- 1ピナ23/04/29(土) 19:42:19
- 2ピナ23/04/29(土) 19:43:56
だというのに……
「見ていて下さいピナ。今の私なら、なんだってできる気がするのです」
あの人はそう言って戦場に向かっていった。
私達の希望、勝利の女神。
犠牲者の出たゴッデス部隊を今もなおまとめ上げている隊長。桃色の天使、ドロシー様。
瓦礫の隙間から私はその戦いを見守っていた。
彼女は類稀なる能力でラプチャー殲滅していく。
彼女が烙印を刻むたび敵は悲鳴を上げ、光が降り注ぐ度に鉄屑となり散っていく。
それはまるで天使の裁きだった。
幾度ラプチャーが押し寄せようとも、その観察眼で戦況を見渡し、強い個体を見つけだし、敵の陣に穴を開けていく。
数万を超える個体だった敵軍が、百単位で削られていく。数十秒で、微塵の隙もなく、次々と。
熾烈な戦いだった。
大海の荒波を銃一本で穿つ程の大偉業だった。
彼女こそが勝利の女神だった。
どこまでも飛べる翼を持った最強のゴッデス。
正面から来る敵全てを撃滅する勢いで彼女は戦いに挑んでいる。
彼女が勝利を収めるのは時間の問題だった。 - 3ピナ23/04/29(土) 19:44:59
「だから、側面の敵は私が倒さなきゃですね」
彼女が誇り高き戦いをしている最中、ラプチャー達は姑息にも側面からの攻撃を仕掛けようとしていた。
彼女に守られ、隠れて戦況を俯瞰していた私だから見ることができた光景だろう。
流石に、二方向からの襲撃を受ければ迎撃の手が回らないことぐらいは私でも分かる。
だから立ち上がった。
瓦礫の影から出て、土を擦る音を立てて、跳ねるように駆け出した。
銃をしっかりと握りしめる。
量産型の自分ができることなんて多くはない。
敵を惹きつけること、銃弾を撒くこと、殿を務めること。
そんな当たり前のことを、散っていった仲間達がやってきた当たり前のことを、彼女達と同じく誇りをもって行うのだ。
400メートル走った所で私は岩陰に隠れた。
ここならばドロシー様の戦闘の邪魔にならなず、問題なく敵へ銃弾が届く位置だった。
基地を中心として、ドロシー様が今戦っている場所を12時とした時に10時の位置となる方向だ。
敵を側面から斜めに覗ける場所。戦闘マニュアル阻止戦での位置取りだ。
勇気をもらうために一瞬だけ振り返る。
90度曲がった視界の先の、その真ん中、砂埃が舞う景色の中に彼女はいた。
澱みなく、迷いなく、敵を殲滅し続ける彼女は、笑ってさえいるように見えた。
できることなら、彼女との約束を守りたいと思う。 - 4ピナ23/04/29(土) 19:46:54
『一緒にアークに行きましょう』
これ以上ない程の鼓舞だった。
仲間達と抱く最高の誇りに、更に強い感情が上乗せされて最強だった。
今ならば私もゴッデスになれるかもしれない。
「なんて」
顔を覗かせて敵の数を確認する。
敵の数はそう多くはない。距離はおよそ400メートル。
おおよそ60体。小型のものばかりだ。
1体1体削っていけば、問題なく殲滅できる。
当たり前のことを、当たり前のように。
ただ1人の兵士として、銃弾が続く限り、敵を殲滅する。
「エンカウンター!」
- 5ピナ23/04/29(土) 19:48:24
叫びと同時に岩陰から身を乗り出した。
同時にアサルトライフルを構える。敵を視界に定め。照準を合わせるより先に引き金を引く。
まず狙ったのは先頭を走る個体。
数発を地面に叩き込みながら、ラプチャーを追うよに照準を合わせ弾丸を当てていく。
高威力のアサルトライフルであれば、平均4発で敵を撃退できる。
この阻止戦に向いた武器だ。
限界を超える損傷を受けたラプチャーが小さな爆発を起こして消えていく。
その末路を見届けるよりも早く、引き金から手を離し、後ろを走っていたラプチャーへと銃を向ける。
数秒指を離して、照準が合う少し前に引き金を押す。
速度が命となる阻止戦では早く弾丸をばら撒くことが重要だ。精密に狙って撃つよりも弾は無駄になるが、時間を無駄にするより遥かに効率がいい。
1体、また1体と敵を殲滅し、リロードを挟んでは1体、また1体と倒していく。
すると遮蔽物の岩が悲鳴を上げた。
正確には岩が射撃を受けて損傷した音が鳴ったのだ。
ラプチャー達も自分達の軍を3割削った敵……私に気づいたようだった。
辺りを見渡すが他に遮蔽物はない。この岩が壊されたが最後、私は蜂の巣にされる。
……その前に倒し切らなくては。 - 6ピナ23/04/29(土) 19:49:44
危機的状況で私の脳が冴えていく。
