ディンルーSS

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:08:03

    ディンルーかわいいよね、お尻可愛いね、SS書くね

  • 2二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:08:24

    お尻見えないからこそ可愛いよね

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:08:53

    カクカクしてるところなぞりたいよね、かわいいね

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:09:14

    薄暗い洞窟の中、揺らめく炎が壁を妖しく照らす工房に、カーン…カーン…と鉄を打つ音が響く。

    パルデアからは遠く東、名も分からないこの大陸は豊かな山川草木に恵まれ、人々は豊富な鉱脈資源に支えられ、様々な製鉄の技が生まれていた。もちろん、ポケモンたちもその自然の恩恵を享受していたことは言うまでもない。

    赤い土の上、砂埃が渦巻く大地の上で、彼らは連綿とその技術と血脈をつないできた。

    豊かな大地は多くの命を育み、また、多くの人を産む。

    人が集まれば、自然とそこには王が現れるもの。

    しかし、王者という者は、天下に自らと並び立つ者がいるということが許せないのも、また世の理。

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:09:27

    かくしてその地には、豊かな自然と、豊富な鉱脈と、優れた製鉄技術と、多く民と王、そして数多の戦が渦を巻いていた。

    「その邑」はそんな時代、そんな場所でも血脈途絶えることなく在り続けていた。

    その邑が竜戦虎争の中でも滅びることがなかったのには理由があった。

    一つは、民の尊敬を背負う長老たちの優れた政治力によるもの。近隣の暴王たちに対して優れた製鉄技術による逸品を献上することで関係性を調節してきたその手腕は見事の一言である。朝貢貿易(強大国に対して貢物を捧げて見返りを得る政策)の中で、ひと際光る逸品が、見事な金属装飾による「鼎(かなえ)」であった。

    そしてもう一つは、力ない民を守る勇敢な若き英雄によるもの。ポケモンたちと共に剣林矢雨の中に飛び込んでいき、仲間たちを守りつつ侵略者を蹴散らしていく。ポケモン使いとしても、戦士としても一流そのものである。長老たちの信任も篤く、戦場でも怯まない彼の勇姿は、見る者の恐怖をうち払い、その邑の安寧を守り続けていた。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:10:04

    鉱脈は無尽蔵にあり尽きることなく民を潤す。

    民もまた、無限の鉱脈に欲望を肥やすのみではなく、より良き明日のために研究を重ねる勤勉性を備えていた。

    大陸全体の製鉄技術が高いことも手伝って、悠久の時の中で失われてしまってとはいえ、その邑の名は当時の大陸中に響き渡っていた。

    捧げ物や交易品として近隣諸国領に入ってくる金属器の数々は鉄に対して目の肥えた者たちでさえ唸らせる出来映えであり、その評は邑の民にとってこの上ない誇りでもあった。

    だからこそ、彼らは力による侵略に対して果敢に戦う。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:10:19

    隷属よりも戦いを選ぶ、勇敢な邑であった。

    戦いに打ち勝つ度に彼らは宴を催す。

    自らが打った自慢の器に酒を満たして、焚火とともに夜を彩る。

    「おっ?また釉(うわぐすり)変えたか?」
    「おうよ、これで酒に鉄の味が移らねえのよ!」

    「こいつはすげえや、おらにも教えてくんろ」
    「おいおいタダじゃあ教えてやれんわい!一杯ついでもらおうか!」

    こんな会話が彼らの間に花を咲かせていた。


    もっと注げ、もっと注げ


    酒食を愛する彼らの特有のやり取りである。

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:10:44

    またおいたわしいのが始まるのか・・・

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:11:17

    お尻ばっか見てて草

  • 10二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:11:34

    その邑が製鉄技術に秀でていたのは、何も偶然ではない。

    豊富な鉱脈があり、勤勉な民衆があり、豊かな自然がある。ただそれだけでなく、その邑には製鉄に欠かせないものがあった。

    「風」である。

    背後には大きな湖があり、両側には大きな崖がそびえ立っている。その崖が大陸の風を一挙に受けて、邑に絶え間ない強風を吹き付けていた。

    良い風があれば後は薪と火種だけだが、幸い周囲は豊かな森であり、木材には事欠かない。火種についても炎ポケモンたちの力を借りれば、確保することはなんら難しくない。

    そんな地形だからこそ、彼ら邑の民は何よりも土砂崩れを恐れていた。両側の崖が崩れれば、どうな災禍が訪れるか、想像も及ばない。

  • 11二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 15:11:52

    明確に襲い掛かる人間の軍勢とは違い、自然災害は予知ができない。それこそ自然の中に息づくポケモンたちですら不可能なことである。

    見えない脅威こそ真の恐怖を生み出すもの。

    だからこそ、その邑の敬虔な鉄と風の民たちは大地の神に対して祈りを捧げる儀式を欠かすことはなかった。

    今までの恵みに対する感謝と、将来の安全に対する懇願を込めて祈りを捧げる。

    民たちも、長老たちも、英雄も、そして彼らと共にあったポケモンたちも、皆が心から祈りを捧げていた。




    自らが何に祈りを捧げているのかも知らずに。

  • 12二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 16:04:31

    またあなたなのか?!

    やめてよぉ…いややめないで…

  • 13二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 16:24:07

    四災コンプでもするんか?

  • 14二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 16:27:48

    お尻かわいいさん!?お尻かわいいさんの新作だ!!!

  • 15二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 16:53:36

    なんで毎回お尻や全裸を起点に詠唱開始してしまうのか

  • 16二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 17:36:31

    この雰囲気はもしや以前のチオンジェンSSや全裸必須エリアゼロシリーズの主さん…?!

