【クロス/🎲/SS】1%コンビが英国商船で保険調査する

[1 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:22:52]

【Return of the Obra Dinn×ドレーク&ホーキンス】

⚠オブラディンにワンピとの親和性を見出したスレ主による突発的な暴挙

⚠キャラエミュ及び文章のクオリティにはあまり自信が無いことを教える

⚠スレ画の二人以外が出る予定は無いがすべてはダイス神の御心のままに

⚠クロスオーバーの性質上、元ゲームのネタバレが多分に含まれてるぞ！

⚠元ゲームがCERO:Dなのでだいたいワンピ原作くらいのグロ表現アリ

[2 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:24:02]

▼『Return of the Obra Dinn』とは

『Papers Please』の作者でもあるLucas Pope氏により2018年にリリースされた本格推理アドベンチャーゲーム。邦題は『オブラディン号の帰還/帰港』。PC（Windows/MacOS）、PS4、Xbos One、Nintendo Switchでそれぞれプレイ可能。

▼ストーリー

1803年、イギリス東インド会社の商船であるオブラ・ディン号が航海中に消息を絶った。捜索ビラが手配されるも音沙汰の無いまま4年が経ち、1807年にオブラ・ディン号は突然ファルマス港へ帰着する。

保険調査官である主人公は無人となったオブラ・ディン号を探索し、同船に何が起きたのかを調べていくことになる。

公式サイト↓

Return of the Obra Dinn

当スレは本家オブラディンのストーリーをなぞりつつスレ主の独自解釈と捏造設定を前面に押し出しながら進めていく予定なので、ゲームをプレイ済みの人にもそうでない人にもゲームとはまた違った形で楽しんでいってもらえるとスレ主は大変嬉しい

また、ゲーム内スクショ等はできるだけ少なくして進めるつもりなのでゲームのビジュアルを楽しみたい人はぜひ本家をプレイしてみてくれよな！

正直めちゃくちゃ面白いゲームだからロジック系謎解きと一人称視点が苦手じゃなかったら一度はプレイしてみてほしいし多分その方がこのスレも楽しめると思うのでマジでオススメ。君も1%コンビと同じ視点に立ってみよう！

[3 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:24:30]

面白そうだな期待

[4 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:24:51]

▼判定システム
10面ダイスを使用した下方判定方式（目標値以下が出れば成功）です
キャラクターに設定した5つのステータスを適宜組み合わせ判定します
1が出たらクリティカル＝通常の成功に加え良いことが起こります
10が出たらファンブル＝通常の失敗に加え悪いことが起こります

▼プレイヤーキャラクター
合計30を5つのステータスに割り振ること
【観察】与えられた情報の中から必要な情報を見つけ出す能力です
【発想】得た情報が指し示している正確な意味を汲み取る能力です
【知識】得た情報の持つ性質や背景について深く理解する能力です
【読解】断片的な情報を繋ぎ合わせ物事の流れを把握する能力です
【記憶】過去に触れた情報を適切なタイミングで思い出す能力です

[5 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:26:16]

面白そう
期待

[6 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:26:29]

◇PC1《X・ドレーク》
【観察】：8
【発想】：2
【知識】：5
【読解】：6
【記憶】：9
【祷る】特殊技能：一度だけ任意の対象の任意の時間を追体験する

◇PC2《バジル・ホーキンス》
【観察】：6
【発想】：9
【知識】：8
【読解】：3
【記憶】：4
【呪う】特殊技能：一度だけ任意の対象に〝境界線〟を越えさせる


プレイヤーキャラクターの設定を終了しますか？
▷はい
　いいえ

ファイルを選択してください。
▷『File1　安否確認：0件』

スタートしますか？
▷はい
　いいえ

[7 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:29:05]

　〝人は死んだらどこへ征くのか〟

　この問いに答えを出せた者は未だかつていない。何故なら人は死んでしまえばそこまでであり、もう二度と動くことも話すこともできなくなるからだ。

　故に人は死を厭い、死に焦がれ、死を畏れ、死を憂う。

　故に人は死をもって完成し、死をもって人は終わりを迎える。

　死は人にとって絶対であり、故に人は不可逆の生に価値を見出している。

　生者と死者の間には明確な境界線が存在し、それ故に生者は死者に思いを馳せる。その生の痕跡を慈しむ。その生の残痕を拾い集める。

　それだけが生者にできる唯一である故に。

　死者に声は届かず、死者の声もまた届かない。

　人よ、――死を忘るることなかれ。

[8 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:33:07]

期待！

[9 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:34:03]

▼序章

　ぎい、ぎぃ。ぎい、ぎぃ。

　控えめな櫂座の軋む音が鼓膜を揺らす。

　合間に響くオールを水面に差し込む音。応じて舳先が波をかき分け進む音。

　そしてそれらに伴って規則的に揺れる体に、己がそう大きくないサイズの小舟の上にいることを海上生活に慣れた脳がやがて理解する。

　ふと誰かの視線を感じて瞼を持ち上げると、

1.オレンジの髪に特徴的な顎傷の男がオールを手に船を漕いでいた。

2.彫刻のような顔に眩い金髪の男が無表情でこちらを見つめていた。

dice1d2=2 (2)

[10 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:37:35]

ドレーク視点かな？

[11 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:39:37]

「……起きたか、ドレーク」

　月明かりに照らされ座るその男――〝魔術師〟バジル・ホーキンスが放った言葉に、未だ思考を満たしていた眠気がどこかに吹っ飛んでいった。

「、なっ……ホーキンス、！？」

「落ち着け。今転覆したら助かる術がない」

　慌てて立ち上がろうとして、両手にオールを握っていることに気が付いた。まさか、寝ながら漕いでいたとでも言うのか？

　困惑を隠せないながらもひとまず大人しく座り直す。慎重に視線を巡らした夜の洋上はひどく静かに凪いでおり、船ひとつ島影ひとつ見当たらなかった。

「……ここはどこだ？　何故おれを連れ出した？」

「ファルマス、という港の近くらしいが」

　何故だかそうしなければならない気がして、オールを動かしながら問いかける。どこか曖昧に返事をしたホーキンスが続けてその名に聞き覚えがあるかどうか尋ねてきた。首を振って否定する。何故そんなことを？

「悪いが、聞いたことが無い。……お前こそ、知らないのか？」

「何を勘違いしているか知らんが、おれは目が覚めたらこのボートにいた」

　――寝ながら船を漕ぐなどという奇行を目にして騒ぎ立てなかったことに感謝しろ。

　横柄な物言いに反論しようと口を開きかけたとき、ホーキンスが左手に持った一枚の紙を突き付けてきた。ほんの一瞬違和感が脳裏をかすめるも、大きく書かれた見出しに意識が向く。

『オブラ・ディン号　情報求む』

『1803年、航海中に消息を絶つ』

　どうやら商船の捜索ビラのようだ。その下に続く文章を目で追っていると、次の箇所に妙に引っかかりを覚えた。

1.『最終航海の目的地：東方 - 喜望峰に予定どおり到着せず』

2.『同船に関する証言および質問はイギリス東インド会社まで』

dice1d2=2 (2)

[12 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:43:53]

面白そう
そう言えばこの二人は元ネタ的にイギリスと関りがあるんだっけか

[13 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:45:51]

そうか、イギリスだとインドだのワンピース世界には無いからな

原作は動画で見たくらいだけど楽しみ

[14 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:47:23]

原作は名前すら知らなかったけど超楽しみ

[15 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:48:03]

このゲーム好き ドレークとホーキンスのコンビのSS雰囲気が良くて大好きなんだ栄養価高くて助かる

居眠りオール漕ぎ奇行に騒ぎ立てなかったのは偉いんだがホーキンスマイペースで本当好き

[16 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 13:54:44]

原作知らなかったけど面白そう
期待

[17 のんびりやってくよ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 13:59:49]

「この、『イギリス東インド会社』というのは？」

「……『戦車』の逆位置。お前も知らないという訳か、なるほど」

　まるで話が噛み合っている気がしない。

　慣れた手つきでどこからか取り出したカードを扱うホーキンスに、やはりどこか奇妙な違和感を覚える。あまり良い予感のしないしないそれを一旦隅に追いやり、イギリス東インド会社とやらについて改めて思い当たることがないか記憶を整理してみることにした。

（字面を素直に受け取るのなら、なんらかの営利組織なのだろうが）

ダイス判定【記憶】

ドレーク（成功値：9）dice1d10=7 (7)

[18 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 14:12:59]

成功か
だからなんだよだがイギリス東インド会社は17世紀以降だからドレーク(史実)とホーキンス(史実)も時代は違うんだな

[19 クリティカルなら成功 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 14:22:21]

［特殊判定█████のため判定結果がワンランクダウンします］
【記憶】成功→失敗

（やはり、聞き覚えが無いな）

　海賊として、また海軍として常日頃から新聞などにはこまめに目を通しているつもりだが、この会社名に思い当たるところは無かった。

（オブラ・ディン号……800トン、喫水18ft）

　消息を絶った船というのが捜索ビラに記された通りなら、この大きさの商船を複数――あるいはもっと――抱えられる規模の会社であるのは間違いないだろう。
　しかし仮にそうであるならますます妙な話だ。貿易会社など知名度を誇ってこそだというのに、人名あるいは地名と思しき固有名詞に一切聞き覚えが無い。四方の海のどこかに存在している可能性も捨てきれないが、だとして何故それがここに？

（というか、そもそも〝ファルマス〟とはどこだ？）

　疑問符ばかりが飛び交い、考え込んでしまったところで目の前にもう一枚の紙が差し出される。

「これは、」
「先に言っておくが、おれに聞くなよ。こちらが知りたいくらいだ」

[20 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 14:34:46]

プレイした時に揺れてクッソ酔った記憶

[21 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 14:45:55]

何かが起きて終わった後の船上で調査する静謐とした雰囲気のゲームでこの2人に合ってそうで良いよね
ドレークは海兵として寄り添ってホーキンスは真相をほぼ超能力の域の力で解き明かすんだ

[22 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 14:48:14]

>>21

つっても原作でも超能力（道具の力だが）で解き明かした様なもんだしな

[23 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 14:52:42]

1%コンビっていい呼称だ

[25 修正失礼 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 15:17:01]

「指令書か？」
「おそらくはな」

　どうやらこれを受け取った人物は例のイギリス東インド会社とやらに勤めているらしい。日付を見れば捜索ビラに記されていたものから4年ほど経過しているようだった。

「……〝帰着〟？　4年も経ってからか？」
「遭難していたと考えるのが筋だろうが、乗組員が生きていたら連絡のひとつくらい寄越して然るべきだろう」
「そもそも、偉大なる航路で遭難して無事でいられるのか？」
「さてな。常識の通じない海だ。あるいは──」

　言いかけたホーキンスの表情が突然驚愕の色に塗り替えられる。
　何事かと視線を辿り振り向くと、先ほど確認した際は確かに何も無かったそこに一隻の帆船が姿を現していた。ひと目で判るほどに損傷し、浮かんでいるのがやっとのようにも見える。

「っな、……オブラ・ディン号か？」
「……大きさは一致するな。それに、海賊船や観光船の類ではない」

　吸い寄せられるようにボートはオブラ・ディン号へと近付き、やがて作り付けのラッタルの下でぴたりと動きを止めた。

「ふむ。――どうやら、呼ばれているらしい」

　おもむろに手元のカードを引いたホーキンスはそう呟くと、ふらりと立ち上がりラッタルに手をかける。慌ててその腕を掴んで引き留めた。

「待てホーキンス！　本気で言ってるのか……！？」
「なら、ずっとここにいるつもりか？」
「そうは言っても、どんな危険があるかも分からないのに、」
「お前に心配される筋合いは無い」

　ぴしゃりと言い放ったホーキンスに手を振り払われ、思わず押し黙る。
　追いやったはずの違和感がじわじわと奇妙な焦燥となって胸の内を焦がす。そのまま登っていくホーキンスのどこかぎこちない動きが目について、今しがた左腕を掴んだ手の感触を確かめるように何度か拳を開いては閉じる。

[26 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 15:22:19]

二人の精神？記憶？は1％のネタバラシ以降の時間軸基準なのかな
スレ主の文体好き

[27 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 15:31:58]

ドレークとホーキンスって真面目で情報量凄そうな軍人とオカルト系得意で海賊向いてなさそうな海賊だからこういうゴリゴリのミステリ的な物語似合う

[28 もっと仲良くしろ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 15:33:07]

