- 1二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:41:28
私達の委員長は、格好良い。
走る姿が、とても格好良い。
まるで地面を跳ぶようなストライド走法は、とてもパワフルでダイナミック。
一度併走してもらった時があったけど、一歩毎にグングン加速する姿に見惚れちゃった。
本人は小回りが苦手だとか言ってたけど、そんなこと気にもならないくらい格好良い。
それと、いつもは穏やかで優しい感じなのに、レースになると雰囲気が変わる。
近くで見たら震えちゃうくらいの怖い目つきになって……それがまた格好良い。
私達の委員長は、優しい。
クラスの皆に慕われて、とても頼りにされている。
委員長は困っている人を見かければすぐに助けてくれる。
私が勉強を教えてとお願いしたら、レース直後にもかかわらず二つ返事で了承してくれた。
正直にいうと、私が一番助けられているかもしれない、ウヘヘ。
色んな時に皆を助けてくれるから、皆が委員長を助けたいって思ってしまう。
勉強はもう少し自分で頑張れって、他の友達から怒られちゃったけど、とにかく優しい。
私達の委員長は、可愛い。
見た目もそうだけど、性格というか、存在が可愛い。
とても勉強が出来て、計算も早くて、難しい言葉もたくさん知っている。
けれど急にコメントを求められたりすると、単純な言葉しか返せなくなったりする。
この間も料理に『すごく、すごい』ってコメントして、アヤベさんに呆れられてた。
どんな時でも一生懸命で、真面目で、なんとなくそんな様子が、ちょっと犬みたいで。
勿論そんなこと本人には言えないけれど、委員長は、とっても可愛い。 - 2二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:41:45
私達の委員長は、凄い。
レースが終わったばかりなのに、朝練を必死で頑張っていた。
私が初めてのレースを終えた後なんか、教室に来るのも億劫だったのに。
委員長の仕事もしっかりこなして、私の勉強も見てくれて、当然トレーニングも。
正直、なんでそこまで頑張れるんだろう、って思う時もある。
でも、その頑張って走る姿に、私やファンの皆は勇気を貰っているのだろう。
誰も彼もが委員長を応援したくなってしまう、これは凄いことだ。
私達の委員長は、格好良くて、優しくて、可愛くて、凄い。
だから私は――――そんな委員長に皐月賞を勝ってほしいと思っている。
クラスには同じレースに出るアヤベさんもいるし、彼女もとても良い人だけれども。
私は、委員長に勝ってほしかった、クラシックの栄冠を掴んで欲しかった。
そして、皐月賞。
『これは凄い末脚だ! 勝ったのは、テイエムオペラオー! テイエムオペラオー皐月賞制覇ですっ!』
結果は、競り合っていた委員長達――――の大外から、オペラオーさんが差し切り勝ち。
見ていた私達でさえ、一瞬何が起こったのかわからないと言わんばかりの静寂。
やがて、その光景にようやく理解が追い付き、レース場に割れんばかりの大歓声が巻き起こった。
そんな中、私は見ていられなかった。
目に熱い物が込みあげて、思わず顔を伏せてしまった。
委員長、あんなに頑張ってたのに、あんなに凄かったのに、あんなに早かったのに。
あともう少し、あともう一歩だったのに。
でも届かなかった、勝つことが出来なかった、皐月賞の栄冠を得ることができなかった。
もっと応援すれば良かったのかな、勉強教えてなんて言わなければ良かったのかな。
もっと、もっと――――。 - 3二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:42:07
「ナリタトップロードッ!!」
その時、勝者への歓声を突き抜けるような大声が響いた。
「良く頑張ったー!」
「トップロード凄かったぞー!」
「次も応援するよー!」
溢れる歓声、それは勝者ではなく、委員長に送られた歓声だった。
そうだ、私には立つことすら出来なかったクラシック三冠の舞台での、三着。
これは誇ることの出来る結果であり、決して悲しむようなものではない。
それに委員長は、ターフの上でも格好良くて、優しく、可愛くて、凄かったじゃないか。
私は走る委員長に何も出来ないけど、声を送ることだけは出来るんだから。
涙を拭って、顔を上げて、力の限りの笑顔で、私は声を上げた。
「委員長ー! お疲れ様ー! すごかったよー!」
ターフに立つ委員長は、その声援に頷いて、笑顔で先を見据えていた。
雨雲から差し込む光に照らされた委員長には、後悔も、悲観もまるで感じられなくて。
私は、見惚れてしまっていた。
ああ、やっぱり、私達の委員長は凄い。 - 4二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:42:20
翌日の放課後。
寮に帰っていく皆の流れに逆走して、私は学園へ向かっていた。
宿題のプリントを持って帰るのを忘れてしまったのである。
全く手を付けてない状態では、委員長もきっと教えてはくれないだろう。
人の気配が少なくなって、いつもの喧騒が嘘みたく静かな校舎。
誰もいないはずの私達の教室に、私は何故か、人の気配を感じた。
怖くなって、こそこそと身を隠しつつ、そっと教室を覗き込む。
