(SS注意)キタちゃんがほっぺたを触らせる話

  • 1二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:34:30

     昼下がりのトレーナー室。あたしはそこで、ソファーに座っているトレーナーさんの肩をマッサージしながら、のんびり過ごしていた。あたしのマッサージは皆から好評で、トレーナーさんも気持ちがいいと、嬉しい言葉をいつも言ってくれる。
     だけど、今日のトレーナーさんは何か考えてる様子で、あまりリラックスしていないみたい……。
     その様子にあたしは不安になってしまって、つい手を止めてしまう。

    「トレーナーさん……何か考え事ですか?もしかして、あんまり気持ちよくない……ですか……?」
    「えっ……?そんなことはない!ないんだけど……」
    「でも……」

     あたしの言葉に、トレーナーさんは慌てて否定している。だけど、何か考えてたのは事実だし、良くないことなのかも……。不安は大きくなってしまう。
     あたしの不安は伝わったみたいで、トレーナーさんは肩に置いていたあたしの手を重ねてくれた。その手のひらは暖かくて、少しずつだけど不安は薄れていく。

    「トレーナーさん……?」
    「不安にさせてごめんな。でも、君が悪いわけじゃないから安心してほしい」

     手のひらと同じくらい温かい言葉は、あたしの不安を完全に消し去ってくれた。胸に広がる暖かさに身を預けようとし……。ってストップあたし!トレーナーさんが何を考えていたのかを聞かないとじゃない?
     そう思い直して、トレーナーさんに問いかける。

    「それなら、何を考えていたんですか?」
    「ああ、いつも君は誰かの為に色々してくれるけど、君が自分の為だけに動くことがあるのか心配になってね……」
    「自分の為……ですか……」

     トレーナーさんの言葉に思わず考えてしまう。
     あたしは困ってるヒトがいれば助けるのが性分で、誰かの助けになることがあたしの喜びになる。だからこそ、お助け自体があたしの為と言えると思う。

    「お助け活動をすることで、皆を笑顔に出来ますからあたしの為でもありますよ?」
    「君ならそう言うとは思ってたけど……。なんて言えばいいかな……。」

  • 2二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:34:50

     あたしの言葉にトレーナーさんはあんまり納得してくれない。
     下を向いて考え込んでいるトレーナーさんを待つこと数分。ようやく言葉が見つかったみたいで、顔を挙げてくれた。

    「そうだ!我儘を言ってほしいんだ!」
    「我儘……ですか?」

     言葉が見つかって嬉しそうなトレーナーさんだけど……。あたしはどうもよく分からないというか……。頭の中は?でいっぱいになってしまった。

    「我儘って例えばどんなことですか……?」
    「温泉旅行で見せた……のは、我儘というよりは羽目を外すか……。とにかく、迷惑を考えずに自分のやりたいことを言ってほしいんだ」

     重ねた手がギュッと強くなった。その感触にほっぺたが熱くなってくる……。その熱さに負けないように、トレーナーさんの言葉をもう一度思い起こした。
     我儘……か。言葉は悪く聞こえるけど、要するにあたしのやりたいことを、遠慮なくしてほしいということだ。温泉旅行の時、あたしは羽目を外して色々やってしまった。……まあ、その時のことは置いておこうかな。

    「我儘……と言われても、特にはないですよ?」
    「何でもいいんだ。君がやりたいことなら何でも言ってくれ!」

     そうは言われても……。中々思い浮かばず悩みに悩んでしまう。重ねた手のひらとほっぺたが、どうしたって頭から離れてくれない。……手のひらとほっぺた。これだ!
     一つ良い考えが思いついた。あたしの手のひらをクルッと裏返して、トレーナーさんが重ねてくれている手を握る。

    「思いつきましたよトレーナーさん!」
    「良かったよ!それって何なんだ?」

     嬉しそうな声のトレーナーさんは、あたしの方に振り返ってくれた。思いついたことをトレーナーさんに伝えないと!
     トレーナーさんの瞳をジッと見つめながら、考えを伝えた。