より無駄なく、より正確に敵を撃ち倒していく。一つ一つの動きにキレを、機械の体なのだから、機械の如く正確に動かせるはずだ。
しかし、相手の射撃を受けてる度に岩の損傷はより酷くなっていった。
相手は残り25体。相手の攻撃頻度を鑑みるとギリギリで殲滅速度よりも岩が壊れる方が早い。
ならば。
リロード中に身を乗り出す。
そして4体のラプチャーがこちらに照準を向けた時、再び岩陰に隠れる。
頭上を弾丸が通っていく。
自分を囮として岩を守ることに成功する。
もう一度身を乗り出して、その4体を撃破する。
残った弾丸で更に走ってくる敵へ弾丸を撒く。
反撃とばかりに数体のラプチャーがミサイルを放ってくるが、岩陰には隠れない。
そのままミサイルを発射したラプチャーへ弾丸を叩き込む。
敵が爆発するのと、私にミサイルが直撃するのは同時だった。
赤い閃光と爆発が体を多く。焦げ臭い臭いと衝撃が風と共に襲いくる。風圧で足がとられそうになり、胸部装甲の一部が吹き飛んでいく。
それでもニケの頑丈な体は、敵の攻撃を受け切った。
岩を壊されて詰むよりも先に、自分の体力を差し出す。
それがこの阻止戦を全うするための私が選んだ戦術だった。
当たり前のことを、当たり前のように。
敵の攻撃を引き受けるのも量産型の役割の一つなのだから。
半分だけ捨て身となった作戦で、敵の数を多く減らすことに成功した。
残る敵は8体。後は岩陰に隠れながらでも勝てる。
そう確信した時…… - 7ピナ23/04/29(土) 19:50:19
爆音がラプチャー達の元で鳴り響いた。
砂埃が待って、地面を震撼させる。
援護射撃……ではない。
アークからに返答はずっと来ていない。
爆発ならばラプンツェル様の攻撃というのもあり得るが……彼女は今、スノーホワイト様と紅蓮様と一緒に補給路の捜索に向かっている。ここにいるのはあり得ない。
砂埃が晴れる。
そこにいたのは指揮官級の個体。小型を支配するロード級ラプチャーであった。 - 8スレ主23/04/29(土) 19:51:39
とここまで書いた所でアイデアというか乗りが消えました。
そんなSSを供養するためにスレ立てしました。
本来は本編ifルートを書きたくて、その前段階として戦闘シーンを書いてみたのですが、筆が乗りすぎてそのまま集中が切れました。愚か。 - 9スレ主23/04/29(土) 19:52:41
この後の展開としては、
・ロード級ラプチャーを激闘の果てに倒すピナ
・本来の歴史ではこの後、侵食されてドロシーに撃たれるが、ifルートではドロシーはピナを見捨てられずに彼女を連れ出して、しまうが。その結果、ピナからの発信で侵食個体が呼び出されてしまいドロシーも侵食されてしまう。
・そして紅蓮やスノーホワイト、ラプンツェル達とそれぞれの思い出を振り返りながら、ドロシーは彼女らを抹殺し、アークへと足を踏み入れる。
・ピナはその間ずっと侵食に抗っている。
・そしてアークへ。入り口に存在する兵達を全員皆殺しにしたあとで
「さぁ、一緒に帰りましょう。私達は勝利の女神として凱旋するのです」
といって手を差し伸べるドロシー。それをピナは撃ち殺す。
だめです。
ドロシー様、我々はニケ。人類を守るための存在です。
当たり前のことを、当たり前のように。
そういって、彼女も自決する。
という感じになります。ちゃんと書けたら面白そうな気がしますが燃え尽きました。すいません。
あとは雑談にでも使っていただけたら幸いです。
オーバーゾーンこれからどうなるのかとか、ドロシーの性能とか色々話してください。 - 10スレ主23/04/29(土) 19:54:18
あとドロシー戦闘シーンはスキルを元に書きましたけど、あれ、エデンの施設使った攻撃とかだったりします?
スレ主、17-1までしか進んでいないので、教えていただけると助かります。
何か違いがあれば、セリフを本編準拠のものに直す時に一緒に直しますね。 - 11スレ主23/04/29(土) 19:56:51
見てくださった方、もしいたらありがとうございます。とりま離席して、後で様子見に来ます。
- 12二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:37:44
ニケスレとは珍しい
いや本当に珍しい
ありがたや - 13二次元好きの匿名さん23/04/29(土) 21:39:56
ニケss初めて見たわね。また気が向いたら書いてね!見にいくよ
- 14スレ主23/04/30(日) 08:15:11
様子を見にきました。見てくれた方いてくれてめちゃくちゃ嬉しい。
もう少しだけ頑張ってみます。