その記事を見た時、最初に浮かんだ感情は憤慨だった

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:36:29

     レースを引退したウマ娘が現役時代を語るロングインタビュー、どこにでもあるそれ。私は表紙を見て目を疑った。
     いつも買っているわけではない。最近私の推しているウマ娘の特集が雑誌に掲載されたとSNSで告知していたから、期待して買いに来たのだ。
     けれど、その表紙を見た瞬間から私の感情は怒りと憎しみに塗り替えられた。「かつての時代を語る」と煽り文のつけられたそこにはなんの翳りもないと言いたげなウマ娘がセンターに陣取っている。
     テイエムオペラオー。
     もう今から10年近く前だろうか、あの頃彼女の名前を知らない者は誰1人としていなかった。それこそ、レースを見ない者ですら知っていただろう。
     私はこのウマ娘が大嫌いだった。視界になんて入れたくなかった。それでも、推している子のインタビューを見たい一心で我慢してそれをレジに持って行った。表紙は裏返しにしたまま。

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:36:56

     派手な勝ち方をするわけじゃない。
     特別華があるわけじゃない。
     ビジュアルが抜きん出てるわけじゃない。
     一番ではない要素をあげれば山ほど出てくるけれど、彼女はいつだってレースで一番だった。
     比喩表現ではない。彼女は本格化したその年、出たレース8戦全てを制覇した。前人未到のグランドスラムを成し遂げた。
     けれど、勝者がいるということは敗者もいるということ。彼女が出たレースでは誰も勝つことができなかった。当たり前の話だ、レースは1番以外が全て敗者なのだから。
     私はその頃レースにハマりたてだった。とても綺麗なウマ娘の走りに見惚れた。美しい金髪のボブヘアー、笑顔が素敵で、どんな時も一生懸命なそのウマ娘が勝つところが見たかった。
     菊花賞を制覇した彼女の翌年が楽しみだった。きっとこれから沢山のG1を勝って、歴史に名前を残すことはなくとも人々に記憶されていくウマ娘になるのだろうと思って応援していた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:37:47

     その子はいつだって懸命に走った。応援してくれてる人に笑顔で応えた。それでも、あの女がいたレースで1着になることは翌年以降、一度も叶わなかった。
     それがテイエムオペラオー、あの年に活躍した全てのウマ娘から勝利を奪った女。
     あいつが引退したあの日にやっと、純粋にウマ娘のレースを応援出来る私が帰ってきた。それまではずっと早く一番を譲らないあの女が消えてくれますようにと祈ることしかできなかったから。
     1人しかいない家に帰って電気をつける。袋に入ったままの雑誌を開ける気にもなれずに冷蔵庫から水を取り出して食道から胃までを冷やした。内側が冷えると、自分の心の熱が体まで侵食していることがわかる。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:38:18

     携帯を取り出してSNSを開く。雑誌をタグで検索して、すぐにアプリを落とした。どいつもこいつも今頑張っている私の推しのことなんて呟かないでテイエムオペラオーのことばかり呟いている。
     ああ、嫌いだ、嫌いだ。あのオレンジ色の頭をした、王者然としたあの女が嫌いだ。当時の悔しさが、怒りが、悲しみがよみがえって心の中をぐるぐると回る。
     あの子が勝つところが見たかった。
     いつも一番にいて当然という顔をしたあの女に勝つところが見たかった。
     行き場のない感情が出口を求める。過呼吸になりそうな体を押さえつけて深呼吸をした。それを繰り返していると、やっと体がいつも通りを取り戻す。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:38:48