　――何かを忘れている気がする。

（そもそもおれはここに来る前はどこで何をしていた？）

　霞みがかったように判然としない記憶に苛立ちを覚え、軽く頭を降って振り払う。何故かこれについて深く考えるのは避けるべきだと本能が告げている。

（ホーキンスの言う通り、ここにいるだけでは埒が明かない）

　数年行方知れずだったとはいえ、元は商船なのだ。現状について把握するための手がかりがあるかもしれない。

「……よし」

　軽く深呼吸をし、ドレークはラッタルを登り始めた。

ダイス判定【観察】※少し距離が空いたため成功値に－1

ドレーク（成功値：8→7）dice1d10=1 (1)

[29 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 15:34:09]

最低値…ﾎﾟﾛｯ

[30 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 15:38:02]

クリティカルか

[31 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 15:38:33]

＞もっと仲良くしろ

草、まさかの1だがこれはクリティカル判定になるのか？そうなら芸術的な卓越とした動きで登りホーキンスのサポートもできるドレークさん？？

[32 クリっちゃった…… ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 15:57:34]

【観察】クリティカル！

　ごとん、と。
　背後で響いた重々しくも微かな音をドレークの耳が捉えた。

「む？」

　ほんの僅かな逡巡ののち、次段に掛けようとしていた足を下ろしボートの上へ降りる。音の聞こえた辺りの船底を覗き込むと、先ほどまで影も形も無かったはずの小さなトランクケースが無造作に置かれていた。

「……またか」

　早くも感覚が麻痺しつつある自分に胸中で嘆息しながら拾い上げる。見た目の割にずいぶんと重いそれは、しかし開けてみれば一冊の本と懐中時計が入っているのみだった。

　しばし考え込み、トランクケースに仕舞い直したそれらを手に今度こそラッタルを登っていった。

「ホーキンス！　どこだ？」

　降り立ったオブラ・ディン号の主甲板はなかなかに荒れ果ててた。帆はボロボロに破れ、ロープがそこら中に散らかり、家畜用の檻が放置され、ミズンマストに至っては半ばにヒビが入っている上にヤードがひとつ失くなっている。

「これは酷いな……」

　愛船――と呼ぶには少々事情が複雑だが――ことリベラルハインド号を思い出し軽く眉をひそめる。

　軽く咳払いをして気を取り直し、改めて船上を見渡すと操舵輪の近くでホーキンスがしゃがみこんでいる姿が見えた。なるべく軋みを上げないよう気を付けながら近寄り声をかける。

[34 続きは夜に ◆d5Ucd0cmrA 23/04/23(日) 16:42:18]

「そんなところで何を、っそれは……」
「見ての通り、死体だ」

　背の高いホーキンスに隠されて見えなかったそこには、ひとつの死体が転がっていた。すっかり白骨化してしまっているが、残っている上着からはそれなりに位の高い船員だったのであろうことが窺える。
　そっと目を閉じ、死者に黙祷を捧げた。

　軽く引かれる感覚に意識を戻すと、ホーキンスがトランクケースをつつきながら不審な目でこちらを見上げていた。

「ドレーク貴様、いったい何を持ってきたんだ」
「ああ、これは――」

　ボートに現れた経緯を説明し、本と懐中時計を取り出して見せる。

「まだ中を見ていないんだが、何かしらの手がかりになればと思って持ってきた」
「……正気か？　冊子はともかく、その懐中時計は近付けてくれるなよ」
「懐中時計がどうかしたのか？」
「どうもなにも、……いや、いい。とにかくお前が持っていろ」

　ひったくるように本――もとい冊子を奪ったホーキンスがそそくさと距離をとる。
　確かに蓋に髑髏があしらわれていてお世辞にも気味が良いとは言えない品だが、何もそこまで嫌厭するほどのものでもないだろう。

　何気なく見下ろした髑髏の真っ黒な眼窩と、瞳も無いのに視線がかち合った気がして、背筋を這う奇妙な寒気を誤魔化すようにぱかりと懐中時計の蓋を開いた。途端、ぐらりと視界が歪んで傾く。
　意識が暗転する刹那、焦った顔のホーキンスがこちらに手を伸ばすのが見えた気がした。


▼序章　終了

[35 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 16:48:23]

おもしろ…文章の重厚感が良い…
夜も楽しみに待ってよ

[36 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 17:02:46]

>>6

ドレークとホーキンスそれぞれのステータス振りがめちゃくちゃそれっぽくてすこ

推理ゲームだからかいわゆる推理力を五種類の要素に分けた感じだけど、ドレークが観察と記憶特化なのもホーキンスが発想と知識特化なのも割と納得感ある

[37 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 17:16:48]

原作も気になってきた

[38 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 17:21:19]

供給が、供給が早い…！
そうだよなホーキンス 冊子はともかくその懐中時計はな扱いに細心の注意払わないといけないからな焦ってるの好き
原作知ってると2人の振舞いの差異でとても楽しめるな

[39 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 19:03:46]

オブラディン号、スチーム版2300円でプレイ時間もそんなに長くないので
気になった人で３D酔いしやすくない人は是非プレイしてみてほしい
この二人も好きなので続き楽しみにしてます頑張ってスレ主

[40 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 19:39:03]

>>36

発想力に欠けるドレークと読解力に乏しいホーキンス、言われてみれば納得できるのが悔しい　悪魔の実の能力とかワノ国での立ち回りとか見てるとほんとにそうなんだよな…

[41 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 21:34:52]

某所の110だけど期待してた以上のものが読めて今めちゃくちゃハッピーだ
立ててくれてありがとう、続きも楽しみにしてる！

[42 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 23:22:30]

元ネタ知らなかったけど面白そう
でも3D酔いしやすいんだよな…

[43 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 23:44:47]

別スレから飛んで来たけどもう序章だけで楽しみ
ゲームもこのコンビも好きなんで大変ありがたい
スレ主の無理ない範囲でやってくれ

[44 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 23:48:07]

オブラディン号、Switch版もあるし未プレイまん民ぜひやってみてほしい
あとサントラも最高　Apple musicとかSpotifyでも聴けるのでぜひ

[45 二次元好きの匿名さん 23/04/23(日) 23:55:23]

そうだよな、ホーキンスは懐中時計に忌避感示してもおかしくない人なんだよな

[46 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 01:05:23]

>>44

サントラ紹介助かった 探索時のこの曲調大好きだった

今度からこのスレ開く時Spotifyで流して浸るわ

[47 オブラディンはいいぞ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 01:32:36]

ファイルを選択してください。
▷『File1　安否確認：0件』

▼入手アイテム
捜索ビラ
指令書
手記
懐中時計

▼進捗
序章［解放済み］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］
██［条件を満たしていません］
██［未開放］
██［未開放］
██［未開放］


オートセーブ済です。コンティニューしますか？
▷はい
　いいえ

[48 サントラ最高だぞ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 01:37:02]

　懐中時計の針が回る。
　過去へ、過去へ、針は巻き戻る。

　人は後悔する生き物だ。そして同時に学習する生き物でもある。数多の過去の積み重ねが人を人たらしめている。
　人は常に過去に学び、現在に生き、未来を望み、――そうして未来はまた現在となる。時はただ前に進むのみであり、起こったことはやり直せない。
　過去を変える術などどこにもありはしないのだ。

　今を生きる人にできるのは、ただ過去に思いを馳せ、慈しみ、拾い上げることだけだ。
　忘却の波に攫われてしまわぬよう。
　過去が過去であり続けられるよう。

　過去を知るものがいなくなったとき、真に過去は死んでしまうのだから。

　過去をなぞり、人は前へ進む。

　残された思念が、渦巻く未練が、こびり付いた記憶が。
　過去にすらなれなかった〝おもい〟の断片たちが、色褪せた一瞬となって目の前に現れる。
　死者に記憶を思い出させる。

　時計の針が、止まる。


▼Ⅹ章【終幕】が解放されました

[49 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 01:42:58]

スレ主の文体好きだ

[50 メメント・モーテム ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 01:51:45]

▼【終幕】その1

　乱雑なノックの音が鼓膜を叩いた。殴りつけるようなそれがノックだと気付けたのは、続けざまに聞こえた怒鳴り声のおかげだ。

『船長！　開けてください！』
『……蹴破れ！』

　別の男の声が聞こえた。ノックの主はそれに応じてさらに声を荒げる。

『力づくで──貝殻をいただきますよ！』
『船長の私に逆らう者には──』

　三人目の声。どこかくぐもって聞こえるそれは、扉の向こうで発せられているのだろうか？

『罰をくれてやる！』

　扉が叩きつけられるように開く音。そして銃声。

　途端、視界が開けた。

[51 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 01:55:20]

スレ主が名前欄で宣伝挟むの好き 1%組が原作の展開にどんな反応見せるのか凄い楽しみ

[52 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 01:58:57]

もしかしてだけノース3人脱出の人かな……

[53 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:02:15]

なんか面白そうなクロスオーバー！

>>52

思った

別の人かもしれないけどゲームの雰囲気が伝わってくる文体があのスレを思い出す

[54 北新星スレ、推しです ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 02:04:34]

　気付けば、目の前の男に銃を向けられていた。

　今まさに引き金を引かれた直後のようで、飛び散った火花のひとつひとつまでが鮮明に見えている。

　開いた扉の中から外へ向けて銃を構えているその男が微動だにしないことに疑問を覚えたとき、不意に隣から袖を引かれた。見ると、色褪せた世界の中でひときわ目立つ髪色が視界に飛び込んでくる。

　そのことにどこか安堵を覚えて、無意識に詰めていた息を吐いた。

　改めて気を取り直せば、元同僚は

1.不機嫌極まりない顔で

2.困惑の隠せない表情で

dice1d2=1 (1)

　背後を指さす。

　そこには、今まさに撃ち抜かれたのであろう男が苦痛の表情を浮かべながら倒れる瞬間があった。

[55 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:06:12]

>>53

文体の読みやすさと臨場感、感情の変化する様が分かりやすくて好きだ 原作に沿いながら丁寧に表現しているの良い

もし違う方でもワンピカテ住民文才溢れまくりだろう…！となるしな

[56 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:06:37]

別の方なのか
2人で推理できるの心強いな

[57 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:07:20]

野生の文豪多いな

[58 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:07:21]

原作ゲームが古い洋書の挿絵みたいな白黒画面だから映えるだろうな二人の髪色

[59 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:08:02]

すげえワクワクする
檣楼員の特定に手間取った記憶が……

[60 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:08:40]

推しになる気持ち分かるぞスレ主
不機嫌な顔でも示してくれるホーキンス有り難いわ

[61 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:08:47]

>>59

わかるよ

鐘楼員はほぼ消去法だった

[62 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:09:23]

コテハンでスレ消費せずに会話できるの便利
別の人なんだね
オブラディン号面白いから展開ワクワク

[63 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:10:56]

終章がどう描写されるのか今からもうワクワクしてる

[64 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:14:14]

原作知ってる勢はニコニコしながら見守り
知らない勢はﾅﾝﾀﾞｺﾉﾃﾝｶｲｽｹﾞｰｿﾞ､ｵｲ‼︎と未知が目白押し
たくさんの味わいがあるな！！

[65 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:20:30]

こういうゲーム仕立てって結構スレ形式とマッチしてるんだよリプレイ動画の再現みたいで
不勉強なもんでこの作品知らなかったからスレ主の文章と合わせて楽しんでる

[66 初めての複合判定 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 02:24:38]

「な、っ……！？」

「……まったく、余計なことをしてくれる」

　深くため息を吐いたホーキンスが思わず取り落としそうになった懐中時計を奪い去る。そうして撃たれた男に向き直ると蓋を開き、また閉じて今度は撃った男の前で蓋を開く。

　戻ってきてこちらに向けて蓋を開き閉じると、心底面倒といった色を隠さず再び押し付けてきた。

「お、おいホーキンス、」

「ともかく、呼び起こしてしまったからには今更手を引くこともできん。――さっさと調べるぞ」

　調べる、とは。

　静止した空間の中で波打つ金髪がやけに目を引く。

　訳も分からぬままにホーキンスの後をついて撃たれた男の背後に回れば、銃弾は首を貫いて数メートル後ろまで突き抜けていた。

「この撃たれた男が先の死体であることは理解できるな？」

「あ、ああ……この銃撃で倒れたのならあそこに倒れていた様子と一致するが」

「服装と持ち物からも明白だ」

　言われて見れば、撃たれた男は右手に斧を持っている。

　先ほど聞こえた会話がこの男たちの間で交わされたものだとするならば、扉を破ろうとしていたのだろうか。

「……ならば、撃ったのは船長か」

ダイス判定【読解】×【記憶】

［複合判定は各成功値の平均値を成功値とします（端数切捨）］

ドレーク（成功値：6,9→7）dice1d10=1 (1)

