- 1二次元好きの匿名さん23/04/23(日) 19:21:21
こんにちは、ロベルトです。
今年の5月末まで、ぼくはアイルランドで調教されていた英ダービー馬でしたが、日本から来たという人がぼくを買いつけて、日本に持っていきました。
今までぼくが走るたび、スタンドからは怒号が飛んでいました。特にブリガディアジェラードを破った瞬間が酷く、そのときは流石に目眩がしました。
やっとブーイングされなくなる……もう怒号に怯えなくていいんだ……。
そう思えば、鳥籠から放たれた鳥のような気分でした。
12月末、中山競馬場。
そこで勝利を収めました。後ろとは3馬身つけて、完勝ともいえる勝ち方で。
ですがスタンドの人々は、どこか顔を俯かせて。何かに落胆するように。
「なんなんやねん、あのマル外……」
そんな声すら聞こえてきて、悲しくなってしまって。
晴れるどころか曇っていくような気分で。勝ったというのにやるせなくなっちゃって。鞍上も観客を睨むようなバツが悪い表情をしてました。
「こいつは強いのになぁ……」
首を傾げながら、そう呟いてくれたのが、少しだけ嬉しかったです。
それでもやっぱり、こう思ってしまいます。
……ぼくが活躍しないほうがいいのかな、と。 - 2二次元好きの匿名さん23/04/23(日) 19:22:15
続けて
- 3二次元好きの匿名さん23/04/23(日) 19:23:35
君は、タニノチカラくんみたいだね
勝ったはずなのに労いの言葉すら貰えず2着馬が持て囃される… - 4123/04/23(日) 20:17:31
あのレースを終えて以降、ぼくがターフを駆けることはありませんでした。
競走馬を引退して、第二の生に移行したからです。
これからは種牡馬として、余生を謳歌していくつもりです。
ですがそれでも、ぼくが話題になることなどありません。もともとはアメリカ生まれでしたので、そこそこ繁殖牝馬が集まると予想されていたそうですが、他の牧場からの種付け依頼はあまり寄せられなかったです。
どこかで悪役なんて印象を吹き飛ばしたい。なのにその機会すら与えられない。
神さまはぼくに恨みでも抱いているのでしょうか。どうしてもぼくを悪役に仕立て上げたいのでしょうか。
ぼくにとって救いといえたのは、日本にやってきてから乗り続けてくれた騎手が、たびたびぼくのいる牧場へ訪れてくれることでした。
中山競馬場でのラストランを終えてもなお、ぼくに乗った手応えが忘れられず、面会に来ていたみたいです。
「お前は強いんだよ、誇っていいんだ」
その言葉をかけてくれるだけでも、励まされるような気分でした。 - 5123/04/23(日) 20:35:24
──ロベルトという名馬の名は、今でも語り継がれている。
2020年代に入っても、その名は留まるところを知らない。
今となっては、名種牡馬の一頭として名を遺しているほどだ。
だが、ロベルトを日本に連れてきたオーナーは浮かない顔をする。
オーナーはロベルトという名を耳にするだけで、このように表情を曇らせるという。
その理由を尋ねると、オーナーは口を開いた。
「ロベルトは確かに種牡馬として活躍したんだよ。だけどね、僕は言いたいんだよ。たまにでもいいから、ロベルトという競走馬も思い出してやってくださいと」
-fin- - 6二次元好きの匿名さん23/04/23(日) 20:54:34
何の因果かその血脈はヒーローキラーと呼ばれるロベルト系…
ロベルトと言えば名前がよくあがるけど、その実際の活躍を知らないのでこれを機に調べてみたくなりました