しではありますが、口調エミュや考え方について間違いや「そうは思わないだろ」という点がありましてもそこは優しく見守っていただけるとありがたいです(特にクリスエスに関してはロブロイシナリオを読んでないので……)
それにしても、シャカールは挑み続ける者って立場が似合うね…… - 5二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:44:42
書いたら罪悪感で潰れそう(デバフ2起用)
- 6二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:48:13
そんなん急に言われても…ちょっと待って
- 71はSS初心者23/04/16(日) 00:51:08
- 8二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 00:53:04
どの子の視点で書くかもムズいな
- 96(タマ・マック・ブライト)23/04/16(日) 01:13:44
「天皇賞・春っちゅーたら長いこと燻っとったウチが初めて勝てたGIやからな。パパッと勝って見本見せたるわ!」
「いえ、メジロ家の名に懸けてここは私が勝たせて頂きますわ」
ミーティングの最中に火花を散らし合い、そして楽しそうに張り合うのはタマモクロスとメジロマックイーンの二人。
今回のチャンピオンミーティングは超長距離である天皇賞・春をモチーフにしている為実績のあるメンバーをと選ばれた内の二人だ。どちらも相当の実力者であり出走前から自信に満ち溢れているその姿は頼もしいこと他ならない。
しかし基本は三人で出走するこのレース。三人目は誰かというと、優雅に紅茶を嗜みながら眺めるメジロブライトその人であった。
「うふふ~、お二人とも張り切ってらっしゃいますのね~」
二人に比べるとあまりにも覇気がない、一見そう思えるだろう。
けれど彼女を鍛え上げたトレーナーは知っている。彼女の持つ何よりの強みを。
「わたくしはわたくしなりに~、マイペースでがんばりますね~。見ていてくださいまし~」
レース開始の呼び出しが掛かると飲み掛けの茶器を置いて立ち上がるその姿は令嬢らしい優雅さで。同時に揺るぎない力を感じさせて。
―――この日、メジロブライトの強さを多くの者が知ることとなった。 - 101はSS初心者23/04/16(日) 01:23:27
- 116(タマ・マック・ブライト)23/04/16(日) 01:26:56
急ごしらえですまないけど面白いテーマだったから書いたよ
出遅れで台無しになるマックとサポカの都合上デバフに弱いタマと比較すると回復もりもり&固有でぐんぐん前に出るブライトが本当に強いのよ…
全員春天勝ちだけどその中じゃ実績的に劣るブライトが一番強かったというオチ的な
- 121はSS初心者23/04/16(日) 08:22:18
- 13◆os6UVi1GVMOT23/04/16(日) 11:14:20
「フラッシュ、タマ、キング。まずはラウンド2初日、よく頑張ってくれた」
『お疲れさまでした。やはりラウンド1とはメンバーが別物… 苦戦続きでしたね』
『…今集めたからには何らかのメンバーチェンジがあるって事よね?覚悟はしてるわ』
「そうだ。我々のチーム"光る金の玉"では現状A決勝に行くのは難しい」
『今更やけど最低のチーム名やな』
「メンバーのテコ入れとしてネイチャを招聘しようと思っている。同格相手との対戦では3エースよりデバフ役が居る方が勝ち目があるとの判断だ」
「実際、キングの終盤加速が成功しても相手陣営のスタミナデバフから終盤減速され差し切られる…という負けパターンが何度か観測された。ラウンド1でも似た事例が何度もあったのに見ないふりをしていた俺の責任だ」
『しゃーない。事情は理解したわ。誰を外すんや?』
『今のところはタマモさんが勝ち頭よね。勝ち星の数でいえば私が外れることになるけど』
「ただすまない、ここからは完全に俺のエゴだ…!タマかフラッシュ、どちらかに外れてもらうことにした!恥ずかしい話だが、俺はキングにMs,Victoriaを歌わせたいんだ!」
『…何言ってんのよおばか!私に好意を持ってくれてるのはこの際いいわ!でも今この場でそういう話して、二人に失礼だと思わないの!?』
『…わかりました。トレーナーさんがキングさんに男気を見せたいのであれば私が控えに回りましょう』
「フラッシュ」『フラッシュさん…』『…ええんか』
『入着実績で判断した場合の合理的判断です。それにタマモさんが居ないと、トレーナーさんが男を上げようというのにタマナシになってしまいますから』
『結局下ネタオチかい!真顔で言うことちゃうやろ!!!』 - 14二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 14:10:27
アタシの役割なんて、いつもこんなモノだ。
でも…それでもコレが、今のアタシ達の最善手と言う奴らしい。
「…ん」
「ありがとうございます」
タイシンさんから差し入れされたコーヒー。
冷たい缶の感触が、火照った肌に気持ちが良い。
「無茶な采配にはお互い苦労するよね。コースのシミュレーションくらいしろっての」
「あはは…タイシンさん、体力いつも切れてますもんね」
「体力管理が難しいアタシを出すなんて自殺行為たって言ったんだけど、なんかハマった時が気持ちいいからって聞いちゃくれない」
「…ギャンブラーなんですかねえ」
「さあね。…ま、オグリさんが勝つから良いんじゃないの。あの人、チキン食べて楽しそうだし」
「キラキラした人の考えはわかんないですよ、ホント」
「あの人の考えてることなんて、食べることかレースのことじゃないの」
「聞いてみます?」
「…今考えているのは君たちのことだ」
「うわぁっ!?」
「神出鬼没過ぎない…?」
「ただ通りがかっただけだ」
「まあ、アンタがそう言うならそうなんだろうけど」
「しかし…私がチキンを食べられるのは君たちのお陰だと伝えたくてな」
「はあ…さいですか」
「ネイチャはともかくアタシが居る意味ある?」
「ハマった時のタイシンの走りは気持ちが良いからな」
「…うわあ、同類じゃん…アイツと」
「うまくは言えないが…少なくとも私は良いチームだと思っている。君たちが良ければ…これからもよろしく頼む」
「…はいはい」
「…いつまでやらされるんだか」
アタシの役割なんて、いつもこんなモノだ。
だけど、これがチームの、仲間の勝利の為の最善手なら…悪くは、ないのかもしれない。
(お互いの呼び名がわからない私…捏造する私…) - 15二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:20:52
- 161はSS初心者23/04/16(日) 20:43:12
- 17二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 00:35:58
「貴方のトレーナー、客席から心配そうに見てますよ?作戦ミスでしょうか?」
「タイシンさんは小さい体なのによくやりますねぇ」
「春天で前に出すぎたら勝てないジンクスがあるらしいよ」
「大豆は畑の肉なんですよブライアンちゃん」
牽制し、焦らせ、囁き、躊躇わせる。単体では目立たない微細な効果。
だが積み重ねたそれらは確実に相手の集中を乱し、戦意を削りとっていく。
「そのバ身はセーフティリードには足りなさそうです~」
「おや、パフェのクリームがお口に。レース前に食べたのかな?」
本当は私もキラキラしたい。クリークさんも同じだろう。
でも、任された役割に異を唱えることはしない。
「わたくし、何度でも光を指し示して参りますわ」
エ ー ス
彼女にはチーム3人分の重圧がかかっていることを。瞳の奥の決意を私達は知っているから。 - 18二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 01:25:31
アタシの名前はナイスネイチャ。チャンピオンミーティング、アリエス杯の 3人のメンバーの1人で不動のエースだ。
…随分と大きく出たものだとアタシも思うよ。ただこのチーム、この場所ではアタシはかなり[特別]だ。
今回のメンバーは古くから居ながらも最新の調教で開花した漆黒の長距離専門のステイヤー。
今回のアリエス杯だけの為、特別にスカウトされた最新の技術を持つサトノの令嬢。
…いずれも[アタシを勝たせる為、同脚質かつデバフも出来るメンバーをかき集めた]と聞いた。
ここのトレーナーさんはアタシを勝たせる為に戦慄を練る。これはここにいるメンバーが全員が知っていて承知している事なわけだか、何故かそれが全体の底上げに繋がり、過去のチャンミで全てグレードA決勝まで駒を進めている。
ただその中でアタシが貢献出来たのは片手で収まるほどしかない。それ程アタシと他2人の素質はかけ離れていている。 - 19二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 01:37:28