     袋から雑誌を取り出す。冷静になった頭には、かのテイエムオペラオーはただの女性に見えた。……そう、彼女の外見は正直地味だったのだ、あの頃から。
     勝負服の派手な色遣いや王冠、マントなどに気を取られて煌びやかに見えるがそれら全てを取ると至って普通のウマ娘にしか見えなかった。成熟した女性の雰囲気を感じるようになっても、それは変わらないようだった。
     こんな心で推しの特集を見ることは出来ない。私はもう一度深く深く息を吐いてから、特集をされているオペラオーのロングインタビューを開いた。
     インタビュー内容はいたって当たり前のことばかりだった。現役時代で苦労したこと、一番を取り続けることの代償、ライバルたちからの強すぎるマーク、世界に挑戦しなかった理由。
     ネットで散々書き散らされた憶測に丁寧なNOを突きつける不遜なインタビューは彼女らしくもあった。どこまで行ってもこの女は変わらないのだ、これがテイエムオペラオーなのだから。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:38:58

    だが。

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:39:19

    「現役時代になにかこれは辛かった、ということはありますか?」
    「今だからこそ言えるけど……どんなに1人で戦う覚悟ができていてもやはり他のウマ娘たちとの会話が減っていったのは辛かったね。でもアヤベさん…ああ、アドマイヤベガさんのことだよ! 彼女やナリタトップロードさん、彼女たちはそんなボクに気遣ってくれてね。ははっ、こんなことを言うのもなんだけど、そういう心の支えがあったから自分の走りができたんだ。あ、彼女たちには内緒だよ」

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:39:45

     その文を読んで、雑誌を投げ捨てた。

    「テイエムオペラオーはそんなこと言わない」

     心の中には憎悪よりも困惑の方が強く出ていた。テイエムオペラオーが、あの女が、年間無敗のウマ娘が、誰かに支えられていた? 辛いことがあった? そんなことがあるものか。
     これを書いた記者はふざけているのか。あの女の二つ名を聞いたことがないのか。世紀末覇王がそんな弱音を吐くわけがない。
     テイエムオペラオーはいつだって一着を取っていた。
     誰よりも強くて、妬ましくて、勝てそうで、それでも届かない。みんなの努力を嘲笑うような強さを持っていて誰も追いつけない、そういう奴なのだ。
     テイエムオペラオーは弱さなんて抱えない。
     テイエムオペラオーは友達なんていない。
     テイエムオペラオーは、彼女は、あの女は、あのウマ娘は……!

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:40:14

     私はそこまで考えて今日はもう眠ることを選んだ。大好きな推しのことはもう考えられなくなっていた。
     思い出したのはあの頃抱いた憎悪に混じった羨望の感情。それが今……脳裏に焼き付いて離れない。

  • 10123/05/01(月) 02:41:18

    以上です。
    オペラオーに脳を焼かれて推しの敵だから大嫌いなはずなのに勝ち続ける彼女を神聖視してしまった一般人モブとかいるだろうなあと思ったら書き殴ってしまった

  • 11123/05/01(月) 02:42:17

    推しの子の「誰より強い君以外認めない!」のモブみたいな奴、絶対いたろ…って思ってしまったらいつのまにか書いてた

  • 12123/05/01(月) 02:44:02

    個人的なトレーナーの意見としてはオペは絶対曇る顔を人には見せないし誰にもわからないようにすると思うのよ
    だからアンチもファンも強くて凄い世紀末覇王のオペラオーしか知らなくて拗らせていくんだ…

  • 13123/05/01(月) 02:45:03

    書きたいもん書いたから寝るぜ!おやすみ!

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:45:59

    反転信.者…

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:50:59

    覇王の輝きにマジで脳をやられちゃったやつ…
    うまく言えないけど好みのSSだ、ありがとう

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:51:06

    好き〜涼しい顔して当然のように勝つふてぶてしい奴が人並みに悩んだり辛い思いをしてたなんて知りたくもないし見たくもないし認めたくないよな…
    負けた相手が金髪ボブの推しの子じゃなかったことにも当時キレてそうで好き

