- 1二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:09:50
「ゼファっちさ、せっかくギャルベなんだしこういうの挑戦してみね?」
ゴールデン、いやギャルウィークの序盤。
ヤマニンゼファーとダイタクヘリオスは、ともに洋服を見て回っていた。
二人の服の趣味は対照的ではあるが、お互いに他人のセンスを否定するタイプではない。
ではないが、ゼファーは見せられた服を見て、目を丸くしていた。
「……えっと、少し私には色風が過ぎると思いますが」
「ええー! このくらい普通っしょ! ゼファっち素材がレベチだからめっちゃ映えっと思うけどなー!」
「そう、でしょうか」
「試着だけならタダだし☆ うぇいうぇい挑戦Fuuー!」
「あっ……ふふっ、ここまで追風を受けては仕方ないですね」
ゼファーは苦笑しつつ、しかし満更でもないように答えた。
そして勧められた服を持って試着室に入り、衣擦れの音を立てながら数分間。
待っていたヘリオスの前に現れたのは、少し顔を染めて俯いた表情のゼファー。
彼女の服装は普段通りのまま、すなわち渡した服に着替えてはいなかった。
不思議そうに首を傾げながら、ヘリオスは彼女に声をかける。
「あり? ゼファっちどうしたん? もしかしてサイズ合ってなかった系?」
「いっ、いえ風向きも良く、流れに乗ることは出来ていたのですが」
「うんうん」
「その、やはり私にはあからしま過ぎるといいますか、申し訳ありません……」 - 2二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:10:07
せっかく異風を届けてくださったのに、とゼファーは頭を下げた。
そんな彼女に対して、ヘリオスは太陽のような笑顔を浮かべる。
「りょ! じゃさじゃさ! 次はゼファっちがウチのコーデよろ☆」
「……いいんですか?」
「おけまるおけまる~! 皆それぞれテンアゲな服テンサゲな服あるっしょ?」
「ふふっ、ありがとうございます。私もヘリオスさんの風待ちに答えられるよう頑張りますね?」
「よろー! …………んー、でもやっぱちょい惜しい的な?」
「惜しい、ですか?」
「これ着たゼファっち絶対きゃわたんだし? 初見だいしてる間違いないじゃん?」
「……そこまで、ですか?」
「もち! きっとゼファっちのトレぴもアゲアゲおけまるハッピッピっしょ!」
「トレーナさん、も」
その言葉に、ゼファーはぴくりと反応する。
そして、彼女は一つの決心をしたのであった。 - 3二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:10:29
お昼過ぎ、トレーナー室にて。
ヤマニンゼファーの担当トレーナーは、しきりに時計を確認していた。
この日は13時からゼファーとお出かけをする予定で、トレーナー室で待ち合わせである。
しかし、彼女の場合そもそも『待ち合わせ』というのが珍しい。
風のように生きることを望む彼女は、あまり先の予定を立てることを好まない。
重要な予定や、彼女が強く惹かれる事柄以外は、突然誘われることが殆ど。
故に、今回のケースは珍しかった。
特に特定の予定もなく、ゼファー自身が誘い、時間と待ち合わせ場所を指定したからである。
「……でももう3分前なんだよなあ」
時計を見ながら、トレーナーは一人呟いた。
いざ待ち合わせとなれば遅くとも15分前にゼファーは到着していることが殆ど。
けれど今回は時間ギリギリまで来ておらず、トレーナーの胸の内に不安が湧き出て来る。
彼女はスマホを持ち歩かないため連絡も難しい。
時間が過ぎたら探しに行こうかな――――そう彼が思った矢先。
こんこんと、控えめなノックの音が鳴り響いた。
トレーナーが返事をすると、申し訳なさそうな様子で、ゼファーは入室する。
「すいませんトレーナーさん、遅くなってしまいました」
「ああ、ゼファーか時間には間に合ってるから気にしなくて――――」
微笑んでフォローを口にしたトレーナーの動きが固まる。
現れたゼファーが、全身を隠すように前を留めたロングコートで身を包んでいたからだ。
彼女は風をその身に受けるために、どちらかといえば薄着を好む。
そして今は少し気温も上がり、上着ならともかくロングコートは流石に暑いはず。
実際、彼女も若干汗ばんだ様子であった。 - 4二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:10:47
「えっと、ゼファー? その格好暑くない?」
「あの、これには少し、理由がありまして」
「理由?」
「はい、以前ヘリオスさんとお洋服を見に行ったのですが」
「……ああ、そんなことを話していたね」
ゼファーの言動に若干の違和感を覚えながら、トレーナーは答える。