- 20二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 08:39:05
どのチームのメンバーも多分決勝行くんだよな
みんな頑張って欲しい - 21二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 08:40:17
このレスは削除されています
- 22二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 08:48:46
───冗談じゃない。
スパートを開始する上り坂を勢い任せに駆け上がりながら、背後に迫る脚音に思わず溜息が溢れ出る。
「先輩方、ちょっと怖すぎますって~……」
ジュニア級、更にはデビュー前から三冠を望まれたウマ娘は、纏う覇気から既に格が違った。
「これがトリックスターと呼ばれる所以か。面白い、血が滾る……!」
「キミの走り……自由で楽しそうだな~」
幾許かの差を付けて先頭を進んでいるはずなのに、かえってそれが、掌の上で転がされているような錯覚に陥らせる。
前へ踏み出す度に脚に纏わりつく風が、自分を呑み込まんとする貪欲な獣のようにさえ思えた。
「……ま、それでも勝つのはセイちゃんですけどね~?」
最終コーナーに差し掛かり、追い縋る怪物達を引き離すべく神様さえ凌駕する勢いで再加速する。
期待こそされなかったものの、自分とて三冠ウマ娘。
実力では数段下だったとしても、負けられない意地がある。
勝負どころの最終直線、背中に突き刺さるような視線を感じつつも、前だけ見据えて一心不乱に駆けていく。
各々が勝利を掴んで欲しいという意図でメンバーを構成したトレーナーさんを、この怪物だらけのチームに放り込んだトレーナーさんを、少し恨めしく思いながら。 - 23二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 14:20:02
- 24二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 15:27:34
- 25二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 20:06:25
面白そうだな、書いてみよう
筆遅いからたぶん明日になるけど - 26二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 21:25:06
「キタちゃんもダイヤちゃんも頑張っていますねぇ。私も頑張らないと」
「クリークさんもダイヤちゃんが上手く抜け出て来れなかった時やアタシが上手く逃げられなかったりとかするのにいつも上位で走ってきていて頼りになります」
「それに、いくらVRウマレーターを使っているとはいえ80レースもするのは大変ですから、クリーク先輩がなんとかしてくれるって安心感は助かってます」
チャンピオンズミーティング。VRウマレータを使っているとはいえ普通のウマ娘が一生をかけても走らないレース数を短期間で走る事になる大会。チーム戦かつ9頭立てという少頭数ではあるものの対戦相手のチーム分布、レース展開は都度違い、精神的な疲労感は否めない。
(……お二人はまだ元気そうですね。チーム内の選抜に勝った以上私達には責任があります。しかしそれは相手チームの方々も同じ。二人にはのびのび走って貰えるように、スタミナを中心に練習してきましたが……そろそろ厳しいですね)
ラウンド1を終えてチームはA予選に進出した。相手のチームも確実に強くなって10レースを終えたところ。通算50レースを走ったスーパークリークは仲間二人に悟られぬように精神的疲労を笑顔の裏に隠す。
「クリーク……ラウンド1はお疲れ様。それで、だ。言いづらいが選手交代だ」
「私はまだ走れます、トレーナーさん」
「だろうな。だからこれは俺の判断だ。だから責任は全部俺に押し付けていい。パーマーと交代だ。すまないな、そしてここまでありがとう。君は後輩二人が勝った試合でもコースの遮断や競りかけなどよくチームに貢献してくれた」
「ありがとう……ございます、トレーナーさん。お二人をお願いします、パーマーちゃん」
「このパーマーさんにまかせといて。あの二人の事も、これからの事も」 - 27二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 21:39:48
「ステータス『登録期間』を確認。チョコを一口、しっかり身を休めましょう」
「それでは私は、コーヒーを一杯……淹れましょうか。一息吐くには丁度いいかと」
「素敵だね! なら私もお茶菓子持ってこようかな。おせんべいとか美味しいよね」
チャンピオンズミーティング・アリエス杯。私にとっても印象の深いGⅠレース、天皇賞・春を再現した舞台。いつかのバレンタイン衣装に身を包んだ私は、共に走るチームメイトと束の間のお茶会を催していました。
漆黒の幻影ことマンハッタンカフェさん、大輪の遅咲き桜ことサクラローレルさん。共に生まれながらのステイヤーとしてトゥインクルシリーズを駆け抜け、今もこうして適性に見合った舞台で大活躍を収めています。
……ラウンド1。初めのうちは、私がチームのエースとして勝利を掴み取ってきました。カフェさんもローレルさんも晩成型、故に、早々に仕上がった私が──長距離適性の低い私を、それでも鍛えてくれたマスターには感謝が絶えません──ラウンド2へのチケットを手にするまでに至ったのは、感無量だったことを覚えています。
……しかし。マスターの育成指針の変更。長距離レースに特化した育成から、そもそも芝のバ場に慣れることを意識したトレーニング。それらを踏み越えたお二方の実力は、私を遥かに凌ぐほど成長していました。
片や、持久力のみならず魂まで貪り食われるような漆黒の威圧。片や、その暴威すら飲み込んで花咲いた桜前線の遡上。チームの白星のほぼ全てを、ローレルさんが手にするようになった頃。私は掲示板に入るのがやっとという状況を迎えていました。
チームの2人も、マッチングするライバル達も。実力を増したのが伝わって来ます。そんな中で、私の現状はどこか歯痒く感じられてしまい……
「……ブルボン、さん? 大丈夫ですか……?」
「ボーッとしてたけど、もしかして凄く疲れてる?」
「……申し訳ありません。ステータス『自問』、考え事をしていました」
掛けられた声に、意識が浮かび上がり。ふわりと湯気立ったコーヒーの香りが鼻腔を刺激します。心配そうな表情を浮かべた2人に、思わず謝罪が口を突きました。 - 28二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 21:40:40
……悩みごとがあったら相談して欲しいと言われ、ぽつぽつと思考を曝け出します。明日は決勝を共に走る仲間、私の悩みで2人に気を揉ませるわけにはいきません。
「そっか……大体勝ってるの私だもんね」
「チームの誰かが勝てば良い……とは言っても、不安になるのは仕方のないことかと」
そんな私の話に、ゆっくりと首肯するカフェさん、うんうんと腕を組んで唸るローレルさん。……その視線が交錯し、鮮やかに花開いた桜が私の視界を捉えました。
「Il faut de tout pour faire un monde. ……最初にブルボンちゃんが支えてくれていなかったら、私もカフェちゃんもラウンド2には間に合わなかった。私が勝って、決勝まで進むことが出来たのは、ブルボンちゃんのお陰でもあるんだよ?」
「それに……私達では、逃げを打つ方々に手出しが出来ません。それを抑えてくれるのも、私達が優位にレースを進められる理由の一つなのでしょう」
「カフェちゃんのスタミナグリードも、本当に助かってるよ!」
そう言って、微笑むカフェさんとローレルさん。手を伸ばして摘んだチョコレートに舌鼓を打ち、「何が言いたいかと言うとね」と続けました。
「ブルボンちゃんが居てくれて、本当に良かったって話! だから、明日ももう一回『一緒に』頑張ろうね!」
「トレーナーさんの、初優勝のためにも……私達3人で、頑張りましょう。ブルボンさん」
その言葉に、今まで抱えていたモヤモヤが消え果てて。闘志がメラメラと燃え上がるのを感じました。
「はい。オペレーション『優勝』を受諾。必ず勝ちましょう……カフェさん、ローレルさん」
「……ええ」
「うん!」
……相手はまだ見ぬ強敵達。マッチングの結果次第で、私達では到底届かない相手と当たる可能性も否定はできません。それでも。
私達を導いてくれたマスターと。共に走ってきた彼女達のために。このオーダーは……絶対に諦めないと。私はそう決意したのでした。 - 291はSS初心者23/04/17(月) 21:41:52
朝に保守上げなどド忘れしたまま外出してしまいましたがSSがいくつも上がってる!ありがとうございます!!