  • 17二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:37:40

    酒食と鉄器を大地の神に捧げる。彼らは自らが大地の神の庇護の下にいるというこを誇りに思っていた。

    もちろん神とは偶像であり、彼らの誰も大地の神の姿を見たことはなく、声を聞いた者もいなかった。そのため、邑には専門の神職は存在せず、長老たちが儀式の宮司を兼ねるような形をとってきた。

    そのやり方を長年繰り返してきた。

    祈りを捧げる存在は空想だとしても、災害に対する恐怖は本物であり、また自然の恵みに対する感謝も本物である。つまり、祈りの心は実存として機能していた。

    ポケモンたちの中には人の思いや感情のエネルギーを糧にする者も多い。そのためか、邑の中には人々と共に生きるポケモンたちが多くいるが、邑の外側にはエスパータイプやゴーストタイプが多く集まってきている。

  • 18二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:37:54

    人と、偶像と、祈りと、ポケモンと。

    少々歪なバランスではあったものの、別段大きな悲劇もなく邑人たちは元気よく鉄を打つ日々を続けていた。

    ある時、隣合いにある国で国慶節の宴があるとのことで、長老たちが招待されることになった。

    邑の運営を取り仕切る首脳部を全て遠くにつかわせるのは、まつりごとの常道ではない。

    とはいえ、王名の記された書簡によって名指しで招待されたとあっては、無碍にするわけにもいかない。隷属は望まないが、無為な戦を望んでいるわけでもないのだから。

    長老たちはやむなく、若き英雄に邑の統治を任せ、隣国への途につくことにした。



    だが、長老たちが邑に帰ってくることはなかった。

  • 19二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:38:18

    古代の世界において鉄は力の象徴といえる。

    鉄の鏃は銅の鎧を容易く打ち抜く。優れた製鉄技術を持つということは、他国に対して圧倒的な武力を得ることと同義であった。

    まだ「はがねタイプ」というポケモンの類型が確立されていない時代である。人類にとって鉄や金属の加工がどれほどの恩恵をもたらすのか、筆舌尽くせないものが在る。

    隣国の王は考えた。

    「あの邑の製鉄技術が欲しい。しかし、あの邑の小生意気な民は要らない。」

    確かに王の狙いは間違っていない。邑の製鉄技術が高いのは民によるものよりも、むしろ地形によるものが大きいからである。

  • 20二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:38:31

    侵略に成功すれば、他所の人間であっても、その技術力を再現することは容易くはなくとも、不可能ではないだろう。

    だからこそ、邑の首脳部たる長老たちを一挙に集め、皆殺しにした。そして、その報が邑に届く前に軍勢を送る。

    飛行ポケモンで連絡を取り合うよりも早く。

    暴王とて、近隣の邑が長らく独立を保ってきたことに疑問を抱かぬわけはない。それが優れた軍事力によるものであると分かっている。だが、首脳部を失った今、敵は単なる烏合の衆。

    邑へと近づいていく兵たちの歩みを見守る王の目は、野心にあふれていた。

  • 21二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 20:50:08

    ウワーッ出た!!地割れだ地割れ!あっそれじゃ里巻き込むやんけ!

  • 22二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 21:30:48

    閲覧注意を付け忘れる痛恨のミス

    でもせっかくだからギリギリの線で攻めてみます。
    チオンジェンのときほどおいたわしい感じにはならないといいな(願望)

  • 23二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 21:31:49

    もう既に不穏!

  • 24二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 21:31:53

    すでに長老皆殺しで軍勢が近づいてきてるのにほんわかできるんですか!?

  • 25二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 22:09:34

    >>24

    みんなで鼎に入ることで長老達と元気に(あの世で)再開できるほんわかルートだぞ

  • 26二次元好きの匿名さん23/04/16(日) 23:04:50

    チオちゃん見てたら、あのレベルのが来ると思うと・・・

  • 27二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 00:21:20

    お尻さん(酷)の新作が見れるとは恐悦至極…!追いついたけどもう事後だぁおしまいだぁ
    それはそれとして鼎から鉄器打てて勇ある民っていう発想がすーごいかっこいい……どうディンルーになってくか楽しみ

  • 28二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 02:18:27

    新作助かる

  • 29二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 07:07:38

    保守

  • 30二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 08:58:33

    いくら報せがなかったとしても、大軍勢が近づいてくれば気づかぬ者などいない。

    邑には指導者がいなかったため、必然、若き英雄は民とともに立ち、侵略者の魔手に対して果敢に立ち向かうことになった。

    多勢に無勢ほど力量関係を端的に言い表した言葉はない。

    敵は強大で大勢だが、それでも英雄と共に戦う民たちには恐怖などなかった。

    大地の神をまつる祭器に祈りを捧げ、自らが打った剣を取り、ポケモンたちを従えて揚々と邑の門を出ていく男たち。

    未だ敵軍の影は視認できないが、山の向こうから聞こえてくる軍靴の音だけは、規則正しく緊迫感を伝えてくれる。

    どんよりとした曇り空と前日に振った大雨の関係か、周囲には陰鬱とした空気感が満ちている。

  • 31二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 08:58:44

    願わくば、誰も犠牲にならないでほしい

    しかし、歴戦の戦士たちは知っている。戦いとは無情なものなのだということを。

    自らを鼓舞するように雄たけびを上げる戦士たち。傍らに伴う相棒のポケモンたちも咆哮をあげて意気を高める。

    敵影がなかなか見えないことに焦れた彼らは山の木々に隠れつつ峰の上まで偵察にいくことにした。

    そして、邑の戦士たちが山の向こうに見たものは、


    数々の地割れや地滑りによって生き埋めになり散り散りになったかつての大軍勢の無惨な姿であった。

  • 32二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 09:16:09

    予想だにしなかった惨状に言葉を失う戦士たち。

    筆頭の任に就いていた若き英雄も例に漏れず高めた闘志の行先を必死に探っていた。

    そして、他の者より半瞬だけ早く声を上げる。

    残党が大勢いる。残った奴らだけでもかなりの数だ。奴らを放っておけば我らの妻と子は凶刃の下に散ることになるぞ。奮起せよ。奮発せよ。大地の神の加護あれ。

    そう強く叫ぶと誰よりも速く残党たちに斬りかかっていった。ポケモンたちも彼に続き、数の有利を大幅に失った軍勢は、突如横腹を殴りつけられることになった。

    戦士たちは得も知れぬ恐怖を感じていた。何しろ死を覚悟して邑を守ろうとしていたところ、戦いもせず敵の骸(むくろ)を踏みつけることになったのだから。

    彼らはその恐怖を「大地の神の加護」という言葉で押し流し、必死に敵を斬りつけた。

  • 33二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 09:16:25

    予期せぬ大災にみまわれ大勢が死んだとはいえ、それでも一国が派遣した大軍である。残党だけでもかなりの数に上る。将軍や士官など指揮系統を司る者たちが軒並み土の底に沈んでいる状況では、軍隊はその力の1割も引き出すことはできないだろう。