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:51:38

    賛否あるかも知らんがオレは好きだぜ

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:57:29

    憎たらしいほど強い奴だったんだから最後までそうあって欲しいよな…身勝手だけど

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 02:57:30

    トプロの方が人気なんだからどいつもこいつもオペの話してる訳ないんだよ
    この人がオペの事気になりすぎて滅茶苦茶目についたからそう感じたんだろうな

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 06:44:51

    >>19

    実際話題の中心はオペドトだったろうからなあ

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 07:04:20

    読んでて推しの子の歌詞思い浮かんだわ
    敵の立場だからこそ焼かれてしまうの悲しいね…

  • 22二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 09:56:38

    育成してると自らを覇王と鼓舞して何とか立ち向かおうとしてる弱い姿がも見れるけど外部からしたらこう見えるよなぁ

  • 23二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 10:01:45

    このぐちゃぐちゃした感情の感じ好き……それはそうと文章が上手くてセンター試験かと思った

  • 24二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 10:40:23

    推しを負かしたお前は至高で最強の無敵じゃないと許せないってのはエゴだとわかってても思っちゃうよな‥

  • 25二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 10:46:27

    推しを負かした存在が弱かったら、推しはそれよりも弱いってことになってしまうからな
    推しが強いと思ってるからこそ生まれるジレンマだな…

  • 26二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 12:21:47

    いいSSだ…

  • 27二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 12:49:03

    拗らせた情念の書き方が上手いね
    生々しいよ

  • 28二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 19:33:01

    「推しの勝利を奪い、推しを応援する私の気持ちを粉々にした奴の心に柔らかい部分が存在するなんて認めない」って、割とある心理よなぁ…
    「この王者ポジションのキャラは人間的な弱さを持ってる」とでっちあげるのは侮辱でしかないが、王者本人が弱みを吐露したら話は違ってくる

    オペは気付かれにくいけど本人の育成の所々で不安をさり気なく呈したりするんだよな(シニア有馬前の投票とか)
    キャラスト7話でもトレーナーに未来の話をそっと持ち掛けたりする(その直後はぐらかすように笑うが)

  • 29二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:21:24

    >>28

    ジャンポケ来たし今後アプリでオペラオーの落日(本格化の終わり)が描かれるんだろうけど周りのオペ推しがオペが覇王の仮面を外すのは絶対許さないマンばかりだから怖い

    二人三脚やってきたトレーナーだからこそオペラオーがもしそういう一面を見せたら受け止めてやるべきじゃないの…?って遠目から眺めている

  • 30二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:26:24

    実際当時オペ以外が推しだったっぽい人がTwitterでrtttのオペラオー性格良すぎてムカつくみたいな呪詛吐いてるの観てしまったのでめちゃくちゃリアル

  • 31123/05/01(月) 20:32:33

    まさかスレ落ちてないとは思ってなかった。調子乗ってオペの覇王時代に本格化がきて心折れてしまったモブウマ娘(争いを招かないよう元ネタなし)とか書いても良い?

  • 32二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:33:23

    実際G1ウマ娘はファンにこういう感情向けられること多々あるんだろうな
    全然関係ないけど10年後のオペラオー見てみたい

  • 33二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:34:16

    >>31

    書いてくださいッ

  • 34二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:34:56

    逆に負けた馬のファンは神聖視しちゃうことってあるよね
    絶対強者は絶対強者であってほしいみたいな

  • 35二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:35:26

    >>31

    是非お願いします。

  • 36二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:35:29

    誰も到達したことがない(或いは到達を果たした経験者が少ない)故にそこに至るまでの苦悩や孤独は理解され難いんだろうな

  • 37123/05/01(月) 20:41:11

    やったぜ、飯食ったら書いてくるね
    私はオペラオーのことは好きでストーリーは読んでるけどオペラオーのことを理解できてないダメトレーナーなのでオペラオー視点の話は書けないけどオペラオーを拗らせてるモブのことは書けるんだ

