オリキャラ集めてバトロワ書きます3

  • 1◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:16:18

    https://bbs.animanch.com/board/1712644/?res=192

    https://bbs.animanch.com/board/1720355/?res=991

    オリキャラ集めてバトロワ書きます2|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/1712644/?res=192https://bbs.animanch.com/board/1720355/?res=991「バトロワす…bbs.animanch.com

    「バトロワするからオリキャラ募集します」の4スレ目です。


    ※最初のスレで皆さんから頂いたオリキャラを元に私がデスゲーム小説を書くスレです。

    ※一か月で完結を目指しています。

    ※ジャンルの都合上、残酷なシーンが多く、キャラクターがどんどん減っていきます。ご了承ください。

  • 2◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:17:59

    ☆関係者ダイス

    せっかくクラスメイトなので、初登場の回で関係者ダイスを振らせていただきました……!

    関係人物dice1d33=30 (30)

    関係性dice1d100=51 (51)

    でダイスを振り、数字が大きい程好意を抱いています。


    だいたいの目安としては

    0~20 嫌い

    21~40 まあまあ嫌い

    40~60 普通(やや嫌いからやや好き)

    61~80 まあまあ好き

    81~100 好き


    ただ、キャラクターの設定によっては100でも0でも、あまり強い感情を向けないタイプのキャラもいると思うので、その辺りは設定に準拠します。関係値ダイスは設定を覆しません。

  • 3◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:18:33

    ☆アイテムダイス


    それぞれ生徒に配られるランダムアイテムは、初登場話にてダイスで決定しました。

    アイテムdice2d100=80 12 (92)

    左の数字が大きい程アイテムの当たり度が高くなり、右の数字が大きいほどアイテムのオリジナリティ(?)が高くなります。


    当たり度のなんとなくの基準としては

    0~20 外れ枠(鍋の蓋、フォークなど)

    21~40 やや外れ(ナイフ、ハンドアックス、鉈など)

    41~60 普通(日本刀、弓矢)

    61~80 やや当たり(拳銃類)

    81~100 当たり(散弾銃、ショットガンなど)

    かなりアバウトなので、上の表からズレる可能性もあります


    オリジナリティに関しては明確な基準がなく、低かったら原作に登場した武器、高かったら生徒の私物や皆さんの挙げたアイテムくらいのふわっとした認識です。

  • 4◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:18:52

    ☆幸運ダイス
    その話のキャラクターが「どれだけ思い通りにできるか」を判定するダイスです。
    ※90以上なら、どんな絶望的状況でも生存します。
    ※10以下なら、どんな安全な状況でも死亡します。
    低い程思い通りに進まず、高い程思い通りに進みます。
    ただ、参加者間の能力格差や装備の差、状況次第では、ダイスが高くても低い相手に敗北することがあります。
    また、10以上でも、状況によっては死亡します。50以下は危ないし、50以上でも普通に危ないと思っていただければ幸いです……! 絶対安全範囲は90以上からです……!

  • 5◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:19:11

    本スレの進行ですが、「安価系」のカテゴリに立っているにのに申し訳ありませんが、
    ①私の投稿が不安定で、安価に参加するには一日に何度もスレを確認しなければならない不親切な仕様
    ②時間帯によっては参加できない人も出てくるため
    ③皆さんのアイデアはなるべく取り入れたい
    という考えから、基本的に安価は取らず、ダイスと私の駄文で進行していきます……!
    ご了承いただけると幸いです……!

  • 6◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:19:28

    本スレは皆さんからオリキャラを募集し、私がそのキャラをお借りしてデスゲーム小説を書くという、かなり悪趣味なことを行うスレです。キャラクターはバンバン死んでいき、悲惨なシーンや猟奇的な描写もあります。ご了承いただけると幸いです……!

  • 7◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:20:08

    皆さんからは常時
    ・アイテム
    ・施設
    ・デストラップ
    ・ミッション
    ・黒服&暗黒金持ち
    などを募集しています。今後の展開に対する要望や、特定のキャラクターへアイテムを渡して欲しいなども受け付けています。ただ、上記のダイスにより、それらが叶わない可能性があります。これらもご了承頂けると幸いです……!

  • 8◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:20:31

    他にも質問などがあればどんどんお願い致します……!
    一応過去スレを見て頂ければ各用語の説明や、これまでの流れを終えるとは思いますが、質問いただければ、早めにお答え致します……!
    今後ともよろしくお願い致します……!

  • 9二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 02:22:54

    「——保守寸勁」

  • 10◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:24:53

    男子 16
    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)
    2 宇多 一郎(うた いちろう)
    3 宇都 創希(うと そうき)
    4 小田斬 純恋(おだぎり すみれ)
    5 オルランド・テークトリ
    6 金輪 幹久(かなわ みきひさ)
    7 金島 明宏(かねしま あきひろ)
    8 篠宮 纏(しのみや まとう) 
    9 芝野 貴仁(しばの たかひと)
    10 新條 アキラ(しんじょう あきら)
    11 Nek-O(ネック・オー)
    12 パンパンパン・ラッタッター
    13 星峰 灼(ほしみね あきら)
    14 堀木 彩(ほりき あや)
    15 マネモフル=タマネ
    16 三田 哲(みた とおる)

  • 11◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:25:22

    女子 15
    17 麻井 涼(あさい りょう) 
    18 垣根 澄花(かきね すみか)
    19 金木 冥(かねき めい) 
    20 姫氏原 小毬(きしはら こまり)
    21 霧田 キルコ(きりだ きるこ)
    22 里美 綾香(さとみ あやか)
    23 瀧沢 魁(たきざわ かい)
    24 千頭之 のづち(ちずの のづち)
    25 ねうねい・めあめえ
    26 歯荷 仄花(はに ほのか)
    27 文乃 あかり(ふみの あかり) 
    28 結 栞奈(むすび かんな)
    29 目裏 雨子(めうら あめこ)
    30 山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウス
    31 鰐淵 英利(わにぶち・えいり)

    不明 1
    32 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)

  • 12◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:25:46

    教師
    33 茜音沢 仁史(あかねざわ ひとし)

  • 13◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:32:45

    趣向を変えて次は部活を……

    キャラたちが入部する前の各部活の強さ


    ・美術部:dice1d10=1 (1)

    ・男子ダンス部:dice1d10=2 (2)

    ・女子ダンス部:dice1d10=9 (9)

    ・料理部:dice1d10=8 (8)

    ・ボランティア部:dice1d10=7 (7)

    ・バスケットボール部:dice1d10=2 (2)

    ・弓道部:dice1d10=2 (2)

    ・演劇部:dice1d10=9 (9)

    ・文芸部:dice1d10=9 (9)

    ・吹奏楽部:dice1d10=5 (5)

    ・新聞部:dice1d10=9 (9)

    ・アマチュア無線部:dice1d10=3 (3)

    ・剣道部:dice1d10=9 (9)

    ・合唱部:dice1d10=7 (7)

    ・サッカー部:dice1d10=3 (3)

    ・チアリーディング部:dice1d10=9 (9)


    1~2 弱小

    3~4 県内の中堅

    5~6 全国出場レベル

    7~8 全国の中堅

    9~10 全国優勝候補

  • 14二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 02:35:23

    あにまん学園結構優秀やん

  • 15◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:39:54

    キャラクターたち入学前の各部活状況

    全国優勝候補(女子ダンス部/演劇部/文芸部/新聞部/剣道部/チアリーディング部)
    全国中堅(料理部/ボランティア部/合唱部)
    全国出場レベル(吹奏楽部)
    県内中堅(サッカー部)
    弱小(美術部/男子ダンス部/バスケットボール部/弓道部)

    キャラクターたちが入部してどう躍進したのかは、今後本編で書くかもしれないので、今は決めないで置きます……!

    (ダンス部は男女に分けたのに剣道部は忘れてました……男女どちらも強豪ということで……)

  • 16◆xaazwm17IRZa23/04/28(金) 02:46:33

    本日はここまでとさせていただきます……!
    2日連続でSSが投下できず、申し訳ありません……!

    昨日は鯖落ちによるぶつ切りにも関わらず、ダイスへの反応ありがとうございます……!
    そのうち皆さんに作って頂いた設定と、SS中で追加した設定、今まで振ったダイス結果などを纏めたものを投下出来たらなと考えています……!

    それでは、本日もありがとうございました……!
    4スレ目もよろしくお願い致します……!

  • 17二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 02:56:58

    あにまん高校剣道部に競るレベルの奴らがいる全国大会普通にヤバいな

  • 18二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 03:07:11

    ミサイル斬る奴とか殺人鬼を全国に出すなとも言う

  • 19二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:25:30

    ドラギモちゃんが死ななければ残るは11人…
    まとめる人は明日から月曜まで電波の通じない死地に赴くので今のうちに貼っておきます


    1 石川大輔(孤独な戦闘狂)


    【武器】素手,ロッカーアイテム未取得【kill】金輪幹久,パンパンパン・ラッタッター,瀧沢魁【備考】連戦による重傷,ロッカーアイテム未取得

    
8 篠宮纏(白髪ポニテ)


    【武器】ヌンチャク,透明な銃,ロッカーアイテム未取得【kill】無し【備考】キルコの戦車から逃げて意識不明に

    11 Nek-O(巨大猫)


    【武器】猫じゃらし,ロッカーアイテム未取得【kill】無し【備考】残りライフ2,キルコの戦車に撃たれて行方不明

    14 堀木彩(スパダリメス男子)
    【武器】ウィンチェスターライフル,ロッカーアイテム未取得×2【kill】霧田キルコ【備考】キルコの手榴弾で火傷,姫氏原小毬と行動

    15 マネモフル=タマネ(受け継いだマネモブ)


    【武器】コルトM1848拳銃【kill】芝野貴仁【備考】ねうねいの言葉で正気に戻った,千頭之のづちと行動

    16 三田哲(高校生探偵)


    【武器】バール【kill】無し【備考】金木・ドラギモスと共に石川戦

  • 20二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:27:17

    19 金木冥(薄っぺらな邪悪)


    【武器】鍋の蓋,AK-74自動小銃【kill】無し【備考】三田・ドラギモスと共に石川戦,善性が芽生えて来た

    
20 姫氏原小毬(悪霊に憑かれたヒロイン)


    【武器】双眼鏡【kill】目裏雨子【備考】首輪解除済み,堀木彩と行動

    
24 千頭之のづち(託された蛇使い)


    【武器】蛇のコサメ【kill】無し【備考】鰐淵とマネモフルにより全回復して復活,マネモフルと行動

    
26 歯荷仄花(灘神影流お嬢様)


    【武器】特殊警棒,折れた透明な日本刀【kill】里美綾香【備考】砲撃を躱してキルコ戦から逃亡,灘神影流と槍術、ジークンドーを習得

    32 虎肝ドラギモス(イロモノ系最後の希望)
    

【武器】DX日輪刀,結栞奈のDISC,ロッカーアイテム未取得【kill】無し【備考】三田・金木と共に石川戦,異能さえなんとかなれば首輪を外せる



  • 21二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:36:46

    このレスは削除されています

  • 22二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:38:01

    把握できていない所も多々あると思うのでミスなどあれば教えてください…

  • 23二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 04:39:57

    黒服と暗黒金持ちの皆さんです

    長村洋
    破目囃子
    田中 屍山血河
    目裏晴刈
    準 標
    マエストロ・セピア
    ペギー・ジョーダン
    ティエ・レン
    笛吹享楽

    爆弾卿ボーガン・D・マイト
    ジョン・ジョンソン
    錠著者絵
    谷淵玄夜
    スーツの男
    張 湖李


    元担任・茜音沢仁史

  • 24二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 05:24:41

    >>22

    コサメはまだ歯荷嬢の手元じゃなかったかな?

    いつもながらまとめ作成ありがとう

  • 25二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 10:15:52

    まとめさんの(受け継いだマネモブ)とか(高校生探偵)とかそのキャラを一言で表してるパート好きなんだけど
    ドラギモスだけ属性過積載すぎて遂に「イロモノ」の一単語でまとめられちゃってるの笑う

  • 26二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 10:50:52

    纏め乙です!廃校を破壊されてるから余計瓦礫に埋まってロッカーの回収が難しそう…

    【名前】覆球(カウンターフォース)
    【説明】手の平サイズの鉄球で、翳すとその先の物体が持つ一つの要素を反転させる異能を持ってる。死や消滅は能力の範囲外。能力者そのものを鉄球に改造した物なので意志を持つ。喋らないが球に気に入られれば翳さなくても能力を使ってくれる。

  • 27二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 18:59:55

    保守

  • 28二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 21:37:02

    >>24

    すみませんそうでしたね!


    >>25

    金輪くんもそう言ってたし仕方がないんだ…

  • 29二次元好きの匿名さん23/04/28(金) 22:03:29

    【名前】中央本部2階渡り廊下
    【説明】このガラス張りの橋は中央本部の東西をつなぐ空中の渡り廊下で、緊急時には橋を上げることで侵入を防ぐ役割も持つ。
    とは言ってもあにまん高校の運動部であれば充分飛び越えられる範囲なので、見張りの黒服が配置されていた

  • 30二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 05:03:36

    保守
    今日は寝てるかな

  • 31二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 05:05:59

    アマチュア無線部の全国中堅レベルって全く想像できないな

  • 32運営23/04/29(土) 05:56:25

    パソコンの回線繋がらなくなったので投下は明日の午後に行います💦 お待たせして申し訳ないです…

  • 33二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 07:45:13

    >>32

    疑うようで悪いけど1と同一人物?

    文体からしていつもと違うしトリップ付いてないしでどうにも別人っぽく思える

  • 34二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 15:40:36

    最悪今夜でも待っとるぜッ

  • 35二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 20:58:08

    >>33


    >>19の人だけど自分と同じで出先にいるんじゃないですかね?

    電波は繋がらないし、もしパソコンに書き溜めてたら投下もできないし…

    それはそれとして待機

  • 36◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:52:34

    お待たせ致しました……!

    本日も始めさせていただきます……!

    28話㉕を投下します……!

  • 37◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:54:09

     篠宮纏は、世界に対して興味を持っていない。
     クラスに親しいものは無く、勉学にも興味が無く、ボランティア部でも、親しい友人を作ろうとしなかった。
     それは、本人の性格も過分に含まれているが、何より、抱えた異能が、彼を世界から遠ざけさせていた。
     透明な武器を作る能力。
     武器とは、使わなくても抑止の効果を持つ。振るう気が無くとも、それを見せつけることで一時的な平和を生むことだって可能だ。
     透明な武器には、それが無い。
     暗殺のみに特化した異能は、3年1組の中で最も凶悪な異能と言える。
     だから篠宮は異能を磨こうとしなかった。親しい友人も作らなかった。自身の異能で他者を害さないためには、それしか思いつけなかったのだ。技術を磨けば、使いたくなるかもしれない。親しい友人を作れば、利用されるかもしれない。故に、透明。誰にも染まらず、何にも属さない。どこまでも普通の、無害な男として一生を終える。それが、篠宮纏の覚悟であり——所詮、一高校生の覚悟に過ぎなかった。
     使わなければ生き残れない。殺し合いに巻き込まれ、篠宮は当たり前の事実として、それを受け入れざるを得なかった。
     異能を使わなければ、篠宮はただの凡人なのだ。超人が跋扈する殺し合いで生き残れる道理が無い。

  • 38◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:54:56

     死にたくなければ、殺すしかない。
     それには、篠宮の異能は適格だった。
     だったのに。

    「歯荷さん」

     呼びかけると、歯荷仄花は足を止めた。

    「篠宮さん、生きてらっしゃったのね」

    「まぁね。咄嗟に空き教室に逃げ込んで無事だった。全身めちゃくちゃ痛いけど」

    「私もですわ……一週間は寝込みますわねこれ」

     互いに、力無く笑う。

    「さっきの、見たかい?」

    「ああ、ドラギモスさんと石川さんの追いかけっこでしょう? 隠れている私に気づかずに走り去ってしまいましたわ」

    「ドラギモスくんちゃんを抱っこしてるあれって何なんだろうね」

    「怪異だと思いますわ。ほら、結さんが出すやつ」

    「それをどうしてドラギモスくんちゃんが?」

  • 39◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:55:34

    「星峰さんのディスクが……どうやって手に入れたのかは知りませんけど」

     歯荷には心当たりがあるようだった。
     音楽室で何かあったらしい。篠宮は戦車によって砲撃されてからの、星峰と三田の動向を知らない。まだ二人は生きているのかさえ、把握していない。

    「それで……君は行くんだね?」

    「ええ」

     歯荷は、廊下の先を、ドラギモスと石川が走り去った方向を見据えている。

    「どうして?」

    「生き残るためですわ」

    「そっか。そうだよな」

     皆そうに違いない。この島で戦ったクラスメイト全員が、そう思っていたのだ。
     みんな同じなのだ。

    「……歯荷さん、今欲しい武器は何だい?」

    「どういう風の吹きまわしですの? あんなに私が銃を持つのを反対していたくせに」

  • 40◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:56:30

    「別に、心境の変化だよ。強いて言うなら、生き残るためさ」

    「私がその武器であなたを殺すと、どうして考えないんですの?」

    「君、もう僕なんか簡単に殺せるでしょ」

     歯荷は目を細めた。

    「明らかに落ち着き方が違う。だいたいマネモフルから逃げる君が、石川のところへ行くのがおかしいんだ。行っても生き残れる。そういう自信があるんだろ。だったら、武器を作ろうが作らまいが、同じことだよ。そして、同じことなら——少しでも仲良い女子の生存率を上げてやろうと思ってね」

    「え? 私たち、仲良しでしたっけ?」

    「僕はクラスに親しい友人が居なくてね。クラスで女子と話した時間、今のところ歯荷さんがブッチギリで多いんだ。この島で数時間一緒だっただけだけど」

    「なんだかキモいですわね……。まぁ武器を作って頂けるのなら嬉しいですけど、日本刀は折ってしまったので。……そうですわね、槍を、お願いしますわ」

    「槍ね。シンプルなのでいいよね」

    「ええ、シンプルな、それこそ竹槍のような形状が望ましいですわ」

  • 41◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:57:12

    「分かった。任せてくれ」

    シンプルであればあるほど、創造は早い。
     数秒で篠宮は「透明な竹槍」を創り出し、歯荷に手渡した。
     歯荷はそれを受け取ると、縦横無尽に振り回す。素人の篠宮から見ても、堂に入ったものだった。

    「では、行ってきますわ」

    「ああ、気を付けてね」

    「……貴方に言っておくことがありますわ。……星峰さんは、私を庇って死にました」

    「……そうか、彼らしいな」

    「ええ、本当に」

     そう言って、歯荷は崩れかかった廊下を駆けていった。その後ろ姿を見送り、篠宮はその場に崩れ落ちた。
     砲弾は直撃こそしていないが、割れたガラスの下敷きになり、瓦礫もいくつか体に当たっている。その前はマネモフルと銃撃戦を経験しており、精神的な疲労も重なっている。透明な竹槍は銃器と比べてコストが高い武器ではないが、それでも異能の発動直後であるため、立ち眩みを起こしていた。

  • 42◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:57:49

    「星峰くん……死んだのか……」

     歯荷と同様に、親しく話したのはこの島に来てからだ。
     彼のことは殆ど何も知らない。どんな音楽を聴いていたのかさえ分からない。
     それでも、確かな喪失感を抱えていた。

    「……安心してくれ、僕たちが勝つよ……何を犠牲にしても」

     この島の地獄と反比例するように、空だけはどこまでも澄んでいた。



     虎肝ドラギモスが河川敷を歩いていたのは、珍しい石を集めるためだった。
     彼/彼女には、蒐集癖があり、その時の興味は石に向いていた。

    「やはりそうか。ここの川は他と石の成分が違う。幾つかの石は異能の影響を受けている。近くにあにまん高校があるからか? 異能は無意識に周囲に影響を与える? 興味深いな」

     運動が苦手なドラギモスは、当然泳げない。

  • 43◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:58:15

     なので水の中には入らないよう注意し、石を観察し、持参したビニール袋に入れていく。
     その時、ふと、川の中に、何か大きなものがあることに気づいた。
     最初、木が生えていると思った。
     けれど、木にしては、白い。
     それは、人型をしていた。
     ただ、人としては、大きすぎる。
     2m40㎝。クラスメイトのオルランドよりも二回りは大きい。白装束で黒髪の大女が、川に浮かんでいる。

    「ぽぽぽぽぽ……」

     女は音を発した。
     ドラギモスは、ある言葉を連想した。
     これは、この女の名は。

    「八尺様」

    「ぽぽぽぽ……」

  • 44◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 22:59:31

     八尺様がドラギモスに気づいたのか、ゆっくりと近づいていく。
     逃げないと。そう思っても、全身が金縛りのように固まって動けない。

    「わ、ごめーん!」

     呑気な言葉と共に、八尺様は煙のように掻き消えた。

    「ごめんね、明日の英語の小テスト考えてたら怪異のコントロール弱くなっちゃってさ。何もされなかった? 大丈夫?」

    (おいおいちょっとまて、そんな小市民的な悩みのせいで僕は死にかけたのか。ふざけるなよこいつ!? 異能に対して無責任過ぎるだろ……)

     駆けよって来た少女は、クラスメイトだった。結栞奈。一年時から最強候補の異能者として名が知られる存在だ。

    「あ、君って……ドラゲナイ君だっけ?」

    「人をSEKAI NO OWARIみたいに言うな。僕の名前はドラギモスだ」

     結と話すようになったのはそれからだった。とにかく結栞奈という女子は何をやるにも要領が悪く、ホラー系の知識は無駄に多いが、その応用が苦手であり、おまけに私服のセンスも壊滅的な、つまりドラギモスのような天才児ではなく、ごく普通の少女だった。

  • 45◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:00:13

     幼馴染が良くも悪くも異端児のキルコなのもあって、ドラギモスは結の普通さに興味を示した。

    「とにかくさ結。不用意に怪異を召喚するのはよせよ。一体召喚したらインターバルを置く必要があるんだし、慎重に吟味した方がいいぜ」

    「うーん、そういうもんなのかなぁ」

    「大いなる力には大いなる責任が伴うんだぜ」

    「おおー、スパイダーマン!」

     天性の素直さで、結はドラギモスの言葉をいちいち感心していた。
     いつの間にかクラスでよくつるむようになった。
     勉強会を開いたり、強制ホラー映画鑑賞会が開かれたり、怪異の実験を行ったり。
     ……それでも、彼女はドラギモスの性別も、過去も、正体すらも知ることなくこの世を去った。
     結栞奈は、虎肝ドラギモスにとってどういう関係なのか。
     そんなことは、決まっている。

    (結栞奈は隕ェ蜿だった。彼女とは豐ウ蟾晄聞で出会って、蜍牙シキ莨をしたり、蠑キ蛻カ繝帙Λ繝シ譏?逕サ髑題ウ樔シが開かれたり、諤ェ逡ー縺ョ螳滄ィを行ったり……)

  • 46◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:00:46

     マッハ婆に背負われながら、ドラギモスは表情を歪めた。
     結との過去が異能に呑まれていく。
     そのうち、結の名前すら他者に伝えることも出来なくなるのだろう。
     だから。

    「石川ぁッ!」

    「何だよおらっ!」

    「これは結栞奈の異能だっ!」

    「知ってるよ!」

    「僕は結栞奈の異能でお前と戦っているっ!」

    「だから何なんだよボケがっ!」

    「別に、それだけ言いたかっただけだ」

     言えるうちに。
     マッハ婆の速度が落ちた。
     石川に殴られたダメージが響いているのだろう。

    (……思ったよりも早いな)

  • 47◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:01:18

     感傷を振り切り、ドラギモスは思考を今の状況に切り替える。
     目標の場所まで後数秒。
     この数秒さえ乗り切れば。
     そう思った瞬間、全身が浮遊感に襲われた。
     空中に投げ出されたと気づく。
     妙にスローモーションに映る視界の中で、マッハ婆の背中を蹴りつけている石川が見えた。

    (不味い)

     後数秒。それは、マッハ婆の速度を基準にしたものであり、ドラギモスにとっては遥かに遠い。否、それ以前に。
     廊下を転がったマッハ婆が遂に消滅する。
     ドラギモスには、空中では何も出来ない。
     自分に迫りくる石川の拳を見ていることしか出来ない。

    (ああ、死ぬのか、僕は)

     後ろに引っ張られる。

  • 48◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:02:25

     うなじに獣じみた息がかかる。
     鼻先を拳が掠める。
     そのまま、ドラギモスは尻もちをつくように地面に落下した。

    「痛いなぁ……」

    「我慢しろ。ギリギリのタイミングだった故な」

     そう言ってNek-Oはドラギモスの奥襟から顎を離す。

    「……ありがとうな、Nek-O……。何か、大きくなってないか?」

     元々1mある巨大猫だったが、今のNek-Oは1.5mはある。身に纏う
    風格も、猫というよりジャガーや豹に近い、大型肉食動物じみた獰猛さを秘めていた。

    「とうとうストックが残り二つだ。吾輩だって野生に近づく」

    「おいおい、人間様の喧嘩に、獣畜生が割り込んでんじゃねえぞ」

     マッハ婆を仕留めた石川は青筋を浮かべながらドラギモスとNek-Oに迫る。

    「隙やり、ですわー!」

     その背中に、歯荷は透明な竹槍を突き出した。

  • 49◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:03:43

     石川は後ろを振り返らずに躱そうとし、予想以上の鋭さを持って放たれたそれに、二の腕を切り裂かれる。

    「あぁ!? 何でテメェみたいな雑魚がこんな攻撃を使えるんだよ!」

    『化け物……あんたみたいな化け物、どうして私たちのチームに入ったのよ……』

     トラウマを打ち消すように、歯荷は透明な竹槍の柄で石川を打ち据える。

    「どうして使えるのかですって! それは、私が化け物だからですわ!」

     打ち据えた柄を、石川は掴む。

    「テメェが化け物? 動きは熟練しているが筋肉が追いついていねぇ。動きだけパクっただけだろ。ドラギモスといい、何なんだテメェら。強い奴の真似すれば自分が強くなれると勘違いしてんのか? マジで何でテメェらが生き残ってあいつらが死んでんだよ……! ふざけんなよ……!」

     歯荷と石川では、筋力に比べるのも馬鹿らしい程の差がある。このままでは、竹槍は容易く石川に奪われる。

    「しゃあっ!」

     すかさず、歯荷は竹槍を殴りつけ、二つにへし折った。

  • 50◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:04:20

     そして穂先の部分で石川の喉元目掛けて突き出す。

    「あぁ!? テメェ他にもパクってんのかよ! ふざけんなよおい! お前の個性で勝負しろ!」

    「どこまでも勝手なことを……!」

    「まったくだ。吾輩のクラスメイトは馬鹿しかいないのか」

     鋭く尖った爪が石川を襲う。
     前からは歯荷が、後ろからはNek-Oが。どちらも、本来の石川なら一方的に制圧できる実力差がある。しかし、全身に疲労を蓄えた今の石川では、二人の猛攻を凌ぎ、拮抗することしか出来ない。

    「この先に用があるのでしょう!」

    「ならば行け、ドラギモス!」

     ドラギモスは走り出す。
     目指す先は——トイレ。

  • 51◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:05:08

     トイレに辿り着いたドラギモスは、躊躇することなく中に入る。
     首を切断された宇都の死体が、ドラギモスを迎え入れる。
     知っている。先刻はここに入ることで戦車の砲撃を免れたのだから。

    「Nek-Oは言っていた。トイレには花子さんが出るって。それが、怪異なのか、また別の何なのか、確証は無かった。けど、遭ってみて分かったよ。……お前、ここに居たんだな」

     おかっぱ頭の少女が出現する。
     学校怪談の王が。二人の生徒の命を奪ったデストラップが顕現する。

    「なぁ結。どうせお前は馬鹿だからさ、どんな怪異召喚していいか悩んで、結局何も召喚出来ずに終わっちまったんじゃないのか。お前が望んで花子さんを召喚するとは思えないからなぁ」

     花子さんはドラギモスに近づくことなく、じっと見据える。

    「一緒に、この殺し合いを終わらそうぜ」

     花子さんが手を伸ばす。
     ドラギモスは、その手を掴んだ。
     ——そして、世界は反転する。

  • 52◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:05:41

    「ぜぇ……もうちょっと真面目にダンスの練習するべきでしたわね……」

     ジークンドー。灘神影流。キルコの竹槍捌き。護衛忍者の忍術。一つ一つは石川にも通じる技術だ。それらソフトを動かす歯荷のハードは、練習不足のダンス部員程度であり、短いスパンで戦闘を重ねることに対応は出来ない。
     歯荷の体は、戦うようには出来ていない。石川とは、そこが違う。
     心臓を狙って竹槍を突き出す。
     それはフェイントで、本命は左腕の竹槍の柄による殴打。
     手刀で止められる。想定内。
     本当の本命は、竹槍を投げ捨てての、心臓への一撃。

    「寸勁……きゃっ」

    「それは知ってる」

     歯荷の拳を掴んだ石川は、そのまま拳を握りつぶそうと力を籠める。

    「させんぞっ!」

     Nek-Oがすかさず石川の手首に噛みつく。

  • 53◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:06:13

    「邪魔すんな動物がよっ!」

     振り払われたNek-Oは壁に叩きつけられ肉のシミに……なることはなく、壁に着地すると、果敢に石川に飛び掛かる。
     Nek-Oの動きに合わせるように、歯荷も石川の右目側、死角に回り込む。

    「マジでいい加減にしろよ雑魚共」

     石川は足を廊下に踏み下ろした。途端に周囲が揺れる。震脚。
     たまらず二人は体勢を崩す。

    「どれだけ取り繕っても、雑魚は雑魚だぜ」

     まずは歯荷の首をへし折らんと石川は回し蹴りを放とうとし。
     ——廊下の奥から悲鳴が聞こえた。

    「……誰だ?」

     断末魔のような悲鳴。
     それは、石川を歓喜させた。まだ殺人者が残っていたのか。
     誰だ? 小田斬か? キルコか? マネモフルか?

    「誰にしても、お前らよりは楽し……」

  • 54◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:06:44

     再び、断末魔。
     石川は訝しんだ。
     一体向こうで何があったのか。
     三度、断末魔。否、悲鳴が、重なる。
     この廃校そのものが泣き喚くように振動する。
     明らかに異常事態が起こっている。
     石川は警戒心を高めた。

    (さぁ、一体誰が来る? 俺を、俺を楽しませ……)

     来たのは、水だった。
     鉄砲水の如く大量の水が、石川を、歯荷を、Nek-Oを押し流す。

    「おいおい、こんな異能を使う奴、クラスに居たかぁ!?」

     戸惑いの言葉と共に、しかし石川は水の流れに逆らうようにその場に立ち続ける。

    「舐めんじゃねぇぞっ!」

     怒声と共に、手刀が水に叩き込まれる。
     水が、割れていく。

  • 55◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:07:19

     そんなものは最初から無かったかのように、消え去っていく。
     水が全て消え去ったとき、一つの影がその場に表れた。
     虎肝ドラギモスは、その手に、弓矢を構えている。

    「『学校で暴れるのは——校則違反だっ!』」

     矢が、放たれる。

    「今更そんなもん効くかぁっ!」

     石川はそれを右腕で弾く。
     ぱしゃっ、と水が跳ねた。
     矢は、固体ではなかった。
     液体である。
     石川の右腕に触れた矢は形を失ったが、すぐに修復し、石川の胸に刺さった。
     血は出ず、肉は抉らず、皮も削らない。
     ただ。

    「な、何だこりゃあっ!?」

     石川は、全身に加重を感じた。

  • 56◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:07:51

     立っていられず、膝をつく。
     何らかの異能が発動している。
     傍から見ていたNek-Oは気づく。
     弓矢という武器、そして「ルールを破った相手を拘束する異能」。

    「麻井、なのか……」

     花子さんによって命を落とした麻井涼の異能が、石川を抑えつけている。

    「今ですわ!」

     歯荷はこの隙を見逃さなかった。すかさず竹槍の柄で石川を殴りつける。
     石川は、動けない。
     勝負は決した。

     ◇

     今日は、公園に行った。友達とたくさん遊んだ。
     今日は、公園に行った。友達とたくさん遊んだ。
     今日は、公園に行った。友達とたくさん遊んだ。
     今日は、公園に行った。友達とたくさん遊んだ。良太が怪我をした。

  • 57◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:08:16

     今日は、公園に行った。友達が怒ったふりをしていた。良太に謝れと言われたので、謝らせたかったら俺を倒して見せろと言ったら、みんな帰った。
     今日は、公園に行った。みんなが遊んでいたので、俺も一緒に遊ぼうとしたら、駄目だと言われた。嫌だったので殴った。他の子が突き飛ばしてきたのでその子も殴った。止めに来た大人も殴った。
     今日は、公園に行った。みんな逃げて行った。追いかけたら大人が来た。殴った。
     今日は、公園に行った。みんな居なかった。俺はみんなを探しに行った。

     今日は公園に行った。会いたかった奴はいなくなっていた。弱い奴しかいなかった。なのに逃げなかった。遊んでみたらそれなりに楽しかった。けど、俺はだんだん眠たくなってきた。
     嫌だ。まだ遊んでいたい。もっともっと遊んでいたい。だから俺は。

     ◇

     剛腕が、歯荷の腹部に突き刺さった。

    「がふっ……!」

     歯荷は体をくの字に曲げたまま吹き飛ばされ、壁に全身を叩きつけられた。

  • 58◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:08:48

    「まだ動けるのか……!」

     Nek-Oが石川の動きを止めるべく、顔を引っ掻きにかかる。
     しかしビンタで払われ、濡れた廊下に転がる。

    「……ぁあ~、認めるぜ。お前らは強いよ。ここまで時間がかかるとは思わなかったぜ」

     ゆっくりと、石川は立ち上がっていく。
     生前の麻井であれば、石川を拘束することは出来たかもしれない。
     しかし、ドラギモスの借り物の異能で操作した花子さんの、そのまた借り物の異能では、石川を抑えることは出来なかった。

    「どうした? とうとう打ち止めか、ドラギモス?」

    「……ああ、もう打つ手が無い。お前は僕の想定を超えたよ」

    「そうかい。じゃあ喧嘩は俺の勝ちだな」

    「ああ、お前の勝ちだ」

    「じゃあな。楽しかったぜ」

  • 59◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:09:30

     石川は拳を振り下ろす。一撃でドラギモスの儚き命は掻き消える。殺意が籠った一撃。

    「僕の負けだよ石川……嘘だけどな」

    「なっ!?」

     ガンッと後頭部に衝撃が走った。石川の意識が明滅する。
     鍋の蓋を振り下ろした、金木冥がそこに居た。

    「金木っ……テメェ……!」

    「二択問題だぜ石川。この問いを間違えたとき、お前は負ける」

    「ああっ!?」

     ドラギモスと金木に挟まれ、石川は怒声を零す。
     二択問題。どちらを先に攻撃するのか。そんなことは決まっている。
     ドラギモスが無防備に体を晒している。
     金木は鍋の蓋を盾のように構え、重心を後方に移している。
     分かり切った問いだった。

    (先に殴るのは、ドラギモスだろっ!)

  • 60◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:10:22

     こちらが予想もつかないことをする奴だ。
     金木を殴る僅かな時間に、新たな嫌がらせを始めるかもしれない。
     故に、先に黙らせるのはドラギモス。

    「消えろっ!」

     怒声と共に拳を出す。
     防ぐようにトイレの花子さんが出現する。
     何故かドラギモスは現れた花子さんに対して、目を見開いていた。
     何かのブラフか。どうでもいい。
     花子さんがクッションになり、威力が減衰するが、それでも拳はドラギモスに届く。
     ドラギモスが血を吐く。
     この間に、金木が何をしようが、問題ない。
     石川はクラスの誰よりも金木冥のことを知っている。何も出来ない女だ。薄っぺらな邪悪、つまるところ小悪党に過ぎない。ドラギモスとは脅威度が段違いだ。

    「残念だったな、ドラギモス」

  • 61◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:11:22

     ドラギモスの口が微かに動く。

    『ぼ く の』

     口角が上る。

    『ぼくたちの、かちだ』

    「何だと……?」

     振り返る。鍋の蓋を構えた金木が立っている。
     ——鍋の蓋の後ろに隠し持っていたディスクを、頭部に挿しこみ終わった金木がこちらを向く。
     傍らに、マッハ婆が具現化し。

    「——————くそっ、俺の負けかよ」

     マッハの体当たりが炸裂した。
     石川は壁をぶち抜き、廃校の外に投げ出された。
     グラウンドで石川は、空を見上げた。
     太陽が昇り、雲一つない、絶好の青空だった。
     こんな日は、公園に行くに限る。皆で遊ぶには、もってこいの天気だ。

  • 62◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:11:58

    「畜生……楽しいじゃ、ねぇか…………」

     石川は意識を手放した。
     不思議と、悪い気はしなかった。

     ◇

    「…………はぁ、しんど…………」

     マッハ婆とかいう怪異を消し、金木はその場にへたり込んだ。
     プランD。ドラギモスに指示されたそれは、金木にとっては受け入れがたいプランだった。
     ディスクの貸し借り。
     怪異を召喚した場合、次の怪異召喚にはインターバルがかかるというコストを、使用者を変更することで踏み倒すという無法な作戦。
     あまりにも穴が多い。本当にそんなことが可能なのか、検証する時間も無く。
     ディスクを抜き出せばドラギモスはただの貧弱なイロモノであり、金木もまたディスクを挿すまでは普通の女子高生でしかない。

  • 63◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:12:29

     普通にディスクを抜いて渡していては石川に妨害されるし、最悪石川にディスクを奪われる。
     が、ドラギモスは巧妙だった。金木が石川を鍋の蓋で殴った瞬間には、右目が見えない石川の死角を利用し、金木にディスクを渡し、更に石川を挑発し、自分を先に攻撃させた。
     もしここに来たのが三田であれば、石川は三田を先に攻撃する可能性があった。しかし、クラスの中で最も評価の低い金木冥だからこそ、石川は侮った。

    「うわー、これはひどい……」

     石川に殴られたドラギモスを抱え起こす。
     血が混じった泡を吹きながら白目を向いている。子どものようなあどけない顔で眠っている石川と比べると、どう見ても、こっちの方が負けた側だった。
     トイレの花子さんがどうしてドラギモスを庇ったのか、金木には分からない。あの時、既にドラギモスはディスクを外しており、花子さんの支配権を失っていた。件の花子さんは、再び蜃気楼のように集まり始めている。

    「……貴方もお疲れ様。よくわかんないけど、ばいばーい」

     軽い言葉と共に、金木は手を振るう。すると、花子さんは煙のように消え失せた。

  • 64◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:13:03

     彼女とドラギモスの間に、どんな物語があったのか、金木には分からない。薄っぺらい彼女には、理解も出来ないのかもしれない。

    「……金木さん、怪我は無いかい」

     申し訳なさそうな表情で三田が姿を現す。
     何を気に病んでいるのか、金木には分からない。
     石川に投げつけられたダメージが尾を引き、走ることが出来なかったために、この戦いに駆けつけることが出来なかった。
     また、先述した通りに、金木の代わりに石川を挟めば、ドラギモスの作戦が失敗した可能性があった。

    「君に危ない真似をさせてしまったね」

    「……んー、まぁ清算は帰ったらでいいよ」

     気にしないで、とか、許すよ、とは言わないのが金木冥の金木冥らしい所である。弱みは少しでも握りたい。

    (もし失敗しても、最悪三田が駆け付けてくれれば何とかなるって打算もあったし……これは言わないほうがいいな)

  • 65◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:13:35

    「それよりさ、探偵だったら、この状況を何とかしてよね。幕を引いて欲しいんだけど」

     そう言って、金木は新たに現れた人物に、順々に視線を送る。

    「どうやら終わったみたいだね」

     と、篠宮纏は、安堵した声を出した。

    「一体何があったんだ……?」

     と、千頭之のづちは驚愕し、彼女を守るように、マネモフルが一歩前に出る。

    「どうやら姫たちの出番は無かったみたいだね(*^」

    「ほ、堀木くん、無理に動いちゃ駄目だよ」

     顔の左半分を包帯でぐるぐる巻きにした堀木と、左手に包帯を巻いた姫氏原が、互いに支え合って現れる。
     歯荷とNek-Oもまた、起き上がることこそ出来ないが、三田に視線を向ける。

    「……そうだね。これも、探偵の役割だ」

     三田は手を挙げる。

    「さて、集まってくれたみんなに、今ここで僕が宣言しよう」

  • 66◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:14:14

    生き残った全ての生徒の前で、探偵は宣言した。

    「殺し合いは、終わった! 今この瞬間、僕たちのデスゲームは終わりを迎えた!

     だからみんな。

     一緒に、家に帰ろう」

  • 67◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:14:59

    28話㉕を終了します……! これで28話は終わりです……!

  • 68二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 23:21:07

    熱い展開だぜ…!

  • 69二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 23:31:56

    すげぇ…これは3日掛かるわ…

  • 70二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 23:32:33

    一旦終わりとなっても仕切り直しという言葉もある…油断ならないが生き抜いた奇跡におめでとうを送りたいね

  • 71二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 23:38:31

    ドラギモちゃんマジで一番好きなキャラになったな
    嘘だぜからの流れがカッコよすぎる

  • 72◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:46:36

    >>19

    >>20

    >>23

    主催陣営含め、まとめをありがとうございます……! とても助かります……! 二つ名の方も更新ありがとうございます……!



    >>26

    面白いアイテムですね……! 機会があればどこかで使わせていただくかもしれません……!



    >>29

    中央本部が二階建てになり、渡り廊下が生えました……! 広くなって暗黒金持ちも喜んでいます……!

  • 73◆xaazwm17IRZa23/04/29(土) 23:47:11

    時間を置いて、第二回放送を投下します……!

  • 74二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 00:04:18

    続き今日来るのか!?嬉しすぎる

  • 75◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 00:41:24

    爆弾卿dice1d100=16 (16)

  • 76二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 00:52:33

    お許しください…

  • 77◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:31:22

    第二回放送を投下します……! 本日最後の投下です……!

  • 78◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:32:02

     最初の放送が引き金となり、島のあちこちで血が流れた。
     生贄たちは、生存のために廃校に集い、その過程でも、血が流れた。
     廃校に集った者たちは、己の生き様をかけて殺し合い、更に多くの血が流れた。
     奇跡的に生き残った11人に、音楽が降り注いだ。

     地獄のオルフェ、序曲第3部「天国と地獄」。運動会でよく使われるこの曲は、生き残った者たちにどのような感慨を呼び起こしたのか。
     既に読心能力者も、異能の聴覚者もこの世を去り、他者の心のうちを図れる者は居ない。
     1分程の演奏会は終わりを継げ、きっかり6時間ぶりに茜音沢の声が、島中に響いた。

    「……よぉ、お前ら。6時間ぶりだな。お前らの頑張り、教師としてしっかり楽しませてもらったぜ。どうも俺はお前らを過小評価していたようだ。三日は長すぎたな。今日にも、いや、次の放送までに決着が着いちまうんじゃねぇか?
     まぁいい。早く終わるならそれに越したことはないからな。

  • 79◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:32:33

     さて、お待ちかねの、脱落者の発表だ。最初の六時間は生き残ったんだ、赤点ギリギリを上げてもいいかも知れんな。生き残ったお前たちは、こいつらの良い所は真似して、悪い所は笑ってやれよ?
     宇都創希。
     小田斬純恋。
     金輪幹久。
     芝野貴仁。
     新條アキラ。
     パンパンパン・ラッタッター。
     星峰灼。
     垣根澄花。
     霧田キルコ。
     里美綾香。
     瀧沢魁。
    『千頭之のづち』

  • 80◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:33:21

     ねうねい・めあめえ。
     文乃あかり。
     鰐淵英利。
     以上、死者は15人だ。
     前回の倍以上だな。いいペースだ。
     次に、新たなミッションの説明だ。安心しろ、今回はとびきりシンプルだ。
     『6時間生き残れ』。
     どうだ? シンプルだろう? 元々三日間生き残るゲームだろと、そう思ったか? 鈍い生徒のために、一つヒントを教えてやろう。ここから先の六時間の生存は、今までの十二時間とは、段違いの難易度だ。始まれば、すぐに分かるさ。試練を一つ乗り越えるたびに、新たな力を手にするだろうぜ。
     おお、もう一つおまけだ。ロッカーだが、まだ開けていないロッカーはこの放送の後も開けることが出来る。開ける余裕があれば、試してみるといい。
     じゃあな。お前たちに会えることを楽しみにしてる」

  • 81◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:34:02

    「またまたシンプルなミッションですねぇー」

    「どうも茜音沢には運営センスが無い気がしますね。そろそろ爆弾卿あたりに交代してもらいますか。生徒の一人を殺してしまうのも言語道断ですよっ! 推ししていたのに……!」

    「はっきり言って、不満が溜まってますよ私は! 廃校に設置されたモニター、まだ復旧しないんですか!? というか物理的な攻撃で壊れるモニターじゃないでしょう!? 異能製なんですから」

    「まぁ、花子さんとか悪霊とか色々集まりましたもんねぇ。おまけに、モニターの概念を補強していた廃校という土台が、廃校跡になってしまいましたから、その影響も大きいんでしょうね」

    「いいからさっさと復旧してくださいよ! せっかく廃校に参加者を集めたのに、肝心の大乱戦が、全然映ってないじゃないですか!? 重大な責任問題ですよ! いつキルコは死んだんですか!? いつ鰐淵や瀧沢は死んだんですか!?」

    「まぁ首輪で生体反応は分かりますからね……姫氏原は首輪が壊れてるので、モニターが復旧するか廃校から移動してくれないと生きてるのか死んでるのか分かりませんが、まぁ暫定生きている扱いなんでしょうね」

    「黒服は何をやっているんです?」

  • 82◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:34:29

    「どうもバタバタしてますねぇ。廃村の方へ帳の大部隊を送ったそうなんですが、どうも戦況が芳しくないみたいで」

    「廃村……ああ、例の爺ですか。放って置けばいいと思うんですけどね」

    「観戦している方の中には、プライドの高い方も大勢いらっしゃいますからね。自分たちの思い通りにならない存在が島に居るのが我慢ならないのでしょう」

    「ふぅむ……このモニター室から人が減っているのは、やはり、皆さん怒って島から出ちゃったんでしょうか?」

    「どうなんでしょうね。島から出るには、ワープ装置を使うしかないのですが、一度島から出ると二度と戻っては来れませんからね。殺し合いが終わるまで島から出ることは無いんじゃないでしょうか」

    「そういうもんですかねぇ」

     成熟した邪悪たちは、大人しくモニターの復旧を待つことにした。
     彼らはまだ、迫りくる危機に気づかない。

  • 83◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:35:11

    「う~~、トイレトイレ」

     今、トイレを求めて全力疾走している私は、デスゲームを主催するごく一般的な老紳士。強いて違うところをあげるとすれば、頭に爆弾が埋め込まれてるってことかNA!
     名前は『爆弾卿』ボーガン・D・マイト。
     そんなわけで、本部にある男子トイレにやって来たのだ。
     ふと見ると、ベンチにくたびれた雰囲気の壮年男性が座っていた。

    (ウホッ! いい男……)

      男は、ベンチから立ち上がると、立てかけていた鉄棒を握り、私に向ける。

    「戦らないか?」

     ◇

    「ふーむ、これはいったいどういうことかNE」

     鉄棒を向けられても、爆弾卿の表情に怯えや焦りは見られなかった。

    「私は君の垣根嬢殺しを庇うつもりだYO? 君を切り捨てようという勢力も居るが、まぁ私を信じて欲しいのだGA……」

    「ああ、いいんです、それは」

  • 84◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:35:44

     茜音沢の口調は静謐だった。
     そこにはどんな感情も込められていなかった。

    「ふむ、庇わなくていいのかNE? 生徒を殺してしまった罪悪感に、今更苦しめられているのかNE? このゲームが終わったらカウンセリングでも受けるといい。黒服や金持ちの中にも、利用者は居るYO。なぁに、そのうち慣れるSA」

    「……爆弾卿。さっきの放送を聞いていなかったんですか?」

    「……ふむ? 何が言いたいのかよく分からんが、まぁ落ち着きたまえ」

     狂ったか? と爆弾卿は訝しむ。
     彼は、自らの特技である『超速思考』を披露する。
     茜音沢がここで鉄棒を持って待ち構えている理由。それは。

    (駄目だ、分からない。だが、念のために……)

     爆弾卿は指を鳴らした。
     瞬間、茜音沢を四人の影が取り囲む。

    「これは癌細胞を消滅させる異能・特殊光線アトスメヒだ。パワーアップすれば生物はドロドロに溶けてしまう!」

  • 85◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:36:18

     と、ダンディな紳士が光線銃を茜音沢に向ける。

    「ちわー、爆弾亭ですが、爆弾三つ持ってきました」

     中華服に身を包んだ中年男が、袖口から爆弾を取り出す。

    「さぁ、早く鉄♂棒を見せてくれ」

     美少年が誘うように笑いかける。

    「公開処刑が開かれることになりました」

     スーツに眼鏡の男が日本刀を取り出す。
     彼らはいずれも爆弾卿の部下であり、荒事を専門とする戦闘特化の黒服である。爆弾卿の腹心にして最強の黒服、マエストロ・セピアの直弟子である彼らは、師に敗北を刻みつけた茜音沢に対して復讐心を抱いていた。

    「残念だよ、茜音沢くん……。教師はいつだって生徒の痛みに寄り添う。君も並の男だったということか……」

     黒服たちは同時に茜音沢に攻撃を仕掛けた。いずれも一騎当千の強者。いくら茜音沢が強くとも、垣根戦で疲弊した状態では、四対一の不利は覆せない。更には時間が経てば他の戦闘系黒服が乱入する。生徒愛に目覚めた男の反逆は、何事も無く鎮圧される。

  • 86◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:37:04

    「イヤー!」

    「「「「グワーッ!」」」」

     茜音沢の鉄棒は蛇のような滑らかさと、象のような強さを持って、四人の黒服の頭部を強打し、彼らの顔を瞬時にミンチに変えた。

    【黒服 残り96人】

    「…………へ?」

     爆弾卿は、目の前で起こった惨劇に、しばし目を奪われていた。長年デスゲーム主催をやっていた性なのか、凄まじい殺しっぷりを見ると、ついつい観察してしまう悪癖がある。

    「爆弾卿……別に俺は、心変わりしたわけじゃありません」

    「何だって……?」

    「ここはね、爆弾卿。朱音の虫籠なんです」

    「殺し合いを、蟲毒に例えているのかね?」

     それは、理解できる価値観だ。朱音という名も知っている。かつて、また別のデスゲームで命を落とした少女の名前だ。

  • 87◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:37:49

    「虫籠にはね、色んな虫を入れたんです。強い虫、弱い虫、正統派な虫、色物な虫。色んな特色を持った、色んな強みと弱みを持った虫を、虫籠に入れたんです」

    (生徒を虫に例えるか……。この男、やはり生徒のために反逆したわけではない……)

     何故だ? と爆弾卿は思考を回転させる。チクタクという音がトイレ前に響く。

    「どうして、色んな虫を入れたか、爆弾卿、分かりますか?」

    「そ、それは……その方が面白いからかNE……?」

    「ええ、半分は合っています。正解はね」

     茜音沢は病的な笑みを浮かべた。

    「虫籠の虫は、餌に過ぎないんですよ。面白がって、お前たち毒虫が釣れたでしょう」

    「なっ!?」

    (まさか、この殺し合いの真の目的は……私たち暗黒金持ちをこの島に招き寄せるためか!?)

    「俺は絶対に朱音を取り戻す。生贄は、俺の自慢の生徒と、それに釣られたお前たち馬鹿な金持ちだ。全てを殺して——俺が、優勝する」

  • 88◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:38:42

    「ま、待て! 私は、君の娘が参加したデスゲームには関わっていない! そうだ、誰が君の娘をデスゲームに放り込んだのか、犯人を教えよう! この島にも来ているぞ! 復讐に協力しようじゃないか!? だ、だから命だけは……!」

     爆弾卿は生を諦めきれない。常に頭部の爆弾が爆発するかもしれないという恐怖は、この老人を、誰よりも生に執着する化け物へと成り果てさせた。

    「いいですよ、別に。どうせ全員殺しますから」

    「待て待て待て! 全員殺せば殺し合いそのものが破綻してしまうじゃないか? 願いを叶えるのは、我々暗黒金持ちなのだZO!? 私たちを皆殺しにすれば、一体誰が願いを……!」

    「そんなの、決まってます。——【管理人】ですよ」

    「だ、誰だそれは……?」

    「それでは、爆弾卿、お許し下さい!」

    「うわーっ!」

     鉄棒が振り下ろされ、爆弾卿の頭部は瞬時にミンチになった。爆弾と脳漿が混ざり合い、その場に飛び散る。

    【『爆弾卿』ボーガン・D・マイト 死亡】
    【暗黒金持ち 残り29人】

  • 89◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:39:27

    「……ふぅ。待ってろよ、朱音。お父さんが、生き返らせてやるからな」

     そして、茜音沢はどこかへと電話をかける。

    「ええ、手筈通りに行きました。では、予定通り——本部にデストラップをお願いします、管理人さん」

     かくして、真の殺し合いが始まる。
     廃校に集いし生き残った生徒たち。
     本部で殺し合いを愉しむ邪悪な怪物たち。
     怪物に使役される、多種多様な黒服たち。
     無差別に襲いかかるデストラップ。
     そして、全ての生ある者を殺すと決めた、一人の修羅。
     ただ一人、生き残った者だけが願いを叶える、かくしてここにバトル・ロワイアルが始まった。

  • 90◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:39:50

    第二回放送を終了します……!

  • 91二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 01:52:51

    こいつ…地獄を作りよった!

  • 92◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 01:54:24

    第二回放送補足
    ・生徒/金持ち&黒服/茜音沢の三つ巴です。デストラップは全員に襲いかかります。
    ・生き残った最後の一人は、何でも願いを叶えることが出来ます。
    ・同じ陣営同士でも、殺し合いは可能です。

  • 93二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 02:07:09

    もしかしなくても暗黒金持ちはもっと投げても良いのかな?
    そして管理人が誰なのか予想もつかない…

  • 94◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 02:07:39

    追加補足
    ・島から出るワープ装置は【管理人】によって改竄され、一定の条件をクリアしなければ使用できません。その条件には、生徒の首輪を所持、が含まれています。他にも幾つかの条件があります。
    ・ボスエネミー型デストラップを倒せば、ボーナスアイテムが与えられます。これは、全ての陣営に適用されます。

  • 95◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 02:15:10

    >>93

    暗黒金持ち、黒服、デストラップ、いずれも絶賛募集中です……!

    枠は金持ちは29,黒服は96あります。かなり雑に殺していく(名無しのモブは1行で10人くらい減ります)ので、そこだけご了承いただければ幸いです……!

  • 96◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 02:20:36

    30話のダイスを振ります……! 舞台は午前12時~午後2時までの中央本部です……!


    長村洋dice1d100=26 (26)

    破目囃子dice1d100=54 (54)

    田中 屍山血河dice1d100=28 (28)

    目裏晴刈dice1d100=82 (82)

    準 標dice1d100=20 (20)

    マエストロ・セピアdice1d100=31 (31)

    ペギー・ジョーダンdice1d100=51 (51)

    ティエ・レンdice1d100=31 (31)

    笛吹享楽dice1d100=26 (26)

    ジョン・ジョンソンdice1d100=47 (47)

    錠著者絵dice1d100=54 (54)

    谷淵玄夜dice1d100=57 (57)

    スーツの男dice1d100=1 (1)

    張 湖李
dice1d100=3 (3)

    茜音沢仁史(茜音沢のみ、ダイス値が低くても生存します)dice1d100=67 (67)

    他有象無象

  • 97◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 02:23:40

    以上の情報を元に、30話を作製します……!
    新たに追加された黒服&金持ちも、順次ダイスを振って放り込んでいきます。

    それでは、本日はここまでとさせていただきます……!
    連日、投下が滞り、申し訳ありませんでした……!
    また、三日間たくさんの感想やアイデア、ありがとうございます……!
    後、一、二週間で終わるとは思いますが、最期までお付き合いいただけると幸いです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 98二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 02:24:04

    ワァ…ア…たくさん死んじゃった!