    そんな中でもやはり一人ひとりの兵士たちは日ごろの訓練の成果を発揮しつつ、襲い来る敵と斬り結んでいた。

    秩序を失った達人の群れ。それが、かつての大軍の今の姿である。

    邑の戦士たちに比べれば練度が落ちるものの、いまだ数の暴力と軍用ポケモンによる蹂躙は機能している。

    剣戟の音が静かになったとき、敗走した兵士たちが振り返りつつ見たのは返り血を浴びて息を荒らげる邑の戦士たちであったが、その中でも異様な出で立ちだったのは、若き英雄その人であった。

    鉄の鎧の色が見えないほどに血をかぶっていたからである。

  • 34二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 10:31:24

    戦士たちが邑に帰ってきたとき、彼らの数は4分の3にまで落ち込んでいた。だがそれも覚悟の上である。むしろ戦力差と戦果を考えれば、損害はかなり少ないと言える。

    それでも死んでいった戦士たち一人ひとりに人生があり、親があり、家族があった。損害が軽微であると数字の上でだけ語るにはあまりに重い。戦の勝利を言祝ぐため、儀式の祭壇に向かって感謝を捧げる邑の人々。

    もしも感謝や祝いの念に実体があったなら、祭壇の器にはひたひたとその思いの念が溜まっていくことだろう。

    勝利は喜ばしいことだが、彼らに余裕はない。民を導いてくれる長老たちはもういないのだから。

    血まみれの鎧を脱いだ英雄は祭壇に向かって、長老たちに代わり民を導くことを誓った。

  • 35二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 10:31:36

    死んでいった邑の戦士たちに家族がいたように、生き埋めになっていった兵士たちにも家族があり、残党として首を刈られた兵士たちにも家族があった。

    敗走していった兵士たちの言から伝わる大地の大災、襲い来る敵。生き埋めになった兵士たちの上に立つ血まみれの悪鬼たち。

    その証言は噂となって国中に広まっていく。確かな恐怖とともに広まっていく。

    もしも恐怖の念に形があったなら、黒く濁った澱のような色をしているのだろう。そしてその恐怖は恐れの対象に向かって集まっていく。

    祭壇の祭器は何も言わない。

    邑の周りにゴーストタイプのポケモンが増えていることに気づいている者は、誰もいなかった。

  • 36二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 11:35:44

    ことごとく不穏・・・

  • 37二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 11:52:08

    ひたひたひた


    ひたひたひた


    器に何かが溜まっていく。しかし、それに気づく者はいない。


    隣国の軍勢が攻めてきてから数か月、しばらく平穏に暮らしていた邑の人々だったが、一度燃え始めた戦いの火の手はどちらかが滅びるまで消えることはない。

    事実、隣国のすでに新たな隊が組織され征服の準備を進めていた。

  • 38二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 11:52:20

    前回の遠征では天候や地形の条件を十分に調べずに大軍を投入しすぎたために、一度の天災で多くを失うことになった。

    よって、斥候部隊や飛行ポケモンを使って天候の状況を入念に確認し、かつ部隊を小出しにすることで一度に人員が摩滅することを防ぐ作戦がとられている。

    波のように攻めて寄る敵の軍勢、その度に戦士たちは剣を取って戦場へと向かう。

    結果として、より多くの血が流れたがそれでも邑が侵略者の手に堕ちることはなかった。

    守る側からすればそれは幸運なことであったが、攻める側にとっては不気味この上ないことでもある。なにしろ、送り込んだ部隊のほとんどが急な地割れや落石によって壊滅し、ちょうど邑の戦士たちが相手取れる数になるように調節されているかのような作為を感じるもの。

    蹂躙させるでなく、過保護に守るでもなく・・・

    まるで、より多くの血を流させようとしている「何か」がこの大地に巣くっているような錯覚さえ・・・。

    隣国の将校はその感覚が錯覚であることを祈りつつ、部隊を連れて撤退していった。

  • 39二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 19:56:16

    期待

  • 40二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 20:23:43

    うん、チオンジェンの時よりは平和だな!

  • 41二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 20:50:54

    まだだ、まだわからんぞ

  • 42二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 22:20:59

    ホシュシュ

  • 43二次元好きの匿名さん23/04/17(月) 23:08:06

    邑周りに集まる死の匂いゴーストポケモンたちは引き寄せられたのか
    あるいは大「地」から響く底なしの「悪」意に魅せられたのか

  • 44二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 05:11:58

    ハーメルンやpixivに投稿する予定はあるのでしょうか?

  • 45二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 05:39:34

    >>44

    アカウントないですが、いずれは!