    「あたしのほっぺたを触ってください!」
    「ああ!分かった!…………えっ?」

  • 3二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:35:33

     あたしの一言は、トレーナーさんの笑顔にしたかと思ったら困惑させることになってしまったみたい。……まぁ、当たり前だよね。

    「ほっぺた……って、君のか……?」
    「はい!」

     あたしの答えは、トレーナーさんを混乱させてしまったみたい。
     だけど、一度思ったことを止めることは出来ないようで、心のままに突き進んでいく。

    「ほっぺたを触ってもらうのが、あたしの我儘です!」
    「いや、流石に担当ウマ娘の頬を触るのは……」

     引き下がろうとするトレーナーさん。普段のあたしならそれを受け入れるだろう。
     だけど、今回は我儘を言っていい日だと言ったのはトレーナーさんの方だ。それなら、引き下がらずに前に向かおう。

    「あたしの我儘聞いてくれないんですか……?」
    「うっ……」

     悲しそうに見つめて、トレーナーさんに罪悪感を浮かばせる。ごめんなさい……でも、深く触れ合うならこれが一番だと思うんです!

    「そ、そもそも何で触って欲しいんだ……」
    「深く触れ合いたいからです!」
    「深くって……」
    「もっとトレーナーさんと仲良くなりたいんです!お願いします!」
    「そこまでなのかキタサン……」

     深く深く頭を下げてお願いすると、トレーナーさんも何とか納得してくれたみたいで、諦めたような表情をしていた。

    「分かったよ……君の頬を触るよ……」
    「ありがとうございます!」

  • 4二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:36:06

     そうとなれば話は早い。トレーナーさんの前に移動する。

    「では、トレーナーさん!あたしのほっぺたです!」

     ズイッと顔を前に出して、触られる準備が出来たことをトレーナーさんに伝える。

    「あ、ああ……。今から触るからな……」

     おずおずと手を伸ばし、あたしの顔へと少しずつ近づいていく。
     5cm、4cm、3cm、2cm、1cm……。
     指先がほっぺたに触れる。そこから熱が広がっていくのを感じる。

    「どうですか……!」

     初めは恐る恐るほっぺたを押したりしていたけど、徐々に押し込む時間が長くなってきたりと、触る時間が長くなっている。

    「何というか……モチモチしてるな……」
    「あたしのほっぺたは、ダイヤちゃんのお墨付きですからね!」

     感慨深く呟くトレーナーさんは、何だか神妙な顔をしていて少し面白かった。
     指でペタンぺたんとお餅のように触られると、もっとほっぺたが柔らかくなりそう。そうなったら、もっともっと触ってくれるのかな?……なんて、よく分からないことを思い浮かべてしまう。でも……そうだったら嬉しいな……。
     柔らかくなってきたほっぺたが、さっきよりも緩むのを感じる。

    「今度は撫でてみてください!」
    「ここぞとばかりに色々言うなぁ……」

     あたしの勢いに若干引いてる気がするトレーナーさん。むぅ……いいじゃないですか……。こんな風に触ってもらえることってなかなか無いんですから……。心の中でほっぺたを膨らませる。
     結構悩んでいる様子だったけど、トレーナーさんはあたしの勢いに負けたみたいで、複雑な顔をしながら決意してくれた。

  • 5二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:36:28

    「……分かった。撫でてみるよ」
    「お願いします!」

     一旦指が離れたかと思うと、何かがほっぺたを包むこんだ。その暖かさが嬉しくて、目をつぶってじっくりと味わう。えへへ……すごく気持ちがいいなぁ……。
     ゆっくりと動き出した手のひらは、あたしのほっぺたをゆっくりと、伸ばしては縮めてを繰り返している。丁寧に丁寧に伸ばしてくれて、まるで美味しいパンを作っているかのようだ。