  • 99二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 02:38:36

    30話は生徒たちは出ない感じなんだろうか
    黒服もだいぶ死にそうだしどうなるか…

  • 100二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 03:50:16

    デストラップ案です

    【名前】零式処刑忍者
    【説明】スーツに身を包んだ長身のアンドロイド。特殊合金で構成された機体は、さながらラピュタのロボット兵を彷彿とさせる。
    アイテムとして配布された護衛忍者の完全上位互換で、分身や瞬間移動など何でもこなせる。
    その正体は前回バトルロワイヤルのデータを元に大東亜が開発した殺戮マシーン。
    特定の条件を満たせば護衛忍者と同じく命令できるようになる。

  • 101二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 03:52:11

    あと今更で申し訳ないんですが以前自分が投げた黒服の【マエストロ・セピア】の性別を男から男装した女性に変えることって可能ですかね?

  • 102二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 07:53:50

    のづちちゃんの首輪ももしかして外せるようになってる?外すところを歯荷ちゃんに見せて覚えてもらえれば最悪ドラギモスが死んでも希望は消えないけど……

  • 10333です23/04/30(日) 08:04:42

    疑ってしまって申し訳ない……乙でした
    しかし三つ巴の乱戦が始まったこの局面で真のタイトル回収とはあまりにも熱い

  • 104二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 11:01:43

    ダイスだし偶然でしかないけどドラギモスと結って対照的だよね
    最強候補の結と最弱のドラギモス
    異能以外は普通の少女な結と異能以外も奇天烈なドラギモス

  • 105二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 11:35:57

    デストラップの強さの上限ってあるっけ?

  • 106二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 15:17:55

    明確には言われてなかったけどジジイが最強なんじゃない?
    デストラップでこれ以上強い奴が出てきても全滅エンドになりそうで怖いし…

  • 107二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 19:53:11

    このレスは削除されています

  • 108二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 19:55:42

    暗黒金持ちです

    【名前】冬爺 凛(トウヤ リン)

    【性別】女

    【外見】首元に羽毛のついた白いコートに白髪のミステリアス美女。妖艶な姿だが見ようによっては年頃の少女にも見える。30代独身。

    【趣味】貴族趣味

    【好きなもの】美少年

    【嫌いなもの】責任、弱虫な自分
    
【性格】余裕のある態度でいかにも大人の女性といった喋り方だが本性はポンコツ。
    自尊心は高いもののメンタルが弱く、追い詰められると口調が素に戻る。

    【特技】管理者権限
    
【詳細】亡き爆弾卿の親友だったため島のシステムの全権限を委任された。ただしこのことは事前に知らされておらず、権限と引き換えにバトロワの全責任を負うことになった。
    
【備考】序盤にオルランドに賭けて泡吹いて倒れてた次官殿。悲鳴が汚い。

  • 109◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 21:46:52

    本日は忙しく、明日も朝早いので、今日の投下は難しいです……! 適当にダイス振ったり諸々します……!



    >>100

    ありがとうございます……! デストラップに追加します……!



    >>101

    了解しました、まだ本編に登場していないキャラなので、大丈夫です……!



    >>105

    特に決めてないです……! とりあえず、「一撃で本部が吹っ飛ぶ」などのキャラは動かし辛いので勘弁していただけると幸いです……!

  • 110◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 21:55:52

    茜音沢が「元担任」ということで、「現担任」が居ると思い、ちょっと作ってみます。

    本編で出すかは未定です。


    現担任

    性別dice1d2=1 (1)

    1:男

    2:女

    年齢dice1d60=50 (50)

    ※22未満なら年齢不詳

    担当教科dice1d6=2 (2)

    1:国語 2:数学 3:理科 4:社会 5:英語 6:異能

  • 111◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 21:59:38

    現担任

    教師としての能力dice1d100=43 (43)

    戦闘力dice1d100=33 (33)

    生徒からの慕われ度dice1d100=34 (34)


    ちなみに担任時代の茜音沢は

    教師としての能力80

    戦闘力100

    生徒からの慕われ度70

  • 112◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:04:49

    現担任:50歳の男性数学教師。能力が低いわけではないが、茜音沢と比べるとぱっとしない。

  • 113二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 22:06:04

    悲しい下位互換…慕われ無さすぎて元ネタみたくゲームに反対して殺されなさそうだけども

  • 114◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:14:44

    終盤ですし、茜音沢朱音の設定をある程度決めます


    殺し合いに参加した年齢dice1d3=2 (2)

    ①16(高一) ②17(高二) ③18(高三)


    殺し合いでの活躍度dice1d100=46 (46)

  • 115◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:18:13

    茜音沢朱音:高校二年生の時にデスゲームに参加させられ中盤で命を落とした。

    詳しいプロフィールや殺し合いでの様子はまだ未定ということで……。

  • 116◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:28:31

    クラスメイトの家族構成を雑に決めていきます。

    設定や本編の描写と矛盾する場合は、設定や描写優先で。


    兄が居るdice6d32=13 21 8 13 23 8 (86)

    弟が居るdice6d32=17 28 16 19 32 25 (137)

    姉が居るdice6d32=1 22 16 14 4 22 (79)

    妹が居るdice6d32=13 11 19 3 26 12 (84)


    同じ数が並んだ場合は、複数人居るというこで……。

  • 117◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:36:17

    兄がいる(星峰、キルコ、篠宮、星峰、瀧沢、篠宮)
    弟がいる(麻井、結、三田、金木、ドラギモス、ねうねい)
    姉がいる(石川、里美、三田、堀木、小田斬、里美)
    妹がいる(星峰、Nek-O、金木、宇都、歯荷、ラッタッター)

    +目浦兄

  • 118◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:38:20

    家族関係

    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d100=91 (91)

    2 宇多 一郎(うた いちろう)dice1d100=71 (71)

    3 宇都 創希(うと そうき)dice1d100=4 (4)

    4 小田斬 純恋(おだぎり すみれ)dice1d100=19 (19)

    5 オルランド・テークトリdice1d100=27 (27)

    6 金輪 幹久(かなわ みきひさ)dice1d100=46 (46)

    7 金島 明宏(かねしま あきひろ)dice1d100=69 (69)

    8 篠宮 纏(しのみや まとう)dice1d100=13 (13) 

    9 芝野 貴仁(しばの たかひと)dice1d100=17 (17)

    10 新條 アキラ(しんじょう あきら)dice1d100=16 (16)

    11 Nek-O(ネック・オー)dice1d100=88 (88)

    12 パンパンパン・ラッタッターdice1d100=3 (3)

    13 星峰 灼(ほしみね あきら)dice1d100=66 (66)

    14 堀木 彩(ほりき あや)dice1d100=61 (61)

    15 マネモフル=タマネdice1d100=45 (45)

    16 三田 哲(みた とおる)dice1d100=34 (34)

  • 119◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 22:39:39

    17 麻井 涼(あさい りょう)dice1d100=76 (76) 

    18 垣根 澄花(かきね すみか)dice1d100=70 (70)

    19 金木 冥(かねき めい)dice1d100=71 (71) 

    20 姫氏原 小毬(きしはら こまり)dice1d100=69 (69)

    21 霧田 キルコ(きりだ きるこ)dice1d100=46 (46)

    22 里美 綾香(さとみ あやか)dice1d100=91 (91)

    23 瀧沢 魁(たきざわ かい)dice1d100=87 (87)

    24 千頭之 のづち(ちずの のづち)dice1d100=8 (8)

    25 ねうねい・めあめえdice1d100=100 (100)

    26 歯荷 仄花(はに ほのか)dice1d100=57 (57)

    27 文乃 あかり(ふみの あかり)dice1d100=23 (23)

    28 結 栞奈(むすび かんな)dice1d100=42 (42)

    29 目裏 雨子(めうら あめこ)dice1d100=65 (65)

    30 山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d100=16 (16)

    31 鰐淵 英利(わにぶち・えいり)dice1d100=19 (19)

    32 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d100=59 (59)

  • 120二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 22:51:10

    ねうねいちゃんの親は優しかったんだな…
    親斬り殺してる小田斬以下の奴らは何があったんだ

  • 121二次元好きの匿名さん23/04/30(日) 22:59:26

    ラッタッターと宇都の低さはもう人格形成に影響するレベルじゃないですかねぇ

  • 122◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 23:03:50

    ※さすがに父親殺してる小田桐以下は何したんだよとなるので、小田桐の19はあくまで母親との関係ということで……


    家族仲トップ3

    1位 ねうねい・めあめえdice1d100=100 (100)

    2位 石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d100=91 (91)

    3位 里美 綾香(さとみ あやか)dice1d100=91 (91)※家出前


    家族仲ワースト3

    1位 パンパンパン・ラッタッターdice1d100=3 (3)

    2位 宇都 創希(うと そうき)dice1d100=4 (4)

    3位 千頭之 のづち(ちずの のづち)dice1d100=8 (8)

  • 123◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 23:30:53

    何となくステータスっぽくしてみました

    石川 大輔(いしかわ だいすけ)
    戦闘力A+ 学力E+ モテ度B オタク度B ホラー耐性B ファッションB+ 家族仲A+(姉)

    宇多 一郎(うた いちろう)
    戦闘力D+ 学力A モテ度E オタク度A+ ホラー耐性D+ ファッションE- 家族仲B(一人っ子)

    宇都 創希(うと そうき)
    戦闘力D 学力C モテ度E+ オタク度B ホラー耐性C+ ファッションA+ 家族仲E(妹)

    小田斬 純恋(おだぎり すみれ)
    戦闘力A+ 学力C+ モテ度B オタク度B ホラー耐性E ファッションA+ 家族仲E+(E-)(姉)

    オルランド・テークトリ
    戦闘力A+ 学力B+ モテ度D オタク度C ホラー耐性D+ ファッションD 家族仲D(一人っ子)

  • 124◆xaazwm17IRZa23/04/30(日) 23:49:08

    金輪 幹久(かなわ みきひさ)
    戦闘力B+ 学力C モテ度E オタク度B ホラー耐性C ファッションC+ 家族仲C(一人っ子)

    金島 明宏(かねしま あきひろ)
    戦闘力C 学力C+ モテ度D+ オタク度C ホラー耐性C ファッションD+ 家族仲B(一人っ子)

    篠宮 纏(しのみや まとう)
    戦闘力C+(?) 学力D モテ度D オタク度B+ ホラー耐性E+ ファッションD 家族仲E+(兄兄)

    芝野 貴仁(しばの たかひと)
    戦闘力D+ 学力B モテ度C+ オタク度D ホラー耐性C ファッションE 家族仲E+(一人っ子)

    新條 アキラ(しんじょう あきら)
    戦闘力A+ 学力A モテ度C+ オタク度A ホラー耐性D+ ファッションD 家族仲E+(一人っ子)

  • 125◆xaazwm17IRZa23/05/01(月) 00:06:12

    Nek-O(ネック・オー)
    戦闘力C(?) 学力D モテ度D+ オタク度E- ホラー耐性B ファッションE+ 家族仲A(妹) 

    パンパンパン・ラッタッター
    戦闘力B+(EX) 学力D+ モテ度C オタク度C+ ホラー耐性A ファッションB 家族仲E(妹)

    星峰 灼(ほしみね あきら)
    戦闘力D+ 学力C モテ度D+ オタク度A ホラー耐性A ファッションD+ 家族仲B(兄兄妹)

    堀木 彩(ほりき あや)
    戦闘力B 学力E モテ度C オタク度D ホラー耐性D ファッションC+(EX) 家族仲B(姉)

    マネモフル=タマネ
    戦闘力B+ 学力E+ モテ度B オタク度D(EX) ホラー耐性B+ ファッションE 家族仲C(一人っ子)

  • 126二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 00:50:59

    マネモフルB+なの思ったより低い…
    と思ったけど瀕死の瀧澤に一方的にやられてたしまぁ妥当かな?
    そして現担任が登場する機会はあるのか

  • 127◆xaazwm17IRZa23/05/01(月) 01:53:20

    三田 哲(みた とおる)
    戦闘力C+ 学力E+(A+) モテ度E オタク度E+(ミステリーのみA+) ホラー耐性E+ ファッションE 家族仲D+(姉弟)

    麻井 涼(あさい りょう)
    戦闘力C+(EX) 学力B+ モテ度E+ オタク度E ホラー耐性E ファッションC 家族仲B+(弟)

    垣根 澄花(かきね すみか)
    戦闘力B+ 学力C モテ度A オタク度A+ ホラー耐性E+ ファッションE+ 家族仲B(一人っ子)

    金木 冥(かねき めい)
    戦闘力E 学力C モテ度E オタク度B ホラー耐性E+ ファッションE 家族仲B+(弟妹)

    姫氏原 小毬(きしはら こまり)
    戦闘力B 学力A モテ度A+(?) オタク度D ホラー耐性A+ ファッションC+ 家族仲B(一人っ子)

  • 128◆xaazwm17IRZa23/05/01(月) 02:07:26

    霧田 キルコ(きりだ きるこ)
    戦闘力A 学力E モテ度A+ オタク度A ホラー耐性B ファッションC+ 家族仲C(兄)

    里美 綾香(さとみ あやか)
    戦闘力C 学力A モテ度A+ オタク度B+ ホラー耐性C+ ファッションB+ 家族仲A+(E)(姉姉)

    瀧沢 魁(たきざわ かい)
    戦闘力A 学力A+ モテ度B+ オタク度A ホラー耐性C ファッションC 家族仲A(兄)

    千頭之 のづち(ちずの のづち)
    戦闘力E(?) 学力D+ モテ度E+ オタク度C+ ホラー耐性E ファッションE+ 家族仲E

    ねうねい・めあめえ
    戦闘力E(A) 学力A+ モテ度C オタク度E+ ホラー耐性D+ ファッションA+ 家族仲EX

  • 129◆xaazwm17IRZa23/05/01(月) 02:30:21

    歯荷 仄花(はに ほのか)
    戦闘力D+(B) 学力D モテ度D+ オタク度A+ ホラー耐性D ファッションD+ 家族仲C+(妹)

    文乃 あかり(ふみの あかり)
    戦闘力E+ 学力D+ モテ度B オタク度B+ ホラー耐性B ファッションE 家族仲D(一人っ子)

    結 栞奈(むすび かんな)
    戦闘力A(EX) 学力E モテ度D+ オタク度E(ホラー系B+) ホラー耐性EX ファッションE- 家族仲C(弟)

    目裏 雨子(めうら あめこ)
    戦闘力D+ 学力B モテ度E オタク度E ホラー耐性B+ ファッションD+ 家族仲B(兄)

    山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウス
    戦闘力E 学力C モテ度C+ オタク度E+(神話系A) ホラー耐性A ファッションD+ 家族仲E+(一人っ子)

    鰐淵 英利(わにぶち・えいり)
    戦闘力A 学力B モテ度E オタク度E(刀剣EX) ホラー耐性A+ ファッションD+ 家族仲E+(一人っ子)

    虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)
    戦闘力E- 学力B+(EX) モテ度E オタク度E+ ホラー耐性E+ ファッションA 家族仲C+(弟)

  • 130◆xaazwm17IRZa23/05/01(月) 02:32:05

    今日はここまでとします……!

    明日は30話の序盤だけ深夜に投下する形になると思います……!
    感想やアイデア、いつもありがとうございます……! とても助かっています……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 131二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 09:07:39

    ドラギモスの学力EXってなんだ?そんな描写あったっけ?

  • 132二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 09:45:39

    ハッカーって頭良さそうじゃない…じゃない?

  • 133二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 09:54:20

    暗黒金持ち案です
    【名前】墓蟹 毒美(ぼがに どくみ)
    【性別】男
    【外見】黒髪に緑のメッシュが入った長身のイケメン(黙っていれば)
    【趣味】お笑い芸人の公式YouTubeチャンネルを見る
    【好きなもの】東京03
    【嫌いなもの】過度なイジりや下ネタ
    【性格】少し気弱な3枚目
    【特技】これと言って無い。
    【詳細】若手故に暗黒金持ち界隈では立場が低い方で、バトロワの観戦もまだ3回目。故により偉い金持ち達とどうにかして仲良くなってコネを作ろうとしている。
    推しに入れ込みがちで、実は今バトロワにも推しがいる。あくまで「できるだけ長く生き残って、死ぬ時は派手に散って、面白いドラマを見せてほしい」程度の感情なので、わざわざ助けたりはしないだろう。
    【備考】自分の名前がコンプレックス。女みたいで気に食わないらしい。また、4つの会社の社長でかなりのエリート。

  • 134二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 17:48:51

    保守
    黒服たちが出てくるの楽しみ

  • 135二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 00:47:35

    ほしゅ

  • 136◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:09:49

    短いですが、30話①を投下します……!

  • 137◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:10:23

     茜音沢が始めた新たなるバトル・ロワイアル。
     生徒、黒服、富豪たちが巻き込まれた殺戮の宴は、しかし午前12時を僅かに過ぎた頃は、多くの者が異常に気付いていなかった。

    「何が起きたんや?」

     黒服の一人、長村洋は、傷だらけの顔を歪め、目の前に広がる凄惨な光景を睨んだ。
     頭部を潰された死体が五つ。
     判別をつけることは常人には難しいが、傭兵として数多くの修羅場を乗り越えた長松は、黒服及び暗黒金持ちの中から、一筋縄ではいかない人物の服装や体格を全てインプットしていた。
     その知識により、この死体が暗黒金持ちの中心人物の一人、爆弾卿と、彼の腹心である四人の戦闘黒服であることを理解する。

    (マエストロ・セピアの死体は無い……。別の場所で殺されたか、あるいはセピアが犯人か……。アホかい、んなわけあるか。どう考えても、これは茜音沢の仕業やわ。あの教師崩れ、裏切ったんかい……)

  • 138◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:10:54

    「面倒起こしよって……はぁ、どないしよか」

    (ただの私怨とは思えんわ。俺ら全体がターゲットか? なんでそんなことせなあかんねん。けったくそ悪い。……もしかしたら、ここが分水嶺かもしれんな。元々この催しには裏があると思っとった。今のうちに退散すべきか。けど、報酬が魅力的なのは事実や。もう少し情報を集めるか……)

     長村はインカムで他の黒服に指示を送った。

    「おい、曙から10人くらいトイレ前に回せ。特に戦闘タイプが望ましいわ。暗黒金持ちのクレーム処理は雑魚に任せればええやろ。……ああ、緊急事態や。恐らく茜音沢が裏切っとる。はよ来い」

     そんな長村の後ろに、忍び寄る影が一つ。
     足音を殺し、気配を殺し、牙を尖らせる、一匹の獣。
     デストラップ・ジャガーが、静かに長村に近づき。
     とうとう2m近い巨体を躍らせた。
     パン、と軽い音が響き、ジャガーは頭部から血を流して絶命する。
     後ろを振り返ることなく撃ち抜いた長村は、動揺する気配も無く、インカムに指示を送り続ける。

  • 139◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:11:36

    「……指示の変更や。誰の仕業か知らんが、本部にデストラップが発生しとる。まだ金持ち共には知らせるなよ。パニックになられても困るからな。10人こっちに来い。10人は全員で動いて、本部にデストラップが発生していないか報告せい。お前らでは対処できん奴がおったら必ず報告しろ。俺か他のホルダーを向かわせる」

     ホルダーとは、個性を殺すことを強要される黒服の中で、例外的に一定の自由と個性を認められた、凄腕の黒服を指す。高校生のクラス一つ、たった一人で殲滅できる実力者揃いであり、暗黒金持ちが安心して殺し合いを愉しむことができる、信頼された暴力装置である。
     長村洋もまた、その一人。数多の国に傭兵として雇われ、様々な銃器を十全に扱うことが出来る、ホルダーの中でもトップクラスの実力者である。最強の黒服であるマエストロ・セピアとも、タイマン性能ならば負けるが、戦場じみた乱戦ならば勝てるという自負があった。

    (しかし茜音沢……個人的には気に喰わんわ)

     長村洋は、垣根澄花という生徒を気に入っていた。面識こそないが、彼女はガンナーであり、銃器の取り扱いは長村から見ればまだまだ甘いが、パルクールを駆使した立ち回りは、未成年と考えれば恐ろしいものを感じた。無花果もまた、銃というどうしても威力が固定されてしまうという、対人外においてはネックとなる部分を補強する異能であり、ぶっちゃければもし垣根が優勝したら弟子にしたかった。実際生き残れそうな気配を感じていたのだが、まさかの茜音沢の介入により垣根は死亡。

    (なんやそれ、反則やないか)

     興醒めもいいところである。

    (俺の弟子(候補)を勝手に殺しやがって……。この借りは返すで、茜音沢)

     どこまでも身勝手なことを考えながら、黒服の狙撃手は、部下がやってくるのを待った。

  • 140◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:12:20

    30話①を終了します……!

  • 141二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 02:18:17

    黒服たち大半が30話で死ぬにしては個性強くて好き
    バトロワで優勝して引き抜かれた奴らもいるのかな?

  • 142◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 02:19:51

    私自身キャラを掴むために、短めの単独話を書こうかなと思います……!


    時間を置いて、30話②を投下します……!





    >>131

    ドラギモスの学力EXについては、戦闘力が他より低い分、知能は他より高い方が、キャラ立つよなという感じで、普段はB+だけど、ガチれば東大余裕的なEX判定を出しました、三田も金田一的な感じで手を抜いていますが本気出せば東大入れる的なA+判定にしました、学力でドラギモスが三田より上にしたのは、三田の方はバリツなどの他の強みがあるからです……

  • 143二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 02:49:29

    そういえば歯荷ちゃんのスマホってまだ壊れてなかったっけ?
    これから中央本部編が始まるならいろいろ面白い使い方ができそう

  • 144二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 06:29:25

    寝落ちしちゃったかな?
    続きは楽しみだけど生活に支障がないようにしてくれ…

  • 145運営23/05/02(火) 06:39:13

    申し訳ない、PCの回線死んでるので、今日はここまでとさせていただきます…!

    今夜もお集まりいただきありがとうございました…!

  • 146二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 16:46:58

    ほしゅ

  • 147二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 17:17:00

    石川が味方になりそうな時点で気にするのもあれだけど、歯荷ちゃんって里見を殺してるしそれを金木に見られてるんだよな
    下手に隠して最悪のタイミングでバレたりとかしなきゃいいけど……

  • 148二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 18:15:19

    金木と歯荷ちゃん既に共闘してるし上手いことなあなあにならないかね

  • 149二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 19:24:42

    拾わなくていい追加設定:

    金木の妹弟の名前はそれぞれ金木天(かねきそら)と金木海(かねきかい)です
    テンプレで書いた通り祖父との仲は最悪ですが、妹たちとはそれなりに良い関係を築いています

  • 150二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:10:52

    野生動物の本気がCだと考えるとBとかAとか行ってる奴らとんでもねえな……
    特にサッカー部のエースなだけなのにBの堀木くんはなんなんだ

  • 151二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:17:45

    >>150

    ダンス全種覚えてるだけのラッタッターがB+もやばい

    本文中でも言われてたがこの高校の体育会系は化け物揃い

  • 152二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:38:50

    イナイレ世界みたいな感じのサッカーだと思われる

  • 153二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 21:08:49

    黒服の戦力はどれくらいなんだろうな
    マエストロと長村、ティエレン辺りはA+超えてきそうではある

  • 154◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:12:23

    お待たせ致しました……! 本日も始めさせていただきます……!

    30話②を投下します……! 

  • 155◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:13:07

     檻の前に、三人の男女がある。
     矮躯の男、赤髪の少女、スキンヘッドの男。
     矮躯の男は、名を、破目囃子(やぶれめはやし)という。黒服・ホルダーの一人であり、小動物を支配する異能を持つ。ホルダーの中では実力は下から数えた方が早い男であり、部下の黒服からもいまいち信頼されていない、そんな男であった。
     赤髪の少女は、名を田中屍山血河という。オープニングにて殺された田中不死太郎の妹であり、あにまん高校に籍を置く異能者の一人だ。「死者を絶対に蘇らせない」という限定的だが強力な異能を有しており、また剣道部に属していることから白兵能力も高い。高校一年生にしてホルダーとして登録され、黒服を使役する立場である。
     そして、矮躯と赤髪少女に挟まれているのは、二人と比べて天と地程の権力を持つ男、豪華絢爛で高価な服を纏った暗黒金持ちの中でも更にトップクラスの資産家「鑑賞卿」ジョン・ジョンソンである。

  • 156◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:14:04

     午前11時頃から暗黒金持ちたちを楽しませていたモニターは故障しだし、金持ちたちは映らなくなったモニターに対してキレる者、昼食をとる者、トイレ休憩に行く者、気晴らしに黒服を処刑する者など、様々な反応を見せていた。
     そんな中、ジョンは二人のホルダーを引き連れ、エネミー型デストラップが封印されているとある区画に足を運んだのだ。

    「えっへっへ、あっしのイチオシはこのエネミーです。何といっても、参加者のペットでしてね。ぜひこいつに主人やその友人を襲わせて、阿鼻叫喚の地獄を作るのはどうでしょう……」

    「うーん、他のデストラップと比べると迫力負けしてませんかー?」

    「アナコンダと比べると確かに一回り小さいですが、それでも並の人間なら恐ろしいですよ……! 何よりこいつを倒してしまうと、生き残った参加者の間で亀裂が置きます……! どうでしょう、こいつの投入……!」

    「おーう、悩みますねー!」

     媚び諂うような笑みを浮かべる破目を、ジョンは一見楽しそうに、その実どこまでも冷徹に見下ろす。

    「……えへへ、破目のおじさん、駄目駄目、だね……!」

  • 157◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:14:48

    「あぁ!? 小娘があっしのアイデアにケチつける気ですかい!?」

    「こ、小娘って……身長、しぃと、変わんないじゃん……ww」

    「言ったなクソガキ!」

    「おーう、喧嘩はだめでーす。みんな仲良く、金持ち喧嘩せずでーす。そして田中さん、どうして破目さんのアイデア、駄目駄目ですかー?」

    「だってさ、千頭之先輩、もう脱落してるよ……! 放送聞いてないの? せっかく先生♡が、流してくれたのに……!」

    「ぐぬぬ……」

     破目が悔しそうに押し黙る。
     それを、ジョンは楽しそうに眺めていた。庶民が罵り合う様を観るのは、ジョン・ジョンソンの娯楽の一つである。

    「どうせ蛇ならさ……これじゃなくて……あっちの方がいいよ……!」

     そう言って、田中は、数多くの檻の中から、最も大きな、一軒家が丸々入る巨大な檻を指差す。
     その中では、何か巨大で黒ずみ、鱗を持った生き物が、とぐろを巻いていた。
     大きい。

  • 158◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:15:47

     小柄な破目や田中だけでなく、ジョンソンですら、息を呑むほど大きい。
     十五……否、二十はある。

    「ま、まったくこれだから、餓鬼は困るんですっ! 加減を知らないっ! こんなもの、会場に放てるわけないでしょう!? 人間がどうこうできるものではありませんよっ!」

    (いえ、参加者のトップ層なら戦えるとは思いまーすが……)

     ジョンソンは唸る。現在廃校の状況がどうなっているのかは分からない。が、この「ティタノボア」と呼ばれる大蛇に、立ち向かえる生徒は何人残っているのか。

    「……三年の先輩方なら、きっと何とかしますよ……新條先輩とか……あ、でももう死んでますね……」

    「とにかく、これを解き放つのは駄目ですっ! ここの管理者はあっしなんですからねっ、あっしの指示に従ってもらいますよ」

    「くすくす……はぁい……」

    (馬鹿な人たち……)

     と、田中は内心で笑った。

  • 159◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:16:40

     彼女は、知っている。
     茜音沢が、今デスゲームの範囲を、黒服や金持ちたちにまで広げたことを。
     今この瞬間、あるいは数瞬前に、爆弾卿が茜音沢によって殺されたことを。
     茜音沢から聞いて、知っている。

    (くすくす……隙を見て、ここの檻、ぜーんぶ開けたら、この人たち、どんな反応するのかぁ……)

     阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるだろう。
     田中は、それを望んでいる。茜音沢の望みは、田中の望みだ。
     田中屍山血河は、兄に愛憎入り混じる感情を抱いていた。その兄は茜音沢によって殺された。彼は田中を愛憎から救ってくれた。ならば——尽くしたい。

    (理は、崩しちゃいけないんです……! 死なない人間なんか、存在しちゃいけない……! 殺し合いの参加者は、ちゃんと殺されて死なないと……! もう黒服のおじさん達も、お金持ちの人達も、殺し合いの参加者なんだから、ちゃんと死なないと……! それが、ルール……! しぃは、ルールを破る人を許せない……!)

     茜音沢に協力し、他の黒服や金持ちを殺して回る。それが、田中屍山血河の、行動方針だった。

  • 160◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:17:17

     そして最後には。

    (先生は、愛娘を生き返らせようとしてるよね……? そんなの駄目……! 理に、反しちゃうよ。だから、しぃはね、先生に、いっぱい協力して、たくさん尽くして。
    ……最後に、その願いを絶つ! それが、しぃなりの恩返し……!)

     只の小娘と見下している破目は、田中の悪意に気づかない。
     観賞卿、ジョン・ジョンソンもまた、モニター越しでなければ異能が使えず、やはり田中の狙いに気づくことは出来ない。
     アラシと、名付けられた大蛇は、檻の中で主人の身を案じた。
     そして、そのアラシが小さく思えるほどの規格外の大蛇、ティタノボアは檻の中で静かに寝息を立てていた。

  • 161◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:18:24

    30話②を終了します、時間を頂いて、30話③を投下します……!

  • 162◆xaazwm17IRZa23/05/02(火) 22:21:22

    ★歯荷仄花のスマホ★
    ここに書き込まれたレスは、歯荷のスマホに反映されます……!
    次の登場話まで、歯荷はスマホを見て反応することは出来ません……!

  • 163二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:48:42

    またキャラの濃い奴らが出てきたな…
    そして久々の10時代更新ありがたい

  • 164二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:57:05

    ちいかわの破目おじさんと血河の田中ちゃんか…

  • 165二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 23:24:44

    もう不穏なフラグがいっぱいある〜!あっ黒服です、お収めください
    【名前】高地 鼓一(たかち こいち)
    【性別】男
    【外見】緑髪ツーブロック。ピアスを左右均等にいっぱい付けてる青年
    【趣味】体内時計を数える、メトロノーム収集
    【好きなもの】整理整頓、針の音
    【嫌いなもの】乱雑無章、音痴
    【性格】クールで礼儀正しく几帳面で神経質、所有物を勝手に動かしたりリズムを狂わされるとキレる
    【特技】調拍(メジャードライブ)
    【詳細】脈や呼吸等のリズムを感じ取り支配する異能。使用中は鼓一も連動して同じリズムになる。
    【備考】元は殺し屋で黒服に転向した。それ以外の経歴は不明

  • 166◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:24:26

    30話③を投下します……! 本日最後の投下です……!

  • 167◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:25:15

     人を殺したことは、初めてでは無かった。
     準標(みずもりしるべ)は、物言わぬ死体を見下ろす。額には銃創。これは、準が作ったものだ。そこに、準の意思はない。
     準は黒服である。
     ホルダーですらなく、名乗ることも、個性を出すことも許されない、有象無象の一人である。
     しかし、暗黒金持ちから見ればモブに過ぎないとはいえ、準にも人格がある。感情と過去がある。
     準は、今しがた射殺した男に対して、何ら殺意を向けていなかった。
     ただ、命令されたから射殺しただけである。

    「……………………(暗黒微笑)」

     桃色の髪をポニーテールで纏めた、長身の優男が、微笑を浮かべて準を見ていた。

    「名前は?(暗黒微笑)」

     モブ黒服は、名すら覚えられていない。ただ暗黒金持ちに使役する有象無象である。金持ちもまた、いちいち黒服に名を尋ねることはない。

    「あなたのお名前は、何というんですか?(暗黒微笑)」

     が、この暗黒金持ちは違った。モブである準に対して、名を求める。

    「ああ、勘違いしないでください。あなたを罰するために、名を聞いたわけではありません。殺せと命じたのは私です。あなたは忠実に、それを実行した。そこに、何の瑕疵もありません。いい仕事でした。私があなたの名を知りたいのは……今しがた殺した、父に対する手向けとするためです。父を殺した男の名を知りたい、息子として当然の感情でしょう?(暗黒微笑)」

  • 168◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:25:41

     この人は、何を言っているのだろう、と準は思った。
     殺せと命じたのは、目の前の男である。
     男。暗黒金持ちの一人。名を、目裏晴刈(めうらはるか)。参加者の一人、目裏雨子の兄である。そして、準が撃ち殺したのは、目裏雨子と目裏晴刈の父、目浦太陽であった。

    「準標です」

    「へぇ、面白い名前ですね。ええ、実に面白い(暗黒微笑)」

    変わった名前だと、自覚はしている。どこまでも標準である自分にぴったりな名前だ。

    「標準を逆さにするなんて、とても異常な名前です。よくそんな異常な名前を背負って、黒服に埋没できましたねぇ(暗黒微笑)」

    (異常……なのか?)

     そんはなずはない、と思う。
     自分は常に、標準で在り続けた。

  • 169◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:26:04

     世界の均衡を保つために、標準として存在し続けた。異常であるはずがない。
     異常者は目の前の男の方だ。いくら娘の死に心神喪失していたとはいえ、実の父親を射殺させるとは。それも命令を下したときも、父の絶命の瞬間も、一切微笑を崩さなかった。

    (俺は、標準でなければならない)

     が、この島で標準を保つことは難しい。
     ホルダーの連中も、金持ちも、そして本部の外で殺し合う生徒たちも。
     個性が強い。そして、方向性もバラバラである。バラバラであるがゆえに、偏りが無い。標準を立てる意味が無い。
     だから、準は、黒服の中に埋没した。個性の反対は、無個性である。このゲームでは、徹底して準は無個性な黒服に徹すると決めていた。
     そして、無個性な黒服であるがゆえに、準は忠実に暗黒金持ちの命令に従い、他の暗黒金持ちを撃ち殺すことになった。黒服の中で最初に、そしてもしかしたら最後の、下剋上を成した男になってしまった。無個性の結果、ホルダー以上の個性がついてしまった。
     ままならない、と準は思った。

  • 170◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:26:41

    「準標さん、あなた、私の専属黒服になりませんか?(暗黒微笑)」

    「謹んでお受けします」

     準は頭を下げる。

    「あなたがこの殺し合いでどう成長するのか、私は興味があります。将来が楽しみだった妹が死にましてね、その喪失を貴方で埋めることにしましょう(暗黒微笑)」

    (俺の成長……)

     興味はある。個性が交差するこの殺し合いの終わりを、外側から観終わったとき、自分はいったいどうなるのか。

    (俺も彼らのように……)

     モニターで観戦していた生徒たちの殺し合い。異能者や超人たちの狭間で命を燃やした常人たち。自分も、ああなるのか。

    (それは、少し面白いな……)

     準は、微かに微笑した。埋没していた黒服は、微かに羽化を始めていた。

    「あ、それはそれとして父の仇を取りますね(暗黒微笑)」

     頭部を撃ち抜かれた準は、瞬時に絶命した。

    【目裏太陽(目裏雨子の父) 死亡】
    【準標 死亡】
    【暗黒金持ち 残り28人】
    【黒服 残り95人】

  • 171◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:27:09

    「いやー、勿体ないとは思うのですが、息子として父の仇を取らなければいけないので、申し訳ない(暗黒微笑)」

     それっきり準のことなど忘れたのか、晴刈は父の死体を見下ろす。

    「お父さんにもこんなに早く引退してもらうつもりではありませんでしたが……私の妹を殺し合いに放り込んで結果的に死なせてしまったんですから、復讐をしなければならなかったんですよ、まったく(暗黒微笑)」

     だがこれで、だいぶスッキリしてきたと晴刈は思い直す。
     雨子の間接的殺人者である父は死に、その父の殺人者であるさっきの黒服は始末した。残りは……。

    「ええっと、姫氏原蹴鞠……いえ、小毬さん、でしたか。面倒ですが、兄として妹の仇を取らなきゃですよね。まだ生き残っているといいんですけど」

     モニターの復旧はまだですか? と黒服に聞く。
     もうしばらくかかるそうです、との返答に、そうですか、と肩を落とした。
     そして、目裏晴狩、他の暗黒金持ちからは「若旦那」と称される彼は、黒服の何人かに死体処理を命じ、その場を去ったのだった。

  • 172◆xaazwm17IRZa23/05/03(水) 01:30:15

    30話③を終了します……!

    今日もたくさんの感想、アイデア、ありがとうございます……! 黒服・金持ちは順次作品に反映させていくので、お待ちいただけると幸いです……! ただ、あんまり黒服編を長くやってもあれなので、30話は今週の金曜には終われるように頑張ります……! 

    それでは、本日はここまでとさせていただきます、ありがとうございました……!

  • 173二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:40:24

    目裏兄投げた人だけど一々暗黒微笑するのちょっと腹立つ感じで笑った
    このまま小毬ちゃんのところまで行く気なのかな?

  • 174二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:41:22

    乙です!どこも芽があっても生存もままならなくなってきてみんな等しく参加者だと改めて思わされるな

  • 175二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:45:58

    準くんが死んで気付いたんだけど
    30話は廃校編みたいにダイス50以下は全員死亡って感じじゃないんだな
    血河ちゃんとか長村は茜音沢にやられて死ぬと思ってたから良かった…

  • 176二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:46:28

    因縁のある人物出てくるとワクワクするね

  • 177二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 02:44:46

    姫氏原ちゃんいつもヤバイのに追いかけられてるな…

  • 178二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 03:53:11

    目裏家の倫理観はボロボロ

  • 179二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 05:34:53

    >>150

    ネックオーはC(?)表記だから石川戦で見せた状態だともっと上だと思う それだと同じくCの里見が石川とそこそこ張り合えるようになっちゃうから

  • 180二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 06:22:38

    中央本部の地形案をどうぞ

    【名前】売店
    【説明】安い駄菓子や子供用の玩具が売られている売店。ある暗黒金持ちの趣味で中央本部に置かれたらしく、運が良ければ貴重なアイテムが店頭に並ぶこともある。
    極彩色でひどく目立つ屋台は目印にもなり、落ち着いて座れるベンチもあるため待ち合わせには最適。

  • 181二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 14:18:23

    モブ黒服案です
    【名前】科葉 師智(しなば もろとも)
    
【性別】男

    【外見】丸眼鏡をかけ天然パーマで丈夫な体

    【趣味】陶芸、読書

    【好きなもの】墓、焼き物

    【嫌いなもの】孤独

    【性格】死にたがり。ただし一人で死ぬのは嫌なので道連れを探している。

    【特技】異能:地焉土(ジエンド)

    【詳細】双槍使い。奥の手として槍の間合いにあたる範囲の場所を瞬時に大量の土砂へと変えることができる。間合いにいた者は科葉ごと生き埋めになる。
    
【備考】過去バトロワの参加者。親友と最後の2人になって共に自殺を試みたが科葉だけ生き残ってしまい、優勝者として黒服にスカウトされる。眼鏡は親友の遺品。

  • 182二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 20:22:19

    ほしゅ(暗黒微笑)

  • 183二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 00:48:14

    そろそろかな

  • 184◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 01:24:53

    冬爺 凛dice1d100=71 (71)

    墓蟹 毒美dice1d100=81 (81)

    高地 鼓一dice1d100=47 (47)

    科葉 師智dice1d100=7 (7)

  • 185二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 01:38:34

    名は体を表すとは言うが

  • 186二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 01:40:05

    ウワァ…道連れだぁ…

  • 187◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 01:54:15

    墓蟹毒美の推し:dice1d32=28 (28)

  • 188◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 01:54:50

    墓蟹毒美の推し:結 栞奈(むすび かんな)

  • 189二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 01:55:27

    初手で死んでるじゃねぇか!!

  • 190二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 02:14:05

    今夜は追加組の話なのかな

  • 191◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 02:58:47

    お待たせ致しました、30話④を投下します……!

  • 192◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 02:59:44

     今日、推しが出来た。
     怪異を召喚するという異能を有した少女だった。強力な異能とは裏腹に、私生活はダメダメらしく、三枚目である自分に重なった。彼女は殺し合いの中で成長するのだろうか。墓蟹毒美(ぼがにどくみ)は、期待と共に結の活躍を見守った。
     推しが死んだ。開始して2時間保たなかった。というか一番最初の死亡者だった。

    (……よし、帰るか)

     下手に重ね合わせていた分、ショックが大きかった。殺し合いを観戦するのはこれで三回目だが、推しが出来たのは初めてで、必然的に推しが死ぬのも初めてだった。やっぱ殺し合いで推しとか作んないほうがいいな、と反省しつつ、それでも墓蟹が午後まで残ったのは、単に彼が暗黒金持ちの中では立場が弱く、帰るにしても、様々な人間に挨拶をしなければならなかったからだ。闇の世界でも挨拶は大事である。爆弾卿を始め、何人かに引き留められたが、墓蟹は家に帰って横になりたかったので、丁寧に辞退し、挨拶周りを終え、ようやくワープ装置の前へと辿り着くことが出来た。

  • 193◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:00:14

     ワープ装置は、本部に一つしかない。この装置を使わなければ、本土に帰ることは出来ず、一度ワープしてしまえば、二度と戻ることは出来ない。

    (優勝者がどうなるかとか気にならないわけじゃないけど……なんかもうどうでもいいや。後で他の人に教えてもらおうっと)

     待機している黒服に命じ、ワープ装置を作動させる。
     ところが。

    「申し訳ありません。どうやら装置が故障しているようです」

    「……えっ!?」

    「直ちに修復致します」

    「本当に頼むぜおい。治せなかったらお前ら処刑だからな!?」

     推しが死んだショックと、唯一の移動手段である装置の故障によるストレスを、墓蟹は格下の黒服にぶつける。

    「…………墓蟹さま」

    「あんだよ」

  • 194◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:00:43

    「……この故障は、どうやら人為的に引き起こされたようです。管理システムからメッセージが御座いますが、再生されますか」

    「早くしろよ」

    『こんにちは、デスゲーム管理プログラムのAkaneです。残念ながら、ワープ装置を起動させる条件を満たしておりません。①デスゲーム参加者の首輪②茜音沢仁史の死亡③生存者の数が10人より少ないこと。以上の条件を満たさなければ、ワープ装置は起動しません』

    「…………………………は?」

     今こいつ、とんでもないことを言わなかったか。

    「お、おい、管理プログラム……。質問いいか……?」

    『どうぞ』

    「デスゲーム参加者の首輪とか、茜音沢の死亡とかさ、滅茶苦茶突っ込みたいけど、一旦スルーするわ。……生存者の数が10人より少ないって、デスゲームが進行するまで帰れない。そういう理解でいいんだよな」

  • 195◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:01:10

     結が死んでからは一切モニターを見ていないが、中々白熱した戦いを繰り広げているらしい。恐らくデスゲームそのものは、一日もかからずに終了するだろう。それまで気長に待とう。
     生徒の首輪も、まぁ黒服に命じて取りに行かせればいいだろう。
     茜音沢の死亡は……黒服たちに任せればいい。

    (よ、よし、帰るのが遅くなるだけで、何も問題はねぇ……安心しろ、俺……)

    『この島の生存者が、10人を切るまでは、ワープ装置は起動しません』

    「だからそれは、今やっているあにまん高校3年1組の殺し合いが、残り10人になるまで帰れないってことだよな?」

    『ですから、この島の生存者が、10人を切るまでは、ワープ装置は起動しません』

    「……その生存者って、まさか俺達も含まれているのか?」

    『はい』

    「ふざけんじゃねぇええええええええええええ!」

     墓蟹はキレた。
     ワープ装置を蹴りつける。すぐに黒服が止めに入った。

  • 196◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:01:39

    「おやめください! 完全に壊れれば、本当に帰れなくなります!」

    「つーかてめぇら、早くこれ修理しろよ! とんだポンコツじゃねぇか!」

    「そ、それが……この装置は、誰が作ったのか、分かっていないのです……! トップシークレットでして……!」

    「そ、そんな馬鹿な話があるかよ……! 俺は、殺し合いを観に来たんだぞ……! なんで俺が殺し合いしなきゃいけねぇんだよ……! なぁおい、テメェらもそう思うだろ…………おい、ちょっと待て……」

     墓蟹は気づく。ワープ装置の傍に立つ二人の黒服。
     生存者を10人未満にすること。

    (あれ? こいつら敵じゃね?)

     使役する者とされる者の関係は崩れてしまう。共に脱出をかけた、ライバル同士。

    (ちょっと待て。俺今やばくねぇか? 黒服って、基本的に拳銃所持してるよな? 俺、丸腰なんだけど……)

     墓蟹の顔が徐々に恐怖に染まっていくことに、黒服二人も気づいた。
     二人の黒服は瞬時に目くばせする。

    (あ、やばい、俺死ぬ……)

  • 197◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:02:11

    「セレブパンチ!」

     突如、暗がりから出現した次官が、黒服を殴った。
     腰の入った綺麗なストレートは、黒服の顎を揺らし、昏倒に追い込む。

    「くっ……!」

     残った黒服が慌てて拳銃を抜こうとする。

    「セレブキック!」

     すかさずローを入れ、黒服は痛みに呻く。
     ここで墓蟹も動いた。腐ってもエリート。咄嗟の判断能力は、モブ黒服の追随を許さない。
     黒服が拳銃を使わないよう、後ろから破壊絞めにする。

    「坊や、よくやったわ………!」

     次官は、先に倒した黒服から拳銃を奪い取ると、すかさず発砲。二人目の黒服は心臓を撃ち抜かれ絶命した。
     即座に、最初に倒した黒服の頭も撃ち抜く。
     ワープ装置の秘密を知った黒服は、かくして命を落とした。

  • 198◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:02:41

    【黒服 残り94人】

    「危ないところだったわね、新参卿」

    「その呼び方はやめてくださいよ、次官殿」

     次官、冬爺凛(とうやりん)。白髪の美女であり、少女のようにさえ見える美貌で、社交界でその名を馳せている。

    「ふふ、私たち、共犯者ね」

    「ワープ装置の秘密、知ったんですね」

    「ええ、残り9人にならないと脱出出来ない……。困ったわね。私もあなたも無能力者。もし暗黒金持ちたちが本気の殺し合いを始めたら、私たちは生き残れない……なんてね」

    「何か策が……?」

    「実はね、爆弾卿が死亡したのよ……。その結果、この島の管理者権限は、私にある。これが、どういうことか、分かる?」

    「えっと、どういうことなんです?」

    「今から本部にデストラップを送り込む」

    「えっ!? そんなことしたら、俺達も死にますよ」

  • 199◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:03:24

    「私たちは襲わないように、設定すればいいのよ。残り9人になるまでデストラップで蹂躙して、その後デストラップ消して、生徒の首輪を回収に行きましょう」

    「けど、茜音沢は……」

    「オホホホホ……! デストラップ大量に送り込めば、何とかなるはずよ……! 爆弾卿が死んで良かったわ……! この殺し合い、生き残るのは私たちよ……!」

     二人の邪悪はワープ装置の前で高笑いをした。デストラップに自分たちだけは襲われない。圧倒的なアドバンテージが彼らを慢心させていた。
     故に、気づかない。

    「あー、いい加減バレたかな、いやまだっぽいな」

     血塗れの鉄パイプを振り下ろしながら、茜音沢は独り言ちる。
     周囲にはミンチになった黒服の死体が散乱していた。彼らは他の黒服に警戒を出すことなく、瞬時に肉塊と化したのだ。
     いくらデストラップに襲われないとはいえ、勿論茜音沢は例外である。
     そして。

    「悪い子はいねぇ~が~」

     「管理者」ではなく「管理人さん」によって本部に召喚された、運営の暗黒金持ちですら手出しできない怪物が、本部を徘徊している。その老人が通った先には、何も残っていなかった。茜音沢とは対照的に、犠牲者は生きた痕跡すら残せない。
     管理者権限では、この老人は制御できない。
     墓蟹毒美と冬爺凛は、自分たちがまだ安全圏にいると勘違いしていた。

    【黒服 残り74人】

  • 200◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 03:04:43

    30話④を終了します……!
    申し訳ありません、本日の投下はここまでとさせていただきます……!

    明日はもう少し早い時間に投下できるよう努力します……!
    今日も感想やアイデア、ありがとうございます……! 早期完結目指して頑張ります……!

  • 201二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:12:10

    乙でした〜!
    ジジイが入って来てる〜!!
    正体はナマハゲで来訪神だから本部に入ってこれたのかね

  • 202二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:16:52

    乙です!本部はクソでか建物っぽいからお爺の侵入は情報共有難しそうだな…

  • 203二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:19:23

    共犯だってのもあるけどしれっと墓蟹も生き残る前提で勘定してくれてるの優しいな冬爺さん

  • 204二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:19:55

    これネームド金持ちは全員〇〇卿って二つ名あるのかな
    だとしたら次官殿と目裏兄は何卿なんだろう

  • 205二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 04:16:51

    墓蟹の小物感好き

  • 206二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 05:31:02

    いないはずの場所に当然のように居る性質から老人の正体はぬらりひょんだと思ってたけど
    そういう解釈でも面白そうだ

  • 207二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 09:55:46

    保守卿

  • 208二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 16:26:30

    ほしゅ

  • 209二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:31:10

    保守代わりの黒服案です
    【名前】宇都 紀久子(うつ きくこ)
    【性別】女
    【外見】肩まで届く長い黒髪を後ろで纏め、黒いスーツを着た眼鏡の似合う美女。
    【趣味】読書
    【好きなもの】平穏
    【嫌いなもの】トラブル
    【性格】基本的に冷静沈着に行動するが、想定外の事態が起きた時はパニックに陥る
    【特技】異能無効化の異能。普通の黒服並には銃を使える
    【詳細】元デスゲーム参加者からのスカウト組。本当はトラブルが多発するため黒服として働きたくない
    【備考】デスゲームに参加した時はパニックになって1人で10人以上を殺し、優勝した過去を持つ

  • 210二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:34:01

    !?
    読みが違うし宇都くんとは関係ないのだろうか?

  • 211二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:56:29

    色んな人がキャラ投稿する系特有のおふざけネーミング好き
    科葉師智とか虎肝ドラギモス好き

  • 212二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:01:13

    それ系だとボルガダイナマイトがマジでなんの捻りもなくて一番面白かったな…

  • 213二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:25:29

    爆弾卿元ネタあったんだ……

  • 214◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 22:36:54

    宇都 紀久子dice1d100=60 (60)

  • 215二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:37:16

    >>213

    爆弾卿は>>1が付けてくれたけどキャラ自体はチャー研のボルガ博士が元ネタなんDA

  • 216二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 22:43:12

    爆弾卿の護衛黒服たちもちゃんとチャー研モチーフなんだよね

  • 217◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:19:12

    お待たせ致しました……! 本日も始めさせていただきます……!

    30話⑤を投下します……!

  • 218◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:20:14

    「そろそろモニターが復旧したかもしれやせん。戻りませんか?」
     破目の言葉に、ジョンソンは頷く。
     田中は慌てた。
     破目はともかく、ジョンソンは黒服が傍に居ないこのタイミングで処理しておきたい。
     装備している刀を握る。本来黒服の基本装備は拳銃だが、一部のホルダーは得意武器の携帯を命じられている。田中の場合は日本刀だ。

    (鰐淵先輩ほどじゃないけど、私も剣士の端くれ……さっさと斬り殺しちゃおうかな……)

    「ふーむ」

     と、ジョンソンは唸った。

    「まだ早いでーす、田中嬢―」

    「え!?」

    「茜音沢のゲーム、私も知ってまーす。優勝したら何でも願いが叶う、面白いでーす。私、一度でいいから、観客ではなく選手やってみたかったでーす」

    「う、嘘……ジョンソン様も知ってたの!?」

    (わ、私だけじゃなかったの……!? 先生の浮気者!)

    「いったいお二人は何の話をしているんですか……? あっしだけ蚊帳の外は止めてくださいよ」

    「おーう、破目さんにも後で教えてあげまーす、今とてもクールなゲームがここで始まっていまーす。私たち、チームを組みませんかー? 私、たくさんの黒服動かせまーす、田中嬢はサムライでーす」

    「……いいですけど、破目さんと組むメリットありますか……?」

  • 219◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:20:54

    「おーう、ミスター破目は、小動物を操れまーす、鼠を操作すれば斥侯に便利でーす、大事なのは能力をどう使うかでーす」

    「な、なるほど……」

     去年まで中学生だった田中は、すっかりジョンソンの話術に呑まれる。

    「で、ですから一体何の話なんですか!? ゲームって、何なんです……!」

    「外と同じでーす、生き残りをかけたサバイバルゲーム、バトル・ロワイアルでーす」

     数多の殺し合いを鑑賞してきたジョンソンは、澱んだ目を二人に向けた。
     ジョンソンは、殺し合いを熟知している。どうすれば生き残れるのか、どんな人物が生き残りやすいか、知り尽くしている。
     情報を制する者が全てを制する。ならば多数の黒服を抱え、小動物を操れる破目、あにまん高校に在籍し、茜音沢の弟子の一人である田中を有したこのチームは、情報戦で一歩リードしている。

    「私たちの強敵になりえるのは爆弾卿と、ミスター茜音沢でーす。他の勢力を仲間にしつつ、この二人をぶつけましょーう」

  • 220◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:21:32

     ジョンソンの迫力に押されたのか、二人の黒服ホルダーは、顔を青ざめさせて、一歩後ろに下がった。

    (ふふふ、まるで映画スターになった気分でーす)

     観賞卿は気分を良くし、自らが主役であるこのゲームの、次の展開を考え。
     上から降って来た巨大な顎に丸呑みにされた。

    【ジョン・ジョンソン 死亡】
    【暗黒金持ち 残り27人】

    「ワァ……檻が空いてる……!」

     破目が引き攣った声を出した。
     様々な危険生物……デストラップたちが収容されていた檻が次々に解除され、多種多様な猛獣、あるいはそれ以上の怪物たちが解き放たれていく。
     ひときわ巨大な蛇の怪物、ティタノボアは人間サイズの舌をシャラララ……と出しながら、次の獲物を見定める。
     ジョンソン一人では、とうていこの巨大生物の空腹を満たすことは出来なかったのだ。

    「何とかなれーっ!」

  • 221◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:22:12

     破目は、咄嗟に周囲の小動物を集合させた。自分より小さい動物は、操作対象に含まれる。蠍や蜂といった小型だが危険な生物や、ハイエナや野犬といった破目よりは若干小さいが、十分に人間を殺傷できる動物。それらが破目を守るために集合する。
     一つ一つは弱くても集まれば凶悪な集団となる。剣道部の田中でもこの数を相手にしたくはない。三年のエース陣ならばともかく、一年の田中では敗北の可能性も十分にあり得た。

     おお! 破目がちいさくて可愛い生き物と一緒にティタノボアに呑まれていく! 一塊に集まったせいで餌と認識されたんやっ!

    【破目囃子 死亡】
    【黒服 残り73人】
    【小型生物タイプのデストラップ ほぼ全滅】

     その隙に田中は気配を殺し、デストラップ収容室を脱出していた。

    (始まっちゃった……。とりあえず適当に出会った人斬殺しながら、先生探そっと……)

  • 222◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:22:47

     解き放たれたデストラップたちが次々に黒服を襲っていく。黒服も応援を呼びながら拳銃で対応しようとする。しかし戦闘系が居ないためか、次々とデストラップの餌食になっていく。
     田中はデストラップの少ない方へ逃げた。

    「おい小娘、状況を説明しろっ、一体何がどうなって」

    「邪魔ですぅ」

     通りすがりに黒服の首を斬り落とす。
     他の黒服が慌てて拳銃を出そうとするが、あまりに遅い。
     瞬く間に、黒服の死体が積みあがっていく。

    「先生……今、しぃが会いに行くからね……」

    【黒服 残り53人】

  • 223◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:23:30

    30話⑤を終了します……!
    時間を置いて、30話⑥を投下します……!

  • 224二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:24:48

    あらかじめ説明されてたとはいえ
    モブ黒服がサクサク死んで笑うしかない

  • 225二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:25:53

    えげつねぇ…黒服が一気に半分減ったな…

  • 226二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:26:34

    ワァ…死んじゃった…!!

  • 227◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:29:08

    正直100人は少なすぎたかもしれないという思いと、余っても困るしという思いと、心が二つある~!

  • 228◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:37:58

    30話⑥を投下します……!

  • 229◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:38:30

     インカムから聞こえてくるのは、黒服たちの悲鳴混じりの報告。
     デストラップが大量に放たれたようだ。
     それらの情報を、黒服は自らの主、錠著者絵(じょうちょものえ)に伝えた。

    「おほほほほほ……茜音沢ちゃん、とうとう始めたようザマスね……!」

     赤いドレスに縦ロールという古き良き金持ちスタイルを体現したこの女は、事前に茜音沢からルールを聞いていた。

    「目の上のたんこぶだった他の金持ちを消すチャンスザマス……! さぁ、私たちも討って出ますわよ……!」

     そう言って、私兵の黒服10人を引き連れ、錠著は廊下を練り歩こうとし。

    「脱出出来るのは9人ザマス……! 一人多いザマス……!」

     即座に拳銃で私兵の黒服一人を射殺した。

    【黒服 残り52人】

  • 230二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:38:33

    早くない!?