  • 46二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:04:04

    何度軍勢を差し向けても邑が落ちることはなかった。それは隣国だけでなく、その隙を突いて刺客や兵を送ってきた別の国に対しても同様であった。

    侵攻の度に天変地異が起こりあらゆる敵意を地の底に沈めてしまう。ポケモンは人と共にならばどこにでもいるため、侵攻軍の中にも当然いたが、地面タイプですら地割れや地滑りの兆候を感じ取ることはできなかった。

    卜占(ぼくせん)を嗜む者が見れば、大地に染み込んでいく血潮の濃さに卒倒しかねないだろう。

    死屍累々がただただ積み重なっていくばかり。

    いくら邑を守ることができているといっても、度重なる戦を損耗なしで乗り切ることなどできない。

    戦士たちは一人または一人と倒れていく。

  • 47二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:04:19

    その中で、若き英雄はその身に傷の一つも負わず、返り血で鉄の鎧を真っ赤に染めながら、戦場で剣を振るっていた。

    血は早く拭わねば黒く変色し固まってしまうもの。元来、金属の光沢に輝いていた英雄の鎧は、いつのまにか黒い闇を纏った色に変貌している。

    偶然にもその色は祭壇にまつられた祭器の色と同じであった。

    戦の数が両の指では数え切れなくなってきた頃、邑の戦士たちはもはやほとんどが地の底に眠り、精悍な美青年の顔立ちであった英雄は幽鬼のようにやつれ果てていた。交易はとうに途絶え、ポケモンたちと共に森の恵みを集めて暮らす日々。

    それでも邑は一向に落ちる気配がない。ともなれば、さすがに各国の侵攻の手も緩んでくる。

    犠牲は甚大であったが、ようやく平和をつかみ取ることができたように思えた。

    邑の周りのゴーストポケモンたちは、いまだ増える一方であった。

  • 48二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:20:12

    侵攻の手が途絶えてから半月が経った頃、邑で事件が起きた。

    女子供を含める数人の遺体が発見されたのである。どれも前日まで生きていたことが確認されている顔ぶれであった。

    事故や流行り病などではなく、凶刃に倒れたであろうことは間違いない。

    その中には屈強な鉱夫の姿もあり、野盗の類ではなく訓練を積んだ人間の仕業であることもまた間違いなかった。

    すっかり入れ替わってしまった邑の顔役たちは、侵略者の魔の手はいまだ止まっていないということを悟り、頭を悩ませる。

  • 49二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:20:27

    本来なら、攻撃を受けたなら速やかに報復攻撃に移るのが常道である。連続攻撃や悪質な嫌がらせを防ぐためにも報復攻撃は単なる仕返し以上の役割を持つ。

    しかし、相手は周囲のどこの国かもわからず、また分かったとしても国を相手に攻め込むほどの力など、この小さな邑にあるはずがない。

    短い沈黙が議論を寸断し始めた頃、若き英雄は物言わず立上がり、何かつぶやいて論壇から抜けていった。そのつぶやきを聞き取れた者はいなかった。

    その日のうちに彼は邑を出て、独り隣国に潜入していった。

    数日後、隣国をはじめ近隣の国々でいくつもの惨死体が見つかることになったが、その報せが邑にまで届いてもまだ彼は帰って来なかった。

    祭壇の祭器の色は徐々に黒を深めていた。

  • 50二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:21:37

    んー、すみません。語尾に「た」が多すぎますね・・・。どうにかしなくては。

  • 51二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 08:27:10

    これは若き英雄に憑いちゃってる感じか……

  • 52二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 09:18:14

    おっ、平和になったな、ヨシ!

  • 53二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 12:31:59

    チオンジェンのとき
    冤罪で処刑→敬愛する人の悪評を残すことになる

    今回
    邑のリーダーたちは謀殺→隣国ところしころされ状態

    余裕で地獄では?

  • 54二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 18:00:04

    人の悪意でやられたチオンジェンより悪意が底知れない感じする

  • 55二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:46:53

    >>45

    ありがとうございます!

  • 56二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 21:51:59

    ちょっと忙しかったので投稿できませんでした…
    明日はいけるんで、ほのぼのパートを書きますね!

  • 57二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:21:26

    ここから入れるほのぼのがあるんですか!?

  • 58二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:28:52

    かつてこんなにも信用できない「ほのぼの」があっただろうか

  • 59二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 02:33:41

    ほのぼの(当社比)

  • 60二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 07:17:35

    楽しみ

  • 61二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 10:13:51

    夜ごと路地をさまよい獲物を探す狂人。

    在りし日には民衆に勇気を与えたかつての英雄の姿がそこにはあった。

    虐げられた者の怒りを返す。確かに彼の動機であった。それは間違いない。

    しかしその動機はいつしか鉄器に血を吸わせる口実になり果てていた。

    邑に残してきた愛しい恋人の顔ももはや頭の片隅にすらない。あるのはただ一つ。



    奴らに恐怖を。


    この一念のみである。

    かつての英雄の狂刃にかかるのは兵士だろうと、警吏だろうと、老人だろうと関係ない。いまだ女子供は手にかけていなかったが、それも時間の問題であった。

    彼はそうしているうちに、街中でふと見おぼえのある顔を見止めた。

    敗残の将校であった。邑にとっては不俱戴天の仇である。

    一も二もなく斬りかかる。供の者たちも一刀の下に斬り伏せ、標的であった将校の首も難なく刈り取った。

    白昼の街中の出来事である。当然周囲の者たちは騒然とし、警吏を呼ぶ者、医者を呼ぶ者、様々な怒号が飛び交うことになった。

    だが、そんな声も彼の耳には届かない。胴体と泣き別れとなった首を引っ提げて、邑へと戻っていく彼を後ろ姿を民衆は、口々に言う。

    恐怖をもたらす鬼の姿を。

  • 62二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 10:29:06

    邑に帰って来たかつての英雄を迎える民たちの態度は、決して歓迎一色ではなかった。

    血まみれの鎧に身を染めて、全身からは異臭を放ち、すでに正気を手放している眼光からは、かつての優しくも勇敢な青年の面影は見られない。

    邑に戻った彼が一番先に顔を見せにいったのは、愛しい恋人の下でもなく、邑の顔役たちのところでもなく、祭壇であった。

    すでに光沢を失い黒ずんだ青銅のような色になっている祭器に、仇の首を捧げる。

    大地の神に祈るその姿だけはかつての英雄そのものであった。が、祈りが終わり、居ずまいを直すとすぐに狂気がまとわりついたような雰囲気が戻ってしまった。

    顔役たちの下にいってもそれは変わらず、彼は独断専行を咎められることとなった。

    疲れ果てて帰ってきた彼を邑の人々は狂人扱いしてしまった。それでも彼は薄皮一枚のところで人であることを保っていた。

    彼の恋人が拒絶を示すその時までは。

    最愛の恋人に拒絶され、邑に人々に疎まれ、顔役たちには咎められ・・・

    仇の血にまみれた彼が人であることを手放す理由としては十分すぎた。

    その日、邑には悲鳴と怒号が鳴り響くことになる。

    完全な狂人と化したかつての英雄は、今度は勇気ではなく恐怖を守るべき民に与えながら、命乞いをする同胞たちを切り捨てていった。

    返り血が鉄の鎧の黒ずみを濃くしていく度に彼は幸せな気分になった。

    祭壇の祭器には、恐怖に慄いた表情で固まる仇の首と、同じく恐怖に怯える民たちの返り血が少しずつ溜まっていく。

    大地の神は何も言わず、ただ在るのみであった。

  • 63二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 10:33:40

    ほの…ぼの…?????

