SS さすがにないなぁ

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:55:02

    人間というのはほんのわずかに視点を変えるだけで見えるものがまるで違う。
    俯けば足元しか見えず、仰げば空しか見えない。
    だから前も左も右もできるなら後ろも見ないと、いろんなものを見落としてしまう。
    くだらないもの、嫌なもの、大切なもの、大好きなもの……そして、見落とした方がよかったものまで。

    そうして今現在、新条アカネはその見落としていた方がいいものの為に悶絶していた。
    「あああああああああ~~~」
    ベッドに突っ伏して只管に唸り続ける。
    誤解しないでほしいのだが、彼女は決してリアルワールドへの帰還を後悔しているとか嫌な事があって怪獣を作りたくなったとかではない。
    むしろ、今現在としてはなんで前の自分はあんなことでイチイチ気に病んで鬱屈していたんだろうと思うほどに穏やかに日々を過ごせている。
    悩みも不満も言えば聞いてくれる相手なんていくらでもいたし、同じことで共感できる仲間だっていた。
    大事なのは自分を含めて周りよく見ること、そしてほんの少しだけ勇気を出して踏み出す事。そうすれば、大体の事は解決の糸口が見つかるものだ。
    本当に、六花や内海君や響君には感謝して……
    「あああああああああ~~~」
    ……友達の名前を思い出してまたもや悶える。

  • 2二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:56:23

    切っ掛けはほんの少しの異変だった。
    いつもの街に妙な違和感を感じ取る様になり、嫌な胸騒ぎを覚えてコンピューターワールドを覗てみれば宇宙と化したグリッドマンの姿。
    そしてグリッドマンユニバースに取り込まれてカオスと化しつつあったツツジ台。
    当然、慌てに慌てた。
    慌てはしたものの、今のアカネにとって介入できる手段は殆どないと言っていい。
    アレクシスを使えば、いやしかしアレに手を出すとこの状況がさらに悪化しかねない……と、悩みに悩みぬいていたアカネの目に飛び込んできたのはグリッドマンを救うべく疾走する少年の姿。
    自身の消滅など微塵も恐れず、アクセスフラッシュを敢行するその姿を見て、アカネも腹を決める。
    グリッドマンを救う道筋を示し、自身の信条などブラックホールに投げ捨ててアレクシスにドミネーションを執行。
    その結果として、アカネは友達を護る事も、自分の気持を読んでくれる子とのちゃんとしてお別れもすることができた。
    今となっては忌まわしい神の視点も、たまには役に立つものだと、すがすがしい気分で自宅に帰ってきたのだが……
    「あああああああああ~~~」
    先ほどまでの優しくうれしい気持ちはどこへやら、今のアカネの胸中は混乱と困惑で混沌の坩堝である。
    いや、違う。なにかやり残しがあったとかとんでもない失敗に気が付いたとかではなく、ただちょっとさっきの事を思い出しているうちに

    響君って、すごい無茶するよね

    っていう当然の思考に至り、何気なしに本棚に目をやっただけなのだ。
    そこに並んでいたのは、アカネの好きなウルトラシリーズのDVDやブルーレイコレクション。
    まぁ、自室なので目に入るのは当然なのだ、が……その背表紙に描かれたウルトラマン達を観た瞬間にこう思ってしまった。

    なんか響君、ウルトラシリーズの主人公みたい。

    んで、まぁ、響裕太を作ったのは誰だよって言ったら新条アカネだよって事な訳で……
    「いや、ちがう! 絶対違うから!! 私、そんなつもり全ッ然ッ無いから!!」
    と悶絶する羽目になってしまったのだ。