ホーキンス（成功値：3,4→3）dice1d10=4 (4)

[67 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:30:44]

クリティカルかこれ？！

[68 またクリティカル？？ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 02:40:41]

【読解】×【記憶】
ドレーク：クリティカル！
ホーキンス：失敗

（……〝貝殻〟）

　難しい表情を浮かべるホーキンスの横顔を何とはなしに眺めながら、会話を詳細に思い出す。ひとたび冷静になって思い返せば、状況を掴むための情報が多く含まれていたことに気付く。

（撃たれた男が扉を破ろうとしていたことは確実）

　ならば、隣に立っている男は扉を蹴破ることを提言した男だろう。

（蹴破ろうと試みた理由は？）

　素直に受け取るなら〝貝殻〟を狙ってのこと。
　それが何かは分からないが、この男たちにとって何かしら価値のあるものだったのだろう。――それこそ、船長が船員を撃ち殺す事態にまで発展するほどには。

（撃ったのは船長で撃たれたのは上級船員、隣の男は平船員のようだが）

　おおよその状況を頭の中で整理し終えたところで、不意にホーキンスの驚いたような声が耳に届いた。

　目を向けると、その手から離れた冊子がまるで何かに惹かれるように革靴の足元に落ちる。ひとりでにページが捲れ、やがて【終幕】と題されたページが開くとじわりとインクが浮かび上がり何事か綴り始めた。

[69 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 02:47:07]

中々の超展開なのにそういう事象に慣れてそうなホーキンスが冷静に調べようとして クリティカルを出す男ドレークが経験則から来てそうな読解と見事な記憶整理を疲労しているの流石ですよ

[70 貴様さては豪運か？ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 03:22:48]

‪✕‬『船長！　開けてください！』
　『……蹴破れ！』
‪‪✕‬『力づくで──貝殻をいただきますよ！』
　『船長の私に逆らう者には──罰をくれてやる！』

　どうやら先の会話の記録がなされたようだ。その下に〝現場に居合わせたのは他に3名〟と題されたスケッチが浮かび上がり、4人の人物の顔がハイライトされている。
　対面のページには不鮮明な顔写真――もといスケッチと、人物名及び死因の入力欄が用意されていた。

　やがて沈黙した冊子をおそるおそる拾い上げ、顔を強ばらせているホーキンスに視線で問う。

「……少なくとも、そいつはお前を協力者に選んだようだな」
「協力者？」
「大方、体良く利用するつもりだろう。……詳しいことはここを出てからにしろ」

　ホーキンスの言葉が終わると同時、静謐な空気を切り裂くようにカチャリと金属音が響く。音の聞こえた方に目をやれば、いつの間にか真っ黒な扉が出現していた。

「待ってくれホーキンス。……いったい、ここはなんなんだ？」

　先ほどまでいたオブラ・ディン号の船上であることは判るが、まるで空気が違う。
　自分とホーキンス以外のこの空間に存在しているものがすべて静止しているのはもちろん、撃たれた男を中心に一定の範囲の外が白く霞みがかり、まるでこの空間だけぽっかりと切り取られたかのようだ。

　そもそも、白骨死体だったはずの男が起き上がり撃たれている時点でおかしい。

（まさか、時が巻き戻った訳でもあるまいし――）

[71 今夜はここまで ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 03:32:15]

　不可解さが声色に滲み出ていたのか、ホーキンスは億劫そうな顔をしながらも口を開いてくれる。神経質そうな指先が溢れ落ちた金色を耳にかける。

「……お前の考えていることは半分正解だ」
「半分、」
「巻き戻っているのではなく、〝呼び起こしている〟というのが正しい」
「……過去の時間をか？」
「より正確に言えば、過去の一瞬を切り取っているだけだ」

　――その悪趣味な懐中時計がな。

　心底不愉快といった表情で指し示され、途端に手の中のそれが悍ましい異物に思えてくる。
　意識が暗転する直前に見えた逆回転する時計の針を思い出す。文字盤のないそれが時を刻むためのものではないことを嫌でも理解して――無機質な髑髏が、嘲笑うようにこちらを見つめている気がした。

「…………死体の、死の瞬間をか」

　〝魔術師〟と呼ばれた男は、静かに頷いて肯定した。

[72 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 07:14:57]

この懐中時計もある意味死者への冒涜みたいなものだよなぁ　だからこそドレークとホーキンスがどう受け止めるかが気になる

[73 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 11:29:26]

特殊技能気になる　いのる？まつる？とのろう？まじなう？どっちなんだろう
てかさらっと書いてるけど境界線越えさせるのってやばくないか

[77 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 11:57:35]

>>73

境界線越える≒死者をこちら側に引き寄せる

みたいなやつだったらやべーな

[78 ちょびっと昼更新 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 12:00:45]

「その時計と手記の持ち主にお前は選ばれた」

　言って、ホーキンスは手を差し出してくる。その視線が冊子――もとい、手記に注がれていることに気付いて手渡す。

　受け取ったホーキンスが、こちらにも読みやすいように持ち替えながら無地の表紙を開く。目に入った簡素な扉には船のシルエットと共にこう記されていた。

【オブラ・ディン号の帰港　その航海と悲劇の記録】

　それを捲ると、次に序文と題された文章がページを埋めている。

「『――この手記を読んでいるということは、君たちは今、オブラ・ディン号の船上にいることと思う』？　……どういうことだ？」
「選ばれたと言っただろう。ともかく、ざっと目を通すぞ」

　―序文―

　この手記を読んでいるということは、君たちは今、オブラ・ディン号の船上にいることと思う。私は、いずれこの日が来ることを見越し、同船がたどった数奇な運命の一部始終をこの手記にしたためた。しかし健康状態の悪化が著しく、ごく大まかなあらましを書き残すのが精いっぱいだった。
　君たちが今、オブラ・ディン号上にいることは、極めて重要な意味を持つ。この船で何が起きたのか、その真相を君たち自身の手で確かめてほしい。
　次ページ以降に記されている内容を見て、君たちは少なからず驚くことだろう。しかし、じきに何もかも得心がゆくはずだ。
　この懐中時計を用い、〝全乗組員及び乗客の身元〟と〝彼らに何が起きたのか〟を探るのだ。各章に正確な事実を記録して手記を完成させたのち、保証付き郵便にてモロッコのフランス人駐在所まで郵送してほしい
　ただし、【取引】の章の内容は今は伏せさせてもらう。私はその顛末を把握しているが、今は他者の目にさらす時ではないと判断した。

「『どうか、彼らの生きた日々を、彼らの死を忘れないでほしい。――ヘンリー・エバンズ』、か」


［手記の目次が解放されました］

［『航路』『船内図』『乗員乗客名簿』『船上での日々（スケッチ）』『用語集』がアンロックされました］

［Ⅷ章【取引】の解放条件が判明しました］
→条件：Ⅰ章〜Ⅶ章、Ⅸ章、及びⅩ章を完成させること

[79 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 12:02:46]

めちゃくちゃ面白そう…しかしモロッコとかフランスも分からないのかこの二人

[80 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 12:27:26]

2人とも（フランス？モロッコ？？）と疑問に思いながら手記の概要を把握しようとしている姿想像するだけで面白い
保証付郵便ならニュース・クーみたいな配達屋がいるぐらいだしもしかしたら分かるかもしれん

[81 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 12:37:11]

知らない単語あっても文脈である程度ニュアンスが察せそうなのは救いか？
このゲームところどころリアル世界の知識要求してくるとこあった気がしたが大丈夫かな

[82 がんばれ1%コンビ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 12:50:27]

「……つまりその、なんだ。探偵の真似事をしろと？」
「端的に言えばそうらしいな。勝手なことだ」

　呆れた調子で鼻を鳴らしたホーキンスがぺらぺらと手記のページを繰る。ご丁寧にも航路図や船内図、乗員名簿などが添付されているようだ。

「ヘンリー・エバンズ……」

　果たして何者なのだろうか。
　この奇妙な懐中時計と手記の持ち主であり、ホーキンスによると自分はこの人物に〝選ばれた〟らしい。
　オブラ・ディン号の悲劇を知る者。手記の完成を望む者。

（……そしておそらくは、おれたちが今ここにいる要因）

　薄々察しはついていたものの、この空間や懐中時計が己の常識では測れない類のものであることを改めて確信する。
　死体の死の瞬間を呼び起こすなど、簡単にできて良いことではないだろう。いくら偉大なる航路が常識外れの海とは言え、限度というものがある。

「まったく、どうしてこんなことに……」

　深いため息を吐いて眉間を押さえる。よりにもよって、何故自分なのか。

「――ドレーク」

　ふとホーキンスに名前を呼ばれて顔を上げると、どこか虚ろげな色を湛えた瞳が真っ直ぐにこちらを射抜いていた。ほんの僅かに逡巡の色を滲ませたのち、魔術師は短く尋ねてきた。

「お前は、かえりたいと思うか？」

　いつもとまるで変わらないはずのその声が、何故だかひどく無機質に聞こえて。
　感情を乗せないようにしていると言うよりは感情が抜け落ちてしまったかのような、そんなどこか所在なげな様子のホーキンスに、気付けば反射的に口を開いていた。

「当然だ。帰りたい――いや、帰らなくてはならない。おれにはまだ、やるべきことが山ほど残っているからな」

[83 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 13:14:00]

ホーキンスの左腕の描写みるにドレークとホーキンスはワノ国のあそこで倒れてるところから来た？
虚ろなホーキンス不穏だな…

[84 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 13:17:18]

かえるって帰るで合ってるよね？多分ダイス神の思し召しなんだろうけどドレーク目線で話が進んでるからホーキンスの心情が読めなくて怖い

[85 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 19:26:46]

お前も"生きて" "元の世界に" "帰る"んだよ！！

[86 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 21:11:21]

そういやワンピ世界基準だとヘンリー・エバンズの場合ヘンリーが姓でエバンズが個人名にあたるのか
若干ややこしいな

[87 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 21:15:21]

>>86

確かに

[88 生きて帰れ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 23:03:53]

　きっぱりと言い切るとホーキンスはどこか意表を突かれたような表情を浮かべ、それからほんの少し口角を上げた。

「そうか。――なら、協力してやろう」
「ずいぶんと上から目線だな」
「おれがこの手のモノに明るいのは知っているだろう。ありがたく思え」
「ああ。……実際、助かってる」

　打って変わって不遜な態度に、呆れつつも奇妙な安堵を覚えて目を細めた。
　ともあれ、方針は一致したようだ。

「つまるところ、この手記を完成させるのがひとまずの目標という認識で良いか？」
「異論ない」

　確か先の捜索ビラには、船員数51名と記されていた。
　そこに乗客を合わせておおよそ60名と仮定して、それを一人一人身元から死因まで特定しなくてはならないとなると……少々、気の遠くなる話だ。

「そのための懐中時計だろう」
「……あまり、良い気分のするものじゃないがな」

　複雑な気持ちで手の中の髑髏を見つめる。確かにこれを使えば時間はかかるものの不可能ではないだろう。
　だが、どうしても感情的な部分で嫌悪を覚えてしまう。

「他人の死を勝手に覗き見るというのは、お前からすればどうなんだ？」

　早くも踵を返し撃たれた男の元へ近付いていたホーキンスの背に問いを投げかける。ぴたりと一度動きを止めた魔術師は、けれど振り返ることなく再び歩みを進めると、静止した男の喉元に穿たれた傷を眺めながら言った。

「おれに言わせれば、悪趣味なことこの上ないの一言に尽きる」

　吹き出した血飛沫に指先で触れる。こつりと硬質な音が響いて、この男の時間は確かにここで止まったのだと不思議な感慨が胸中を満たす。
　無意識に、傷跡など無いはずの己の喉元を撫でさすった。

[89 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 23:13:47]

生きて、帰るんだよぉ！！
嫌悪感を隠さない1％組の性格好き

[90 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 23:32:35]

ドレーク…首…

[91 1%掴め ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 23:39:29]

「――だが、気持ちは分からなくもない」
「どういうことだ？」
「結局のところ、人間とは愚かな生き物だということだ」

　ホーキンスがそう締めくくったところで、その手に収まった手記が急き立てるようにページを揺らめかせた。

「さっさとするぞ、ドレーク。機嫌を損ねると面倒だ」
「……ああ、分かった」

　促され、ホーキンスの隣に歩み寄ると【終幕】その1と題されたページを示される。

「求められているのは、〝身元〟と〝安否〟だ」
「身元はともかく、安否は見たままに死亡しているな」
「その際は死因の詳細まで必要らしい。ここに考えうる死亡原因の一覧とやらが用意されている」