  • 64二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 10:40:26

    命からがら逃げだした民たちは周辺の国々に身を寄せようとした。だが、関までたどり着いた彼らを待っていたのは、投石による迫害であった。

    何も告げられず投げつけられる石。

    その石に込められた感情は侮蔑や嫌悪ではなく、純粋な恐怖である。

    何度兵を差し向けても、その度に不自然な天災によって守られる不気味な民。しかも先日殺人鬼を送り込んで来た悪辣な奸計をも使う恐ろしい民。

    それが邑の人々に対する印象であった。

    必死の思いで関の門を叩くも、矢と石の雨が彼らを襲う。そして、追いすがってやって来たのは、かつて彼らを守って戦い、今は彼らの命を刈り取ろうとしているかつての英雄。

    むろん、矢の雨石の雨は平等に降りかかる。それでも狂った英雄は止まらない。

    すでに彼の目には守るべき民の姿はなく、ただただ剣と鎧に血を吸わせようという狂気だけがあった。

    ポケモンたちすらすでに彼を見限っている。

    民を、主人を守らんとして立つポケモンたちを、彼は悲し気な表情で斬り捨てた。

    それが彼の人生で芽生えた最後の感情の発露であった。

    守るべき民を残らず鏖殺(おうさつ)し、土埃と共に見えなくなっていく狂った英雄。

    一部始終を見ていた関の人々の中には気がふれてしまう者もいたほど、凄惨な光景であった。

  • 65二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 10:51:19

    もはや誰もいなくなった邑に帰ってきたかつての英雄。

    ふと鎧についた返り血を撫でる。そこは彼の恋人の血がついた箇所であった。

    どこに向かうともなく歩く。

    傍らには長らく笑顔を交えた友人たち、同胞たちの遺骸。共に戦場を駆け抜けたポケモンたちの遺骸が転がっている。

    ゆらゆらと体を揺らしながら歩く。

    傍らには自らを慕ってくれていた邑の子供たち、老人たち、先達たちが倒れている。

    意図したわけではないが、その足は祭壇に向かっていた。

    祭壇の上に置かれた祭器、すでに元の美しい光沢を失った祭器の前に立つ。

    そのとき、彼の意識に正気が戻ってきた。まるで憑き物がとれたかのような感覚であった。

    正気に戻った彼を襲ったのは、脳裏に刻まれた記憶、手に残る感触、自らが手にかけた邑の惨状。

    一呼吸置く間もなく、彼は衝動的に自らの喉を貫き自害した。

    突き刺さった剣から血が滴り、祭器の中に落ちていく。

    仇の恐怖、民の恐怖、そして自らの罪の恐怖

    あらゆる人々の恐怖を呑み込み、祭器にはある意思が生まれた。

    ソソゲ・・・と。

  • 66二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 17:04:21

    ほのぼのどころかブーストかかってやがる

  • 67二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 19:48:35

    ほのぼのどころか、むしろフルパワーになっててチオンジェン生える

  • 68二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 19:53:28

    🐌(ディンルーに聞いた話を木簡に書き記すチオンジェンの絵文字)

  • 69二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 20:05:59

    >>68

    キミは自己紹介だけでお腹いっぱいになるんよ・・・

  • 70二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:26:16

    おいたわしさより凄惨さが勝つな

  • 71二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 07:23:14

    ほしゅ!

  • 72二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 08:28:07

    ほのぼのってもしかして奉納亡野とか書きません?
    亡骸の転がる野を祭器へ奉納する的な

  • 73二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 15:56:11

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:38:59

    チオンジェンのが1人に500不幸ポイントだとしたら、こっちは英雄?に100不幸ポイントと他全員に10不幸ポイントって感じね...

  • 75二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:39:48

    >>74

    皆殺しのポイントが軽いよ!(涙)

  • 76二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 20:18:29

    >>74

    わかる

    チオンジェンが人間の業ごった煮どろどろ尊厳破壊感(冲鉴特効)あるのに対して

    ディンルーは今の所ヤバい土地神と周りの加害者兼被害者達みたいな感じがある

  • 77二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 21:32:15

    邑の中に生きた人間やポケモンたちの気配が途絶えてから数日。

    変わらず周辺国はこの邑の資源と技術を狙って刺客を送り込んできた。しかし、今までなら謎の天変地異によって阻まれてきた邑への侵入が、今回はなんの障害もなくすんなりと通ってしまった。