システムのデバフを物語に落とし込んでるの良い……確かにどんなふうにしてるのか、想像の余地がありますね
ふたりが、言うなれば嫌われ役だとわかってるのもかっこいいし、勝率で本当に応えているブライトもかっこいい……!
ネイチャはデバフ役としての起用が多い印象だけど、もちろん勝たせたいトレーナーさんだっていますよね!(グラス推しとしては共感できるところがあるかもしれません)
素質はかけ離れてると思っていても、不動のエースという自覚をそのままに持っていてほしい!そして決勝でも優勝してほしい!
いつも飄々としているセイちゃんが焦って戸惑い、そして負けられないと意地を張っているところからしか得られない成分、ありますね!
語りからブライアンとCBの怪物っぷりが伝わるけど、きっとセイちゃんはニヤリとしてるんだと思うと、みんな強者って感じがしますね……!
ありがとうございます!
保守頑張りますので、お待ちしています!!
- 301はSS初心者23/04/17(月) 22:10:32
感想を書いている間にSSが増えてる!ありがとうございます!!
かわいい後輩の前では頼りになる先輩でいようと努めるクリークさんかっこいい!クリークを降ろすと決断をするトレーナーさんも覚悟が決まってて良いし、次を任せるのがパーマーならこれまた頼りになりそうで良い……
あと、チャンミのレースを実際に走っているのではなくVRでやってるという発想が個人的に刺さりました
なかなか勝てなくて歯痒い思いを、仲間でありライバルでもあるふたりに素直に打ち明けられるブルボン、えらい……!そして精神面と事実面、それぞれのアプローチで励ましてるふたりも素敵
あと、メタ的に言えばラウンド1か2のあたりで育成しなおしたことがわかることがひとつのお話に組み込まれているところが好きです
- 31二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 22:48:34
- 32二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 03:25:24
「ナカヤマちゃん、スカーレットちゃん明日の作戦の最終確認しておかない?」
ウキウキとどこか浮かれたような、それでいて声をかけた2人に緊張感を与えるようなどちらとも取れる声色。
「…あぁ」「そうですね!」
声をかけられた2人がそれを肯定する。
「距離が長いので途中で息を入れて…」
と言う声を遮り
「私は今まで通りやってきたことを全部出すだけさ」
口の片側だけを吊り上げ、不敵に笑う。
「アタシだって今まで通り、最初っから最後まで1番で走ってみせます!!」
張り合うように先程の理屈っぽい回答は何処へやら、グッと拳を握りながらやる気に満ち溢れた回答。
「2人ともいい気合いだね!みんなで表彰台独占しちゃうおうね! 」
───────後はゲートが開く時を待つのみだ!
3回しか育成してないのにエースになったローレルとスーパーラッキーセブンが発動したらほぼ勝ってくるフェスタと個人的チャンミ皆勤賞のスカーレット。
全員に勝って欲しい - 331はSS初心者23/04/18(火) 08:42:37
ナカヤマだ!!1の推しなので、ナカヤマが登場するSSはとても嬉しいです、ありがとうございます!
