- 1二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:36:52
- 2二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:37:38
「むむむ…!」
「腕を組んでどうした、ウインディ」
「エアグルーヴ!これを見ろなのだ!」
「校内新聞か…さては貴様また…」
「濡れ衣なのだ!と言うかウインディちゃん、今回はヒガイシャなのだ!」
「…今回「は」?」
「…げ」
「まあいい、何があったのか聞くとしよう」
「見出しを見れば分かるのだ!」
「ふむ。『シンコウウィンディ、企画力を活かし活躍。困っている生徒を後押し』…良いことではないか。貴様の幼い性分は問題だが、その企画力と向上心は私も評価している。これを機に精進するが良い」
「むぐぐ~、何で気付かないのだ!ウインディちゃんの名前はウ『イ』ンディちゃんなのだ!」
「……ああ、これか…見事に本文でも誤字があるな。しかし、名前間違い等いちいち指摘していても仕方があるまい」
「うがー!なんで分かってくれないのだ!?そこが無ければウインディちゃんの功績を称える偉大な記事だったのだ!」
「…貴様を軽んじている訳ではない。私自身が初見で気付けなかったことも謝ろう。間違いは私からも指摘しておこう。校内新聞を作成している者たちにもその声は届くだろう」
「…と言うかなーんでこんな全文に渡って間違われるのだ!?ウインディちゃんのことなんて何も思ってないのだ!?」 - 3二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:38:12
「…落ち着け。何も思っていない者が、称賛の記事等作るか?」
「……でもでも、やっぱり間違われるのは納得いかないのだ!」
「…気持ちは分からないでもない。やはり何であれ、間違いを起こされると言うことはけして気持ちの良い物ではない。それに…間違いと言う物は、其の物の規模は小さくとも、取り返しのつかない事態を連鎖的に招くことがある」
「…なんか話が長引きそうなのだ」
「そうだな…掲示コーナーの前で立ち話を続けるのも迷惑だろう。カフェテリアにでも移るとするか」
「ウインディちゃん新作のフラペチーノが飲みたいのだ」
「意外に洒落ているな…」
「ブラックコーヒーは苦いから飲めないのだ」
「無理に飲む必要もあるまい」 - 4二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:39:06
「さて、席を確保した所で話の続きに入ろうか。そもそも何故、間違いと呼ばれる物は起こるのだろうか。ウインディ、飲み物を啜っていないで応えてみろ」
「…なんでウインディちゃんが…まあ、トクベツに答えてやっても良いのだ。思い込み…あるいは疲れから来る確認不足は良く挙がるのだ。だからウインディちゃんは子分をギリギリ限界までは働かせないのだ。無理矢理働いても、ミスが増えるだけなのだ」
「そうだな。企画立案、実行を指示する立場の貴様なら分かると思うが、それらの間違いが起きる原因は…そして、それを犯した者に悪意があるとは限らない」
「……そうだな。原因は単なるドジってこともあるのだ」
「……ハンロンの剃刀と言う言葉を知っているか、ウインディ」
「ハンロン?異議ありとかそういうやつなのだ?」
「そのハンロンではない。今回の場合、貴様の名前が間違われ…嫌な思いをしただろう。…私も、指摘されるまでそれに気づけなかった。…だが、その間違いに対して悪意を見出してはいけない。それがハンロンの剃刀と言う理論だ」
「むむむ…罪を憎んで人を憎まず、みたいなことか?」
「そう言う言い換えも…出来なくはないな。間違いが起きた原因の究明はしなくてはならない。そして、反省もしなくてはならない。しかし…その原因の究明をするのに、間違いを犯した者の悪意と言う"感情"を考慮する必要はないし…してはいけない」
「…ちょっと耳が痛い話なのだ…」 - 5二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:40:07
「無論、生きていく上で、何の間違いも侵さないのであればそれが1番だ。だが、人は思い込み…疲れ…不注意。いくつものリスクを背負っている。…その様なプレッシャーの中で…100%、常に完璧な行動が出来るだろうか。…私の話にそう返すのであれば、貴様も覚えがある筈だ。…無論、私もだ」
「…そんな完璧な奴らばっかりだったら…きっとウインディちゃんのアイディアは…要らない世界になると思うのだ」
「間違いが起きた時、やるべきなのは間違いを犯した者を責めることではない。何故起きたのか、共に原因を究明すること、そして…その再発の防止に務めること、ではないだろうか。…勿論規模によっては、一度の間違いが取り返しのつかない事態になることも否定は出来ない。何事にも例外はあると言っておこう」
「…ウインディちゃんも、どっちかと言うと間違う側だからなんともなのだ…」
「だが貴様も、間違う度に成長してきた筈だ。人間の本質は失敗した後、どう立ち上がるか、誰かが間違いを犯した時、手を差し伸べられる勇気があるか、だと思っている」
「ふふん!ウインディちゃんはただでは転ばないのだ!注目されないから終わりじゃないぞ!あの手この手を尽くして悪の限りを尽くすのだ!…その中で、ウインディちゃんを頼るやつがいれば力を貸してやらんこともないのだ」