    当の刺客たちも違和感を覚えつつ邑を探ることにした。

    恐る恐る邑へと近づいていった彼らが見たものは、そこかしこに散らばる人間とポケモンの死骸であった。

    どれも背中を大きく一太刀で切り伏せられている。

    逃げる人々を下手人が追いすがって斬りつけたことが分かる。

    あまりの惨状に刺客たちの中には嘔吐を耐えられない者も数名いた。

    普段から血や傷を見慣れている彼らが気分を悪くするほどの惨状。いったいこの地に何があったのか、それを知る術を彼らは持たない。

    この状況は刺客たちも想定外である。資源の確保は容易くなったが、生存者がいないため技術の伝承が途絶えてしまった。失われた製鉄技術を取り戻すのは容易なことではない。

    せめてもの調達品として、刺客たちは祭壇に置かれている鉄器に価値を見出した。かつての英雄の躯が覆いかぶさっていたが、こうなるに至る仔細を刺客たちが知ることはない。

    祭器に触れた瞬間、ドクンと心臓が跳ねるような感覚を全員が覚えたが、それについて言及する者はなく、黙々と作業をすませ、本国へと持ち帰っていった。

    刺客たちの本国である隣国の王は、技術が途絶えたことを惜しんだが、精巧な鉄器が手に入ったことについては大いに喜んだ。

    随分と大きな器だが、この器に注ぐのはどんなものがいいだろうか、と考えながら王はこの祭器を与えてくれた大地の神に感謝を捧げる。

    自らが祈りを捧げる相手が本当に「大地の神」なのかなど、王にも分かりはしない。

  • 78二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 21:43:50

    この国の中で王が首(こうべ)を垂れる者など、神以外にはいない。

    だが、神という偶像を相手に不遜を貫くほどの傲慢を、この国の王は持ち合わせてはいなかった。そのため、古代の祭事則に則って王は様々な儀式を行う。

    刺客たちが祭器を持ち帰ってきてから王はその祭器を儀式に用いることにした。空の器を国に見立てて、あらゆる慶事が満ちるよう祈りを込めて酒を注いでいく伝統の儀式。

    今までは国の卜占士(ぼくせんし)が作った器に酒を注いでいたが、今回王は独断で器を変えてしまった。当然、礼班の重臣たちは王を諫めたが、王の意志は変わらなかった。
    (礼班:古代国家の儀式担当部署。日本でいう陰陽師。)

    もともと野心に満ちた王ではあったが、暴政と独裁を敷く悪王ではなかった。本来の王なら重臣たちが諫めようものなら悪態をつきつつ一歩下がる度量はあったはずだが、今回はなぜかそうはいかなかった。

    側近たちは王の目に籠るただならぬ気配に気づいたが、儀式に対して没入しているのだと考え、疑念を流してしまった。そもそもが余りに畏れ多い疑念であった。


    王が正気を失っているかもしれないなど、口に出せるはずがなかった。

  • 79二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 21:47:02

    なんか止まる気配がまるでないんですが!?

  • 80二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 21:50:11

    儀式に際して王は宮殿の庭を掘って土を積み上げるよう工人たちに命令していた。女官たちにはその土を祭殿へは運ぶように申し付けた。

    そして王はその土や砂を、儀式に使うはずの酒の中に注ぎ込んでいった。側近は慌てて王に真意を問いただすも、王はただ一言告げるのみであった。

    「ソソゲ・・・」と。

    新たな儀式の祭事則かと思った側近はそれ以上深く問うことはしなかった。側近は今まで付き従ってきた王に対して明確な恐怖を感じ始めていた。

    言いようのない恐怖であった。

  • 81二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:05:28

    城下町全体を見下ろせる高台に祭殿はあった。

    冬至の日。大いなる太陽の力が最も弱まるこの日に儀式は行われた。

    本来であれば五穀豊穣を祈り、王家と国家の永遠の繁栄を祈願するための儀式である。そのため、儀式の日取りは春の始まりの日に決められているはずであった。それも王は独断で祭事則を書き換えてしまった。