  • 38二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 20:44:50

    あの世界にだってこんなファンも、ウマ娘もいるんだろうなぁって深みがあって好きです

  • 39123/05/01(月) 21:34:11

     あの時の私の顔は、きっと引きつっていただろう。
     重苦しいため息を付いた。憂鬱すぎて胃の痛みすら感じる。会社勤務に疲れた足はそれ以上にカバンの重さのせいで潰れそうだった。
     ウマ娘が足がどうの、といったら洒落にならないのでこの冗談は胸の内にしまっておくけれど。
     家に着くと愛猫が出迎えてくれる。同棲している彼氏は今日夜勤なので帰ってこない。重くて仕方のなかったカバンをぞんざいに放り投げて化粧を落とす。そのまま予約機能で帰宅時間にお湯張りをするよう設定していた湯船にダイブする。
     風呂に入って、足のケアをして、だいたい帰宅をしてから二時間くらい。私の視界には常にあのカバンが視界に入っていた。
     必死に意識の外へと追いやろうとしても、結局意味はなかったようだ。私の手はカバンの中に放り込まれている雑誌を掴んだ。

  • 40123/05/01(月) 21:34:25

     「かつての時代を語る」と煽り文の書かれた雑誌の表紙にはオレンジ色の髪をした一人のウマ娘が堂々とこちらを見据えていた。
     私がちょうど本格化をした年に最も活躍したウマ娘だ。レースの世界で彼女のことを知らない者はいないだろう。私も彼女と同じ戦場で戦っていたウマ娘で……と言いたいところだが、ようやくオープンを勝ち上がったところで伸び悩んでいた私と彼女では、天と地ほどの差があった。
     この雑誌は、そんなことを知らない後輩がくれた。私のことを慕ってくれている彼女は私が昔レースに出ていたことを知ると、この雑誌を持ってきて「かつてを語る」という煽りから私のことも話してくれるのでは、と期待していたようだった。
     オープンと重賞の違いもわからない彼女の期待の目が痛かった。上司はレースに理解のある人だったから、一緒に雑誌を読まないようにそっと助言をしてくれた。
     代わりにこれを持ち帰ることになってしまったけれど。

  • 41123/05/01(月) 21:34:47

     別に読む必要はない。適当に明日後輩に話を合わせればいいだけだ。それでもあの頃の青い思い出が、ページを捲らせた。
     表紙の女性はテイエムオペラオー。本格化したその年に挑んだGⅠ戦を含む重賞を八連勝し、年間無敗のグランドスラムを成し遂げた超人。彼女のことを「ただ運が良かっただけ」と馬鹿にする人もいるけれど、そんな人はレース観戦自体をやめたほうが良い、センスがない。
     前述したとおり私は彼女と同じ土俵にすら立てていない。勝負服を着たことも無いし、GⅠはおろかGⅢで勝てたこともない。
     それでも断言できる、私は彼女に心を折られたのだ。
     レースとはそもそも、一番になれば勝てる競技だ。何を言っているのかと思う人も居るけれど、彼女の戦い方はずっと『そう』だった。
     最後に顔さえ出せば勝てる、足に負担をかけるような驚異的な末脚を繰り出さなくても、バ身リードを広げていなくても、最後にちょっとだけ顔がゴール版を先に横切った者が勝者だ。
     ルールとしてみんな知っているけれど、それを戦略に組み込めるウマ娘は限られている。

  • 42123/05/01(月) 21:35:42

     何故ならみんな勝つだけで精一杯だからだ。
     とにかく離さないと不安で仕方がない。
     残している脚がそれで十分かもわからない。
     ほかの子のペースは? 残っている体力は?
     この場所から追い込むことが本当に出来るの?
     中距離、長距離ともなればその焦りは疲労を伴って加速する。最後の直線、まともな思考を保っていられる子の方が少ない。
     そして、それが出来る者たちだけがGⅠという栄光の舞台に挑むことが出来る。
     GⅠに出走出来るだけですごいのだ。全体のわずか1%にも満たない上澄みたち。レースを走るすべてのウマ娘たちにとっての憧れ。
     彼女は……テイエムオペラオーは憧れにすらならなかった。

