【SS】貴女はライバル、頂点を競う方

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 23:56:25
  • 2二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 23:57:54

    キャラ含め完全に妄想な上、冗長です。
    解釈違いかもしれません。
    ご理解お願いいたします。

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 23:58:17

    目の前が揺れてよく見えない。
    それでも掲示板に自分がまたいないことは良く分かっていた。また、着外だ。これで4連続。
    ゴールのあのとき、内っ側を走る私の目線の先には、馬番の形が1番近い彼女がいて。会場には彼女のジャパンカップ連覇を讃える声が轟いて。当然のように1番上に彼女の数字7。私が貰った1は見る影もない。
    当たり前だよね。板の前を過ぎたとき、ゆうに2バ身はあったもん。ゴシゴシと勝負服の袖で顔を脱ぐって私はふわふわ芝を踏んで退散する。
    1年と1ヶ月と1週間とちょっと前。あんなにすぐ側にあった顔は、もう背中しか拝めないのかもしれない。

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/27(土) 23:59:43

    「まぁったく並んでゴールイン!」
    秋華賞
    私たちがゴールしたとき、実況はそう叫んでいたらしい。
    もちろん全然そんなの聞こえてない。後ろから迫って、私に並んだ彼女の気配に勝てるモノは、あの場に存在する筈ない。だから、最初に耳に入ってきたザワつきには、心臓がドクンと跳ねた。
    「これは本当に微妙です」
    まだ、勝っても負けてもいない。
    バッと目は彼女を探す。彼女の目も私を探していた見たいで、天を仰いだ体制のまま、金星みたいにキラキラの瞳に私が映った。
    「聞きました?」
    「ええ」
    歩み寄った彼女に向き合って私は頷く。そして掲示板を見る。まだ着順は一つも埋まっていない。ゴクリと喉がなる。だけど、その数字が掲げられる前にアナウンスが入った。
    「写真判定のため、一旦控室へ…」
    グッと拳を握りしめる。大きく息を吐いてザッザッと芝を踏みして向かった控室はピリピリとしていた。受け取ったタオルで汗を拭って、水分補給。それでも暫く待たされた。

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:00:02

    「今出ました!1着14番」
    飛び込んで来たその声に、ああっ!と私は脚を動かす。向かったのは、勿論、彼女のもと。いつもより頬を綻ばせる横顔の、名前を呼んだ。反射で小さく挙げて応える手を、キュッと掴む。
    「おめでとうございます」
    彼女は大きく目を見開いて、微かに口を開いた。
    「とっても悔しいです」
    彼女はパチパチと瞬きをする。しまった。遮ってしまったようだ。勝手に掴んだ手を離して待つ。
    「…ありがとうございます」
    ふわっと、でも気高く笑って彼女は手を差し出した。私も笑って差し出し握手をする。
    「楽しかったです」
    モニターを示して言われて、初めて気が付いた。ゴールシーンを捉えたそこで、真剣な彼女の顔の横に、ニヤケ面の私が!
    「たっのしかったですが、冷静に見返すと恥ずかしいですね」
    ワーっと両手で顔を覆う。彼女の名前が呼ばれる。ああ、ファンに応えてライブして取材があって、この後が仕えている。1番はやることがいっぱいだ。私は彼女の背中を押した。
    「引き留めてごめんなさい。みんなが待ってますね。トリプルティアラ」
    「とんでもない。またあとで」
    彼女は小走りに出口へ向かった。私も名前を呼ばれて、係の人のところへ行く。指示を受ける直前、扉の向こうから呼び止められた。名前なんて言われなかったけど、私だと分かってそちらを見る。
    「…負けたかと思っていました」
    目を細めた彼女は、私が瞬きしたらもういなくなっていた。

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:00:48

    あのときの写真判定は、ゆうに5分はかかっていた。あのときの差はそれくらいで、私は彼女のライバルだと思っていた。それは傲慢だった!
    新聞に踊るのは、日本勢快挙の文字。同期の世界1位になった爆発力と、トリプルティアラの高貴。
    私といったら更に惨敗。着外を2回も重ねて6連続に。
    これで彼女のライバルなんて、絶対言えないや。1年前には勝てたあのレースは来週に迫っている。トレーナーと話し合って、ちゃんと負けないように、勝てるように、トレーニングしているつもりなのに今日の模擬レースでもまたダメだった。
    ベンチに腰掛けて練習場をぼーっと眺める。オーバーワークはよくないから、後2本までってトレーナーと決めた。本当はもっと走りたいけど。
    「併せウマ、してください」
    凛とした声が聞こえた。元気だなと思う。それだけ自信があるのだろう。
    「もう、今日はおしまいでしたか」
    ああ、みんな練習終わりの時間か。どうしよう帰ろうかな。
    「あのっ!」
    大きな声がして、それは目の前で、そこには彼女が跪いていた。

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:01:56

    「併せウマ、していただけますか」
    「私と?」
    「はい」
    「ぜひ!」
    考えるよりも先に口が動いてたみたい。気がついたら、私は、コース上で彼女の隣に並んでいた。
    コースはバックストレッチの直前端から3・4コーナーを回って直前を走ってゴールする。短いの感じの。1時間を知らせる鐘でスタートと決まった。