そういう予定がある、という話は彼も覚えていた。
ヘリオスとは共にレースで競い合った仲でもあり、ノリは違えど親しいのは知っている。
しかし、この彼女らしくない重装備と何が関係あるのかは、まだわからなかった。
「そこでヘリオスさんにお洋服を勧められまして」
「うん」
「私には少し派手かと思いましたが、その、勇気を出して買ってみたんです」
「えっ、そうなんだ」
そのことにはトレーナーも流石に驚きを隠せなかった。
女性の服に詳しくない彼から見ても、ヘリオスとゼファーの服の好みは明らかに違う。
特に世間の流行りをあまり気にかけないゼファーが、ヘリオスの好みに合わせるのは予想外だった。
そして、彼女は少しもじもじと身じろぎしながら、ロングコートの前を掴みながら、小さく呟く。 - 5二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:11:17
「…………その服を、トレーナーさんに、一番に見て欲しくて」
あまりに可愛らしくて、いじらしい、ヤマニンゼファーの一言。
その一言で、今までの違和感が全て解消されて、トレーナーはにっこりと微笑んだ。
「ありがとうゼファー、俺も普段とは違う君の姿を見せて欲しいな」
「……! はい、で、でも、あまり期待しないでくださいね……?」
「ははっ、それはちょっと無理な相談かな?」
「……ふふっ、今日のトレーナーさんは悪風ですね? では風待ちしてお待ちください」
トレーナーの冗談で緊張が解けたのか、ゼファーは普段の調子を取り戻す。
そして、いそいそとロングコートのボタンを外して、それを脱いだ。
コートをソファーの上において、恥ずかしそうに顔を染めながら、くるりと一回転。
トレーナーを上目で見つめながら、ぽつりと、問いかけた。
「あの……どう……でしょうか?」
トップスはお腹が見えるほどの短い裾の半袖Tシャツ。
ボトムスはデニムのショートパンツ、腕にはちょっとしたアクセサリ。
少しだけ攻めた感じの、いわゆるギャルっぽいファッションのゼファーの姿があった。 - 6二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:11:40
トレーナーは――――耐えた。
正直、反射的に出かかった感想があった。
しかしそれは決して言ってはならぬ言葉であった。
ヤマニンゼファーの良きパートナーとして、トレセン学園の一トレーナーとして。
何よりも現代社会に生きる成人男性として、その言葉だけは言ってはいけなかった。
惜しみもなくさらけ出した太腿は、ほっそりとしつつもハリがあり健康的な美しさを感じさせる。
勝負服でも私服でもあまり出さない部分であり、宝石のような希少価値がそこにはあった。
そして、引き締まった腰のラインからはシミ一つないお腹とお臍。
この部分もまた、普段の彼女であればまず見せない部分であり、とても魅力的だった。
しかし、最大の注目点はどうしても、その上の部分になってしまう。
腹部が晒されているため、更に強調されることとなってしまったテンペストバストである。
見る者に畏れすら感じさせる神々の霊峰。
その曲線は神秘を思わせる珠玉、思わず崇め奉ってしまうそうな日輪。
人間という生き物は本能を越えた先に信仰を覚える――――それを改めて理解させる光景。
しかし、それをトレーナーは理解してはいけない。
否、していたとしても全力で目を逸らし続けなければいけない。
邪な感情を払い、真摯にウマ娘に向かい合い、共に夢を駆ける。
それこそが、トレセン学園に所属するトレーナーのあるべき姿なのだから。
「うん、新鮮で似合ってて、その、すごく、すごい……可愛いし、似合ってるよ」
「本当ですか……! ふふっ、まるで仇の風を乗り越えた甲斐がありました、ひより、ひよりです」
ぱぁっと、花が開くような笑みを浮かべるゼファー。
完全に語彙が死んでいる感想であったが、褒めてくれた嬉しさが、彼女にとっては勝っていた。
彼女は跳ねるような足取りでトレーナーの手を握ると、足早に外へと誘う。
「さあ、行きましょうトレーナーさん! 薫風が待っていますよ!」 - 7二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:11:59
珍しくはしゃいでいる様子のゼファーに苦笑しながら、トレーナーは足を進める。
トレーナー室を出て、戸締りをしていると近づいてくる気配があった。
小柄な体躯、前に一房流れる流星、ピンクのリボンにポニーテール。
明朗快活を全身で表現したような、ゼファーも良く知るウマ娘の姿。
「おっゼファーじゃん、今からお出かけ? ボクも明日行くんだ―!」
皇帝を越える帝王、ゼファー曰く青嵐――――トウカイテイオーは二人に声をかけた。
この時彼女は、トレーナーの奥に立っているゼファーの姿を完全に捉えてはいない。