    「どうれふか?ひもひいれひょう!」
    「まぁ……うん……そうだな……」
    「とれぇなぁはん?」

     目を開けると、さっきと変わらず複雑な顔をしたトレーナーさんがいた。むぅ……いつまでそんな顔をしてるんですか……?あんまりその顔好きじゃないです……。あたしまで複雑な気持ちになってしまった。
     いつものあたしならここで、もうやめますって言えたと思う。でも、今日は我儘を言って良い日だって、トレーナーさんは言った。それなら、あたしが思うように行動したい。トレーナーさんにもあたしみたいに我儘になってほしい。
     そう思って、あたしはトレーナーさんの顔に向かって手を伸ばし、ゆっくりと両手で顔を挟む。

    「むぐっ!?」

     あたしの突然の行動に驚いたみたい。変な声が出ていてちょっと面白い。
     そのままトレーナーさんの顔を、グニグニと動かす。むっ……意外と触り心地がいいかも……。
     そんな風に触っていたら、トレーナーさんの手は止まっていた。あたしがこんなことしたから混乱してるのかも。

    「きらはん……らにお……?」
    「トレーナーさんが笑ってくれないから、笑わせようと思って」
    「本当に今日は強引だな……」
    「我儘言っていいって言ったのは、トレーナーさんですもん」

     大義名分はあたしにある。そう思うと、強引な自分を許せる気がした。
     グニグニとほっぺたを動かして、トレーナーさんの反応を伺う。反応がないとかなり寂しい。
     だから、ちょっとだけほっぺたを伸ばしてみた。

  • 6二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:36:49

    「きたはん……!いひゃい……!」
    「ふふふ……!面白い顔です!」

     見たことのない顔をしているトレーナーさん……というか、あたしがさせてるのか。
     優しく引っ張っては離してを繰り返し、もう一度グニグニとほっぺたを触る。
     そんな風に触り続けていたら、トレーナーさんの止まっていた手が、動き始めていた。

    「そっちがその気なら!」
    「むぎゅっ!?」

     トレーナーさんが突然、あたしの頬をプニッと押し込んだ。
     ビックリして動かしていた手が止まってしまう。
     慌ててトレーナーさんを見てみると、あたしの瞳に映るトレーナーさんの表情は、さっきまでとは違い、何か吹っ切れていて、まるでイタズラする子供みたいに見えた。

    「と、とれぇなぁはん……。何をすりゅきれすか……?」
    「こうするんだ……!」

     押し込まれたほっぺたは、そのまま上に持ち上げられる。そうかと思うと下に降りてグニグニされてしまう。痛くはないけどくすぐったい。
     トレーナーさんが、あたしみたいにしてくれることが、とても嬉しかった。触れ合いってこういうことを言うのかも。
     だけど、やられっぱなしで終わるあたしじゃない。

    「そっちがその気ならこっちらって〜!」
    「ぐっ!?」

     止まっていた手をもう一度動かして、グニグニのトレーナーさんのほっぺたを押して見る。変な顔のトレーナーさんがまた現れた。

    「ふふふ……どうれすか……!」
    「こっちらって……!」

     それから暫くの間、ふたりしてグニグニとお互いのほっぺたを触りあう。

  • 7二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:37:25

     いつの間にか時間が経っていたみたいで、気づくと外は茜色に染まっていた。

    「あはは……いつの間にか夕方になっていますね……」
    「そうだな……あんなことするのは、学生の時以来だよ……」

     そんな風に照れたように笑うトレーナーさんを見て、あたしもつられて笑っていた。

    「……!………、……。」
    「?」

     ふと、扉から何かが聞こえた気がした。
     その方向に向かって視線を合わせてみると、少し扉が開いていて、何かがあたし達を見ていた。

    「どうしたんだキタサン?」
    「扉から誰かが見てるような……?」

     あたしの言葉に反応して、トレーナーさんも一緒に扉を見てくれた。
     ふたりに見られたからなのか、何者かは少し震えている様子だった。

    「……」
    「ちょっと確認してみようか?」
    「そうですね、一緒に見に行きましょう」

     トレーナーさんと一緒に、扉に向かって歩き出した。その間も、何者かは震えていて、動くことが出来ないみたい。
     ゆっくりと開かれた扉の前にいたのは……。

    「……ダイヤちゃん?」
    「き、キタちゃん……こんにちは……」

     親友のダイヤちゃんだった。何故かダイヤちゃんは、扉の前であたし達を見て怯えている様子。

  • 8二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:37:53

    「ダイヤちゃん……どうしたの……?なんで怯えてるの……?」
    「えっと……その……」

     心配になって声をかけると、さらに動揺していて、何も言えなくなってしまった。
     その様子を見たトレーナーさんは、ハッとした顔になり、段々と顔が青くなっていた。

