ダイイチルビーの微笑み

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:10:59

     名家の令嬢として名高いダイイチルビー。容姿、態度ともに隙はなく、纏う品格は一級品。彼女の姿を目にするだけで、圧倒されるほどの風格を感じるという声も上がっている。生きる世界が違うとさえ思う人も多い。

     そんな彼女を継続して観察している者、興味深い一面に気がつくだろう。

     ルビーはほとんどの間、微笑んだ表情をしているのだ。それはまるで、額縁に飾られた肖像画のように。

  • 2二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:11:20

     ある日の昼休み。学園の中庭でルビーを見かけ、目で追っていたところ。彼女はこちらの姿を認めると、わずかに耳を震わせる。やがて、浮かべられていた微笑みは薄れていき、すたすたと歩み寄ってくる。間近にまで迫ってくると、澄ました顔で声をかけてきた。

    「……トレーナーさん。どうかなさいましたか」
    「あ、いや、大きなことじゃないんだ」

     彼女は鋭い目をして、真っ直ぐに顔を見上げてくる。真剣さが窺える顔つきに、深刻そうな素振りを見せていたのかと少し反省する。

    「では、如何様な」
    「あー……ルビーって普段は柔らかい表情をしてるなって」

     彼女と契約をしてから短くない年月が経っているのに、今さらとしか思えない感想。拍子抜けするような一言だろうに、彼女は顔色ひとつ変えることはない。そのまま頷きを合わせながら、さも当然とばかりに答える。

    「はい。そのように意識しておりますので」

     表情にまで気を抜いていないとは、彼女の心がけに舌を巻く。一方で、自分と話をしたり、思慮にふけっているときには、どこか険しさをも感じさせる顔つきをすることが多い。

    「なりたい姿、あるべき姿を体現する、ってやつだよね」
    「一族の娘として、ふさわしい振る舞いをしているだけです」

     平時においては柔和な印象を持たせ、集中すべきときには気を引き締めるということか。彼女も内心では常に気を張っているのだろうが、そう思わせないのも技術のひとつである。
     これだけにとどまらず、普段から彼女の身の振り方には学ばされることも多い。そんな姿を毎日のように目にするから、自分も背筋を伸ばせるというもの。

    「……ご要件は以上でしょうか」
    「ああ、うん、ごめんね。引き留めちゃって」
    「問題ありません。急ぎの用があるわけではございませんので」

     こうして言葉を交わしている間にも、彼女の端々から滲んでくる品格。言葉遣いに声の抑揚、問いかけに伴うわずかな所作までにも。彼女と直接接する者だけが体感できる、指の先まで行き渡った意識の細やかさ。

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:12:55

    「では、また後ほど。トレーニングの際にお会いいたしましょう」
    「また後でね」

     小さくお辞儀をして、彼女はどこかへと行ってしまう。素っ気なくも思われる応対ではある。

     しかし、一度だけ。先ほどの彼女とは真逆のような、満開に花開いた笑顔を見せてくれたことがある。

     あんなにも可憐で可愛らしい笑顔は、この人生で一度たりとも見たことはなかった。ましてや、あのダイイチルビーがこのような姿を見せるということに、驚きと感動を覚えたものだった。
     後で執事に聞いたところ、彼女が心からの笑顔を表にすることは滅多になく、気を許した相手にだけ、ごく稀に見せてくれるらしい。曰く、長年一族に仕えていても、年に数えるくらいしか拝むことができないという。

     わずかに口角を上げた表情も、凛々しさを感じさせる引き締まった顔も、どんなルビーも魅力的だ。しかし、最も輝いているのは、頬にほんのりと赤みが差したあの笑顔の瞬間だと、確信をもって言える。肖像画には相応しくないのだろうが、絵画になるとすれば、あの姿を捉えたものが飾られてほしいとさえ思う。

     ルビーの輝きをもう一度見られるよう――いや、輝かせることができるように。そして、彼女の隣に相応しい存在になれるように。
     気合いを入れて襟を正し、胸に抱いた決意を新たにする。
     さあ、まずは日々の業務から、と。今日もトレーナー室へ向けて足を動かすのだった。 

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:23:32

    前作

    小さな春をふたり占め|あにまん掲示板 三月から四月にかけて、気温が上がっていくのと同時に、日本にはこの季節ならではの風物詩がある。もちろん学園も例外ではなく、正門奥の並木はみんな桃色にドレスアップしている。この景色を見ると、春がやってき…bbs.animanch.com

    ルビーお嬢お誕生日おめでとう!

    お誕生日SSは落としました ごめんね……

    完成させらせないと見切りをつけてこの短編書いたけどそれも間に合わなかった ちなみにこんなに短いのに執筆に五日くらいかかってます


    今作はホーム画面のルビーの佇まいが題材です

    他の娘は正面からこちらを向いていることも多いけど、ルビーは体をわずかに斜めにして、わずかに笑っているような顔をして、目線はしっかり真っ直ぐに向けていますよね

    まさに肖像画のような姿だなあ、と思ったのがきっかけで書いたものです

    出力されたものはなんだか個人的な解釈を書き連ねただけみたいになっちゃった


    次作はたぶんドーベルのお誕生日SS

    去年は落としたから今年こそは完成させたい

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:27:41

    ん゛ん〜、何回見てもルビーは、まさに傑作だY!
    いやぁしかしここはバ鹿に空気が良いねぇ。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/19(水) 23:39:50

    ルビーの表情クッソ良いのよね…
    書きあげたことが偉いし良いSSだった

オススメ

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