  • 231◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:38:50

    30話⑥を終了します……!

  • 232◆xaazwm17IRZa23/05/04(木) 23:40:11

    時間を置いて30話⑦を投下します……!

  • 233二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:53:44

    わかっちゃいたけど金持ちクソばっかだな!!!

  • 234二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:55:13

    一人くらいカッコいい金持ちがいても良いと思うんだよね

  • 235二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:57:56

    むりやりに連れてきた学生たちが殺し合ってるの観て楽しんでる奴らが格好いい訳ないっすよ
    忌憚のない意見ってやつっす

  • 236二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:09:34

    暗黒金持ちはその名の通りお先真っ暗で救いのない奴等なんだ…数を補うのに使えそうな黒服ですので増えたのもモブとして遠慮なく御即殺してください
    【名前】九龍(クーロン)
    【性別】不明
    【外見】紫のロングストレート、能面で顔を隠している
    【趣味】剣玉やヨーヨーやDIYなど色々やってる。変装もや武器の扱いも一応。
    【好きなもの】丸い物
    【嫌いなもの】棘棘しい物
    【性格】無口だが言われたことにはしっかり従う、もし襲われた場合にはやり返したり抵抗する。
    【特技】自分を増やせる。数を補うのに便利。本体の括りもなく分身体から増やせるが周囲に自分がいなくなったときだけ使える。上限は不明で誰が本体かもう分からない。
    【詳細】裏社会や表社会問わず様々な所で目撃される人間。多趣味かつ器用故に場所を選ばず活躍できる。
    【備考】デスゲームにいるのは派遣された分身体

  • 237二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:16:23

    >>235

    困った…正論すぎてぐうの音も出ない…

  • 238二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:23:22

    デストラップ案です。悪ノリ失礼します…。

    【名前】ボーガン・ダイナマイト
    【説明】爆弾卿そっくりに作られた人間ロボット。死ぬ直前まで記憶を持っており本人は自分がまだ生きていると勘違いしているが、その体内には大量の火薬が!少しでも火気に触れると周囲を巻き込んだ大爆発を起こす。
    この爆発に異能の力は含まれていない。

  • 239二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:36:07

    >>238

    これを作ったのが爆弾卿でも爆弾卿じゃなくても趣味が悪すぎるだろ

  • 240◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:39:12

    30話⑧を投下します……! 本日最後の投下です……!

  • 241◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:40:04

    「何をしているアル?」

    「なんや、アンタかい」

     長村は単身現れた黒服ホルダー、ティエ・レンに視線を向ける。

    「見りゃ分かるやろ。爆弾卿と、配下のホルダーたちが殺されとる。十中八九、犯人は茜音沢や。やから黒服を集めてあいつの身柄抑えに行こうと思っとったんやが……」

    「デストラップが本部に表れて黒服を襲ってるアル。そのうち金持ち共にも被害いくネ。その前に面倒だけど駆除ヨロシ」

    「……たぶんそれも茜音沢の仕業や。けったくそ悪いわ、ほんまに」

    「だったら/話は/簡単です。デストラップを/駆除しながら/茜音沢を/探せばいいのです」

     その場に表れた三人目の黒服ホルダー。高地鼓一(たかちこいち)。元殺し屋という異例の経歴を持つ男。
     狙撃手、崩拳使い、殺し屋。ホルダーの中でも最上位の実力者がこの場に集っていた。

    「……せやな。タイマンならともかく、三対一なら茜音沢も怖くないわ」

    「俺はタイマンでも問題ないネ。銃使いは弱虫。かっこ悪いヨ」

    「殺せない/人間は/いません。ですが/三人の方が/取れる手段が多い」

     三人の強者は悠々と歩き出した。



     黒服たちの死体を踏みながら、三人はデストラップを駆除していく。
     イノシシの頭を撃ち抜き。

  • 242◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:40:38

     コモドドラゴンの心臓を打ち抜き。
     羆の心臓を止める。
     黒服たちを蹂躙した猛獣たちが次々に駆除されていく。

    「生き残った奴らはVIPの皆さんの護衛に行けや。おっても邪魔なだけやで」

    「どれだけ集まっても茜音沢の前ではカスに過ぎないネ。それにしても、獣の相手はもう飽きたヨ」

    「私も/動物虐待は/趣味ではありません」

    「報告によれば、バカでかい蛇がおるらしいが……お、あれやないか」

     そう言って、長村が指差した先には、暗がりで息を潜めていた大蛇、アラシだった。

    「確かに大きいけど拍子抜けアル。さっさと駆除するネ」

    「ええ/私は/早く/茜音沢と/殺し合いたい」

    「シャ、シャア…………」

     主人の首から引き離され、狭い檻に閉じ込められ、アラシはすっかり弱っていた。

  • 243◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:41:12

     デストラップとして冬爺に開放されても、アラシは他の生物のように人を食べる気にはなれなかった。
     どうすれば帰れるのか。わけもわからず、暗がりに隠れていたのだ。
     目の前の三人の人間。いずれも生物として自分より遥かに強いことが分かる。
     主人が通っていた学校にも、強い生き物はたくさんいた。
     主人と同じ学生という身分でありながら、猛獣に匹敵、あるいは凌駕する凄まじさを感じた者もいた。
     そして、目の前の三人は、それらのクラスメイトを更に凌駕した圧の強さを感じる。
     主人と再会できずに、死ぬわけには行かない……。恐怖を押し殺し、アラシはその場を逃げようとする。

    「おっと、逃げんなや蛇」

     長村は面倒そうに銃口を向ける。

    「悪い子は居ねぇがぁ~」

     突如、三人の前に翁が出現した。
     枯木のような老人が、空洞のような眼で三人を見る。

  • 244◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:41:50

    「アチャー、VIPが出てきちゃったネ。爷爷(お爺さん)、ここは危ないから下がるネ」

    「待てや、今回のVIPにこんな爺さんおらへんぞ」

     長村の言葉にティレ・レンと高地は一気に警戒心を高める。

    「まさか/これが/廃村の老人ですか?」

    「やとしたら厄介やな、帳が1ダースほど消されとるぞ」

    「それくらいのことは俺にも出来るネ。強いかどうかは、そいつの筋肉見たら分かるヨ。この老人、筋肉全然無いヨ」

     ティレ・レンは一気に踏み込んだ。
     『崩拳』。中国拳法を極めたティエ・レンの奥義である。
     拳が直撃した翁は、体に大穴を開け、天を仰いだ。

    「やっぱり雑魚ネ。俺の相手は茜音沢が相応し……ぐっ!?」

     突如、ティエ・レンの首に白いワイヤーのようなものが絡みつく。
     意外! それは髪の毛っ!

  • 245◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:42:19

    ティエ・レンが力任せに引きちぎろうとするが、彼の膂力を持ってしても、びくともしない。というより、力が上手く伝わらない。

    「ふ、ふざけるな……爺……」

    「おじゃまします」

     と、言うやいなや老人はティエ・レンの口の中に飛び込んだ。
     ティレ・レンは白目を剝き、口から泡を吹いた。
     そして、ティレ・レンは急速にその肉体を枯らしていく。細くしなやかな筋肉は枯木のようになり、肌は罅割れ乾いていく。髪は瞬時に抜け、白髪に生え変わる。
     そして、その場にはティエ・レンの服を纏った老人が出現した。

    「うおおおおおおおおおおおお! 調拍(メジャードライブ)!」

     高地は彼らしからぬ狼狽した声を出しながら異能を発動した。相手の脈拍・鼓動を支配する、殺しに最適な異能。やろうと思えば、相手を心臓麻痺で始末できる。高地は身の危険を感じ、直ちにティレ・レン/老人の鼓動を止めにかかる。が

    「馬鹿なっ! こいつ、心臓が無い!」

     既にティレ・レン/老人は、通常の人体構成で測れる存在ではなかった。
     そして

  • 246◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:42:50

    「崩拳」

     翁の拳が高地に当たる。
     身体能力は人間の域を出ない高地はこれを躱すことが出来ず、また耐えることも出来ない。
     一撃で全身を崩壊させ、高地は死亡した。
     それを見届けることなく、長村は全力でその場から逃げていた。

    「くそっ! 戦力を見誤った! 俺らは物理特化や! 怪異殺しや異能殺しの奴を呼ばな……」

     曲がり角を曲がった瞬間、長村の体は巨大な蛇の顎に呑まれていた。
     ティタノボアはまだ腹二分目なため、次の餌を探しに行った。

    【長村洋 死亡】
    【ティエ・レン 死亡】
    【高地鼓一 死亡】
    【黒服 残り51人】

  • 247◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:43:44

    30話⑧の投下を終了します……!

  • 248二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:44:24

    怒涛のスピード感で笑う

  • 249二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:47:03

    アラシが死ななくてよかった

  • 250◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 00:52:14

    本日はここまでとさせていただきます……!

    生徒が登場しないパートが続き申し訳ありません……! 遅くても来週からは再び視点を生徒に戻そうかなと考えています……!

    黒服ですが、基本的に拳銃を所持していますが、戦闘経験がある黒服は少ないという設定です。カイジの黒服をイメージしていただけると助かります……!

    生徒と比べて運営側の描写が色々雑なのは申し訳ないです……! 一人一人掘り下げるとそれだけで一か月かかってしまいかねないので……! 今日退場した三人のホルダーも、実力はクラスの上位層と互角あるいは上回る強者という設定です……! 

    今日もたくさんの感想やアイデアをありがとうございます……! なるべく反映していきますが、ダイスや展開次第では反映できない可能性もあります、ご了承いただけると幸いです……!

    それでは、本日もありがとうございました……! 明日もなるべく早く始めます……!

  • 251二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 00:57:26

    お疲れ様でしたー!
    明日はどうなるかな

  • 252二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 01:00:26

    お疲れ様でした!
    なんかこの世界の人間全体的に強いな?

  • 253二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 01:00:56

    乙です、上位層がこうも死ぬなら本部は今の生徒達には最悪の地獄なんだな。このまま向こうが逝ってくれればいいんですが…!

  • 254二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 01:03:45

    上位陣とジジイと茜音沢が争って共倒れになって、結果的にいいバランスになりそう

  • 255二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 05:09:44

    鰐淵の戦闘力がAだから血河ちゃんがB〜B+くらいだと考えると、大体の生徒たちはモブ黒服程度なら瞬殺かも知れないね

  • 256二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 10:07:48

    ほし

  • 257二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 15:11:48

    保守

  • 258◆xaazwm17IRZa23/05/05(金) 19:33:12

    九龍(クーロン)dice1d100=42 (42)

    増殖人数dice1d100=5 (5)

  • 259◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:03:25

    お待たせ致しました、本日も始めさせていただきます……!

    30話⑨を投下します……!

  • 260二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:03:59

    待機
    30話はどう終わるのかな
    そろそろ茜音沢の本気が見られるんだろうか

  • 261◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:04:07

    「……今、最も弱い者は誰だ?」

    暗黒金持ちの一人、【扇動卿】谷淵玄夜(たにぶちげんや)に問いかけられ、黒服ホルダーの一人、【異能殺し】宇都紀久子(うつきくこ)は言葉を詰まらせた。

    (そんなの、アタシでしょうが…!)

     暗黒金持ちに生殺与奪を握られ、個性すら与えられない黒服。紀久子はホルダーであり、ある程度の自由を与えられているが、それでもホルダー内では格下・便利屋扱いであり、その地位は低い。目の前の暗黒金持ちの中でも上位に位置する男に比べれば、塵のような立場だ。

    (でもなぁ、アタシって答えるのが正解なのかしら……ああもう、わかんねぇ……デストラップが勝手に逃げ出してるって言うし……意味わからん……帰りてぇ……)

    「……どうした? 分からないのか?」

    「……強いて言えば、ホルダー未満の黒服……でしょうか。絶対強者であるVIPの皆さまは最上位としまして、殺し合いを行う生徒たちも粒ぞろい、とても弱者とは表現できません。ならば、拳銃も碌に扱えぬ黒服こそが、最も弱き者かと……」

  • 262◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:04:50

    (ホント、あの高校生共何なんよ……あいつらと同じクラスメイトになった凡人に同情するわ)

     そう言えば、自分と同じ苗字(読みは違うが)の少年が、凡人なりにけっこうなキルスコアを上げていた。何とはなしに応援していたが、結局死んでしまった。まぁ凡人なんてこんなものである。

    (宇都くん、お姉さんからのアドバイスよ。発狂するのが早い。最終盤で裏切っていれば優勝もありえたでしょうに)

     まぁいいか、ともう死んだ生徒のことは忘れる。

    「……それは間違いだ」

     と、谷淵は言った。

    「黒服は、弱者ではない。……何故なら彼らには、首輪が無い。逃げようと思えば、いつでもワープ装置で逃げられる。自由がある者を、弱者とは言えまい」

    (何を言っているのかしら、このフードのおっさん。権力者が集まるこの場所から逃げたら、本土でどんな目に遭うか……ああ、恐ろしい)

     もし黒服が自由になろうと思うならば、あらかじめこの地の暗黒金持ちを皆殺しにする必要があるだろう。

  • 263◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:05:23

    (ん? あれ? この考え、悪くないかも……)

     不遜なことを考える紀久子には気づかず、谷淵は持論を語る。

    「この場で最も弱い者……それは、強制的に殺し合いを行わされている生徒たちだ。なんて可哀そうな生き物だ。彼らには首輪をつけられ、逃げる自由すらない。……だから俺は、生徒を助けることにした」

    「はい?」

    「今、歯荷仄花のスマホに向けて、メッセージを送っている。……この情報をどう活用するかは、あいつら次第だが、ククク、面白いことになるぞ」

    「え、そんなこと勝手にしていいんですか?」

    「スマホに何を書き込もうが、俺たちの自由だ。懸念があるとすれば、すでに歯荷仄花が死亡している可能性だが……何、誰かがスマホを拾っているだろう」

     モニターが故障して以降、廃校の様子は暗黒金持ちには伝わっていない。死亡者は首輪の表示で理解しているが、現在どういう状況なのか、暗黒金持ちにも分からない。石川・マネモフルといった危険人物が生き残っている以上、放送で名前を呼ばれていない生徒も、今この瞬間生きているかは未知数である。

    「……最悪、俺達で迎えに行くか」

  • 264◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:05:46

    「え、冗談ですよね?」

    「……ククク、お前は異能殺し。異能者の生徒など、いい鴨に過ぎないだろう?」

    「いや私、フィジカル強い系は天敵なんですけど……今生き残ってるのそういう奴多くないですか?」

     石川とかマネモフルとか堀木とか。三田も無理だし、歯荷も異様に強くなってしまった。他のメンツも異能抜きの銃撃戦になったら紀久子は死ぬしかない。

    (行きたくねぇー!?)

     もういっそこいつ撃ち殺して逃げようかなと考えている紀久子には気づかず、谷淵はククク……と笑みを浮かべた。

  • 265◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:07:26

    30話⑨を終了します……!

  • 266◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:07:49

    時間を置いて30話⑩を投下します……!

  • 267二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:09:15

    こう見ると暗黒金持ちの中にも事前情報をもらってる奴とそうじゃないのがいるんだな

  • 268◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:37:25

    30話⑩を投下します……!

  • 269◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:38:06

    (僕は変わった)

     科葉師智(しなばもろとも)は涙を流していた。
     彼は感動していた。モニター越しに見たあにまん高校3年1組の殺し合い。
     それは、親友を失って以来土くれのようになっていた彼の心を温かく溶かしていた。

    (親友に恥じない生き方をしよう。人を道連れに死ぬなんて、そんな後ろ向きなことは止めよう)
     科葉はそう決意しながら、襲いかかるデストラップを自らの操る二槍で次々に駆除していく。
     性格は後ろ向きだが、彼は殺し合いの生き残りであり、ホルダーである。ただのデストラップに負けるような男ではない。
     次々とデストラップを駆除した科葉は、暗黒金持ちの安否を確かめるべく、会議室を開いた。
     そこには、数人の暗黒金持ちが談笑していた。

    「皆さん、ここは危険です! お逃げください」

    「何だとこいつ? 黒服のくせになまいきだな」

    「私たちに命令なんて、いい度胸ね」

     暗黒金持ちは、例えホルダーといえど、科葉の態度が気に喰わなかったのか、口々に抗議を始める。

    「まぁまぁ皆さん、彼の言うことも一理あるんDA」

     そう言って、爆弾卿は彼らを宥めた。

  • 270◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:38:39

    (爆弾卿……!? 長村さんの連絡によると、彼は死んだはず……! そうか、頭の中に爆弾が……!)

     科葉は爆弾卿を槍で突き刺した。

    「ぐわっ! 何をするんDA!?」

    (やはりそうだ! 普通なら即死するはず……! だがこれなら……)

     科葉は爆弾卿を槍で串刺しにしたまま会議室を後にした。

     ◇

    「爆弾卿、あなたは殺されたんです。そして人型ロボットに改造されたんだ」

    「科葉くん、いったい何を言っているのかNE!?」

     人型ロボットの言葉を無視し、科葉は鍛えた健脚で本部を駆ける。
     そして、目当ての人物を幸運にも見つけることが出来た。

    「ああ……? 何でそいつが生きて?」

    「ボルガ博士、お許しください!」

    「うわー!」

     爆弾卿を串刺しにしたまま、科葉は槍を投げた。

  • 271◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:39:10

    ホルダーの筋力で投げられたそれは、弾丸のような速度で茜音沢に届き。
     ——爆発が響いた。

    「可愛そうなボルガ博士……」

     爆炎を見ながら科葉はそう呟く。
     次の瞬間、彼の頭部は粉みじんに吹き飛んでいた。

    「あーあ、とうとう棒が駄目になっちまった」

     へし折れた鉄棒を見ながら、茜音沢は苛立たし気に呟く。爆風による火傷が身体の至る所に出来ているが、修羅の闘志は以前衰えていなかった。

    「貰っとくぜ、これ」

     そう言って、科葉の死体から、槍を回収する。
     そして茜音沢は、再び殺戮を開始した。

    【科葉師智 死亡】
    【黒服 残り50人】

  • 272◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 00:39:44

    30話⑩を終了します、時間を置いて30話⑪を投下します……!

  • 273二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:40:49

    もうボルガ博士って言っちゃってるのよ

  • 274二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:43:24

    人違いにもほどがあるだろ

  • 275二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 00:48:53

    ボーガン爆弾が結局何だったのかも分からないの草

  • 276二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 01:12:08

    廃村編以来のギャグ回

  • 277◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 01:29:53

    30話⑪を投下します……! 本日最後の投下です……!

  • 278◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 01:30:49

     物置のような部屋で、スーツの男が何者かと通話をしていた。顔を布で隠していることから、個性を許された存在……ホルダーであることが分かる。しかし、それ以外の情報は、誰一人、暗黒金持ちですら所有していない。名前も不明、経歴も不明、気づけば黒服の中に混じっていた。
     人は彼を、スーツの男と呼ぶ。
     スーツの男は、何者かの指示を聞いているようだった。その表情は布に隠れて伺い知れない。
     やがて、通話は終わり、スーツの男はスマホをポケットに戻す。その時、一瞬垣間見えた画面には「管理人」と記されていた。それが何を意味するのか、スーツの男は語らない。
     彼は物置から出ようと、ドアノブを回した。
     その時、手首に痛みが走った。

    「…………?」

     スーツの男は自らの手首を確認する。
     針が刺さっている。

    「………………」

     スーツの男はその場に倒れた。
     針には猛毒が塗られていた。本来廃校に用意されていたはずのデストラップが、いかなる因果かこの物置に仕掛けられていたのである。

    【スーツの男 死亡】
    【黒服 残り49人】

  • 279◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 01:31:26

    30話⑪を終了します……!

  • 280◆xaazwm17IRZa23/05/06(土) 01:36:14

    本日はここまでとさせていただきます……!

    実は1週間で終わらせると考えていた頃は、一週間過ぎたら今くらいのペースでどんどん退場させていこうと考えていました……しかし、思った以上に温かい感想をたくさん貰い、ある程度キャラを掘り下げてから退場させる方針に切り替えました……! ありがとうございます……!

    金曜で30話を終わらせる予定でしたが、もう少しかかります……今週中には終わらせられるよう頑張ります……!

    今日もたくさんの感想ありがとうございます……! とても励みになります……!
    それでは、ありがとうございました……!

  • 281二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 01:42:12

    乙でした〜!
    そろそろ終盤に突入ですね〜

  • 282二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 02:07:21

    乙です、何だかんだ続いてきましたね…!

  • 283二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 04:03:36

    ここから
    血河戦→マエストロ戦→ジジイ戦→石川・ドラギモ戦
    とこなすべき戦闘が多すぎる茜音沢の明日はどっちだ

  • 284二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 09:51:17

    使われなかったデストラップを性懲りも無く再投稿
    実は異次元に飛ばされるうんぬんよりもこっちの効果のほうがメインだったので

    【名前】13階段Ⅱ
    【説明】使われることなく破壊された学校の怪談…の蛇足的な続編。「13段カウントすると、死者の彷徨う異次元に飛ばされる」という異能も本体が破壊された上に本部へ召喚されたことで変質しており、階段問わず廊下や室内にもランダムで出現する。
    「何かをカウントし始めると13まで止まらなくなり、無理して止めなかった場合この世に未練のある死者を呼び出す」というものに変わった。

  • 285二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 10:29:10

    >>283

    石川や瀧澤を見るにこの世界は連戦による疲労や怪我がかなり大きなデバフになり得るし、生徒たちのところに着く頃には全員でかかればギリいけないこともないくらいになってるかも 現状勝ちの目が見えないけど

  • 286二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 12:24:42

    読んでいたら金持ちを作りたくなりますね、まだ枠っていりましたっけ?流石にこれ以上増やすのは厳しい?

  • 287二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 18:54:30

    保守

  • 288二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 19:47:23

    結局、茜音沢の娘をデスゲームに巻き込んだ金持ちって誰なんだろうな

  • 289二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 00:31:39

    そろそろかな

  • 290二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 02:36:07

    保守がてらに残ってる主な複線まとめ
    忘れてるのがあったら皆さんも教えてください…


    姫氏原の過去と悪霊の正体

    堀木の過去と正体

    アラシは主人のもとへ帰れるのか

    ジジイはどこから来たのか

    ”管理人さん”の正体

    墓蟹毒美=BOGAN・D・OKUMIで爆弾卿の隠し子説

  • 291二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 02:40:22

    >>290

    最後ちょっと待てや

  • 292二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 02:44:59

    >>291

    爆弾卿の親友らしい冬爺さんが、彼の死後すぐに墓蟹を助けに来てるんだよね、繋がったな…

  • 293◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:45:46

    お待たせ致しました……30話⑫を投下します……!

  • 294◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:46:48

     田中屍山血河は、売店前のベンチに腰掛け、タルトレットを食べていた。黒服を支給された日本刀で斬りまくり、僅かに疲労が溜まっていたのだ。ヘーゼルナッツチョコクリームが舌を甘やかす。

    (そう言えば、昔おにぃとしぃで駄菓子屋行ったっけ……。いつの頃だったかな……)

     自分が幼稚園の年中か年長だった頃なので、不死太郎は小学一年か二年の頃だろう。あの頃は、異能絡みの確執も無く、仲が良かった気がする。
     不死者と不死殺し。
     世界に対して多大な貢献が出来る兄と、不死者を殺す以外能の無い妹。
     異能は人生を左右するというが、兄妹でこうも違うのは何故なのか。
     どうして不死の兄妹ではないのか。
     どうして二人とも不死殺しではないのか。
     どうして……普通の兄妹になれなかったのか。
    「……むにゃ、くだらない……」
     既に不死太郎はこの世にいない。二度と生き返らない。

  • 295◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:47:22

     亡くなった兄について考察しても時間の無駄だ。
     田中屍山血河は、そこで兄への思考を打ち切った。疲れもとれたし、再び黒服殺しに戻ろう。
     本部に設置されている売店は、ただの駄菓子屋ではない。暗黒金持ちの趣味か、あるいはこういった事態が最初から想定されていたのか。飲食物や嗜好品の他に、武器を始めとしたアイテムも販売されている。
     田中屍山血河は財布の中身が心もとなかったので店舗スタッフだった黒服を殺してアイテムを奪った。必要だったのは、新しい刀。黒服を10人以上斬り殺したため、刀はすっかり切れ味が落ちてしまっていた。

    (鰐淵先輩みたいに、刀の目利きは出来ないけど……何となくこれは名刀っぽいかも)

     刀を鞘から抜き、蛍光灯の灯りを移す。
     支給された日本刀が量産品なら、これな中々の業物だ。切れ味も違うだろうし、切れ味もすぐには落ちないだろう。

    (そろそろ行こうかな……でも、もう一つお菓子を食べても……)

     一旦休憩を始めると、中々腰が上らない。

  • 296◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:48:02

     服もすっかり血で汚れてしまったので、シャワーも浴びたくなってきた。

    (駄目だなぁ……どうせまた汚れるんだから、全部終わってからでいいのに……)

      後、10秒数えたら立ち上がって殺し合いに戻ろう。
     そう考え、田中は数を数え始める。

    (10,9,8,7,6,5、4……)

    「なぁ、お前に一つ聞きたいことがあるんだが」

    「……!?」

     まったく気づかぬうちに、隣に座っている者がいた。
     黒いベールで顔を隠した黒服。ベールには田中の知らない何らかのマークが描かれている。

    (マエストロ・セピア……!)

     曰く、最強の黒服。曰く、爆弾卿の懐刀。曰く、茜音沢と互角に渡り合った存在。
     数々の伝説は、この数時間で田中は何度も耳にしている。

    (参ったな……しぃの勝てる相手じゃない……)

     伝聞だけなら、盛っているだけの雑魚、という可能性があった。

  • 297◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:48:39

     しかし、いざ近くに相対(一緒のベンチに座っているので並列といった方が正しいのかもしれないが)すると、醸し出す威圧感が尋常ではない。鰐淵を始めとする剣道部エース級、否、これはもしかしたら、茜音沢にさえ並ぶのかもしれない。

    (ええ、どうしよ……。この人の相手は、せんせに任せるつもりだったんだけどなぁ……)

     ひとまず、戦闘はまだ始まっていない。というかセピアは始めるつもりがないように思う。

    (もしかして、情報収集したいのかな……。せんせの場所を教えてほしいのかも。私、せんせの教え子だし……どこにいるかは知らないけど)

     ひとまず、生き残ることに最善を尽くそう、と田中は決意する。戦うのは最後の手段だ。もし戦闘になれば、色々諸々諦めて、少しでも茜音沢が楽になるように、セピアの指なり腱なりを道連れに逝こう。……それとも逃げるべきか? セピアが自分を積極的に襲う理由はないはずだ。……今のところは。

    「んー、何かな、セピアお姉さん?」

     内心の動揺を悟らせずに、田中はあくまで自然体を装い、更にはセピアの性別さえ看過することで、洞察力さえアピールしてみせた。

  • 298◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:49:21

    (さて、何を聞きたいのかな……。茜音沢はどこだ、かな……。それとも、デストラップを逃がしたのはお前か、かな)

     幾つかの予想を田中は立てる。しかし……。

    「なぁお前、映画を早送りで観ることについてどう思う?」

    「…………は?」

    「いわゆるファスト映画についてどう思う? 10代の意見が知りたいんだ」

     セピアの質問は、今この状況にまったくそぐわないものだった。あまりの不自然さに、田中の思考は硬直する。そしてセピアはその隙を突こうともせず、ただベールに包まれた顔を、天井に向けていた。

    「どうした? やっぱり10代はあれか、何でもコスパか?」

    「いや、そんな年齢で雑に括られても困るんですけど……? え、ファスト映画?」

    「ああ、どんな意見でも私は尊重する」

    (……わけがわからない)

     ここに来て、田中は自身の人生経験の浅さを思い知った。こんなとんちきな状況も、きっと剣道部の先輩たちならスマートに解決できたのだろう。

  • 299◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:49:53

    (これ、何が正解なの? しぃ、こういうセンスを試されるような問題、苦手なのに……)

     セピアは急かすことなく、じっと待っている。
     ますます分からない。
     セピアは爆弾卿の腹心だったはずだ。そして爆弾卿は既に亡くなっている。そのことを、セピアも知っているはずだ。てっきり激情に駆られて復讐鬼になっていると思っていた。が、今のセピアにはそんな気配を微塵も感じない。

    「……えっと、しぃは、あんまり映画とか観てなくて。だから映画を早送りで観たことは、無いかな。そもそも、最近映画観てないかも……です」

     よく分からないので、正直に答える。まぁファスト映画を話題に出す奴は大抵ファスト映画否定派なのでそれにおもねっておけばいいだろうという、打算もあった。田中屍山血河、メンヘラでサディストだが、馬鹿ではない。夜中はヘラって勉強できないだけだ。

    「そうか。なるほどな。何か好きな映画はあるか?」

    (まだ映画トーク続けるの……!?)

     驚愕しながらも、田中は正直に答える。

  • 300◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:50:33

    「強いて言うなら……トトロ」

     どうしてその作品を挙げたのか、田中にも分からない。金ローでやっていたのを録画して、何度も観た。あれもやはり、自分がまだ幼稚園で、不死太郎が、小学低学年だった時の……。

    (…………もういいや、そろそろ行こうっと)

     よく分からないが、セピアは戦う気はないらしい。ならばさっさとこの場を移動して雑魚狩りを続けるべきだろう。セピアの始末は茜音沢に任せればいい。
     やけくそのようにタルトレットを口内に放り込み、田中は立ち上がった。

    「じゃあ、しぃはそろそろ行きます……あっ、えっと、オススメの映画とかありますか?」

    (いや、何聞いてんだろしぃ。そんなの聞いてどうすんの……?)

     自分でも何をやっているか分からない。ただ、何となく、本当に何となく、聞いておいたほうが良い気がした。
     ただ一人、生還した時に観るかもしれない。観ないかもしれない。早送りで観るかもしれない。

    「…………すまない」

     と、セピアは言った。

    (すまない? そんな映画、あるんだ、家帰ったら調べて……)

     そこで、田中の意識は途切れた。

  • 301◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:51:05



     そこにあったのは、田中屍山血河の、黄金像だった。
     かつて山野二の瞳に込められていた異能、ディスクによりそれを手に入れたマエストロ・セピアは、瞬時に黄金像へ変化した田中にそっと近づく。

    「すまないな」

     そして、黄金像を指で弾いた。
     黄金像は粉々に砕け散る。

    「好きな映画でキューブリックを挙げない奴は、絶対に始末すると決めているんだ」

    【田中屍山血河 死亡】
    【黒服 残り45人】

  • 302◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:51:56

    30話⑫を終了します……! すいません、今日はこれが最後の投稿です……!

  • 303◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 02:57:11

    >>286

    皆さんのキャラをもっと見たい気持ちは私にもありますが、これ以上増えると完結が遠のきそうなので、残り3人までとさせていただきます……! ご了承いただけると幸いです……!



    >>290

    伏線まとめ助かります……! 私も忘れている部分もあるので……! なるべく回収しますが、ダイス次第で未回収になるのも出るかもです……!


    今日も感想やアイデア、ありがとうございます……! 早めに完結できるよう頑張ります……!

    明日時間が取れれば一気に30話終わらせようと考えていますが、ちょっとどうなるかは分からないです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 304二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:08:52

    乙でした
    暗黒サイドが増えるほど学生組の生還率が下がるということも忘れてはならない

  • 305二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:40:19

    ではお言葉に甘えて闇カネモチを投下

    【名前】拳王卿・呉偉(ウーウェン)
    【性別】男
    【外見】身長210cm体重145kgの巨漢。金の短髪、額には常に眉間を中心に無数の縦ジワが寄っている。
    【趣味】愛馬の世話
    【好きなもの】舌戦
    【嫌いなもの】暴力沙汰、暴漢、テロリスト
    【性格】平和主義者
    【特技】乗馬、ボディービルディング
    【詳細】圧倒的な威圧感、カリスマ、決断力、行動力を誇る敏腕経営者、でも喧嘩は弱い。屈強な肉体はボディービルディングの大会で優勝するほどの仕上がりだが、他人に暴力を振るったことは無い。その威圧感満載の容姿にビビる人が多発するが本人は頼れる経営者として振る舞えているかというプレッシャーに日々ビビっている。
    世紀末覇者卿とか、拳王卿とか、老呉(ラオ・ウー)と呼ばれ恐れられている。正直高校生たちが殺し合いしている姿に心を痛めていたが、自分のイメージを保つため嫌々観戦していた。
    【備考】ぶっちゃけ強そうに見えるだけの人。ワンパンマンのキング枠、だけど別に運は良くない。

  • 306二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:40:24

    ウワー!また茜音沢が曇る〜!?

  • 307目裏兄を投げた人23/05/07(日) 03:51:04

    >>304

    これだけど正直なところ、目裏兄が姫氏原ちゃんを普通に殺して優勝されても反応に困るからダイス値は生徒優先にして欲しいな…

  • 308二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 10:58:35

    ほしゅ
    これセピアさん、今まで出てきた中で本当に茜音沢の次くらいには強いのでは…

  • 309二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 16:39:43

    セピアさんを腹心にしてた爆弾卿はキューブリックと答えたのかね、超速思考を研ぎ澄まして答えたと私的には考えられる

  • 310◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 18:45:09

    拳王卿・呉偉(ウーウェン)dice1d100=52 (52)

  • 311◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:14:23

    本日も始めさせていただきます……! 
    30話⑬を投下します……!

  • 312◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:14:51

    「中国の黑社會(ヘイシャーホェイ)は広大だ。とても一つに纏まるものではない。もし纏め上げようとすれば、それは秦の始皇帝に等しい偉業と言えよう。しかし、二十五年前、それを成し遂げた男が居た。男の名は、張湖李(チャン・フーリー)。当初その男は青幇(チンパン)の末端構成員に過ぎなかった。しかし、男は龍のように瞬く間に黑社會を駆け抜けていった。齢四十にして青幇のトップに上り詰め、積年のライバル紅幇を呑み込み、やがては福建の蛇頭、台湾の竹聯幇、そして香港の三合會をも自身の支配下に組み込んだ。『龍の首』の誕生だ。男は中華のモリアーティ、黑社會の皇帝、あるいは始まりの暗黑富豪と呼ばれている。蟲毒にエンタメ性を加え、ビックビジネスとしたのも男が最初だ。……男の名は、張湖李(チャン・フーリー)。当初その男は青幇(チンパン)の末端構成員に過ぎなかった。しかし……」

    (話がループしている……!?)

     笛吹享楽(うすいきょうらく)は戦慄した。
     盲目の彼でも、今本部で異常事態が起きていることは分かる。インカムで情報を得ながら、黒服ホルダーである彼がとった行動とは、張の護衛だった。張の伝説は、笛吹も何度も耳にしている。この場所に集まった暗黒金持ちは、皆彼のフォロワーと言っても過言ではない。そんな昭和の伝説に一目会いたい(盲目だが)と思い、護衛という名目で駆けつけたのだ。
     しかし、張は老いていた。紋様のように側頭部に彫られた龍の入れ墨、顔を斜めに走る刀傷、それは張の壮絶な人生を想起させる。服の下もきっと入れ墨と刀傷・銃創だらけなのだろう。しかし今の張は眼窩は落ち窪み、肌には皺が走り、手足も枯木のように細い。これらの特徴は笛吹には視ることは出来ないが、脈拍や鼓動で、張が余命僅かであることは理解できた。

  • 313◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:15:31

    (的にしようかと思ったけど、止めたんですよね。おいらが撃つ必要ないっていうか)

     笛吹享楽。名が示す通り享楽主義であり、虚無主義。毎日を面白おかしく過ごせればいいという思想の下で人を殺傷する、人格破綻者である。

    (護衛の黒服も、張さんの私兵らしいんですけど、後期高齢者と頭の悪そうな人しかいないww。有能な人はみんな見限ったんだと思うんですよね)

     張は何やら自身の武勇伝を語っているが、笛吹は碌に話を聞いていない。どこまで本当か分からないし、興味が出たら帰ってから調べればいいと思った。

    (ここに居ても面白くないですし、どっか移動した方がいいですよね。茜音沢と戦っても勝てる自信はあるんですけど、正面から戦うのコスパ悪いんで、疲れたところを後ろから撃ちまーすww)

    「……おい、若造」

    「何すかww」

    「お前、敵を排除するときに、どうすればいいか知っているか?」

    「状況を設定してくれないと答えられないですけどww」

    「劉邦の伝説を知らんか? 劉邦がどうやって項羽を降したのか知らんのか?」

  • 314◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:16:05

    「ああいう大昔の逸話って、けっこう創作なんですよねww なので、そういうのを真に受けて実戦で持ち出すのは頭が悪いと思うんですよww」

     笛吹はてっきり張が激高し、部下に自分を襲わせると考えていた。しかし張は笛吹の言葉を意に帰さず、指を一つ立てた。

    「戦いは数だ、若造よ」

    「だから何すかww」

    「九龍(クーロン)——増えろ」

    「知道了」

     瞬間、笛吹は混乱した。
     突如、部屋の中の気配が爆発的に増加したのだ。張の私兵は10人程居たはずなのだが、それが十倍に増えている。

    「九龍、騒ぎを鎮めて来い。好きなだけ増えることを許す。武器も好きなものを使え。大陸マフィアの恐ろしさを日本人共に刻み付けてやれ」

    「知道了」

     100の気配が、部屋から出ていく。
     後に残ったのは、張と、張と同年代の老いた黒服五人、そして笛吹だけだった。

  • 315◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:16:28

    (何だったんだ、今のは……)

    「儂が九龍を拾ったのは、まだ九龍城が繁栄していた頃だった。そう、そこで拾ったからこそ、九龍と名付けたのだ。当時の儂は……」

    (あ、これ長くなりそうww)

     笛吹も、100人の九龍の後を追って部屋を出る。
     正直、頭の悪そうな男が100人に増えたところで、大した脅威には感じない。時間はかかるが、笛吹の実力なら全滅させることも不可能ではない。しかし、100人が上限で無いとしたら。

    (これは面白くなりそうですねww)

     100人の黒服と一人のホルダーは本部の騒ぎを鎮めるべく動き出した。

  • 316◆xaazwm17IRZa23/05/07(日) 21:17:06

    30話⑬を終了します……! 時間を置いて、30話⑭を投下します……!

  • 317二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 21:19:25

    どっかで見たことあるの出て来て草

  • 318二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 21:34:29

    ダイス値低い金持ちたちがめっちゃ生き残ってるけどこれから一掃されるイベントがあるのかね

  • 319二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:26:37

    イベントスタッフイメージで九龍の設定したらマフィア構成員になってて草…スケールでかくなってる…

  • 320◆xaazwm17IRZa23/05/08(月) 00:30:27

    30話⑭を投下します……!

  • 321◆xaazwm17IRZa23/05/08(月) 00:31:12

     100人の九龍と、一人の笛吹が廊下を練り歩く。
     その様子を、排水溝の下から覗く男が居た。

    (モニターが映らないから部屋でサメ映画観てたら……Oh、何てことだ!)

     男の名は、ペギー・ジョーダン。真っ白な顔に星とドクロのマーク、派手な赤い髪と赤鼻という、正しくピエロのような風貌の、異能遣いの黒服ホルダーである。
     ペギーは最初からこのゲームが不満だった。
     本来司会進行はペギーの仕事であった。しかし、急遽茜音沢とかいう素人に取って代わられたのだ。
     それですっかりやる気をなくしたペギーは黒服の仕事を放棄し観戦に徹していた。モニターが映らなくなるとそれすらやらなくなり、与えられた個室に篭っていたのだが……。

    「このカオスな状況……俺はまったく関与してない! やってられんわ!」

     この状況をペギーが作ったものであれば全力で盛り上げたが、ペギーはこの騒動で蚊帳の外である。モチベは上らず、金持ちを守る程の忠誠心もなく、ペギーは再び排水溝の中に姿を隠したのであった。

  • 322◆xaazwm17IRZa23/05/08(月) 00:31:43



     黒服で最強はマエストロ・セピアである。
     では、暗黒金持ちで最強は誰なのか。
     資産力は、ジョン・ジョンソンが一番だろう。
     情報操作に関しては、谷淵玄夜が最も優れているだろう。
     総合力ならやはり爆弾卿か。
    全盛期の張湖李はもはや殿堂入りだ。
     しかし、こと肉弾戦においてなら、多くの金持ちたちは口を揃えてこう言うだろう。
    拳王卿・呉偉(ウーウェン)こそが最強だと。

     ◇

     最強の暗黒金持ち、拳王卿は、トイレで吐いていた。

    「うう……何て惨い……」

     身長210cm体重145kgという巨体を震わせ、拳王卿は巌のような瞼から涙を流した。
     この男、実のところ金持ちではあるが、暗黒金持ちではない。
     他のパーティーで仲良くなった暗黒金持ちに誘われのこのこついてきて見れば、高校生に爆弾付きの首輪をつけて殺し合わせるというR18Gな催しであった。拳王卿はドン引きしたが、他の金持ちたちはこれを当然のこととして楽しんでおり、ここで彼らの邪悪さを指摘したところで高校生たちが救えるはずもなく、それどころか口封じに黒服に殺される可能性すら感じたので、我慢して鑑賞を続けることにした。

    「おお、さすが拳王卿、子どもの死に眉一つ動かさない」

  • 323◆xaazwm17IRZa23/05/08(月) 00:32:15

    「何でも彼は、貧民の子供を奴隷のように酷使して、ピラミッドを作らせているそうですよ」

    「さすがスケールが違いますな」

     デマをいちいち訂正する気力も無く、拳王卿は渋々殺し合いの観戦を続け、モニターが壊れたのでこれ幸いと席を立ったのだった。

    「余、ちょっとお腹痛い」

    「ははぁ、さすが拳王卿、片腹痛いということですね」

     トイレに避難した拳王卿は、10時間以上我慢していたものをとうとう吐き出し、若き命が無残に失われたことに涙を流した。

    (帰ろう……モニターが壊れたので気分を害した、帰ると言えば、通じる気がする。モニター室から出て帰ってこない人もちょくちょくいるし……)

     さっさと家に帰って酒を飲んで寝よう。しばらく夢に出る気がするが、これも金持ちの試練の一つだ。
     拳王卿は肩をいからせてトイレから出た。
     同じ顔をした人間が100人、目の前を駆け抜けていった。

    「………………余、もしかして悪夢を見ているのか?」

     夢ならばどれほど良かったでしょう、と口ずさみながら拳王卿はワープ装置を目指し歩き始めた。

  • 324◆xaazwm17IRZa23/05/08(月) 00:35:50

    30話⑭を終了します……!

    本日はここまでとさせていただきます……!

    今日もたくさんの感想とアイデア、ありがとうございます……! 私の勘違いでなければ、これで黒服及び暗黒金持ちは全て登場したので、次回で30話を閉めようと思います。
    なお、黒服及び暗黒金持ちの枠は後二人空いているのですが、これ以降投稿されたキャラクターは31話に回そうと思います。ご了承いただけると幸いです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 325二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 00:40:54

    乙でした〜!
    明日は大虐殺+茜音沢vsセピア姉かな
    そして一週間ぶりに生徒たちの顔を見るのが待ち遠しい

  • 326二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 02:16:14

    むしろ今まで即座に反映してきたのが凄いよ
    今日も乙でした

  • 327二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 10:00:09

    暗黒保守

  • 328二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 19:58:09

    ほしゅ

  • 329二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 23:51:59

    そろそろかな…

  • 330◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:55:54

    申し訳ない、今日中に終わらないです……!

    ひとまず、完成した範囲だけ投下し、続きは明日書きます……

  • 331◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:56:36

    (さすが拳王卿、こんな状況でも歌っているとは……憧れちゃいますね、男として)

     拳王卿は、弱い。
     鍛え上げた筋肉は本物であり、一代で金持ちの座に至った経営センスも一流だが、茜音沢やセピアのような超一流と比べれば弱者に過ぎない。
     が、笛吹はそう思わない。現実逃避に歌っていた拳王卿を見て、彼は強者だと錯覚していた。

    (茜音沢と同じく、正面から相手したくないですね。結局筋トレって一番コスパいい趣味なんですよねww筋トレしない金持ちって頭が悪いと思いますww……と、おやおや、これは……)

     100人の九龍の足が止まる。
     100人の九龍、200の眼が、その男を見る。
     茜音沢仁史。
     全身を返り血で真紅に染め上げている。

  • 332◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:57:08

     周囲が歪んで見えるのは、闘気によるものか、あるいは殺された者たちの怨念か。
     手には、槍。鎌槍と呼ばれるものだ。槍の穂先に、枝のように刃物がくっ付いている。刃が多くて実際強い。かの加藤清正も愛好していたことで知られている。
     本来は、黒服ホルダー・科葉師智の装備であったが、彼は既に茜音沢によって殺されている。

    (あれって科葉さんの槍……科葉さん死んだんすかww異能的に相討ちにも出来るのに、出来てないのは無能だなって思いますww)

     同じ黒服ホルダーといったところで、そこに友情などない。ましてやこの笛吹という男は、例え家族が死んだところで嘲笑するだろう。この世の全てを享楽と考えている男である。
     100人の九龍はそれぞれが武器を取り出した。
     かつて中国の裏社会を支配した張湖李。今ではその支配力はすっかり弱まっているが、それでも100人に増えた九龍にそれぞれ武器を与える程度の能力はあった。
     九龍の武器は拳銃だけでない。
     一人は、青龍偃月刀を構えた。三国志・関羽を象徴する武器である。

  • 333◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:57:39

     一人は、狼牙棒を回した。棒の先端にたわしのように棘を生やした、中国戦国時代に開発された武器である。
     一人は、斬馬刀を撫でた。刀身が異様に長い、日本刀に似た武器である。
     他にも、数々の中華由来の武器を、九龍は持っていた。比率としては、拳銃持ちが5割、近接武器が5割である。
     九龍は、茜音沢を取り囲むように、じりじりと動き始めた。
     茜音沢は槍を構えることなく、放心したように突っ立っている。
     隙だらけなように見える。
     今笛吹が撃てば、それで終わってしまうように見える。

    (これで撃つのは頭が悪い人なんですよねwwおいらはもう少し様子見しまーすww)

     笛吹は、茜音沢の視界に入らないよう立ち回っている。
     具体的に書けば、九龍の中に混じっていない。
     曲がり角に隠れ、絶好の瞬間を狙うことにした。

    (最強相手に正面から行くわけないじゃないですかww)

  • 334◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:58:10

     茜音沢が最強の黒服・セピアに勝ったことは知っている。それが接戦なのか、圧倒なのかは知らないが、とにかくとして茜音沢がセピアより強いことは間違いない。
     だからこそ笛吹は茜音沢を最強と認め、殺せる一瞬を狙う。
     笛吹が探る間にも、九龍の茜音沢包囲網はどんどんと完成に向かっている。
     茜音沢は、その包囲網の完成を邪魔することなく、じっと見物していた。
     やがて、ついに茜音沢は100人の九龍に取り囲まれる。
     右を見ても九龍、左を見ても九龍だ。武器こそ差異はあるが、全て同じ顔。普通の人間なら同じ顔の人間100人取り囲まれれば発狂するかもしれない。
     茜音沢は、どんよりと濁った眼を、九龍たちに向ける。

    「お前ら——馬鹿か?」

     挑発ではなく、心底呆れ果てた様子だった。

    「囲んでどうすんだよ。囲んで撃ったら、前の仲間に当たるだろ。銃だけじゃなくて、長柄武器も、この陣形じゃ振り回し辛い。お前ら、揃いも揃って馬鹿しかいねぇのかよ」

    「問題ない」

     と、九龍の一人が言った。青龍偃月刀を構えた九龍だ。

  • 335◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:58:42

     これもまた、強がりには見えない。本当に問題ないという表情をしている。

    (しかしどうするんでしょうね。茜音沢さんの指摘はもっともだと思うんですけど)

     どうして九龍は問題ないのか。笛吹は興味を惹かれる。

    「じゃあ、やってみろよ」

     茜音沢はどうでもよさそうに言った。本当にどうでもいいのかもしれない。九龍は並の黒服より強いのかもしれないが、ホルダーである笛吹から見れば、はっきり言って雑魚だ。
     茜音沢に勝てるとは思えない。100人が上手く連携すれば勝機はあるかもしれないが、呑気に囲んでしまうのは、茜音沢の言う通り、馬鹿の所業だ。町のチンピラでももう少し連携が訊く。

    (まぁ老害に付いてきた部下なんて、無能ですもんねww)

     九龍がどのような醜態を晒すのか。笛吹は興味深く見物した。
     一人の九龍が動いた。拳銃を持った50人の九龍の一人だ。
     トリガーを引き、弾丸が発射される。
     同時に、様々な中華武器を構えた九龍たちが、茜音沢に突撃する。

  • 336◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:59:10

    九龍が撃った弾丸を、茜音沢は、見て、躱した。首を僅かに傾けるだけで、銃弾は茜音沢に当たらず、後方に居た九龍の肩口に刺さる。
     ——その時には、被弾した九龍もまた、弾丸を撃ち終わっていた。
     再演するように、茜音沢は同じ躱し方をする。すこし違ったのは、鎌槍で通過する弾丸を、僅かに擦ったことだ。これによって弾丸の軌道が微妙に変化し、最初に撃った九龍の眉間に吸い込まれる。
     額から血を流し、九龍は倒れる。
     その頃には、中華武器を装備した九龍が、茜音沢に隣接した。
     武器こそ個性的だが、九龍に武器の心得は薄いのだろう。
     ただの鉄パイプの様に様々な武器を振り下ろす。茜音沢が何をするでもなく、彼らは自分たちの武器の巻き添えを喰らい、命を落としていく。
     それでも自分に殺到した幾つかの武器を、人体ごと破壊しながら、茜音沢は舌を鳴らした。
     九龍は続々と攻撃を開始する。その攻撃は九龍を傷つけ、殺傷させる。
     九龍は次々同士討ちで死んでいく。その死体を踏み越えて、九龍は殺到する。

    (ああ、連携を取る必要が無いってことなんですね)

  • 337◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 01:59:49

     傍から見ていた笛吹は理解した。九龍の強み。それは100人居ることではない。

    (命が軽いんですね、こいつら)

     自分を巻き込むことを厭わずに、九龍は波状攻撃を続ける。もしこれが黒服100人であったなら、こうも命を軽視した戦略は取れないだろう。同士討ちを恐れず、一心不乱に茜音沢を責め立てる100人の九龍。死体の山が増えていく。同じ顔の死体の山だ。死因は個性豊かだが、皆一様に能面のような顔で死んでいる。
     悪くない作戦だ。雑兵に過ぎない九龍が、茜音沢と勝負を成立させている時点で大したものだ。

    (もっとも3分持ちそうにないですけど)

     九龍の増殖限界が100人なのか。あるいは衰えた張では武器は100までしか用意できなかったのか。
     どちらが真相かは分からないが、九龍はその数を減らし続けている。

    (そろそろ的当てしますかww)

     笛吹は、自らの銃に弾丸を込める。
     笛吹の銃は、普段銃を見慣れない日本人でも馴染み深いものである。触ったことのある人が殆どだろう。

  • 338◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 02:00:18

     縁日の屋台などで使われている射的用の銃、いわゆるコルク銃が、笛吹の武器である。
     ただし、それは見かけだけの話。
     笛吹が撃つのは景品ではなく人体。外側こそコルク銃だが、中身は裏社会の技術を駆使した化け物銃に他ならない。消音機能さえ備わっている。込める物も当然コルクではなく、本物の弾丸だ。それもただの弾丸ではなく、笛吹自ら切り込みなどの細工をした、特注品だ。装填数は一発ずつ。弾丸にはそれぞれ異なった用途があるため、あえて一発しか装填できない仕様にしている。笛吹のこだわりポイントだ。

    (さーて、ドン勝ついきますよww)

     盲目の笛吹は、茜音沢を視認する必要すらない。ただ、音だけで状況を判断し、適切な瞬間に適切な一撃を入れる。
     それだけで最強の男は死ぬ。簡単だ。

    (仕事が出来る人の技術、ちょっとだけ公開しますww)

     撃った。
     弾丸は壁に当たり、跳ねる。
     跳弾を利用した、死角からの攻撃。

  • 339◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 02:00:56

     肉の壁のように迫る九龍の隙間を縫うように銃弾は進み、茜音沢に迫る。
     金属音が響いた。
     茜音沢は、鎌槍で銃弾を弾いていた。

    「それは知ってる」

     つまらなさそうに茜音沢は言った。

    (馬鹿な……! 死角からの跳弾を防ぐなんて……っ!?)

     笛吹はすぐにその場を動こうとした。
     しかし、その前に、彼の上半身と下半身は分断されていた。
     壁をぶち破って出現した鎌槍の穂先が、笛吹を切断したのだ。

    「垣根の方が工夫してたぞ、三下」

    (そんな、有能なおいらがこんなところで……!)

     饒舌な嘲笑者は、何も言い残せずに命を落とした。

    【笛吹享楽 死亡】
    【黒服 残り80人】

  • 340◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 02:04:11

    一旦ここで切らせていただきます……!

    明日で30話を閉めたいのですが、書きたい展開がいくつかあるので、明日では終わらないかもです……! ご了承いただけると幸いです……!
    感想ありがとうございます……! 感想から展開を思いつくこともあるので、とても助かっています……! それでは、本日はこれで失礼致します……!

  • 341二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:07:04

    乙でした〜!
    まだホルダーが何人も控えてるし
    全員が全員茜音沢と正面から戦ってたらもう1週間かかるんじゃ…
    まぁスレ主の文章力だから信用して待ってます

  • 342二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 09:50:58

    保守

  • 343二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 12:08:05

    先週のキルアオもそうだけどやっぱひろゆきかぶれのキャラは不用意に喧嘩売ってあっさりやられるのが似合う

  • 344二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 20:21:26

    ほし

  • 345◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:01:30

    お待たせ致しました、本日も始めさせていただきます……!

    30話⑯を投下します……!

  • 346◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:02:09

     100人の九龍と、1人の笛吹が去った後。
     張の部屋には6人の男たちが残った。
     6人の男たちは、みな老いている。
     最も老いを感じさせるのは張だ。濁った眼で、ぼんやりとテーブルの酒壜を見つめている。

    「おい」

    「何でしょう、头目(ボス)」

     張の言葉に、即座に黒服の一人が反応する。張と同様に顔中に皺が広がり、髪も総白髪になっている。

    「『龍の首』を立ち上げた時を覚えているか?」

    「勿論です、头目」

     老いた黒服は断言する。

    「三合會と全面戦争になった時は覚えているか?」

    「当たり前です、头目」

  • 347◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:02:49

     今度は別の黒服が答えた。この男も老いている。眼窩は窪まり、背も曲がっている。

    「竹聯幇を罠に嵌めたときは? 蛇頭に裏切られたときは? 紅幇のアジトを爆破したときを覚えているか?」

    「今も鮮明に思い出せます。懐かしき黄金の日々で御座います」

     眼帯に口髭を蓄えた黒服が答える。彼もまた、老人である。

    「そうか、覚えているか」

     头目の言葉に、老いた黒服たちは頷いた。張は苔むした巌のような表情でそれらを受け止める。

    「では——江蘇(チャンスー)の奴らと乱闘になったことは覚えているか」

    「それは餓鬼の頃だろ、張兄」

     老人たちは破顔した。

    「懐かしいな、おい。張兄が真っ先に喧嘩売って、一番最初にぶっ飛ばされてんだからよ」

    「張兄はあの頃から喧嘩弱かったもんな。なのにすぐ殴りかかるから俺達苦労したんだぜ」

  • 348◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:03:20

    「つーか何で喧嘩になったんだっけ? 張兄がそいつの女に手を出したんだったか?」

    「ちげーよ。肩がぶつかって張兄切れたんだよ。ぶつかったのは俺で、しかも相手はこっちの三倍の数居たんだぜ。ただでさえ張兄は数に入んねーのによ」

    「いーや、理由なんか無かった気がするぜ。強いて言えば目つきが気に喰わないつって張兄がいきなり殴ったんだよ。そうに違いないぜ」

     彼らは、同じ街で育った幼馴染であった。
     もはや、張湖李に付いてくる男は、共に育った兄弟分しか居なかったのだ。
     昔のようにあっけらかんと語り出した仲間を、張は愛おし気に眺め、ぽつりと呟いた。

    「どうして喧嘩したのか、儂はもう、覚えていない」

     ぴたり、と老人たちは口を閉じ、彼らの头目に労し気に視線を送る。

    「儂は、これ以上忘れたくない。あの楽しき日々を……」

     そして、張は酒壜を開き、中の液体を杯に注ぎ始めた。

    「儂は、一足先に、地獄に逝くとしよう。お前らは、どうする?」

    「お供するぜ、張兄」

  • 349◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:03:58

     五人の老人たちは順番に、自らの杯へと液体を注ぎだした。それは粛々と、そして厳粛に行われた。しかしどこか気安さがあった。
     全員の杯に液体が行きわたると、張は杯を掲げた。

    「さらばだ親愛なる弟たちよ……地獄で会おう」

     そして老人たちは次々と杯を呷る。
     が、液体が唇に触れる前に、ドアが蹴破られ、9人の短機関銃を持った黒服がその場に姿を現した。
     老人たちは驚愕に目を見開き、咄嗟に応戦しようとするが、その前に機関銃が火を噴き、老人たちの体を穴だらけにする。
     銃声が止んだとき、六人の老人は細切れになって息絶えていた。

    【張湖李 死亡】
    【暗黒金持ち 残り26人】
    【黒服 残り75人】

    「老害を排除したザマス! これで少子高齢化は解決ザマス!」

    「お言葉ですが錠著さま。張湖李は中国人なので、殺しても日本の少子高齢化に影響はないかと……」

    「マジレスは死刑ザマス!」

     錠著は即座に部下を撃ち殺した。

    【黒服 残り74人】

  • 350◆xaazwm17IRZa23/05/09(火) 23:04:36

    30話⑯を終了します……時間を置いて30話⑰を投下します……!