そこは一人、じっと窓から外を見つめる委員長の姿があった。
珍しく険しい表情をして、拳を硬く握りしめて、歯を食いしばって。
まるで皐月賞の舞台であった、遥か遠くの中山レース場を見つめているかのよう。
ああ、そうか。
悔しくないわけがない、悲しくないわけがない。
一生に一度のクラッシク三冠、誰だって喉から手が出るほど欲しかったに決まってる。
そんな委員長に私は、私は…………何が言えるというのだろう。
頑張ったね? たまたまだよ? 次は勝てるよ? ああ、なんて、無責任な言葉。
あの舞台に立つ資格すら得られなかった私が、委員長に言えることなんてあるのだろうか。
私は、顔を引っ込めた。
一人にしておいてあげよう、宿題は明日少し早めに登校して何とかしよう。
そう考えて、私は。 - 5二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:42:47
「委員長ーーーーっ!」
――――教室に飛び込んだ。
何も言えることなんてない、してあげられることなんてない。
それでも何かを言ってあげたくて、何かをしてあげたくて、気づいたら動いていた。
委員長は一瞬びくんと身体を跳ねさせて、こちらに振り向いた。
無理矢理作り出した笑顔を浮かべて。
「えっと、どうかしましたか?」
そして、委員長は当然の疑問を口にする。
完全にノープランで突っ込んだ私には、言うことも言いたいことも見つからなくて。
ショートしかけた思考回路は、私のお決まりの言葉を、口から吐き出した。
「…………また、勉強教えて?」
何を言っているんだ私。
ぶわっと冷や汗が流れるのを感じる。
流石の委員長も怒るだろうか、それとも呆れてしまうだろうか。
恐る恐る、彼女の顔を見る。
委員長はきょとんとした表情を浮かべてから、いつも優しい微笑みを見せてくれた。
「私が力になれるなら、喜んで!」
その言葉に、その笑顔に、どくんと、胸が高鳴った。
ああ、やっぱり、私の委員長は――――本当に凄い。 - 6二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 18:43:10
お わ り
いやあアニメROAD TO THE TOP良かったですね。
トプロ、アヤベ、オペラオーの描き方も素晴らしいけれど、この子のシーンも素晴らしい。
スレ画にもしたシーンは中の人の名演もあって印象に残るし、客席での応援シーンもまた良し。
更に個人的に推したいシーンは二つ。
一つはトプロに勉強を教わりつつ「迷惑じゃない?」と聞いてしまうシーン。
お調子者にも見える彼女の健気さとトプロの気高さの両方を描いた名シーンでした。
もう一つはトプロがアヤベさんに「私にとってアヤベさんは理想の姿でした」と言う光景は偶然彼女が目撃してしまうシーンですね。
その光景を見て、憧れは憧れで終わらせてはいけないと想いを改めるところはこれぞウマ娘というべき部分でしょう。
そして、この時の話が最終話の菊花賞へ繋がるわけですから、今から待ち遠しいです。
どうでもいいけど読み返したら帝京平成大学のCMみたいだなって思いました。 - 7二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 19:35:44
幻覚見てて草
- 8二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 19:40:01
謝礼を振り込みたいんですが口座番号教えていただいても?
トプロガチャ石用に取っておいてください - 9二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 20:08:35
- 10二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 21:13:10
まさかの人選
- 11123/04/19(水) 21:20:01
でも可愛かったから……
- 12二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 21:28:52
アッハ! タァスカルゥ〜ウヘヘ↓ヘヘェェェ↑ヘヘ→ヘ↓ヘェ→にこんなドラマが隠されていたとは…
- 13123/04/19(水) 22:07:20
アッハ! タァスカルゥ〜ウヘヘ↓ヘヘェェェ↑ヘヘ→ヘ↓ヘェ→子いいよね……
- 14二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 22:18:43
私たちの委員長のここが凄い!
- 15123/04/19(水) 22:28:33
ト プ ロ 魂
- 16二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:18:24
このSSのここがすごい!
全 部 - 17123/04/20(木) 06:12:12
- 18二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 06:18:34
朝から良いものを頂きました
まさかの人選も、読めばどこも不思議ではなくトップロードの世界観が広がりました
心に抱いて二度寝します - 19123/04/20(木) 06:56:56