　付録のようなそれをホーキンスが広げると、圧殺、殴殺、感電死、絞殺……と気の滅入るような文字列がずらりと並んでいる。待て、殺 害（トゲ）とはなんだ？

「この中から選ぶとすれば、銃による射殺が最も相応しいだろう」
「あ、ああ……同意見だ」

　ホーキンスがいつの間にか手にしていたペンで死因を書き込むと、その上にじわりと加害者の入力欄が浮かび上がった。

「これは船長だろう。名前は……名簿があるんだったか」
「ここで広げるのは面倒だな。一旦後にしよう」
「了解した」

　頷いて、次にホーキンスは〝居合わせた者は他に3名〟と題された4人のスケッチに目を向ける。被害者である撃たれた男を除いて他に3名だとすれば、撃った男と傍にいた男と……、

「もう1人、か」
「〝居合わせた〟のなら、そう遠くないところにいるだろう」

[92 二次元好きの匿名さん 23/04/24(月) 23:52:00]

暗い部屋の中で手元のみを照らす灯りを頼りに少しかびくさい本のページを一枚一枚めくるような気分だ…ひっそりと応援しています…！

[94 NGワード抵触しがち ◆d5Ucd0cmrA 23/04/24(月) 23:58:42]

　言いながらホーキンスが隣に立つ男に手記を向けると、スケッチのハイライトがさらに強調されて一人の人物を示した。ニット帽のようなものを被っている点が一致しているところを見るに、この男を描いたもののようだ。

　同じように、撃たれた男と撃った男もスケッチと照らし合わせていく。

「撃たれた男は、やはり上級船員のようだな」

「特徴的な帽子は役職特有のものと見て間違いないだろう」

「撃った男も船長で確定か」

「立ち位置と名簿からある程度の推測を立てられそうだな。後で全体図を見てみよう」

　そこまで話すと、一度手記を閉じて残る1人の船員を探すべく周囲を見渡してみることにした。

ダイス判定【観察】

ドレーク（成功値：8）dice1d10=8 (8)

ホーキンス（成功値：6）dice1d10=3 (3)

[95 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 00:02:19]

オブラディン号の帰還好き
なにもかもすべて終わってしまった後の船だからプレイヤーに全く危険はないんだけど、船に残された最期の記憶をたどる不気味さとかやりきれなさとか、独特の雰囲気があるんだよな

[96 出目がえらい ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 00:20:19]

【観察】
ドレーク：成功
ホーキンス：成功

「む、あれか」

　船尾楼甲板へ続く左舷側の階段の上に人影を見つけ、反対側から上って近付く。
　正面に回り込めば、坊主頭の年老いた船員がナイフを咥えて階段を上っているところだった。下の騒ぎには目もくれていないようで、気になって視線の先を追うも、霞みがかった不鮮明な景色が広がるのみでこの船員の目的となりそうなものは見当たらない。

　ふとホーキンスの姿を探して主甲板を見下ろすと、操舵輪の近くに立っているのが見えた。

「ホーキンス、何をしている？」
「ここに槍が落ちている」
「槍？」
「現実のオブラ・ディン号には見当たらなかったものだ」
「誰かが片付けたんじゃないのか」
「撃たれた男の死体はそのままなのにか？」
「……なるほど、それは気にかかるな」

　そのまま手すりを越えて隣に降り立てば、確かに簡素な作りの槍が一本、そこに落ちているのが分かった。この後に使われたのだとしたら、誰がなんの目的で？

「あそこにいたのは残りの1人で間違いないか？」
「ああ、スケッチとも一致した」
「……なら、もうこの空間に用は無いだろう」
「出口は――そこの黒い扉か」

　ぱたりと手記を閉じたホーキンスがぽっかりと口を開けた異質な扉に向かって歩を進める。その後について扉を潜ると、やがて時計の蓋を開いたときと同じようにぐらりと目眩がして視界が暗転した。


［船長室が解放されました］

[97 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 00:23:51]

凄い
順調だ

[98 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 01:22:12]

＞待て、殺 害（トゲ）とはなんだ？

分かるぞドレーク ずらりと並ぶ死因シリーズに異様なのがあって え、何これ？？となるのが

NGワード抵触しがちなの分かる

[99 資料確認タイム ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 01:49:02]

　気付けば、月明かりに照らされたオブラ・ディン号の船上に立っていた。隣を見ればホーキンスの髪が潮風を受けて微かに揺らめいている。

　踏み出した足の下で汚れた甲板が軋みを上げて、船の上特有の浮遊感にふっと張り詰めていた心がゆるんだ。

「……戻ってきた、のか」

「月の位置が変わっていない。どうやら、懐中時計の使用中は現実世界の時間は進まないようだな」

　空を見上げて呟いたホーキンスが槍の落ちていた辺りを見回す。倣うように視線を巡らせれば、先ほどは閉じていた船尾楼船室の扉が開け放たれていた。扉の横に掛けられたランタンにはいつの間にか明かりが灯っている。

　扉の奥には、また別の白骨死体があるようだ。

「あの部屋は、船長室か？」

「手記の中に船内図があったはずだ」

　ホーキンスが手記を開き、改めて添付されている資料について確認することにした。

　

【船内図】

【航路図】

【乗員乗客名簿】

【船上での日々（スケッチ）】

[100 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 02:45:16]

元ゲーム全然知らない状態だけどすごく楽しんでます
探索者二人とも安定感あるけどしっとり不可解と不穏を含む雰囲気がドキドキするな…と思ってたら船上裁判なるものの様子が恐ろしくてこの船で何が起こったのか俄然気になってきた

[101 資料確認タイム2 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 02:51:12]

「商船としてはかなりの規模だな」

「航路図を見るに、長期航海を目的としているようだが……ドレーク、お前はここに書かれた地名に覚えはあるか？」

「……いや、無い。島でなく大陸と言うからには相当の大きさなのだろうが、おれの知る限り偉大なる航路にも四方の海にもこんな地形は存在しないはずだ」

「やはりか。――どうやら、この世界はおれたちがいたのとは違う、いわゆる〝異世界〟のようだな」

「異世界……そんなことが有り得るのか？」

「ウィリー＝ガロンの名に聞き覚えはないか？」

「……そう言われては返す言葉が無いな」

［特殊判定█████の内容が公開されます］

特殊判定█████→特殊判定＜異世界＞

▷説明

異世界に関するダイス判定のため、判定結果が常にワンランクダウンします。例）成功→失敗、クリティカル→成功

[102 資料確認タイム3 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 02:52:20]

「船員が51人、乗客が8人、そこに船長を加えて合計60人」

「出身地の地名も知らないものばかりか……」

「信じる気になったか？」

「こうも次々に証拠が出てきては、そうせざるを得ないだろう」

「頭が固くないようで何より」

「伊達に新世界入りはしていないつもりだ」

ダイス判定【観察】

ドレーク（成功値：8）dice1d10=6 (6)

ホーキンス（成功値：6）dice1d10=10 (10)

「〝船上裁判〟……これは、処刑の場面か」

「船長の周りにいるのは位の高い船員と見て良いだろう。先ほどの撃たれた男も船長のすぐ隣に立っているな」

「刑を執行しているのは狙撃手や砲手の類か？」

「名簿には専門の役職は無いようだ」

「なるほど。ニット帽の男が含まれている点を見るに、平船員の可能性が高いな」

「それから、フォルモサという国の王族も乗っていたようだ」

「……商船にか？」

「何やら事情がありそうだな」

ダイス判定【観察】

ドレーク（成功値：8）dice1d10=1 (1)

ホーキンス（成功値：6）dice1d10=4 (4)

[103 クリファン乱舞しよる ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 03:36:04]

【観察】（乗員乗客名簿）

ドレーク：成功

ホーキンス：ファンブル！

【観察】（スケッチ）

ドレーク：クリティカル！

ホーキンス：成功

　ふと、乗員乗客名簿を見ていると覚えのある名前に目が止まった。

　――名簿番号8番、船医〝ヘンリー・エバンズ〟。

「この名前は、手記の……船医だったのか」

「……なるほど。少なくとも1人は生き残りがいるということ、っ！？」

　不意にホーキンスの言葉が途切れ、手記を取り落としてその場に蹲る。驚いて目を向ければ脂汗を浮かべて左腕を強く押さえているようだった。

「ホーキンス！？　だ、大丈夫か……急に何が、」

「ぐ……る、さい」

　呻くようにぽつりと零された言葉を拾おうとしゃがみかけたとき、突然ホーキンスが立ち上がって左舷側に走り寄った。そうして真っ暗な夜の海に向かってらしくもなく声を張り上げる。

「うるさいぞ、貴様！　おれは掴むと決めた……お前たちの元に呼ばれる気は無い、邪魔をするな！！」

　血相を変えて肩で息をしている様子はとても尋常ではない。

　慌てて近付き宥めようと声をかける。

「落ち着け、ホーキンス！　お前はここにいるだろう……！」

ダイス判定【発想】×【読解】

ドレーク（成功値：2,6→4）dice1d10=10 (10)

[104 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 03:38:43]

ワッ…ワァ…

[105 ﾅｧﾝﾃﾞｪ???? ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 04:04:18]

【発想】×【読解】

ファンブル！

　ふと、何かに呼ばれているような気がした。

　声とも音ともつかない何かが頭の中で反響する。その出処を求めて海に目を向けると、静かに凪いだ水面にちらりと煌めくものが見えた。

　――呼ばれている。

　途端、ぎゅるりと胃が裏返るような不快感に全身を苛まれる。

「ウッ……、！？」

　視界が酷く明滅する。吐き気が込み上げてその場に座り込む。込み上げてくる感覚に口元に手を寄せると、手のひらが真っ赤に染まった。ひゅう、と喉が嫌な音を立てる。

　――あの子が呼んでいる。

　気が付けばボロボロの姿で横たわっていた。楽器の音が、白い男たちが、途切れ途切れな記憶の断片が瞼の裏で踊る。

　――彼女が呼んでいる。

　ふと目を向けた先、血に汚れた金髪と、折れ曲がったカードが、

『貴様、海兵……なのか？』

『占ってたある男ってのは……』

　――呼ばれている。

【？？】

dice1d10=4 (4)

[106 次で一旦終わり ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 05:01:19]

【記憶】
ホーキンス：成功！

「――っかりしろ、ドレーク！！」

　唐突に視界が白く弾けて、うるさく響いていた声がかき消える。
　顔を上げると、逆立てた前髪を引っ掴んだホーキンスが焦燥に満ちた表情でこちらを覗き込んでいた。手入れのされた金髪が月光に照らされて眩しく耀いている。

「……ホーキンス、」
「――、――」

　呆れたようにため息を吐いたホーキンスの声が上手く聞き取れず、そのとき初めて痛いほどに両耳を塞いでいたことに気付いた。いつだか怒鳴り声を恐れてよくしていた仕草を思い出して、苦笑を漏らしながら手を下ろしゆっくりと息を吐く。

　血の跡はどこにも見当たらなかった。

「ようやく正気に戻ったか」
「ああ……すまない、迷惑をかけた」

　立ち上がり謝罪の言葉を口にする。どうやら少し錯乱していたようだ。
　様子のおかしいホーキンスを止めようとしていたことは覚えているが……その先を思い出そうとして、ずきりと走った頭痛に思わず額を押さえる。
　何か相当なショックでも受けたらしい。

　覚えている訳ではないが、妙に吐き気のする感覚と噎せ返るほどの血の匂いだけは脳裏にこびり付いている。これだけでもろくでもない記憶であることは想像に難くない。
　ひとまず思い出さない方が良いという本能の警告に従うことにして、胡乱な目を向けてくるホーキンスに向き直った。

[107 荒ぶるダイスでした ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 05:02:17]

「大声を出したせいで喉が痛い。貴様のせいだぞ、ドレーク」
「そう言われても……おれにどうしろと」

　そういえば、記憶が飛ぶ直前のホーキンスは海に向かって叫んでいた気がする。

（いったい何をあんなに必死になって……）

　何故だか気になって海に目を向けようとしたとき、心なしか大きめの声に呼び止められる。見ると、手記を拾い上げたホーキンスが船長室入口の辺りでこちらを呼んでいた。

「さっさとしろ、ドレーク。帰りたいんだろう？」
「――そうだったな、すまない」

　曖昧な記憶に蓋をして、今度こそ振り返ることなくホーキンスの後を追った。



［【観察】（スケッチ）クリティカル効果を消費したため、判定結果が通常成功にダウンします］

[108 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 06:56:46]

