【百合CP・SS注意】パーマー「メジロ家が催眠アプリを競り落とした……」【エスパマ】

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:42:59

    「どうしよう、これ…」
    メジロパーマーの手元のスマートフォンのディスプレイには催眠アプリが表示されていた。
    「メジロ家が競り落としたのは知ってたけど」
    パーマーは競り落とした事実こそ知れど催眠アプリに関わる一切に関わっていなかったのだ。
    パーマーは己に託された理由──一番悪用しない・されないだろう、という理由の通り催眠アプリを使用する気は欠片もない。──否、なかった。
    パーマーの同室、カツラギエースも決して悪用したりはしないだろう、とパーマーは考えているものの万が一、ということもある。
    故に、己の手元にあるソレをどうしようか考えあぐねていた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:43:10

    「エースさんに見つからないようにした方がいいのかな」
    考え込んでいたパーマーは、帰ってきたエースに気付かなかった。
    ──だから、驚いてうっかり使ってしまったのだ。
    「?パーマー………?どうした、ぼーっとして」
    「へっ?あ、えっと…『エースさんはなにも見なかった』!!」
    テンパって見なかったことにしてほしい、と返事を返した途端、エースの動きが止まった。
    「え、あの、エースさん……?」
    パーマーが声をかけてみても微動だにせず。
    顔を覗き込んでみれば、彼女自身なのか疑いたくなる無表情で。
    縹色(はなだいろ)の瞳は、機械部品のように冷たく、無機質にパーマーを見下ろしていた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:43:49

    「……まさか、」
    スマートフォンの画面を確認すれば、催眠アプリがONになっていた。
    「やっちゃったな……」
    今すぐ止めねば、と手を伸ばすものの寸前で魔が差して手が止まる。
    実のところ、パーマーはエースに想いを寄せていた。
    好きなひとがなんでも言うことを聞いてくれる。
    「ちょっとだけ、ちょっとだけなら……」
    ましてや、相手はあまりの鈍さに陰で多くのウマ娘を泣かせてきた鈍感魔だ。
    思春期のウマ娘が、魔が差さない筈もなく。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:44:10

    「エースさん、その…『手を握って』ほしいんだけど……」
    エースさんの手のひらが私の手に触れる。
    「……私、なにやってるんだろ…………」
    エースさんの手のひらは思いの外冷たくて、手が冷たい人は心が温かいっていうやつか、なんて考える。
    しばらく彼女の手のひらを握りしめていて、あ、と気が付く。
    「『手を離して』……OFFにするには………」
    アプリを託されたときの説明を思い出し、今度こそOFFにする。
    OFFにしてからしばらく経つと、エースさんは動き出した。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:44:29

    「?あたし、なにしてたんだっけ………?」
    催眠が掛かっていた間の記憶は無く、エースは首を傾げた。
    「………あー、その……エースさん、ずっとぼーっとしてましたよ」
    咄嗟に誤魔化すパーマー。
    「あー、ここ最近寝るの遅くなってるしな……早めに寝るか」
    (十分寝るの早いと思いますけど……)
    普通なら騙されないだろうが、エースはひとを疑わないタイプである。
    故に、すぐに納得してしまった。
    ちなみにエースの言う遅い時間というのは22時頃のことだ。
    パーマーの考える通り高校生にしては早い時間である。
    「おやすみなさい、エースさん」
    「おう、おやすみ」

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 22:45:03

    ──数日後。
    「駄目だって、わかってます。……でも、」
    パーマーは寝静まったエースを横目に、催眠アプリを開いた。
    「エースさん……『私とキスして』」
    エースの体が起き上がる。そして、パーマーの唇に自身の唇を触れさせた。
    パーマーは、エースの目をしっかりとみつめた。
    やはりというべきか、彼女の目は虚ろで、無機質で。
    「やっぱり、好きだなぁ……」
    ──私だけが、エースさんのこの顔を見れるんだ。
    やってはいけないことだと理解していても、やってしまう理由。
    パーマーは、なにも見ていないエースのその瞳が一等好きであったのだ。
    「エースさん、あのさ」
    「『私を抱いて』くれないかな」
    エースはそっと、パーマーを抱きしめた。
    そのまま終わればよかったのだが。
    「そうじゃ、なくて……『エースさんとぴょいしたい』な」
    越えてはいけない一線を、越えてしまったのだった。