    「トレーナーさん?どうしたんですか?」
    「もしかしてだけど……見られてたんじゃないか……?」
    「えっ?」

     トレーナーさんの言葉に、ダイヤちゃんは大きく跳ね上がった。
     見られてた?何を?あたし達がしてたこと?さっきまでのことを思い出す。確か、トレーナーさんとふたりで……。
    ――その瞬間、ダイヤちゃんは走り出した。あたし達の方を見ずに何処までも。
     そしてあたしも思い至ってしまった。さっきまでのあたし達がしていたことを。
    ――気づいたらあたしも走り出していた。

    「ダイヤちゃん!待って!話を聞いて!」
    「分かってるよキタちゃん!トレーナーさんとそういう仲なんでしょ!誰にも言わない!言わないよ!」

     不味い!変な風に捉えられてる!誤解なの!誤解なんだよダイヤちゃん!
     緩むことのないダイヤちゃんの速度に、なんとか追いつこうと必死になるあたし。

    「そんな仲じゃないよ!ダイヤちゃん!落ち着いて!」
    「どんな仲ならほっぺたを触り合うっていうの!?」
    「どこから見てたのダイヤちゃん!?」
    「ふたりがほっぺたグニグニしてたところからだよ!」
    「一番駄目なところだ!説明するから待ってよ!!」

     そうは言っても、ダイヤちゃんは止まってはくれない。これからは、しっかりと鍵を閉めてからやらないとな……。そんな風に思いながら、ダイヤちゃんを追いかけるしかなかった。

  • 9123/04/20(木) 19:45:04

    キタちゃんのほっぺたはもちもち派です

    ほっぺたを触り合う話書きたいなぁ……から生まれた話なので、深い考えは何一つないです。

    もっともっと可愛く書けるように頑張っていきます。

  • 10二次元好きの匿名さん23/04/20(木) 19:51:51

    「どんな仲ならほっぺたを触り合うっていうの!?」
    「どこから見てたのダイヤちゃん!?」
    「ふたりがほっぺたグニグニしてたところからだよ!」
    「一番駄目なところだ!説明するから待ってよ!!」


    ここ可愛すぎてニヤニヤしちゃった……本当にスレ主の書くキタちゃんは可愛いね……トレーナーと末永くキャッキャしてほしい……

  • 11123/04/20(木) 19:57:58

    >>10

    感想ありがとうございます!


    ダイヤちゃんとの絡みは、これからも何処かで入れたいとは思っているんですが、中々入れるところがなくて……。今回はオチで使わせてもらいました。


    可愛くかけていたら幸いです。

  • 12二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 01:09:59

    普段ダイヤちゃんに追われる側なのに立場逆転してるの芝
    登場人物みんなかわいくてほっこりしちゃった 

  • 13二次元好きの匿名さん23/04/21(金) 01:45:56

    翌日から噂になってそう。

    キタちゃんが言い訳してもクラスメイトは「ラブラブなんだってね!」「照れなくてもいいよ!」「素敵なトレーナーさんだもんね!」と聞いてくれなくて、生暖かい目で見られて悶えるキタちゃんを幻視したわ。

  • 14123/04/21(金) 05:38:34

    >>12

    感想ありがとうございます!

    スタートが遅れたのと場所が悪いことから、この後追いつくことが出来たかは定かではないです……。

    可愛いと言っていただいて嬉しいです。重ねてありがとうございます。


    >>13

    感想ありがとうございます!

    どう聞いてもそんな仲なの?にしかならないですからね……。

    今後暫くは微笑ましい目で見られるキタちゃんが自分の目にも浮かんできます。

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