自然と相手を煽るナカヤマはかっこいいし、優等生が剥がれて「いちばん!!」が出るスカーレットがかわいい!ローレルも、先輩として雰囲気を作るのが上手いなあ……
- 341はSS初心者23/04/18(火) 08:45:34
朝の保守上げも兼ねて、SS第二弾ができましたので投下します
今日は決勝ですが3人の顔合わせの話です。女性トレーナーが出てきます。拙作ですがご容赦を - 351はSS初心者23/04/18(火) 08:49:49
今日はチャンピオンズミーティング・アリエス杯の初ミーティングの日。顔合わせの日です。
私を主として三人一組となるチームですが、今回はどなたと組むのでしょう。どなたにせよ、素晴らしい勝負になると良いのですが……。
「──失礼する」
「入ンぞトレーナー」
ガラリとドアを開けて入ってきたのは、クリスエス先輩とシャカール先輩でした。
長距離レースですからシャカール先輩はいらっしゃるだろうと考えていましたが、クリスエス先輩が呼ばれることには驚きです。手元で揺れるビニール袋が気になります。
「いらっしゃいふたりとも! シャカール、今回もよろしくね。クリスエスとは初めてチームを組むけど……必ず、盛り上がる勝負になるよ」
「……!」
シャカール先輩がため息をつきながら頷く横で、クリスエス先輩は黒くて大きな耳をピンと立てました。強者が切磋琢磨するこの催しは、毎度ハイレベルで注目度も高いですから。“使命”を果たす一歩になること間違いなしでしょう。
「……ハァ。グラスお前、なんかずっと走ってンじゃねェか?」
「──ずっと、とは?」
「前の皐月賞モチーフのは理解できる。けどコイツ、ちょっと前はウララたちとダート走ってたし、さらに前はカレンたちと短距離走ってたンだよ」
「──……What?」 - 361はSS初心者23/04/18(火) 08:50:36
クリスエス先輩の顔が固まりました。
クールというよりは、鳩が豆鉄砲を食ったよう、でしょうか。
「──グラス。お前の適正は──芝のマイルや……中距離のはず、ではないのか?」
「いやあ、そうなんだけど……」
クリスエス先輩の言うことに間違いはありません。トレーナーさんも正論を言われて苦笑いです。
ですが。
何の合図もなく、私とトレーナーさんは顔を見合わせます。きっと、トレーナーさんも思うことは同じ。
「ウマ娘の頂点はひとつじゃないから」
「ウマ娘の頂点はひとつではありませんから」
やっぱり。声が揃いました。
ウマ娘として生まれたからには、この足でどこまで行けるのか確かめたい。チャンピオンズミーティングは、その望みを叶えるうってつけの機会です。挑まない手はありません。
あらゆる手を尽くして私を走らせようとするトレーナーさんも、私がどこまで走れるのか楽しみにしているのだと思います。
「Unbelievable──いや……wonderful. ──そう、言うべきだな」
私が思うよりも先に、トレーナーさんが「一本取られたな〜!」と言いながらも笑顔で頷きました。
「そうかァ? Greedyだと、オレは思うけどね」
強欲、ですか。
確かに、そのような形容もあるかもしれません。 - 371はSS初心者23/04/18(火) 08:51:36
「そういえばさ、その袋は? もしかして差し入れ!?」
「──Uh……これは、大福だ。──使命を果たさせてやらねば……と、思った」
トレーナーさんが目を輝かせる目の前で、先輩は商店街の和菓子屋のロゴがプリントされた袋をひっくり返しました。かなりの数の大福やお饅頭が、小さな山を作っています。
「──売れ残り、だ」
「うわぁ……これいくつあンだよ」
「大丈夫。トレーナー室の冷蔵庫に入れとけばもう少し日持ちするよ。それに、私含めて四人いるんだから、わりと余裕で食べきれそうじゃない?」
「ア゛ァ!? なんで当然のようにオレが入ってンだよ!?」
「──そうか。Thanks. トレーナー」
「なァ、たった今オレ反論してたよな? そこ照れるところかよ!?」
「ふふっ。皆さんの分のお茶、淹れますね〜」
「ありがとう、グラス!」
「ンだよもう……。おいトレーナー、カロリーの計算やり直すから付き合えよな」
わかってる、と呑気な声をあげて、トレーナーさんはいちばんに包装紙を開けました。
さて、私もお茶を淹れたらいくつか和菓子をいただきましょう。
早くしないと欲しいものが取られてしまうかもしれないけど、ここはのんびりと。
焦らないで待っていたからこそ味わえる美味しさも、きっとあるのですから。 - 381はSS初心者23/04/18(火) 08:59:08
- 39二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 09:49:20
決勝の結果次第でまた書きたいな
- 40二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 12:50:05
普段絡みのないウマ娘ちゃん達が見られる良スレ
- 41二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 12:52:07
売れ残り根こそぎ買ってきちゃうボリクリかわいい…
- 42◆ozQzQmPAFVSy23/04/18(火) 18:02:33
この3人の繋がりなどそれほどない、当然チームを組む以上交流はあったし、話が弾んだこともあった
トレーニングで互いを高め合うために意見交換をしたり、全員が脚質(差し・追込・逃げ)が別なためにそれぞれの脚質が仕掛けるタイミングやライバルが出走してきた際、どのように対処すればいいかなどのことを共有し合った。
「キタちゃんは最後の最後まで諦めずに走り続けます、だから競り合う時には中盤から要注意です、キタちゃんはエンジンが入るとどこまでも伸びていきますから。」
「チケットはね、こっちが参るくらいの根性がある、あのダービーを競った時一度差したハヤヒデを差し替えしたんだ、ああいう手合はちょっと勘弁してほしい、ハヤヒデもハヤヒデでどんな状況も対策してくるから、下手な小手先柄はないで真っ向勝負したほうが勝率あるかもね。」
「あたしのライバルはね、ありえないことをやっちゃうくらい何でもないのよ、予選のときも何回か遭ったでしょう?【中距離マイル】、【短距離マイル】が主戦場なのに、長距離のここに平然と顔を出してくるの、考えなしに来るわけじゃないのよ、一番になるために担当トレーナーと日夜ずっと対策とトレーニングをして、本来噛み合わない長距離の舞台に勝つために走り出してくるわ、でも負けないわ、一番になるのは・・・。」
三人一組で出走する形式故に中にはチームで勝利を取ろうとする者たちもいるだろう。
しかし彼女たちはチーム相手すらもライバルだ、トレーニングの後に談笑もした、切磋琢磨した、自分の長所を相手に教え合い、短所の克服にも力を出し合った。
だがこの情熱だけは譲れない、どれほど絆を深めても玉座に座るは唯一人。
「そういえばタイシンさん、この間依頼した我がグループが開発したゲームのベータ版の感想を伺いたいのですが!」
「ああ、あれね、個人的にはまあありだと思うよ、だけどちょっと人選ぶかもしれないね。」
「ありがとうございます、こちら頼まれていた海外の栄養剤です、トレーナーさんと相談して適量を接種してくださいね、一応学園側や医師会に確認して服用しても問題のないものを選んできました!」
「ん、ありがと、気になってたけど海外のもので手を出しにくかったんだ。」 - 43◆ozQzQmPAFVSy23/04/18(火) 18:15:56
「タイシン先輩、次の並走お願いします!」
「いいよ、あんたと競り合うのはなかなかいい練習になるから。」
本人には言えないことだが、この体格でとてつもない末脚を発揮してくる先輩の威圧はいつも競り合うあいつとは違う、負けん気と意地で競り合ってくるのはあいつも同じだ、だが眼の前の先輩は後ろからの爆発的な末脚と周囲を抜き去るテクニックを併せ持つ強大な相手。
「次の本番、絶対に負けませんから。」
「こっちも、負ける気はないから、相手が誰であろうと、チームだろうと絶対に勝つ。」
一着の栄光を掴み取るために、チームは進む、譲れない思いを胸に、彼女たちはターフを駆ける - 44二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:41:17
『私は、マスターの……皆さんのお役に、立てているのでしょうか?』
──その言葉を聞いた時。「勝ちたい」って願望が、「勝たなくちゃ」って決意に変わった気がしたんだ。
—
アリエス杯・決勝戦、今までの予選を勝ち抜いてきた猛者が集うまさに最終決戦。出走表を見たトレーナーさんが、思わず空を仰いだのを、私は見逃しませんでした。女の子って結構そういうのに敏感なんですよ? とは言わなかったけれど。
ただ、私も少し気負い過ぎていたのは事実だったようで。ゲートが開き、盛大に出遅れてしまったと気付いた瞬間、頭が真っ白になっちゃいそうでした。けれど。後方集団が7人。先行策を打ったのが1人。そして……私達8人全員を置いてけぼりにして、ハナを切った逃げの娘が……ブルボンちゃん!
その姿を見て、少し安堵の息が溢れました。だって、ブルボンちゃんが先頭を行く限り、ある程度のペースは保証される。それは、一緒に走ってきた私とカフェちゃんが一番よく知ってるから!