  • 351二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:08:41

    ザマス卿キャラ濃くて好きだわ…次回にでも死にそうだけど…

  • 352二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:13:08

    ウワーッ余韻が吹っ飛んだ!

  • 353二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:18:56

    なんかいい話風だったのに…

  • 354◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:22:22

    30話⑰を投下します……!

  • 355◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:23:32

     張湖李が九龍城で見つけた子ども『たち』には、奇妙な特徴があった。
     10人が10人とも、同じ背丈、同じ声、そして同じ顔。双子や変装の域を超えた、まるでクローンのような子どもたち。
     彼らが異能者であると気づいた張は、迅速にこの少年群を囲い込んだ。幸いにも、彼らは優秀でこそあったが、張の思惑を超えるような知能や武力を示すことは無い。あくまで能力は凡人の域に留まる。十分だ。量産品には量産品の良さがある。知能の才や武力の才は、『龍の首』にいくらでも居る。

    「お前たちのオリジナルは誰だ?」

     張の言葉に、10人の子どもたちは不思議そうな表情を浮かべ。
     ——それぞれが、違う子どもを指差した。
     最初の九龍が誰だったのか、もはや九龍ですら忘れていたのだ。

  • 356◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:24:00

     ◇

     狙撃手を殺すために、鎌槍を投げた。
     戦士としての勘から、ターゲットを殺せたことを察する。
     しかし、結果、茜音沢は無手になる。素手になったところで、茜音沢は戦闘力を失わない。武器を使わない殺人術は、幾つも習得している。少なくとも、雑魚に負けることはあり得ない。
     が、無手に拘る必要もない。
     周囲の九龍を巻き込みながら漢剣で心臓を突こうとした九龍……から剣を奪い取り、そのまま元の持ち主だった九龍の首を刎ねる。
     茜音沢が剣を持って回転すると、七つ九龍の首が飛ぶ。
     茜音沢が剣を持って突進すると、八つ九龍が粉砕される。
     茜音沢が剣を高速で振り回すと、一人の九龍が九分割される。
     100人いた筈の九龍は、次々とその数を減らしていく。残りは……およそ100人。

    「あぁ……!?」

     茜音沢は苛だたしげに唸った。

  • 357◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:24:25

     いちいち数えていないが、百は殺した感覚がある。
     なのに、九龍の数が大して減っていないように思う。
     増えている。と、茜音沢は気づく。殺される九龍と同じ数だけ、九龍は増えたのだ。
     新たに増えた九龍は、死んだ九龍の武器を拾うと、茜音沢に特攻する。
     武器を拾えなかった九龍は無手で掴みかかる。
     九龍は減らない。
     殺し合いとは、デスゲームとは、人が減っていく故に成立する演目である。
     減らない九龍は、死なない不死太郎と同程度には、ジョーカーであった。
     あるいは、もし九龍に首輪が付けられることがあれば、爆弾により新たに増えることなく死んだかもしれない。しかし九龍は参加者ではなく運営側であり、新たに茜音沢が始めたゲームではルールこそあれど、首輪は用意されていなかった。

    「面倒だな」

     群がる九龍を斬り殺しながら、茜音沢は思案する。
     幾つか対策は思いつく。

  • 358◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:24:57

    増えるより早く皆殺しにするのが手っ取り早い。全盛期ならばともかく、衰えた今の体でそれが出来るかは分からないが、優勝するためにはやらねばならないだろう。

    (朱音……お父さん、ちょっと無理するぞ)

     後の戦いに響くと思いながらも、茜音沢は「全力」を出そうとし。

    「悪い子だねぇ」

     天井を這っていた、老人と目が合う。
     九龍たちも、百足の如く蠢く老人に気づき、対応に悩む。
     老人は眼下の修羅たちを見下ろし、滑稽そうに笑った。

    「みぃいいいいいいいんなぁあああああ、わるいこだぁあああああああああああ!」

     異様な様子に、自らの生命さえ勘定しない九龍たちに、動揺が走る。それは、原初の恐怖。未知への恐れ。九龍はどれだけ増えても人間である以上、それから逃れることは出来ない。
     老人はケタケタと笑う。その口の中には、怨嗟の表情を浮かべる無数の顔が浮かんだ。

  • 359◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:25:34

    「わるいこぉはあああああああああああああ、たべちゃおおおおおおおねええ」

     ぺた、と老人の額に何かが当たった。
     煙草である。
     銘柄はピース。殺し合いには似つかわしくない単語だ。

    「大物ぶってないで、とっとと始めろ雑魚」

     口からニコチンの煙を吹きながら、茜音沢は老人を見上げた。

    「たかがデストラップが粋がってんじゃねぇぞ」

     老人は、白濁した瞳を茜音沢に向ける。にっこりと老人は微笑した。徐々にその笑みは深まり、耳まで裂けていく。乱杭歯が肥大化し、大口の化け物へと姿を変える。

    「いただきます」

     老人の額に新たな口が出現し、そう呟くと同時に、大口が茜音沢を呑み込み、咀嚼する。
     瞬間、老人の頭が弾け飛んだ。
     四散した老人は、四方八方に飛び散る。
     転がった一つ一つの肉片が、もぞもぞと蠢き、人を形どる。

  • 360◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:26:05

     老人である。爺である。翁である。
     九人に増えた老人が、ケタケタと笑いながら茜音沢に迫る。
     茜音沢が剣を一閃する。同時に九つの首が飛ぶ。
     飛んだ首は宙を周りながら、茜音沢に向かって火を噴く。
     瞬間、一つの首が茜音沢に掴み取られ、その首が発した炎は八つの翁の首を焼く。
     八つの首を焼き終わった首は用済みとばかりに壁に叩きつけられ染みになった。その染みから新たな翁が這い出して来る。
     近くに居た九龍を掴むと、染みに向かって投げつける。染みがついていた壁は粉々に砕けちる。
     壁の破片から翁が這い出してきた。
     翁は真っすぐ茜音沢に向かわず、状況に対応しかねていた九龍に襲いかかる。
     九龍は咄嗟に武器で応戦するが、その武器ごと翁に呑まれる。
     次々と九龍が吞まれていく。負けじと九龍も数を増やす。
     が、

    「馬鹿な!」

  • 361◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:26:34

     初めて、九龍が悲鳴を上げた。
     増えない。
     否、増えている。
     九龍ではなく、翁が増える。
     九龍が自らを増やそうとすれば、何故か九龍ではなく翁が増えてしまう。
     結果として九龍の数は減り続け、翁の数が増え続ける。
     残り10人になったとき、恐怖に堪えきれなくなったのか、九龍たちは逃げ出した。
     しかし逃げ遅れた五人の九龍の足に翁の髪が絡みつき、九龍は悲鳴をあげながら翁の口に吸い込まれていく。
     かくしてその場には悪い子が大大大嫌いな100人の翁と、学園最強の男が残った。
     けけけけけけ、と老人たちは一斉に笑い出す。
     茜音沢は笑わずに剣を構える。

    「どの世界にも通じることだが……中身のないヤツが数を誇る」

     老人が茜音沢に殺到する。茜音沢は次々と老人を斬り殺していく。
     最強と最恐。
     二つの頂点の激突は、未だ終わりを見せなかった。

  • 362◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:27:15

    30話⑰を終了します……!
    時間を置いて30話⑱を投下します……!

  • 363◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 03:27:55

    おっと、忘れていました。

    【黒服 残り25人】

  • 364二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 03:58:05

    >>362

    マジすか…!

    体調には気をつけてください…

  • 365二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 04:02:20

    主がどんどんタフに染まっていくのほんと草なんだ

  • 366二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 04:41:56

    茜音沢、理性を得たマネモフルよりもマネモブしてる

  • 367◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:06:44

    30話⑱を投下します……! 本日最後の投下です……!

  • 368◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:07:24

     動物の彫像が並んでいる。
     コモドドラゴン。
     イノシシ。
     チンパンジー。
     姿をそのまま切り取ったかのような像が、通路に乱雑に設置されている。
     奇妙なことに、その全てが金色で構成されている。
     彼らは、作り物ではない。つい今しがたまでは躍動していた獣たちだ。
     今は、全てが静止している。
     その時、一陣の風が吹いた。黄金像が粉々に砕け散る。
     女が居る。プロビデンスの目が描かれたベールをはためかせ、女は悠々と通路を歩く。
     女の名を知っている者は、もはやこの世に居ない。
     人は彼女を、マエストロ・セピアと呼ぶ。
     あるいは最強の黒服とも。

  • 369◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:07:59

     デストラップの群れを駆逐し終えたセピアは、まるでオフィス街でランチの場所を探すOLのような優雅さで、黄金の破片を、そして黒服の死体を踏み越えていく。未だその服に、返り血は一滴もついていない。
     と、セピアが足を止めた。
     首を傾け、それを見上げる。

    「大きいな」

     と、月並みなことを言った。
     ふしゅるるるるるる……と舌を鳴らす、蛇が居る。
     ただの蛇ではない。六千万年前に生息していた、史上最大の蛇。体長20mという規格外の大きさを誇る怪物が、セピアの眼前で息を吐く。

    「『アナコンダ』を知っているか? 1と2,どちらも名作だが、私は1が好きだ。3と4についてはノーコメントだ。私はああいう安っぽいB級映画を好まない」

     セピアは、巨大蛇……ティタノボアに話しかけていた。臆する様子もなく、戦意を滾らせることもない。まるでペットのハムスターに話しかけるような気安さで、黒服を数ダースは平らげたこの怪物に話しかける。

  • 370◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:08:26

     ティタノボアもまた、野生の直感により、眼前の小型生物を、強敵だと認識していた。餌ではない。同格の捕食者。
     しかし、頂点捕食者としての誇りが、ティタノボアに撤退を選ばせない。

    「……やはり、こうも大きいと黄金化に時間がかかるか。怪物向けの異能ではないな。あるいは、もう少し馴染めば……いや、そこまで悠長には出来んな。あの男の教え子の異能で殺してやろうと思ったが、実戦向きではない……異能の選択を誤ったか……」

     ぶつぶつと呟くセピアに業を煮やしたのか、ティタノボアが鎌首をもたげ、セピアを捕食にかかる。
     巨体にもかかわらず、通常の人間では視認できない速度の噛みつき……にはならず、その動きはどこか緩慢だった。
     ティタノボアが驚愕する。体が鈍い。筋肉のあちこちが凝固している。
     それでも、相手がただの黒服ならば成す術も無く丸呑みにされていただろう。しかし、相手はマエストロ・セピア。ティタノボアの攻撃を優雅に躱し

    「——古布志宇知」

     喉を目掛け拳を打つ。

  • 371◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:08:56

     ティタノボアはギリギリで急所を打点から逸らした。それでも、衝撃を吸収できず、頭を壁に叩きつけられる。
     壁に罅が入り、一部がボロボロと崩れ落ちる。
     ティタノボアは戦意を衰えさせない。飛んできたのは尾である。
     叩き潰すかのような面の攻撃に対し、セピアは独特の構えを取る。現代格闘技では見られない異形の構え。古武術をマスターしたセピア独特の戦闘スタイル。

    「——雅」

     音速の回し蹴りが、尾に叩きつけられる。
     弾かれたようにセピアは後方に跳んだ。ティタノボアは体勢を立て直し、顎を開く。
     毒液が発射された。
     もはやそれは、毒、といった生易しいものではない。触れれば瞬時に溶け落ちる、溶解液である。

    「——幽玄」

     溶解液は、セピアの体をすり抜けた。

  • 372◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:09:26

     これは異能によるものなのか。あるいは極まった技術が引き起こす物理現象への干渉なのか。
     セピアは瞬時にティタノボアへ距離を詰め、掌底を打つ。

    「——無常」

     ティタノボアの巨体が、のけ反る。

    「グギャアアアアアアアアアアアア!」

     血を吐き、のたうち回る。通路は破壊され、壁は粉砕され、床は粉々になる。
     20mの怪物がじたばたするだけで、本部は破壊されていく。セピアはベールを靡かせながら巻き込まれないように立ち回る。
     遂には、ティタノボアの尾が、薙ぎ払うように壁を吹き飛ばしてしまった。

    「……ふむ。やはり獣はしぶとい。その生命力は称賛に値するが、ちとくどいな……っ!」

     セピアが、息を呑んだ。
     破壊された壁の向こうの異様な光景に、この魔人が一瞬忘我したのだ。
     奇怪な老人が一人の男を取り囲んでいる。

  • 373◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:10:03

     老人たちは薄気味悪い笑い声を立てながら中心の男に殺到し、竜巻に吹き飛ばされるように、細切れになって四散する。
     飛び散る肉片を躱しながら、セピアは男に声をかけた。

    「茜音沢……そこに居たか」

     男は振り返る。返り血に濡れた修羅が、ベールを見透かすかのように、セピアを睨む。

    「よぉ、お山の大将が俺に何か用か?」

     ぎりり、とセピアは拳を固く握った。

    「お前は……私が始末する」

    「まぁあああああたぁあああああああああわるいこだぁああああああああああ」

     四散した肉体から翁が再生する。ケタケタと笑いながら、泥のように体を変化させながら、無数の顔で茜音沢とセピアに笑いかける。

    「グォオオオオオオオオオオオオオオ!」

     ティタノボアが吠えた。のたうち回りこそしたが、未だ戦意は衰えない。新たに現れた二つの存在に対しても、頂点捕食者は怯まない。
     茜音沢。セピア。翁。ティタノボア。四つの災厄が一同に会した。
     本部へ始まった真のバトルロワイアル。その頂上決戦が始まろうとしている。
     誰が死に、誰が生き残るのか。
     一つだけ確かなこと。
     それは誰が勝ち残ろうと、生き残った生徒たちにとって、絶望でしかないことである。

  • 374◆xaazwm17IRZa23/05/10(水) 06:11:58

    30話⑱を終了します……!

    今日もたくさんの感想をありがとうございます……! 一か月以上もお付き合いいただき、本当に感謝です……!

    それでは、本日はこれで失礼させていただきます……! またお手すきの時に読んでいただけると幸いです……!

  • 375二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 06:13:53

    今日もお疲れ様です〜!!
    起きたらちょうど続きが投稿されてるし、今日の概念が疑われるけどなこれ…
    そしてまさかの共闘展開か

  • 376二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 11:11:31

    お疲れ様です!
    謎爺のホラー描写が好き
    盛り上げ方上手くてドキドキしてきた

  • 377二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 18:23:17

    乙です!
    毎晩寝る前に読んでたからそろそろ夢に出るようになってきた

  • 378二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:11:11

    一応保守る

  • 379◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:01:41

    何とか完成したので、投下します……! 申し訳ない、本日の投下はこれだけです……!

  • 380◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:03:05

    「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

     泥のように蠢いていた翁から、新たな翁が産まれる。生まれた翁の口から、新たな翁が顔を出す。翁が翁を生み、生まれた翁が翁を生む。
     密集し塊となった翁が、茜音沢に迫る。

    「キモい」

     茜音沢が剣を振った。
     塊は解れ、バラバラになった翁が周囲に飛び散る。

  • 381◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:03:36

     飛び散った翁の幾つかは床にへばりつくと、再び泥のような姿をとり、セピアへ迫った。
     翁が狙うのは、茜音沢だけではない。セピアもまた、翁の獲物である。
     蛇のように蠢きながら、翁は髪を伸ばし、セピアの首に絡め憑かんとする。

    「——幽玄」

     髪は、セピアの体をすり抜ける。
     空中へ飛び上がったセピアはぶつぶつと何かを呟き

    「——余情残心」

     翁の額に指を置いた。

    「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」

     翁が溶ける。
     煙のように霞んでいく。

    「……へぇ、異能殺しの異能……いや、これは純粋な技術か」

     茜音沢の声に、僅かに興味が乘る。セピアはその言葉を無視し、他の翁へ視線を向ける。

  • 382◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:04:00

     古武術。それは明治以前に成立し、体系化されたあらゆる武芸を指す。身体技術だけでなく、武器術、乗馬術、更には呪術さえも含まれる。
     そして、マエストロとはスペイン語で専門家を意味する。マエストロ・セピア。彼女こそデスゲーム運営の専門家。デスゲームという人間の暗黒面が露呈する舞台では、怪異が引き込まれやすい。ゲームを壊しかねない怪異を除去するのも、セピアの仕事である。
     翁の群れの中にセピアはその身を躍らせた。
     翁。翁。翁。折り重なった翁は、もはや翁のプールといえた。勢いよくその身を翁に投げ出すセピアは、プールに飛び込むわんぱく少年か、あるいは身投げする薄幸の美人か。

    「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

    「——余情残心」

     翁を摺り潰すようにして、セピアは着地を決める。
     摺り潰された翁は煙のように消滅する。
     それでも四方八方に翁が居る。それどころか、折り重なるようにして翁が積み上がり、翁ドームを建設しようとしている。

  • 383◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:04:47

    「——余情残心」

     セピアが人差し指と中指を立て、翁ドームを内側からなぞっていく。なぞったはしから煙が上がり、翁が消滅し、外の景色が見える。

    「『デンデラ』という映画を知っているか? 姥捨て山に捨てられた老婆たちが復讐に来るという物語だ。お前の正体が何であるのか、興味は無いが……些か邪魔だな」

     ドームから脱出したセピアは、翁の群れに指を突き付ける。

    「——バビロン」

     瞬間、翁は固まった。
     奇怪なオブジェのように、その動きを停止させる。そのオブジェは、黄金に輝いていた。

    「なるほど、指向性をつけ範囲を絞れば黄金化は早いのだな」

    「おい、そりゃあ山野の異能か?」

     茜音沢の言葉に、セピアはは嘲りの声を出す。

    「そうだ。教え子の異能で殺される気分を、これから嫌というほど味わさせてやる」

    「俺に負けたからって女子校生の異能に縋るとは。お山の大将の底が知れるな」

  • 384◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:05:16

    「そうか、あれをお前は勝ちだと考えたのか。おめでたい奴だ。全ては爆弾卿の思惑によるもの。お前をあえて勝たせた……」

     この場に居るのは、三人だけではない。ティタノボア。巨大な蛇もまた、この場の強者の一人である。
     尾による一撃。
     それは、ティタノボアの巨体で放てば、建物を倒壊させる程の威力を持つ。
     二人の超人は、その場を垂直に飛び上がり、蛇の一撃を躱した。

    「ぐだぐだ喋ってないで来いよ、三下」

    「言われなくても行くさ、素人」

     空中に飛び上がっていたセピアは天井を蹴る。既に戦闘でボロボロになっていたそれは、セピアの蹴りでとうとう穴が開く。
     セピアはその勢いを利用して、茜音沢の間合いに入った。
     マエストロ・セピア。丸腰である。一方、茜音沢は剣を持っている。剣道三倍段の言葉が正しければ、セピアが茜音沢に勝つには、三倍の実力が必要だ。それを分かって、セピアは剣の間合いに入る。

  • 385◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:05:46

     かつての茜音沢ならともかく、今の茜音沢に武士道精神は無い。容赦なく剣を袈裟薙ぎに振るう。

    「——挂甲武人」

     セピアはそれを、二の腕で受け止めた。
     そんなことをすれば、腕は輪切りになり、胴を刃が通過する。
     しかし、茜音沢の剣は、セピアのスーツを切り裂くだけに留まり、その腕に傷をつけることが出来なかった。

    「何だと?」

    「——古布志宇知」

     すかさず、セピアは茜音沢に拳を打つ。茜音沢は剣で拳を受け止め、——剣は拳に堪えきれずへし折れる。
     セピアの拳は、茜音沢の腹を貫いた。
     轟音と共に、茜音沢が吹き飛ぶ。
     何故セピアは茜音沢の剣を受け止めることが出来たのか。古武術により、セピアは瞬時に筋肉を鉄の硬度まで固めることが出来る。それでも、茜音沢の一撃はそれを上回っていただろう。だが、そこに更に、もう一つ別の金属の硬度が加わるならば……。

  • 386◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:06:13

     茜音沢の剣を受け止めた二の腕は、黄金に輝いていた。
     自らの肉体を黄金にすることにより、硬度を更に高めたのだ。

    「がはっ……!」

     茜音沢は血を吐き蹲る。
     弱った茜音沢を捕食すべく、ティタノボアが大顎を開き襲いかかる。

    (まだだな)

     と、セピアは思考した。
     まだ、茜音沢は戦闘不能になっていない。
     たった一撃、入れただけだ。この程度で倒れるような男なら、自分は敗北していない。
     案の定、ティタノボアは右目を切り裂かれ、悲鳴を上げた。
     いつの間に拾っていたのか、九龍の一人が持っていた柳葉刀を茜音沢は装備している。

  • 387◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:06:41

     茜音沢を倒すには、もう何発か、攻撃を当てなければならない。
     それを成す自信は、セピアにはある。
     両足に力を籠め、一気に距離を詰めようとする。

    「どぅしてええええええええええええええええええ?」

     後ろから、奇怪な声が聞こえた。

    「……何?」

     振り返る——と同時に、サマーソルトキックを翁の顎に叩き込む。

    (黄金化を解いたのか……それとも体の一部を分離させて難を逃れたのか)

     どちらにせよ、もう一度黄金に変え、今度は更に除霊技・余情残心で完全消滅させればいい。セピアにとって翁はそこまで大きな脅威ではない。
     この時までは。
     ぎゃりぎゃりと音が鳴る。火花が散る。
     翁の頭部は破壊されていない。
     セピアの蹴りを、受け止めている物がある。

  • 388◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:07:14

     青竜偃月刀だ。老人の顎から生えてきた偃月刀が、セピアの蹴りを受け止めている。

    (どういう絡繰りだ? ただ増殖する怪異では無いのか?)

    「わるいぃこおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

     翁の右目から、にゅうと押し出されるように、銃口が生えた。

    「……チッ」

     セピアは舌打ちをして体軸をずらす。その瞬間、銃弾は発射された。撃たれた銃弾を、セピアはベール越しに視認する。

    (弾丸ではない……あれは、指か?)

     木乃伊のような老人の指。それが銃口から発射されていた。

    (ただの弾丸と思って掴もうとしなかったのは正解だったか。さて、どうなるか)

     セピアが身体をずらしたのは、ただ銃撃を躱すためではない。
     蛇と戦っている茜音沢と自分を直線上に置き、その上で自分だけ避けることで、意図的に翁の弾丸が茜音沢に当たるように調整していた。
     拳銃弾と同速で飛来する指。それは真っすぐ茜音沢に届き

  • 389◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:07:50

    「キモイもの飛ばすな」

     振り返ることなく、剣で両断される。

    (そう簡単には殺せんか。……ふむ)

     両断された瞬間、それは二つの翁へと変化する。

    「もう飽きたぜ」

     翁の首が飛ぶ。一瞬遅れて、残った胴体も、ティタノボアの尾によって潰される。
     セピアは蹴りを受け止めた翁に視線を戻す。弾の能力は分かった。翁の正体は知らんが、性質はおおよそ掴めてきた。

    (まぁ、あの程度の攻撃なら、やはり脅威にはならな……)

     吹き出物のように、翁の全身から銃口が生える。

    (……そうか。こいつ、人間だけでなく、武器も取り込めるのか)

     無数の銃が、一斉に指を発射する。避けることも、掴むことも出来ない。
     ならば

    「——幽玄」

     指は、全てセピアを通過する。

  • 390◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:08:21

    (作戦変更。こいつがこれ以上武器やデストラップを取り込む前に、最優先で処理する)

     短時間の古武術奥義の連続使用は、セピアの体力を大幅に削っていた。
     息が上がる。

    「——バビロン!」

     セピアは翁を黄金の翁像へ変化させる。異能との適合率はますます上がっている。

    「——侘び寂び!」

     精神を集中させ、第六感を開く。それにより、翁という怪異の核を探り出す。
     見つけた。

    「——古布志宇知!」

     核を翁から抉り出す。
     石ころのように小さい骨。どこの部位かも分からない骨の破片。それが、翁の本体。

    「——余情残心!」

     対怪異に特化した一撃を、骨に撃ち込む。

  • 391◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:09:08

     引き裂かれるような翁の声と共に、骨は灰となって消えていった。

    (これで終わったか? いや……)

     侘び寂びによって研ぎ澄まされた第六感が、未だこの怪異を倒せていないことを伝える。

    (気にはなる。が、しばらくは動けまい。その隙に茜音沢を始末する)

     元々、マエストロ・セピアの獲物は翁ではない。
     彼女の目的、それは始めからただ一つ。

    「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」

     茜音沢のヤクザキックを喉に喰らい、ティタノボアは悶絶しながら転がる。
     そして遂に、その眼から戦意が消えた。

    「…………グゥウウウウウウウウウ……」

     悔し気に唸ると、ティタノボアは通路のあちこちに身体をぶつけながら、その場を去っていく。それを、茜音沢は追わない。彼もまた、大蛇が本命ではないのか。

    「……決着をつけるぞ、茜音沢」

    「決着? 俺はお前に興味なんかねぇよ。……が、参加者にはお前も含まれている。仕方ねぇ、相手してやるよ」

     翁は一時的に姿を消し、大蛇もまた逃走した。
     残ったのは二人の超人。

  • 392◆xaazwm17IRZa23/05/11(木) 02:11:44

    30話⑲を終了します……!

    あにまん落ちてたので今日はもうあにまんできんかもと思ったのですが、無事にあにまんできて良かったです、いつも保守をしてくださりありがとうございます……! 感想もとても嬉しいです……!

    それでは、本日もお疲れさまでした……!

  • 393二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 02:18:47

    乙でした〜!!
    相変わらず戦闘描写が上手いなぁ
    ティタノボアに瞬頃された長村が石川クラスって考えるとマジで頂上決戦だな

  • 394二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 02:22:14

    活躍しきれなかったヴェラジウスちゃんの能力が有効活用されてるのが複雑な感じでなんか良いな
    あと翁ドームがじわじわ来る……

  • 395二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 07:25:35

    安価運が無かったら石川は確実に爺と出会った時点で死んでたな……

  • 396二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 07:31:43

    本当に長く続いて欲しい神スレ

    気の早い話だけど、直ぐにじゃなくてもいいからいつか2をやってくれないかな

  • 397二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 14:22:33

    ほしあげ

  • 398二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 19:46:49

    保守ヤンケ

  • 399二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 23:24:05

    保守

  • 400二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 03:26:17

    今日はどうだろうな

  • 401◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:38:11

    ……めちゃくちゃお待たせ致しました!

    日が昇る前に書き終わったので投下します……! お時間のある時に読んでいただけると嬉しいです……!

  • 402◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:39:17

    「モニターはいつ映るんでしょうか……?」

    「あのぉー、まーだ時間かかりますかねぇ」

    「黒服も大勢どこかに行ってしまいましたし、どうします? 帰ります?」

    「でも、一度島から出たら二度と帰ってこれないんですよねぇ。せめて推しの生徒がどうなったのかだけ確認したい! せっかくここまで応援したんですから!」

     外の惨状は露知らず、モニター室の暗黒金持ちたちは、じりじりとモニターの復旧を待ちわびていた。
     およそ20人程の暗黒金持ちを、10人の黒服が警護している。
     彼らは幸運だった。外は既に地獄と化している。皮肉なことに、モニターで観戦していた生徒たちの方が、比較的安全な場所に居るのだ。モニター室の外に出た無名の黒服も、ホルダーも、暗黒金持ちも、次々と命を落としていく。

    「運営卿……いい加減にしてくれませんか……! いつ復旧するのですか!」

    「しかし地図卿……! 廃校が壊れたのは離島管理の貴方の責任なはずです……!」

  • 403◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:40:04

    「何を言うんですか……! アイテム卿が、戦車なんかロッカーに仕込むからです!」

    「だ、だってまとめ卿の参加者情報が強そうだったんですよ! 弱い参加者のために戦車でも支給するかってなるじゃないですか!」

    「私の責任ですか!? 私は公平に参加者情報をまとめただけです! だいたい何が弱い参加者にですか!? マネモフルもキルコも強い参加者ですよ! というかあの戦車でここを砲撃されたらどうするんです!?」

    「その前に首輪を爆破すればいい……!」

    「そんな無責任な!?」

    「せっかくの参加者を我々の手で退場させるなんて、頭茜音沢ですかあなたは?」

    「それはとんでもない侮辱ですよ! 運営卿である高貴な私が、あんな下民と一緒にされるなんて! 黒服、この者たちを処刑しなさい!」

    「いいえ、黒服! 私以外の者を処刑しなさい!」

    「早くしなさい黒服! 処刑されたいのですか!」

     暗黒金持ちの中でも進行に携わっていた者たちの責任のなすりつけ合いを、他の暗黒金持ちは生暖かい目で見守っていた。

  • 404◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:40:49

    「こーら💕😃☀ 😄😃皆、喧嘩は駄目だぞ 😜⁉️オジサンたちは、仲間なんだからネ ✋❓⁉ちょっと寝た方がいいカモ🛌💤(# ̄З ̄)」

    「「「援助卿!?」」」

     観賞卿に次ぐ資産を誇る男、援助卿の登場に、口論をしていた暗黒金持ちたちは一斉に口を噤んだ。彼には様々な恩がある。発言を無視するわけにはいかない。

    「モニターが治るまでさ😃☀ (笑)😃♥ 😘皆で思い出話しようよ😚」

    「そ、そうですね……失礼しました皆さん。高貴で偉大なる運営卿らしからぬ言動を取ってしまい……」

    「いえいえ、私も地図卿として大人げない言動をとってしまいました……」

    「まとめ卿である私も、自分の気持ちをまとめることが出来なかった……」

    「それを言うなら、アイテム卿の私も……」

     冷静な第三者の介入によって、暗黒金持ちは冷静さを取り戻す。今やるべきことは口論でも責任のなすりつけ合いでもなく、ただちにモニターを復旧させ、デスゲームを通常通りの形に戻すことだ。一番あってはならないのは、優勝者決定の瞬間を見逃すこと。

    「協力しましょう、私たちならきっと乗り越えられます……!」

  • 405◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:41:38

    「ええ……!」

    「はい……!」

     彼らは掌を重ね合わせた。熱い大人の友情がそこにはあった。援助卿も目を潤ませながら見守る。
    直後、彼は下からの破壊に巻き込まれた。
     地雷が爆発したかのような衝撃と共に、援助卿は全身を損壊させながら倒れ伏す。

    【暗黒金持ち 残り25人】

     撃ちあがったのは、黒ベールで顔を隠した人物である。

    「カハッ……!」

     マエストロ・セピアは血を吐き、暗黒金持ちの前にごろごろと転がった。

    「うわー! 援助卿!」

    「援助卿が殺されちゃった!」

    「この人でなし!」

     突如として開いた下に続く大穴から、茜音沢がのっそりと姿を現す。

    「……テメェら、まだ避難してなかったのか。おかげで楽できそうだがな」

  • 406◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:42:19

    「あ、茜音沢! この無能運営! いつモニターを治すのですか!」

    「仕事もせずに無駄にモニター室を壊して……! 許しませんよ!」

    「さぁ黒服の皆さん……! この男を処刑するのです!」

     モニター室に待機していた10人の黒服が、一斉に茜音沢に銃を向ける。
     銃声が響く。
     茜音沢は、傍に居た暗黒金持ちの一人を掴むと、盾代わりにした。全身を蜂の巣にされ、暗黒金持ちは絶命する。

    【暗黒金持ち 残り24人】

    「茜音沢……! おのれ、とうとう謀反ですか……!」

    「今更生徒への愛に目覚めたということですか!? いいでしょう、クラス単位でデスゲームをするときは、担任教師が見せしめになるのがセオリー! 貴方には死体役になってもらいま……ぶへっ」

     茜音沢を指差し、唾を飛ばしていた暗黒金持ちは、盾にされた暗黒金持ちの死体を投げつけられ、潰れて死ぬ。
     モニター越しではない、恐るべき死のリアルに、暗黒金持ちは戦慄した。

    「は、早くこいつを殺しなさぁああああああああああいいいいいい!」

  • 407◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:42:57

     黒服は銃を連射する。茜音沢は射線を躱すと、黒服たちに高速で接近し、刀を振った。瞬時に10人の黒服の首が飛ぶ。

    【黒服 残り15人】

     モニター室の黒服は、セピアを除き全滅した。

    「セピア……何を寝ているのですか! 起きなさい、起きて戦いなさい!」

    「我々を守るのが貴方の役目のはずです! この狼藉物を始末しなさい!」

     金持ちの言葉に従うように、セピアはむっくりと起き上がる。そのスーツはあちこちが汚れ、生地が切り裂かれ、血が滲んでいる箇所もあった。正しく満身創痍。

    「さぁ、早く戦うのです……! 従者の務めを」

    「黙れ」

     周囲の暗黒金持ち三人が、瞬時に黄金像へ変化した。
     即座にセピアは三つの黄金像を砕き、破片に変える。

    【暗黒金持ち 残り21人】

    「私の主は、爆弾卿だけだ……!」

     セピアは、黄金の破片を投擲する。

  • 408◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:43:27

     一つ一つがショットガンに等しい威力。人体に当たれば柘榴のように肉が弾け飛ぶ。
     巻き込まれた暗黒金持ち二人が命を落とす。
     茜音沢は剣で全て叩き落とすが。

    「……チッ、もう限界か」

     剣はとうとう限界を迎え、へし折れた。
     周囲には、剣らしきもの、棒らしきものは無い。
     茜音沢は苛立たし気に頭を掻くと——拳を握った。

    「…………剣を失った剣士など、恐れるに足りんわ」

    「だったらさっさと来いよ、お山の大将」

     セピアはゆっくりと茜音沢に近づく。ベールをはためかせ、優雅ささえ感じる足取りで、歩を進める。全身に傷を負っている。が、未だ戦意は衰えない。
     茜音沢も、無傷ではない。セピアと同程度には、体中に傷が残る。彼は、近づかない。仁王立ちで、セピアがやってくるのを待っている。

    「茜音沢、お前、好きな映画は何だ?」

  • 409◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:44:01

    「あぁ? 何だ急に?」

    「これが最期だからな、聞いておこうと思ってな」

    「特にねぇな。強いて言うならあれだ」

     残り2m。この二人に、リーチの概念は無い。強いて言うなら、モニター室のどこに居ても、攻撃を当てられる技術を持っている。
     ただ、セピアの最も得意とする距離は、もっと近い。
     更に、近づく。

    「『2001年宇宙の旅』とか、好きだぜ」

    「そうか」

     一歩、踏み出す。
     残り1m。

    「良かったよ」

     更に、踏み出す。
     残り、30cm。

    「私は、好きな映画で黒澤明を挙げない奴は、絶対に殺すと決めているんだ」

  • 410◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:44:29

    「そうかい」

     吐息さえ感じられる距離で、二人は相対した。
     そして。
     二つの拳が衝突し、衝撃波が発生した。
     拳を引いたのは同時だった。砕けたのは——茜音沢。
     膂力なら、茜音沢の方が上だ。しかし、格闘術はセピアに軍配が上がり、なおかつ今の彼女の拳は
     ——黄金に、輝いている。

    「——古布志宇知」

     二撃目が、茜音沢の鳩尾に炸裂する。
     茜音沢は吐血した。明確なダメージだった。
     たまらず、体を九の字に曲げる。

    「——雅」

     打点の下がった首を狙うように、セピアの蹴りが入った。
     茜音沢は自ら飛んでダメージを最小限に抑えようとし——逃げられない。

  • 411◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:44:58

     既に茜音沢の両足は、黄金と化している。
     故に、雅の威力を、受け止めるしかない。

    「ガッ!……」

     普通の人間なら、否、屈強な戦士でも、この一撃は致命傷のはずだ。
     例え相手が茜音沢だとしても。
     それでも、セピアの第六感が、この男の命が絶えていないことを示している。

    (確実に、ここで殺す……!)

     セピアは、全身全霊の奥義を披露することに決めた。
     古武術に代々伝わる伝説の技。神代から継承された、技術の極北。

    「終わりだ、茜音沢……! あの世で爆弾卿に詫び続けろっー!」

    空手の正拳突きに似た体勢を取り、セピアが吠える。
     そして、遂にセピア最強の技が炸裂する————!

    「充填(チャージ)、轟轟拳!」

  • 412◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:45:32

     全身の気を一気に充填(チャージ)し、雷の如き速さで正拳を撃つ。どんな強度も、どんな異能も、どんな怪物でも一撃で即死させる、ありとあらゆる殺し合いゲームを運営してきた、最強の黒服の称号にふさわしい一撃。
     轟音と共に、茜音沢の右腕が吹き飛んだ。
     余波の衝撃により、避難が遅れた暗黒金持ちが瞬時に消滅する。

    【暗黒金持ち 残り15人】

     モニター室の倒壊が始まった。
     崩落する天井。崩壊する床。残った死体も次々下層に堕ち、あるいは崩れた天井の下敷きになっていく。

    「ぐっ……うううう……何故だっ、どうしてっ……!」

     敗者は呻いた。
     自身の敗北が信じられない。圧倒的に有利であったはずなのに。
     何故、何故、何故……!

    「茜音沢っ、貴様……!」

     ベールの上から左目を抑え、セピアは呻いた。ベールが真紅に染まっていく。

  • 413◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:46:14

    「いつの間に……!」

    「テメェが呑気に寝てる間にだよ」

     セピアが轟轟拳を放った瞬間に、それは起こった。茜音沢は、左腕で、あらかじめ拾って置いた銃弾を、指で弾いた。それは、ベールを貫通し、セピアの左目を通り、脳髄まで届いた。
     視野の半分を失ったセピアの轟轟拳は逸れ、茜音沢の右腕を奪うだけに留まった。

    (否、違う、違う……! こいつ、わざと右腕を防御に使い、私の轟轟拳を……!)

    「貴様、剣士の誇りは無いのか……! 利き腕を捨てるなど……!」

    「別に惜しかねぇよ。もっと大事なもん、奪われてんだからよ」

    「おのれぇ!」

     脳を銃弾が貫通した程度で、セピアは死なない。
     怨嗟の声を挙げながら、セピアは茜音沢に拳を放とうとし、
     それを躱される。

    「お前も、お前の主も……」

    「くそ、くそっ……!」

  • 414◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:46:47

    「俺の踏み台だ」

    「くそがぁあああああああああああああああああああああ!」

     茜音沢の拳が、セピアの頭部をベールの上から押しつぶす。
     セピアは一度痙攣すると、そのまま事切れたのだった。

    【マエストロ・セピア 死亡】
    【黒服 残り14人】

     ベールごとぐちゃぐちゃになった頭部の中で、偶然にも、移植された右目だけが残っていた。黄金に輝くそれを、茜音沢は無表情で見下ろし。
     そっと瞼を降ろした。
     そして今しがた殺した強敵のことは忘れたかのように、茜音沢は逃げ出した金持ちたちを追うのだった。

  • 415◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:47:37

    30話⑲を終了します、即座に30話⑳を投下します、これが本日最後の投下です

  • 416二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 04:48:39

    遅くまでお疲れ様です〜
    セピアさん爆弾卿への忠誠は本物だったのか…

  • 417◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:49:46

    「ちょっと運営卿……! どうにかしなさいよ貴方……!」
    「私にどうしろと言うのですか! 実権は爆弾卿が握っていたのです! 私に訊かれても知りませんよ!」
    「責任取りなさいよ! 責任を!」
    「嫌です! 何故高貴な私が責任を!」
    「ああ! 運営卿! 地図卿! その階段は滑るから、気をつけて!」
     警告は遅かった。
    「「うわっ」」
     我先にと逃げ出していた運営卿と地図卿は足を滑らせ急階段を転がり落ちていく。
    「だから言ったのに……馬鹿な人たちだ……って、わぁ、押さないで!」
    「ちょっと! 止まってないで早く行けって、うわぁー!」
     呆れていたまとめ卿はアイテム卿に押され、二人もまた階段を転がり落ちる。
    「「「「うわぁ~!」」」」
     団子状態になった四人の暗黒金持ちは急階段から落下したダメージで息も絶え絶えになっていた。
    「く、くそっ、酷い目に……高貴な運営卿であるこの私が……!」
     運営卿は出血する頭部を抑えながら忌々し気に呻く。
     次の瞬間。

  • 418◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:50:07

    ドカーン!

    「「「「ウギャーーーーーーーーーーーーーーー!」」」」

     デストラップ、轢殺トラックが通過し、四人の暗黒金持ちは全身がバラバラになって即死したのだった。

    【暗黒金持ち 残り11人】

  • 419◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 04:52:30

    30話⑳を終了します、これで30話は終了です……!

    本日も投下が遅くなり申し訳ありません、もう少し早い投下をマジで心がけます……!

    明日から新展開というか、ようやく生徒パートに戻るので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

    それでは本日も、ありがとうございました……!

  • 420二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 04:59:29

    乙です、おじさん構文金持ち含めた奴等の末路で笑っちゃう…先生も遂に五体無事で無くなったけどここから生徒たちと会うまでにどうなるんか楽しみだ

  • 421二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:08:55

    乙でした
    たまに投稿休んで丸一日ストックを書き貯める日を設けてもいいんじゃない?
    無理して早朝にもつれ込むよりはお互いのためになると思う

  • 422二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:16:28

    物語も佳境!!一応まとめましたが、全員いますかね…?

    長村洋(歴戦の傭兵)
    【状態】死亡【備考】ティタノボアに捕食された

    
破目囃子(ちいかわ)
    【状態】死亡【備考】ちいさくてかわいい生き物たちと共にティタノボアに捕食された

    田中 屍山血河(血ぃ河少女剣士)
    【状態】死亡【備考】マエストロ・セピアに砕かれて死亡

    目裏晴刈(暗黒微笑)
    【状態】生存【備考】姫氏原小毬を追跡、殺 害を目指す

    準 標(標準的異常者)
    【状態】死亡【備考】目裏晴刈に撃たれて死亡

    マエストロ・セピア(黄金芸術家)
    【状態】死亡【備考】茜音沢との決闘に敗北。引き換えに利き腕を奪った。

  • 423二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:17:04

    ペギー・ジョーダン(運営ピエロ)
    【状態】生存【備考】茜音沢に不満を募らせ引きこもっている

    ティエ・レン(壊拳)
    【状態】死亡【備考】ジジイに捕食され能力を奪われた

    笛吹享楽(饒舌な嘲笑者)
    【状態】死亡【備考】茜音沢を狙撃するの居場所がバレており失敗

    科葉師智(破滅主義者)
    【状態】死亡【備考】ボルガ爆弾により茜音沢に火傷を負わせた。お許しください!

    高地鼓一(殺/し/屋)
    【状態】死亡【備考】ジジイに捕食され能力を奪われた

    九龍(百人のクローン)
    【状態】5人生存【備考】ジジイに捕食され能力を奪われた。茜音沢とジジイから逃亡。

    宇都 紀久子(一般異能殺し)
    【状態】生存【備考】谷淵と共に戦場へ打って出るかも?谷淵の命を狙っている。

  • 424二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:17:49

    ジョン・ジョンソン(鑑賞卿)
    【状態】死亡【備考】ティタノボアに捕食された

    錠著者絵(ザマス卿)
    【状態】生存【備考】張 湖李を撃ち殺した。残り部下8人。
    
谷淵玄夜(扇動卿)
    【状態】生存【備考】宇都と共に戦場へ打って出るかも?

    スーツの男(内通者卿)
    【状態】死亡【備考】ドアノブ針に気づかなかった。管理人さんとつながっていたかも?

    張 湖李(懐古卿)
    【状態】死亡【備考】いい感じに退場しようとしたがザマス卿に全てぶち壊された

    冬爺凛(次官殿卿)
    【状態】生存【備考】墓蟹を救助して本部に全デストラップを解放。爆弾卿の友人らしいが?

    墓蟹 毒美(新参卿)
    【状態】生存【備考】冬爺と共にワープ装置前で待機。まとめ卿の中ではBOGAN・D・OKUMIで爆弾卿の隠し子説がアツい。

    呉偉(拳王卿)
    【状態】生存【備考】増殖した九龍に恐れをなしてワープ装置前へ向かう


  • 425二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:23:40

    茜音沢 仁史(元担任)
    【状態】生存【備考】科葉、笛吹、九龍、ジジイとの連戦により徐々にダメージを受け、セピアとの決闘でついに右腕を失った。いまだ勝てる気はしない。

    ボーガン・D・マイト(爆弾卿)
    【状態】死亡【備考】茜音沢に裏切られてあなたは殺されたんです!その頭の中に爆弾を仕掛けられて、今のあなたは人間ロボットなんDA!

  • 426二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 05:46:01

    お二方ともお疲れ様です
    めちゃくちゃキャラ減っちゃったけど残ったメンバーと生徒がどう絡むのか楽しみすぎる

  • 427二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 08:00:32

    廃村の老人(ジジイ)
    【状態】生存(不滅?)【備考】茜音沢&セピアと交戦。セピアの必殺技で吹き飛ばされ一時復活不能に。複数人の異能を殺して奪っている。

    ティタノボア(頂点捕食者)
    【状態】生存【備考】茜音沢とセピアにボコボコにされて逃亡。

  • 428ドラギモスと墓蟹を投げた人23/05/12(金) 11:38:34

    まさか名前の始まりが「ぼが」なだけでこんな考察が生まれようとは……

  • 429二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 18:23:27

    何が酷いってワンピースじゃないんだからボーガンは名前なのよね…

  • 430ボーガン投げた23/05/12(金) 18:43:59

    そんな…あにまんと言えばで流行ってたボルガ博士とワンピカテの複合体みたいに名前にしただけなのに与太なのかすら判別不可な説が生まれるだなんて…

  • 431二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 20:32:26

    生徒の廃村組、ジジイと戦わなくて本当によかったなぁ…

  • 432◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:24:14

    >>422

    >>423

    >>424

    >>425

    >>427

    まとめ本当にありがとうございます……! 通称を付けてくださり助かります……! 特に懐古卿の一見尊敬しているけれど裏で蔑称として使われている感じいいですね……! 爆弾卿と墓蟹に関係性があるかは……わかんないッピ……




    >>421

    仰る通りですね……! 日付跨ぐようなら翌日に回すことにします……! ご指摘ありがとうございます……!

  • 433◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:29:50

    生き残っている生徒一覧です……!
    新たに番号を振り直しました……!

    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)
    2 篠宮 纏(しのみや まとう)
    3 Nek-O(ネック・オー)
    4 堀木 彩(ほりき あや)
    5 マネモフル=タマネ
    6 三田 哲(みた とおる)
    7 金木 冥(かねき めい)
    8 姫氏原 小毬(きしはら こまり)
    9 千頭之 のづち(ちずの のづち)
    10 歯荷 仄花(はに ほのか)
    11 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)

  • 434◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:33:26

    30・5話の舞台は食堂です。

    バトルを禁止されているためダイスは振りません

    視点が一巡したら、31話へ進みます……!

    30・5話①の視点人数dice1d4=2 (2)

  • 435◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:34:28

    30・5話①の視点人物dice2d11=1 3 (4)

  • 436◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:35:38

    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)
    3 Nek-O(ネック・オー)

    以上の情報を元に30・5話①を作製します……!
    日付が変わる前に完成できなかった場合は、明日に回します……

  • 437◆xaazwm17IRZa23/05/12(金) 22:48:14

    石川 大輔(いしかわ だいすけ)のロッカーダイスdice1d100=11 (11)

    虎肝 ドラギモスのロッカーダイスdice1d100=28 (28)

  • 438◆xaazwm17IRZa23/05/13(土) 00:54:36

    やっぱり深夜遅くの投下になりそうなので明日に回します……申し訳ないです……!

  • 439二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 00:56:02

    大丈夫ですよ〜ゆっくりお休みください!

  • 440二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 07:21:02

    生徒視点も久々だな

  • 441二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 08:22:18

    石川とネックオー視点とかどうなるのか気になりすぎるな

  • 442二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 09:15:41

    殺してきた人間と殺されてきた動物で対極的な選抜っすね

  • 443二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 17:30:53

    HOSHU

  • 444二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 21:46:22

    保守

  • 445◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:49:28

    やはり日付が変わってしまった……完成したので30・5話①投下します……!
    お手すきのときに読んでいただけると幸いです……!

  • 446◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:50:02

    「で、俺に何を命令したいワケ?」

     ラーメンを啜りながら石川大輔は隣に座る男/女、虎肝ドラギモスに問いかけた。

    「ん、ん、ん…………」

     包帯でぐるぐる巻きになった小柄な人影は、流動食を口に流し込みながら、ジト目で隣の大柄な男を見る。

    「何だ? まだ喋れねぇのか? 一回しか殴ってねぇだろ」

    (マジで貧弱だなコイツ……)

     が、負けたのは事実だ。
     抗弁はいくらでも出来るのだろう。タイマンでは無かったし、石川は連戦だったし、何より先に気絶したのはドラギモスだ。ついで、気絶から目覚めたのもドラギモスのが遅かった。
     石川は金木の召喚したマッハ婆に吹き飛ばされて十五分後には意識を覚醒していたが、ドラギモスはいつまで経っても目を覚まさず、瓦礫からロッカーを掘り起こすのも、堀り起こしたロッカーに首輪を近づけるのも、アイテムを取り出すのも、全部他の人間がやった。放送が流れた時も、ドラギモスは気絶しっぱなしであり、放送から三十分ほど経ち、ようやく目を覚ましたのだった。

  • 447◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:50:34

     それから、一先ず全員で腹を満たそうということになり、11人で食堂に移動した。
     食堂。廃校が倒壊した今、食堂などあるはずもなく、もし倒壊していなかったとしても、廃校の食堂は必然的に廃食堂であり、行ったところで支給された不味い携帯食料を食べるだけである。……と、思っていたのだが。
     放送終了直後に、校庭に白い建物が出現した。看板には「食堂」と書かれていた。
     食堂の誕生である。
     最初は警戒していた生徒たちだったが、面白れぇと石川が真っ先に入り、意を決した表情でマネモフルと千頭之が続いた。
     食堂には食券機があり、メニューを選ぶと、カウンターにその料理が出現するらしい。

    「つまり、グルメテーブルかけってわけだな」

     ドラえもんの秘密道具で理解した石川はラーメンを注文する。
     本人にその気は無かったのであろうが、結果として毒見役になり、感想としては学食のラーメンよりちょっと味が落ちる、との評価だった。

  • 448◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:51:34

     それでも、毒は入ってないらしく、石川はビックリ人間だから毒とか入っててもわかんないんじゃない? という金木の意見で、次は三田が注文することになった。パスタを啜ったところ、やはりファミレスのパスタより少し味が落ちるが美味しいとのことで、ようやく他の生徒も安心してメニューを選ぶことが出来た。
     ドラギモスは食事をする体力も残っていないのか、自分のロッカーから取り出した流動食を食べている。そこまで痛めつけた張本人の横に座っているのは、彼/彼女の胆力が並外れていることを示しているのか。

    「……ぷはっ」

     流動食から口を離し、ドラギモスは一息ついた。

    「喧嘩は僕たちの勝ちって、理解でいいんだな?」

    「それでいいって、言ってんだろ。で、俺に何させたいんだよ? 自殺か? 謝罪か?」

    「いや、お前に命令することはただ一つだ——『僕たちに危害を加えるな』」

     あん? と石川は面食らう。

    「そんだけでいいのか?」

    「いいよ」

  • 449◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:52:12

    「仲間になれ、じゃなく?」

    「何だ、仲間に入れて欲しいのか」

    「……仲間外れなんて、俺悲しいぜ~」

     わざとおどけた様子を見せると、石川はラーメンを啜った。

    「……なぁ、せっかくだし、食事を取りながら情報交換をしないか?」

     三田の提案に、それぞれが頷く。

    「情報交換……何を話すの(*’ω」

     顔の左半分に氷水を置いた堀木が不思議そうに首を傾げる。

    「そうだね……ゲームが始まって、何を見て、誰と出会って……誰を殺したのか。全員正直に話すべきだ」

     三田の言葉を聞き、金木はじっと歯荷の顔を見た。歯荷は鬱陶しそうに視線を逸らした。

    「……誰から話すんや?」

     マネモフルの言葉に、全員が顔を見合わせた。

    「出席番号的に、俺から話すぜ」

  • 450◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:52:57

     口火を切ったのは石川だった。

    「俺の話を聞いて、俺を殺したいと思った奴、いつでも相手してやるぜ」

     この中で明確にゲームに乗っていた人物。今もなお、心根が変わっていない人物。
     石川大輔は、どこか楽しそうに、このゲームで自身が取った行動を語り始めた。



    (いいねぇ……)

     と、石川は思う。
     謎の老人に出会い、姫氏原に襲いかかり、キルコと戦闘になり、金輪を殺し、ねうねいを蹴り、ラッタッターを殺し、瀧沢を殺し、ドラギモスたち負けた。
     たった12時間でここまで濃い経験をしたのは初めてだ。石川が語り終えたとき、食堂の空気は、怒りが渦巻いていた。ただ飯を食っているだけで肌がぴりつく。いつ、殺し合いが再開してもおかしくはない。そんな空気だった。

    (ドラギモスには危害を加えないって約束したけどよぉ、正当防衛なら仕方ねぇよな。飯食ったらだいぶ元気になったし、こいつらと再戦するってのも、悪くねぇかもな)

     誰か殴りかかって来ねぇかな、と石川はどこかわくわくしながら皆の反応を待つ。

  • 451◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:53:42

    「……お前、反省してるのか?」

     千頭之が絞り出すように言う。

    「反省?」

    「クラスメイトを何人も殺しておいて、その態度は何なんだ……!」

    「反省、殺して、反省……!」

     ぶはっ、と石川は吹き出す。

    「ぎゃはははははははははっ! 反省って何だよ! おいおい、道徳の授業でも始めんのか? 反省したら殺していいのかよ!」

    「お前……いい加減に……」

     立ち上がりかけた千頭之を、隣に座っていたマネモフルが制する。

    「じゃ、邪魔するなマネモフル……っ!」

     押しのけようとした千頭之は、マネモフルの肩が震えていることに気づく。
     千頭之は何かを察したのか押し黙った。
     ドラギモスもまた、金輪を殺したくだりで拳を握りしめた。しかし、千頭之のように激高することなく

  • 452◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:54:21

    「……昼飯、楽しみだったんだけどな」

     と、落胆したように呟いただけだった。
     堀木もまた、ラッタッターの死に大きな反応は示さなかった。ただ、深夜のダンスを思い出すかのように、目を瞑っただけだ。
     三田は瀧沢の死のくだりで視線を床に落とした。自身の無力さを改めて突きつけられているかのようだった。
     篠宮は冷たい瞳で石川を睨んだ。石川は嬉しそうに目を輝かせた。
     重い沈黙が場を支配する。

    (……流石に挑発には乗らねぇか。残念だぜ)

    「…………千頭之よ」

     と、口を開いたのはNek-Oだった。
     既にその姿は猫というより豹やジャガーに近い姿になっている。それが人間のように椅子に腰かけてうどんを食べているのだから、二本足の猫というより獣人といった雰囲気だった。

    「何だ、Nek-O」

  • 453◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:54:49

    「そして他の者も、ここはしばし遺恨を忘れようではないか。殺し合いでどう振る舞ったかは千差万別あるが、皆自ら望んで参加したわけではない。いきなり首輪を付けられ、殺し合いを強要され……仕方なかった。殺し合いが始まったとき、今こうやって食堂で平和に昼飯を食べれると誰が予想した? そこの姫氏原のように、首輪から逃れた生徒が出ると、誰が想像していた?」

     マネモフルが俯く。
     石川が鼻で笑う。
     その中で、Nek-Oの言葉は続く。

    「吾輩はこの島で既に五回死んでいる。下手人が分かっているのもあれば、分からんものもある。もしかしたらこの中に吾輩を殺した者もおるのかもしれん」

    だが、特別に許そうとNek-Oは言った。

    「ヒューマニズムの観点から言っているのではない。襲われた恨み、騙された恨み……大切な人を殺された恨み。恐らくそれらの因縁は複雑な糸となって吾輩たちを縛っている。全員が復讐のために動けば待っているのは地獄だ。今この島で生存者はここに居る者だけだが、聞けば参加者を襲う怪物が何体か確認されている。これ以上殺し合わないためにも、生存率を上げるためには、一旦、遺恨は置いておこう。……全てはこの島を出てから」

  • 454◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:55:46

    「……………………分かった。済まない、続けてくれ」

    「では、このまま吾輩が話そう。……最初に合流した二人は、もう亡くなっている」

     Nek-Oは話した。廃病院で出会った麻井と里美。花子さんによって麻井が死亡。里美と共に廃校へ向かったが、何者かに銃撃され一度目の死亡。続けて宇都に殺され二度目の死亡。次に意識を覚醒させた時には、更に魂のストックが二つ減っていた。その後、ドラギモス・姫氏原と合流し、里美の死体を確認。ドラギモスの首輪解除を見届けたところで、堀木とねうねいが姿を現し、そして、砲撃による五度目の死亡。
     目を覚ましてからはドラギモスをサポートしながら石川と戦闘し、今に至る。
     石川と違い、殺人の記録ではない。聴衆の反応も落ち着いたものだった。
     花子さんのくだりで、ドラギモスが悲し気に目を細めた。誰が召喚したものか、彼/彼女はすぐに理解したのだろう。
     ねうねいが出るくだりで、マネモフルが肩を震わせた。本当は、彼も石川を糾弾したい。が、出来ない。他の人格の仕業とはいえ、彼は石川側の人間、殺人者なのだから。
     そして、里美の死体を見つけたくだりで。金木は歯荷を見た。歯荷は金木に見られていることに気づき、そっと椅子を引いた。

  • 455◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:56:24

    (……おっ、これは……)

     二人が臨戦態勢に入ったことに気づいたのは、石川だった。
     今の歯荷は、強い。疲労困憊とはいえ、石川と戦闘が成立する程度の実力を持っている。そして、金木もまだ、例のディスクを所持している。

    (女同士のバトル来るか……いいな、間に俺も入れて欲しいな……)

    「ちょっといいかな~! 私、言いたいことあるんだけど——」

    「里美さんは、私が殺しましたわ」

     金木の糾弾の前に、歯荷は口を開いた。

    「武器が欲しくて、殺しましたの」

     三田は知っていたのだろう。隣の金木を庇うように、そっと体を前に出した。
     Nek-Oはぎょっとした様子で歯荷を見た。

    「そうか、吾輩は里美を殺した者と共闘していたのか……」

     篠宮はショックを受けた様子で歯荷を見た。

    「そんな、歯荷さん、どうして……」

     武器が欲しくて。

  • 456◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:57:06

    (僕が、歯荷さんに強い武器を与えなかったからか?)