ホーキンスの記憶って成功値4なのか　マジでギリギリじゃん…

[109 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 08:24:11]

"掴むと決めた"って1%か…？ホーキンス…！
2人が呼ばれそうになってる臨場感やべえ…

[110 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 08:24:25]

「おれは掴むと決めた」
その心意気で頑張ってホーキンス

[111 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 11:57:59]

めちゃくちゃ面白い……！ホーキンス頑張れ

[112 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 14:24:15]

原作で現実のオブラディンの左舷側の海に見えるもの思い出してヒェッてなった……ダイス神はスリルがお好きなのか

[113 スレ主はニッコニコ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 17:29:06]

　開いた扉を潜り船長室に足を踏み入れると、手前と奥に合計二人分の白骨死体が横たわっていた。先ほどの場面にいた男たちのものだろうか？

「不用意に時計を開くなよ、ドレーク」
「分かっている」

　死体を避けて部屋の隅の書棚に近付くホーキンスを横目に、部屋の中を見渡してみる。
　船長室の中は相応に広く、ソファや大きめのテーブル、吊りベッドなどがある他、部屋の左右奥からは直接甲板下の通路に出て船尾方向を眺められるようになっている。
　散らかっていると言うほどではないものの、テーブルや椅子はひっくり返っておりそれなりに荒れた様子が窺えた。外で撃たれた男を始め室内の死体も片付けられていないことから鑑みるに、よほど余裕が無かったか、あるいは――、

（……それすらできないほど、人員が減ってしまっていたか）

　どこか薄ら寒い心地を振り払い足元に目をやると、部屋の奥に倒れている死体の近くに槍が落ちていた。ホーキンスが撃たれた男の記憶の中で見つけたものと同じに見える。
　さらに視線を巡らせれば、鍵のかかった扉の近くに2本のナイフが転がっていた。

「どちらかは階段を登っていた男が咥えていたものか……？」

　だとすれば、男はあの後に船長室内へ侵入してきたことになる。
　撃たれた男とニット帽の男が正面から蹴破ろうとしていたのに対し、船尾楼甲板に上がっていた男もまた船長室に入ろうとしていたのならば、その侵入経路は……。

　外通路から入ってきたようにも見える槍の近くの死体に視線を向けたところで、ホーキンスから声がかかる。
　見れば、両手に本や資料の山を抱えていた。

「喜べ、ドレーク。この世界に関する知識が得られそうな資料が残っていたぞ」
「本当か！　それはありがたいな」

　言いながらテーブルを起こし、乗せられた資料のひとつを手に取る。表紙には『グレートブリテン及びアイルランド連合王国』と記されていた。

［イベント《異世界知識》に挑戦可能です］

[115 お勉強タイム！ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 17:41:18]

▼イベント《異世界知識》

▷説明

［以下の三つの項目に対し、【知識】×【読解】判定をそれぞれ行うことで一時的に追加ステータスとして習得することが可能です］

【文化】伝承や習わし、人々の生活についての知識です

【歴史】国の成り立ちや文明の発展についての知識です

【地理】世界の国の位置関係や航路についての知識です

［判定結果に応じ、各技能の成功値は以下の通りに決定されます］

通常成功：1d10+2（最高値9）

通常失敗：1d6

ファンブル：2

クリティカル：8

イベント《異世界交流》に挑戦しますか？

▷はい

　いいえ

ダイス判定【知識】×【読解】※特殊処理のため平均値の端数切上

ドレーク（成功値：5,6→6）

【文化】dice1d10=4 (4)

【歴史】dice1d10=9 (9)

【地理】dice1d10=10 (10)

ホーキンス（成功値8,3：→6）

【文化】dice1d10=8 (8)

【歴史】dice1d10=7 (7)

【地理】dice1d10=5 (5)

[116 処理ミス失礼！ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 17:50:55]

「む、……少々難航するな」

「異世界だからと言ってしまえばそれまでだが、やはり常識そのものから違うとなるとそう簡単にはいかないだろう」

《異世界知識》習得判定

ドレーク

【文化】成功：dice1d10=9 (9) +2

【歴史】失敗：dice1d6=4 (4)

【地理】ファンブル：2

ホーキンス

【文化】失敗：dice1d6=5 (5)

【歴史】失敗：dice1d6=2 (2)

【地理】成功：dice1d10=6 (6) +2

[117 ▼Lv.があがった！ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/25(火) 18:05:02]

［追加ステータスを習得しました］

◇PC1《X・ドレーク》

【文化】：9

【歴史】：4

【地理】：2

◇PC2《バジル・ホーキンス》

【文化】：5

【歴史】：2

【地理】：8

［これ以降、特殊判定＜異世界＞は適用されません］

［また《船長室》内に限り、資料を参照することにより各成功値に+2の補正を受けることが可能です］

イベント《異世界知識》を終了しますか？

▷はい

　いいえ

キャラクターデータを更新しています……＊

更新完了しました。

引き続きゲームをプレイしますか？

▷はい

　いいえ

[118 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 18:06:53]

歴史が不安だがお互い補う感じのスキル振りになったな

[119 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 18:35:34]

2人にとってみたら異世界の歴史はな…

[120 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 18:43:17]

歴史は膨大で密接に絡まって難しいからなしょうがない ただでさえワンピ世界知識の制限してるしねオハラのように…
互いに補い合う形になるの面白い

[121 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 18:50:04]

気になって調べたらアイルランドの併合って1801年なんだな　オブラディン遭難が1803年だからめちゃくちゃタイムリー…
名簿見た感じアイルランド人何人かいるけど、どういう事情で船に乗ってるんだ

[122 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 18:54:30]

>>121

ナポレオンがフランス皇帝になったのが1804年らしい　名簿にフランス人一人いるけど当時のこと考えたら風当たりやばそう

[123 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 19:00:59]

しかも王族乗ってるしな…プレイしてた時は検証や事実を明かす、人間模様を楽しむ事に思考が寄ってたけど船内の雰囲気良いとは言えなさそう ﾎﾟﾛｯ
そして船長イングランド人か…何というかこの…
1%組も多国籍なこの船に関心を抱いたりするのだろうか

[124 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 19:13:10]

ワイ歴オタまん民、オーストリア人とポーランド人の上司部下らしき組み合わせに二度見どころじゃないくらいびっくりした

[125 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 19:18:12]

>>124

調べた　1795年の三回目のポーランド分割でポーランド王国消滅してたこと知って愕然とした

マジでオーストリア人上司にどういう感情で接してたの…？？

[126 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 19:38:43]

はー、このゲームをプレイしたけど、キャラの国籍なんて名前を当てはめるためのヒントとして見てなかった
そこらへん詳しいと、もっと楽しめたんだろうな

[127 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 20:56:11]

しかしこの二人こういう雰囲気似合うな…

[128 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 21:49:21]

しかし改めて18世紀〜19世紀イギリスってマジで動乱の時代だな…アメリカは独立するわフランス革命は起きるわなんなら産業革命真っ最中だし

[129 二次元好きの匿名さん 23/04/25(火) 22:59:00]

このスレ見てオブラディン買ったよスレ主　スレで描写されたとこを実際に自分の目で見れるのめちゃくちゃ楽しい…いろいろ比べてスレ主の表現力のすごさに震えてる

[130 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 00:45:56]

>>129

わかる

ゲームに出てくる文とスレ主の描写がシームレスに繋がるから臨場感が凄い

なんならスレ主にノベライズしてほしいくらい

スレ始まってから「ぶんしょうが上手い人はぶんしょうが上手いなぁ…(IQ5の顔)」ってなってる

[131 布教成功にスレ主歓喜 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 01:45:06]

　ぱたりと大判の表紙を閉じ、大きく伸びをする。つい夢中になって読み耽ってしまっていたようだ。

「イギリス東インド会社……なるほど、そういうことだったか」
「ずいぶん夢中になっていたな、ドレーク」

　己の中で理解が深まったことに満足していると、ソファに腰を下ろしていたホーキンスに声をかけられた。その手元には幾種類もの地図が折り重なるように広げられている。

「ああ、久々に知識欲が刺激された気分だ。お前の方は……これは、世界地図か」
「そんなところだ。名簿に載っていた地名については、一通り把握しておいた。どうやらこの船は東方――インドを最終的な目的地としていたようだな」

　言いながらホーキンスが地図の上に指を滑らせる。北の島国から出発し、大陸に沿って大きく南から回り込む航路は、イギリス東インド会社の主要な貿易ルートであることが先ほど読んだ資料にも記載されていた。

「それで、東インド会社とやらについてはどうだったんだ」
「そうだったな。〝イギリス東インド会社〟というのは、簡単に言えばアジア地域での貿易を目的とした勅許会社――王室の許可を得て設立された組織だ」
「アジア地域……イギリス領インドとされているのは、それでか」
「会社とは言うものの、その実態は現地に行政組織を構築し徴税や通貨の発行、さらには法律の施行まで行っている。実質の植民地統治機関と言って差し支えないだろう」

　4年前の時点で設立からおよそ200年ほどが経過しており、資料によると会社は今も着実にその規模を広げつつある。
　オブラ・ディン号は、国の名を背負った国際貿易会社の一端を担う船だったのだ。

[132 名簿の見直しタイム ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 01:47:35]

「平船員はともかく、上級船員――オフィサーともなればそれなりの地位が保証されていただろう」

　改めて手記の資料(>>99)を開き、名簿に連なる名前と役職に目を向ける。同じく視線を落としたホーキンスが名簿の上から三分の一ほどを指でなぞり呟いた。

「オフィサーと言うと……名簿の18番辺りまでか」

「おそらくはそうだ。船長と航海士は言わずもがな、甲板長とその助手は平船員たちをまとめる立場にあったようだ」

「甲板長はオーストリア、甲板手はフランス、どちらも大陸出身か」

　平船員はさらに甲板での作業を主とする甲板員、マストに登りセイルを操る檣楼員(しょうろういん)の二種類に分けられる。

「船医及び船匠とそれぞれの助手については説明は必要ないだろう」

「医者と船大工、どちらも航海には必須の役職だな。ひとつ気になるところがあるとすれば、船匠の上司部下はどちらも海の向こうのアメリカから来ている点か」

「料理人と家畜番も名前の通り」

「船長と航海士には専属の料理当番が別でいたようだ」

　【用語集】によると司厨手(しちゅうしゅ)と称される彼らは航海士個人に雇われた召使のような立場で、陸でも主に付き添い行動を共にしているらしい。各専属司厨手の他に、乗客や他オフィサーを担当するフリーの司厨手もいたことが名簿から読み取れる。

「掌砲長とその助手は各種武器弾薬の管理を任されている役職だな。他のオフィサーに比べて等級が低いのは、緊急時が主な活躍の場であることが大きいだろう」

「こちらもオーストリアにポーランドと、揃って大陸出身か。上司部下の組み合わせがこの航海限りの即席のものなのか否かは気になるところだな」

「事務長、操舵手、画家もそれぞれ名前の通り。画家は航海における記録係を担っていたようだ」

「貨物を管理する立場として事務長には教養が求められただろう。いずれもイギリス――グレートブリテン島の各地域から来ている」

[133 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 02:25:52]

「ドレーク」と「ホーキンス」が王室の許可を受けたイギリスの貿易組織に属する船乗ってる構図因果めいてて面白いな
今の状況がフランシス・ドレークとジョン・ホーキンスとは時代も因縁も直接関係ないことも含め

[134 死体の横でお勉強… ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 04:52:41]

　オフィサーについて一通り整理し終え、さらに名簿の続きに目を向ける。そこに並ぶのは先の資料でも見かけなかった地名だ。

「乗客は8人。そのうち4人がフォルモサという国出身のようだが……」
「現地の文字では美麗島、あるいは台湾とも書くらしい。インドよりさらに東――アジア地域の東の端の小さな島国だな」

　ホーキンスが広げた世界地図の右端、ヨーロッパ地域やインドを含む巨大な大陸を挟んだ反対側を指す。

「こんな遠い国の王族が、何故イギリスの商船に……？」
「さてな。おれたちには見当もつかないような事情を抱えてるんじゃないか」

　その下には船長付きを始めとした司厨手の面々が名を連ね、続いて並ぶのは士官候補生が3人。

「士官候補生は将来のオフィサー、特に航海士を目指す若い見習い船員のことだ」
「やはり平船員とオフィサーでは同じ乗員でも明確な差がありそうだな。航海士も士官候補生も、そのほとんどがイングランド出身だ」