ちら、と後ろを見れば、最後方に着けたカフェちゃんの姿。血に飢えた猟犬のように、射殺すかの如き視線が周囲を萎縮させているのが見えた。彼女は私たちの中でも持久力が保つ方だ、その視線に貫かれている間、普段通りには走れないはず!
……4番手ほどに着けて息を整えながら、今までのことを思い出す。
『私達では、逃げを打つ方々に手出しが出来ません。』
『カフェちゃんのスタミナグリードも、本当に助かってるよ!』
私達のチームは、結果だけを見れば、ラウンド2で私1人だけが勝っていたワンマンチーム。けどそれは、私1人が強いだけじゃない。ブルボンちゃんが前でペースを作って、カフェちゃんが後ろを足止めしてくれて。最高の舞台を整えてくれるからこそ、私という桜は咲き誇れる。
……だから。
「カフェちゃん、そっちはよろしくね」
……私がするべきことは、ただ一つ。
「ブルボンちゃん……後は任せて」
【花開き、世界】
──2人の思いも背負って、このレースを勝つことだけ! - 45二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:42:58
残り1050m、先陣を切っていたブルボンちゃんを追い抜いて。普段は差し切ってばかりの私だけど、今日この瞬間だけは逃げを打つ! 前に誰もいないなら、そのまま私が千切り捨てる!
どんどん近づいてくる後方集団、2人? 3人? 4人? 分からない。威圧感が増す。息が切れる。体が上がりそうになる。けれど……ここで走り切れず、2人の思いも無駄にしてしまうなんて、絶対に嫌!
残り200。すっかりバ群に呑まれてしまったのか、2人の姿はどこにも見えない。
残り100。ここさえ追い抜ければ自分の勝ちだって、決死の執念で迫り来る気配を感じる。
残り……50。
一歩、一歩。一歩……最後の瞬間。
朦朧とした意識の中でゴール板を踏み切ったのは──
「──お疲れ様でした、ローレルさん……立てますか?」
「うーん……だいぶ、しんどいかも?」
「コンディション『疲労』を確認。ライブに備えて体力を温存するべきと判断します」
「ブルボンちゃんだって疲れてるよね……? でもブルボンちゃんの背中、すごいな……」
カフェちゃんの肩を借りながら、なんとか地下バ道までは歩いて来れたけれど。緊張の糸が切れてしまったのか、その場にへたり込んでしまって。ブルボンちゃんに控室まで運んでもらっちゃった。お姉さんらしくないなぁ、今の私、なんて。
「ライブまで、もう少し時間がありますから……今はお休みください」
「オペレーション『目覚まし時計』を受諾。1秒の狂いもなく声をお掛けします」
「あはは…………あのね、ブルボンちゃん、カフェちゃん」
健気な心遣いと小粋なジョークに、胸の奥が暖かくなりながら。今この瞬間抱いている思いを2人に伝えることに。
「私、2人と一緒に、このチームで一緒に走れたこと……とっても楽しかったし、嬉しく思ってるんだ。きっと私だけだったら、この景色を見ることも出来なかったんだろうな……なんて」
「ローレルさん……はい、私たちも楽しかったです」
「同意します。この3人で共に挑めて良かったと、私も結論付けます」
「ありがとう、だね」
……Tout est bien qui finit bien、終わり良ければ全て良し。2人も同じことを考えてくれていて、少し安心した。だから、この場で私が最後に言うべきことは……
「最後のライブ、ステージまでのエスコートも、よろしくね?」 - 461はSS初心者23/04/18(火) 22:43:08
決勝の結果を受けたSSが!!ありがとうございます!
優勝おめでとうございます!
普段からのつながりがないからこそ、ライバルや戦術などの幅広い情報を共有できるのは、チーム戦の魅力ですよね……
きっとこの先、この3人はレース以外のことでも関わっていくのかもと思うと楽しそうです!去年の応援団イベントを思い出します
優勝おめでとうございます!そして続編ありがとうございます!
3人で掴んだ勝利、というのが伝わってきて好きです!ふたりの思いをしっかりと受け取って最後まで押し切ったローレルかっこいい……!
フランス語の使い方や最後の「エスコート」のワードチョイスが、年上のお姉さんみがあってオシャレ……ずるい……って思いました
- 47◆os6UVi1GVMOT23/04/18(火) 23:16:11
先頭でゴール板を駆け抜けて思うたんは、勝利の喜びより先に「やってもうた」やった。
逃げの子が一人おる。その子はポジション争いの必要もなく、自由にペースを決めれる立場やった。
そりゃそうや。ウチ・キング・助っ人のネイチャ。少なくとも3人は後ろで控える作戦やからな。
向こう正面で前のペース落ちてきて、縦長の隊列が縮みつつあった。けど、先頭が最終コーナーかどっかで仕掛けてきたら仕舞い。そんならうちが犠牲になって、真っ先に勝負するしかないって─────
スパート掛けたとき、頭の中で"キング・ネイチャついてこい…"みたいなのは思ったと思う。
ウチは犠牲になるつもりやった。
無論自分が勝つのが一番やけど、トレーナーとキングはなんかこう… 長年の付き合いもあるやろうから。
最終直線は息も切れ切れで、何も考えられんかった。気が付いたら実況の声が聞こえたんや。
───優勝は、タマモクロス!!!…
「キング!ほんとすまん…!!!キングがトレーナーにエエとこ見せたかったんのはようく分かっとる!トレーナーも実際キングの為にマネジメントしとるんもいっぱい見た!」
「なのに… 勝ってもうた… すまん…」
『私の実力不足だっただけのこと。気に病むことはないわ』
『トレーナーの目的はまず、私たちのうち誰かに勝ってもらうこと。別に私に特段思い入れがあっても、貴方の勝利を喜ばないはずはない』
『ほら、ステージが待ってるわ。まずは顔を拭いて。存分にタマモさんの雄姿、魅せてらっしゃい』
「キング…」
『おめでとう。あなたの仕掛けのお陰で、他2チームは消耗戦を強いられた。最高の仕掛けだったわ』
======================
『ちなみにドイツ南部やオランダ等の伝統的な催しとしてSchützenfest(シュッツェンフェスト=射撃競技のお祭り)があるのですが、その祭りの中で Königsball(キングスボール)という舞踏会を行う地方もあります』
『えーっと部外者のネイチャさん突っ込んじゃいますけど、つまりフラッシュさんが言いたいのは今目の前でやってる絡みと掛けてキン…』
「もう"タマ"の話はええわーっ!!!」 - 48◆os6UVi1GVMOT23/04/18(火) 23:18:06
- 49二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:34:13
「……おい、アイツらはどこだ」
「え、えっと……スカイは昼寝してて遅れるって言ってて、シービーは連絡がつかないな」
シービー
「アイツは元からそういう奴だからこの際どうでもいい。だが……」
「スカイはなぁ……はは、先輩相手によくここまで肝が据わってるもんだよ……」
チャンピオンズミーティング本番を想定した併走、その会合に顔を出さないチームの2人を待つ間、冷や汗を滝のように流すトレーナーを尻目に、ふと物思いに耽る。