     自分の決断が、遠回しに無辜の命を奪っていた。
     篠宮はその事実に、打ちひしがれていた。

    (……さて、どうなるんかねぇ)

     チャーシューを嚙みながら、石川は思う。
     向こうから攻撃してこない限り、石川が彼らを襲うことはない。喧嘩で負けたのだから、そこは従う。
     ただ、このメンバーが纏まることが出来るのか。五分五分だと石川は観ていた。

    (クラスじゃ碌に接点ない奴ばかりだろ。俺みたいに乗ってた奴もいるだろうしな。Nek-Oの言葉は理想論だ。1時間前まで殺し合ってた高校生が、急に仲良くできるものかよ)

     ランチタイムは続く。食堂は暴力禁止。しかしそれは、平和を意味しない。第二次世界大戦の火種は、第一次世界大戦の戦後処理の失敗から始まったという。ランチタイムが終わったとき、彼らは一致団結して運営と戦えるのか、それとも殺し合いを続行するのか。
    全ては、この会議にかかっている。

  • 457◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:57:42

    30・5話①終了します……!

  • 458◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:58:28

    30・5話②の視点人数dice1d4=1 (1)

  • 459◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 02:59:13

    30・5話②の視点人物dice1d11=6 (6)

  • 460◆xaazwm17IRZa23/05/14(日) 03:02:13

    6 三田 哲(みた とおる)視点中心に30.5話②を作製します……!

    日付跨がない投下を心がけます……! 明日か明後日には投下できると思います……!

    また、30・5話①は色々省略している部分もあるので、その辺はそれぞれが視点になったときに改めて描写します……!

  • 461二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 03:52:13

    遅くまでお疲れ様でした!
    頂上決戦を見た後だと金木がジジイ召喚すれば石川瞬殺できる気がするのよね…みんな死ぬけど…

  • 462二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 08:17:16

    ドラギモスくんちゃんボロボロすぎて草
    ロッカーアイテムが流動食でよかったね……

  • 463二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 08:19:58

    やっぱり石川はすんなり改心とはいかないか

  • 464二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:58:48

    ほし

  • 465二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 20:03:59

    ほしゅ

  • 466二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 00:14:11

    保守
    金木と三田の絡みでしか得られない栄養があるので期待

  • 467◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:45:21

    30・5話②を投下します……!

  • 468◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:46:02

     石川が自らの行動を説明し、続いてNek-Oが後に続き。
     三番目の歯荷の告白は、場に衝撃を与えた。
     三田たちから逸れた後、彼女は里美を殺した。それも正当防衛や、怨恨ではなく。武器が欲しいという、利己的な理由によって。
     死にたくなかった、という。

    「マネモフルさんに襲われて、気が動転していたんですの。私の武器は、鰐淵さんの特殊警棒でして。一応、篠宮さんから透明な日本刀は作ってもらっていたんですけれど。それで銃を相手どれるはずないじゃないですか。だから、死にたくなかったので、私は里美さんを……」

     歯荷の言葉は淡々としていた。余計な感情が含まれていない。三田が知る、普段の歯荷のようなおしとやかな雰囲気はなく、このゲームで度々目にしたコミカルな空気もなく、機械の如く冷静に、彼女は自らの殺人を明かした。
     それこそが、歯荷仄花の本性なのだろう。
     金木冥と同じく、ミステリーでは犯人役になるキャラクター。

    「歯荷さぁ、それ、嘘だよね?」

  • 469◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:46:52

     隣の金木が甲高い声で言った。

    (まだ、嘘をついているのか)

     三田の心は沈んでいく。

    「嘘? どの辺りが嘘なんですの?」

    「私見てたんだけどさぁ、あんた、里美を何か変な拳法で殺してたよね。灘何とか流だっけ。元から使えたの? 違うよね。殺し合いのどっかで覚えたんでしょ? で、実験台として里美を選んだんじゃないの?」

    「そう……なのか……?」

     Nek-Oが信じられないといった様子で歯荷へ問いかける。

    「……ワシのせいやな……」

     マネモフルが暗い声を出す。

    「ってことは歯荷、お前、マネモフルと瀧沢の戦いを見てたのか!? 私がマネモフルに襲われているところも……」

     千頭之の言葉に、歯荷は頷く。

    「…………ええ、視てました」

    「……もし瀧沢が来なかったら、私を見殺しにしたのか?」

  • 470◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:47:37

    「最低な女ね、歯荷仄花!」

    「金木さん、君が真っ先に逃げたこと、僕は忘れてないからね」

     ヒートアップする金木に、三田は釘を指す。
     む、と金木は形成不利を悟ったのか口を閉じる。

    「逆に訊きますけど、千頭之さん、同じ状況だったら、あなたは私を助けますの?」

    「そ、それは……」

    「『ここで死ぬわけにはいかない、家族を助けるためにも』なんて理由をつけて、助けないんじゃないですの? だってあなた、瀧沢さんの時も、ロッカーを医薬品に使うこと、渋ってましたもんね。そんなあなたが、私を助けたとは思えませんわ」

     千頭之は、とうとう黙ってしまった。

    「歯荷さん、一つ聞きたい」

    「何ですの、篠宮さん」

    「もし僕が透明な銃を君に貸していたら、君は里美さんを殺したかい?」

    「…………殺した、でしょうね。それだけ護衛忍者は、魅力的なアイテムでしたから」

  • 471二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 02:47:44

    このレスは削除されています

  • 472◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:48:34

    「そうか……」

     篠宮は寂し気に目を伏せる。
     歯荷は溜息をついた。

    「あの、自己弁護してもよろしくて?」

    「いいわけないだろ、殺人女!」

    「金木さん、今は歯荷さんの話を聞こう」

    「美人局してたビッチが調子乘んな」

     三田の言葉と石川の罵倒に挟まれ、金木は大人しくなる。

    「皆さんがどこまで状況を把握しているか分かりませんが、廃校を残骸に変えた戦車、あれを誰が操作していたか知っていますかしら? 最初はマネモフルさんでしたが」

    「ああ、ワシが操っとった。け、けど、その後の砲撃はワシやない! 信じられへんとは思うし、だからといってワシの罪が軽くなるわけやないが、これだけは本当なんや!」

    「ええ、戦車を操っていたのは霧田キルコですわ」

    「キルコが……」

  • 473◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:49:11

     千頭之が小さく零す。

    「キルコ……そうか……」

     ドラギモスがショックを受けたように呟いた。
     その様子を堀木が目ざとく見つけ、肩を落とす。

    (キルコがここにいないということは、既に死んでいる。ここにいる誰かが殺したんだろう。……見たところ、キルコはドラギモスくんちゃんにとって大切な人らしい。……ここにも不和の種がある。キルコ殺しの犯人が素直に名乗り出てくれればいいが。もし隠そうとしたら、人狼ゲームの始まりだ)

    「戦車の砲撃が一時止まっていた瞬間があったことを、皆さん覚えているでしょう?」

    (そう、なのか?)

     三田にはピンと来なかった。
     三田は、最初の砲撃で気を失い、意識を取り戻したときには、戦車は瀧沢とねうねいの活躍によって廃校から飛ばされていたのだ。

    「確かにあった……」

    「ああ、そう言えば……」

  • 474◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:49:40

     ドラギモスと千頭之は心当たりがあったらしい。他の者も、何人か頷いた。

    「あれは、私がキルコと戦ってできた空白だったんですの」

    「え、歯荷お前、キルコと戦えんの!? マジで!?」

     石川が嬉しそうに言った。

    「お前、そんな強かったのな! さっきは手抜いてたのか? 後で再戦しようぜ」

    「絶対嫌ですの。私がキルコさんと戦えたのは、マネモフルの灘神影流、瀧沢さんのジークンドー、そして、里美さんから奪った護衛忍者があったからですわ。どれか一つでも欠けていれば、私は今ここに居ません。結果として護衛忍者は使い潰してしまいましたが……。そして、私があそこでキルコを止めなければ、死んでいた人も、何人かいらっしゃるのでは? あのタイミングで廃校を倒壊させられて生き残れる人は何人いますのやら」

    「た、確かに……」

    と、行ったのは姫氏原である。彼女は戦車の砲撃時、本校舎三階に居た。校舎が倒壊していれば崩落に巻き込まれて死んだ可能性が高い。もっと言えば、戦車の砲撃が止んだことで、一階に降り、里美の死体を見つけたことで、首輪の対称実験が出来、その結果、姫氏原は首輪の呪縛から逃れることが出来た。

  • 475◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:50:24

    「それって証明できるの?」

     と、金木が訊く。

    「私、あんたが里美を殺したところは視たけど、キルコと戦っているところは見てないし、護衛忍者が壊れるところも見てないよ。っていうか、ここにそれ見た人いないよね。あんたがみんなの心証を有利にするために嘘ついてる可能性だってあるわけで。もっと言えばさ、まだ優勝狙ってて、護衛忍者をどこかに潜伏させてるんじゃないの? そうじゃないって証明できる?」

     今度は三田も金木を止めなかった。戦車の砲撃が止まったのは事実らしいが、歯荷が止めたという証拠はない。

    「証拠なら見せれますわ」

    「どうやって?」

    「キルコの記憶を、ディスクで覗けばいいじゃないですの」

    「あ、確かに」

     金木がディスクを自らの額に突っ込もうとする。

    「金木さん、ちょっと待った」

    「え、何?」

  • 476◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:50:59

     キルコの記憶。それは、劇物だ。彼女はゲームに乗っていた。記憶は、殺人フィルムを観るのに等しい。そして、キルコは死んでいる。ならば、キルコの記憶は死のショックで終わっているはずなのだ。そんなものを観たら、最悪、発狂する危険性がある。
     が、三田が止める前に、金木はディスクを額に突っ込もうとした。
     パチン、という音と共に、ディスクは金木の額で弾かれ、机の上を転がった。

    「あ、あれ……?」

     金木は慌てて掴み、再度額に挿しこもうとするが。

    「は、入らない……!」

    「……どうやら、一度使った者は、もう使えないみたいだな」

     ドラギモスは冷静な口調でそう言った。

    「そ、そんな……」

     金木は顔を青ざめさせた。
     金木がこの食堂で強気で居られたのはディスクを所持しているからであり、もし突発的な戦闘が始まっても(食堂は戦闘禁止だが、食堂から出てから戦闘になる可能性は十分にある)先ほど石川を倒したようにマッハ婆などの怪異を召喚して有利に立ち回れると考えていたからだ。

  • 477◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:51:33

     ディスクが使えないとなると、金木が頼れるのは鍋の蓋だけになる。

    「………………は、歯荷ちゃんっ! 色々言ったけど、同じクラスメイトだし、私たちズッ友だよね!」

    「ええ……」

     歯荷は呆れたが、やがて肩を竦めた。

    「とにかく、ディスクがある以上、隠し事をしても仕方ありませんわ。私は殺人者ですし、Nek-Oさんも一回殺しています。……私は、死にたくないだけですの。これからも、死なないために行動しますわ。……そんな私を信用できるかは、皆さんにお任せします。ただ、信用できないと、攻撃するんでしたら、私も抵抗します。……私からは以上ですわ」

     歯荷の、長い告白が終わった。

    (まだ、三人目か……)

     まだ、幾つもの地雷が残っている。三田の知らないだけで、隠れた殺人者がいるのかもしれない。

    (元々僕たちはバラバラだった。昨日まで碌に話したこともないようなクラスメイトと食事を共にしている。……でも、どうしてだろう。皆が自分を晒す度に、どんどん僕たちはバラバラになっている気がする)

     ランチタイムは終わらない。
     主催戦に向けて一致団結できるのか。それは、誰にも分からない。

  • 478◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:52:03

    30・5話②を終了します……!

  • 479◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:52:58

    30・5話③の視点人数dice1d4=4 (4)

  • 480二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 02:53:08

    乙でした
    金木これからどうなるんだろう
    歯荷ちゃんと同じくなんだかんだ味方になってくれるのかなと思ったけど地の文で「邪悪」って明言されてるし
    とんでもないところでとんでもないやらかししないといいんだけど

  • 481◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:54:20

    30・5話③の視点人物dice4d11=3 9 1 11 (24)

  • 482二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 02:56:45

    >>480

    展開的にも選択の時は来るだろうな

    ちょうどランダムアイテムに執行首輪なんてのもあったし

  • 483◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 02:57:18

    堀木 彩(ほりき あや)
    千頭之 のづち(ちずの のづち)
    篠宮 纏(しのみや まとう)
    虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)
    が視点人物です。(みんな同じ食堂に居るのであんまり視点とか関係ないかもですが)

    本日も遅くなり申し訳ありません……!
    今日も感想をありがとうございます……!

  • 484二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 03:32:45

    お疲れ様でした〜!
    そういえば堀木視点の回は初かも知れないな
    キルコの襲撃で曖昧になってたけど、結局悪霊の正体って誰なんだろ

  • 485二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 03:42:14

    ここにきて堀木の内面が描写されるのか

  • 486二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 03:55:26

    せっかく生き残れたのにギスギスした嫌な空気になっていく様になんか興奮してきた

  • 487二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 04:18:34

    そうは言っても他にまだバレてない厄ネタが残ってたかな?
    堀木に関してはキルコが殺人鬼だってみんな知ってるし、強いて言えば姫氏原ちゃんが目裏を殺したのとか?

  • 488二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 04:21:39

    >>480

    とんでもないやらかし……

    頭脳担当が必要な場面でドラギモスと三田を後ろから刺すとか?

  • 489二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 07:03:56

    乙です、足掻こうとしても主催を敵視できてかつ目的を見落とさないタイプは結構死んでしまったからな…この議論がガチのターニングポイントや

  • 490二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 07:30:35

    このレスは削除されています

  • 491二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 07:40:02

    暗黒金持ち案、三田くんと金木ちゃんに絡んでくれたら嬉しいです…!



    【名前】希咲 枯春(きざき こはる)


    【性別】男


    【外見】片眼鏡をかけたトレンチコートの紳士。蒼白な顔からは一切の感情を読み取れないが、左眼についた巨大な縫い傷から歴戦の猛者であることが伺える。
    【趣味】星を眺めること


    【好きなもの】運命


    【嫌いなもの】師匠 

    【性格】彼の心は死んで久しい。あにまん学園を取り巻く事件だけに強く執着している。
    【特技】名探偵


    【詳細】希咲枯春は国家の闇を追い続けた偉大な探偵の助手だった。
    
探偵の亡き後 仕事を継いだ希咲は表舞台から姿を消したが、未だ裏社会で彼の名を知らぬ者はいない。
    【備考】師の遺した情報を元にこのデスゲームに辿り着いた。
    
この事件について少しでも近くで調べるため、外道の探偵は手段を選ばない。

    彼の師匠は暗黒金持ちの一人だった。
    やはり師匠が遺した人脈を元に島のデスゲームに招待された。

  • 492二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 16:43:32

    保守

  • 493二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 20:15:07

    保守

  • 494二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 21:56:13

    こんな時に新條がいてくれたら……!

  • 495◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:07:03

    30・5話③堀木パート投下します……!

  • 496◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:07:33

    「小毬……小毬……!」

     抱き上げた彼女は、既に息をしていなかった。
     セーラー服は血でべったりと汚れている。
     虚ろな瞳は、既に何も映していなかった。

    「どうして、どうしてこんなことに……!」

     殺し合いが始まってから、堀木彩はずっと悩んでいた。
     『メンタルが弱い』彼は、恵まれた身体能力を生かすことも出来ず、支給されたショットガンを活用することも出来ず、ただ無為に恋人を探し回り、かといって他のクラスメイトと遭遇することは怖く、時間だけを浪費した。
     そして、廃校に辿り着いた時。姫氏原小毬は、死んでいた。

  • 497◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:08:12

    「僕に……僕にもっと、勇気があれば……!」

     後悔しても、全ては手遅れだ。堀木彩は守れなかった。それだけが、純然たる事実。

    「残念ですが」

     声が聞こえた。

    「私は上位者の元へ帰還しなければなりません。なので、あなたたちには死んでもらいます」

    「お前が……お前が小毬を……!」

     クラスメイトだった女生徒に銃を向ける。
     駄目だ。
     怒りが、悲しみが、恐怖が——震えが止まらない。
     銃口がブレる。姿勢を保持できない。

    「うわああああああああああああああっ!」

     それでも引き金を撃つ。あらぬ方向に弾丸が飛ぶ。
     そして、頭を何かが駆け抜ける気配と共に、堀木彩の意識は闇に沈んだ。

  • 498◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:08:46



    「ほ、堀木くん……大丈夫?」

     トラバーチンの天井には穴が空き、2階が見えていた。心配そうに覗き込む姫氏原に、堀木は微笑む。

    「大丈夫だよ、小毬(*‘∀」

    「でも、魘されてたよ……」

    「あはは、夢の中で映画でも観てたのかも!(^」

     誤魔化されている、と姫氏原は気づいた。
     けれど、それ以上追及は出来なかった。
     今更、ここまでしてもらって、堀木の気持ちを疑おうとは思えない。だから、堀木が話したくないのなら、無理に訊こうとは思えなかった。
     きっと、自分を思ってのことだから。

    「ねぇ、堀木くん」

  • 499◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:09:13

    「なぁに、姫(*_)」

    「私さ、人を殺したんだ」

     殺し合い開始直後。姫氏原小毬は、目裏雨子を殺した。
     それは、幾らでも言い訳が出来る行為かもしれない。
     目裏は完全に姫氏原を甚振るつもりで襲っていた。
     それに、実際に手を下したのは悪霊だ。
     もっと言えば、目裏がやった行為、自らのクラスメイトを殺し合いの駒として提供したという事実を知れば、正当な復讐とすら言えるだろう。
     しかし、殺人は、どれだけ正当化しても、殺人である。
     自分が人殺しであるという事実は、姫氏原の心を苛んでいた。

    「姫も、そうだよ(*^-)」

    「え……?」

    「キルコを、殺した(*_)」

    「あ、あれは仕方ないよ……!」

  • 500◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:09:43

    「小毬、姫はさ、可愛いけど、良い子じゃないんだ( ゚Д) たとえ人を殺してでも、姫は小毬に生きてて欲しいよ(*^-)」

    「もし、私が死んだら、悲しい?」

    「あはは(笑) 小毬は絶対死なないよ、姫が守るから(*_)」

     彼らがドラギモスたちと合流したのは、その数分後のことだった。



     歯荷の次に話したのは、三田だった。
     といっても、前者三人(一人は猫だが)と比べて、そこまで波風が立つ話題は無かった。
     彼しか知らない行動が殆どないからだろう。金木の自殺志願を思い留まらせ、マネモフルから逃げてきた千頭之と遭遇、武器を求めて廃校に入り、星峰、篠宮、歯荷、芝野、瀧沢と合流。瀧沢の解毒薬を探し手に入れたものの、マネモフルに襲われる。瀧沢に逃がされ、自分のロッカーから自動小銃を引き当てるが、宇都に襲撃され、助けに戻ることが出来なかった。その後マネモフルに勝利した瀧沢・千頭之と再合流し、戦車を発見。星峰のロッカーを開けるために音楽室に向かい、歯荷と再合流。ディスクを引き当てるところを目撃するが、戦車に砲撃され、気絶。金木によって意識を取り戻され、ドラギモスと共に石川に挑んだ。

  • 501◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:10:10

    「現段階でいくらかこのゲームについて考察できることがある……けれど、それは後に回そう。次、誰が話すかい」

    「んー、姫が話そうかな(‘Д)」

     手を挙げたのは堀木だった。
     ラッタッターとダンスを踊り、その後一度別れたが、ねうねいを加えて再合流。垣根の死体を見つけ、廃校に入る直前で石川に襲撃を受ける。蹴られたねうねいは瀕死になり、ラッタッターが石川の足止めを行った。その隙にねうねいを治療する手段を探し、ドラギモスから薬を受け取る。しかし戦車の砲撃を受け、昏倒。目を覚ました後、姫氏原を襲うキルコを殺し、保健室で治療を受けた。

    「おおっ! お前がキルコを倒したのか! やるじゃねぇか、堀木! なぁ、後で俺と……」

    「遠慮するよ(*^-)」

    「魔法の薬って、私が飲んだやつか……」

  • 502◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:11:09

    「……ねうねいは、自分の体の中から魔法の薬だけ取り出したんや。その代償に……」

    「……詳しくは、二人の番のときに訊くよ(*^-) でも、そっか、めあめあは結局、そうしたんだね……(*_)」

     堀木の話もまた、そこまで波風を立たせるものではなかった。
     石川が期待に目を輝かせ、千頭之が小声でありがとう……と呟き、そしてドラギモスは黙祷するかのように目を瞑っていた。

    「これで姫の話は終わり!(*_) 次は、誰の番かな(‘Д)」

     話し終えた堀木は水を一口飲んだ。

    【もし、私が死んだら、悲しい?】

    (あははははは😃 小毬は死ぬわけないって、そんな悪いこと起こらないよ😅 でも、もし万が一、億が一、兆が一、そんなことが起こったら🤣
    …………『僕』は、どんなことをしても、小毬を取り戻す)

     もしこの場に、星峰が、あるいは芝野が生きていれば。堀木の心によぎった一瞬の思考に気づいたかもしれない。
     かつて、キルコという少女がそれを願ったように。
     彼女を殺した少年もまた、いつかそれを願うのかもしれない。
     惨劇の火種が、また一つ。

  • 503◆xaazwm17IRZa23/05/15(月) 23:11:55

    堀木パート終了です……! 時間を置いて千頭之パート投下します……!

  • 504二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:21:07

    あれ?戦車の砲撃を受けて昏倒は嘘じゃないか?
    悪意ある嘘ではないんだろうけどその間堀木くんは何をしてたんだ?

  • 505二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:28:29

    ここまで生き残ったんだからもう生徒間での争いはやめて欲しいな…

  • 506二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:31:13

    バトロワってマジでもうやめてくれと思ったシーンが懐かしいと思う瞬間があるくらい辛いシーンの連続になるよね...

  • 507二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:32:52

    みんな平和に生き残ってほしい気持ちとドロドロにやりあってほしい気持ちが両方ある……
    ハッピーエンドとバッドエンドどっちもおいしいと個人的には思う

  • 508二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:35:23

    思う存分ドロドロして欲しいけど最後はハッピーエンドであってくれ

  • 509二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 02:27:48

    堀木くんこれ何回も優勝して1からやり直してるのか?
    それか死に戻りみたいな異能があるのか

  • 510◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:30:57

    千頭之パート投下します……!

  • 511◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:31:40

     マネモフルと共に廃校へ向かいながら、千頭之の心は沈んでいた。

    (どうして、私なんだろう……)

     自分は生きている。
     否、生かされている。
     鰐淵が、ねうねいが、そして認めたくないがマネモフルが、死の淵にあった自分を生かしてくれた。三人のうち誰か一人でも欠けていれば、自分は死人となっていたはずだ。

    (いや、これだけじゃない……)

     瀧沢が守ってくれた。三田が逃がしてくれた。ストームが戦ってくれた。いつだって千頭之のづちは、他者に助けられ、無償で保護され、命を長らえさせてきた。
     あの時。
     キルコによって竹の破片を首に刺された時。急速に薄れていく意識の中で、どこか千頭之は納得していたのだ。

  • 512◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:32:06

     家族に再開することも出来ず、誰にも看取られず。そんな死に方は、クラスの日陰者で、役立たずの自分に相応しいと。そんな風に、思った。
     暗くなる視界の中で、鰐淵の背中が見えた。自分と言う枷が無くなれば、きっとキルコに勝てるだろう。そう信じて、千頭之は意識を手放した。
     そして、目を覚ましたとき、全ては終わっていた。
     鰐淵英利は死んでいた。
     最期まで千頭之のづちを救おうとして亡くなっていた。

    (私の命は、私だけのものじゃない……)

     鰐淵と、ねうねいと、ストームの命を背負っている。

    (生きないと……)

     それでも、足は重い。
     傷は塞がり、失った血は戻った。疲労さえも回復したのだろう。けれど、心の傷は治らない。
     廃校に辿り着いたとき、決着はついていた。
     千頭之は、ひとまず殺し合いを生き残った。

  • 513◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:32:34

     そして。

    「千頭之さん、生きてらしたんですね……」

    「歯荷こそ、三階から飛び降りて無事だったんだな」

    「ええ、まあ……千頭之さんに、会わせたい人が居るんですの、人っていうか動物なんですけど……」

     歯荷の言葉に応じるように、彼女の鞄から小さな蛇が顔を出した。

    「コサメ!」

    「しゃ!」

     コサメは鞄から滑り落ちると、蛇行しながら千頭之に突っ込む。千頭之はそれを、両手を広げて迎え、熱く抱擁した。

    「無事だったんだな! 今までどこに居たんだ!?」

    「ロッカーの中ですわ」

    「何だって……! 虐待じゃないか、そんなの……! ああ、何て可哀そうな目に……」

  • 514◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:33:03

    (どうして私が生き残ったのか分からない……でも、私の家族もこの島に連れてこられていた。アラシもどこかにいるのかもしれない……この子たちだけでも、本土に帰してあげたい……例え私が死んでも)

     それから、色々なことがあった。
     三田からドラギモスたちVS石川のあらましを訊き、事実、起き上がった石川は戦意を見せず、そして放送が始まるまでに急いで石川、Nek-O、ドラギモスのロッカーを掘り起こした。
     保健室で全員が応急処置を受けた後、ドラギモスが意識を取り戻し、放送を聞いた後、11人は食堂に向かったのだった。



     堀木の後に、口を開いたのは千頭之のづちであった。
     ストームという友達が出来たが、マネモフルに襲撃されストームに逃がされた。その後は三田・金木と合流し、武器や仲間を集めるために廃校へ。星峰たちと合流し、瀧沢の解毒薬を探し、解毒に成功したがマネモフルに襲撃される。三田たちに逃がしてもらい自分のロッカーを開けたが、ナイフという外れよりの武器であり、更に単身マネモフルの襲撃を受ける。ストームのおかげで即死は免れたがそれでも絶体絶命のときに瀧沢に助けられた。瀧沢がマネモフルを倒した後は三田たちと再合流して戦車前で待機。そこに鰐淵が現れ、何故か瀧沢と喧嘩を始めた。すると戦車が動き出し、鰐淵に守ってもらう。その後キルコに襲われ、千頭之のづちは殺された。

  • 515◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:33:30

    「……え、あんた死んでるの? 怪異ってこと?」

     金木の素朴な疑問に、千頭之は、わからない、と返す。

    「少なくとも心臓は動いているし、脈もある。ただ、私は私が生きていることを証明はできない……」

     事実、放送では千頭之の名が呼ばれた。夢の中で視た光景がいわゆる死後の世界だったのか、末期の脳が作り出した夢だったのか、今の千頭之には分からない。

    「放送で千頭之さんの名前が呼ばれたことには、ちょっと仮説がある。後で話すよ」

    「ああ、たぶん僕と同意見だろうぜ」

     三田とドラギモスは何か思うところがあるらしい。
     ひとまず、千頭之のづち死人じゃね問題は棚上げされた。
     千頭之は続きを話した。シェアハウス云々は飛ばし、目を覚ますとマネモフルが居たこと。鰐淵が死んでいたこと。マネモフルから聞いた、彼の野蛮な人格とその封印、そして鰐淵とねうねいの献身を訊いたこと。その後は、マネモフルと共に校舎跡へ向かい、コサメと再会したこと。

  • 516◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:34:20

    「……この島を脱出する前に、私は、アラシを探したい。コサメが居たんだ。アラシもどこかに居るかもしれない」

    「……善処はするよ」

     三田の心苦しそうな言葉に、千頭之は頭を下げる。

    「分かってる。私にとっては家族だが、君たちにとってはただの蛇だ。……もしもの時は、私を置いて行ってくれて構わない」

    「千頭之さん、それは……」

    「きっと、間違ってるのは私だ。みんなに助けてもらったこの命、大事にしなきゃいけないってのも、分かってる。けど、私は家族を見捨てられない。それが私なんだ……だから、もしもの時は……」

    「お前の家族も助ける。お前も家に帰る。それじゃ駄目なのか?」

     ドラギモスは呆れたように言った。

    「覚悟を決めてる時間があるなら、頭を回すべきだ。僕はそう思うぜ」

     どこまでも傲慢な、けれど確かな希望に溢れた言葉。
     膝の上に載せたコサメが、心配そうに手首を舐める。頭を優しく撫でながら、千頭之は、ああ、と頷いた。

    「そうだな。私は、家族と一緒に、必ず帰る」

     きっと、家族を助けることは、自分にしか出来ないことだから。
     千頭之のづちは、決意を一層固めたのだった。

  • 517◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 02:36:38

    今日はここで一旦切ります……!
    明日は篠宮パートから再開します……!

    本日もたくさんの回想・アイデアありがとうございます……!
    黒服・暗黒金持ちの枠は後一人です……!

    このデスゲームがハッピーエンドで終わるか、バッドエンドで終わるかは、私にもわかりません……! 全てはダイス次第です……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 518二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 02:40:49

    お疲れ様でしたー!
    正直総力戦でも運営に勝てるか怪しいしなぁ…
    そして我々が物語に干渉できる最後のチャンスだし、あと一人の黒服枠は慎重に投稿したいな

  • 519二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 04:49:28

    ずっとギスついてたからのづちちゃんパートがちょっと明るく終わったの大変ありがたい

  • 520二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 06:21:15

    要素だけ抜き出すとイロモノなのにドラギモスの言動が頭脳系主人公っぽいというか
    真っ当に良い奴で且つカッコつけた言い回しができる奴がもうドラギモスしか残ってないというか

  • 521二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 06:45:18

    もしかして堀木くんちゃんってもうぶっ壊れてる?
    一人称「姫」も無意識に姫氏原からとってたりする?

  • 522堀木を投げた人23/05/16(火) 06:56:55

    >>521

    これで堀木が生存して小毬ちゃんのダイスが1桁とかだったら泣き崩れるよ私は

    こんなになるまで頑張ったんだから姫氏原ちゃんだけでも生き残って欲しいんだ…

  • 523二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 07:26:43

    堀木くんの初出ってオープニングからなのに、その後偶然姫氏原ちゃんと恋人になって、偶然設定が噛み合ってこんな悲惨な過去になるのすごいよなぁ

  • 524二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 16:13:08

    ほしゅ(*^-)

  • 525二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 22:16:36

    保守

  • 526◆xaazwm17IRZa23/05/16(火) 23:38:39

    申し訳ありません、今日の投稿は難しいです……!
    感想や保守をありがとうございます……!

  • 527二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 23:45:08

    OKOK
    早めの報告ありがたい

  • 528二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 23:59:03

    ムフフッ良い物語は程よい休止もあってこそよ

  • 529二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 08:26:16

    【MICHI】Debut Single「Cry for the Truth」MV (FULL)【六花の勇者】

    保守ついでに個人的イメソン貼ってみる

    月並みな表現だけど本編読み返しながら聴くとだいぶ歌詞と合うなって……

    (問題あればすぐ消します)

  • 530二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 09:45:10

    よくよく考えたら生き残り10人でワープ装置作動ってことは運良く金持ちと黒服と茜音沢みんな倒したとしても生徒のうち誰か1人は犠牲にならなきゃいけない……?

  • 531二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 14:11:32

    のづちちゃんと姫氏原ちゃんが人数にカウントされるかどうかやね
    少なくとも島から出なくても爆死することはないし

  • 532◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 21:06:06

    篠宮パート投下します……!

  • 533◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 21:06:51

     篠宮纏。透明な武器を作る異能。
     自らの異能の強大さを恐れ、彼は今まで、クラスメイトと親しもうとしなかった。
     決して孤立していたわけではなく、世間話が出来る程度の付き合いはある。が、それ以上は踏み込まない。親友も無く、恋人も無く、因縁も無い。透明な生徒。それが、篠宮纏だった。
     同窓会には呼ばれるが結婚式には呼ばれない、それくらいの関係性を維持してきた。が、そのライフスタイルは殺し合いでは裏目に出る。
     絶対に安全だと言える関係性を持っていない。篠宮を最優先に考える仲間がいない。
     だから、篠宮は星峰と行動を共にすることに決めた。自らの潔白を証明できるのは星峰だけだと考えたからだ。その時、同じ部活仲間の芝野のことは頭から抜けていた。いや、もしかしたら抜けていたのではなく、芝野より星峰の方が証明者として有用であると怜悧な判断をしていたのかもしれない。

  • 534◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 21:07:20

     そして、星峰も芝野も死んだ。
     ゲーム開始直後より行動を共にし、一度は信頼して武器を託した歯荷は、隠れて人を殺していた。
     篠宮の心は、既に透明ではない。



     千頭之の次に、篠宮は話した。と言っても、内容は歯荷や三田と被っていた。
     廃校で星峰・歯荷と合流、やがて芝野・瀧沢とも合流、更に三田・金木・千頭之と合流、マネモフルの襲撃、戦車による砲撃で気絶、意識を回復し、歯荷に透明な槍を提供、そして今に至る。
     彼の話に、大きな反応をする者はいなかった。下手人であるマネモフルだけが、何度も自らの罪を確かめるように噛み締めた表情を浮かべるだけで、他の生徒は既に聞いた情報を繰り返された、という印象を受けた。今この場においても、篠宮は透明に近かった。他者との繋がりが薄く、大きなイベントもなく、重ねたカルマもない。次に話し始めたのがドラギモスであったことからも、彼らの集中はすぐにそっちに持ってかれた。首輪解除のキーであり、生き残っている中では最強の石川に喧嘩を売り勝利をもたらした人物であり、今のこの混沌とした状況を創り出した生徒。天才・虎肝ドラギモス。

  • 535◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 21:07:57

     だから、誰も篠宮の内心に気づかない。濁り始めた彼の心を看破できない。

    (信用できない)

     と、篠宮は思う。

    (ドラギモスくんちゃんは何を考えているんだ? 石川も、マネモフルも、どうして仲間に出来る? 彼らは殺人者じゃないか。特に、マネモフルは怪しい。多重人格で今は自分を取り戻したと最初に説明されたが、どこまで本当なのやら……。歯荷さんも、本当に殺人は里美さんだけなのか? もしかしたら、もっと多くの生徒を……。いや、まだ申告していない殺人者だってきっと混ざっているに違いない。こうなると、全員が怪しく思えてくる……、三田君や、ドラギモスくんちゃんだって、例外じゃない……)

     透明な武器を創り出す能力。
     それは、暗殺において、最も本領を発揮する。

    (今はその時ではないが……誰かが怪しい動きを見せたなら、即『射殺』してやる……僕にはそれが出来る力がある)

     ——篠宮纏。優勝候補の一人である。

  • 536◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 21:08:33

    篠宮パートを終了します……!
    時間を置いてドラギモスパート投下します……!

  • 537二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 21:42:35

    篠宮…そういえばお前優勝候補って書かれてたな

  • 538二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 22:08:16

    星峰と芝野は篠宮くんにとって自身の潔白を証明するのに不可欠な存在であると同時に、最大の抑止力でもあったわけだ
    もう篠宮くんが何を作ろうとそれを察知できるキャラいないんだもんな

  • 539◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:40:17

    ドラギモスパートを投下します……! 

  • 540◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:40:52

     虎肝ドラギモスは、淡々と今までの道程を話した。
     廃村を出てすぐに金輪と合流したこと、石川から逃げてきた姫氏原と合流し、直後に金輪が石川を足止めしたこと。廃校で姫氏原の首輪解除に成功し、砲撃で気絶。そして三田・金木と出会い、石川を倒した。
     金輪と出会うまで何をしていたのか、金輪と何を話したのか、首輪解除の方法や石川の倒し方はどこで思いついたのか。そういった情報は削ぎ落された、報告書のような内容だった。
     何故、ドラギモスはこんな話し方をしたのか。時間の短縮。石川戦の疲労。それらもあるが、最も大きな要因は——話せないからである。

    (金輪とは、姫氏原と合流するまで■■■■について盛り上がったっけな。まさか金輪が■■■■■好きだったとは思わなかった)

  • 541◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:41:17

     ドラギモスには性別がある。過去がある。天才である理由も、ドラギモスという名の由来も、しっかりと存在する。
     ただ、それを他者に伝えることは出来ない。
     彼/彼女の、情報は虫食いだらけだ。断片的な過去しか分からない。母親に関連した料理のエピソードがあっても、母親の名前や職業は分からない。
     戦闘において、否、実生活でも、まったく役に立たない異能。『不明』のドラギモス。だから、ドラギモスの悲しみを、共有できる者も、居ない。

    (結……キルコ……)

     ドラギモスを取り巻いていた二人の少女は、共に命を落としていた。一人は被害者、一人は加害者として。
     結■奈との出会いは■■だった。その時、ドラギモスは趣■の■■めをしており、そこに■■■喚をしていた結と遭遇したのだ。■■気質の結に、ドラギモスは随分■話をやいたものだ。それでも、一緒に居て、■しかった。
     ■田キル■とは、■■の仲が■く、■■■として共に育った。キル■はドラギモスに強い■■を■さなか■たが、長い■間を■有したのは事実だ。ドラギモスにとって、キル■は家■のようなものだった。

  • 542◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:42:59

     二人とも死んでしまった。
     結はトイレの花子さんを召喚していた。ランチタイムの前に、歯荷から渡されたスマホには、宇都が結を殺したとはっきり示されていた。ジャイアントキリングだったと書いてあった。

    (なぁ、結。お前、ジャイアントらしいぜ、すげー評価されてるな)

     結の少女らしい部分はそこから削げ落ちており、ただの兵器じみた異能者としての評価しか、そこにはなかった。
     あの、天■で、私■のセンスが壊■的で、学■がク■馬■で、とても優■■心を持っていた結は、最期にトイレの花子さんを召喚して死んだ。
     そして、花子さんを操って分かったが、花子さんは二人の参加者の命を奪っていた。それはきっと、結栞奈にとって、とても不本意だったことだろう。

    (お前が最期に召喚したのが花子さんとはな……悔しかっただろうに)

     霧田キルコは、ゲームに乗っていた。堀木の話によると、恐らくオルランドのために優勝を目指していたようだ。最期は、堀木に返り討ちに遭い、死亡した。心臓を銃で貫かれるという、凄惨な死に方だった。

    (まるで怪物扱いだな、キルコ)

  • 543◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:43:45

     否、確かに怪物だったのだろう。石川に襲いかかり、歯荷との戦闘で常に優位に立ち、剣道部の鰐淵も殺してのけた。
     オルランドの名を呼びながら、彼女は死んでいったという。狂った女。主催者の甘言に惑わされた愚者。
     ドラギモスは、そんな風に思わなかった。

    (キルコ……お前、好きな人が出来たんだな)

     あの、鉄■■の、ただ上位者の命令に忠実に従う、機■仕掛けのような少女。ドラギモスは知っている。その根底には、家■を■ばせたいという、願■があったことを。
     最期にキルコは、家族ではなくオルランドの名を呼んで死んだ。ドラギモスが知らないだけで、彼女は少しずつ成長していたのだ。
     二人のことは、一生引き摺るのだろう。二人だけではない。金輪も、多くのクラスメイトも、誰一人忘れることなく、ドラギモスの天命が尽きるまで、ずっと傷となって痛み続ける。
     例え、その傷を他者に伝えることが出来ないとしても。

    (茜音沢……運営共……僕は、お前たちを絶対に許さない)

     それは、ドラギモスのキャラではない。が、あえて彼/彼女は心中で宣言した。

    (一匹残らず駆逐してやる……!)

  • 544◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:44:19

    ドラギモスパートを終了します……!

  • 545二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 23:48:16

    話し合いはまだ続きそうだな
    残ってるのはあと3人くらいか?

  • 546◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:49:17

    >>529

    イメソンめっちゃありがとうございます……! 六花の勇者アニメしか把握していないのですが、七人のキャラが立ってて凄く面白かったですね、主人公が地力の低さを知略で何とかするところに好感持てました……!

    こういう支援もとてもありがたいです……! 


    30・5話④の視点人数dice1d4=4 (4)

  • 547二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 23:50:08

    このレスは削除されています

  • 548◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:50:37

    30・5話④の視点人数dice4d11=1 6 11 6 (24)

  • 549◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:55:01

    マネモフル=タマネ
    金木 冥(かねき めい)
    姫氏原 小毬(きしはら こまり)
    歯荷 仄花(はに ほのか)
    が次の視点人物ですね。歯荷は三田パートで語りとだいたいの思考を書き終えているので、歯荷パートで別のこと書くと思います……!

    明日はもし金木パートが完成していれば投下しますが、帰宅が遅くなるので、まったく投下できないかもです……!
    その場合は一度顔を出して連絡致します……!

    それでは、本日もたくさんの感想をありがとうございます……! 今週中に31話に進めると思いますので、今後もよろしくお願い致します……!

  • 550◆xaazwm17IRZa23/05/17(水) 23:57:55

    順番的にマネモフルパートのが先ですね、マネモフルパートが完成していたら投下します……!

  • 551二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 00:05:49

    乙でした〜
    透明な銃って当たれば石川すら殺せるんだろうけど、本当に倒すべき茜音沢とかジジイには効かなそうなのほんといやらしいな…

  • 552二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 00:27:32

    乙でした
    「ドラギモスのキャラではない」が二重にかかってて上手いと思った(小並感)

  • 553二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 03:00:17

    お疲れ様です
    ドラギモスパートどうなるんかなと思ったら切なすぎて泣いちゃった

  • 554二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 06:18:21

    好きなものが「家族」と「友達」な奴にこんな能力与えるの酷いよ……

  • 555二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 06:25:32

    >>554

    それも最初から決まってたわけじゃなくて展開の中で勝手に生えてきた能力なの笑っちゃうよね……何も笑えねぇよ

  • 556二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 06:51:07

    どうにか有効活用できないもんかね
    自分の情報が伝わらない→自分の位置情報や容姿が伝わらない→擬似的な透明化みたいな拡大解釈できない?

  • 557二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 07:03:00

    命と引き換えにジジイに食われれば”怖い”と言う情報が周りに伝わらなくなって無力化できそう
    そんな展開は見たくないけど

  • 558二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 18:01:08

    保守

  • 559二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 18:36:28

    やっぱドラギモスだけアンデラの世界から来てない?

  • 560二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 23:40:39

    保守

  • 561◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 00:53:36

    申し訳ありません、諸事情により本日は投下出来ないです……!
    明日は投下できると思うので、よろしくお願い致します……!

  • 562二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 00:55:26

    お疲れ様です〜
    気長に待ちますよ

  • 563二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 04:57:24

    次休むときにまたダイス回やって欲しいな

  • 564二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 09:57:08

    ダイスのネタあるかな……モブ教師からの評価とか?

  • 565二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 10:09:25

    ダイスでどうやって決められるか分からないけど
    席順とか決めらたらすごく嬉しい

  • 566二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 14:44:01

    ダイスでサンタさんを何歳まで信じてたかとかやってみてほしい

  • 567◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:39:54

    30・5話④マネモフルパート投下します……!

  • 568◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:40:25

     ■■という少年にとって、生きることは、漫画のようだった。
     劇的で面白い、という意味では無く、他人事という意味だ。
     異常(多重)人格者である少年は、成長するにつれ、徐々に他の人格が表に出ることが多くなった。少年が自分の肉体を操れる時間は減っていき、他の人格が少年を操っている間は、精神世界から外の様子をただ眺めていた。
     3年1組になってからも、それは変わらなかった。剃髪に鎧武者という異様な外見に、野卑な言動を取るマネモフル=タマネに、話しかける者はいなかった。……一人を除いて。

    「まねもぶが、あかいとびらをあけたら、あらしのよる(テストの結果はどうだった、マネモフル?)」

     ねうねい・めああえ。異形の少女。どうして彼女が自分に絡むのか、マネモフルには分からなかった。

  • 569◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:41:35

     普段のマネモフルなら無視していた。しかし、その時は気が立っていたのだろう。あるいは、また別の理由があったのかもしれない。少年にとって、他の人格の思考形態はよくわからないものだった。

    「なめてんじゃねぇぞ!こら!(ゴッ)」

     机を殴りつける。
     ねうねいは怯えたように肩を震わせた。

    「あめがふって、じょうろのなかはからっぽだ(ごめん、怒らせるつもりはなかった)」

    「なめるなっ メスブタァッ! 本当は愚弄したいんだろ!」

     マネモフルが怒り心頭に立ち上がる。ねうねいは悲し気にマネモフルの巨体を見上げた。
     マネモフルが更なる暴虐を働こうとしたとき、

    「あんた今何て言ったッ!」

     マネモフルの頭に、垣根の飛び蹴りが炸裂した。

    「女の敵っ! ねうねいに謝れっ!」

    「はあっ? 何言ってんだ それおかしいだろJap」

  • 570◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:42:03

     野蛮人を超えた野蛮人であるマネモフルが、自身に飛び蹴りした生徒を許すはずが無く、頭部を抑えながら垣根に怒りを向ける。

    「お前らちょっと落ち着けって!」

    「俺も間に入れてくれよ!」

     慌てて新條と石川が仲裁に動き、他の生徒たちも教師を呼びに行ったりしたので、マネモフルと垣根の喧嘩は大事にならずに終わった。
     その様子を、少年は精神世界で傍観していた。垣根に激怒するマネモフルとは対称的に、少年は悲し気に顔を伏せるねうねいが、妙に印象に残った。



     ドラギモスに続き、マネモフルは話した。
     千頭之を襲い、彼女の仲間であるアナコンダを殺し、調理して食べたこと。廃校へ行き、三田たちと銃撃戦を行い、芝野を殺し、瀧沢に敗北した。倒れているところをキルコに襲われ、慌てて姿を消した。その後精神世界で俯いていたところをねうねいが訪れ、彼女の力によって野蛮な人格の封印に成功。マネモフルは本来の人格を取り戻し、魔法の薬によって瀕死の千頭之を助けた。その後二人で三田たちに合流した。

  • 571◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:42:32

     殺人者の告白は、これで三度目だった。一切悪ぶれない石川、開き直る歯荷と違い、マネモフルの身を引き裂くような懺悔は、聴衆にも伝染するような切実さが含まれていた。食事を取りながらの情報交換、という名目で始まったやり取りだが、クラスメイトの殺し殺されを聴きながら箸が動くはずがなく。三十分程経ったランチタイムでも、多くの者がほとんど料理に手をつけていなかった。(石川はラーメンの替玉を投入し、金木はお茶碗を空にしていた)

    「……随分、スピリチュアルだね」

     口を開いたのは三田だった。

    「多重人格はともかく、精神世界とか、ねうねいさんが野蛮な人格を抑えているとか。とても信じられないな」

    「信じてもらわんくてもええ。……ワシは君らにも償いたいと思っとる。君らがワシに死を望むなら、ワシは死んでもええ」

    「愁傷な心がけですわね、本当にそう思ってるかはさておき」

     野蛮な頃のマネモフルと交戦した生徒も多い。「喧嘩に負けたから」がここにいる理由の石川にしたって、その瞬間を三人の生徒が目撃している。歯荷の生存最優先も、一般的に理解しやすい。

  • 572◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:43:04

     が、マネモフルの「改心」は、その瞬間を目撃した者がこの場にいない。殺人鬼だったマネモフルが、瀧沢に敗北後、急に真人間として振る舞いだした。その理由は、精神世界でのねうねいの奮闘によるもの……迂闊に信じられない、と多くの者が思った。
     かといって、信用できないから死んで、と言えるほど冷酷な者はこの場にいない。割と近いことを金木は思ってたりするが、対石川抑止力の一人としてカウントもしているため、正直怖いから死んでほしいとは口に出さなかった。

    「……僕が気になるのは、お前の能力だ。野蛮だった頃と、能力はどう変化しているんだ? 『真空』は使えるのか?」

     ドラギモスの問いに、マネモフルは答える。

    「『真空』は使える。せやけど、灘神影流は、他の人格が備えとる技術や。今のワシは使えんし、もし使えば、また徐々に野蛮な人格が表に出ると思う」

    「マジで!? はっー……なぁ、マネモフル、秘めたる自分を解放しないか?」

    「石川くん、君良心とか無いのか?」

    「でも実際、茜音沢先生倒すなら、マネモフルにもフルスペック発揮してくれないと困るだろ? 俺の言ってること間違ってるか?」

  • 573◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:43:23

    「そ、それはそうだけど……」

    「……いきなり野蛮な人格に染まるわけやない。時間差があるはずや。一撃、二撃ならねうねいが抑えてくれる。けど、もしワシが悪魔を超えた悪魔になったら……
    ——そのときは、ワシを殺してくれ」

     少年は贖罪のために戦うことを決めた。もはやそこに、自己の勘定は入っていなかった。

  • 574◆xaazwm17IRZa23/05/19(金) 21:44:01

    マネモフルパート終了します、時間を置いて金木パート投下します……!

  • 575二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 21:50:04

    マネモフルが仮に暴走したとして、そう簡単に殺せる奴いないのがなあ

  • 576二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 22:06:43

    読者とキャラクターでは視点が違うということがよくわかる.5話

  • 577二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 22:11:03

    “S”とか覚悟みたいな人格でもいればいいけど恐らく濃縮還元100%野蛮人なんだろな…

  • 578二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 22:16:05

    人格500億もいるからまだ分からんぞ…

  • 579二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 22:35:14

    幽玄真影流の使い手?なセピアさんが割と善戦してたし
    マネモフルは茜音沢にも通用する強さかもしれない

  • 580◆xaazwm17IRZa23/05/20(土) 00:35:17

    申し訳ない、投下夜遅くになりそうなので、金木パートは明日に回します……!
    本日もたくさんの感想感謝です……! また投下できない日も完結までに出てくると思うので、その時はダイス振ってみます……!
    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 581二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 00:38:39

    乙ですー また明日

  • 582二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 08:41:40

    はーっ 灘神影流"保守"

  • 583二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 18:13:05

    保守

  • 584二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 22:21:07

    >>556

    今更だけどそれをやったら最後二度と誰にも認識してもらえなくなりそう

  • 585二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 22:38:24

    そのうちドラギモちゃんは考えるのをやめた…

  • 586◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:15:58

    金木パート投下します……!

  • 587◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:16:25

    「……興味深い」

     部屋の中で、低い男の声が響いた。
     洒落た男である。
     片眼鏡を掛け、トレンチコートを羽織っている。左目には大きな縫い傷が走り、蒼白な顔も相まって、男が只者ではないと理解させる。
     男は、暗黒金持ちの一人である。
     名を、希咲枯春。人は彼を【探求卿】と呼ぶ。あるいはシンプルに【紳士】と。

  • 588◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:16:52

     希咲は懐中時計を取り出した。時刻は午前十時。本部の外では、未だ殺し合いが続いている。モニター室の前で他の暗黒金持ちたちが首ったけになる中、希咲だけは自室で寛いでいた。
     既に欲しい情報はあらかた調べ終わった。この殺し合いの勝者が誰になろうと、もはや興味は無い。
     強いて言えば……。

    「金木冥……君は面白いな」

      32人の経歴。いずれも個性的な人生遍歴の中で、彼女の人生だけはなお異質だった。それは殆ど情報が無いドラギモス以上に、希咲の興味を惹いた。
     金木冥に、優れた資質は見当たらない。勉強も運動も平均程度。顔立ちは整っているが、絶世の美女というわけでもない。異能も無く、武術家でもなく、犯罪歴もない。
     にも関わらず小学生から中学卒業まで、彼女のクラスは、常に壊滅している。
     学級崩壊という言葉さえ生ぬるい、学校地獄、学生大絶滅といった様相を晒すことになる。

  • 589◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:17:15

     超高校級のいじめっ子として、目裏雨子の方が目立つ。ただ、彼女のイジメとは、学校に自らの王国を作ることである。財力と天性のスペックで、スクールカーストの頂点に君臨し、自分の意にそぐわない者を追放する。暴君の資質。暗黒金持ちとしての素養は父親以上だと、希咲は密かに評価していた。
     一方、金木冥は違う。彼女はスクールカーストの上位に立てるスペックは無い。強いて言えば上の下。頂点の取り巻き。しかし、金木冥が所属したクラスは、カーストごと崩壊する。頂点に立っていたはずの生徒がスキャンダルで失脚し、最下層だった生徒が自殺未遂を起こし、その首謀者としてカーストから無作為に選出された生徒たちが連座するように教室から追放され。生き残った生徒たちが小グループに分かれ、自己の保身を狙うが、一つ一つ内紛によって潰れていく。
     それは、一つのデスゲームだった。
     金木冥は、何もしていない。
     あらゆる記録が、金木冥の潔白を証明し続ける。
     精々、イジメを見て見ぬフリをした。生徒の陰口で笑った、程度のことである。
     にも関わらず、彼女が所属したクラスは必ず崩壊する。

    (蜘蛛だ……)

  • 590◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:18:45

     と、希咲は思う。恐らく金木冥は、生徒に根を張り、自身の意のままに操作し、学級崩壊を引き起こしている。
     目的は、無いのだろう。恐らく、愉快犯。

    (あるいは、無意識なのか……)

     ただ、自分の好きなように生きているだけなのかもしれない。その結果、周囲の人間が不幸になるだけなのかもしれない。

    (面白い……)

     薄っぺらな邪悪。薄い故に軽んじられ、対処され、見下される。
     だから気づかない。気体が充満するように、無意識の悪意が少しずつ周囲を侵していく。
     個別に戦っているうちはいいのだろう。各自が小勢力となり、離島のあちこちに散っている時、そこまで被害は出ない。
     しかし、万が一、彼らが集まった時。
     恐らくそれは発揮される。

    (あえて定義づけるなら……【集団を崩壊させる異能】……【不和(サークルクラッシャー)】とでも、名付けるか)

  • 591◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:19:18

     もし金木冥が優勝すれば、そしていつの日か暗黒金持ちになれば。
     この日本の闇は消えるだろう。晴れるのではない。晒されることもない。ただ内部崩壊を起こし、互いに相争い、誰もがこんなはずではなかったと呪いながら死んでいくのだろう。

    (実に楽しみだ……)

     ふと、金木冥の同行者に意識が向く。
     三田哲。高校生探偵。

    「君には期待しない」

     声に出して、希咲は断言した。

    「探偵。そんなものに価値は無い。あれは、秩序の中でしか生きられない。ミステリー小説の中だけのヒーローだ。現実では、何の意味も無い」

     これまで鉄面皮を貫いていた希咲が笑った。皮肉気な笑みだ。
     探偵・三田哲。邪悪・金木冥。二人は同行している。これは、証明だ。希咲は確信した。

    「探偵は無価値であり、混沌こそが正しき姿だ」

     この二人はそれを証明してくれる。希咲はスケッチブックを引き出しに仕舞うと、部屋から出て行った。

  • 592◆xaazwm17IRZa23/05/21(日) 01:22:20

    金木パート終了します……!