　経済的、軍事的強国としての側面が強いイギリス――中でもイングランド出身の者はやはり社会的な立場が強いのだろう。先の資料の中にも、『イギリス船の船長はイングランド人に限る』というような規則について記載されていたのを覚えている。

「甲板員にはイングランド人が多いようだが、檣楼員はかなり多国籍だな。この、中国というのは例のフォルモサの近くか？」
「そうだ。フォルモサの隣の大陸に存在する大国だな」
「なら、こちらのペルシャやニューギニアというのは？」
「ペルシャは西アジア、インドに向かう道中の――この辺りだな。ニューギニアはインドよりさらに南東に進んだ、オセアニア地域の島国のひとつだ」

　どうやらホーキンスは自分がイギリス東インド会社に関する資料を読み漁っている傍ら、この世界の地理についてずいぶん理解を深めたらしい。
　尋ねた地名をいずれもスラスラと淀みなく地図上に指し示してみせる様子に思わず目を見張った。

[135 ようやくダイス反映 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 06:41:41]

　名簿の再確認を終え、地図を片付けるホーキンスを横目に見ながら先ほどまで読んでいた本に視線を落とす。
　『合同東インド会社 ―その成り立ちと変遷―』と題された分厚いそれのページを何とはなしに捲りながら、かつての訓練と勉強に明け暮れていた日々がぽつりぽつりと脳裏に浮かんでは消えた。
　長く管理のされていなかったその本はところどころ虫に食われ、シミや汚れで読み取りづらい部分も多い。会社の設立に関する章に記載された、イングランド人初の世界一周を成し遂げたという人物の名が記されていたであろう箇所に指を伸ばしたとき、スケッチに目線を移していたホーキンスが口を開いた。

「――画家がいると言ったか？」
「ん？　ああ、職業画家が一人名簿に記載されているな。ほら……ここだ」
「なるほど。……ならば、描かれていないのも道理か」
「何か見つけたのか」

　名簿の画家の名前を確認したホーキンスはひとつ頷くと、スケッチのページに戻り左下に描かれたサインらしきものを指さす。

「スケッチの中で顔を確認できる人間の数を数えたが、60人に一人足りなかった」
「……なるほど？」
「この手記を寄越した人物――ヘンリー・エバンズとか言ったか――はおれたちに60人全員の特定を求めている。そのための資料としてこのスケッチを用意したなら、一人だけいないのは不自然だ」
「確かにな」

　そこでホーキンスが立てたのは、〝用意しなかった〟のではなく〝用意できなかった〟というのが正しいのではないか？　という推測だった。
　曰く、そもそもこれらのスケッチは元は船上生活の記録を目的として制作されたものを、ヘンリー・エバンズが持ち出し手記の資料として流用した可能性が高いらしい。言われてみれば、記録目的以外で処刑執行の場面を絵に残す者などそうそういないだろう。

「職業画家について尋ねたのは、それでか」
「そうだ。一人足りないのは用意したくてもできなかった――つまり、その一人が描かれたスケッチだけは存在しなかったから」
「画家の描いた絵の中に画家がいないのは、考えれば当然の話だな」

　船に乗っていた60人の中で、唯一スケッチの存在しない人物。スケッチの片隅に描かれたサインの主。

「イニシャルも一致している」
「名簿番号18番、画家〝エドワード・スプラット〟――確定だ」

[136 102の観察結果でした◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 07:39:53]

　カチリとパズルのピースが嵌まるような心地がして、細く息を吐いた。
　こんな調子で60人分のスケッチと名簿をひとつずつ紐付けていくのだとしたら、いったいどれほどの時間がかかるか分かったものではない。

（加えて、安否の確認までしなければならないとなると……）

　まったくもって面倒なことに選ばれてしまった。

（画家はまだスケッチと名簿から推測が立てられたから良かったものの……これは、よほど具に情報を集めていかないと苦労しそうだな）

　先が思いやられる心地ながらも、他に拾える情報は無いか改めてスケッチに目を向ける。並ぶ人々の服装に注目して見ていると、ふととある人物に目が留まった。

「……これは、」

　船上裁判が行われる中、船長を始めとした上級船員たちの奥のに立つ大柄な男。
　船尾楼船室の前で男が手を添えているそれは――見間違いでなければ操舵輪ではないか？　思わずスケッチから顔を上げて船長室の外に視線を投げる。

（舵輪は基本的に専門職でない人間が不用意に触れて良いものでは……いやしかし、これだけでは根拠に乏しいか？）

　だが、海賊船ならともかく王室御用達の商船となると……。
　思わず考え込んでいると、地図の束を片付け終えたホーキンスが怪訝そうな表情で問いかけてきた。

「おいドレーク。貴様さっきから顔がうるさいぞ」

　……もとい、文句をつけてきた。

「どういう意味だそれは……」
「意味も何も、言葉のままだ。――何をそんなに悩んでいる？」

[137 順調……？ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 07:43:42]

　言い方はともかく、話を聞いてくれる気はどうやらあるようだ。
　このまま悩んでいても埒が明かないだろうことは察しが付いたため、スケッチの該当箇所を指してホーキンスに意見を求めることにした。

「ここに描かれている人物なんだが――」

　一通り話を聞いたホーキンスはひとつ頷くと、あっさりと言い放つ。

「なら、それで仮定しておけば良いだろう」
「仮定？　確定でなくか？」
「画家のように確実にそうと判断できる材料が無いなら、記憶を辿る中で何かしら情報が得られるのを待てば良い。別に今すぐ決めなければならない訳でもないだろう」
「……それもそうか」
「それに、どうせ安否まで特定する必要があるんだ」

　ホーキンスの言う通り、一度決めれば変えられなくなる訳でもない。この先新たな情報が出てそこで確定できる可能性だって十二分に存在している。

「なら、ひとまずこの人物は名簿番号17番、操舵手〝フィンリー・ドルトン〟と仮定しよう」

[138 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 08:06:34]

＞画家〝エドワード・スプラット〟――確定だ

といい仮定や推定等1%組の頭が冴え渡っている賢い 布教成功して良かったな

死体間近で勉強整理はまあ、歴戦練磨の海賊だし多少はね？？（片方の最終的所属は海軍）

[139 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 08:21:16]

ウィリーガロンの名言とか錯乱状態になったときの描写とか、フォルモサが台湾とか名簿の出身地とか、ワンピの小ネタとオブラディンの小ネタが要所に散りばめられててすごい
そこにイングランド人初の世界一周とかさらっと混ぜてくるから…

[140 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 08:40:18]

イングランド人初の世界一周って確か…
文章めっちゃ面白いし歴史触ってると更に面白い

[141 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 11:16:21]

おれは不当な読者　ドレーク自身も若干触れてるけど、ドレークがファンブルで呼ばれた時の仕草がホーキンスみたいに声を荒らげるとかじゃなくて強く耳を塞いで蹲るってところに過去の環境が垣間見えてニヤニヤした　そういうの大好き

[142 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 18:04:58]

>>140

二人が「⁉」ってなってる光景が想像できる

[143 単発更新続きは深夜 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/26(水) 19:35:04]

「今分かるのはこれくらいか？」
「おそらくはな」

　資料の山をテーブルの隅にまとめ、手記を手にしたホーキンスがソファを立つ。
　船長室の入口近くに倒れている死体に近付けば、ふるりと手の中の懐中時計が反応を示す。よく見れば見覚えのあるニット帽のような帽子が骨の近くに落ちているのが分かった。

「この帽子は撃たれた男の隣にいた……ここで死んだのか」
「何せ【終幕】だ。薄々察しは付いていただろう？」

　航海の最中に出た死体ならば、片付けられず放置されるなんてことはまず無いだろう。それが4年もの時を経て未だここにこうして残っているということは、これがこの船で起きた最後の事件だったからに他ならない。
　この船の時間は永遠にここで止まってしまったのだ。

「生き残り同士の殺し合い……」

　一海賊船とそれに乗る船員たちの命を預かった経験のある身として、少々複雑な気持ちを覚えてしまうのは仕方の無いことだろう。
　隣を見れば、ホーキンスも心做しか眉間に皺を寄せていた。
　あの場面にいた4人がこの船の最後の生き残りなのだとしたら、そこに至るまでにいったい何が起こったのか。乗員乗客のことごとくが姿を消し、生き残ってなお殺し合うほどの何かがこの船を襲ったのか。

（まるで想像もつかないが、それほどまでに恐ろしい出来事なのだとしたら……、）

「それを紐解いていくのがおれたちの役目だろう？」

　……相変わらず、表情から考えていることを読み取るのが上手いヤツだ。
　ほんの少し気が軽くなった気がして、方に入っていた力を抜く。勝手な想像だけで後込みしていたところで、どうせ嫌でも目にすることになるのだから。

「ああ、……そうだったな」
「――調査再開と行こう」

　頷いて、ひとつ深呼吸をする。
　懐中時計の蓋を開く。逆回転する時計の針にぐらりと目眩を覚え、やがて視界は暗転した。

[144 二次元好きの匿名さん 23/04/26(水) 21:48:58]

スレ主の文章がうますぎてプレイ動画観てきた…！1%組の会話が癒し…このゲームを知れてよかった…！

[145 二次元好きの匿名さん 23/04/27(木) 06:07:53]

掲示板の鯖メンテあったみたいだな

スレ主の文体好きだ臨場感が凄いし描写が丁寧

[146 メンテとはこのリハク ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 08:04:38]

『どこだ……？』

　まず耳に届いたのは、男の声。
　低く唸るように発されたその声には明らかな敵意と疑心が滲んでいる。

『ここにあるのは、わかってる』

　どうやら何かを探しているらしい。先ほど撃たれた男の場面と繋がっているのだとしたら、求めているのは〝貝殻〟だろうか？

　は、と声の主のものとは違う息遣いが響く。
　焦りとも自嘲ともとれる色を含んだそれは、この少し前に上級船員を撃ち殺した船長の口から発されたようだ。

『ここには、ない……海の底だ』
『ウソだな』

　絞り出すように返した言葉は素気なくあしらわれ、続けざまにもみ合う音が聞こえる。どうやら痺れを切らした男が船長に襲いかかったらしい。
　一際大きい刺突音が響き、同時に苦しげな呻き声。
　堪えて息を飲む音。
　何かを切り裂く音。

　途端に開けた視界の中で、眼前に振り抜かれた白刃は大量の血飛沫を纏っていた。

[147 ダイスコロコロタイム ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 08:08:52]

「っ、……こうも目の前で繰り広げられると、さすがに心臓に悪いな」

「どうやら船長の返り討ちに遭ったようだ」

　思わず一歩下がったこちらのことなどは意にも介さず、ホーキンスは淡々と状況を分析する。相変わらずのマイペース加減に少々呆れを覚えたものの、気を取り直して殺された男に目を向けることにした。

　槍を構えたニット帽の男が、船長の左肩にその先端を突き刺している。やはりあの槍はこの男によって持ち込まれたようだ。

　肩に突き刺さった槍を掴んだ船長は、反撃のため振り抜いたナイフで的確に男の喉笛を切り裂き、今まさに吹き出した鮮血が室内を染め上げようとしていた。

「槍を相手にナイフ一本で返り討ちか……」

「だが、無傷という訳にもいかなかったらしい。攻撃を食らいながら反撃することで無理矢理リーチの差を埋めたようだな」

　拳銃を使わなかったのは、連射式でなく単発式の銃だったからだろうか？　この世界で一般的に使われている武器の製造技術がどれほどのものかは分からないが、少なくとも自分の知るものよりは旧式のように思える。

　先の場面と連続しているのだとしたら、弾込めをしている余裕は無かっただろう。

（ここで使われたナイフが、現実世界に落ちていた二本のうちの片方か）

　現実でナイフが落ちていた辺りに目を向けるも、そこには何も見当たらない。この時点ではまだ持ち込まれてはいないようだ。

（ということは、やはり……）

　推測を固めつつ、さらに得られる情報が無いか周囲を見回してみる。

ダイス判定【観察】

ドレーク（成功値：8）dice1d10=2 (2)

ホーキンス（成功値：6）dice1d10=2 (2)

ダイス判定【観察】×【発想】

ドレーク（成功値：8,2→5）dice1d10=9 (9)

ホーキンス（成功値：6,9→7）dice1d10=9 (9)

[148 二次元好きの匿名さん 23/04/27(木) 08:36:21]

失敗！！

[149 出目仲良しか？？？？ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 08:48:56]

