- 1二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:40:34
「あれ?扉が開いてる……?」ガチャ
「お疲れ様です、トレーナーさん」
「キタサンか、お疲れ様。もしかして鍵がかかってなかったのか……?」
「はい、勝手に入ってごめんなさい」
「いや、悪いのは俺の方だから謝らないでくれ。おかしいな……鍵をかけたと思ったんだけどな……」
「そういうこともありますよ。次は気をつけなきゃ……ですね」
「うん……気をつけるよ。ところでなにか用事なのか?それにもう夜だけど、こんな時間に来て大丈夫なのか?」
「遅くなる連絡はしましたから大丈夫です。用事……といえばそうですね。探してるものがあったんですよ。だけど、どんなに探しても……探しても……見つからなくて……。今日じゃなきゃいけないのに……どうすればいいのかなって……。さっきまでは凄く困ってました」
「なにか探してるなら俺も一緒に探そうか?」
「いえ、大丈夫です。もう……見つかりました……やっと……見つけた……」
「そうか……?見つかったなら良かったけど……。君の力になりたかったな……」
「そんなことないです。いつも……そう、いつも力になってました……」
「う、うん……?ありがとう……?その……そんなに重々しく言うことなのか……?」
「あはは……そうですね……。『私』にとっては大切なことだから……大切なことだったから……」
「私……?」 - 2二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:40:50
「そんなことよりも、トレーナーさんに言いたいことがあります。あんまり遅くまでお仕事していたら駄目ですよ。今日もこんな時間まで働いて……本当に駄目ですからね……」
「そんなに圧をかけないでくれ……。分かったから……」
「本当にわかってますか?破ったらキタちゃん怒りのマッサージ地獄ですよ……」
「マッサージをそんな使い方したら駄目だろ……」
「いいんです……。体を大事にしないヒトには……これくらい……しなきゃ……わからないから……」
「キタサン……?」
「……『私』は帰りますね。トレーナーさんも今日はもう帰って休んでくださいね」
「いや、もう少しだけ残ろうかなって。資料がまだ終わって――」
「…………………………………」ジー
「わかりました!帰ります!真顔でこっちを見ないでくれ!怖い!」
「良かった……。体は大切にしてくださいね……?『私』との『約束』ですよ……。それでは、また明日」スッ……
「ああ、また明日……って、外は暗いし送って……もういない……。
それにしても……変なキタサンだったな……。ずっと悲しそうで……それに何故か大人っぽい感じだったし……。なんだろう……頭もぼんやりするし、キタサンの言う通り今日はもう帰ろう……」 - 3二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:41:13
次の日
「おはようございます!トレーナーさん!」ガチャ!
「おはようキタサン。今日は朝早くからどうしたんだ?」
「あはは……ノックもせずにごめんなさい……。実は昨日、トレーナー室に忘れ物してたのをさっき気づいて……急いでトレーナー室に来たんです……」
「忘れ物?でも、昨日の夜にこっちに来て探してたよな?」
「昨日の夜……ですか?あたしトレーニング終わってからは、ずっと寮にいましたよ?」
「でも、昨日確かに君と……」
「もしかして、疲れてたせいで変なものを見たんじゃないですか……?夜遅くまで仕事するのはあんまり良くないんですよ……?あたしの為に頑張ってくれてるのは分かりますけど、自分のことも大切にしてくださいね……」
「それも昨日君に……」
「……………………」
「そんなに悲しそうな顔しないでくれ……。もう無理はしないから……」
「本当に……?」
「本当に……。ふぅ……2日続けて心臓に悪いな……。それで、君は何を忘れたんだ?」
「確かこの辺りに……あった!って、あれ……?これは……?」
「どうしたんだ?」 - 4二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:41:35
「忘れ物は見つかったんですけど、トレーナーさん宛のメモ書きがあって……」
「そんなの昨日あったかな……?どれどれ……」
『今日はもう帰ってくださいね。『私』からのお願いです。』
「誰が書いたものなのかな……?なんだかあたしの字に似てるような……?でも、あたしはこんなこと書いた記憶ないし……な、なんだか怖いかも……」
「……キタサンが探していたものって、そのチケットなのか?」
「これですか……?この遊園地、結構人気がある場所みたいで……これを取るの中々大変でした……」
「キタサンが探してたのがチケットなら、『君』は何を探してたんだ……?あれ、メモの後ろにも何か書いてる……?」
『あなたと一緒に行きたかったな……』
「そうか……『君』が探してたのは……」
「な……何が書いてあったんですか……?」
「ナンデミタノ……?って書かれてたよ」
「ひっ……。う、嘘ですよね……?あ、あたしを怖がらせてもだめですからね……?」
「ごめん、噓ついた」 - 5二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:42:03
「なっ!?と、トレーナーさん!その冗談は面白くないです!あたし怒りました!この遊園地にはダイヤちゃんと行きます!」
「え!?ま、待ってくれ!そんなに怒らなくても……」
「あたしがお化け怖いの知ってるのに……!何でそんなこと言うんですか!」
「そんなに怒るとは思わなかったんだ!すまない……!」
「絶対許さないです!せっかく良いところだって聞いたから一緒に行こうと思ったのに……!変なことを言うトレーナーさんとは行きません!」
「本当にごめん!許してほしい!」
「そんなにあたしと行きたいですか……?」
「行きたいです!」
「それなら……許します。あたしも少し言い過ぎました……ごめんなさい……」
「こっちも本当に悪かった……」
「あはは……えっと……その……。そ、そうだ!遊園地にはいつ行きますか?」
「そうだな……2週間後がちょうどスケジュールが空いてるし、2週間後でもいいかな?」
「大丈夫です!たのしみだなぁ……!絶対に一緒に行きましょうね!また後で!」ガチャ
「ああ、またな。……うん、また後で」
(『キタサン』……。『君』が昨日の夜に来た理由が全部分かったよ……。もしかして俺は昨日……。そのせいで『君』は……。でも、もう大丈夫だよ。絶対にキタサンとの約束を守るよ。『君』が出来なかったことを叶えるよ。それがきっと『君』との『約束』を守るってことだから) - 6123/05/03(水) 19:46:30
会話SSの練習を兼ねて今まで書いたことのない種類の話を書いてみました。
ボカしていますがある表現を匂わせているため閲覧注意をつけました。
ホラーを書きたくて書き始めたのに違う方向に進みました。
書いてて胸が痛くなったので恐らく今後こういう話を書くことはないです。 - 7二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:53:01
「マッサージをそんな使い方したら駄目だろ……」
正論すぎるこれに笑ってしまった
スレ主は充分会話上手だと思うな。いつも台詞繰りで笑ってるよ - 8123/05/03(水) 19:56:16
- 9二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 19:58:35
マッサージは不健康人間には拷問にもなるからな
- 10二次元好きの匿名さん23/05/03(水) 20:01:50
コワ~……
- 11123/05/03(水) 20:07:11