    明日は姫氏原パートですが、悪霊の正体などに触れ長くなると思うので、投下できないかもです……!
    その時は、挙げてもらったダイスをやってみます……!

    本日も感想をありがとうございます……! 時々、次作でも参加したいとありがたい言葉をかけていただき、とても嬉しいです……! もし次作があるなら、三か月から半年ほど時間が空くと思いますが、またバトロワ系の何かをやってみるかもしれないです(気が早いですが……! まずは完結目指して頑張ります……!)

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 593二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 01:36:43

    乙でした〜
    この規模の作品をほとんど毎日投稿&完結できるとか尊敬するなぁ
    キャラの募集はぜひまた創作カテでやって欲しいな…

  • 594二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 02:00:48

    乙です
    悪霊の正体気になるから楽しみ!
    それにしてもここまでの大作になるとは思わなかったし投下したキャラがなんとか生き残ってて毎日ドキドキしてます

  • 595二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 02:44:06

    悪霊の正体によってこの先の展開が希望にも絶望にもなりそう
    そして金木の闇落ちを全力プッシュしてくる探求卿はいい悪役になるだろうな

  • 596二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 06:09:23

    次回作があるってことは暗黒金持ちは滅ばないの確定してて虚しいな…
    それとも完全に別の設定でやるのかね

  • 597二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 08:21:53

    >>596

    今回がそもそも大東亜のバトロワがかつてあった世界観でありながら別の島と金持ちでやってるし全滅させてもいいんじゃないか

  • 598二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 16:53:57

    捕手

  • 599二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 23:39:23

    保守る

  • 600◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:00:58

    姫氏原パート完成しなかったのでダイス振ります……! 遅れて申し訳ないです……!

  • 601◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:03:22

    教師陣からの好感度

    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d100=39 (39)

    2 宇多 一郎(うた いちろう)dice1d100=28 (28)

    3 宇都 創希(うと そうき)dice1d100=19 (19)

    4 小田斬 純恋(おだぎり すみれ)dice1d100=10 (10)

    5 オルランド・テークトリdice1d100=73 (73)

    6 金輪 幹久(かなわ みきひさ)dice1d100=5 (5)

    7 金島 明宏(かねしま あきひろ)dice1d100=33 (33)

    8 篠宮 纏(しのみや まとう)dice1d100=26 (26)

    9 芝野 貴仁(しばの たかひと)dice1d100=32 (32)

    10 新條 アキラ(しんじょう あきら)dice1d100=88 (88)

    11 Nek-O(ネック・オー)dice1d100=64 (64)

    12 パンパンパン・ラッタッターdice1d100=61 (61)

    13 星峰 灼(ほしみね あきら)dice1d100=1 (1)

    14 堀木 彩(ほりき あや)dice1d100=37 (37)

    15 マネモフル=タマネdice1d100=84 (84)

    16 三田 哲(みた とおる)dice1d100=89 (89)

  • 602◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:04:50

    17 麻井 涼(あさい りょう)dice1d100=51 (51) 

    18 垣根 澄花(かきね すみか)dice1d100=42 (42)

    19 金木 冥(かねき めい)dice1d100=94 (94) 

    20 姫氏原 小毬(きしはら こまり)dice1d100=80 (80)

    21 霧田 キルコ(きりだ きるこ)dice1d100=45 (45)

    22 里美 綾香(さとみ あやか)dice1d100=87 (87)

    23 瀧沢 魁(たきざわ かい)dice1d100=95 (95)

    24 千頭之 のづち(ちずの のづち)dice1d100=66 (66)

    25 ねうねい・めあめえdice1d100=57 (57)

    26 歯荷 仄花(はに ほのか)dice1d100=85 (85)

    27 文乃 あかり(ふみの あかり)dice1d100=69 (69) 

    28 結 栞奈(むすび かんな)dice1d100=58 (58)

    29 目裏 雨子(めうら あめこ)dice1d100=63 (63)

    30 山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d100=85 (85)

    31 鰐淵 英利(わにぶち・えいり)dice1d100=31 (31)

    32 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d100=90 (90)

  • 603二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 00:07:36

    金木の評価が高いのなんか生々しいな

  • 604◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:12:21

    教師陣全体から嫌われてると金輪の設定に合わない気もするので以前作った茜音沢の後の現担任からの評価にしておきます……


    現担任からの好感度トップ3

    1位 瀧沢 魁(たきざわ かい)dice1d100=95 (95)

    2位 金木 冥(かねき めい)dice1d100=94 (94)

    3位 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d100=90 (90)


    現担任からの好感度ワースト3

    1位  星峰 灼(ほしみね あきら)dice1d100=1 (1)

    2位 金輪 幹久(かなわ みきひさ)dice1d100=5 (5)

    3位 小田斬 純恋(おだぎり すみれ)dice1d100=10 (10)

  • 605二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 00:12:55

    このレスは削除されています

  • 606◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:29:45

    席順はあいうえお順なら
    石川/麻井     金島/瀧沢     ラッタッター/結
    宇多/垣根     篠宮/千頭之    星峰/目裏
    宇都/金木     芝野/       堀木

    小田斬/姫氏原   新條/ねうねい   マネモフル/山野
    オルランド/霧田  Nek-O/歯荷    三田/鰐淵
    金輪/里美         文乃    ドラギモス

  • 607二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 00:35:41

    キルコとオルランドの馴れ初めが見えた気がしてわたしゃ嬉しいわよ

  • 608◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:45:07

    サンタさんを何歳まで信じていたのか


    1 石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d12=10 (10)

    2 宇多 一郎(うた いちろう)dice1d12=11 (11)

    3 宇都 創希(うと そうき)dice1d12=11 (11)

    4 小田斬 純恋(おだぎり すみれ)dice1d12=5 (5)

    5 オルランド・テークトリdice1d12=1 (1)

    6 金輪 幹久(かなわ みきひさ)dice1d12=5 (5)

    7 金島 明宏(かねしま あきひろ)dice1d12=5 (5)

    8 篠宮 纏(しのみや まとう)dice1d12=8 (8) 

    9 芝野 貴仁(しばの たかひと)dice1d12=2 (2)

    10 新條 アキラ(しんじょう あきら)dice1d12=3 (3)

    11 Nek-O(ネック・オー)dice1d12=7 (7)

    12 パンパンパン・ラッタッターdice1d12=10 (10)

    13 星峰 灼(ほしみね あきら)dice1d12=8 (8)

    14 堀木 彩(ほりき あや)dice1d12=12 (12)

    15 マネモフル=タマネdice1d12=1 (1)

    16 三田 哲(みた とおる)dice1d12=12 (12)

  • 609◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:46:43

    17 麻井 涼(あさい りょう)dice1d12=12 (12) 

    18 垣根 澄花(かきね すみか)dice1d12=10 (10)

    19 金木 冥(かねき めい)dice1d12=1 (1) 

    20 姫氏原 小毬(きしはら こまり)dice1d12=9 (9)

    21 霧田 キルコ(きりだ きるこ)dice1d12=12 (12)

    22 里美 綾香(さとみ あやか)dice1d12=8 (8)

    23 瀧沢 魁(たきざわ かい)dice1d12=6 (6)

    24 千頭之 のづち(ちずの のづち)dice1d12=10 (10)

    25 ねうねい・めあめえdice1d12=1 (1)

    26 歯荷 仄花(はに ほのか)dice1d12=6 (6)

    27 文乃 あかり(ふみの あかり)dice1d12=10 (10) 

    28 結 栞奈(むすび かんな)dice1d12=10 (10)

    29 目裏 雨子(めうら あめこ)dice1d12=7 (7)

    30 山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d12=1 (1)

    31 鰐淵 英利(わにぶち・えいり)dice1d12=7 (7)

    32 虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d12=10 (10)

  • 610二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 00:49:40

    キルコとか堀木くんが12なのあざといなぁ
    山野ヴェラジウスさんが1なのは意外と現実主義者なんだろうか

  • 611◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 00:49:51

    サンタさん信じていた年齢

    「12歳」

    堀木 彩(ほりき あや)dice1d12=12 (12)

    三田 哲(みた とおる)dice1d12=12 (12)

    麻井 涼(あさい りょう)dice1d12=12 (12) 

    霧田 キルコ(きりだ きるこ)dice1d12=12 (12)


    「1歳」

    オルランド・テークトリdice1d12=1 (1)

    マネモフル=タマネdice1d12=1 (1)

    山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d12=1 (1)

  • 612二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 00:51:27

    金木も1歳じゃないかね?

  • 613◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 01:01:00

    時間あるので退場した黒服/金持ちの通信簿でも作ろうかなと……
    生徒に関しては、全部終わったらやります……

    【長村洋(ながむらひろし)】
    狙撃能力なら黒服一の凄腕。書き分けのために関西弁を加えさせていただきました。恐らく戦闘力はA+級。翁に翻弄され、ティタノボアに喰われる末路を遂げましたが、茜音沢を倒すために、同格三人で組める戦略眼はあるので、最初から翁の情報を知った上で挑んでいればもう少し善戦できたはず。ティタノボアに関しても、翁との戦いで動揺し、なりふり構わず逃げた結果あっさり喰われてしまったので、実力は発揮できていません。
    茜音沢/翁/セピアと比べると酷ですが、ティタノボア相手には結果ほど大きな差は無いのかなと考えています。真正面から挑めばそのうち胃袋行きとは思いますが……。後、モブ黒服の運用能力は一緒に死んだ二人より高いです。その分戦闘力は二人よりやや低め。

  • 614◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 01:02:03

    >>612

    ご指摘ありがとうございます……!


    「1歳」

    オルランド・テークトリdice1d12=1 (1)

    マネモフル=タマネdice1d12=1 (1)

    金木 冥(かねき めい)dice1d12=1 (1) 

    山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d12=1 (1)

  • 615二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:03:14

    ごめんなさい…自分も見落としてたけどねうねいちゃんもですね

  • 616◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 01:09:01

    本日はここまでとさせていただきます……!

    姫氏原パートは早めに完成して投下します……!

    いつかやる(かもしれない……)次回作は、世界観を変える予定(漠然と妄想している案だと「剣と魔法の世界で邪神があらゆる種族・職業を集めてデスゲーム」とか「魔法少女が妖精の仕業でデスゲーム」とか「聖杯っぽい奴で聖杯戦争っぽいやつ」とか)なので……暗黒金持ちが生き残れるかはダイス次第です……!

    それでは、本日も感想や保守をありがとうございました……!

  • 617◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 01:10:06

    >>615

    申し訳ない、ご指摘ありがとうございます……!


    「1歳」

    オルランド・テークトリdice1d12=1 (1)

    マネモフル=タマネdice1d12=1 (1)

    金木 冥(かねき めい)dice1d12=1 (1) 

    ねうねい・めあめえdice1d12=1 (1)

    山野 二(やまの つぐ)※闇のヴェラジウスdice1d12=1 (1)

  • 618二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:13:23

    乙でした〜!
    デスゲームやる以上キャラのかかわりは重要だと思うから
    次回作でも参加者はなにかしらの知り合い同士だと嬉しいですね…

  • 619二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:19:19

    このレスは削除されています

  • 620二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:19:43

    乙です、1歳で信じなくなるなんて余程の事があったか興味がなかったのか…
    世界観的に金持ちが生き残ったとしても無理矢理次回に捩じ込む必要は無さそうですな

  • 621二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:27:17

    安価カテで散々煮詰められた魔法少女ものをあえてこの形式でやるのはいい味が出そうだね
    今から楽しみだ

  • 622二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 02:22:21

    ファンタジーデス闇鍋は集まったキャラ次第で面白いことになりそう
    今はあにまん学園の行く末を見守るのが先決だけども……

  • 623二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 02:27:27

    そりゃ芝野は気づくの早いよね……

  • 624二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 02:42:44

    中二病キャラが変なところでまともだったりリアリストだったりするのはわりかしあるあるだからな……

  • 625二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 02:49:17

    ヴェラジウスちゃんは家庭環境酷かったらしいしそれでって可能性もある
    そしてファンタジーデス闇鍋が楽しみすぎて今からキャラを妄想しちゃうなぁ

  • 626二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 03:24:57

    キルコは多分両親に言われたから信じてて両親に打ち明けられたから信じなくなったって感じだこれ

  • 627二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 05:30:53

    魔法少女とかバトルロワイアルみたいにみんな知ってて世界観を共有できるジャンルって創作に使いやすいんだよな…
    それはそうと安価の魔法少女ものは闇鍋な分統一感がなくなりがちだが募集式ならどうなるか

  • 628二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 14:47:55

    保守

  • 629二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 20:29:23

    保守

  • 630◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 22:05:25

    前回の○○○dice1d32=26 (26)

  • 631◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:02:50

    姫氏原パート投下します……!

  • 632◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:03:38

     姫氏原小毬。
     それが、隣に住んでいるお姉さんの名前。あにまん高校に通っていて、サッカー部の彼氏が居て、お菓子作りが趣味の、活発な性格の女の子。
    少年は、隣に住んでいる女子校生に恋をした。初恋だった。小学校に馴染めない少年にとって、優しくしてくれた小毬は、女神に等しい存在だった。
     もし、姫氏原小毬が『行方不明』にならなければ、少年は初恋をきっぱりと終わらせられたのだろう。小毬や、彼女の彼氏に支えられながら、徐々に小学校で友人を増やしていき、初恋は思い出へと変わったはずだ。
     そうはならなかった。
     姫氏原小毬は失踪した。恋人も一緒に居なくなってしまった。
     駆け落ち、ではないらしい。
     噂では、彼女たちはクラスごと、32人全員が行方不明になったらしい。

  • 633◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:04:10

     新聞などでは一切報道されず、学校は、表向きにはクラスで旅行に行き、旅先でバス事故に巻き込まれたと公表した。
     奇妙な事件だった。少年の小学校でも噂になった。しかし大人たちは口を噤んでいた。その空気を敏感に察し、児童たちも、一人、また一人と沈黙した。この国には深い闇が、暗黒がある。成長するにつれ、彼らはそれを学んでいくのだ。

    (小毬ちゃん……)

     少年の心は、居なくなった年上の女性に囚われた。
     中学に上がっても、高校に上がっても、少年は姫氏原小毬を忘れることはなかった。
     友人は居なかった。恋人も、居るはずがなかった。淡い恋心は、思春期のリビドーと合わせて性欲と結びついた。
     小毬は何処かにいるのかもしれない。自分にいつか会いに来るのかもしれない。
     蜃気楼を掻き抱くように、少年は想い続けた。
     仮定を再び重ねるならば、成長するにつれ、少年は徐々に現実を受け入れていったのかもしれない。高校生に上がっても、少年は孤独の中で小毬を想い続けたが、20代、30代と年を重ねていくごとに、現実と折り合いがついたのかもしれない。

  • 634◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:04:38

     そうはならなかった。
     少年が高校3年生になった時。
     彼は、クラスごと拉致された。

     ◇

    「おーい♡ 起きろバカガキ♡ 起きないと首輪爆破しちゃうぞ♡」

     少年が目を覚ますと、見知らぬ学校の体育館だった。周囲には、クラスメイトがおり、それぞれが困惑している。そして、少年を含め全員に、爆弾付きの首輪が付けられていた。

    「よーし、全員起きたね♡ ちゃんと起きれて偉い♡ 後三日の儚い命なのに健気だね♡」

     壇上に立った女は、自らを目裏雨子と名乗った。
     20代前半の美しい女性だったが、少年はその名に聞き覚えがあった。

    (目裏雨子って、小毬ちゃんと同じクラスだった……)

     共に失踪したはずの生徒だ。
     やっぱり小毬は生きている。少年は確信する。

  • 635◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:05:08

     そして——殺し合いが始まった。
     舞台は離島。参加者は○×高校3年2組。支給された武器を頼りに最後の一人になるまで殺し合う。
     少年は、殺し合いを終盤まで生き残った。
     自らの武器をサバイバルナイフと嘘をつき(実際は序盤に首を攣った自殺者から回収していた)、隠し持っていた毒薬で仲間を一網打尽にした。
     少年は優勝した。
     元々クラスメイトに情は無かった。友人も恋人も居なかった。
     ただ、少年が積極的にゲームに乗ったのは、理由があった。
     優勝した少年は、目裏雨子と再び顔を合わせた。

    「ちょww♡ 陰キャが優勝してんじゃん♡ マジウケる♡ 私の時よりレベル下がりすぎでしょ♡」

    「本当に、本当に報酬が貰えるのか?
     ……何でも願いが、叶うんだな?」

    「はぁ?♡ 何で私が貧乏人の願いを叶えなきゃいけないの?♡ バーカバーカ♡ 仲間殺し~♡」

  • 636◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:05:42

    「そんな、嘘、なのか……?」

     少年の心は絶望に囚われる。何のために殺人を犯したのか。全ては、願いを叶えるためだったのに。

    「それはよくないですね」

     と、声がした。

    「何でも願いを叶う、というルールを設けたのですから、履行しなければいけませんよ」

    「は?♡ お前に関係ないじゃん♡」

    「【管理人】の【規約】に記載されていたはずですが?」

     いつの間にそこに居たのか、顔を布で隠したスーツの男がそこに立っていた。
     そして、目裏雨子に劇的な変化が起こった。
     管理人という名前を出した瞬間、彼女の顔に明確な怯えが走った。

    「し、仕方ないなぁ♡ じゃあ、好きな願いを言ってよ、ほら早く♡」

    「お、俺を姫氏原小毬に会わせてくれ」

    「……何で姫氏原の名前が出てくんの?♡ 弟か何か?♡」

  • 637◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:06:08

    「いいから早く願いを叶えてくれ」

    「……この場合、どうなるわけ♡ 管理人代理としてはさ♡」

    「……姫氏原小毬は、数年前のデスゲームで、既に死亡しています。蘇生、ということでよろしいでしょうか?」

     死んでいた。
     そんな馬鹿な、という気持ちと、やはり、という気持ち。両方が来た。
     殺し合いが始まったとき、薄々察してはいた。クラス単位で突然拉致されデスゲーム。年齢を含め、小毬の失踪と相似点が多すぎる。
     姫氏原小毬はデスゲームに巻き込まれ死んでいた。
     同じクラスメイトの目裏雨子が今この場に居るということは、彼女が優勝者なのだろう。
     ならば、目裏雨子は、小毬の仇ということになる。既にクラスメイト全員の仇ではあるが、少年の怒りはクラスメイト32人分よりも、小毬一人を殺された恨みの方が上回っていた。
     が、蘇生出来るのだと言う。ならば、今ここで目裏に特攻して、命を散らすことは愚かな行いだ。

  • 638◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:06:50

    (会える……小毬ちゃんに会える……!)

     姫氏原小毬を蘇生してくれッ! と叫びそうになり、少年は慌てて口を塞いだ。

    (待て。小毬ちゃんには、確か彼氏が居た……同じクラスの……同じ日、同じ島で死んだ彼氏が……! 小毬ちゃんだけ生き返らせても、彼氏が居たら、俺のものにならない……!)

     姫氏原小毬のクラスメイトについては一通り調べてある。
     同じクラス。サッカー部。該当するのは一人だけ。堀木彩。健康的に日焼けした、気の弱そうな顔立ちの、小柄な美少年だった。肌が青白く陰気な雰囲気の少年では、とても太刀打ちできないスペック。

    (小毬ちゃんは俺を選んでくれるのか……? もし、選んでくれるとしても、サッカー部のお手付きじゃないか! 違う、そんなの嫌だ……、待てよ、何でも叶えてくれるってことは……)

    「何でも願いを叶えてくれるんだよな?」

    「そう言ってるじゃん♡ 早く言え♡」

    「じゃ、じゃあ、『堀木彩と知り合う前の姫氏原小毬に会わせてくれ』」

    「…………え、気持ち悪っ」

  • 639◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:07:22

     ドン引きしている目裏雨子とは対称的に、スーツの男は動揺した様子を見せず、可能です、と言った。

    「タイムスリップという形になりますね」

    「あ、ああ、それでいい……!」

    「では、願いを受理します。……それと、一つだけ守っていただきたい約束が。【姫氏原小毬は、高校三年生の時にデスゲームに巻き込まれる】。これは、確定した事象です。よって、このことを姫氏原小毬に伝えることを禁止します」

    「は、ちょっと待て……!」

     それでは意味が無い……!
     少年は慌てて抗議しようとしたが、次の瞬間、世界が暗転し、何処か別の場所へと飛ばされていくのを感じた。



     十二歳の小毬が、赤いランドセルを揺らしている。
     電柱の影に隠れながら、少年は今日も、小毬の安全を見届ける。
     堀木彩と出会う前の姫氏原小毬。

  • 640◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:07:51

     それは、想像以上に幼なかった。高校三年生の少年が付き合うには、世間体が悪いと感じる程度には。
     否、世間体など本当は関係ないのだ。ただ、高校生小毬に恋焦がれた身としては、年上の異性が、年下になってしまったことに、戸惑いを覚えてしまう。

    (で、でも可愛いなぁ)

     過去に飛ばされて一週間。少年は、小毬を見守り続けていた。
     小毬は可愛い。愛らしい容姿をしていて、はきはきと喋り、こまっしゃくれた様子もない。天真爛漫で瑞々しい。
     守護りたい(まもりたい)。
     イケメンサッカー部から、不良なクラスメイトから、そして殺し合いから。
     ここ三日は、小毬の元気が無い。きょろきょろと周囲を窺うことが多くなった。それは、未来の破滅を予期しているかのようで、少年はたまらない気持ちになった。
     どうすれば彼女を救えるのだろう。
     殺し合いに参加させられることは確定しているのだという。どうすれば破滅の回避を……。

  • 641◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:08:33

    (待てよ。前回の小毬ちゃんもクラスごと。俺もクラスごと。ということは、高校に行かなければ、殺し合いに招かれないのか?)

     つまり、姫氏原小毬は中卒になれば、殺し合いを回避できる。将来が大変かもしれないが、殺し合いをさせられるよりはマシだろう。

    (別に就職できなくても、俺のお嫁さんになればいい! 完璧だ!)

     どうすれば小毬を中卒に出来る? 本人に事情を説明して、高校進学を諦めさせればいい。
     少年は、電柱の影から姿を現し、小毬に大股で近づいた。
     小毬は少年の姿を見かけると、防犯ブザーに手を伸ばした。

    「待ってくれ! 君に伝えたいことがある!」

    「お、お兄さん、誰……?」

    「俺が誰かはおいおい知ればいい! それより大変なんだ、君は高校3年生のときに殺し合いで——」

    【規約違反です】

     BAN、という音が聞こえた。

    【○○○は削除されました】

  • 642◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:09:00

     存在が、消える。
     一瞬で、痛みもなく、音もなく、少年は消失した。

    「………………え?」

     後には、呆然とする姫氏原小毬だけが遺された。



     何が起こったのか分からなかった。
     ここ最近、気持ちの悪い視線は感じていた。
     だから、電柱の影から、幽霊のような男が現れたとき、私はお化けだと思った。
     お化けはわけのわからないことをわめきながら私に近づき——唐突に姿を消した。
     やはり、お化けだった。
     私は怖くなって走って家に帰った。
     今思えば、地獄はその日から始まった。

    (私は、悪霊に取り憑かれている)

     気持ち悪い、男の人の悪霊。

  • 643◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:09:22

     恋愛経験こそ無かったけれど、あの悪霊が私に向けていた視線の正体には気づいている。時々クラスの男子から感じるものだ。
     性欲。
     気持ち悪い。
     そんな気持ち悪いものが私に取り憑いている。
     私は、両親に相談した。ストーカーされていることを伝えると、家族は怒り、心配してくれた。けど、正体が悪霊だと伝えると、気のせいだと言われた。
     でも、目の前で姿を消すなんて、悪霊以外出来るとは思えない。
     ストーカー被害は信じてくれたが、悪霊のことは信じてくれなかった。変質的な悪霊に取り憑かれているのに、誰も助けてくれない。悲しくて、私はその日の夜、泣きながら眠りについた。
     私の悲しみに呼応するかのように、ベッドや机がぎしぎしと音を立てた。
     次の日。
     昼休みに、私は教室でノートを開いていた。勉強は好きだった。気が紛れるからだ。将来は、学校の先生になるのもいいかもしれない。

    「ねぇ小毬、あんたに話したいことがあるって、2組の子が呼んでるよー」

  • 644◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:09:52

     友達に言われ、私は教室の外に出た。待っていたのは、今まで話したことのない男子だった。

    「あ、あの、僕、ずっと小毬ちゃんのことが……」

     顔を真っ赤にしながら、その子は私に告白をした。
     恋人になる。少し前ならロマンチックに聞こえたそれが、今はひどく下品で、グロテスクなものに聞こえた。

    「ごめんなさい……」

     昨日の悪霊のことが頭にちらつき、私は教室の中に戻ろうとした。

    「ま、待ってよ!」

     その子は私の袖を掴んだ。
     ——怖い!
     私の中で嫌悪感が一気に膨らみ。
     その子が突き飛ばされたようによろめいた。

    「ちょ、姫氏原さん、やりすぎ……」

  • 645◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:10:20

     周囲の友達が引いているが、私がやったんじゃない! この子が勝手に飛んでいるのだ。
     お芝居は止めてと私は言おうとしたが。
     ——その子が宙に浮いていた。
     そして、放り出されるかのように、その男子は宙を舞い、廊下に叩きつけられた。

    「何、今の……!?」

    「ねぇ、浮いてなかった……?」

    「どういうこと……!?」

     周囲が騒然とするなか、私には一つ心当たりがあった。
     ああ、何てことだ。

    「悪霊のせいだ……!」

     悪霊の名を出した瞬間、周囲は大パニックに陥った。
     悲鳴の中で、私は悪霊の嘲笑を聞いた気がした。

  • 646◆xaazwm17IRZa23/05/22(月) 23:11:06

    姫氏原パート終了します……!
    日付変わる前に歯荷パート書き終わったら投下します……!

  • 647二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:23:37

    堀木不憫だな……

  • 648二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:24:31

    どういうことなんだ…?
    悪霊の正体は一巡前の堀木くんかと思ったが違うみたいだな
    じゃあ堀木くんがループしてるのは自前の能力なのか……?

  • 649二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:31:55

    目裏が優勝してんのが1番意外だわ
    それともワープ装置が故障せずに逃げ仰れた世界があったのか

  • 650二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:33:21

    悪霊の行動原理は性欲だけかと思ってたけど
    もしかして姫氏原が学校で孤立して退学になるようにみたいな狙いもあったのか

  • 651二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:35:21

    悪霊くん実は小毬ちゃんを守ろうとしてるとかかと思ったら清々しいほどの邪悪で笑う

  • 652二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:41:57

    >>648

    堀木が一巡目でどうにか優勝してループ能力獲得とかも無さそうなんだよな 断片的な回想でしかないけど明らかに死んでたし

    まあ設定に無くても勝手に能力生えてきた例はドラギモスいるし、実はループ能力あったとかでも全然驚かないけど

  • 653二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:51:01

    >>652

    絶対ではないと思うけど

    あの茜音沢が明確に無能力者って断言してるんだよな…

  • 654二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:17:32

    今気づいたけど茜音沢とかセピアさんを抑えて目裏ちゃんが優勝してるの面白すぎるでしょ

  • 655二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:19:32

    >>654

    しっかりとした管理の下で黒服や担任の妨害もなく金持ち権限で優勝したのかもしれない…やり合って頂点に立つのもおもろいが!

  • 656◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 00:36:45

    ……やはり歯荷パートは今日中に完成しないので、明日以降に回します……!


    前回のデスゲーム、私自身ふわっとした認識なので、ダイスで色々決めときます。

    とりあえず確定してるのが

    「悪霊憑きではない姫氏原小毬の参加」

    「メス男子ではない堀木彩の参加」

    「オルランドに恋していない霧田キルコの参加」

    「目裏雨子の生存」

    >>630より

    「26番・歯荷仄花の優勝」

    です……!

  • 657二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:43:55

    マジで目裏ちゃん改心せずに生存するのハードモードすぎる

  • 658◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 00:46:18

    目裏雨子はどうして生存した?

    殺し合い会場の滞在時間dice1d100=13 (13)

    1~20 会場に降りてない。ずっとモニター室。数字が大きい程積極的。

    21~40 会場に降りたが、さっさとワープ。

    41~60 最初の六時間は会場に居た。

    61~80 最初の12時間は会場に居た。

    81~100 最初の18時間は会場に居た。

  • 659二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:48:33

    それはそれで茜音沢vsマエストロセピアから生き残ってるんだよなぁ
    それとも真のバトルロワイアルが起こらなかった世界線だろうか

  • 660◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 00:50:10

    前回の目裏雨子:会場には降りず、モニター室で観戦。

    13は殺し合いにやや積極的なのでdice1d4=2 (2)

    ① 今回と同じく推薦した

    ② 推薦はしていないが、父親が暗黒金持ちだとは知っており、クラスがこうなることを望んでいた。

    ③ ①②いずれにも該当しないが、ポップコーン食べながら楽しんだ。

    ④ ①②③いずれにも該当せず、割とすぐ飽きた。

  • 661◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 00:56:44

    前回の目裏雨子:会場には降りず、モニター室で観戦。推薦こそしてないが、父親が暗黒金持ち(デスゲームのスポンサー)であることは把握済み。いつかクラスメイトをわからせてやると意気込んでいた。


    クラスメイトの相違

    dice1d100=94 (94)

    数字が大きい程同じ

  • 662二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 00:57:21

    ほとんど同じメンバーか

  • 663◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:07:11

    他の生徒はほとんど変わらず。(今後の展開次第では何かあるかもしれませんが……)


    優勝者:歯荷仄花

    スタンス:dice1d9=2 (2)

    ①対主催/穏健 ②対主催/中立 ③対主催/過激

    ④生存/穏健 ⑤生存/中立 ⑥生存/過激

    ⑦優勝/穏健 ⑧優勝/中立 ⑨優勝/過激


    歯荷仄花のキルスコア:dice1d4=3 (3)


    優勝時の状態:dice1d100=40 (40)

    (数字が小さいほど瀕死)

  • 664二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 01:07:58

    あのクラス内で歯荷が優勝するのも条件的にあり得なくないラインか

  • 665二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 01:11:03

    うまいこと記憶DISCを手に入れさえすれば歯荷ちゃんの優勝は硬いからな
    茜音沢とかの動きをまねたのかもしれないし

  • 666◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:26:51

    前回の優勝者:歯荷仄花

    スタンス:対主催/中立……基本的に運営を打倒し、そのためなら多少の犠牲もやむなしというスタンス。今生き残ってる生徒は一部の例外除いてこれ。

    最終的に3人殺して優勝。優勝時は入院レベルのダメージを負っていた。


    何故対主催だった歯荷が優勝したのか

    dice1d4=4 (4)

    ①仲間を作れず、襲いかかる相手を返り討ちにしていたら優勝していた。

    ②土壇場で仲間を裏切り優勝した

    ③土壇場で仲間に裏切られてそれらを返り討ちにして優勝した

    ④途中で対主催を諦め優勝に切り替えた

  • 667二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 01:29:15

    今後ドラギモスに見切りをつけて裏切る可能性もあるってことか…

  • 668◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:41:00

    歯荷仄花……当初は対主催/中立だったが、ゲームが進行する中で対主催を諦め、優勝狙いに切り替え。三人殺し、見事優勝した。結構なダメージを負っているのでかなりの激戦だったようだ。その後の詳細は不明。


    では、最大の問題

    どうやって目裏雨子は茜音沢やセピアから生き残ったの?

    前回の殺し合いの進行者は

    dice1d4=1 (1)

    ①茜音沢

    ②ペギー・ジョーダン

    ③目裏雨子

    ④爆弾卿

  • 669◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:42:20

    進行は今回と同じく茜音沢。

    真のバトルロワイヤルはdice1d2=2 (2)

    ①開催された

    ②開催されなかった

  • 670二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 01:43:10

    …何故?

  • 671◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:47:01

    開催されなかった理由

    dice1d4=3 (3)

    ①【管理人】に接触しなかったため

    ②娘の復活ではなく、生徒の死が目的だったため

    ③この茜音沢は今回と違い一般人であり、開催する前に謀殺された

    ④この茜音沢は今回ほど超人ではない(A+程度の実力)だったため、開始前に謀殺された。

  • 672◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:50:29

    前回の茜音沢:普通の教師。今回と同じく娘をデスゲームで失い、今回と同じ理由でデスゲームを開催。暗黒金持ちを集め、殺し合いを進行。狙い通り、真のバトルロワイアルによって娘を蘇生しようとするが、実力が一般人であるため、開催前に黒服(おそらくセピア)によって謀殺された。そのため真のバトルロワイアルは起こらず、目裏雨子をはじめ暗黒金持ちはゲームを満喫して帰宅した。

  • 673◆xaazwm17IRZa23/05/23(火) 01:52:56

    目裏雨子の生存ルートに辿り着いたところで、今回はここまでとさせていただきます……!

    感想ありがとうございます……! とてもモチベになります……! 嬉しいです……!
    保守やアイデアもありがとうございます……! また、次回作(いつになるのか……)も楽しみにしていただいて嬉しいです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 674二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 01:58:02

    乙でした〜!
    実力が一般人なのになんで真のバトロワで優勝できると思ったのか…
    そして次回作は本当に楽しみにしてます!

  • 675二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 02:00:15

    お疲れ様です
    怒涛の設定開示で興奮が収まらない!ますますどう終わるのかが楽しみになってきた

  • 676二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 07:43:16

    (ひょっとして生存者同士一致団結したように見えたのは導入だけで
    実態は各々の抱えた厄ネタぶちまけあってるだけの煮こごり危険集団なのでは……?)

  • 677二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 07:57:06

    >>676

    お気づきになられましたか

    比較的安心して見れるキャラが三田のづちドラギモスNek-Oくらいしかいない心臓に悪い集まりだということに

  • 678二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 13:35:39

    バチバチにならず纏まっていくのが最高の和了だけどもサー・クラ、悪霊、殺人の暴露と爆弾目白押しだからちくせう

  • 679二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 14:08:43

    メタ的に誰か一人でも欠けると茜音沢に負けてバッドエンド行きな気がするんですが…

  • 680二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 15:47:57

    星峰みたいに歯荷ちゃんに大きな影響を与えたキャラが前ループでもいたかどうかが大きいな

  • 681二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:17:20

    保守

  • 682二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 03:21:50

    保守
    今日はお休みかな?

  • 683◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:52:16

    申し訳ありません……! 帰宅後寝ちゃってました……!
    夕方に歯荷パート完成していたので投下します……!

  • 684◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:53:19

     ばちくそ陰惨な空気の中で行われたランチタイムは、マネモフルの後は、金木→姫氏原と続いた。

    「私は……目裏さんを殺しました」

    (へぇ……)

     滔々と事情を説明する姫氏原。歯荷は、意外な告白に意表を突かれた。
     ただ、そういうこともあるのだろう、と思い直す。
     姫氏原は内気な少女だが、絶対に人を殺さない聖人君子ではない。話を聞けば、殺されそうになり、悪霊が暴走した結果の殺人、だろう。

    (つまり、姫氏原さんを殺そうとすればカウンターが来る、と……。いえ、そもそも、悪霊憑きと戦おうとは思いませんが)

     歯荷は戦闘狂でも殺人鬼でもない。ただ、生きていたいだけだ。

    「で、これからどうすんのドラギモス?」

     空気を読まずに昼食をぺろりとたいらげた石川が訊く。

    「……そうだな、首輪解除について、一つアイデアがある。それを試してみたい。そのためには……」

     その時、低い振動音が響いた。

  • 685◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:54:10

    (これってマナーモードのバイブレーション?)

     参加者はスマホを取り上げられている。今、例外的に所有しているのは。

    「もしもし」

     ドラギモスは、通話ボタンを押し、スマホを耳元に近づけた。

    『よぉ、弱者の諸君』

     スマホ越しに声が聞こえた。年齢を把握させない、男の声だ。

    「誰だお前?」

     神谷浩史の声でドラギモスは答える。

    「放送によれば、生き残っているのは僕らだけのはずだぜ」

    『ということは、殺し合いは停滞しているのか?』

    (……やべーですわよ。どう考えても、電話の相手は運営側! 殺し合いをやっていないことがバレたら、最悪首輪が……)

     呑気にご飯食べてないでさっさと首輪外せば良かったですのに! と歯荷はドラギモスを恨む。
     が、ドラギモスは動揺する様子も見せず

  • 686◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:54:57

    「何言ってるんだ。食堂はバトル禁止だろ。僕たちルールを守ってるぜ。……そして、僕たちがバトルをしていないことを、お前たちは把握してないんだな。
     最初からそうなのか? 違うな、三田と情報交換して確信したが、この殺し合いは見世物の側面が強い。至る所にモニター……あるいはそれに類した異能があるはずだ。
     それが今は機能していない。原因は……廃校の破壊か? なるほど、施設に盗撮の異能でも付与していたのか。情報提供ありがとう」

    (あ、煽りますわ……)

    『……なるほど、この状況でそこまで頭が回るなら大したものだ。弱者こそ知恵を働かせるべきだからな』

    「で、何の用だよ?」

    『お前たちに、強者である俺から情報を授けてやろう』

    (何ですって……!?)

     願っても無い言葉。五里霧中の中で見つけた手がかり。
     歯荷だけではなく、他の生徒も食いつきを見せる。

    「そうか、ありがとう。まずお前の名前は? 僕は石川大輔って言うんだけど」

  • 687◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:55:36

    「おいドラギモス、散々煽っておいて俺に押し付けんじゃねぇよ」

     ひどいなぁもう、と石川はドラギモスの背中をはたいた。
     ドラギモスは蹲り、痛みに呻く。
     仕方ないので三田が引き継いだ。

    「情報とは何だ?」

    『俺の名前は谷淵玄夜。このゲームの出資者の一人だ。お前たちに教えてやる。今、この島で何が起こっているのか。そして、どうすれば家に帰れるのかをな』

     地獄に垂らされた蜘蛛の糸。なのに、歯荷の心には不安だけが広がっていた。
     まるで更なる地獄に誘われているかのような、本能的な予感。
     死にたくない、と思う。
     まだ、生きていたい。
     その時、奇妙なデジャブを感じた。
     前にも、こんなことがあった気がする。
     いつだったか分からないが、今と同じような状況が。

    (その時が来たら、やるしかねーですわ)

  • 688◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:55:59

    何より大切なものは自分の命なのだから。
     自分を助けて死んだ、馬鹿な少年のようにはならない。……なれない。

    (でも、その時なんて、来ないほうがいいんですのよ)

     デスゲームはいよいよ次の局面に入ろうとしていた。真のバトルロワイアル。百戦錬磨の黒服と邪悪なる富豪たち、魑魅魍魎のデストラップ、そして修羅・茜音沢。たった1時間足らずで百人以上の犠牲者が出た地獄に、新たな生贄が捧げられた。

  • 689◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 03:57:07

    投下を終了します……!
    これで30・5話は終わりです……!
    31話のダイスを振って、今日は閉めたいと思います……!

  • 690◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 04:00:39

    31話の生徒幸運ダイス

    石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d100=23 (23)

    篠宮 纏(しのみや まとう)dice1d100=99 (99)

    Nek-O(ネック・オー)dice1d100=72 (72)

    堀木 彩(ほりき あや)dice1d100=23 (23)

    マネモフル=タマネdice1d100=89 (89)

    三田 哲(みた とおる)dice1d100=33 (33)

    金木 冥(かねき めい)dice1d100=21 (21)

    姫氏原 小毬(きしはら こまり)dice1d100=91 (91)

    千頭之 のづち(ちずの のづち)dice1d100=95 (95)

    歯荷 仄花(はに ほのか)dice1d100=52 (52)

    虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d100=34 (34)

  • 691◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 04:05:37

    31話の運営幸運ダイス

    茜音沢 仁史dice1d100=33 (33)

    目裏晴刈dice1d100=66 (66)

    錠著 者絵dice1d100=52 (52)

    谷淵 玄夜dice1d100=28 (28)

    ペギー・ジョーダンdice1d100=79 (79)

    冬爺 凛dice1d100=81 (81)

    墓蟹 毒美dice1d100=82 (82)

    宇都 紀久子dice1d100=96 (96)

    九龍dice1d100=38 (38)

    拳王卿・呉偉dice1d100=27 (27)

    希咲枯春dice1d100=5 (5)

  • 692◆xaazwm17IRZa23/05/24(水) 04:07:01

    以上の情報を元に第31話を作製します……!

    それでは、今後ともよろしくお願い致します……!

  • 693二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 04:12:42

    乙でした
    幸運ダイスに目を通すときの心臓が縮み上がる感覚よ……

  • 694二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 04:20:52

    地雷と秩序派が大勢死にそうだな…
    悲惨な結果だけど逆に言えばサー・クラ発動も堀木闇堕ちもマネモフル暴走も起こらず順当にvs茜音沢になりそうで安心した

  • 695二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 04:59:50

    これ、きっかり10人生き残るなら目裏兄が本土に着いてきちゃわない?大丈夫か小毬ちゃん…

  • 696二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 05:21:18

    堀木とドラギモス死にそうで息できなくなった
    頼む……性別不詳コンビどっちも好きなんだ……

  • 697二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 09:26:31

    展開によっては次の31話でゲームエンドの可能性もある?
    あと即落ち2コマみたいなスピード感で脱落候補に躍り出た扇動卿に笑いを禁じ得ない

  • 698二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 10:27:03

    ◇試したいアイデアとは…?

  • 699二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 14:07:26

    >>697

    候補っていうか10以下なんで脱落確定ですね……

  • 700二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 14:32:43

    里見が確か35で死んだからな
    もう50以下の奴らは死ぬものとして覚悟決めた方がいいかもしれない

  • 701二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 19:27:55

    >>699

    28だしまだ確定ではなくない?

    全員生存エンドならもれなく扇動卿もついてくるよ

  • 702二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 21:11:06

    このレスは削除されています

  • 703二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 21:13:03

    生徒側の戦力、中堅どころは層が分厚いけどトップ層が少ないって今のジャンプみたいだ

  • 704二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 21:20:09

    >>701

    ごめんなんか見間違えてた

  • 705二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 21:22:54

    >>703

    現状だと茜音沢とジジイに勝てる要素が一ミリもないから流石に強化入るんじゃないかね

  • 706二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 02:45:53

    弱者の保守

  • 707二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 05:24:56

    次回作で何が楽しみっておそらくはマネモブの異世界人か魔法少女が出てくることなんだよね

  • 708二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 06:04:42

    >>707

    マネモブは義務じゃないんだよなあ……

  • 709二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 13:21:16

    保守卿も存在するのだろうか

  • 710二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 15:16:04

    茜音沢に「うぬら5人か……!」させるメンバーは果たして誰なのか

  • 711二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:27:23

    保守

  • 712◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:43:21

    31話投下します……!
    昨日は顔を出せず申し訳ありません……!

  • 713◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:43:55

    「運営が……壊滅した?」

     三田は驚愕した。
     谷淵玄夜と名乗った、謎の男。
     男は滔々と語った。
     茜音沢の裏切り。複数の出資者には知らされていた、真のバトルロワイアル。本部を徘徊するデストラップの猛獣。鬼人の如く殺戮を成す茜音沢。
     本部の外に勝るとも劣らない地獄が、そこに展開されていた。

    (首輪を解除した後どうするのか。幾つか案があった。①船を調達して海から脱出②本部に乗り込んで脱出手段の捜索。今まで漠然と②を想定していたが……これは①の方が良さそうだな)

     茜音沢が自分たちを救う前に戦っている可能性もある。が、そうでなかった場合、リスクが大きすぎる。もし茜音沢が本当に自分たちを助けるつもりならば、本部の外で待っていれば合流に来るはずなので、やはり本部に向かう意義は少ない。

    (有益な情報だ、でも……)

  • 714◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:44:29

     何故それを自分たちに伝える?
     真なるバトルロワイアルなるものに、この谷淵という男も巻き込まれているのなら、生徒という資本は無視できないはずだ。
     茜音沢に勝てる戦力としは期待できないとしても、情報源、武器、異能、あるいは肉の盾としても有効に活用できる。何も知らずに本部に突入したところを利用することだって出来た。

    (この男の目的は……?)

    「弱者よ、お前たちは今、本部に来たくないと考えているな。茜音沢が暴れているのは好都合だ。今のうちに海へ逃げればいい、と……」

    (さすがにそれくらいは読んでくるか……)

    「無駄だ。この島に船は無い。お前たちがこの島を脱出するには、本部へ来るしかない。本部のワープ装置だけが、ここから出れる唯一の手段だ」

    (何だと……!?)

    「そして、ワープ装置の軌道は、『茜音沢の死亡』が条件だ。お前たちは、茜音沢を殺さねば、ここから出ることは出来ない……本部へ来い、弱者よ」

     三田は谷淵からもたらされた衝撃の情報をどうにか呑み込み、思案する。

  • 715◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:45:10

    「…………お前たちと茜音沢を戦わせ、共倒れにするという手もある。お前たちが茜音沢に皆殺しにされることはこっちとしても好都合だ」

    「そのフェイズは既に終了している。茜音沢に対抗できるこちらの戦力は、既に尽きている。……強いて言えば、拳王卿くらいか。我々が全滅することは時間の問題だ。だが、いいのか? その後はお前たちだぞ、弱者よ。今生き残っている全員で茜音沢を叩くことが、ベストな選択だ。そちらは戦力を、こちらは武器と情報を提供できる。悪くない話だと思わんかね」

    「めちゃくちゃ偉そうに助けてって言ってないこれ?」

     隣で金木が口を尖らせた。
     スマホをスピーカーモードにしているため、谷淵の言葉は食堂に居る全員が把握している。

    「どうだい姫氏原さん、彼の言葉はどこまで本当かな、どう『聞こえた?』」

     三田は姫氏原に問いかけた。

    「……えっと」

    『異能の聴覚』を有している姫氏原は、慎重に言葉を紡ぐ。

  • 716◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:45:36

    「嘘は……ついてない、と思う。でも、全部真実、じゃないのかも。もし私たちが助けに行かなくても、何とかする手段を持ってる……そんな、自信、があるのかな……。切羽詰まってはないというか……」

     運営側から連絡が来たと知った瞬間、三田はディスクを使うことにした。しかし、自らの頭に挿しこむ前に、姫氏原が無言で手を挙げたのだ。
     ディスクは、一度使えば同じ人間は使用できない。既にドラギモスと金木は、使用権を失っている。
     死んだ生徒の異能、あるいは記憶を再現できるこのディスク、使用用途は大きい。過去の確認にも使える。肉体特化型(石川、マネモフル、堀木)などに例えば新條の炎や芝野の読心を組み合わせれば、強力なシナジーを期待できる。あるいは歯荷や三田などの超人的な身体能力こそないが一定レベルに鍛えた者に、鰐淵の剣術や瀧沢のジークンドーを記憶ごとインストールすることで、即席の武術家を作ることも可能だろう。戦闘に役立つ異能を持たない千頭之でも、結の怪異など一気に即戦力に躍り出ることも可能である。
     そんな中で、姫氏原は、いまいちそのシナジーを発揮できない、数少ない例外といえた。そもそも戦闘は悪霊の操作で参加できる。新たな異能を増やすにしても、悪霊操作と怪異操作、あるいは悪霊操作と炎の操作など、同時に二つの異能を戦闘で使いこなせるほど、姫氏原は戦闘巧者ではない。かといって武術系の記憶をインストールしたところで、技術に肉体がついていかない。灘神影流とジークンドーを習得した歯荷が、里美を殺しキルコや石川と戦えたのは、歯荷が女子ダンス部のエースであり、一般的な女子の範疇ではトップクラスの運動神経と肉体強度を備えているからである。

  • 717◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:45:58

     姫氏原にはそれは無い。あくま一般的な女子の範疇でも、更に平均に属する。故に戦闘でディスクを使う旨味が少ない。
     だからこそ、今この場で適任だとは言える。
     誰かの枠を今ここで潰すくらいなら、姫氏原が使ったほうがいい。
     本人がそれに気づき、立候補したのだ。
     選んだのは、星峰の『聴覚』。芝野の「読心」にしなかった理由は、射程範囲を考慮してのことだ。星峰の聴覚は、音から分析する。どれだけ遠く離れていようと、スマホ越しに声が聞こえれば、そこから心理を分析できる。一方、芝野の読心は、射程範囲が存在する。声(音)ではなく、心を読む。電話越しでは、効果を発揮しない。姫氏原はそう考えたのだ。

    「……半分くらいは、信用できる、と思う……」

  • 718◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:46:32

    「なるほど、ありがとう姫氏原さん」

     初めての悪霊以外の異能行使は、普段使っていない筋肉を動かしたような、奇妙な倦怠感を与えた。
     ふぅと息を吐く姫氏原。堀木はそんな彼女の背中をさすり、微笑を浮かべた。

    「……情報提供感謝する。お前は本部のどこに居るんだ」

     谷淵は場所を伝えた。三田はそれを聞き取ると、通話を切った。

    「……それで、どうする? 僕らは本部に行くべきだろうか……」

    「ここから出るには行くしかないのだろう? ならば選択肢は一つだな」

     Nek-Oは忌々しそうに言った。

    「罠の可能性もある。それでも行くしかないか……」

     諦めたように篠宮が言う。

    「茜音沢先生ぶっ殺さないと脱出できないんだろ? シンプルでいいじゃん。言っとくけど、先生マジで強いからな。一年のときに闇討ちして瞬殺されたし俺」

     石川は楽しそうに言う。

    「問題は、タイミングだな」

  • 719◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:47:04

     石川にはたかれたダメージからようやく回復したドラギモスが、小鹿のように震えながら言った。

    「だが、それよりも前に、そもそもの前提がある。首輪を解除しなければ本部に入れない。今本部に入れるのは姫氏原と、恐らく死者として判定されている千頭之だけだ」

    「まずは首輪解除ということか」

    「ああ。……いつ突入するかは、これが成功するかにかかってくる」

     さて、とドラギモスは言った。

    「誰から外す?」

  • 720◆xaazwm17IRZa23/05/26(金) 00:48:54

    31話①を終了します……!
    ②は明日投下します……!

    昨日・本日と感想ありがとうございます……!
    後、1・2週間ですが、今後ともよろしくお願い致します……!

  • 721二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:02:18

    乙です、とうとうこの血みどろの争いにも終わりがチラついてきたか

  • 722二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:12:46

    乙でした〜
    首輪が外れたらこいつらのうちの何人かなら泳いで帰れそうではある

  • 723二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 03:12:05

    お疲れ様です
    こんなに長く続くとなんかもう終わるのが寂しい……
    でもどう終わるのかを早く見てみたい気持ちもある……

  • 724二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 06:00:26

    DISCって結ちゃんの能力だけ使えるわけじゃないんだな
    小毬ちゃん堀木が死んだ後にもう胸中を覗けないので死ぬほど後悔しそう

  • 725二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 07:45:21

    軽く叩かれただけなのに行動不能になってる時間がやたら長いドラギモスェ……
    100カノの静ちゃんとタメ張れそうな弱さだけど流石に石川のパワーが並外れてるだけだよな?

  • 726二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 08:20:18

    廃校編ラストといいDISCが文字通り切り札として機能してるの好きだ

  • 727二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 08:24:56

    そのうちDX日輪刀が切り札になる瞬間も来るから見とけよ

  • 728二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 08:44:14

    一時はジジイとも肩を並べた廃村三銃士だからね…

  • 729二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 16:59:32

    ほしゅ

  • 730二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 22:09:14

    保守

  • 731二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 22:29:34

    三銃士なら猪デストラップくんも黙っちゃいない

  • 732◆xaazwm17IRZa23/05/27(土) 00:19:13

    申し訳ありません、中々纏まらず、今日は投下できないです……!


    一応、首輪の解除成功だけダイス振ります……!

    爆弾卿の死亡、多くの暗黒金持ちの死亡、管理施設の破壊により、解除成功率はdice1d100=67 (67) %高まっています……!

  • 733二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:22:04

    このレスは削除されています

  • 734二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:24:18

    ドラギモスの腕ならほぼ成功だな!(渦目)

  • 735◆xaazwm17IRZa23/05/27(土) 00:25:20

    33以上の数字で首輪解除成功です……!

    33未満の場合、本部の首輪管理装置を破壊しなければ首輪を解除できません……!


    石川 大輔(いしかわ だいすけ)dice1d100=36 (36)

    篠宮 纏(しのみや まとう)dice1d100=22 (22)

    Nek-O(ネック・オー)dice1d100=77 (77)

    堀木 彩(ほりき あや)dice1d100=19 (19)

    マネモフル=タマネdice1d100=12 (12)

    三田 哲(みた とおる)dice1d100=15 (15)

    金木 冥(かねき めい)dice1d100=85 (85)

    歯荷 仄花(はに ほのか)dice1d100=64 (64)

    虎肝 ドラギモス(とらきも どらぎもす)dice1d100=7 (7)


    姫氏原:解除済

    千頭之:死者扱いのため確定成功

  • 736二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:28:59

    ドラギモちゃん…??

  • 737◆xaazwm17IRZa23/05/27(土) 00:33:08

    解除済:姫氏原
    成功:千頭之・石川・Nek-O・金木・歯荷
    失敗:篠宮・堀木・マネモブ・ドラギモス

    生徒の首輪は複数の運営により管理されており、担当していた運営が死亡した場合は解除に成功します。
    失敗した生徒は、担当している運営が生存しているため、解除できませんでした。
    担当している運営の死亡、あるいは全ての首輪を統括している本部内の装置を破壊すれば、失敗した首輪を解除できます。
    なお、本部内の装置は本来廃校のロッカーに配備されるはずだったとある二人一組のデストラップによってガードされています。

    今後の流れとしては、解除組で先に本部へ突入、装置の破壊後、失敗組も突入の流れになると思います。

  • 738◆xaazwm17IRZa23/05/27(土) 00:34:12

    本日は投下できず、申し訳ありません……!
    今後とも、よろしくお願い致します……!

  • 739二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:42:09

    乙です
    完結間近と言いつつもこれは……ボスラッシュじゃな?

  • 740二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 00:49:07

    乙でした〜!
    みんな茜音沢戦まで死ぬなよ…

  • 741二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 02:43:05

    これで本部に突入した姫氏原ちゃんが堀木の預かり知らぬところで死んだら目も当てられないぞ

  • 742二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 04:33:39

    設定的に姫氏原ちゃんより自分の命を優先することはないと思われるが…

  • 743二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 05:58:26

    このレスは削除されています

  • 744二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 06:09:10

    途中送信失礼

    >>741

    野暮かもしれんが姫氏原は>>690で確定生存引いてるからそれは無い

    危ないのは逆に堀木の方で……

  • 745二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 06:39:02

    堀木くん死にそうだけど最期は小毬ちゃんの腕の中で逝ってほしい

  • 746二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 12:17:56

    >>744

    すまんな幸運値ダイスのこと忘れてたわ

  • 747二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 20:21:46

    フィジカルモンスター石川が先行チームに加われるのが救いか

  • 748◆xaazwm17IRZa23/05/27(土) 21:21:47

    展開に悩んでいるのでダイスや安価振るかもです……!

  • 749二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 22:29:51

    久々の安価で楽しみ

  • 750◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:06:35

    首輪解除パートを投下します……!