　ふと窓の向こう、船室外の通路に何か人影のようなものが見えた気がして足を向ける。

　まさかという思いを抱えつつ右奥の出口から顔を覗かせると、上から人の足が降ってきているところだった。落下途中で静止している様子の男に驚き目を見開く。

「……侵入経路は、上からだったか」

　同時に推測が確信に変わり、少しばかりの感慨深さを覚えながら人影に近付く。
　間近で見ると、やはりあのナイフを咥えていた船員に間違いなかった。熟練の船員である証なのだろうが、それにしても甲板から直接真下の通路に飛び込んでくるとは相当な身のこなしだ。

（これが、二本目のナイフ）

　現実世界にあったもう一つの白骨死体の主に察しがつき、少々やるせなさを覚えながら船長室内に戻る。
　すると、こちらに気付いたホーキンスに手招かれた。

「戻ったかドレーク、あそこの人影は？」
「前の場面で階段の上にいた三人目の男だ。どうやら上から回り込んでの襲撃を試みているらしい」
「なるほど、そうだったか」
「それでお前は何を――これは、拳銃か？」

　無言で示された床の上に、一丁の拳銃が落ちていることに気付く。位置的に船長の背後にあたるそれは、十中八九先ほどの上級船員に向けて使われたものだろう。

「現実世界には落ちていなかったものだ」
「槍と同じか。この後に使われたのだとすれば、やはり船長か？」
「可能性としては、それが最も高いだろうな」

　頷いたところでホーキンスの手に収まっていた手記が再びペラペラとひとりでに動き始める。
　やがて開いたページには【終幕】その2と題され、その1と同様に人物名と死因の入力欄、そしてスケッチが浮かび上がる。

[150 諸々のミスは見逃して ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 09:37:36]

‪✕『どこだ……？　ここにあるのは、わかってる』
‪‪　『ここには、ない……海の底だ』
‪‪✕『ウソだな』

　会話の記録の下は〝現場に居合わせた者は他に2名〟となり、死者本人であるニット帽の男に加えて船長とナイフの男がハイライトされていた。

「今更だが、会話の記録に付いたこのバツ印は……」
「死んだ当人の発した台詞だろうな」
「やはりそうか。便利なものだな」
「……たまに、お前がどこまで本気のつもりで言ってるのか判らなくなる」

　仕組みはさっぱり分からないものの、会話の自動記録機能――しかも発言者の判別も可能――という高性能ぶりに感心して頷いていると、ホーキンスが非常に微妙な表情でこちらを見ながら言ってきた。どういう意味だ？

「……まァいい。それで、死因だが」
「この場合はどうなるんだ？　刺殺……いや、裂傷による失血死か？」
「お誂え向きなことに、殺 害（ナイフ）という選択肢がある」
「傷跡でなく使用武器に焦点を絞っているのか、なるほど」

　思えば一人目である上級船員の死因も銃による射殺としていた。より状況を分かりやすくするために考えられていることが窺えて、またもや少し感心を覚える。

「加害者は？」
「これまた船長の、名前は――ロバート・ウィッテレルと言ったか」
「正解だ。これで少なくとも二人、船員の命を奪っている」

　すらすらと書き込み、ホーキンスは手記を捲るとひとつ前の撃たれた男のページを開く。そういえばここも後回しにしたままだった。

「ここの加害者欄もついでに書き込んでおこう」
「同じくロバート・ウィッテレル船長だな」

　一通りの書き込みを終え、手記を閉じるとホーキンスは改めて周囲を見渡す。

[151 二次元好きの匿名さん 23/04/27(木) 09:47:25]

出目仲良し1％組好き
ドレークのマイペースぶりにホーキンス困惑してて草 といってもお前もマイペースだし…

[152 良い趣味してるほんと ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 14:26:05]

「――こんなところか」
「そうだな。おおよそ必要そうな情報は拾えただろう」
「なら、さっさと出るぞ」

　言って、そそくさとホーキンスは船長室の外へ向かって足早に歩を進める。どうやらよほど過去の瞬間を切り取ったこの空間がお気に召さないらしい。

（……まあ、気持ちは分かるが）

　置いていかれないように慌ててその背を追う最中、船長室の外で仰向けに倒れ事切れている上級船員が目に入る。
　現実と変わらない形で、けれど現実の風化した白骨死体とは違い血に塗れたその姿は、ここが静止した空間であろうとなかろうと二度とこの男が動くことは無いのだと物語っているようにも見える。

　この男の時間はあの瞬間確かにここで止まったのだ。
　雨風にさらされながら海を漂い、4年もの月日が経って、すっかり朽ち果て骨となり、異世界からの訪問者に発見されても、それでもなお。

　あの瞬間のまま。永遠に止まったままなのだ。

（……お前の言った、〝悪趣味なことこの上ない〟の意味が今ようやく解った気がする）

　介入はおろか傍観者にすらなれない、ただ命の灯が消えるその一瞬だけを切り取る懐中時計。
　すべては終わったことであり、自分たちにできるのはただ死体に残された残滓をなぞり、集め、繋ぎ、そうしてそれらの間に確かに存在していたであろう失われた時間に思いを馳せることだけだ。

　今を生きる自分たちの憂いも嘆きもやるせなさも、そのすべてに意味などありはしない。映画の中の人物が観客の感情に応じることがないように。
　彼らは永遠に、過去でしかないのだから。
　
（『どうか、彼らの生きた日々を、彼らの死を忘れないでほしい』、だったか）

　――実に勝手なことだ。　

　胸中で吐き捨て、黒い扉の前で待つホーキンスの催促の声に応じてくるりと踵を返した。
　死体の時間は、動かない。

[153 スレ主 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/27(木) 19:51:06]

今夜は更新ができそうにないので、>>9の視点チョイスダイスがもしも逆だった場合のifを置いてお茶を濁すことを教える

スレ主としてはできるだけテンポよく進めたいと思っているが、コイツら二人が当初の予定と違う動きばかりするせいで楽しいけど困っていることもついでに教える

序章視点if

[154 二次元好きの匿名さん 23/04/27(木) 20:21:42]

IF視点ありがたい！　こういう相手から見た時どうだったのかってのも楽しい
そしてスレ主の文章が好きすぎる　読みやすいし情景が目に浮かぶのがこの上なくストライク
推理系ゲーム好きだから原作にも挑戦したいけどこちらで先に展開と世界観を楽しみたい気持ちが溢れてる
書いてくれてありがとう…！！

[155 二次元好きの匿名さん 23/04/27(木) 22:56:11]

ホーキンス視点もいいな同じ場面なのに雰囲気変わる
ホーキンスがドレークを攻撃ようとしたってことは本編時系列は……？

[156 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 01:01:31]

スレ主困らされてて草　ひとえにドレークがやたらクリティカルやファンブルを出したりホーキンスの出目が全体的に悪かったりするせいだが…

[157 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 01:25:47]

IF視点ありがてぇ…！！
キャラクターが生きて好き放題に動くのを管理するのは大変だが上手い感じに書けると楽しいよな

[158 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 01:53:12]

見返したらドレークここまででクリティカル3回ファンブル2回出しててアラマキ　そらスレ主も困惑するわ

[159 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 02:53:54]

このダイス命宿ってる…？

[160 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 03:12:20]

コラと2色ドット変換+αでオブラディン号にいる2人っぽくしてみた
いきなりでごめんなさいこの世界感めちゃくちゃ好きです応援してます

[161 天才だ、囲め！！！！ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/28(金) 07:13:14]

>>160

天才コラ職人さん！？！？！？

おわーーーーースレ画の二人のアングルを調査中の様子に見立てていた妄想がまさか現実のものになるとは……ありがたやありがたや……煮込むね……

単色とドットで構成されるなんとも言えない寂寥感が二人の雰囲気にこの上なくマッチしててやはり良い……ありがとう天才まん民……

[162 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 07:18:28]

>>160

すごい

二人ともゲームの雰囲気と本当によく合う

[163 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 07:19:35]

>>160

背景もご丁寧に船上にしてるのに愛を感じる

こういうの大好き

[164 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 09:56:28]

すげえ…船内だ…！

二人とも19世紀の帆船にいてもあまり違和感ないデザインだし似合うな

>>160

[165 不定期更新申し訳ない ◆d5Ucd0cmrA 23/04/28(金) 12:00:31]

　扉を潜り、何度目かの視界の暗転と共に再び現実世界へ帰還する。
　目の前に横たわる死体と蓋の開いた懐中時計が視界に映る。死体に向けた時計の針が動き出すことはなく、物言わぬ白骨はただ横たわっているのみだった。ぱちりと蓋を閉じれば未だ見慣れない髑髏がそこに鎮座している。

　無言で手記を開いては閉じたホーキンスが、外通路近くに転がる次の死体の元へと歩み寄る。天井に下がった灯りが波の揺れに合わせて流れる金色に踊る。
　その後ろ姿を目で追っていたとき、唐突に奇妙な閃きが脳裏に浮上した。

（死者の時間は止まって動かないのなら……、生きている者に向けて時計の蓋を開いたらいったいどうなるんだ？）

　止まった時間の止まってしまった瞬間を呼び起こすのがこの時計の持つ力なら、止まっていない時間に対しては果たしてどのように作用するのだろうか。
　もちろん何も起こらないかもしれないし、もしかすると普通の時計と同じように時を刻み始めるかもしれないし、はたまた過去のいずれかの瞬間を呼び起こすのかもしれないし、あるいはそもそも蓋が開かないかもしれない。

　ひとたび思い付いてしまえば、次から次へとその先の想像が溢れて止まらない。
　視線を落とした先の髑髏が、そんな筈もないのに口角を吊り上げた気がして、好奇心という名の悪魔が囁くままに、ホーキンスに向けて懐中時計の蓋を開こうとしたとき。

「おい、ドレーク」

　鋭い声色が鼓膜を打って、心臓が跳ね上がる。
　咄嗟に懐中時計を手の中に隠しながら顔を上げると、刺すような視線がこちらを睨みつけていた。

「さっさとしろ。いつまでもこの船にいるつもりか？」

　目を白黒させながらもなんとか聞き取ったそれが催促の言葉であることをワンテンポ遅れて理解して、何故だか安堵にも似た心地を覚えつつ上擦った声で返事をした。

「あ……、ああ。すまん」
「なんだそれは……？　――いや、少し待て」

　訝しげな表情を浮かべたホーキンスが、突然何かに気付いたように手記を小脇に挟むと取り出したカードの束をシャッフルする。
　そうして一頻り混ぜ終えたそれを扇状に広げ、こちらに向かって突き出してきた。

「一枚選べ、ドレーク」

[166 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 12:33:10]

へ、変な真似はよせドレーク…！
1人調査ではなくて2人ゆえの着眼点好き
確かにどうなるんだろう…生者に対しては死因が確定しないから最も高い可能性の未来がノイズ混じりぶつ切り状態で映し出されるとかか？

[167 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 13:01:39]

ドレークお前これ下手したらホーキンスの1%確定させちまうんじゃ…？
作中じゃ生きた人間にメメントモーテム使う機会ないから生きた人間に向けたらどうなるか正直めちゃくちゃ気になるけどホーキンスは…"どっち"だか…

[168 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 14:43:09]

左腕あるっぽいけどホーキンスの反応を見ても時系列がよくわからないんだよなぁ

[169 懐中時計くんさぁ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/28(金) 18:52:23]

　有無を言わさないその調子に思わず大人しく従う。そろりと引き抜いた一枚のカードを指示されるままに裏返すと、逆五芒星を額に抱いた魔物の姿がそこには描かれていた。

「――『悪魔』の正位置」
「ど、どういう意味のカードなんだ……？」

　淡々と結果を告げたホーキンスの真意が読めず、困惑しながら問いかける。

　それには答えず、カードを仕舞ったホーキンスは不意に手を伸ばすと懐中時計を持ったままの左手を素早く掴み上げる。見た目の割に存外力の強い指がレザー越しに手首に食い込んで、痛みに思わず顔をしかめた。

「いッ、！？　おい、離せ……！」
「……この懐中時計の本質は〝見立て〟だ」
「何を言って、」
「生き物の刻む時間を時計の運針に見立て、時計を操作することで同期した過去を呼び起こす」