「……! テイオーさん、あの、この服どうでしょうか?」
トレーナーに褒められたことで気を良くしたゼファーはその姿をテイオーにも見せびらかす。
単純に考えれば、とても微笑ましい光景。
しかし、そのアクションにトレーナーは冷や汗を流す。
そんな彼の様子に気づかないまま、テイオーは目を輝かせて、ゼファーの姿を見た。
「服? えなになに!? ゼファーもしかして新しい服!?」
トップスはお腹が見えるほどの短い裾の半袖Tシャツ。
ボトムスはデニムのショートパンツ、腕にはちょっとしたアクセサリ。
少しだけ攻めた感じの、いわゆるギャルっぽいファッションのゼファーの姿があった。 - 8二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:12:34
トウカイテイオーは――――耐えた。
正直、喉まで出かかった感想はあった。
けれどそれは決して口に出してはいけない感想だった。
ヤマニンゼファーの良き友人として、共に高い目標を乗り越えようとする同志として。
何より自身が一人の乙女であるために、その感想だけは口にしてはいけなかった。
太腿とお腹に関しては、別に良かった。
テイオーの持つ勝負服の一つは似たような露出度であり、そこまで気にはならない。
だが、そのあからしまバストだけは、どうしても無視することができなかった。
大自然の恵みを一身に受けたかのような豊穣の大地。
これに比べればマックイーンのそれなどは枯れ地同然といえるだろう。
そしてたわわに実り、揺らめく禁断の果実。
テイオーの知り合いにも、彼女と同等かそれ以上の豊かさを持つウマ娘はいる。
尊敬する会長、それを補佐する口煩いエアグルーヴ、会長にやたら突っかかるシリウス。
しかし、彼女達はいずれもテイオーより一回り身長が高い。
それに対して目の前のウマ娘はなんなのだろう、少しゼファーの方が大きいくらいのはずなのに。
とはいえ、そんなサイズなどレースには何も関係がない。
大きかろうが小さかろうが、テイオーは強いウマ娘であり、ゼファーは強いウマ娘だ。
だとしても、今の彼女のビジュアルはあまりも――――強すぎる。
だが、それをテイオーは理解してはいけなかった。
否、していたとしても全力で目を逸らし続けなければいけない。
邪な感情を払い、真摯にレースに向かい合い、共に夢を駆ける。
それこそが、トレセン学園に所属するウマ娘のあるべき姿なのだから。
「ゼファー! 新鮮で似合ってて、その、すごく、すごい! 可愛いくて、似合ってる!」
「ふふっ、ありがとうございます、初夏なのに花信風を浴びてる心地です」
帝王の名に賭けて、彼女は誇り高き精神を貫くのであった。 - 9二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:13:09
じゃあボクは予定があるから、とテイオーはグラウンドに向かっていった。
彼女はジャージ姿であり、これから併走の予定があるらしい。
少しだけ身体をうずうずとさせるゼファーにトレーナーは声をかけた。
「併走したいなら、行っても大丈夫だよ? メニューの調整は出来るし」
「……颯が囁きかけますが今はまだ風見で。トレーナーさんとの饗の風も、大切ですから」
「そっか」
二人顔を合わせて微笑み合うと、自然と手を繋いで歩みを進める。
通りすがる人々の視線が気になるが、トレーナーは気にしないことにした。
満面の笑みを浮かべて鼻歌混じりで足取り軽やかに歩むゼファー。
それを見てしまうと、多少後でとやかく言われようともどうでも良いと思えたからだ。
やがて二人は校門前へと辿りつく。
すると前方から外から帰ってくる一人のウマ娘の姿があった。
少しクセの強いツインテール、右耳には緑色のリボン、赤と緑の調和がとれたメンコ。
「あっ、ネイチャさん」
「…………ゼファー? おいっすー」
ナイスネイチャは、普段以上に気の抜けた声色で挨拶を返した。
その目はどこか虚ろで、返事をしたにも関わらず視線はゼファーを向いていない。
疲れてるのかな、とトレーナーは察知した。
しかし浮かれまくっているゼファーはそこに気づかず、ネイチャの視線の先に動く。
「あの、このお洋服どうでしょうか?」
その時、初めてネイチャはゼファーの格好を認識するのであった。 - 10二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:13:34
ナイスネイチャは、疲れていた。
この日は同室のマーベラスサンデー、そしてマヤノトップガンの買い物に付き合っていた。
現地で偶然、サクラバクシンオーとミホノブルボンに遭遇し、合流。
更にはツインターボとダイタクヘリオスという変則爆逃げコンビが乱入。
ここまで来て彼女は気づいてしまった。
――――あれ、ツッコミするのアタシしかいなくない?
