- 1二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:35:07
- 2二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:35:58
「こんの馬鹿!早く起きろ!移動教室だぞ!」
「……………え?」
頭に軽い衝撃を受け、意識が急速に浮上する。ぼやけていた眼を擦り、周りを見ると呆れた様子の少女が二人、私の周りで腕を混んでいた。
「え……あ……え?」
「まだ寝ぼけてるのかよ立香。次視聴覚室。早く行くぞ」
「立香ちゃんこれ教科書と筆箱〜。机の中漁っちゃってごめんね〜。けど、このままだと遅刻しちゃうから許してね?」
訳もわからずふらふらと立ち上がる。
何も分からないはずなのに引いた椅子の軋む音と、床が擦れる音は、異様に聞き馴染みがあって気持ち悪かった。 - 3二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:36:46
少女の一人に渡された教科書には所々落書きがあり、筆箱にはバレーボールのシールが貼ってある。それがまた頭に覆う靄を刺激する。
「ほら、早く行くぞ!」
手を取られ、廊下を駆ける。
途中、渡り廊下で出会った首からホイッスルをぶら下げた男性に『バレー部!廊下を走るな顧問に言うぞ!』と、半笑いで脅しをかけられたが、怒られたのにもかかわらず皆んな足を緩めず笑っている。
楽しい。楽しい。楽しい。
頭の奥からチリチリと音がする。
もうとっくに理解した。
これは私の記憶だ。
でも、どうして、なんでかな。
───私まだ誰の名前も思い出せないや - 4二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:37:49
「あら起きましたマスターさん?」
「……………カーマ?」
「はい。貴方だけの女神カーマちゃんですよ」
目が覚めると、そこはいつもの私室のベッドで、私を見下ろす様に、カーマが居た。後頭部に柔らかい感触。きっと膝枕してくれていたのだろう。
「ありがとうカーマ。眠っちゃってたみたい」
「わたしの太腿があなたを堕落させちゃったみたいですね」
「はは、そうかも。最近疲れちゃってさ」
起き上がりながら、横目に置き時計を確認し、自分の認識を確かめる。……日付、時間、──自分が何者か、何をするべきか。 - 5二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:39:01
……うん。大丈夫。大丈夫。忘れてない間違えてない。バイタルも安定してる。私は正常。なら、また走り出さないと
「ごめんねカーマ。私ダヴィンチちゃんに次のレイシフト計画の話をするって呼ばれてるのだった」
「大丈夫ですよ 私は聞き分けのいい女神ですので。埋め合わせとして、お昼一緒にしてくれれば許してあげます」
「ハハハ……なるべく善処するね……」
手早く服を整え、外に出る。跳ねた髪はいつからか直さなくなった。
「よし。今日も頑張らなきゃ」
廊下を駆け出して集合場所のドッグへと向かう。
目的地に辿り着くまで、私の手を引いてくれる人も、私を叱ってくれる人も──今日はいなかった。 - 6二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:40:17
「あの子ボロボロですよ」
『……………』
「はぁ?彼女への信頼大変結構ですけどねぇ。貴方はもう少し彼女の前に現れるべきではありません?」
『…………』
「なにが共犯者ですか。売れない画家のパトロンでももう少し助けになりますよ」
「もういいです。私は彼女を徹底的に甘やかすと決めましたので。…私があの子の心を護ります」
「……あの子はエデでも何でもない。只のどこにでもいる可愛い女の子なんですから」
「そうでなければいけないのです」 - 7二次元好きの匿名さん21/11/25(木) 21:40:54
終わり。
剣豪ぐだ子のどこにでもいる明るい女の子感好き。