　ぴきりと何かが罅割れるような音が響いて見ると、懐中時計の蓋に亀裂が入っていた。

「ソレは他ならぬお前を選んだ」

　ピシピシと細かな亀裂はたちまち髑髏の意匠の全面に広がる。

「大方、近しいものをお前に見出したんだろう。気に入られる分には勝手だが……、『好奇心は猫をも殺す』という言葉を知らないか？」

　やがてクモの巣状の罅に覆われた髑髏が網目越しにこちらに笑いかけ――直後、手の中の時計は粉々に砕け散った。
　驚きに目を見開くも、瞬きののちには何事も無かったかのように時計は己の手の内に収まっている。思わず見つめた髑髏に異変は見られず、ただの不気味な模様と化していた。

「目的の邪魔をされては困る。――余計な唆しは慎んでもらおうか」

[170 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 18:54:08]

ホーちゃんかっこいい！！！

[171 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 18:59:13]

メメント・モーテム…引きずり込もうとしている…？

[172 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 19:06:34]

悪魔の正位置が持つ意味
・欲求、欲望に負ける
・視野が狭くなる
・快楽に溺れる
・お金や物への執着
・嫉妬、誘惑
・頭ではわかっていても辞められない
　
あ、あぶね～！流石ホーキンスオカルト強いな

[173 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 19:33:36]

割とマジギレしてそう

[174 二次元好きの匿名さん 23/04/28(金) 22:10:11]

ホーキンスの淡々としてるけどきちんと止めてくれるのもドレークが懐中時計のせいもあれど知的好奇心に飲み込まれそうになるのもめっちゃ良い

[175 絶賛寄り道タイム ◆d5Ucd0cmrA 23/04/29(土) 02:14:28]

　痛いほどに掴まれていた手がようやく解放され、ホーキンスの洩らしたため息が空気を揺らす。
　事態に追いついていなかった頭が少しずつ回転を再開し、同時に先ほどの突発的な好奇心による不自然なまでの衝動がいつの間にか影も形も失くなっていることに気が付いた。遅れて警鐘が脳内に響き渡る。

「い、今のは……？」
「……これに懲りたら、甘言には不用意に耳を貸さないことだ」
「待て待て待てせめて分かるように説明してくれ」

　話は終わったとばかりに踵を返しかけたホーキンスを慌てて引き止める。振り返った顔に心底面倒といった表情を浮かべながらも、ホーキンスはやがて口を開いた。

「……その時計が、生き物の刻む時間と運針とを〝見立て〟により同期することを本質としているのは理解できるな？」
「ああ……先ほども言っていたな」
「そして、見立てとは言わば〝模倣〟だ」
「模倣？」

　す、とまるで陽の光を知らないような指がおもむろに一枚のカードをつまみ上げる。先ほど引いた、『悪魔』のカードだ。

「悪魔に限らず、この手のモノはより己に近しい存在に囁きかける。何故なら〝同調〟は最も有効的な誘惑の手段のひとつだからだ」
「……おれがこの時計に近い存在だと？」

　些か納得しかねて口を挟むと、ホーキンスは僅かに眉をひそめる。

「共通点があるというだけの話だ。そしてソレはお前の中に〝模倣〟という共通点を見出した」

　ひやりと何故だか嫌な汗が背筋を伝って、けれどその正体に思考を巡らせるより早く、続けられたホーキンスの言葉が耳に届く。

「そこにつけ込み、囁きかけ、手を招き、お前の精神を己に同調しようと試みた。そのために取った手段が好奇心という名の欲望を歪め肥大化させることだったのは、元の持ち主の影響を強く受けた故だろう」

　一呼吸置き、ホーキンスは懐中時計を睨む。

「例のエバンズとやらは、相当悪質な好奇心の持ち主だったようだな」

[176 話が……話が進まん！ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/29(土) 02:23:48]

　どうやらホーキンスは懐中時計に――引いてはその持ち主であるヘンリー・エバンズに対し想像していた以上に良い感情を抱いていないらしい。
　ここまで露骨に嫌悪感を態度に示すのは珍しい気がする。

「……だが、先ほどは『気持ちは分からなくもない』と言っていなかったか？」
「理解できるかどうかと共感できるかどうかは話が別だ」
「それもそうか」

　頷いて、懐中時計を持ち直す。
　ともかく安否確認のためにこの時計が必要なことには変わりは無い。気持ちを切り替えて調査を再開しようと軽く促せば、ホーキンスが信じられないようなものを見るような目を向けてきた。

「あそこまで聞いておいて正気か貴様……？」
「お前の口振りから見るに、少なくとも今は大丈夫なんだろう？　なら、問題ない。――それに、どうせお前は懐中時計に触れたがらないだろうからな」

　時計を恐れる感情が無い訳ではないが、だからと言って手放す訳にもいかないのが事実だ。ならば割り切ってこれまで通り自分が持ち続けるのが最適だろう。それこそ、話が別というやつだ。
　目的を達成するためであれば、個人の感情など二の次にして然るべきなのだから。

　そう告げると、ホーキンスはなんとも言えないような表情を浮かべる。そのまま何かを言い募るように口を開きかけ、けれどその言葉は音になることなくため息となって吐き出された。そうしてどこか諦め混じりに再度口を開く。

「……まあいい。確かに、一度跳ね除けたことで暫くは緘黙しているだろうが、またいつ隙を見て牙を剥くか判ったものではないとは言っておく」
「すまんが、そのときはどうにかしてくれ」
「丸投げとは良い度胸だなドレーク貴様」
「適材適所というやつだ」

　ホーキンスとて、目的達成のため懐中時計が必須なことに変わりは無いのだ。
　ならば、互いにできることをやるべきだろう。
　言外にそう込めてホーキンスに視線を向ければ、もはや何度目かも判らない深いため息が空気を震わせた。

「結局、溶け込みつつも染まりきらなかったお前のことだ。余程のことでも起きない限りまず有り得ないだろうが……せいぜい、取り込まれないように気を付けろ」

[177 二次元好きの匿名さん 23/04/29(土) 03:28:01]

そういえばホーキンスって生きてる人間に向けて時計開いたらどうなるか知ってる……？>>66

[178 二次元好きの匿名さん 23/04/29(土) 04:14:20]

エバンスのこと知ってると「"生きた"人間に向けたらどうなるんだろう？」って方向に好奇心が向いたドレークの善性みたいなものが分かる気もする

[179 二次元好きの匿名さん 23/04/29(土) 06:34:21]

確かに悪趣味この上ないがここまで明確に嫌悪感をホーキンスが抱くのは理由があるんだろうな
「待て待て待て」するドレーク好き

[180 二次元好きの匿名さん 23/04/29(土) 12:49:59]

メメントモーテムの性質を〝見立て〟って解釈するの、ホーキンスの説明も相まって納得感がある　見立ては呪いとかまじないにおける常套手段だもんな…それこそ藁人形なんか一番の代表例

[181 二次元好きの匿名さん 23/04/29(土) 19:27:58]

>>177

言われてみれば確かに　記憶の中だから現実で使った時の作用とは違うのかもしれないけど、多分それで何かを確信してるよなホーキンス

時計使ってる間は時間動かないみたいだし、あの蓋開いて閉じるまでの一瞬でホーキンスが何を見たのかは気になる

[182 二次元好きの匿名さん 23/04/30(日) 00:17:57]

オカルト特化だから冷静だけどなまじ詳しいから懐中時計を使うことに忌避感があるホーキンスとオカルトは専門外だけど持ち前の好奇心と勇気でガンガン使えるドレークいいコンビだな

[183 二次元好きの匿名さん 23/04/30(日) 08:23:17]

一気読みしてしまった…原作の雰囲気を再現する文章の重厚さも2人の掛け合いも好きだ
原作であんなに頼れたメメントモーテムがホーキンス視点だとヤバイオカルトアイテムになるの面白い

[184 二次元好きの匿名さん 23/04/30(日) 17:15:17]

原作主人公は保険調査員だからフラットな目線だったけどこの二人(特にドレーク)視点だと死者に寄り添った観点がありそうで楽しみ

[185 更新再開 ◆d5Ucd0cmrA 23/04/30(日) 20:31:06]

　相変わらず回りくどいと言うかなんというか……少なくともこちらの身を案じてくれてはいるらしい。素直に受け止めて首肯を返せば、ホーキンスは未だ微妙な顔をしながらも納得したのかそれ以上は言ってこなかった。

「というか、問題が起きる前にさっさと片付けてしまえば良い話だろう」
「珍しく意見が合ったな」

　部屋の奥、槍が近くに落ちている死体に揃って視線を向ける。おそらくは二本目のナイフの主であり、ここで倒れているということは即ち……。

「……そういえば、死体がひとつ足りない気がするんだが」
「船長のことか？」
「船長にしろナイフの男にしろ、どちらかはここで死にどちらかは生き残ったはずだろう」
「大方、海に身投げでもしたか見えないところで息絶えたか……」

　生き残った者同士が殺し合い最後の一人のなったとき、果たしてその胸を満たすのはどういった感情なのだろうか？
　殺されずに済んだという安堵か、殺してしまったという自責か、身を守るためだったという逃避か、たった一人生き残ったという絶望か、それとももっと他の――例えば、達成感や高揚感だとか。

（……それも、確かめてみれば分かることだ）

　今一度懐中時計を持ち直し、隣に立つホーキンスに目を向ける。

「準備はいいか？」
「お前が良いならな」
　
　端的な返答の中にホーキンスなりの気遣いが見えた気がして、張り詰めていた気がほんの少しゆるむ心地を覚えながら髑髏の蓋を開いた。
　時計の針が滑るように逆回転を始め、そうして視界は暗転する。

[186 台詞無くとも情報有り ◆d5Ucd0cmrA 23/04/30(日) 20:33:07]

▼【終幕】その3

　初めに、呻き声と共に何か質量のあるものが倒れる音が耳に届いた。
　荒々しく床板を叩きつける音に続き、ごぽりとまるで溺れ窒息しているかのように苦しげにもがく音が断続的に聞こえてくる。

　それらに混ざってひどく乱れた呼吸音が空気を震わせる。
　休む間もなく床を蹴る足音が聞こえたかと思えば、殴られ肉を裂かれるような音と、その直後に船長のものと思しき悲鳴。間髪入れず何かが素早く空を切り、鈍い打撃音がすぐ耳元で響く。

　途端、視界が開けた。

[187 さあダイスの時間だ ◆d5Ucd0cmrA 23/04/30(日) 20:34:12]

「……またもや船長の勝利、か」

「不意打ちを相手に振り向きざまに一撃。咄嗟の判断力にはどうやらかなり優れていたらしいな」

　――船長としては優秀な人材だ。勿体無かったな。

　本気とも冗談とも取れるホーキンスの発言を聞き流しながら、目の前で繰り広げられている攻防に意識を集中する。

　予想通り、外通路から侵入してきたナイフの男は船長に対する奇襲を試みたらしい。船長の右脇腹にナイフが突き立てられているのが確認できるため、途中で聞こえた悲鳴はおそらくこれを受けた際のものだろう。

　それを引き抜くより早く、先ほどニット帽の男が持っていた槍を後ろ手に振り抜き、ナイフの男の額に痛撃を与えている。頭蓋がへこむほどの威力を伴ったそれは致命傷としては充分だ。

「傷を負いながらも的確に相手を沈めているな……」

「銃、ナイフ、槍と得物を選ばない辺り、そもそもの戦闘センスが良い可能性もある。ここで死ななければ海賊という選択肢もあっただろうに」

「言ってることは分からなくもないが、船員との不和は致命的じゃないか？」

　今まさに振り抜かれた槍の、空気を切り裂く軌跡をためつすがめつしながらホーキンスがそんなことを呟いた。少々理解できるような気はしなくもない。

（このとき船長の脇腹に刺さったナイフが、現実世界にあった二本目のナイフか）

　この襲撃を返り討ちにしたあと、引き抜いて床に投げ捨てたのだろう。ニット帽の男が持ち込んだはずの槍がこちらの死体の近くに落ちていたのも、船長がここで反撃に使用した後に捨て置いたとなれば納得がいく。

　ふと視線を床に向ければ、ひとつ前の場面で床の上にあった拳銃はまだそこに落ちていた。この後に回収され、どこに行ったのだろうか？

ダイス判定【観察】

ドレーク（成功値：8）dice1d10=2 (2)

ホーキンス（成功値：6）dice1d10=7 (7)

ダイス判定【発想】

ドレーク（成功値：2）dice1d10=6 (6)

ホーキンス（成功値：9）dice1d10=7 (7)

[188 二次元好きの匿名さん 23/04/30(日) 20:39:31]

補い合ってるな

[189 二次元好きの匿名さん 23/04/30(日) 20:54:03]

海賊目線の船長評面白い
今際の際の情景描写もえげつないけど臨場感があってすげえ…