───クラシック三冠を手にしてもなお満たされない渇きを、幾度となく強豪達にぶつけてきた。
アマさんにメジロの誇るステイヤー、地方より出でし芦毛の怪物、皇帝、そして自在脚質を持つ黒い髪飾りの後輩……。
その全員と1戦交えようと、レースへの飢えが満たされることはなかった。
……1人、ダーレーアラビアンとかいう奴は私を昂らせてくれる走りを魅せてくれたが、それだけでは到底足りない。
だからこそ、チャンピオンズミーティング・アリエス杯への出走は願ってもない好機だった。 - 50二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:35:12
そこは、これまで走ってきたトゥインクル・シリーズとはまるで世界が違う。
……初めての事だった。
レースという場で先着を許したのは。超長距離という場で逃げ切りを許したのは。
『うまく策がハマったかな~♪』
最終直線前で捉えられ、本気の走りでも届かなかったのは。
『うん、気持ちいいレースだった♪』
久しく眠っていた魂を揺さぶられ、血が沸々と滾る音が、体の奥底から聴こえてくる気がした。
同時に、一つの誓いを心に深く刻み込んだ。
『決勝では……必ず私が喰らってやる』
………………………………………
………………………
……
「あ、ごめんね2人共。そこでこの子が気持ちよさそーに寝てたから、ついアタシも眠くなっちゃって」
「いや、もうビックリしたんですからね~? 起きたらシービー先輩の顔が間近にあって、心臓止まりかけましたよ」
「オマエら……他に言うことはないのか……?」
ようやく現れた併走相手にペースを乱されるが、すぐに踵を返して練習用のターフへと脚を運ぶ。
相も変わらずいい加減な2人の、底に秘めた闘志を肌で感じつつ。 - 511423/04/19(水) 01:12:31
一心不乱に、ゴールをめがけて走る。
そんな中で、レース前の会話を思い出していた。
「うわ…無茶苦茶な采配で走らされてるとこ、ウチだけじゃないんだ…」
二人が、事前に配られた出バ表を見ながら作戦会議をしていた。
私も入った方が良いだろうか、と聞くとオグリさんがやることは変わりませんから、と言われた。
「ただゴールに向かって走る。それで…良いのだろうか。今までと何も変わらない気がするが」
「この隊列になると想定される以上…オグリさんに追いつけるやつは、誰も居ないから」
「オグリさんが崩れたら終わりですからね~アタシら」
「……分かった。我慢比べなら任せてくれ。私は…チキンを食べられるからな」
「普通チキンを食べるのがおかしいんだけどね」
「ま、泣いても笑っても最後。……頼みますよ、エース様」
肩をポン、と叩かれる。
今までの出来事が、思い起こされる。
体力管理が難しく、苦戦しながらも要所で勝ちを掴み私をカバーしてくれたタイシン。
ひたすらチームの為、相手の妨害に徹してくれたネイチャ。
無論私も、苦難が無かった訳じゃない。
勝利を期待されながら、星をつかめなかったことだってある。
だからこそ、ここだけは絶対に負けられない。
私は走るために、生まれてきたのだから。
これは、奇跡のランなんかじゃない。
チーム全員で掴み取った、勝利の星だ。
チャンミお疲れ様でした
良いスレを建ててくれたスレ主にも感謝
- 52二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 01:27:06
それじゃキタちゃん、今日はよろしくお願いしますね。」
今日一緒のチームで走るグラス先輩が、あたしに話しかけてくれた。
柔らかな笑みをこちらに向けてくれている。
「は、はい、がんばります!」
「にゃはは、キタちゃん初めてだからって緊張しすぎじゃない?ゆるーりと行こうよ?」
同じく一緒に走るスカイ先輩はいつも通りに飄々としている。
ただ、二人ともなんだかギラギラしている気がした。
「だって予選なしでいきなりぶっつけ本番なんて、緊張するにきまってるじゃないですか!」
そう。あたしは予選では出番はなかったのだが、本番でいきなりお呼びがかかったのだ。
トレーナーさんは秘密兵器がどうとか言っていた気もするけど…あたしで大丈夫なのかな?
「まぁまぁ、リラックスリラックス。緊張してたら力も出せないからね、ほら深呼吸して~」
そう先輩に言われて、あたしは深呼吸を何度かする。
・・・不思議と落ち着けてきた。
流石はスカイ先輩、このチームのエースなだけあって場慣れしている、すごいなあ…
「キタちゃんどうですか、落ち着けましたか?」
「はい、少しは落ち着けました、ありがとうございます!ところで気になってたんですけど、このチームには作戦とかあるんですか?」
「作戦かぁ…ふーむ。」
スカイ先輩はやや答えにくそうな顔をした後、
「とにかく逃げ切る、かな?」
笑いながらそう答えた。 - 535223/04/19(水) 01:28:09
「…それだけ、ですか?」
「うん、それだけ。このチームは逃げ切りが勝ち筋だからね~。あ、チームだからって協力とか譲るとかは別に考えなくていいからね。自分が勝つって気持ちで走ったほうが、結果としてよかったりするからね。」
作戦もなしで大丈夫なんだろうか、少し不安になる。
「大丈夫ですよ、キタちゃん。フォローは私がしますので、お二人は力いっぱい走ってくださいね。」
あたしの心境を察したのか、グラス先輩がそう優しく言ってくれた。
そんな言葉をかけられて、あたしはなんだか少し安心した。
「はい、わかりました。頑張ります!」
「…ああ、作戦じゃないけど一つアドバイス。」
それまでは笑っていたスカイ先輩が、ひとしきり周囲を見渡した後に真剣な面持ちで言ってきた。
「アドバイス…ですか?」
「そう、アドバイス。あそこにブライアン先輩いるじゃない?」
指さされたほうを見ると、ブライアン先輩がいた。…あの人の周囲だけ、空気が違うと感じた。
スカイ先輩は続けて言う。
「あの人に後ろに付かれると、まず勝てないと思っていいよ。私たちにできるのは、それこそ影をも踏ませぬように逃げることだけだよ。実際、予選ではそれができずに何回も負けちゃってるしね。」
「…それじゃあ、大逃げをするってことですか?」
「いや~それは駄目でしょ~。キタちゃんの強みは、逃げつつ末脚を残せる点なんだし。ほどほどに逃げつつ、どこかで振り切るしかないよね。」
「…それで、逃げ切れるんですか?」
あたしは不安になって思わず聞いてしまった。 - 545223/04/19(水) 01:28:37
う~ん、微妙、かなあ。何かきっかけがあればともかく、スキがない時だときっと厳しいだろうねえ。まぁきっとチャンスは来るから、何とかなる、のかなあ?」
「キタちゃん、不安になる気持ちもわかります。でも、チャンスはきっと来ます。キタちゃんがやるべきことは、そのチャンスを逃さないことと、それまでは粘り切ることですよ。チャンスだと思ったら、セイちゃんを放ってでも逃げてくださいね?」
「いやいや、グラスちゃんその言い方は流石にひどくない?セイちゃん泣いちゃいますよ?」
「そんなこと言って、逆の立場ならセイちゃんはキタちゃんを放置してでもスパートをかけるでしょう?」
「ん~、まぁそうだけどねえ。まぁそれはそれ、かな?」
え、あたしどんくさかったら放置されちゃうの…?