  • 43123/05/01(月) 21:36:20

     初めて彼女の戦いを見たのは春の天皇賞。驚異の3200mを走る体力勝負のそこで、彼女は完ぺきに勝って見せた。
     3200m、想像のつかない長距離のラストスパート。ほかのウマ娘も末脚を使う中、一人スーッと上がっていった彼女のことを今も覚えている。
     彼女に挑んでいくすべてのウマ娘にドラマがあって、努力をした経過があって、そしてこのレースに望んでいる。たった三分程度の時間に、人生のすべてを賭ける子もいる。
     それでも彼女はそのすべてのドラマを序曲へと変えてしまった。
     朗らかな表情と美しい所作からは考えられない強い走り。私はとっさに「ああなりたい」ではなく「こうはなれない」と直感した。まだオープンを勝ったばかりで、これからどんな重賞に挑んでいくか話し合っていた時の話だった。
     私が引退を決めたのは、そのすぐ後のことだった。

  • 44123/05/01(月) 21:36:52

    とりあえずできたところまで
    時間軸は最初のSSとそろえてます

  • 45123/05/01(月) 21:38:02

    最初のSSはスマホで打ったんだけど、スマホだとすぐに結論ありきで書けるけどPCで書くとどうしてもねちっこくなってしまう。ちょっと長くなるね、ごめん

  • 46二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 21:40:19

    >>34

    そう思うとオペの散り方は理想形かもなあ

    負けはしたけど極端に沈んだとかはなく、衰えを感じさせながらも最後まで掲示板内は死守したっていう

  • 47二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 21:41:07

    欲望のままに書いてるの好き
    実際当時の論争まで含めてリアルでもそういう人もいただろうな

  • 48二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 21:52:36

    >>19

    よくこの手の話でトプロは大人気だったしオペは不人気だったってので勘違いされがちだけどこれは

    (実績に対して異常に)トプロは大人気だったし

    (偉業に対して異常に)オペラオーは不人気だったってだけで

    グランプリの投票結果とかは普通にオペラオーだし当時の競馬メディアでの中心もオペラオーではあったよ


    トプロが凄かったのは02年で有馬記念人気投票で1位になったこと

  • 49123/05/01(月) 21:52:42

     あのあと私は田舎へと戻って実家の農業を手伝っていたが、就職を機に再び上京した。その間も、テイエムオペラオーのレースは全て見ている。
     強いのだ、別次元ともいえるほどに。嫉妬すら起きないほど、ただ畏怖の念を抱く。彼女の自称する世紀末覇王に相応しい貫禄だった。
     最盛期ほどではないがその翌年も二位や四位、若い世代の強襲を受けた引退レースも五位を死守し、レース生涯で一度も掲示板を外れることのなかった最強のウマ娘。
     そんな彼女が十年経った今、いったい何を語るというのだろうか。私の心臓は限界値を超えて振動していた。
     かつて噂された同期との不仲説をここにきて肯定するのか、有馬記念当日左目を負傷していたのは第三者からの嫌がらせというのは本当なのか、指が手汗で湿って雑誌をめくる手が止まりそうになる。
     私は大きく深呼吸して、そのページを開いた。

  • 50二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 21:55:21

    >>48

    顕彰馬に1回落選したこととそれに対して抗議の声が多く上がったことの両方が

    なんかオペラオーという存在を表している気がする

  • 51123/05/01(月) 22:04:25

    「お休みの日は何をされているんですか?」
    「休みの日かい? 鏡に映る美しいボク! と会話をしながらその日のランチを決めて友人と出かけたりしているよ。最近はライスシャワーさんがオペラに興味を持ってくれたりしたんだ」

    「お好きな食べ物は?」
    「餅が好きだよ。あ、でも最近はドトウがチョコレートにハマっていてね。おすそ分けを貰っているんだが、これが中々美味しいんだ! 彼女の審美眼は流石だよね!」