    神をかたどり、国をあらわす巨大な鉄器の前に、三度頭を下げて祈りを捧げる王。曇天の空は今にも雨をもたらしそうな雰囲気だが、卜占によれば雨は数日降らないはず。

    儀式が進行し、いよいよ酒を器に注ぎ入れる段になった。

    件の酒は土砂が混じり土色に酷く濁っている。量としては茶碗数杯分だろうか。大き目の土瓶から祭器のウツワへと厳かに注ぎ入れられる神酒。

    巨大な鉄の器に土砂を含んだ酒が溜まる。

    注ぎ終えた後、王はむんずと鉄器を掴み高々と持ち上げた。人間が一人で持ち上げられる重さではないはず。周囲にエスパーポケモンがいるわけでもない。

    明らかな異常事態である。

    巨大な鉄器を頭上に持ち上げ、濁り切った神酒をがぶがぶと飲み干す王。このとき儀式を見ていた全員がようやく気付いた。

    王は気がふれたのではない。王に何かが憑いているのだ。

    土砂入りの神酒を飲み干した王はふと糸が切れたように脱力し、頭上の巨大な鉄器の下敷きとなった。

    見る者はみなあっけに取られて身動き一つとれなかった。自らの国の王が目の前で発狂して圧死するなど、想定できるはずもなかった。

  • 82二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:14:30

    鉄器に上から押しつぶされたことによって王の身体は無惨に破裂した。

    しかし、痕に飛び散ったのは肉片ではなく、大量の土砂であった。

    王の四肢をかたどるように土砂が残っている。

    むろん数瞬前まで生きていた人間の血や臓物らしきものも見えたが、それもすぐに土砂に飲み込まれて見えなくなった。

    誰かが叫ぶ。悲鳴を上げて重臣たちも女官たちも側近も、誰も逃げ出そうとした。

    そんな彼らの目の前で「それ」は動きだした。

    四肢をかたどる様に集まった土砂が徐々に形を得ていく。s

    まるで鹿や馬のようにも見えるが、地に這い慟哭する人間のようにも見える。

    極めつけは頭上に掲げられた鉄器。もはや「それ」が尋常の存在でないことは言うまでもない。

    人々の悲鳴が恐怖を乗せて、「それ」に集まっていく。


    もっと、もっと


    「それ」は人間に分かるような言葉を持たなかった。「それ」が発する唯一の呪詛。

    「ソソゲ――!!」

  • 83二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:20:19

    生まれたってか大地の神(仮)が動くための肉体を手に入れた感じだ

  • 84二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:23:40

    「それ」はまだ幼かった。

    赤子のように見たものを真似ることしかできなかった。

    「それ」が直近にみていたものとは、神に対して三度頭を下げて祈りを捧げる王の姿であった。

    首を垂れる。

    ただそれだけが、「それ」が学習していたことであった。

    そして「それ」は、学んだとおりに頭を三度地面へとつけた。その行為が何を意味するのかは分からない。

    ただそれしかできなかった。

    「それ」の頭が地に触れた瞬間、地は裂け、亀裂が走り、人々は飲み込まれ・・・

    数秒前まで隣にいたはずの者が地の底に埋まる。その恐怖はその場にいる全員を発狂させるには十分すぎるものであった。

    恐怖がその場を支配すればするほど、「それ」は心地よく感じた。その理由は分からないが、地割れを起こせば心地よくなれることだけは理解することができた。

    幼子が残酷に虫を殺すように、「それ」は国を、大地を、人々を、地の底へと埋めていった。

  • 85二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:25:33

    さて、今日はここまででしょうか。読んでもらえてなによりです。

    やべえなコレ、サンドイッチ爆発でしめられる雰囲気じゃなくなっちゃった、どうしよ。

  • 86二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:27:21

    純粋にまじで人間と倫理感が違うが故に「悪」に分類されちゃう異種族のあれそれって感じでオラわくわくすっぞ

  • 87二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 22:28:28

    毎回サンドウィッチ爆発で締めるつもりなのか……

  • 88二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 23:05:05

    何もわからないディンルーかわいいね♡
    ホラームービー視聴で勘弁して♡
    いやほんとまじでお願いします…

  • 89二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 23:42:34

    豆知識が勉強になるな

  • 90二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 02:11:26

    このレスは削除されています

  • 91二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 06:23:49

    構わん爆破せぇ

  • 92二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 12:33:18

    >>91

    何があった?

  • 93二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 12:34:03

    >>92

    サンドウィッチのことじゃない?

  • 94二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 12:36:00

    >>93

    そういうことね 上に消されてるレスがあったから何か変なことでも書かれてたのかと思った ありがとう

  • 95紛らわしくてごめんね23/04/21(金) 18:58:35

    サンドイッチは爆弾だからしゃーないのだ

  • 96二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 19:01:02

    サンドイッチは爆発するものだと書き記されてるからな…

  • 97二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 20:49:54

    でもサンドイッチ爆発がなかったら、あのチオンジェンは救われなかったんじゃないか・・・?

  • 98二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:04:37

    その時代、国家とはほとんどが都市国家であり、街が滅ぶことは国が滅ぶことと同義であった。

    街を訪ね歩いて国を沈めていく大地の災厄を後世の者は畏怖を込めて呼んだ。

    厄災ポケモン ディンルー

    邑の周りに点在していた国や集落をすべて地の底に埋めた後、ディンルーは自分を見てくれる者がいなくなったことに気づいたが、どうすればいいのかは分からなかった。

    行き先を失った旅人が故郷へと帰って行くように、ディンルーは自らのルーツである邑へと向かう。

    そして、今や祈る者も祈られる何かもいなくなった祭壇に腰を下ろし、眠りについた。その姿は親の姿が見えなくなった幼子が、疲れ果てて涙と共に眠りについたかのような悲壮感を纏っていた。

    悠久の時が過ぎていき、無人の邑も国の残骸も、すべてが風化して砂へと還っていった頃、ディンルーは土砂の肉体を失い物言わぬウツワとなって風雪を浴び続けていた。

    行商人はその地に足を踏み入れ、そのウツワに何かを見出し、供のポケモンたちの力を借りて馬車の荷台へと積み込んで、西の国を目指していった。

    彼の荷台にはすでに木簡が渦を巻いて積みあがっており、ウツワを置く空間には苦労したが、ウツワの中に木簡を放り入れることで何とかことなきを得た。

    木簡とウツワが触れ合い、それらの器物の中に棲む何か同士がどんなやり取りを交わしたのか、それは今となっては誰にも分からないが、それはきっと誰かに憎しみを投げる呪詛でもなく、寂しさと悲しさを嘆く嗚咽だったのであろう。そうであったとして、誰もそれらを、いや、彼らをなじることはできない。

  • 99二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:17:38

    西の国の果て、パルデア王国に行きついたディンルーはかの地の土砂をもって再び肉体を得た。そして、何をもたらしたのかは、我々もよく知っている。

    次々と生み出される地割れ、安定を書き崩れ落ちる大山、流れを捻じ曲げられ不自然な氾濫を繰り返す大河

    阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げながらも、ディンルーはすでに人々の恐怖の感情を「快い」とは思えなくなっていた。

    ソソゲ

    つぶやくようにポツリとセリフを落としていくディンルー。生まれ落ちたときから孤独を強いられたかの厄災ポケモンは学習してしまっていた。人々が恐怖したら、その後には孤独が待っているということを。

    いつしか大軍をもって討伐の対象とされたディンルーだが、誰も止めることなどできなかった。ただ一人のポケモン使いだけがディンルーの狂奔を止め、封印を施すことができた。

    暗い岩の中へ閉じ込められようというそのとき、ディンルーは初めてこの感情が「恐怖」というものであると知った。だが、時はすでに遅く、天が彼を救うには彼は罪を重ね過ぎた。

    それから数百年、ディンルーは暗闇の中でただひたすらに孤独に過ごした。恐怖という感情の何たるかを知ったディンルーを苛むのは、自らの罪の重さ。

    巨大な鉄器をはるかに上回る、「罪」という重圧は、手足を縛り、喉元を締め上げる。焼けた杭に刺されるような痛みも「罪」の重さと比べれば何ともないものであった。

  • 100二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:28:40

    ソソゲ・・・酒を注げ

    ・・・ソソゲ・・・祈りを注げ

    ソソゲ・・・恐怖を注げ

    ・・・ソソゲ・・・・・・・・・

    ・・・・・ソソゲ・・・・・・・・・・・・・

    ソソゲ・・・・・・・・・・・・・・・・己の罪を雪げ

    ディンルーが知っている唯一の言葉は、いつしか自ら責める慙愧の念としての機能を得ていた。そしてディンルーは、自らが手にかけた多くの命に対して、詫びるように頭を下げるようになった。しかし暗闇は何を答えることもなく、ただただ哀れなかつての厄災ポケモンの身体を取り囲むのみであった。