「まあそういうわけですから、キタちゃんはそれまでは頑張ってくださいね?…あら、もうゲート入場みたいですよ?」
「お、もうそんな時間なんだね。それじゃあ、皆さんゆるりと頑張りましょ~」
「え、その、ちょっと…」
「ほらほら、もう入場だよ、スタートは失敗しないでね~」
どうしよう、あたし、結局全然落ち着けてない。
うう、大丈夫かな…? - 555223/04/19(水) 01:29:07
レースの前半は予定通りに進んでいた。
キタちゃんはスタートでやや出遅れたが、持ち直して今では私のすぐ近くを走っている。
逃げの作戦をとっているのは私たち2人だけで、後続とは距離をキープできている。
グラスちゃんはいつも通り後方に位置取りしている。
「このまま行ければいいんだけどねえ…。」
違和感を感じたのは、後半に差し掛かったころだ。
私たちの足音以外に、もう一つ足音が近づいてきている。
それに、この圧力…思ってたよりずっとヤバい。
「スカイ先輩…。」
キタちゃんが不安そうな顔をしている。カンがいいのか、迫り来る気配を察知したみたいだ。
「…キタちゃん、振りむいちゃだめだよ。きっと『怪物』さんに食われちゃうから。」
「で、でも…。ペースを上げないと追いつかれちゃいますよ!」
「ほらほら、かからないかからない。深呼吸して落ち着こうか。」
そういうとキタちゃんは深呼吸をした。
…私と違って素直な子だなあ。
「グラスちゃんがスタート前に言ってたこと、覚えてる?…チャンスを逃すな、それまでは粘れ、だよ。もちろんかかるのも厳禁だからね。」
「…は、はい!」
…キタちゃんはなんとか落ち着き直したけど、こりゃこのままだとちょっとマズいかなあ…
…頼むよ、グラスちゃん。 - 565223/04/19(水) 01:32:41
そのころ、私、グラスワンダーは最後方に位置取りしていた。
もちろん、気持ちは勝つ気でいる。
だが、体がもう言うことを聞かなくなってきている。
周囲の子たちとの距離もどんどん離れてきている。
「…勝ちたい。」
そう思ったとき、トレーナーさんの顔が浮かんだ。
…あの人の傍に、私はいたい。
…あの人の一番に、私はなりたい。
それでも、どうしてこの体は動かなくなるのか。
…だとしても。
私のこの思いだけは、
この気持ちだけはきっと届くはずだと信じて…
- 575223/04/19(水) 01:33:59
2000m付近に差し掛かったころ、私とキタちゃんは依然として先頭を走っていた。
問題は、『怪物』さんの気配がますます強くなっていることだ。
こりゃもう張り付くどころか、追い抜く気満々じゃないですかねえ…?
そんなことを考えていると、
はるか最後方、届くはずもない距離から
別の『怪物』の気配がした。
「…来たね、グラスちゃん。」
ちらと後ろを見ると、先ほどまで私たちを食らいつくす気で走っていた『怪物』さんがしきりに後ろを気にしていた。
…ここしかない。
私がそう思った瞬間、キタちゃんも駆け出していた。
「先輩、私行きます!誰よりも先着します!」
…やれやれ。やっぱりあの子はカンがいいんだから。トレーナーさんが秘密兵器だって言うだけはあるねぇ。
「いやいや、セイちゃんのほうが先着しますからね、っと!」
終盤に差し掛かり、スパートをかけた私たちの後方で
『怪物』さんが「クソッ!」と言っている気がした。 - 585223/04/19(水) 01:37:37
その後は私たちに追いつける子もなく、私とキタちゃんでワンツーフィニッシュを果たした。
…欲を言えば、私が1位ならよかったんだけどな。ちょっとだけ悔しい。
「スカイ先輩!私たちやりましたよ!」
キタちゃんは嬉しそうにはしゃいでいる。
とはいえ、今はもう一人のチームメイトと合流したい。
「ほらほら、喜ぶのもいいけど、影の功労者さんが戻ってきましたよ。お出迎えしましょうね。」
そういいながら、私は大差をつけられつつも無事ゴールをしたグラスちゃんのほうを指さした。
グラスちゃんも気づいたようで、こちらに向かってふらふらと歩いてきた。
「お二人ともおめでとうございます。作戦通り、ですかね。」
「うーん、思ってたよりもギリギリだったけどね。まぁ勝てば官軍、ってところかな?」
「お祝いしましょう、お祝い!私、歌いますよ!」
「いいですね、トレーナーさんと4人でお祝いしましょう。」
「ヒューヒュー、グラスちゃんはトレーナーさんの事好きだねぇ?」
「なっ…」
そう言うと、グラスちゃんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「まぁそのおかげで何とか勝てたわけだし、ありがとね、グラスちゃん。」
「なんだかすごい複雑な気分なんですが…どういたしまして。」
私たちはそう言いながら、しっかりと握手をしお互いを讃えた。
- 595223/04/19(水) 01:40:00
グラスちゃんの独占力がドンピシャタイミングなおかげで勝てたので思わず書いてしまった
書きたいものを書いたら長文になってしまった、お目汚し失礼いたしました。 - 601はSS初心者23/04/19(水) 08:14:57
寝ている間にかっこいいSSがたくさん上がってる!!ありがとうございます!優勝おめでとうございます!
感想は時間ができたとき後ほど書きます。もう少し推敲したら自分も決勝のはなしを上げられると思います - 61二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 17:10:30
SSを書いた人がしっかり勝利を掴んでくるの凄いな
一種の願掛けみたいなものになったのかね - 62二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 20:43:24
- 63二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:27:25
- 64二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:31:03
それはそれでありかもしれない
- 65二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:38:22
書こうと思ったけど結構難しいですね......
ブライアンちゃんが勝ってくれました自分は ずっと一番前で誰にも抜かされず勝ってくれましたね
まるで逃げみたいな勝ち方してくれました - 66二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 00:07:48
- 67二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 01:20:23
実際ウマ娘のエミュ一人やるだけでも大変なのに更に手間が増えるからね…
- 681はSS初心者23/04/20(木) 07:52:27
感想が遅くなりました、申し訳ありません!たくさんのSSをありがとうございます!!