  • 52123/05/01(月) 22:04:53

     私は、そのページを開いて呆然としていた。
     まるで普通の人に尋ねるような、そんな質問と回答ばかり。本当にこれはテイエムオペラオーへのインタビューなのか。
     彼女はたしかに現役時代、プライベートに関わる取材を受けることはなかった。いつだってレースに関わる質問にしか答えなかった。
     だから、インタビュアーがこうして当たり前なプライベートを聞くことは当然ともいえた。だって誰も知らなかったのだから。テイエムオペラオーにきちんと話せる友人がいたことも、人を褒める素直な心があったことも。
     だってレース場にいる彼女は、いつだって『王』だったから。
     笑顔を振りまいても愛想を振りまくわけではない、覇王だったのだから。

    「テイエムオペラオーって、ウマ娘だったんだ」

     私の口は、意味の分からない言葉を紡いでいた。
     けれどこれが本心だ。きっと、かつてテイエムオペラオーを愛していた人たちも同じことを想っているに違いない。
     彼女は最強で、孤高で、人から嫌われてもそんなの意にも介さないメンタルを持っている別格の存在だと思っていたから。
     同じ世界にいる生き物だなんて、思っていなかったから。

  • 53123/05/01(月) 22:05:09

     私は足元にすり寄ってくる愛猫を撫であげた。
     あの日、彼女がただのウマ娘であることに気付いていたならば。私はもっとレースを走る選択ができていたのだろうかと。
     戻りもしない時間に唸り声をあげて、床に寝転がった。

  • 54123/05/01(月) 22:07:08

    以上です。
    同じウマ娘だと思わなかったから「こんなバケモンに勝てるわけないやろ」と勝手に諦めることが出来ていたのに、その人がただ努力を重ねた選手だったと知って、自分のした無駄な決断に気付いてしまうモブウマ娘

  • 55二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:12:02

    傑作SSを2つもありがとう


    >テイエムオペラオーって、ウマ娘だったんだ

    まあこれは多くの人の偽らざる思いだろうなあ…


    ライスが興味持ってくれたオペラ、この辺かな

    ヘンゼルとグレーテル (オペラ) - Wikipediaja.wikipedia.org
  • 56二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:26:10

    >>46

    クロノジェネシスとかもそんな感じだったね

  • 57二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:47:45

    最高

  • 58123/05/01(月) 22:50:28

    わーい感想嬉しい!ありがとう!
    いろんな人の視点から見たオペが好きなんだ

  • 59123/05/01(月) 22:52:39

    じゃあスパコミの無配書く作業に戻るね!

  • 60二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 22:55:12

    わかる
    オペの話はオペ本人視点より周りの人物視点の方が自分も好きや…
    内面描写すな!とは言わないし、ある程度は欲しいけど、やっぱ出オチキャラっぽいのにちょっとミステリアスな部分魅力のひとつだからね…

  • 61二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 23:17:10

    面白かった
    嫉妬と羨望と憎悪に身を焦がすのはそれがフィクションならいくらでも読みたい
    絶対的な才能の差をわかってしまう程度には自分にも能力があるからこそ苦しむの良いよね
    映画アマデウスみたいな話大好き

    オペ推しだけどウマ娘でも落日描いてほしいけどなあ
    一番好きなの01ジャパンカップなんだ
    負けてなお強しなオペも、ジャンポケもめちゃくちゃ格好いい

  • 62二次元好きの匿名さん23/05/01(月) 23:18:42

    良いSS
    舞台の上のオペラオーしか知らないファンやウマ娘目線のSSでしか接種できない栄養がある

    実馬のことはあまり詳しくないが、G1を7勝して実力のあるウマ娘を
    「尊大でナルシスト」という、ファン目線ではカリスマ性と言えるが
    嫌いな人はとことん嫌うであろうキャラ付けにしたの、正直凄いと思う

オススメ

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