「……フッ。もっと素直になれば良いのだがな」
「べーっ!お前が言うななのだ!誰に何と言われようと、やりたいようにやるのがウインディちゃんなのだ!お代は置いとくのだ!」
「……ふっ。何を慌てて席を立とうとしている。そもそも別会計だった筈だろうに」
「な、なんなのだその穏やか~な顔は!……拍子抜けするのだ…」
「貴様に対する対応はこれが正解だろう」
「むぐぐ…子分と一緒で、何か慣れてきた感が出てるのだ」 - 6二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:40:29
「伊達に貴様と年月を過ごしてきた訳ではない。貴様への対処も理解っているつもりだ……滅茶苦茶になった私の花壇の責任も取ってもらわなくてはな」
「げっ!?やっぱりバレたのだ!?」
「……私は、貴様が花壇を滅茶苦茶にしたとは言っていないのだが?」
「……あ」
「…今回「は」被害者だ、と最初に言っていたから何か心当たりがあるかと思っていたが…本当にそうだとはな」
「ほ、ほら!ハンロンの剃刀なのだ!つまりウインディちゃんは、悪意を持って花壇を荒したことにはならないしなってはいけないのだ!」
「……例外はある、と言っただろう。今からじっくりと教えてやろう。原因の究明をせねばならん。そして、共に再発防止に務めなければな…」
「に、逃げるのだ!笑顔が怖すぎるのだ…鬼の顔してるのだ…」
「誰が鬼だ!たわけめ!今日という今日は許さんからな!」
「ギャーッ!!」
(……そもそもあの花壇は最初から掘り起こすつもりだった、と言うことは黙っておくか。……見事にあの花壇だけ掘り起こされているのも…な)
─ ハンロン おわり ─ - 7二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:41:07
元々のハンロンの剃刀の解釈は「愚かさによって十分説明されることに、悪意を見出してはいけない」等結構キツい物言いだったりします
名前だったり、一人称だったりそう言った間違いを見かけた時どう接するのが正解なのか、何故そういうことが起きるのか、また私自身、そんな間違いを侵さないと言い切れるのかと言う自問自答した結果書きました
私自身が間違いを侵さないのは多分無理です
読んで頂きありがとうございました - 8二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:43:57
剃刀って二振りあるのか
オッカムしか知らんかった… - 9二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 00:48:15
内容は知ってたがハンロンの剃刀という呼び方は初耳という我が謎
ともあれ乙 - 10123/04/27(木) 00:48:39
- 11123/04/27(木) 00:54:02
名前は浮かばずとも、この考え自体有名ですね
正直題材としては罪を憎んで人を憎まずや人の振り見て我が振り直せの方が適当な気がしますが、ハンロンと言う響きが耳障りよく感じたので題材にしました
読んで頂きありがとうございます
- 12二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 09:32:52
- 13二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 12:59:14
そんな言葉があるなんて知りませんでした…無知な自分が恥ずかしいです…
ですが大切な考え方ですね
間違いなんて誰にでもあるのだからそれをどう受け止めて返していくのかが一番大切なんですよね…
考えさせられる内容でした - 14123/04/27(木) 17:24:22
- 15二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 22:17:53
二人のやりとりを眺めてうんうん頷くモブになりたい
エアグルが何を頼んだかちょっと気になる - 16二次元好きの匿名さん23/04/27(木) 23:47:29
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- 17123/04/27(木) 23:50:24
ありがとうございます
正直エアグルーヴがカフェで何を頼んだかは考えていなかったので、改めて考えてみましたが、彼女は何を頼んでも何を手に持っても絵になる気がします
コーヒーカップ等を手に持っていても良いと思いますし、スコーン等のお菓子を二人で摘んでいても可愛いかもしれません
私もそんな光景を眺めるモブになりたいです
- 18二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:25:03
- 19二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 09:24:47
このレスは削除されています
- 20二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 09:26:23
- 21二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 11:23:42