- 1二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:26:37
「お願いしますお母さん。トレセン学園への入学を許して下さい」
そう言って娘が頭を下げる姿を見るのは何度目だろう。他のウマ娘さんの例に漏れず、うちの娘もレースの世界に進むことを望んだ。
母親として、笑って見送ってあげるのが普通なんだろう。だけど、私は――
「少し、考え直してみない?」
彼女の選択を、尊重してあげることができずにいた。
少しレース界隈に詳しい人なら誰でも知っている。
テレビや新聞でその華々しい活躍を報じられるのはほんの一握り。その何百倍という人数のウマ娘が、勝つことができずに失意と悔しさに涙しながら苦しんでいることを知っている。
彼女の進む先に待っているのは、決して夢や希望だけではないことを、私は知っている。
過酷なトレーニングや激しいレースで大怪我を負うかもしれない。ライバルたちへの嫉妬が憎しみへと変わって荒んでしまうかもしれない。
ただのヒトでしかない私はウマ娘さんたちの気持ちを知ることはできない。けれど、それらは決して幸せなことでは無いはずだ。
そう思えば思うほど、そんな世界に娘を送り出すことを良しとすることができずにいた。
「トレセン学園に入学しても……勝てないかもしれないよ」
母親として最低な言葉だ。だけど、偽りの無い本心でもある。
レースに勝てずに苦しい思いをさせるぐらいなら。たとえ嫌われてでも、私は――
「それでも、走りたいんだ」
強い意志の乗った言葉にハッと娘を見る。その瞳は、私ではなく――遥か遠くの世界を見ているようだった。 - 2二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:27:13
「負けたくない。だけど、それ以上に――諦めたくないんだ」
力強い言葉に思わず息を吞む。
彼女の覚悟を、私は分かっていなかった。
「広いターフを思いっきり走りたい。いろんなウマ娘たちと競いたい。たくさんの観客の声援を受けてみたい」
私が止めても、きっと彼女は走り出してしまうのだろう。
「私は、トレセン学園で走りたいんだ」
今思い知った。ただのヒトである私には、ウマ娘である娘の気持ちは分からない。
だけど――
「――わかった」
「!」
苦しいことがあるだろう。辛いことがあるだろう。
それでも、この子は――
「いって、らっしゃい」
――きっと、走りながら笑ってくれると、そう思うから。 - 3二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:27:30
「お母さん……!ありがとう、お母さん!」
満面の笑顔で喜ぶ娘。どうやら声の震えは伝わらずに済んだようだ。
「私、がんばるから!たくさんたくさんトレーニングして、誰にも負けないぐらい強くなるから!」
「そうしたら……。応援に来て欲しい。お母さん」
違う。違うよ。
私はね――
『おめでとうございます!無事に生まれましたよ!元気な…ウマ娘ちゃんですよ!』
『ウマ…娘…。私の……。』
君が生まれた時から――君の、ファンだったんだ。 - 4二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:35:40
こういう設定もええな
- 5二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:36:45
ウマ娘を送り出す一般家庭ってこんな感じなんかな
- 6二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 20:47:14
ええね
- 7二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:31:59
ウマ娘って遺伝とはまた違うんだろうか
- 8二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 02:52:41
よき