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/02(火) 23:46:33

    カツラギエースは悩んでいた。
    ここ連日見る夢──同室であるメジロパーマーとぴょいする夢のせいである。
    何故このような夢を見るのかエースには心当たりはなかったし、かと言って誰かに相談するのもな、と。
    そこに、栗毛のウマ娘が声をかける。
    「辛気臭い顔してんなァ、エース」
    声をかけられ、エースは顔をあげた。
    「……トレーナー」
    声をかけたのは、エースの元トレーナーであった。
    「悩みごとなら聞くけどよ、場所移すか?」
    エースはその提案に頷く。
    「……あー、俺のトレーナー室でいいか。昼飯買ってから行くわ」
    トレーナーのその発言で、エースは先にトレーナー室へと向かった。

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 00:33:53

    「で、何を悩んでんだ?」
    トレーナーにそう聞かれ、話してもいいものか、とエースは思案する。
    「話辛ェなら無理に言わなくてもいいけどよ」
    「……いや、ちゃんと話すから」
    エースは知っている。
    人間嫌いのせいで誤解されがちなだけで、トレーナーがウマ娘とちゃんと向き合っていること。
    ひとの悩みを真剣に聞いて一緒に悩んでくれるひとであること。
    ウマ娘の為なら大勢に何言われようと構わぬ狂人であること。
    だからエースは、トレーナーに打ち明けることを決めた。
    「あの、さ……!!」

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 01:36:36

    エースは相手のことだけを伏せ、夢のことを話した。
    「なるほどなぁ……えーふはほのゆえみへほうおもっは?」
    「食べながら喋るなよ……なんて言ったのか聞き取れないだろ」
    エースは呆れていた。引退後、契約解消したときからトレーナーはまったく変わっていないからだ。
    「御馳走様でした……だってメロンパンおいしいし。
    で、エースはその夢見てどう思った?」
    「あたしらはウマ娘同士だから──」
    「そういうの、抜きにして」
    「えっ???」
    このひとは何を言っているのだろうか、とエースはトレーナーの顔を見た。
    トレーナーは、いつになく真剣な顔をしていた。

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 02:10:24

    「性別だとか、友達だとか。そういうの、抜きにして考えて」
    「そのウマ娘とそういうことをする夢を見た。それで、エースがどう思ったか」
    「色々あるだろ、例えば夢の中であろうと相手と行為をすることに嫌悪感を覚えた、とか」
    「逆に相手とそういう行為が出来ることが嬉しいとか」
    「──エースは、どう思った?」

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 03:01:14

    「あたしは──」
    初めてその夢を見た日を思い出す。
    夢か現かわからず、ただ夢中で交わる夢。
    驚きはしたものの、決して嫌だとは思わなかったし、彼女と夢の中であろうと交われることが無性に嬉しかった。
    そうトレーナーに言えば、「それが答えだろ」と笑った。
    同性とか、友人とか抜きにして考えたら、残る感情はそれだけなのだから、と。

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 08:47:57

    続きは!!!ないんですか!?!?!?
    (続き投稿されたらこのレスは邪魔になると思うので消します)

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 15:27:54

    思い耽るエースを眺めながら、トレーナーはエースの見た夢の件について考えていた。
    あるウマ娘とぴょいをする夢。
    相手に恋愛的好意、あるいは劣情を相手に抱いている、と考えるのが普通だろうし、相手がどう思っているか、というのも重要だろう。
    しかしトレーナーはそこ──相手の感情については興味なかった。
    何故ならば相談してきたのがカツラギエースだからだ。
    ひととの距離が近く、関わりの深い相手である程勘違いさせがちなエースは、それはもうよくモテる。
    エースの友人であるのなら勘違いくらいしているだろう、とトレーナーはある種の信頼を寄せていたのである。

