- 1二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 22:14:29
- 2二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 22:33:00
絶対の名を欲しいままにする皇帝がいる。幾度の怪我を乗り越えて奇跡を起こす帝王がいる。
尋常ならざる努力を以って距離適性の壁に挑むサイボーグがいる。悪役の謗りを受けながらも菊と春の栄冠を手にした英雄がいる。
そして、彼女達が歓声を巻き起こすその影に、何にもなれない私達がいる。
「あー……朝起きたらG1ウマ娘になってないかなぁ……」
「何寝ぼけた事言ってるの。はい、おはよう」
私の布団を無理矢理剥いで、芦毛のルームメイトが朝を知らせてくる。
既に支度を済ませた彼女がズボラな私を説教するこの光景も、もう慣れたものだ。
「まったくあなたは、いつになったら朝ちゃんと起きられるようになるのよ? まあいいわ。さ、顔洗って歯磨いて朝ご飯食べて。そしたら朝練だよ!」
「朝練って……」
「そう、朝練だよ! モーニングプラクティス的なサムシングを積み重ねる事で、G1ウマ娘への道が開けるんだから!」
もうとっくに閉じてると思うんだけど。
私は喉まで出かかったその言葉を飲み込んで、身支度を済ませるべく洗面所へと向かった。 - 3121/11/27(土) 23:00:33
(毎度毎度よくやるなぁ……)
私はルームメイトの勤勉さに感心しながら、丁寧に歯ブラシを動かす。
そうしながら、私は彼女との思い出に意識を向けていった。
(本当、昔っから変わらないや)
ルームメイトの芦毛ちゃんとは幼稚園の頃からの幼馴染だ。
あの頃は三冠ウマ娘になるだの凱旋門賞を獲るだのと荒唐無稽な夢を語り合い、その為のトレーニング––ごっこ––に打ち込んだものだ。
だけど小学校の高学年あたりで、私は才能というものを知った。
どんなに努力しても決して埋まらない差を前に、私の夢は終わりを告げたのだ。
でも、あの子は違った。
芦毛ちゃんはその事実を知ってなお夢を諦めず、むしろ更なる熱意を燃やし始めたのだ。
「もうやめようよ……クラスで一番足が遅いわたし達じゃ、三冠なんて取れっこないよ……」
「いいや、やる! わたしはやってみせる! 絶対、三冠ウマ娘になるんだ!!」
そして今日までトレーニングを重ねながら、私もろとも未勝利のままで2年目を迎えた、というわけである。
(三冠ウマ娘、か)
複雑な感情を汚水と共に吐き出して、私は鏡に映る自分の間の抜けた面を見つめていた。
- 4二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 23:27:50
保守
- 5二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:24:23
期待保守