トレーナーのキングに対する思いを十分わかっていたからこそ、喜びよりもやっちまったが出てくるタマは義理堅く優しい子だと思いました……。そして、負けてもなお堂々として勝者を褒め称えるキングもかっこいい
そしてジョークのために地元のことを無理やり引っ張りだしてくるフラッシュがめちゃくちゃ愉快に楽しんでて笑いました
前回の語り主だったセイちゃんも今回のブライアンも、皆が皆互いを強大な存在と認め合っているのはかっこいいですね……!ブライアンがあれほど驚き、悔しがるのだから相手の強さも窺えます
勝率の面でもバチバチに競い合っていたところを、勝負所で本当に“喰らった”の痺れました
- 691はSS初心者23/04/20(木) 08:41:53
決勝という一発勝負の場でも「今まで通りに走ってくれ」と言えるのは、オグリへの信頼がそれほどまてまに強く固いものなんだと伝わってきて好きです
そうした信頼を何よりも大切にして、そして力に変えたところが、さすがオグリキャップ……!その一方でチキンを食べるって言い方がかわいい
>>52 >>53 >>54 >>55 >>56 >>57 >>58
同世代ゆえの気安いやりとりが良いし、それに振り回され気味なキタちゃんがかわいい!でもふたりも振り回すだけじゃなくて、先輩として不安を宥めているところが素敵です
ターニングポイントである独占力はもちろんのこと、ほかにもレース中のスキル発動などが話として自然に描かれているところが好きです
チャンミだと、2チームは必ず負けてしまいますからね……勝利だけでなく敗北も描くことができるのもウマ娘の魅力だと思います。よろしければ、お待ちしています!
- 701はSS初心者23/04/20(木) 16:42:09
決勝は一度きり。やり直しが効かない勝負。
今回は珍しく、チームの三人が揃って最後方に位置することになった。珍しいことだが、初めてではない。この場合の走り方の経験は積んでいる。
向こう正面の直線に入った。自分の好位である中団に位置を上げることはできなかったが──No problem. 焦る気持ちは浮かばなかった。
「……! ここだ──!」
何度も、何度も経験した勝負どころ。
この上なく絶好の加速。前にいるグラスも同様に足を強く踏みしめているが、私のほうがスピードに乗れているようだ。
8。7。6。3。
外に回り、直線でウマ娘たちを抜き去る。コーナーに入ろうとしたとき、目の前にいたのはあとふたり。
2。
坂を上る道中で、逃げていたウマ娘を捉える。
1。
最終コーナーが終わる直前、先に集団から抜け出していたウマ娘を捉えた。
「──このまま、押し切る──!」
コーナーでわずかに膨れたウマ娘を捉えるために少し外を回ることになったが、開けた直線で私を阻む者はもういない。
余力は残っている。持てる力を出し切って、あとは直線を駆け抜けるだけ。
そう。思っていた。
「追いつきましたよ、先輩」 - 711はSS初心者23/04/20(木) 16:42:50
「──!!」
前にいたウマ娘の、さらに内。
内ラチ沿いを通ってコーナーを曲がりきったグラスワンダーが、私にバ体を寄せてきた。
「私が、勝つ──!」
Go ahead!!
わずかでも足を広げろ。早く足を回せ。
まだ。まだ抜かされていない。
残り400m。
私と彼女の競り合いは少しだけ続く。
だが、すぐに彼女の背中が見えてしまった。
問題ない。私の心は揺るがない。
「私が、勝ちます……!」
残り200m。
土煙を大きくあげて、グラスは半バ身、1バ身と差を広げていく。
いや、いいや。差し返す。差し返せる。
必ず届く。
その、はず、なのに──!
「優勝はグラスワンダー! 頂点に立つにふさわしい走りで、アリエス杯を制しました!」
──なぜ、追いつけない……! - 721はSS初心者23/04/20(木) 16:44:55
徐々に走るスピードを落とし、掲示板に目を向ける。
1。5。クビ。2と1/2。着差を示す数字の上には確定のランプが灯っていた。
着差以上の強さを見せた見事な勝利──その通り、だろう。
「2着にはシンボリクリスエス! 3着はエアシャカール!」
「ギリギリ差せてたみたいだな。…………。チッ」
「──シャカール……」
また、彼女は芝を蹴飛ばしていた。その金の瞳は、仲間であるはずのウマ娘を鋭く睨んでいる。
「テメーも、同じ目をしてるぜ」
獲物を狙い撃つようだな、と言う彼女の声は、私をからかっているようだが、目も口も、全く笑っていない。
それと同じ──ということは、私は、私を交わした彼女に、自然と目が離せないでいた、ということか。
──そう、なのか。
大きく、息を吸って、吐く。
「これが……黄金世代。──これが……チャンピオンズミーティング、か」
「……そうかもな」
あつい。熱い。
まだ、心臓が強く脈打っていることがわかる。
体温は下がりつつあるのに、鼓動が止まない。
体は次を求めているのに──決勝は一度きりで、やり直しの効かない勝負なのだ。
それが、なんとも名残惜しい。
「また、こうして──走れる……だろうか」
「さァな。次の機会は来月か、もっと先か。だが──」 - 731はSS初心者23/04/20(木) 16:45:32
私たちの見つめる先では、グラスとトレーナーが手を合わせて喜びを分かち合っている。
トレーナーのあまりのはしゃぎぶりを見たからか、シャカールの顔がわずかに緩んだ。
「次は必ずやってくる。この世界では、何度だって戦える」
「──そうか……そう、なんだな」
必ず次は来る、という言葉に、私は無性に“ワクワク”した。
ウマ娘の頂点はひとつではない──以前彼女らが口を揃えて言っていたことを思い出す。今まで、何度頂点の景色を見てきたのだろう。己が“使命”と決めたことを成し遂げてきたのだろう。
師匠やシンボリ家から受けた恩を返せる機会が、次もあること。それは善いことだ。
But──
「グラスとも。──そして、シャカール……お前とも──また走れる。そう、思うと……嬉しい」
「…………そういうのは、トレーナーにでも言っておけ」
そう吐き捨てて、シャカールはそっぽを向いてウィナーズサークルへ歩きだす。
こちらに気づいたトレーナーが、大きく手を振って飛び跳ねた。
「シャカール、クリスエス、ふたりともお疲れ様! みんなで写真撮影だって〜!!」
「言われなくても気づくっての!」
「トレーナーさんってば、私たちより嬉しそうですからね〜」
「そりゃあそうだよグラス。決勝戦で1-2-3フィニッシュなんて初めてだもん! ほら、ふたりともはやくはやく!」
トレーナーの声が、まだターフにいる私たちのところまで響く。
私も、早く向かわねば。
私をこの大舞台へ連れてきたトレーナーのもとへ。そして、共に競い合ったかけがえのない仲間で、ライバルのもとへ。 - 741はSS初心者23/04/20(木) 16:57:18
決勝戦の話をようやく書き上げることができました。よくよく考えたらシングレも読んでないしレースシーンの描写のこと知らないのに書けるのか?クリスエスってこんなこと考えるのか?また結局グラス強えな話になっちゃってネタ被りじゃないのかでも推しが強い話はなんぼあってもいいしな……とか考えてたら遅くなりました。
クリスエスは無我夢中ノンストが最速発動、グラスは無我夢中のみ……だったのにいつのまにか追いついて抜き去っていて驚きました。距離Sの差でしょうか。
偶然にも3人それぞれの視点で書くことができてしまいました。SSを書いて誰かに見せること自体初めてだったのにこうして話を書くことができたのは、初心者の無茶振りに乗っかってSSを書いてくださった皆さん、感想やハートを押してくださったみなさんのおかげだと思います。
あらためて、たくさんのSSをありがとうございました! - 75二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:39:03