そんなこんなで午前中ネイチャは散々に振り回されていた。
楽しくはあった、間違いなく楽しくはあったが、とても疲れた。
本来は一日の予定だったのだが、全員飛ばし過ぎたせいで疲労困憊、午前で現地解散。
帰り道、教室に忘れ物があったことを思い出したため、ふらふらした足取りで学園へ。
ようやく校門に辿り着いた時、遭遇したのが、見慣れない格好のゼファーだった。
トップスはお腹が見えるほどの短い裾の半袖Tシャツ。
ボトムスはデニムのショートパンツ、腕にはちょっとしたアクセサリ。
少しだけ攻めた感じの、いわゆるギャルっぽいファッションのゼファーの姿があった。
ナイスネイチャは――――耐えられなかった。
普段であれば、持ち前の気配りと空気を読むスキルで耐えることが出来た。
しかし、疲弊しきった現状ではその能力は十全に発揮することが出来ない。
瑞々しくもハリのある、健康的な色気を感じさせる太腿。
扇情的でありつつも、何故か清楚さすら感じさせるお腹とお臍。
何よりも、たゆんたゆんと上下左右に揺れ動く、颶風バスト。
なんだアレ、と一瞬理解が遅れるほどの迫力を持ったそれに、目を奪われる。
そしてネイチャは、何の躊躇もなく、反射的に思い至った感想を、口に出してしまうのであった。
「うわエッロ……」 - 11二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:14:17
お わ り
途中まではいい話になる予定だったんですが想像したら最後の感想しかでませんでした - 12二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:49:53
前後の温度差がひどい
- 13二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 20:52:32
えっちえっち!ネイチャえっち!
ありがとうございます。 - 14二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 21:05:31
よかったです・・・
Gaze on Me 想像しながらニコニコふんわり笑って隣で手つないでるゼファー思い出したらうっ - 15二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 21:08:40
マックイーンにとんだ流れ弾飛来してて芝
- 16123/05/02(火) 22:00:57
- 17二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:48:03
耐えた2人がトップロードと化してて草
つまりトプロ委員長はエロくない……? - 18二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:39:40
- 19二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:47:06
- 20二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:52:58
- 21二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:56:55
- 22123/05/03(水) 06:23:30
- 23二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 06:51:28
よくパリピ語と風語録をマスターしたな…
- 24二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 07:04:35
乙です。罰としてネイチャにも同じ格好してもらおうか
- 25二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 14:18:45
- 26123/05/03(水) 20:34:04
- 27二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 20:45:21
だが胸元の露出は勝負服に負けている!
つまり見慣れてる俺は耐えられる!耐えられる筈なんだ!
俺はゼファーの勝負服をエロと思った事は無い!無いんだ! - 28123/05/03(水) 21:06:49
勝負服のライブ映像を見たとてしても同じことを言えるかね?
- 29二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:10:59
- 30二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:18:46
みんなエロいしか言ってなくて芝
うわ…エッロ…… - 31二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:27:48
このレスは削除されています
- 32二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:53:32
- 33二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:54:46
- 34123/05/03(水) 21:57:27
- 35123/05/03(水) 22:00:32
(ああ必殺技……)
- 36二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 10:02:37
うわエッロ…