  • 751◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:07:17

    「この首輪は、実のところ単純な構造をしていて、多少の工学的知識と、ある程度の器用さがあれば外せるようになっている」

     石川の首輪を弄りながらドラギモスは言う。座り込みドラギモスに首輪を触らせている石川は、生殺与奪を握られているにも関わらず、リラックスした様子を見せている。

    (胆力が凄いのか、サイコなのか……あるいはその両方なのかな)

     三田は内心そう思う。彼の愛好するミステリーには、あまり石川のようなキャラクターは出てこない。石川の場合密室もトリックもアリバイもなく、正面から撲殺してしまう。どちらかというとノワールとかアクションのジャンルだ。あるいはホラーか。
     解除を試みるドラギモスを、石川以外の全員は覗き込む。純粋に興味深いのもそうだが、首輪を解除できるのはドラギモスだけ、という状況はあまり芳しいものではない。生徒間の殺し合いこそ(一時的かもしれないが)止まった。しかし、島にはまだ見ぬデストラップが潜んでいるかもしれず、茜音沢を含めた運営との苛烈な戦いも待っている。何より、ドラギモス自身の首には未だ爆弾付きの首輪が付けられており、いつ生き残った運営の手で爆破されるとも限らない。首輪解除要因は多い方がいい。

  • 752◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:08:05

     しかし、簡単だとドラギモスは言うが、その手つきは中々複雑で、少なくとも普通の高校生にはかなり難易度が高い作業だ。幾らでも練習可能・失敗もOKという状況ならばともかく、サンプル含め限りがあり、失敗すれば即死という状況では、更に難易度が跳ねあがる。

    (なるほど、そうするんですのね)

     生き残った一人に、どんな動きも一度視れば24時間再現可能の異能者、歯荷仄花が居たのは他の参加者にとって僥倖だった。(彼女が信用できるかは置いておくとして)
     ドラギモスの動きを集中して観察できた歯荷は、工学的知識は抜きにすれば、既にドラギモスと同じように首輪を解除することが出来る。
     他にも何人か、ドラギモスの動きを覚えて首輪を解除できるようになる者がいるかもしれない。この場に普通の高校生は居ない……千頭之や金木でさえ、異能や伝説を持っている。

  • 753◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:08:35

    「見てくれ。ランプが消えている。姫氏原のランプも消えていた。そしてNek-Oのランプは青、亡くなっていた里美のランプは赤だった。恐らくだが、ランプが消えた、あるいは赤いランプの参加者は解除できる。だが、青いランプは解除できない」

    「どうしてそう言い切れるんですの?」

    「ランプが消えた首輪及び赤いランプの首輪には『爆薬』が入ってなかったんだ」

    「何ですって!?」

     爆弾付きの首輪。オープニングでそう説明され、ずっと信じていた。けれど、爆薬は入っていない。衝撃の事実に、歯荷を始め、その場にいた者は驚愕する。堀木でさえ目を丸くしていた。

    「じゃ、じゃあ爆弾付きの首輪はブラフですの!?」

    「いや、たぶんそれは違う。谷淵の言葉が正しければ多くの運営者が本部に滞在している。首輪がブラフだとしたら、万が一それが生徒にバレてみろ。いや、バレなくても生徒が発狂して本部に走り出してみろ。ここの『僕に負けた』石川筆頭に大の大人でも相手にならない奴らがうちのクラスにはうようよいる。猛獣みたいなもんさ。檻の無い動物園を観に来る奴はいない。きっと首輪は本当に爆発するはずだ」

  • 754◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:09:05

    「ドラっちさぁ、挑発するときだけ俺の手が届かないとこまで逃げるのかっこ悪いぜー」

     おそらくさっき一撃を入れられた意趣返しである。

    「僕が予想するに、青のランプが付いている首輪には爆薬……正確には『爆発する異能』が備わっている。事実、Nek-Oの首輪を調べた際には何というか本能的に、これ以上調べると爆発する、と感じた。僕は別に危険察知の異能とか、未来予知の異能は持っていない。一般的な天才に過ぎないからな。だからあの感覚は、最初から首輪に備わっていると見ていいだろう。首輪を解除しようとして爆死、よりも、首輪解除を諦めて殺し合い、の方が運営が観たいものだったんだろうな」

    (…………ん?)

     ふと、歯荷の脳裏にちらつく映像があった。
     教室に集まった幾人かの生徒。とある生徒の首輪を調べていた小柄な生徒が、叫ぶ。
     ——駄目だ、解除できない……! これ以上調べれば爆発する……、僕の、僕の知識ではどうすれば爆発を防げるか分からないんだ……!
     嘆く者、憤る者、責める者の中で、歯荷は冷静だった。

  • 755◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:09:44

     ああ、脱出は無理ですのね。運営を倒すなんて、夢のまた夢。でしたら私は……。

    (………………何ですの、これ?)

     知らない記憶だった。
     歯荷の記憶には、こんな時間は無かった。

    (厭な記憶ですわ……)

    「よし、出来た……!」

     カラン、という音と共に石川の首輪は食堂の床に転がった。

    「首輪のランプが消えている奴、赤になっている奴は外せる。青の奴は……ちょっと試してみたいことがある。それ次第だな」

    「サンキュードラギモス。いざ外れると、やっぱしっくりくるな。家帰って制服脱いだ感覚に近いぜ」

     ドラギモスは手際よく他の生徒の首輪も外していった。

    「駄目だ……篠宮はまだ青。ちょっと待っててくれ」

    「よし、歯荷のランプは消えてるな」

    「思った通りだ。千頭之のランプは赤、死者と一緒の扱いになっている」

  • 756◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:10:12

     かくして、二十分ほどで千頭之・石川・Nek-O・金木・歯荷は首輪を外すことに成功し、残ったのは三田・篠宮・堀木・マネモフル・ドラギモスである。

    「歯荷、僕の首輪はお前にお願いできるか? お前の異能なら、僕の解除技術を再現できるだろ」

    「ええ、いいですわよ」

     殺人者に解除のキーパーソンの生殺与奪を握らせていいのか。千頭之や篠宮は不安げな顔をしたが、ドラギモスや三田は、歯荷がここでドラギモスをどうこうするはずがないと分かっていた。今ドラギモスを殺したところで、その後他の参加者にリンチされて詰みだ。生存第一の歯荷がそんなことをするはずがない。
     ドラギモスの首輪を手際よく調べながら、歯荷は言った。

    「私、あなたを殺したことってあったかしら?」

    「……いや、ないだろ。僕は幽霊じゃないぜ」

    「そう、ですわよね。すいません、冗談ですわ」

    (もし私が優勝に切り替えるとして、真っ先に始末するのは、きっとドラギモスですわ。技術はコピーできますし、戦力は武器で補えます。けれど、知力だけは覆すことは難しいですわ。知能全振りのドラギモスくんちゃんは、策を練られる前に瞬殺するのがセオリーですわね……)

  • 757◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:10:45

    妙な考えを振り払い、歯荷はドラギモスの首輪の、ランプを確認する。

    「青、ですわ。……なるほど、確かにこれ以上触ると爆発すると、直感で分かりましたわ。どう考えても異能の仕業ですわね」

    「だろ。けっこう気持ち悪いだろ、それ」

    「ええ、まったく」

     歯荷はドラギモスから離れる。空気がやや弛緩した。理屈では歯荷が動かないと分かっていても、万が一という可能性もある。

    「それで、青の奴らはどうすんだ。優勝者決めるまで殺し合うのか」

     石川の笑えないジョークに、全員が冷めた目を向ける。

    「ランプの色が消えたのは……たぶん茜音沢の運営大虐殺が原因だと思う。管理者が死んだのか、管理装置が破壊されたのか……ばらつきがあるのは、たぶん完全に粉砕されたわけじゃないんだ。本部に行って、大元の管理者、あるいは管理装置を完全に機能停止させれば、きっと全員の首輪が外せる」

  • 758◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:11:23

    「首輪が外れた組で本部に突っ込むのかい? およそ生存者の半分だけど、戦力の二分は危険じゃないかい?」

     三田の指摘にドラギモスは頷く。

    「ああ、僕もそう思う。できれば全員で向かいたい。だから姫氏原、お前の力が借りたいんだ」

    「え、私……?」

     廃校倒壊前から首輪が外れていた、ある意味首輪解除イベントでは一抜けした姫氏原は、突然自分にスポットライトが当てられ動揺する。

    「わ、私は何をしたら……」

    「どうしてお前の首輪はランプが消えていたんだ?」

    「そ、そんなのわかんない……」

    「お前と他の参加者の違い……それは、悪霊が憑いているかいないかだ。もしかしたらお前の悪霊は、首輪にかけられた異能を打ち消すことが出来るんじゃないか?」

    「私の悪霊に……!?」

    (そ、そんなの無理に決まってる……)

     この悪霊は暴力を振るうことしか出来ない。と、姫氏原は思う。

  • 759◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:11:57

     誰かの役に立つなんて無理だ。
     隣の堀木に手を握られる。
     澄んだ瞳で、彼は小毬を見つめていた。
     その首には、未だ爆弾付きの首輪が嵌められている。

    「…………分かった。私、やってみる」

    (これ以上、堀木くんを危険に晒せない……)

     それに、と姫氏原は思い出す。
     オープニングで、堀木は茜音沢に目をつけられていた。いつあの男が堀木に危害を加えるかわかったものじゃない。

    (だから、力を貸して……私の悪霊)

     隣に、屈強な人影が出現したと、肌で感じる。
     意識すれば、その四肢を動かせる。

    (どうやって首輪を無効化したのか。私には分からない。でも、念じれば、この首輪にかけられた異能を消して、と念じればきっと……)

     悪霊の指が堀木の首輪に触れる。堀木は普段通り微笑を浮かべて姫氏原を見つめていた。
     そして、ランプの色が……。

  • 760◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:12:30

    首輪解除パート終了です……!

  • 761◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:13:16

    姫氏原の悪霊によるボーナス値dice1d100=59 (59)

  • 762二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 00:14:25

    セカンドチャンスくるか

  • 763◆xaazwm17IRZa23/05/28(日) 00:17:56

    以上の情報を元に、首輪解除:全員成功パートを明日投下します……!

    今日もたくさんの感想をありがとうございます……! 安価については首輪解除後にどう動くか選択肢を幾つか用意しその中から安価で決めようかなと考えています……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 764二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 00:26:31

    お疲れ様でした〜
    悪霊周りの話もまだ何かありそうだ

  • 765二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 00:30:51

    どうでもいいけど歯荷ちゃんのドラギモスの呼び方、ラオウの一人称くらい安定しないな
    石川戦の時はドラギモスさんだったし

  • 766二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 03:25:14

    異能のせいで過去になんて呼んでたかすら把握できない可能性…

  • 767二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 06:06:03

    石川もいつの間にかドラっち呼びになってるしな……

  • 768二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 07:21:32

    歯荷ちゃんもちょっとずつ前回の記憶が戻ってきてるし、もしかしたら宇都もそうだったのかもね…


    >>761

    これ失敗してたら姫氏原ちゃんの目の前で堀木爆散してたのだろうか

  • 769二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 08:26:09

    宇都タイムリープの弊害で人格歪んでる説は支持したい

  • 770二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 12:21:07

    こんなこと言うと石川のファンと製作者様的には不本意かもしれんけど
    最近石川がちょっと可愛く見えてきた
    ドラギモスに懐いてるというかじゃれあってる感じが

  • 771二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 18:25:41

    石川くんはデスゲームの趣旨に則ってる唯一の生存者なのに望みから程遠い現状もACP(あにまんクラウディポイント)高くて好きになる。でもこれから強者と闘えるから良かったね!

  • 772二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 22:52:08

    保守

  • 773二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 03:01:03

    保守を捧げる

  • 774◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:00:52

    首輪解除パート:全員成功、投下します……!

  • 775◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:02:24

     劇的なことは何一つ起きなかった。
     ただ、堀木の首輪に点いていた青い灯が、前触れもなく消えた。
     それだけだった。

    「出来た……」

    「小毬、お疲れ様、ありがとね(+_)」

     失敗すればどうなっていたのか。爆死の可能性すらあったのかもしれない。それでも小毬はやり遂げたのだ。
     額に汗を浮かべ頬を赤くしながら姫氏原は堀木に微笑んだ。
     堀木は目尻を下げて姫氏原の頭を撫でる。

    「よし、首輪を外すから堀木は屈んでくれ。姫氏原、体力の消耗はどうだ?」

    ドラギモスの言葉に、姫氏原は返答する。

    「ん、そんなに、かな。50m走の後くらい」

  • 776◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:03:13

    「かなりの消耗だな」

    「じゃあ全然大丈夫だな」

     ドラギモスと石川は正反対の見解を示す。
     姫氏原は心証的にドラギモスの味方をしたいが、感覚的には石川に近かった。運動が得意というわけではないが、ドラギモスのように虚弱体質という属性を背負っているわけではない。

    「よし、僕が堀木の首輪を外している間に、まだ解除出来ていない奴の首輪を頼むぜ」

    「ええ、任せて」

    そう言って、姫氏原は篠宮の首輪に悪霊の指先を伸ばした。



     そして、食堂のテーブルに、11の首輪が並べられる。
     姫氏原だけは、食堂に入る以前に外されており、その首輪はドラギモスの鞄に収納されていた。ドラギモスの第一回気絶では鞄を紛失していたが、第二回気絶の際に発見されており、DX日輪刀と共に姫氏原の首輪も戻って来たのだった。

  • 777◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:04:01

    「これで僕たちは、本部への突撃が可能になった」

     ドラギモスの言葉に、三田が

    「そして、爆殺の危機も無くなった」

     と、付け足す。

    「三田の言う通りだ。三日間で優勝者が決まらなければ首輪爆破というタイムリミットも無くなった。極論、この島で生活を始めることだって出来る。僕は御免だがな」

     ドラギモスの冗談に、何人かが笑いを零す。
     首輪から解放され彼らの心に余裕が生まれていた。

    「谷淵の言う通り、本部にワープ装置があるのかも分からない。そして、他の脱出手段が無いかどうかも不明だ。『喧嘩に負けた』石川あたりなら、本土まで泳げそうだしな」

    「あー、いやけっこう難しいぜドラっち。ここが太平洋なのか大西洋なのかもわからねぇしよ。三日三晩泳ぎ続けて島が一つも見つからないと怠い」

    「確かに、水半球だった場合、泳いで地球半周の可能性も……」

    「ねぇ小毬、水半球って何(*’ω)」

    「地球を半円で切り取った時に、最も海が大きく写る切り取り方で」

  • 778◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:04:52

    「いや、地理の授業はどうだっていいよ」

     バカップルにツッコミをいれつつ、金木は三田を睨んだ。

    「ねぇ、マジで本部行くわけ? 私、ディスクももう使えないし、銃も石川に壊されたしで、丸腰なんだけど。さすがに武器の準備はするよね」

    「うん、開けてないロッカーもまだまだある。武器は補充できるし、戦車も探せるだろうし……」

    「ワシの中のねうねいの記憶が言うには、戦車は廃校からそう離れてない場所にあるらしい。瀧沢が殴ったりしたけど、動かすのに支障はないで」

    「……けど、早く行かないと、共闘するはずの運営陣が茜音沢に消されてしまう。そうなったら、ここにいる戦力だけで、茜音沢に挑む必要が出てくる」

     篠宮が顎に手を当て、持論を述べる。

    「それで構わないんじゃないですの? はっきり言って、運営者を味方にするのはリスクが高すぎますわ。後ろから撃たれるかもしれませんし、どのみち敵です。三つ巴決めるより、茜音沢と運営で決着がついてから突入でよくありませんこと? 私が戦力にカウントされるのは後6時間程度ですが……」

  • 779◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:05:47

     人は眠らなければどんどんスペックを低下させていく。殺し合いが始まって12時間が経過しようとしている。更に6時間経てば18時間、平時なら眠気を我慢できるが、それでも体のスペックは低下を始め、集中力は途切れだす。ましてや殺し合いという極限状態での12時間は、体感的には2か月以上に感じられた。
     歯荷の異能は、眠ればリセットされる。彼女がフルスペックを発揮できるのは後6時間程度であろう。それ以降はどんどんパフォーマンスに精彩を欠いていくだろう。24時間は気合で耐えられるかもしれないが、それ以降は加速度的に睡眠の危険性が高まり、そして一度眠ってしまえば、歯荷はただのダンス少女である。

    「争点は二つだ」

     と、三田は言う。

    「ロッカーをどこまで開けるのか。遺体の捜索には時間がかかる。廃校の中だけならどこで亡くなったのかを把握している生徒も多いが、島の外、例えば灯台や漁港では誰がそこで亡くなったのかも分からない。ロッカーを開けるのはどこで妥協するのか。あるいはもう開けずに本部に特攻するのか。これが一つ目の争点」

    (遺体か……鰐淵は、ミッションをクリアしていたんだろうか……そんなことを、聞く時間もなかった……)

     感傷を振り切る。彼女を殺したキルコもまた、死んだらしい。

  • 780◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:06:27

    (廃校に辿り着けた生徒は、既にミッションをクリアした生徒が多いんじゃないか? 集めてもあまり旨味がない……人の死をポイントみたいに、厭だなこれ)

     怜悧であることを強要されるシステムに、千頭之は辟易していた。

    「そして、本当に本部へ行くべきなのか。谷淵の言葉が真なら、行って茜音沢を倒さないと僕らは脱出できない。ただいつ行くかという問題もある。谷淵を始めとする運営陣が味方になる保証はどこにもない。茜音沢と潰し合って、互いに消耗したところで攻撃するという戦略を立てられる。ただ、もし運営陣と本当に協力できれば、不可能に近い茜音沢の打倒も可能かもしれない。これが第二の争点。
     以上、二つの争点についてそれぞれの意見を聞きたいな」

     三田の言葉に、僅かな思案の末、全員が返答した。

  • 781◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:07:13

    石川:①金輪の死体ならどこにあるか知ってるぜ。けど、島中探してる間に茜音沢とか、運営の強い奴とか死ぬの俺は嫌だ。お前らが乗り気じゃねぇなら俺一人で本部行くわ。金輪の死体の場所はドラっちと姫氏原が知ってんだろ。②罠でもいいから行こうぜ。っていうか罠の方が面白そうだろ。首輪爆破されて終わり、なんてつまらない幕切れはしないだろうしさ。時間経ったら強いやつどんどん死んじゃうだろ。マジでもう早く本部行こうぜマジで。
    結論:速攻で本部へGO! 自分一人でもGO!

  • 782◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:07:49

    篠宮:①正直今の戦力では心もとない。僕の異能で武器は代用できるが、消耗が激しくてね。とりあえず非戦闘員の三田くん、金木さん、千頭之さん、ドラギモスくんちゃんに銃を持たせたい。後、医薬品の確保も……ああ、里美さんが廃医院から回収してたのか。それに保健室跡地から幾つか回収できそうだね。じゃあやっぱり全員が銃ないし銃に対抗できる戦力を整えることが本部突入の条件じゃないかな。遺体が見つからなかったり、ロッカーが外れだった場合、時間さえくれれば、全員に透明な銃を配れるよ。24時間は過ぎるだろうけど……。②共闘できるならそれに越したことはない。最悪、武器や情報を無理やり奪えばいいし。茜音沢相手にシンプルに戦力不足な以上、要素はできるだけ多い方がいい。
    結論:装備を整えてから本部へGO!

  • 783◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:08:24

    Nek-O:①そもそも吾輩が扱える武器が少ないのだが……いや今となっては自慢の爪や牙はあるがな。ロッカーを開けることは賛成だ。何なら全てのロッカーを開けるまで何日か時間をかけてもいいのではないか? お前たちも休息を取ったほうがいいだろう。②どうもお前たちは殺し合いの空気に当てられている気がするな。それしか方法が無いのなら地獄絵図となっているらしい本部へ特攻し、茜音沢と一戦交えるのもやむなしだが、まだ他の可能性を試してないのだろう。筏でも作って海へ繰り出すのはどうだ? 色々やって万策尽きてから茜音沢に挑んでも良かろう。時間をかければ、救助が来る可能性もあるしな。何、救助を期待するのは馬鹿馬鹿しい? ふむ、吾輩はそうは思わんがなぁ。
    結論:ロッカー全部開けて脱出方法色々試してみないか?

  • 784◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:08:49

    堀木:①うーん、姫としては銃も失ったし、強い武器が欲しいかな(‘Д) 姫の機動力を生かせる武器があるといいんだけど……(笑) 姫って可愛いけど、本業はサッカーとメス男子だから♡ そもそもバトルは専門外で、戦うならやっぱり武器が欲しい(*_) だから、銃か強い武器が手に入るまでは、本部へ行きたくないなぁ……ww②小毬が半分は信じられるって言ったからね(+_) 姫としては、本部に行くべきだと思うかな(‘Д)
    結論:強い武器が手に入れば本部へGO!

  • 785◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:09:13

    マネモフル:①戦車は回収するべきや。後は……お前らの意見に任せるわ。ワシはただ、罪を償いたいだけやからな②これもお前らの意見に従うわ。けど、茜音沢と戦闘になったらワシは盾になる。めっちゃタフやから。
    結論:贖罪のため受動的。総意に従う。

  • 786◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:09:46

    三田:①非戦闘員に数えられるのは心外だけど……でも、銃に丸腰で勝つことは難しいし、そういう扱いなのは我慢するよ。そうだね、僕も理屈ではロッカーを全て開けて、少しでも情報を獲得してから本部へ向かうべきだと思う。けど、僕の探偵的直感が、ロッカーを多少放置しても本部へ向かうべきだと訴えている。この離島はフィールドだが、本部は本来僕たちに開放されるはずがなかったエリアだ。重大な情報が含まれている可能性が高い。いたずらに時間を浪費して集中力を途切れさせるよりは、このまま装備を整えて本部へ向かうべきだと思う。②電話口で話した限りだと、谷淵は一筋縄じゃいかない。ただ単純な罠という線は薄い。もっと複雑な頭脳戦を仕掛けてくるだろう。それに勝利したら、対茜音沢を有利に進められるかもしれない。この殺し合いは人によって創られ開かれたはずだ。だったら海を調べるより人に接触するべきだ。
    結論:装備をある程度整えて本部をresearch!

  • 787◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:10:29

    金木:①っていうか篠宮くんさ、さっさと私に武器作ってよ。②いや、本部行くのマジで怠いんだけど。せっかく首輪外れたのに、これ以上殺し合いやる意味ある? え、谷淵の情報は正しい可能性? っていうか姫氏原が首輪の異能無効化できるのおかしくない? こいつ運営のスパイなんじゃないの? 
    結論:石川に「仲間を信頼しろよ!」と恫喝され、堀木に笑顔でとんでもない怒気をぶつけられ意気消沈。

  • 788◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:10:53

    姫氏原:①……できれば、キルコさんと……金輪くんと……後、目裏さんの首輪は回収したい。それが、責任を取ることなのか分からないけど……。②星峰くんの異能は初めて使ったから、どこまで本当かわからない……ごめんなさい。でも、全部嘘じゃなかった。危ないし、怖いけど、廃校には、行くべきだと、思う……。
    結論:自分と関わりのある生徒のロッカーは開けたい、本部へ行ってみる価値あり。

  • 789◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:13:53

    千頭之:①ロッカーには、アラシは入っていないらしい。コサメから聞いたけど、二人は途中で別々の場所へ移動させられたそうなんだ。コサメは武器がいっぱいある部屋へ。アラシは、動物がいっぱいいる部屋へ。これはどういうことなのか分からないが……。ただ、全部じゃないが、私もこれ以上みんなの足を引っ張りたくない。銃が欲しいな。どこまで扱えるかはわからないが。②本部にはアラシが居るのかもしれない。いないにしても、アラシがどこに行ったのか、情報が得られるかもしれない。……ただ私の家族の捜索に、君たちを巻き込むことは心苦しい。
    結論:本部へ行ってアラシの情報を得たい。

  • 790◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:14:37

    歯荷:①このゲームは当たり外れが大きいですわ。下は酔い止め、上は戦車まで。ある程度ロッカーは開けてみたいですわね。ただ、あまり時間もかけたくないですわ。死体の場所が確実に分かる人以外は、スルーするべきじゃないかしら?②本部へ行く行かない、どちらもリスクが大きいですわね。ただ、時間が経てば私弱体化しますから、遠回りした末にやっぱり茜音沢と戦えって言われても、その頃には戦力外ですわよ。今も決して戦力に数えてほしくないですけど……とりあえず、今の段階では何とも言えないですわ。
    結論:場所が分かる首輪だけ回収&もっかい電話したらどうですの? 

  • 791◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:15:22

    ドラギモス:①確かに戦力の拡充は必要だな。ディスクも大事に使いたい。単純な銃器だけでなく、ディスクみたいなアイテムが手に入れば戦略が広がる。……運営達がこのゲームを観戦していたとしたら、遺体の場所を把握してるんじゃないか? 一度谷淵に電話してみるか。②谷淵が嘘をつくとは思えない。というか、このゲームの開催者はうちのクラスの体力馬鹿のポテンシャルを把握しているはずだ。単純に泳いだり、筏を作って脱出できるとは思えない。素直に本部へ乗り込んだ方が、情報を集めながら脱出のプランを立てられる。
    結論:見つけやすい首輪はゲット。たぶん正解は一つだ、危険だが本部へ行こう。

  • 792◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:15:44

     全員の意見を出し終わった。具体的にどうするのか、短い時間で彼らは結論を出した。
     それは——。

  • 793◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:23:16

    ここで一旦切ります……!

    彼らの行動方針を安価で決めようと思います……!

    こんな時間だと(遅くなって申し訳ないです……)参加できる人が少ないと思うので、明日の21時頃に改めてレス番を指定したいと思います……!

    どれくらいロッカーを開けるのか/本部へ向かうのか、他の脱出プランを練るのか

    それらを書いていただくか、あるいは○○の意見が採用されたでも大丈夫です……!

    新しい行動方針の提示でも問題ないです……!(荒唐無稽で唐突だと弾くかもです……! 全員発狂して自死とか神がやってきて全員救済されたなどはNGでお願いします)

  • 794◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 04:28:10

    それでは、本日もありがとうございました……!

    日付を跨がないといいつつ、こんな時間で申し訳ないです……!

    キャラクターの呼び方に関しては、意図して呼び方変えてる場合と、普通に誤字ってる場合と、普通に以前の呼び方忘れてる場合があります……ガバガバで申し訳ないです……! なろうやカクヨムだと誤字修正出来るんですが、掲示板形式は再投下しなきゃなので、そこが大変です……! 後、殺し合い小説なのに「死/ね」と「殺/す」がNGワードなので、みんな言葉遣いは気をつけて喋ってます。「始末する」とか「倒す」と言い換えて対応してます。

    それでは、今日もたくさんの感想ありがとうございました……!

  • 795二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 04:29:08

    メタ的な推理は無しってことだよね?
    ダイス値的に最後には茜音沢を倒せるだろうから、極力犠牲が出ないようにすべき…みたいな考察はしちゃダメかな?

  • 796二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 04:39:36

    茜音沢の言う「試練を乗り越えるたび新しい力が手に入るだろう」ってのを信じるなら、
    廃校内の首輪だけ回収→強い奴に武器を装備させる→本部で茜音沢から隠れながら雑魚狩り→手に入った新たな力でvs茜音沢が一番現実的な気がするな

  • 797二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 04:39:38

    乙でした
    堀木もキレる時はキレるんだな……笑顔のままだけど

  • 798二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 05:06:47

    谷淵曰く"茜音沢に対抗する戦力はもうない"ってことは裏を返せば"少し前まではあった"って考察できるんじゃ…

    そしてその戦力がもう死んでいるとしたら、死ぬ直前に茜音沢の剣技を"視ている"可能性が高いんだよな

    どうにかして歯荷ちゃんにその記憶DISCをinできれば…

  • 799二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 06:08:41

    最初の頃は気にも止めてなかったけどこうして見ると歯荷ちゃんめっちゃジョーカー

  • 800二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 06:58:22

    失敗したらセピアin歯荷with茜音沢の剣術という伏黒宿儺みたいな化け物が生まれてしまう

  • 801二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 08:28:49

    理論上最強ポジはすこれるから良い

  • 802二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 16:36:55

    "死亡した生徒の"異能"または"記憶"のどちらかを得ることが可能。"(原案レス引用)
    小説本文でも一貫して脱落した生徒の~って書き方だから運営サイドの記憶は覗けないんじゃないかな
    相手が生きてさえいれば芝野の読心能力をインストールした歯荷が間接的に覗くって抜け道はあるが

  • 803二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 17:33:43

    そこで垣根ちゃんの記憶DISCが生きてくるんですね…(RTA走者)

  • 804二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 20:49:48

    首輪外れてるけど時空のおっさんで脱出するプランってまだ生きてる?

  • 805二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 21:05:40

    待機

  • 806◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 21:50:32

    お待たせ致しました……! 遅れて申し訳ないです……!


    安価の前に返答だけ……


    >>795

    メタ推理でも大丈夫ですよ~作中人物が第四の壁を突破しなければ直感や新情報の獲得などで整合性は取れるので



    >>804

    確実に脱出できるとは断言できないですが、キャラクターが思いつき、実行してもおかしくないと思います


    >>802

    ディスクで再現できるのは死亡した生徒のみです、再現できるのは「記憶」or「異能」、一度外せばもう一度挿入することは出来ません、作中では曖昧な表現で申し訳ないです……!

  • 807◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 21:52:06

    安価は

    >>811

  • 808二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 21:56:42

    (レス番指定だとスナイプ狙いで睨み合いになるんじゃなかろうか)

    近場かつ場所が割れている首輪だけ回収してロッカーから戦力を調達、その後確実に武器を作れる篠宮の異能で不足分をある程度補う。
    この時点で歯荷のタイムリミットが近ければ割り切って休息をとることを優先し、一睡したら本部へ。

  • 809二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 21:57:49

    >>796

    これについてはどうなんだろう

    もし黒服を倒すごとにアイテム獲得とかならこの案でいける気がするが

  • 810◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 22:00:40

    >>808

    確かに……


    >>811

    までで出た案からダイスで決めようと思います……!


    >>809

    ネームド運営及びボス級デストラップの撃破に際し報酬を獲得できます(今決めました……すいません)

    モブの場合は拳銃ドロップくらいしか旨味が無いですね……

  • 811◆xaazwm17IRZa23/05/29(月) 22:02:12

    何度もすいません……!
    やはり6つ出揃うまでにします……!

  • 812二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:11:55

    ディスクを使わなくても把握している死体から首輪を回収、開けれるだけのロッカーを開けた後、本部へ攻撃を仕掛ける

  • 813二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:32:37

    ①廃校にある限りの首輪と篠宮の異能で武器を量産
    ②なるべく早く本部へ
    ③茜音沢との戦闘を回避しながら金持ちを1人1人袋叩きにし、アイテムを集める
    ④茜音沢を倒す
    ⑤優勝して去年まで時を戻す

  • 814二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:39:45

    谷淵に電話して死体の場所を確認、効率よく回収→情報収集もかねて本部へ行く、撤退も視野に入れて行動

  • 815二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:55:46

    上記全てのアイデアに倣って武器を準備し本部に突入
    暗黒金持ちを人質にとって島の場所や助かる方法を吐かせる
    ダメそうならやむを得ず茜音沢戦、勝ったとしても1人帰れないのは確定なので誰かが優勝して時間を戻す

  • 816二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:59:57

    >>815

    これ優勝するには生徒同士殺しあわないと駄目か…

    やっぱ最後のはなしで

  • 817二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 23:00:27

    このレスは削除されています

  • 818二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 23:11:48

    廃校周辺の死体のみ回収し、ロッカーを開ける、その後本部に行き情報を収集する

  • 819二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 00:45:31

    >>808

    >>812

    >>813

    >>814

    >>815

    >>818


    dice1d6=4 (4)

  • 820二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 00:48:40

    全体の行動方針:【谷淵に電話して死体の場所を確認、効率よく回収→情報収集もかねて本部へ行く、撤退も視野に入れて行動】

    以上の情報を元に次のパートを作製します、投下は明日になると思います……!
    今日はアイデアを提示していただきありがとうございます、どこかで各キャラの思考として使わせていただくかもしれないです……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 821二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 01:00:54

    お疲れ様でした〜
    谷淵に電話かぁ

  • 822二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 07:56:47

    昨晩は何の気なしにメタ視点から方針を考えてたけども
    生徒たちからするとクラスメイトの遺体を主犯が隣にいる中で漁ったりすることになるんかな……
    大丈夫?何人か決戦前にメンタル壊さない?

  • 823二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 08:26:55

    茜音沢の直後に流れで石川戦が始まっても驚かない

  • 824二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 17:33:58

    保守

  • 825二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:12:30

    ほしゅ

  • 826二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:23:02

    そういえばこの間チラッと触れてたスレ主によるキャラごとの講評も楽しみだわね

  • 827二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:56:59

    ロッカーダイス

    金輪幹久dice1d100=74 (74)

    パンパンパン・ラッタッターdice1d100=29 (29)

    堀木彩(開けたのは放送前)dice1d100=98 (98)

    麻井涼dice1d100=49 (49)

  • 828二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:00:26

    久々のロッカーダイスだ!

  • 829二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:00:54

    堀木くん武器が欲しいとはなんだったのか

  • 830◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 00:04:09

    >>827

    は私です……! 

  • 831二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:09:43

    ダイス振るの1しか居ないから気づかなかったな

  • 832◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:19:51

    首輪回収パート投下します……!

  • 833◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:21:00

     痛い、とドラギモスは思った。
     身体の節々が痛い。
     まるで老人のようだ。
     体力はともかく、健康状態までは老人並ではなかったはずだ。

    (無茶し過ぎたな)

     午前十時から十二時の二時間で、ドラギモスは二回も気絶している。
     一度目は砲撃の余波、二度目は石川の拳。どちらも直撃していれば死亡していた。
     助かったのは——仲間のおかげだ。と、ドラギモスは認識している。
     一度目はねうねいが戦車をワープさせることで救われ、二度目は■の怪異が助けてくれた。
     自分一人ではとっくに死んでいた。今痛みに呻いていられるのも、奇跡に過ぎない。
     絆の力は最強だ、何て甘酸っぱく青臭いことを言う程、ドラギモスは強くない。

  • 834◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:21:52

     それは、今は亡き主人公、新條アキラの言葉であって、ドラギモスから出る言葉ではない。
     本当に絆の力が最強なら、殺し合いなんて起こるはずがないのだ。ましてや、幼馴染がゲームに乘り大勢の犠牲者を出した身としては、口が裂けても言えることではない。
     ドラギモスはキ■コの異常性を知り、ずっと放置してきた。彼女には彼女の人生があると嘯き、深く関わり合うことを避けていた。けれど、キルコは変わった。オルランドという恋人のために、感情を露わにして姫氏原や堀木に襲いかかったのだ。
      つまり、彼女にだってちゃんと心があり、成長する余地があった。……ドラギモスが幼少期から働きかけていれば、今頃は武闘派女子の一人として、彼女が殺してしまった生徒と共に、ドラギモスの周りに立っていたかもしれない。

    (くそ……体も痛いし、心はもっと痛い……最悪だな)

     それでも、ドラギモスに弱音を吐くことは許されない。
     自分は天才ではない。天才ではないから、こうも犠牲者を多く出してしまった。
     だが、天才と言い続けるしかない。

  • 835◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:22:42

     こんなゲームは簡単に壊せる。茜音沢も谷淵も他の運営者も、天才であるドラギモスは手玉に取れる。そう周囲に思わせることで、殺し合いを抑制する抑止力になれる。
     だから、どれだけ痛くても、どれだけ悼みを伴っても、ドラギモスは不敵な態度を崩さない。

    「まぁまぁだな」

     と、ドラギモスは言った。
     食堂の白磁のテーブルに並べられたのは、数々のアイテムである。
     話し合いの末、ドラギモスたちは谷淵に連絡を取ることにした。モニターで観戦していたであろう谷淵なら、誰がどこで死んだのか、全てを把握していると判断してのことだ。
     案の定、谷淵は全てを把握していた。正確には、廃校倒壊後の死者、鰐淵や千頭之(今だ千頭之の生存は谷淵に伝えていない)、瀧沢、キルコの場所は廃校までしか絞り切れないが、例えば結は島の南端、海沿いの民家でバラバラになっているとか、その近くで新條は黒焦げの末刺殺、文乃もバラバラなどの知りたくもないような詳細情報と共に伝えられた。

  • 836◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:24:07

     誰がどこで死んだのか明らかになった上で、ドラギモスたちはその多くを回収しないことに決めた。
     中央の廃校から島の端まで行くのに四時間、戻るのに四時間。四人にチーム分けしても全員が本部に再集結するまで八時間かかる。そして、出来ればドラギモスは、このチームを分割したくないという思いがある。
     生存者で突出した戦力は石川大輔である。ドラギモスは石川の性格を読み、今更約束を反故にして襲いかかっては来ないと踏んでいるが、それでも万が一として抑止力を用意している。マネモフル、堀木、姫氏原、歯荷。(ついでに三田とNek-O)。これにディスクによって篠宮や千頭之も戦力になりえる。例え石川がトップクラスの実力者であり、他のメンバーが中堅及び弱者揃いと言っても、全員でかかれば倒せる。上弦の鬼一体に対して柱が四人いる感じである。油断は出来ないが、恐らく優勢に立ち回れる戦力差だ。
     ただ、これが分断されてしまうとたちまちバランスを崩してしまう。石川を抑えるならマネモフル、堀木、姫氏原、歯荷のうち三人、拮抗するにも二人は欲しい。しかもこの四人も手放しで信用できるわけではない。
     マネモフルが本当に改心したのかマネなのかは判断が付かず、言葉が事実だとしてもいつ悪の人格とやらに目覚めるか分からない。堀木は何を考えているかいまいちわからず、姫氏原も悪霊が暴走する危険はある。歯荷は、生存のためなら今からでも裏切るだろう。

  • 837◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:24:49

     ただこの四人もまた、石川、あるいは他の強者に問題なく勝ち切れる実力はないため、もし悪意を抱いても、行動には移せない。
     結論として、分断は不可能だ。生存者は固まって行動しなければならず、そうなると廃校中の首輪を回収するのは二十四時間はかかるだろう。
     歯荷の異能持続時間はとっくに過ぎてしまうし、何より一時間弱で本部を壊滅させた茜音沢が、二十四時間も大人しくしているとは思えない。
     とっくに運営者は皆殺しにされ、茜音沢は生徒たちを襲撃するだろう。
     ドラギモスは別に、運営者を助けたいわけではない。谷淵始め全員くたばれと思っている。ただ、彼らは貴重な情報源だ。できれば接触し拷問なりをして情報を全て聞き出しておきたい。それまで茜音沢に殺されるのは困る。
     その前に本部に行かねばならず、あまり首輪の回収に時間は裂けない。結果として、ドラギモスたちは廃校及びその周辺の首輪回収に留まった。
     更にそのうちの幾つかは肩透かしを食らった。例えば宇都やキルコのロッカーは既に開かれており、二人の鞄に有益な物も入っていなかった。

  • 838◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:25:36

    (キルコの壮絶な死にざまはドラギモスに強いショックを与えたが、下手人であり同時に被害者の堀木と姫氏原の前で動揺を見せることはなかった。それでも、キルコの死に顔が僅かに微笑んでいるように見えたことは、ドラギモスの心に一滴の慰みを与えた)

     結果として、集まったアイテムは三つ。
     医薬品は保健室及び廃医院から回収したものがあり、情報は谷淵始め運営者から摂取できると考えたので、全て武器一択である。
     金輪のロッカーからはギョロギョロと動く目玉が貼り付けられたメダルのようなお守りが出てきた。名を、【未来視のタリスマン】といい、所持していると「接触すると大きな怪我を負う恐れがある物体」の接近を感知し、その軌道を数秒前から脳内に映像イメージとして投影するらしい。異能聴覚や読心を失ったメンバーにとって、ありがたい武器だ。
     ラッタッターのロッカーからは【ルルイエ・ツアーガイド】という、読んだ者を発狂させる書物が出てきた。一見強力な武器に思えるが、発狂させるには1ページ読む必要があり、戦闘の中でそこまで悠長な時間があるとは思えない。どちらかというと毒物に似た罠としての使用が適切だろう……発狂したからといって戦闘不能になるわけではなく、もっと凶暴になる可能性を考えれば、当たりとは言い難い。

  • 839◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:26:13

    (そしてルルイエってクトゥルフのアレだったよな……詳しくは知らないが表紙の爺さんはいったい誰なんだ? これがルルイエさん? 日本人に見えるが……)

     石川は表紙を見て「あーん?」と首を捻っていたが、「ま、気のせいか」と視線を外した。
     麻井のロッカーからは【銀の弾丸】。持ってるだけで精神が安定し撃ち込めば悪意を晴らすことが出来るらしい。
     ただ撃ちだす銃は付随していなかった。

    「銃が手に入らなかったのは痛いね」

     三田の言葉にドラギモスは頷く。
     現状、銃が無いと無力なのはドラギモス/金木/千頭之である。三田も心得こそあるが、拳銃持ちに丸腰で勝てるほど強者ではないので、やはり銃が欲しい。

    「ただ、谷淵曰く本部へ行けば、黒服は拳銃を所持しているらしい。他にも数多くの武器を保有していると。彼らの死体から奪えば、銃の不足は解決できる」

    「それが嘘でなければね」

  • 840◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:26:51

    「篠宮に銃を作ってもらうとして、全員に銃を配るのは時間がかかる。ルルイエ・ツアーガイドはともかく、他の二つはまぁまぁ使い道はあるだろ。それに……僕たちには、あれがある」

     きゅらきゅらきゅらと、音がする。
     キャタピラが回る音である。
     ねうねいに飛ばされた九七式中戦車が、廃校に帰還したのだ。
     廃校を倒壊させたその威容を誇るかのように、戦車は縦横無尽に校庭内を走り回る。数時間前に砲弾の雨を浴びせられた身ととしてはぞっとする光景である。

    「いいのか三田、金木に運転させて……あいつ、武器持たせちゃいけない人格してるぞ」

    「一緒に千頭之さんを乗せてる……もし暴走しても千頭之さんが止めてくれるはずだ」

  • 841◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:27:18

    「戦車鬼つえー! このまま逆らうやつら全員ブッ殺していきましょ!」

    「次物騒なこと言ったらナイフで刺すからな」

    「冗談よぉ……殺気漏れてるけど、大丈夫……?」

    「シャー!」

     コサメが威嚇するように鎌首をもたげ、ひぃと金木は身をのけ反らせた。

  • 842◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:28:14

    「たぶん大丈夫……のはずだ」

    「そうか……ただ問題は、あれで本部に乗り込んだら目立つってことだ。運営とは接触したいが、情報が揃うまでは茜音沢と接触したくない」

     殺してやりたいほど憎いが、戦わずに帰れるならそれに越したことはない。

    「それなら俺に考えがあるぜ」

     と、石川が口を出した。

    「あくまで陽動用ってのはどうだ。キルコがやったみたいに本部にバンバン撃ち込んで出てきた茜音沢と俺が戦う。完璧なプランだぜ~」

    「その砲撃で貴重な情報源が死んだらどうする?」

    「ドラっちが生きてたんだから大丈夫でしょ」

    「僕が生き残れたのは、お前が殺したねうねいとお前が殺した瀧沢のおかげだよ」

  • 843◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:28:51

    石川は鼻白んだ。

    「ただ、陽動に使うという線は間違いではないな。せっかくの貴重な戦力を遊ばせておくのも勿体ない」

    「外で待機させておいて、頃合いを見て砲撃させるかい? 運営側からスマホを奪って連絡し合うとか」

    「それも一つの線だな……金木と千頭之は置いていくか」

    「ただ、いざ砲撃するときに、戦車は真っ先に狙われる。茜音沢なら戦車にだって勝てる。そうなったら非戦闘員の二人は……」

    「砲撃が終わったら早く逃げろと伝えるか。二人の足で逃げるより、戦車を運転して逃げるほうが速いしな……」



    「そんな! 本部には家族がいるかも知れないんだ! 私だけ外で待っているわけには……」

     千頭之は戦車で待機しろという提案に対して首を縦に振らなかった。

    「それに、皆を危険に晒しているのに私だけ安全なところで待っているなんて……」

  • 844◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:29:37

    「アラシ、だっけ。君がいつも首に巻いている蛇は覚えてるよ。見つかったら保護するし、君のもとへ逃がす、それじゃ駄目かい?」

     三田の言葉に、千頭之は俯く。

    「要は私ら足手まといってことでしょ。私なんかディスクももう使っちゃったし、銃もくれないしさ。いいよ、ゲームが終わるまで戦車の中で待ってるよ。ほら千頭之、一緒に大富豪やろ」

    「戦車の中で何をしていてもいいけど、合図を送ったら砲撃はしてくれよ。その後は戦車を使って島中を逃げ回ってくれ」

    「はーい……え、それめっちゃ危なくない? 嘘でしょ三田」

    「……この島で安全な場所は無い。暴力禁止の食堂も、首輪が無い運営陣には抑止力になりえない。強いて言えば、一番安全なのは戦車の中だ」

    「……分かった。自分たちだけ逃げないでね。それやったらマジで許さないからね」

     千頭之はまだ、納得がいっていないようだった。
     足手まといである。戦力にならず、ドラギモスのような頭脳もない。ディスクを使える立場でありながら、前線から外される。

  • 845◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:30:27

    (違うぜ千頭之。お前が弱いから戦車に置いていくんじゃない。お前がまっとうな精神だから戦車に置いておくんだ。金木一人に戦車を任せるのは危険過ぎる。かといって戦車をある程度活用しようと思ったら二人以上人員はいる。お前は十分皆の役に立ってるぜ)

     生存者の中で、数少ない絶対に安全だといえる存在。それが千頭之のづちだった。殺人歴はなく、鰐淵のために優勝を狙う素振りもなく、ペットのために全力で行動する。クラスでは浮きがちだった変人は、この島では常識人として機能している。

    (それに、お前の生存は向こうは把握していない。今はまだ繋がらないが……これは後々ジョーカーとして機能する。そんな気がするんだ)

     篠宮が透明な銃二丁を二人に渡す。万が一戦車から降りて戦わねばならなくなった時のための、護身用のものだった。放送が終わり2時間程。銃はまだ二丁しか作れていないが、本部突入組は黒服の死体から好きなだけ奪えばいいという判断だ。
     二人が戦車の中で撃ち合う可能性はあるが……彼女たちの良心と計算高さを信じよう。千頭之は無辜のクラスメイトを射殺できるような悪意は無く、金木はこの状況で千頭之を射殺するほど馬鹿ではない、というのがドラギモスと三田の共通見解だった。

  • 846◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:30:55

     かくして、戦車の中に金木と千頭之を残し、残った九人は本部へ向かって歩き出した。
     全員の首に首輪は無く、全員が何かしらの怪我を負っている。
     渇望のために、愛のために、贖罪のために、復讐のために、正義のために、生存のために。それぞれが違う願いを秘めながら、今だけは仲間として一丸になって進む。
     いずれも、十二時間の殺し合いを生き残った猛者ばかり。しかし、待ち受けるのは魑魅魍魎。
     真のバトルロワイアルに、新たなる参加者が加わった瞬間であった。

  • 847◆xaazwm17IRZa23/05/31(水) 02:33:24

    首輪回収パート終了です……! 本日はここまでとさせていただきます……!

    今日も感想や保守をありがとうございます……! 明日からはいよいよ本部戦です……! 完結目指して尽力するので今後ともよろしくお願い致します……!

    各キャラの総評は投下できない日か全部終わったらやります……!

    それでは、本日も深夜までありがとうございました……!

  • 848二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 02:39:47

    乙です、めっさ使いづらいと思って申し訳無かったルルイエ・ツアーガイドが出てきて嬉しいですね…いやこんなタイミングで現れるかよ(困惑)

  • 849二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 02:53:38

    乙です
    こういう導入ってめっちゃ燃えるね

  • 850二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 03:31:44

    乙でした〜
    ルルイエ・ツアーガイドくん覚えてるのはもうまとめ作ってた自分だけだろうと思ってたら出てきて草

  • 851二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 03:32:11

    乙でした
    会議パートも読み応えあったが次回は手に汗握る戦闘の時間、楽しみ

  • 852二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 03:35:30

    堀木が98のアイテムを隠してる?のが地味に不穏なんだけど今更裏切らないっスよね…?
    やめてくれよ…?

  • 853二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 03:41:25

    デストラップ達と黒服とドンパチが楽しみでたまん無いですね
    まあまさか自分が投げてまだ出てきてないアイテムが堀切くんの手に握られてるということはないだろう

  • 854二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 07:40:58

    これ、結果論だけどティタノボアがいるのに千頭之を置いていくのは悪手すぎないか?
    ボコボコにされてたけどあいつ石川より強いんだよね

  • 855二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 16:52:35

    保守

  • 856二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 21:36:48

    折れないんじゃなくて折れれないタイプのキャラだったのかドラギモスちゃん

    それはそれとしてダイス値的に金木が死にそうで千頭之が確定生存なんだよな
    どっかのタイミングで千頭之が戦車から降りて金木と別行動になりそうだな

  • 857◆xaazwm17IRZa23/06/01(木) 01:58:24

    申し訳ありません、今から書くと何時になるか分からないので、三十分ほど退場した黒服&金持ち語りします……!

  • 858◆xaazwm17IRZa23/06/01(木) 02:12:23

    【破目囃子】
    ちいかわおじさん。
    元々ちいかわとして見て無かったのですが皆さまにちいかわを見出され、ちいかわになりました。
    田中屍山血河やジョンソンには軽く扱われていましたが、実力的には屍山血河とどっこいです。
    JKっておじさんにあたりきついから怖いですよね……。
    自分より小さい動物が支配対象で、蜂や蚊なども支配対象に含まれます。人間の支配は不可能。
    本編では動物を集合させて自分からハッピーセットになりましたが、本領は毒虫を使った暗殺にあるのかもしれません。
    ちなみに目裏のリッチー、千頭之のコサメ、そしてNek-Oは支配対象なので、もし生きていたらNek-Oの天敵になりえました。
    ちなみに千頭之と違い、動物は道具としか思っていません。

  • 859二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 02:15:23

    ちいかわおじさん出オチだけど黒服の中でも好きなキャラだったわ

  • 860◆xaazwm17IRZa23/06/01(木) 02:23:29

    【田中屍山血河】
    田中不死太郎の妹。不死者絶対殺すガール。
    剣道部に所属し、一年では最強、既に女子剣道部の団体メンバーに入ってる有望なルーキーです。
    戦闘力はB相当。鰐淵の方が一回り強いです。その代わり不死殺しの異能持ちなので、下位互換では無かったり。
    元々は爆弾卿の部下でしたが、ずっとコンプレックスを抱いていた不死太郎を茜音沢が殺したことで彼が好きになり、恩を返すために真なるバトルロワイアルに乗り、モブ黒服を血祭にあげました。
    それはそれとして、せんせの娘を生き返らせるのはNOと言える自分の意思をしっかり持った感心できるJKです。
    ただ、殺し合いを観戦しただけだからなのか、大人を舐めてる節があり、破目のことも見下していましたが、直接戦闘ならともかく、何でもありだと応用力の広さから敗北も十分ありえます。
    Nek-Oの天敵の一人。彼女に殺された場合、Nek-Oは蘇生できず死亡します。
    翁を殺せるかどうかは微妙で、不死性のみを殺せるだけかもしれません。
    黒服最強のセピアに遭遇したのが運の尽き、あの状況だと参加者の先輩方でも死ぬしかないのでしょうがない。
    なお生徒ですが参加者ではないので、ディスクの選択には含まれません。

  • 861◆xaazwm17IRZa23/06/01(木) 02:38:24

    【ジョン・ジョンソン】
    鑑賞卿。観察力に優れ、常人では気づけないことにまで気づけますが、モニター越しじゃないとその精度は落ちます。異能ではなく、あくまで長年の暗黒金持ち生活で身に着けたスキル。資産力は暗黒金持ちで一番。
    彼をジョンと表記するかジョンソンと表記するかでちょっと悩みました。
    基本的に作中キャラは分かりやすい方で表記していて、殆どのキャラは名字で(石川/麻井など)表記します。
    オープニングや第1話辺りでは名前で(星峰ではなく灼と書いてました)表記していたのですが、よく考えたらキャラクター同士が呼び合うときは名字の方だよな、と気づき、地の文と台詞で呼び方が違うと混乱するだけだと考え、それ以後は名字表記に。
    ただ、分かりやすさ重視で「オルランド」は名字、「ラッタッター」「キルコ」「ドラギモス」は名前で書いてます。
    ジョンソンに話を戻すと、もしダイス目が高かったら観察者と鑑賞者の対決として歯荷と絡ませると楽しかったかもしれません。
    死に方はディープブルーのパロディです。ティタノボアの檻が開いたのは茜音沢や管理人の仕業ではなく、冬爺がデストラップ解放コマンドを入力したからです。
    あるいは鑑賞者であった彼が真なるバトルロワイアルでは参加者であり、そのことに興奮していたことによる観察力の低下が死因かもしれません。
    戦闘力としてはD+。ジムに通ってるので高校生にだって負けない体力を持っています。偉い。

  • 862◆xaazwm17IRZa23/06/01(木) 02:42:58

    今日はここまでとさせていただきます……!
    寝落ちしてなければ今ぐらいの時間に本編投下できたと思うので、申し訳ないです……!
    感想、いつもありがとうございます……! お察しの通り、金木と千頭之はこのまま戦車の中で大富豪してたら生還できた、という話にはならないと思います……。
    スローペースですがちょっとずつ完結に近づいているので、今後ともよろしくお願い致します……!

    本日もありがとうございました……!

  • 863二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 02:50:54

    このレスは削除されています

  • 864のづち作者23/06/01(木) 02:52:51

    >ちなみに千頭之と違い、動物は道具としか思っていません。

    そう言われるとちいおじvsのづちの対戦カードも見てみたくはあるな……

    ともあれ乙です、ゆっくりお休みください

  • 865二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 03:28:46

    乙でした〜
    残りの金持ちと生徒たちの誰がマッチするかも楽しみだな

    目裏兄vs姫氏原&堀木、探偵卿vs三田&金木、ドラギモスvs扇動卿あたりは確定として、墓蟹とか拳王卿は誰と戦うんだろう

  • 866堀木を投げた人23/06/01(木) 03:56:40

    そういえば以前堀木のロッカーアイテムをリクエストしたと思うんですが、ダイス値が98だったので期待を込めて別のオリジナルアイテムでも大丈夫です…!
    何より堀木亡き後に小毬ちゃんの役に立つものだと嬉しいな

  • 867二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 04:18:13

    乙です、色んなキャラが魅力的であると改めて思わされますね

  • 868二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 09:37:42

    vs茜音沢は生徒側欠員なしの総力戦であってほしいけど、きっとそれは叶わないであろう事もわかる

  • 869二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 18:29:41

    保守

  • 870二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 23:54:42

    保守
    どうせなら茜音沢戦までみんなに生き残ってほしいねぇ

  • 871二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 03:50:18

    今晩は休みですかね

  • 872二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 08:05:22

    早めの保守

  • 873二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 16:52:04

    ☆ゅ

  • 874二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 22:06:53

    ほしゅ峰

  • 875二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 22:55:16

    生き残りの生徒の誰が欠けても悲しいから今からハンカチの準備しておこうかな

  • 876二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 00:02:28

    戦いになるかわからんけど拳王卿vs石川ちょっと見てみたい

  • 877◆xaazwm17IRZa23/06/03(土) 02:18:02

    申し訳ない、次のパートが難航しているので、今日も投下難しいです……!
    感想や保守、いつもありがとうございます……!

  • 878二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 02:18:56

    おけい

  • 879二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 02:34:58

    お疲れ様です
    終盤だし仕方ないですね〜

  • 880二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 08:51:05

    二日続けて休みは珍しいなと一瞬思ったが
    普段の日刊ペースがイカれてるだけだった

  • 881二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 16:58:56

    毎日投稿大変すぎだろ…!

  • 882二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 22:59:35

    保守

  • 883二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 02:55:10

    今夜も保守

  • 884二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 04:06:22

    繁忙期だろうか

  • 885二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 04:14:30

    主が戻るまでみんなで見たかったif展開でも語ろうや

  • 886二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 05:00:15

    オルランド生存ルートが見たい
    キルコと共闘したり、周りにはキルコからの好意がバレバレだけどオルランドだけ一向に気づかなくて女子組からシバかれたりするオルランドが見たい

  • 887二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 05:41:28

    オルランドは本編と同じ倒され方で退場した後
    朝になって何事もなかったように廃校に参戦してほしい

  • 888二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 09:27:09

    単純に早期退場キャラの生存ifは見てみたい
    出自が運営絡みの目裏が生きてたらどう転んでも話のネタになっただろうに……

  • 889二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 10:27:47

    キルコは特に理由もなく山野ヴェラジウスちゃん殺してるから
    オルランドが生き残っても結局殺人鬼側になりそうなのよね…
    本人が告白しない限り死人に口無しだけど

  • 890二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 14:37:53

    新條達の所に宇都が加わって3人での掛け合いも見てみたくもあった。もしも宇都が素直に仲間になったらの話になるけど…

  • 891◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 21:58:47

    三日間投下できず申し訳ありません……!
    本部突入パート投下します……!