    気の遠くなるように歳月を経て、突如ディンルーを襲ったのは、猛烈な光であった。猛烈でいて、かつ爽やかな光であった。

    暗闇から這い出たディンルーは己の慟哭を唯一の言葉に乗せて叫ぶ。


    「ソソゲ――ッ!!」

    ディンルーの封印を解いた少女は達人であった。かつて万の軍勢を奈落の底へと導いたパルデアの厄災を相手に少女は圧倒的な実力を見せつけた。ディンルーは初めて心のそこから楽しいと感じ、そして少女と共に行きたいと思った。

    少女の前でお辞儀をするように頭を下げるディンルー。その頭の鉄器が地についても地割れが起こることはなかった。

  • 101二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:35:50

    少女はディンルーを連れてパルデアの大地を巡っていった。

    砂漠を歩くときはディンルーのウツワが作る影の中で一休みし、雪山を登るときにはウツワの中に雪を詰め込んで遊び、竹林を行くときには枝が引っ掛からないように導いてくれた。

    少女はいつもディンルーのそばでウツワに触れ、ウツワを活用し、ウツワを撫でた。まるで、ちっとも怖くないよ、とでも伝えているかのような所作であったが、ディンルーがそれをどうとらえたかはうかがい知れない。

    ただ、ディンルーは少女の小さな手が、暖かい手が、柔らかな手が、優しく触れてくれるその瞬間がたまらなく好きであった。

    そのうちに、少女はディンルーを学校に連れていくことにした。会わせたい人物がいるとのこと。ディンルーは孤独を埋めてくれる少女が、さらにつながりを作ってくれるというので大いに喜んだ。

  • 102二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:42:56

    書架に囲まれた空間で、少女が見せたディンルーを前にしてその女性は大声を上げた。

    「ウッヒョ―――――!!!」

    かなりの轟音であり、ディンルーはかつて感じた恐怖を思い出しそうになったが、ぺたぺたと触れてくる女性の物怖じしない態度にすっかり惹かれてしまった。

    女性が言うには、ディンルーは古代の民が信仰していた対象そのものが何か影響を及ぼしているかもしれないとのこと。その真実を知っているのはディンルーのみである。

  • 103二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:56:54

    学校を出た少女はディンルーや仲間のポケモンたちを連れて郊外の小高い丘へとやってきた。

    ここでピクニックをするとのことだが、もちろんディンルーにはそれが何を意味する言葉なのかが分からない。

    ゆったりとした風が肌を撫でる。

    美しい柄の敷物の上に真っ白なウツワが8つ並べられた。少女はその上で具材を切り、パンを並べてサンドイッチを作っていく。

    何をやっているのか、ディンルーには分からない。だが、少女が何かをやってくれていることは確かに分かる。

    ウキウキとした気分で少女の手際を見つめるディンルー。少女は並べたパンの上に切った具材を乗せていく。実にリズミカルな動きであり、実際少女は鼻唄を歌いながら作業をしていた。

    「はい!できたよ!」

    少女のポケモンたちはみな喜び勇んでかぶりついていく。ディンルーもまた同じようにする。ここには自分を怖がる者はいない。ここでは自分は孤独にはならない。

    はじめて食べる料理の味に思わず首を振って美味しさを表現するディンルー。その頭の鉄器にこびりついていた赤黒い汚れはいつの間にか薄くなり剥がれ落ちていた。

    これから、彼の道には、恐怖も、孤独も必要ない。そう、仲間たちがいるのだから。

    美味しそうにサンドイッチを食べるポケモンたちを見て少女は、自分の分に手をつけるのも忘れて微笑む。

    彼女の分の真っ白なウツワには、パンの片割れと具材が飛散していた。

    ~完~

  • 104二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:57:53

    レホール先生が癒しになる。

    >100

    おお、注げが雪げになるとは。

  • 105二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 21:58:58

    レホ先はさぁ!!
    …まぁ、よかったねぇディンルー!

  • 106二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 22:03:08

    いやー難産でした。ディンルーは難しい!

    でもだんだん楽しくなってきました。

    四災はひとまずここまでで残りの二つはまたいずれ・・・




    作者の個人的に気に入ってる作品も良かったら・・・

    閲覧注意 エリアゼロが全裸必須地帯だったら ナンジャモ不審者遭遇編|あにまん掲示板ハロー、あにまん民前回書いたssが少々物騒な話だったから今回は平和にいきたいスレ絵は前スレで絵師さんが描いてくれたヤツbbs.animanch.com
  • 107二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 22:03:38

    サンドウィッチ爆発ノルマ達成

    完結乙です!

  • 108二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 22:04:36

    彼女の分の真っ白なウツワには、パンの片割れと具材が飛散していた。

    やはり爆発してますね

  • 109二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 22:32:20

    すごくよかった 乙です

  • 110二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 22:49:55

    お疲れ様です!ありがてぇ ありがてぇ
    具材飛散さすなぁ!!
    でも仲間ができて良かったなぁ!!!
    ディンルー愛でて寝よう 悪夢なんて見させないからね…

  • 111二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 23:18:19

    具材飛散してて草ァ!でもこんな爽やかな爆発サンドが好きダァ!
    注げ→雪げが好きすぎる。なんかあの…英雄も罪の意識に押し潰されてああなったしディンちゃんも重ねた罪業で結果的にソソゲ言ってる形になってるのが…なんか良い堪らねぇ(語彙)

  • 112二次元好きの匿名さん23/04/22(土) 07:16:32

    何が何でも爆ぜるサンドイッチ
    救われるのならまぁ…ヨシ!

  • 113二次元好きの匿名さん23/04/22(土) 10:52:25

    残りの四災にどんなに暗い過去をお出しされてもサンドイッチ爆発エンドという光が約束されているからには安心だな(安心かな?)

オススメ

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