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:58:25

    そもそもとして、アカネは響裕太をどうデザインし設定したのかまるで覚えていない。
    恋人役としては作ったが、別に恋愛がしたかったわけじゃない、酷い言い方になってしまうが単にアクセサリーとして作っただけだ。
    クラスであんまり目立たない男の事付き合ってますって、シチュエーションで私って優しいし人を見る目あるでしょ? って、今考えると本当に痛々しいノリだった。
    確かにシチュエーションに説得力を持たせるぐらいの設定はしたはずだ。
    目立たないけど、芯は強いみたいな感じかな~ってそんなようだった気はする。
    いや、でも、まさかそれがウルトラシリーズの主人公みたいな人間になるなんて、まったく思わないじゃないか。想定の範囲外だ。
    「あぁ……でも……」
    彼は、最初からイレギュラーの塊だった。
    誰もが自分を好きになる街で、自分の隣にいながら自分を観なかった少年。
    自分が好き勝手に壊して作り直せる街で、その破壊と創造に立ち向かう力を得た少年。
    私自身が作った設定を逸脱した少年。
    もしかしたら響裕太とは自分が作り出したその瞬間から、自分の思惑を超えた者だったのではないのか?
    安易なダークヒーローものは嫌いだけど、グリッドナイトは確かに自分のヒーローへのあこがれから生まれた存在だ。今ならそう断言できる。
    グリッドマンを倒すという目的のために生まれ成長し、最終的にグリッドマンと共に戦った事によりアカネの思惑を超えたグリッドナイト。
    なら、響裕太は何なのだろう。
    もし仮に、最初から自分の掌の中から飛び出したものだとしたら……
    怪獣が全てを壊し全てを治す世界で、それを逸脱するもの。

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 22:59:11

    私はなぜ、彼の髪を赤くしたのだろう。
    目立たない男の子なら、普通の黒髪だってよかったはずだ。
    でも、でも……あの鮮やかな赤。
    住民たちの瞳は一様に青く、彼の赤い髪はそれを際立たせる。
    その輝きは、まるで光の巨人の胸に燦然と輝く……!

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:00:26

    「わたしは、ウルトラマンも欲しかったのかなぁ」
    怪獣が暴れるのが大好きだ。
    街を打ち壊し、歩くたびにビルが揺れる。
    もっともっと暴れてほしい、格好いい怪獣をもっと見たい。
    だからこそ、ウルトラマンは必要だ。
    ウルトラマンがいるからこそ、怪獣はただ破壊するだけじゃなく力の限りをもってウルトラマン相手に戦う事が出来る。
    ウルトラマンが怪獣を倒して止めるからこそ、新しい怪獣達が暴れる事ができる。
    私は、私という怪獣を受け止めてくれるウルトラマンが欲しかったのかもしれない。

    「んふふ」
    思い出のパスケースを手に取る。
    大事な大事な親友から、響裕太がかっさらっていったあの友達からの贈り物。
    「いいでしょ、六花」
    アナタが好きになった相手は。
    「私が考えた、最高に格好いいヒーローなんだから」
    忘れて放っておいたなんて事は心の棚にしまい込んで、ちょっとだけ自慢してやる。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:03:05

    まぁ? それはそれとしてウルトラマンが欲しかったと言っても? 役割は友達でよかったわけで?
    それを恋人役に設定しちゃうとかいくら特撮オタクでも……
    「さすがにないなぁ……」
    ちょっとの自慢が結構な凹みに変わって。
    ゴミ拾いの疲れもあって、アカネは柔らかなベッドの上で寝息を立てる。
    目覚めた時に、また新しいものが見えるように。私にも美しいものがたくさん見えるように。
    新条アカネの青春はまだまだこれからであった。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:05:39

    以上です
    おかしいな、ユニバースしてから裕六CP大好きなのに
    なぜか思い浮かぶアイディアが悉くとして裕六が絶対に揺るがない事前提の裕アカなんだ

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:13:38

    素晴らしい

    良い情動でした

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:13:42

    う~ん素晴らしい情動だねぇ!

  • 10二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:15:46

    よかったです

  • 11二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:16:36

    良いものを読ませてもらった
    気持ちよく眠れそうだ

  • 12二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:21:24

    まるでしゃぶしゃぶを肉ではなく魚で食べたような
    普段と違うお味で大半美味しゅうございました

  • 13二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:22:27

    素敵なユニバースをありがとう

  • 14二次元好きの匿名さん23/04/18(火) 23:23:45

    裕アカ派というすみっコぐらしの俺に優しい世界

  • 15二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 03:42:23

    裕アカいいよね・・・

  • 16二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 04:27:48

    怪獣にとってのウルトラマンが
    アカネにとっての裕太って置き換えが
    メチャクチャ好きだわ…

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