  • 892◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:00:25

     ホテルみたいだね、と堀木は姫氏原に囁いた。
     男子とは思えない色気に姫氏原は赤面するが、堀木は揶揄うために言ったのではないと気づく。
     殺し合い本部。自分たちにデスゲームを強制した鬼畜が潜む本丸は、清潔で高級で荘厳な、リゾートホテルのような外観をしていた。
     七階建て。廃校の敷地が全て入ってしまうほどの面積。無数の窓。
    その美しさは、見上げる者たちに確かな事実を突きつけていた。
     これは、ショーなのだ。
     豪勢なパーティの肴として自分たちは殺し合っていたのだと。

    「ふざけてるな……」

     と、篠宮は拳を握った。マネモフルも顔を顰め、姫氏原は肩を震わせる。

    「二つ、奇妙な点がある」

     と、三田が口を開いた。

    「一つ、こんなに大きな、廃校よりもなお大きい施設を、どうして僕たちは今まで意識の遡上に上げなかった?」

    「どういうことだい?」

     篠宮が不思議そうに問いかける。

    「僕たちは離島のあちこちから、廃校を目指して歩いた。けれど、廃校のすぐ近くに、こんなに大きな、廃校の校舎よりも一回り大きい施設があるんだ。廃校を目指して歩くなら、この場所も視界に入る。そして思うはずだ。『ああ、あれが本部か』『まるでホテルみたいだな』『廃校より大きいということは、運営の数もそれだけ多いということか?』といった思索をするはずだ。けど、どうだい? 今まで僕たち、一度も本部の外観について思考を回さなかった……」

  • 893◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:01:43

    「つまり……何が起こってるの?」

     姫氏原は問いかける。

    「認識阻害の異能だろうね」

     と、三田は答えを言った。

    「首輪だけじゃない。彼らは僕たちに意識されたくなかったんだ。正直、首輪を付けたままでも、本部へ攻撃する方法は幾つかある。戦車の射程なら廃校から撃っても届くだろうし、オルランドや堀木くんなら、廃校から本部へ投擲したり蹴ったりできるだろ。彼らはそれを嫌がった。だから、本部を僕らに認識させないようにしていた。……ドラギモスくんちゃん、付け加えることはあるかい?」

    「いや、ないぜ。僕も三田の意見に同意だ。今僕らが認識できるのは、首輪をつけていれば無理だった距離まで近づいているからだろうな。そして二つ目の疑問点は……」

    「何故無事なのか、ってことだね」

     本部が無事なのはおかしいのかな、と姫氏原は考えを巡らせ、すぐに気づく。

  • 894◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:02:29

    「中って今、大変なことになってるんだよね」

    「ああ、茜音沢が暴れて、デストラップが徘徊して、人がどんどん死んでいるらしい。でも、とてもそんな風には見えない」

     窓ガラスは一つも割れておらず、煙も無く、悲鳴や銃声も聞こえてこない。
     ただ、静かに佇んでいる。

    「さて、これはどう解釈するべきか。①谷淵の言うことは全て嘘。茜音沢は暴れてないし、中で人も死んでない。②僕らは手遅れ。既に茜音沢先生以外全滅している③これもまた」

    「認識阻害か。しみったれてんなぁ~」

     話を遮るように、石川が言った。

    「で、どうするよ。ここに来てやっぱ入るの辞めるとか言い出さねぇだろうな」

    「まさか。僕だって覚悟はできてるよ。ただ正面からは無謀だな」

    「窓を割って侵入するのはどうや。1階か2階の窓を割ってそっから入るんや」

     マネモフルの提案通り、9人の生徒は、手ごろな窓を見つけると、それを音もなく叩き割り(石川の手馴れた様子に何人かの生徒はドン引きした)本部の中に入り込んだ。

  • 895◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:03:03

    「トイレ……ですわね」

     Nek-Oが警戒するように周囲に目を配る。

    「花子さんは金木が除霊したのだったか」

    「うん、僕がそれを確認してるよ」

     三田の言葉にようやく安堵したのかNek-Oから怯えが取れる。
     そのまま9人はトイレを出て、廊下に出た。

    「うっわ……」

     歯荷が放心したように言った。
     地獄絵図である。
     黒い服を着た無個性な集団が、10人ほど倒れている。鋭利な刃物で斬られた痕跡があり、どれも同じ刃物だと三田は断定した。

    「茜音沢先生の仕業、なのかな……」

     という姫氏原の言葉に、石川は首を振った。

    「いや、先生なら原型とどめてねぇよ。下手人は非力で小柄だな。剣の扱いにはそれなりに慣れてる太刀筋だぜ」

  • 896◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:03:54

     暴力の化身である石川が探偵めいたことを言うのはかなり三田のプライドを傷つけたが、それはそれとしてしっかり拳銃を回収する。
     全員に拳銃が行き渡り、最低限の戦力は整えられた。

    「これをやった相手は、銃を回収しなかった。そして、残弾がたくさん残っている状態で彼らを殺してのけた。石川くんは未熟と言ったけれど、僕からすれば十分怪物だよ」

    「そっか? うちのクラスで同じこと出来るのいっぱいいるだろ」

     確かに、と三田は思い、つくづくよくそんな化け物たちと殺し合いをして生き残ったものだと呆れた。
     彼らは知る由もないが、これをやった人物、彼らの後輩、田中屍山血河もすでに息絶えている。

    「谷淵との合流地点まで急ごう」

     ドラギモスに急かされ、彼らは周囲を警戒しながら血で汚れた絨毯を進んでいく。
     そして、彼らの前に、上へと続く階段が現れた。

    「ドラギモスくんちゃん、どうだい?」

    「未来視のタリスマンに反応は無い。危険はないはずだ」

  • 897◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:04:36

     懐から目玉つきのお守りを取り出し、ドラギモスが言う。
     九人は階段を昇り始めた。

    (階段か……)

     と、篠宮は嫌な記憶を思い出した。

    (瀧沢さんの解毒薬を探しているときは、階段を降りるときに鉄の扉が出現した。四段目、あれで時間を取られて、マネモフルの接近を許してしまった。どうも階段には十段目いい思い出が無い……)

     と、思っていても、それだけの理由で階段を昇らないわけにはいかない。

    (十一段目早く昇ってしまおう、ちょっと待て、どうして僕は段数なんか数えてるんだ、どうでもいいじゃないかそんなの。いよいよ茜音沢との戦いで緊張してるのか? まぁいいさ、さっさと昇って)

     十三段目。
     瞬間、篠宮の世界は切り替わった。
     屋内に居たはずなのに、周囲は巨木が生え、霧がかった場所に変貌していた。

    「何だ……これは……」

     幻術の異能。篠宮は先ほど鹵獲した銃を取り出し、仲間に警戒を呼び掛ける。

  • 898◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:05:10

     しかし、その声は届かない。
     声が出せないのではなく、返ってこない。
     不安に駆られた篠宮は、首をきょろきょろと動かした。
     誰もいない。
     石川大輔も、Nek-Oも、堀木彩も、マネモフル=タマネも、三田哲も、姫氏原小毬も、歯荷仄花も、虎肝ドラギモスも。
     霧に紛れて姿が見えないだけなのか。しかし声も返ってこない。

    「おおーい! 皆―!」

     ばくばくと心臓が打ち鳴らされる。
     銃撃戦を経験し、戦車に砲撃され、半日の死闘は、篠宮を戦士へ変えた。
     それでも一皮剝けばただの男子高校生である。
     わけのわからない事態に、容易く精神の均衡を崩してしまう。
     篠宮は脱兎の如く駈け出した。
     この霧を抜けよう。それだけを考えて走った。
     ここは何処なのか、そんなことは考えない。今はただ、走ることだけに集中する。

  • 899◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:05:49

     霧から抜け出した、と思った時、篠宮は再び奇妙な場所に立っていた。
     応接間のような空間だ。

    (どういうことだ……? まるでわけがわからない……みんなはどこに行ったんだ)

     鹵獲した拳銃を握り、周囲に視線を送ろうとし……。

    「動かないで」

     後頭部に、硬い金属の感触があった。

    「銃を捨てなさい」

     若い女の声だ。クラスメイトではない。

    (大丈夫だ……透明な銃を一丁隠し持っている……ここで下手な抵抗をして撃たれるよりは……)

    「分かった。銃を捨てよう」

     そう言って、篠宮は拳銃を手放す。拳銃は灰色のカーペットに音もなく落下した。

    「お前は何者だ? 運営側の人間なのか?」

    「宇都紀久子。【異能殺し】とも呼ばれるわ」

    「何だって……!?」

  • 900◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:06:32

     動揺し、懐を探った。
     無い。造ったはずの透明な銃が消失している。

    (異能を打ち消す異能……! そんなもの、想定していない……!)

     銃を捨てるべきではなかった。今の篠宮は丸腰だ。これが石川や堀木なら、丸腰は戦闘不能を意味しないが、篠宮は別。あくまで肉体は一般人であり、格闘技の心得もない。
     詰んでいる。

    「ようこそ弱者よ」

     外から扉が開かれ、フードを目深に被った男が姿を現した。

    「俺の名前は谷淵玄夜。お前と話すのは初めてだったか」

    「お前が谷淵か……僕をどうするつもりだ、皆はいったいどこに……!?」

    「まぁ落ち着け。俺は弱者であるお前をどうこうするつもりはない。そして、お前以外の生存者だが……どこに行ったかは俺も知らん。俺の独自の情報網により本部に入ったお前たちを監視していた……お前たちは階段を昇り、そして消失した。最初は全滅したのかと思ったが、今俺の前にお前は姿を現している。恐らく、他の生徒も本部内のそれぞれ別の場所にワープしたのだろう」

  • 901◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:07:16

    (全員別の場所にワープだって!? 最悪だ……ただでさえ戦力で圧倒的に不利なのに、バラバラだなんて……)

    「まぁそう焦るな。俺もお前たちが再開する手助けをしてやろう。しかし九人か。二人余計だな」

    「どういうことだ……?」

    「ワープ装置の上限は九だ。俺とそこの女で二人の枠が必要。九人で来たお前たちには二人死んでもらわないとな」

    (脱出できるのは九人……? そんな……)

     もし仮に、クラスの生存者が九人であれば、篠宮は絶望せずに済んだ。どうにかして谷淵と異能殺しを排除し、全員で帰ればいい。
     しかし。

    (不味い、僕たちは11人いる……!)

     谷淵と異能殺しを抜きにしても、二人は帰れない。

    「まぁ座れよ。弱者の意見も聞きたい。誰を帰らせないか、お前に選ばせてもいいんだぜ」

     そう言って、扇動卿は悪魔めいた笑みを浮かべた。

  • 902◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:07:51

    「みんなどこ行ったんだ? まさか俺だけ仲間外れか?」

      石川がワープした場所は、シングルベットが置かれた簡素な部屋だった。わけのわからない状況に頭を掻きながら、とりあえず部屋を出る。
     気がついたら、周りから人が居なくなっていた。石川には心当たりがあった。
     ハブられたのかもしれない……。
     小学生の頃、戦いごっこをしていた友達の、骨を折ったことがある。ちゃんと謝ったのに、翌日公園に行っても誰も居なかった。帰り道の寂しさを今でも覚えている。
     ちょっと調子に乗りすぎたのかもしれない……。ドラギモスを殴ったのは不味かったか。確かに彼らの仲間を何人か殺している。ハブられる条件は整っている。

    「ハブるくらいなら正面から来いよな、なんつーか、陰湿っつーかさ。やめようぜ、高三にもなっていじめなんて」

     肩を落としながら石川は長い廊下を進む。銃を構えることすらしない。必要ないからだ。それに石川は銃の達人ではない。撃つより殴るほうが早い。

  • 903◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:08:20

     ふと、石川の耳に複数の足音が聞こえた。焦りを感じる早足。
     興味を惹かれる。彼らは何から逃げているのか。生徒の足音ではないと分かる。数が少ないからだ。

    「逃げてるのは先生からかな」

     ということは、逃げてきた方向に茜音沢がいる。
     石川がドラギモスに従ったのは喧嘩に負けたからだが、待っていれば茜音沢と戦えると踏んだからだ。その約束は早くも達成されそうである。
     スキップをしながら石川は足音へ近づいた。現れたのは五人の男である。

    「あー?」

     彼らの容姿に、石川は面食らった。
     同じ顔である。
     同一人物が五人、同じ表情で走って来たのだ。

    「五つ子か? 羨ましいぜ」

     にも関わらず、五人の持つ武器はバラバラである。
     戦闘狂の石川でも見たこともないような、珍しい武器を持っている者もいる。

  • 904◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:08:59

     五人は石川に気づいたのか、その足を止めた。

    「何故参加者がここに居る?」

    「貴様首輪はどうした?」

    「外したんだよ。それよりお前ら、何から逃げてんだ? もしかして茜音沢先生か?」

    「貴様に話す筋合いは無い」

    「それより外した首輪をどこにやった? ボスにはあれが必要だ」

     五人の男に五つの武器を向けられ、石川は笑った。
     外した首輪は、それぞれが鞄に仕舞っている。ロッカーのように、首輪に関連したギミックがあるかもしれない。外した首輪が適用されるかは分からないが、そうかさばる物でもないため、念のため持っておこうという話になったのだ。

    「俺の首輪が欲しいのか? 奪ってみろよ」

     戦うつもりはなかったが、石川は五人の戦意を歓迎した。
     残り五人となった九龍は、一人の戦闘狂を取り囲んだ。

  • 905◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:09:29

    「吾輩、今度こそ死んだかと思ったぞ」

    Nek-Oは階段にいい思い出が無い。七つあった命を四つも削られたのは、廃校の階段だった。皆で階段を昇り始めたときも、厭だなあ怖いなあと思っていた。
    案の定、異能絡みのギミックが発動し、霧の森へワープ、花子さんを連想させる暗い雰囲気に野生の本能が警鐘を鳴らし、チーターの如く駆け抜けた。
    そして、見知らぬ廊下に辿り着いたのである。どうして森を抜けると屋内なのか、理屈は考えないことにした。
     とにかく、やるべきことは仲間との合流だ。
     だから来たくなかったのだ、というのが本音だが、愚痴っても仕方ない。
     気持ちを切り替えて、歩みを進める。

    「これは、行き止まりか……」

     焦げ茶色の壁が、行く手を塞いでいる。
     思えば、Nek-Oの思い通りになったことが、この殺し合いで一回でもあっただろうか。気づかぬままに命を刈り取られ続け、せっかく団結しても、こうして離散させられる。

  • 906◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:10:16

     もしかしたら、とっくにNek-Oの人生は行き詰っているのかもしれない。
     苛立ちを誤魔化すかのように、Nek-Oは壁に向けて猫パンチを撃った。既に動物園でしか飼育できないようなサイズにまで変貌している。パンチも、動作こそ可愛らしい(諸説ある)が、大の男を悶絶させる程の威力があるだろう。が、壁を壊す程のパワーは無い。
     にも関わらず、壁が動いた。
    ずるずると移動を始めた。
    野生。それはNek-Oが失って久しいものである。この殺し合いで少しは取り戻したが、それでもNek-Oが野生を失っていることは確かだ。
    だから、気づくのが遅れた。
     これは、壁ではない。
     生物だ。
     常識外れの大きさの、恐らく……。

    「蛇、か……」

     Nek-Oはそれを見上げ、呟いた。
     縦長の瞳孔が、迷い込んだ小動物を捉える。
     Nek-Oは、大きい。元々1m程のサイズだったが、今では1・5m程のサイズまで大きくなっている。既に猫より、ジャガーや豹に近い体躯をしている。
     それでも、この怪物と比較すれば小動物と言わざるを得ない。
     世界最大の蛇。体長20m。太古の世界で、生態系の頂点に君臨した怪物が、ゆっくりと鎌首をもたげた。

  • 907◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:10:45

     二人には共通点があった。
     顔立ちも、背丈も、家柄も、立場も違う二人だが、一つだけ似通った箇所がある。

    「おや、まさかここまで辿り着くとは(暗黒微笑)」

    「うーん、辿り着いたっていうか、飛ばされたが正しいかな(‘Д)」

     殺し合いという状況に似つかわしくない笑顔。
     一人は腹黒さを感じさせる乾いた笑み。
     対するは妖艶さすら感じさせる蠱惑的な笑み。

    「堀木さん、鞠子は一緒では無いのですか。私は彼女に用があるのですか(暗黒微笑)」

  • 908◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:12:15

    「誰だよ鞠子って(笑) 小毬にどういう用事?ww」

    「私の名前は目裏晴刈。小毬は私の妹を殺した女なんです。兄として復讐しなければ(暗黒微笑)」

    「………………あれは正当防衛だし、殺したのは小毬じゃなくて、取り憑いた悪霊の仕業だよ。怒る気持ちはわかるけどね(+_)」

    「いえ、怒ってはいないんですよ。勘違いしないでください。ただ、やらなければいけないのでやるんです。だって、妹の仇が生きてるのに、復讐しないなんて、兄らしくないでしょう。兄としてはやるべきなんですよ」

     義務感。
     ゴミは分別しないといけませんよね、とでも言いたげなノリで、晴刈は姫氏原小毬への復讐を宣言した。

    「貴方には、そうですね。小毬をおびき出す餌になってもらいましょう」

     晴刈が合図を送ると、傍らに控えていた黒服が拳銃を堀木に向けた。
     が次の瞬間には、黒服の顎に堀木の蹴りが炸裂した。
     倒れ伏す黒服を踏みつけ、堀木は笑みを浮かべる。

    「させると思う?(暗w黒w微w笑)」

    「仕方ありません(暗黒微笑) 貴方には死んでもらい、小毬を苦しめることにします(暗黒微笑)」

     一人の少女を巡り、若旦那とメス男子の戦いが始まった。

  • 909◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:12:46

    「くそっ、みんなどこに行ったんや!」

     マネモフルは焦っていた。
     贖罪のために仲間を守ると決めたのに、再び一人になってしまった。
     こうしている間にも、かつての自分のような危険人物が、クラスメイトを襲っているかもしれない。
     あるいは茜音沢と遭遇してしまい……最悪な想像が頭をよぎる。

    「無事でいてくれよ……っ!」

     その時、正面から圧倒的なオーラを感じ、マネモフルは立ち竦んだ。
     マネモフルは茜音沢と戦ったことはないが、あにまん高校最強の男はきっとこれくらい強いだろうというイメージはある。そのイメージを塗り替えるような、圧倒的強者のオーラを纏った、筋骨隆々の大男が姿を現した。

    「余は、拳王卿である」

  • 910◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:13:36

    「け、拳王卿やと……!」

     マネモフルは覚悟を決めた。自分はきっとここで死ぬ。いきなり運営側の最強戦力と当たってしまった。こいつが他のクラスメイトを襲う前に、少しでも消耗させる。そのために自分の命を使おう。悲壮な覚悟と共に、マネモフルは灘神影流ではない、素人丸出しの構えをとった。

    (うわあああああああああああっ! マネモフルだっ! ヤバい、どうしてこんな危険な奴が廊下を練り歩いているんだっ!)

     拳王卿は内心パニックだった。モニターでマネモフルの暴虐は散々目にしている。そして彼は、マネモフルが改心したところは目撃していないのだ。彼の知っているマネモフルは瀧沢に吹き飛ばされた後、キルコに襲われ姿を消したところまでである。

    (どどどどどうしようっ! どうすればいいんだっ!?)

     マネモフルは構えをとっている。臨戦態勢だ。拳王卿も構えをとった。
     もしこの場に石川、あるいは三田がいれば、二人の構え方が素人のそれだと分かっただろう。が、本来のマネモフルも、拳王卿も、格闘技はずぶの素人である。
     互いに相手の構え方が堂に入ったものだと勘違いしていた。
     誤解が解けぬまま、二人のマッチョは臨戦態勢に入る。

  • 911◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:14:15

    「一体何が起こったんだ?」

     霧がかった森を抜けると、図書館だった。
     ファンタジーな経験に、三田はくらくらする。

    (すぐに皆と合流を……いや、待て……ここで情報収集という手もある……どうするべきか)

     混乱する頭を立て直しながら必死に思案する。

    「貴様か、愚鈍な探偵小僧よ」

     低く、枯れた声が聞こえた。
     古本が喋った、と錯覚しそうな年期を感じさせる男の声だった。

    「な、誰だっ!」

     咄嗟に声の方向に銃口を向ける。
     三田は、銃器を触るのは初めてだ。ただ、何度か事件を解決する中で、警官が銃を構える所を何度も目撃している。    そして、一般的な教養として、拳銃の扱い方、構え方を調べていた。

  • 912◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:14:52

     初心者にしては堂に入った構えで、三田は声の主に問うた。

    「お前は、谷淵玄夜か? どうして僕たちを分断した? 皆を何処にやったッ!?」

    「落ち着け、探偵小僧。お前達を呼んだのも、お前たちを分断したのも、私ではない。私の名は、希咲枯春。このゲームのスポンサーの一人だ」

     何処までも落ち着いた声色で希咲はそう言うと、出勤でもするかのような自然体で、本棚の影から姿を現した。
     三田が思っていたより、ずっと若い。
     希咲は三田の拳銃を恐れることなく堂々と歩み、ソファーに優雅に腰を下ろした。

    「かけたまえ」

    「何だと……?」

    「元・探偵から、若く愚鈍な探偵に情報を与えよう。上手く活用してこの事件を解決したまえ」

     もっとも、と希咲は一切の感情を浮かばせない眼で三田を見据える。

    「君に期待はできんがね」

  • 913◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:15:30

    「ホホホホホ! 獲物がいたザマス! 狩りの始まりザマスよ!」

     絶え間ない銃声に晒され、歯荷は溜息をついた。
     里美を殺したり、キルコと戦ったり、石川と殴り合ったりしたが。銃撃戦は初めてだ。
     肉弾戦とはまた違う怖さがある。

    (不味いですわね……)

     縦ロールの女と、彼女に付き従う八人の黒服。何となく雰囲気から、あまり強くは無いことは分かる。拳の間合いまで踏み込めれば、今の歯荷なら一方的に制圧できる。
     問題は、彼らは銃を持っていることだ。
     絶え間ない弾幕を掻い潜って近接戦に持ち込むことが、歯荷には出来ない。
     コピー元の改心前マネモフル、あるいは瀧沢なら出来たのかもしれない。彼らと違って、歯荷はあくまで付け焼刃だ。身体能力は一般的な女子の範疇を超えないものだし、視ていない技術は使用できない。
     そして武器は拳銃だけ。
     指先からそう離れていない場所を弾丸が通過し、身を縮ませる。

    (どうにかして、皆さんと合流したいですわ。私一人じゃ、荷が重いですわ……!)

  • 914◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:15:59

     霧がかった森の中を、ドラギモスは歩いていた。
     さっきまで階段を昇っていた筈だ。理解できない状況だが、ドラギモスは自分なりに推測を立てていた。

    (十三階段……派生が多い学校怪談だが、異世界にワープしてしまうというバージョンもあったな。あれは、その再現を成した物か……)

     未来視のタリスマンに反応は無かった。どうやら物質的な脅威しか認識できないらしい。

    (茜音沢避けなら有効だが、霊的なトラップには無意味か……。それにしても)

     ここは、異次元なのか。
     地図に樹海と書かれた場所があった。本部から樹海までワープした、というわけではないようだ。核心は無いが、ここは普通の場所ではないと、本能が訴えている。
     異次元。異世界。あるいは……。
     その時、ふと、懐かしい気配が傍を通った気がした。

    「…………結か?」

  • 915◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:16:32

     振り返って、声をかける。
     気づけば、そこは薄暗い通路だった。
     あちこちで壁が崩れ、天井が落ち、パイプが切れたのか水柱が上っている。
     戦闘があったのだと、ドラギモスに嫌でも理解させる光景だった。
     ドラギモスは天才だ。しかし軍人でも戦士でもない。石川戦で負ったダメージが完全に回復していないにも関わらず、奇妙な現象に襲われ、更に違う場所へワープさせられた。
     一瞬の気の緩み。
     手元から、未来視のタリスマンが滑り落ちた。
     御守りは球体だったのも災いし、地面を転がっていく。

    「あ、待て……!」

     慌ててドラギモスはタリスマンを追いかけた。
     しかし体の節々が痛み、上手く追いかけられない。

    (こんなみっともない姿、結には見せられねぇぜ……)

     周囲に誰も居ないことは幸いだった。

  • 916◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:17:08

     組織した生き残り集団は、僅かな要因で崩壊する。
     天才ドラギモスがドジを踏む様子を見られれば、不信感へと繋がり、集団崩壊へ繋がりかねない。

    (元々クラスメイトといっても、お友達集団じゃなかったんだ。それを無理やり纏めてるんだから、罅が入りやすいのは仕方ないが……)

     あるいは、所詮マイペース集団だと、三年間絆を育むことを放棄したツケを、払わされているのかもしれない。
     疲れているのだろう。そんな取り留めのないことも考える。
     タリスマンはころころと転がって、側溝の中に落ちていった。

    「僕のアイテムがっ!?」

     ようやく追いついたドラギモスは、側溝を覗き込む。
     入って探すべきか。諦めて仲間との合流を急ぐべきか。そう思案した時だった。

    「ハァイ、ジョージィ」

     暗闇の中からピエロが顔を出した。

  • 917◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:17:34

     デストラップ、十三階段。本来廃校にあったが、今は本部に出現するように設定されている。十三階段の怪異は、幾つかの段階を踏む。階段を昇るうちに、段数が気になり始める。次に、十三段目を踏むことで、異次元にワープする。異次元を通った先は、本部のどこかへ転送される。
     これそのものに殺傷力は無く、タネさえ知っていれば十三段目を踏まなければいいため、危険度は低い。
     十三段目を踏んだ九人の参加者も、異次元を経由し、それぞれ別個の場所に飛ばされた。ただ一人の例外を除いて。
     他の者が本部にてそれぞれの相手と向き合っている時。姫氏原小毬は、未だに霧の森を彷徨っていた。
     一寸先も見えぬ濃霧。
     不安定な足音。
     独りぼっちの行動。
     それは、奇しくも半日前の、夜の樹海を想起させるものだった。

    (堀木くん……どこ……私を独りにしないで……)

     不安に駆られながら、姫氏原は恋人を、そして他の仲間を探して彷徨う。

  • 918◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:18:05

     何故彼女だけが異次元から抜け出すことが出来ないのか。
     一説によると、学校怪談・十三階段は、あの世へ繋がっているという。
     悪霊に取り憑かれた少女、姫氏原小毬は、他の生徒よりあの世へ適合してしまったのだろうか。
     どうしていいか分からず、姫氏原は途方に暮れた。

    「堀木くん……みんな……どこにいるの……!」

     叫び声も霧の中に吸い込まれていく。
     これは偶然なのか、あるいは第三者の意図した物なのか、本部へ侵入した生徒たちは、それぞれ運営側の人物、あるいはデストラップに遭遇していた。
     そしてそれは、姫氏原小毬も例外ではない。

    「ねぇ♡」

     と、霧の中から声が聞こえた。
     知っている声だ。
     それは、この島で一番初めに聞いた声である。

    「嘘……」

  • 919◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:18:37

     思わず、そう零した。
     不思議なことなど、何も無い。
     姫氏原小毬は、悪霊に取り憑かれた少女である。

    「どこ行く気なの、殺人鬼♡」

     自らが殺した幽霊と対面することは、至極当然のことだった。
     十二時間ぶりに、姫氏原小毬と、目裏雨子は相対した。

  • 920◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:19:34

    本部突入パート終了します……!
    続きは後日投下します……!

  • 921二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:24:40

    最高にワクワクする始まり方だな
    ここに書かれてない千頭之は冬爺たちとマッチするんだろうか
    そして小毬ちゃんは強く生きて…

  • 922◆xaazwm17IRZa23/06/04(日) 22:29:49

    今回は旧型の十三階段を使わせていただきました……! 新型も機会があれば出してみたいです……(必ず出せると明言はできないですが……)

    しばらく顔を出せず申し訳ありません……!
    その間に感想や保守、IF展開などで繋いでいただきありがとうございます……!
    各キャラの通信簿(語り)を書く際に、ダイス目が良かったらどういう展開にしたのかも書こうかなと考えています

    直近の話でドラギモスも愚痴ってますが、各々がマイペースな分、集団のイジメやスクールカースト的なものが無いのは美点ですが、同時にクラス全体の連帯感や仲間意識も希薄なのは、殺し合いに影を落としています。
    茜音沢先生が担任を辞めなければもう少しその辺も改善されていたのかもしれません。

    それでは、本日はここまでとさせていただきます……!
    今日もありがとうございました……!

  • 923二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:56:20

    乙です、30レス程の更新助かるクリスタルスカル
    皆がマイペースなら目的を共有しながら分断されたほうが自由に動けるんじゃないかな(ポジティブ・シンキング)

  • 924二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 23:19:08

    オールスター感が楽しいけどそろそろ誰か死にそうで怖いな

  • 925二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 23:35:52

    乙でした〜
    残った運営の中で強者の部類に入るのは九龍と目裏兄くらいだろうし何とかならないかなぁ(デストラップから目を逸らしながら)

  • 926二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 06:50:59

    保守
    旧型の十三階段ってどんな能力だっけ?
    幽霊を見せる性質でもあるんだっけか

  • 927二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 08:58:57

    乙でした
    他人に深入りしないキャラは多いけど、仮に皆親密だったら今度はサークラの金木に狂わされてた可能性も

  • 928二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 12:46:28

    敵幹部と味方のマッチング回とかいう俺がこの世で1番好きなやつ来たな……
    それにしてもドラギモスとNek-Oは序盤だったらそのまま即死してそうなエンカウントの仕方だ

  • 929二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 16:02:14

    異能殺しと会わせたいキャラが何人かいるな
    特にドラギモス

  • 930二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 21:56:58

    保守

  • 931◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:56:21

    短いですが、本日分を投下します……!

  • 932◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:56:59

    「猫、ねぇ……」

     と、茜音沢は頬を掻きながら提出された資料を持ち上げた。

    「あにまん高校で教師やってると、まぁ色んな生徒教えてきたが……その、あれだよな、猫に化ける異能とか猫を操る異能とか、そういうのじゃないんだよな……?」

    「吾輩は猫である」

    「マジかぁ……マジの猫かぁ……」

     眼前の人間は困惑していると、Nek-Oは気づいていた。

  • 933◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:57:41

     その気持ちは、理解できる。
     教師とは、人間を相手にする職業だ。猫に物を教えるのはブリーダーやトレーナーの職分だろう。

    「だが吾輩はこの高校に入るだけの学力を備えている。入学要件は満たしていると思うが?」

    「だよなぁ。入試の成績見させてもらったが、基準には達してるもんなぁ」

    「では何が不服か?」

     んんーと茜音沢は唸った。

    「いや、不服も不満もないなぁ」

    「ほう?」

    「強いて言うなら、猫の担任するのなんて初めてだからな。自信が無いんだよ」

     そう言って、茜音沢ははにかんだ。
     窓から射し込んだ夕日が、壮年の男の横顔を照らした。

    「Nek-Oはさ、学校で何をしたいんだ?」

    「そうさな……」

  • 934◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:58:17

     Nek-Oは髭を撫でた。

    「それを見つけるために、学校に通うのだ」

    「なるほどなぁ」

     我ながら適当な答えだと思ったが、茜音沢は納得したようだった。

    「高校生らしい答えじゃねぇか。なんだか俺安心してきたぜ」

     よく分からない男だと思った。
     だが、悪い男ではないのだろう。Nek-Oはそう結論づけたのだった。



    (何だこの化け物は……!?)

     蛇に呑まれた蛙、という言葉を知った時、Nek-Oは、蛇は楽でいいなと思った。
     猫の場合は、窮鼠猫を噛むという言葉の通り格下相手にも気が抜けない。
     獲物が勝手に硬直してくれるような、楽な狩りをしてみたいものだ。
     そんな風に蛇を揶揄したこともあった。
     果たして今、Nek-Oは蛇に呑まれていた。
     自分より十倍、いや二十倍は大きい怪物。

  • 935◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:58:48

    戦うことさえ馬鹿馬鹿しい戦力差。

    (逃げるしか無い……命のストックが後二つあるが……馬鹿な、これに喰われれば終わりだ、リスポーン地点が胃袋では何の意味も無いではないか……)

     しかし、背中を向けて逃げ出せば即喰われる。
     蛇の俊敏性は知っている。巨体であろうとそれは変わらないだろう。
     むしろ、まだ喰われていないことが奇跡だ。
     Nek-Oは知らないが、ティタノボアがNek-Oを捕食しないのは、ここ数時間で数多くの獲物を捕食し、多少腹が膨れていること、そして茜音沢とセピアに散々打ちのめされ、自信を無くしていることにあった。
     が、それがNek-Oを見逃す理由にはならない。
     この化け物は人間だけでなく、自分以外の生物は全て捕食対象である。
     Nek-Oも例外ではない。

    (どうすればこの絶体絶命の状況を切り抜けられる……吾輩に何ができる……?)

     詰んでいる、という思考を振り払う。
     例え仲間たちと逸れず全員で遭遇したとしても、総力戦になることは間違いない怪物だ。中堅よりやや下程度のNek-O一匹で何が出来るのか。

  • 936◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:59:16

    (……思い出した! 吾輩には最強のぶっ壊れ武器があった……!)

     それを繰りだせれば勝利は確定する。
     問題は、鞄に仕舞ったそれを取り出せるか。全てはそれ次第だ。
     Nek-Oはゆっくりと鞄に手をかけた。ティタノボアが舌をちろりと動かす。
     例えば千頭之のコサメのような小さい蛇が行えば可愛らしいこのような動作も、ティタノボアがやれば恐怖以外の何物でもない。何しろ覗く舌が既にNek-Oより大きいのだ。
     ゆっくりと鞄に顔を突っ込み、お目当ての武器を取り出す。
     心臓が早鐘を打つ。
     撃ち殺され、知らぬうちに殺され、石川と正面から戦った。しかし、今のNek-Oは今までとは別種の恐怖に囚われていた。
     本能の恐怖。捕食されるという恐怖。それと必死に戦いながら、Nek-Oは鞄から遂にその武器を取り出すことに成功した。
     それは、見かけ上はDX日輪刀以上に外れ武器である。しかし、その効果はあらゆる生物に作用する。
    【猫じゃらし】。

  • 937◆xaazwm17IRZa23/06/05(月) 23:59:45

     Nek-Oが最初に手にしたランダムアイテムである。
     猫だけでなく人間にも効くと記載されていたが、果たして蛇、それも怪物じみたサイズの蛇にも効くのか、確証はもてなかった。
     ティタノボアは一気に興味を惹かれたのか、瞳孔を見開いて猫じゃらしに見入る。

    (効いている……のか? これで上手く誘導して茜音沢にぶつけることができれば……)

     既に茜音沢に敗北しているが、それをNek-Oは知る由もなかった。

    「さぁ……こっちだ……」

     ティタノボアは猫じゃらしに釣られ、ずるずると巨体を滑らせ始めた。

    (よし、効いているぞ。どうやら九死に一生を得たらしい……)

     ところで猫に猫じゃらしをけしかけるとどうなるか。個体差は出るが、猫じゃらしを持つ手に猫パンチを仕掛ける猫も多いだろう。
     Nek-Oは、人間ではない。野生を知っている、猫である。獣の本能に人間レベルの知能が併せ持った、ハイスペックな生物である。
     が、不死の異能と、野生を離れた生活が、彼の思考を鈍らせてしまった。

  • 938◆xaazwm17IRZa23/06/06(火) 00:00:16

     この殺し合いで幾度も死を経験し少しずつ野生を取り戻していたが、それでもティタノボアに比べればその思考は甘い。
     猫じゃらし。もしこれを人間に使えば、致命的な隙を作ることが出来るだろう。
     ティタノボアに仕掛けても同様だ。もしここにティタノボアに攻撃を通せる者がいれば、無防備に隙を晒したティタノボアに一撃を与えていただろう。
     しかし、今ここにはNek-Oしかいない。
     ティタノボアは猫じゃらしに夢中になった。
     そして、当然のように——猫じゃらしにじゃれた。
     人体を容易くミンチにする一撃が、Nek-Oを襲った。
     咄嗟に飛び退こうと動けたのは、今のNek-Oが人並み外れた瞬発力を持っていることを示している。
     が、それでも遅い。
     飛び退こうとしたNek-Oは、自分からティタノボアの巨体に身を躍らせた形となり、床に叩きつけられ肉塊となった。
     ティタノボアは猫じゃらしを見失い、きょろきょろと周囲を探ったが、やがて諦め、巨体を滑らせながら移動を始めたのだった。

    【Nek-O 死亡(残機:1)】

  • 939◆xaazwm17IRZa23/06/06(火) 00:05:26

    Nek-Ovsティタノボアパート終了します

    自分でマッチアップしといてアレですが、さすがに相手が悪いですねこれ……

    しばらくは対決パートが続きますが、お付き合いいただけると幸いです……
    それでは、本日も感想や保守をありがとうございました……! 

  • 940二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 00:14:14

    乙です、沢山あった命も遂に最後の一になったか

  • 941二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 01:21:13

    乙でした
    本人の言う通り胃袋に収まらなかっただけ僥倖かな

  • 942二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 04:30:06

    まずい流れだねぇ…
    しかし残機1になったNek-Oはさらに進化するのかな

  • 943二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 07:58:48

    Nek-Oの異能、死んでから復活するまでにタイムラグがあるのがタネが割れてない相手には地味に便利よな
    初見の相手は殺したと思って油断するし

  • 944二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 16:36:01

    ほしゅ

  • 945二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:21:15

    保守

  • 946◆xaazwm17IRZa23/06/07(水) 01:04:49

    申し訳ない、本日も投下できないです……
    隔日投下が多くてすいません……

  • 947二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 01:08:23

    お疲れ様です〜
    完結も見えてきたし全然大丈夫ですよ!

  • 948二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 06:46:37

    保守ついでに次回作(仮)に期待することでも語ろうぜ
    私は前の話みたいに敵味方が一斉にマッチするのがまた見たい

  • 949二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 08:11:57

    5スレ目も間近か、感慨深いなぁ
    次回は魔法少女物か異世界デスゲーム予定だっけ

  • 950二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 08:47:37

    魔法少女を募集するとなると必要な情報はこんなもんだろうか
    捌ききるには若干情報過多になる気もするね

    【名前】
    【魔法少女名】
    【性別】
    【外見】
    【趣味】
    【好きなもの】
    【嫌いなもの】
    【性格】
    【衣装】
    【魔法】
    【詳細】
    【備考】

  • 951二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 10:24:11

    最近龍騎を見た影響か契約モンスター的なものもあったりすると嬉しいっすね、無くても嬉しいっすね
    色んな人の作る趣味趣向の詰まった魔法少女が見たい

  • 952二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 11:02:46

    真っ当に善良なキャラを投げて死ぬまで頑張るところが見たいから今から案を練っとこうかな

  • 953二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 11:08:25

    ハンタの守護霊獣みたいな使い魔を全員分決めようとして完走できなかった魔法少女スレがあったので
    さすがのスレ主でも無理だと思うんだ…

    まほいくのファヴみたいなのが運営側にたくさんいる感じがちょうどいいんじゃないかな(妄想)

  • 954二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 19:13:32

    あくまで完結後の展望だから過度な期待は……やめようね!

  • 955二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 20:10:17

    せやな
    あんまりプレッシャーかけてもいかんわな

  • 956二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 20:21:15

    次回作が何になるにしろマジでこのスレに出会えてよかったよ

  • 957二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 00:31:20

    保守マギ

  • 958◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:51:27

    姫氏原VS目裏雨子パート投下します……!

  • 959◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:52:29

    「目裏さん……」

    「十二時間ぶりだね、人殺しのクソ女♡」

     元々、姫氏原小毬は目裏雨子が苦手だった。彼女の全盛期……西日本最強のいじめっ子時代を知っているわけではないが、その醸し出すサディスティックな雰囲気、他者を見下す視線、馬鹿にしたような口調。
     全てが、姫氏原が苦手とするものだった。目をつけられると何をされるかわからない。そう考え、距離を置いてきた。この殺し合いが始まるまでは……。
     殺し合いが始まり、すぐに二人は遭遇した。追いかけっこの末に姫氏原は撲殺されかけ、そして、取り憑いた悪霊が目裏の首を折った。
     堀木に殺人を告白し、時を待たず生存者たちに自らの道程を明かし、その場で追及されることはなかった。殺人者たち……石川、マネモフル、歯荷と比べれば、姫氏原の殺人は正当防衛ともとれるものであり、何より手を下したのは、取り憑いた悪霊である。

  • 960◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:53:11

     それでも、他者に責められなくとも、姫氏原の心には杭が打ち込まれていた。後悔という杭が、罪悪感を姫氏原に与え続けていた。
     クラスメイトの命を奪ってしまった。
     もし目裏が悪霊として現れたなら。謝って許しを請おうと、姫氏原はそう決めていた。
     そして、その時がやってきた。

    「あんた、人殺しといて帰るつもりだったの?♡ どれだけ図々しいの♡ 殺人鬼♡ 虐殺者♡ 早く死刑になれ♡」

     自分を責める被害者に対して、姫氏原は。

    「ち、違う……」

    「はぁ?♡」

    「わ、私じゃない……私がやったんじゃないっ! 悪霊がやったことだもん、私のせいじゃないっ!」

     どれだけ平時に反省できても、後悔できても、いざ目の前に幽霊を相手にすれば。
     姫氏原は、罪を背負うことが出来ない。

  • 961◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:53:51

     何故なら、彼女もまた被害者であり、全ては悪霊の、元ストーカーの低俗で下劣で下種な悪霊の仕業だからだ。
     姫氏原は、無辜である。

    「悪霊?♡ あんた、何言ってるの?♡」

    「ほ、本当だよ! あなたを、殺したのは、私じゃない……悪霊が、悪霊のせいなの……」

    「悪霊なんてどこにいるのよ?♡」

    「え——?」

     姫氏原は周囲を見渡した。どこまでも霧が広がる、深い森の中。
     悪霊の姿は見えない。ここに在るのは、生者の姫氏原と死者の目裏だけだ。

    「あ、悪霊は目に見えないの! 目裏さんだって知ってるでしょ!? 私が今までどれだけ悪霊に苦しめられてきたか!?」

    「ストーカーの悪霊、でしょ♡ 近づく男は片っ端からぶん殴る、束縛の強いキモい悪霊♡」

     果たしてストーカーであったことは周囲に公開していただろうか。姫氏原は僅かに疑問に思ったが、焦燥感に呑み込まれて深く考えることができなかった。

  • 962◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:55:03

    「でもさ、不思議じゃない?♡ あんた、堀木と付き合ってるんでしょ?♡ 何で堀木は被害に遭わないわけ?♡」

    「そ、それは……堀木くんが、メス男子だから、普通の女の子より可愛いから……」

    「ばーか♡」

     目裏は哂った。

    「あんた、堀木とヤルことヤってんでしょ?♡ ストーカーの悪霊がどんだけ可愛くても意中の女と男がヤッてるの黙って見てるわけ?♡ おかしいでしょどう考えても♡」

    「そ、それは……奇跡の力で……堀木くんが、特別だから……」

    「スイーツww♡ あんなのただの女装癖の変態じゃない♡ っていうか、あんた、本当に気づいてないの?♡ それとも気づかないフリしてるの?♡」

    「な、何が……?」

     分からない。目裏は何を言おうとしているのか。姫氏原にはまるで分からない。堀木彩は特別だ。不可能を可能にした。姫氏原が諦めていたことを叶えてくれた。悪霊の呪いさえも克服した、奇跡のような存在だ。だから、目裏の指摘は的外れだ。そのはずなのに……。

  • 963◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:55:51

    「事実を並べていくわね♡ あんたの悪霊は、近づく男をぶん殴る♡ つまり、物理的な干渉が出来る♡ そして、正体はあんたのストーカー♡ 女性やメス男子は許すけど、男子は絶対近づけさせない束縛の強いキモい奴♡」

    「一体何を……」

    「あんたさ、どうして悪霊に犯されてないの?♡」

    「なっ……!?」

     羞恥よりも先に、恐怖が来た。想像すらしていなかった最悪だった。

    「普通に考えて、ストーカーが一方的に干渉できる能力を持ったら、やることは一つでしょ。それとも何? あんたの悪霊って、近づく男はぶん殴って、都合によっては女子でも殺しにかかって、その気になれば自由に動かせて、恋人の堀木には危害を加えなくて、それでいてあんたに暴力も性暴力も奮わないんだ♡」

     目裏は育ちの良さを感じさせる、口元を手で隠しながらくすくすと笑った。

    「随分都合の良い悪霊だね♡ ストーカーって設定なのに、まるで小学生の女の子が考えたようなことしかしない♡ 近づく男をぶん殴るだけ……♡ 襲わないし犯さない、引き摺りまわさないし撫でまわさない……♡」

    「だ、だけど悪霊は……」

  • 964◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:56:38

    「いい加減認めなよ♡ 悪霊なんか最初から居ないんだよ♡ 全部……あんたの異能だって♡」

     異能。
     最初から全て、姫氏原小毬の自作自演。

    「ち、違う……! 違う、違う、違う……! 悪霊は居る……! 私に取り憑いている……! そのせいで、私の人生は……」

    「はーい、ここでネタバラシ♡ どうしてこの陰キャ屑女は、霊感少女を始めたのか♡」

     抗議する姫氏原をすり抜け、目裏は語る。かつて彼女が憧れた里美綾香のように、朗々と語り上げる。

    「事の発端は、姫氏原が小学生の時♡ クソガキ時代の姫氏原はキッモい男にストーカーされていた♡ 姫氏原はそのストーカーを正面から目撃しちゃいました♡ 自分に性的な目を向ける男を、箍の外れた男を、クソガキ姫氏原は、ばっちり視認したのです♡」

     くるくると目裏は回る。他者を傷つけるためだけに、彼女は演目を謳いあげる。

  • 965◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:57:55

    「そのストーカーは姫氏原の目の前で消えました♡ 文字通り、消失したのです♡ クソガキ時代のクソ女は考えました♡ ああ、死んだ♡ ストーカーは死んじゃった♡ めでたし、めでたし♡」

     とは、ならなかったんでしょう♡ と目裏は動揺する姫氏原の顔を覗き込む。

    「翌日、あんたは男子に告白された♡ 小学生らしいピュアな告白♡ でも、その時のアンタにはオスガキのオス性が、醜悪なものに感じた♡ 自分に向けれた好意を、性欲と捉えた♡ 生理的嫌悪感に襲われたあんたは——」

     顔を蒼白にする姫氏原に、目裏は顔を近づけ、呪いをぶつける。

    「ストーカーの悪霊……という設定のクリーチャーを創造した♡ クソ馬鹿オカルト女が怪異を具現化するように♡ 空気ざこ陰キャが透明な武器を創造するように♡ あんたは【近づく男を殴る悪霊】を、作製した♡」

    「嘘よっ!」

     姫氏原は頭を掻きむしる。

    「私には、悪霊が取り憑いている! この悪霊のせいで、私の青春は……!」

    「男を殴ってたのはお前♡」

    「皆に迷惑をかけてたのはお前♡」

  • 966◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:58:31

    「——私を殺したのはお前だよ、姫氏原小毬」

    「ああああああああああああああああああああああっ!!」

     姫氏原は絶叫した。
     悪霊に取り憑かれた少女。誰も除霊することが出来なかった。当然は、悪霊は、姫氏原の異能なのだから。必要なのは除霊師ではなく、異能殺し。
     そして今、誰も果たせなかった憑き物落としを、幽霊である目裏がやってのけた。
     涙を流しながら、姫氏原は蹲る。
     その頭に手を押し当て、目裏雨子は哂う。

    「もう一度聞くね♡ クラスメイト殺して、自分だけ幸せになるつもりなの、殺人鬼♡」

    「わたし、は…………」

    (堀木くん……助けて……)

     恋人の堀木はこの場に居ない。姫氏原小毬は独りだ。傍には彼女が殺した幽霊しか居ない。

    「私は……」

  • 967◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:59:20

    バラバラになる心を、必死に繋ぎとめる。

    「姫氏原♡ あんたは最悪だよ♡ 人類史上、あんたより悪い奴いないぞ♡ 本当にキモイ、何考えて今まで生きてきたの♡」

    「目裏さん……」

     姫氏原は、全身を震わせながら目裏を見上げた。

    「…………ごめんなさい。殺してしまって、ごめんなさい……!」

    「……………………あははははははは!♡ どれだけ謝っても許すわけないでしょ♡ 人の命は地球より重いの♡ しかも私みたいな未来もあった若い命を♡ 最悪だね、絶対に許さない!♡」

    「ごめんなさい……本当に、申し訳ないと思ってます……」

    「じゃあ、死んでよ♡」

     目裏は嘲る。自らに縋る弱者を肴に楽しむ。最も若き暗黒金持ちは、死して尚貧者の苦痛を娯楽として消費していた。

    「それは、無理……! 私は、こんな私でも、堀木くんと……」

    「こんな時までノロケてんじゃねぇぞ、クソ女♡ 口ばっかりで、死ぬ気なんかないくせに♡ じゃあね、私が生きてたらやりたかったことを代わりにやってよ♡」

  • 968◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 01:59:52

    「それって一体……?」

    「クラスメイトの皆殺し♡」

     姫氏原の体が硬直する。

    「も、もし私に殺されなかったら、目裏さんはそうするつもりだったの……?」

    「当たり前じゃない♡ お前達を殺し合いに放り込んだの、私だし♡」

    「そ、そんな……」

     目裏雨子こそが殺し合いの発端だった。その事実に姫氏原は打ちのめされ……。

    「…………じゃあ、私が目裏さんを殺したのは、堀木くんを守ることに繋がってたの?」

     事実に、気づく。
     姫氏原は、等身大の普通の少女である。
     勉学は突出しているが、荒事の経験は無く、強靭な精神も有していない。
     霧がかった森という不気味な状況、殺した少女との再会で、すっかり呑まれてしまった。
     が、もしここに彼女の恋人が居ればこう指摘しただろう。

  • 969◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 02:00:31

    「いや、先に殺しにかかったのは目裏さんだし、正当防衛じゃん😆」

     堀木だけではない。十人中十人は、姫氏原を責めないだろう。
     ましてやこの殺し合いの発端は目裏であると考えるならば……それは、正当な復讐であるとすら言える。

    「私は、殺さないよ」

     姫氏原は力強く宣言した。自分は間違ってなかった。そう確信していた。

    「……あっそ♡ やっぱり口だけじゃん♡」

    「それに、目裏さんの望みって、そうじゃないよね」

    「……は?♡ 勝手に決めるなブス♡」

    「千頭之さんのペットがアイテムとして配られてた……だったら、目裏さんのペットも例外じゃないはず……」

     姫氏原は立ち上がった。かつてキルコと対峙したときの気概を、彼女は取り戻していた。

    「ペットの白鼠、心配じゃないの?」

    「バーカ♡ キッショ♡ あんたさぁ、そんなの…………」

  • 970◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 02:01:10

     目裏は姫氏原を睨んだ。嘲りも無く、純粋な怒りの籠った視線だった。

    「心配に決まってるじゃん、私の家族なんだから」

    「……だよね」

     姫氏原は微笑む。

    「ねぇ目裏さん。私はあなたを殺した。それは私の罪。あなたのしたことと、しようとしていたことは許せないけど、でも殺すべきじゃなかった。……殺したくなかった。一生、死ぬまであなたに謝り続ける。そして……」

     姫氏原は決意を述べる。それは、彼女なりのけじめだった。

    「あなたのペットは、私が責任を持って保護する。一緒に連れて帰る。それが、私なりの贖罪」

    「……可哀そうなリッチー♡ 私みたいなハイスペック女子から、こんなざこざこメンタル女の所に行くなんて♡ ……でも仕方ないね、あんたはまだマシだから、特別にリッチーに触ることを許してあげる♡」

     ほら、と目裏は霧の向こうを指差した。

    「あっちに向かって歩けば、次の場所に行けるよ♡ 早くどっか行け♡ これ以上ざこの顔見たくないし♡」

  • 971◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 02:02:47

    「そう、ありがとうね、目裏さん」

    「やめろ♡ マジキモイ♡」

     姫氏原は駆け出す。
     目裏とすれ違い、霧の向こうへと。更なる地獄へと。
     ふと、彼女は立ち上がり、振り返ることなく問いかけた。

    「ねぇ目裏さん、どうして自分が発端だってバラしたの? そうしなかったら私、今も罪の意識に押しつぶされてたのに……」

    「はぁ?♡ そんなの簡単じゃん♡ あんたにここで長居されたら、リッチーのためにならないじゃん♡」

     ああ、と姫氏原は溜息を吐いた。
     やはり、殺したのは間違いだった。目裏雨子は邪悪なのだろう。目裏雨子は巨悪なのだろう。それでも、姫氏原が堀木を愛するように、目裏もまたリッチーを愛していた。ならば、分かり合うことだって出来たはずなのだ。その可能性を、姫氏原は永久に奪ってしまった。

    「ごめんね、目裏さん」

     そう言って、姫氏原は今度こそ駈け出した。
     霧の中を走り抜け、彼女は光の中へと、次の舞台へと飛び込んだ。
     死者は留まり、生者は進み続ける。
     死者が彷徨う霧の森。果たしてそこに居るのは、肉体を失った魂なのか。
     あるいは、霧が作り出した幻に過ぎないのか。
     誰も居なくなった森では、ただ霧だけが漂い続けていた。

  • 972◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 02:03:23

    姫氏原小毬VS目裏雨子パート終了です……!

  • 973二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 02:08:31

    幽霊を操るのが異能なら姫氏原ちゃん割と最強クラスなのでは…

  • 974二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 02:19:19

    見えない守護者を生み出すという点では驚異的だけど戦闘に熟れた奴相手だとまだ喰らいつけるだけという塩梅…いや強いな!

  • 975◆xaazwm17IRZa23/06/08(木) 02:20:56

    今日も投下が遅れて申し訳ありません……!

    次回作については早くても本編終了後の三か月後、リアルの状況次第では一年以上時間が空くかもしれないので、そこだけご了承頂けると幸いです……! また次回作の展開予想については今くらいの量ならまだプレッシャーには感じないのでやっていただくだけでも嬉しいです……! 配慮してくれた方もありがとうございます……! 

    本編は六月中に終わらせられるよう尽力します……何か月もお付き合いいただきありがとうございます……!
    感想の方、いつも励みになります。ありがとうございます……!

    それでは、本日もありがとうございました……!

  • 976二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 02:22:21

    乙です、次スレで本編終了を迎えそうだ

  • 977二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 02:23:24

    乙でした〜もう始まって3ヶ月くらい経つのか
    そろそろ次スレに行く頃かね

  • 978二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 02:34:23

    これ堀木くんは最終的に姫氏原ちゃんのスタンドになりそうだな…できれば2人で生きて帰ってほしいけど…

  • 979二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 07:40:20

    己でした
    この目裏も姫氏原が無意識に生み出した霊なんだろうか

  • 980二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 07:44:07

    目裏ちゃんが西日本最強のいじめっ子っていうので思い出したんだけど
    あにまん学園の所在地って明確にされてたっけ

  • 981二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 08:47:28

    次回作の妄想、昨日は魔法少女だったけど異世界デスゲームになった場合どんな展開になるのか予想もつかないんだよね

  • 982二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 18:05:22

    保守

  • 983二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 23:15:02

    ほしゅ♡

  • 984◆xaazwm17IRZa23/06/09(金) 01:03:12

    明日朝早いので本日投下できません、申し訳ありません……!

  • 985二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 01:11:39

    明白了 報連相謝謝

  • 986二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 08:30:20

    保守
    次スレの準備の方もよろしく頼みます

  • 987二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 18:25:06

  • 988◆xaazwm17IRZa23/06/09(金) 21:21:24

    https://bbs.animanch.com/board/2018069/


    次スレ立てました……!

  • 989二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:29:22

    たておつ梅

  • 990二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:30:30

    梅、生死好きかい?

  • 991二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:33:52

    うめ

  • 992二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:54:56

    うめたて

  • 993二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:55:37

    women

  • 994二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 06:21:22

    1000を目指して

  • 995二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 06:36:01

    埋め裏雨子

  • 996二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 07:15:26

    裏梅

  • 997二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 13:13:16

    埋め

  • 998二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:03:29

  • 999二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:33:54

    うめっ!

  • 1000二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:34:34

    1000なら超ハッピーエンド

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