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 15:32:10

    >>12

    邪魔じゃないから消さんでいいよ

    続きは今書いてる

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 21:34:23

    一通り思考がまとまったのか、エースが顔をあげる。
    そして、目をしっかり合わせて、ぽつりぽつりと話し出した。
    「…あたしは、」
    「うん」
    「…好きか嫌いかで言えば……好き、だと思う」
    「おう」
    「彼女のこと、は……決して、嫌いではない、し……そういうの、いやでもない、けど……」
    「けど?」
    「わからないんだ。彼女をどう思っているのか、わからない」

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 22:39:10

    そうくるか、とトレーナーは内心頭を抱える。
    いくら鈍感魔とはいえ、「わからない」と言われるとは流石に想像つかなかったのである。
    トレーナーからしてみればエースのソレは自覚のない恋情の類いでしかないのだが。
    「なら、観察してみたらいいんじゃねぇか?」
    そう提案してみる。
    「……観察?」
    エースが首を傾げる。
    「そう、観察」
    観察するには、相手を意識する必要がある。
    意識してみれば、感情の正体がわかるかもしない。
    トレーナーはそう説明した。
    「なるほどなぁ……」
    「それでもわからなかったらまた相談しに来い」

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 03:25:33

    翌日からエースはパーマーを観察してみることにした。
    観察とはいっても見かけたら目で追ってみる程度のことだが。
    (やっぱり、わからねぇ……)
    連日言われた通りに観察してみても、鈍いエースにはその感情の正体がわからなかった。
    周囲にバレバレな程目で追っていても、彼女はまったく自覚していなかった。
    (相変わらずヘリオスと仲良いなぁ……このもやもやは、一体……?)
    ましてやエースは、自分が嫉妬しているなんて思ってもいなかった。

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 14:35:03

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 14:38:00

    数日前から、パーマーは視線を感じていた。
    (…エース、さん……)
    パーマーを見ていたのはエース。
    彼女はトレーナーに言われた通り観察しているだけなのだが、パーマーはそれを知り得ない。
    パーマーは決して鈍くはない。どちらかというと他者の感情に対しては鋭い方だ。
    エースから向けられる視線の意味を、本人以上に理解していたし、その視線を向けられる心当たり自体はある──というか、パーマーの自業自得な側面が強くあった。
    故に、どうすればいいか悩んでいた。

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 23:27:31

    (私は、どうすれば……?)
    パーマーは大いに悩んでいた。
    エースが視線を寄越すようになったのは催眠アプリを使ってぴょいした数日後からであったからである。
    (…悪いのは私だし……エースさんは鈍いから……)
    ──鈍いから、責任感が強いから。
    ──ぴょいしたことを体が覚えているから勘違いしてしまっているのではないか。
    そう考えた。
    長いこと恋情を気付いて貰えなかった反動で、パーマーは物凄く拗らせていたのである。
    だから──単純に自分のことが好きなのだ、という事実に気付くことができなかった。

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/05(金) 01:55:02

    何故だかダイナ家主催のお茶会(という名の同期の恋バナ)に連行されてきたエースに、親友──ミスターシービーが訊ねる。
    「エースはさ、好きなひととかいないの?」
    「前も言っただろ……あたし、そういうのよくわかんないんだって」
    エースは未だに自分の感情を理解できていない。だから、エースはそう返した。返事としてはなにも間違ってはいない。いないの、だが……
    非常に鈍くモテるエースが(おそらくだが)パーマーに想いを寄せている。
    今のトレセン学園はその話題で持ちきりである。
    そういった話題が好きな同期勢が、見逃す筈もなく。
    「じゃあ、同室の──パーマーさんのことは、どう思ってるんですか?」
    ストレートに、パーマーへの感情を訊かれた。
    エースは、その質問に思案する。
    「わからない、けど……」
    「うんうん」
    「ヘリオスとかと距離近いの、見るとなんか……もやもや、する」
    エースにとって答えられるのはそれ位で。
    しかしそれを聞いた同期勢は静かに顔を見合わせた。ほぼ確黒である。
    「あ、エースも嫉妬とかするんだ?」
    「…しっと……?」
    静かな空間に、空気の読まないシービーの声と、驚いてフォークを落とす音が響いた。

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