    耳が拾った音に、脚は直ぐに応えた。自然と前に前にと進む。彼女がここで見えないのはいつもと同じ。私は大きく脚を踏み出して駆ける。あっという間にコーナーだ。よれないように気をつけて芝を蹴る。しまった外に脚が。立て直して、やっと終わった曲線。そして恐怖の直線。残り200。
    きた
    負けてたまるか。前へ前へ。蹄鉄を持ち上げて芝を砕く。少しでも大きく速く、でも無理はなく。
    そんな私の外側を彼女は通り過ぎた。
    負けてたまるか。私はいつもと同じく!と脚を動かすけど、1年も前のいつもは全然きてくれない。
    ゴール板を過ぎて見たのは、随分と遠い彼女の背中。
    「さすがトリプルティアラの六冠バですね」
    私は膝に手をついて呟く。視線の先で芝をが揺れている。
    「ありがとうございます」
    「とんでもない。私なんかの相手をしてもらっちゃって」
    息を整えて顔を上げる。そこでは、彫像のように気品のある顔が、歪んでしまっていた。

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:03:09

    「なんですか。それは」
    彼女は噛んでいた唇を開く。真っ直ぐに結んでいないそこは珍しい。
    「なんですか。さっきの模擬レースは」
    「…それは、調子がでなくて」
    「では今の併せウマは」
    「それは、あなた、強いもの。私にはもったいないくらい」
    「違います」
    彼女は低い声で言った。目は大きく見開かれている。金星の瞳がこぼれ落ちてしまいそうだ。実際にボロボロと落ちたのは私の心だけど。
    「違いませんよ!模擬レースも勝てなくて!ずっと負け続けのウマ娘ですよ!だから」
    「違います」
    「トリプルティアラで、混合路線でもちゃんとG I勝って、それも2連覇しちゃって、海外遠征でも勝ったウマ娘の相手なんて!」
    「違います」
    「満足にできるはずがない!」
    「違います!貴女はあたしのライバルでしょう!?しっかりしてくださいヴィルシーナ!」
    私は叫んだ。彼女は冷静なのに、みっともないと思った。だから、彼女が叫んだとき本当に驚いた。そして、その金星の瞳から流れ星みたいな涙が溢れていると知って、息が詰まった。
    「貴女の走りは素晴らしいのです」
    「いつも笑顔で楽しそうで、でも勝ちに行く走り。負ける気など少しもない、真っ先を行き、頂点を目指す走り」
    「私は嬉しかったのです。そのような方があの秋華賞で、おめでとう、と負けてなお私だけを褒めてくれたことが」
    「私は、勝つとよく、さすが、と誉めていただきます。ただ、」
    「さすが、に込められた意味が分からない私では、いられないのです」
    「だから、私に勝ちにくる貴女が、そう誉めてくれてとても嬉しかったのです。そして、また貴方と走るときに、貴女に誇れる私でいなければならないと決心したのです」
    「それなのに、なんで、負けることを考えて、辛そうな顔をして走るのですか」
    「このジェンティルドンナのライバルに相応しい走りをしてください!」

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:03:26

    知らなかった。私はもう、彼女の眼中になんてないと思っていた。彼女の隣に並ぶ資格なんてとっくにないと思っていた。知らなかった。彼女は、まだ、そうは思っていなかった。
    彼女を抜かしたい。
    「そうですね。その通りですね」
    私は背筋を伸ばす。
    「私はあなたのライバル」
    金星の瞳を見る。
    「相応しい走りで勝ちます」
    夕焼けで真っ赤に染まり、私は笑った。

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:03:56

    トントンと芝の上でジャンプする。去年から10番も人気は落ちた。でも、調子が悪くあってたまるものか。
    青空にファンファーレが響いて、ゲートに入る時間が来る。今回は後の方の順番。閉じた柵の中で瞼をおろして、大きく息を吸う。止めて、瞼を上げる。
    ガシャン。ゲートが開いた。
    勝負開始!
    大きく息を吐いて、大きく脚を開いて、前へ。誰よりも先へ。無理せず先頭に立って内ラチ沿いを確保。上々のスタート。直線はまだ残ってる。私のペースは崩させないから。
    コーナーに入って後ろの気配が強くなる。仕掛けはまだだろうけど、チャンスが有ればくるだろうね。でもそうはさせない。
    遠心力を意識して、外に行かないように、でもスピードは殺さないように。内側の1番短い距離を離さない。まだ、横にすら誰もいない。
    半歩外へ足が出てしまった。けどコーナーは終わり、誤差の範囲ですみそう。
    さぁきたな。
    直線で一気に私の背中に皆並ぼうとする。並ばれたな。大きく、一歩一歩大きく。少しでもみんなより前へ足を出す。もう残り200。
    まだいける
    私は芝を強く踏む。誰よりも前へ、誰よりも先へ、誰よりも速く、誰よりも早く。ゴール板を過ぎた。
    「ヴィルシーナ、ゴールイン!」
    足を止めたくないと思った。私の先を行く子が見えたから、勝ちたい。走りたい。
    「ヴィルシーナ!ヴィルシーナ!」
    でも、ゴール板はとっくに過ぎていたよね?歓声に耳を傾けて、減速する。
    「復活、ヴィルシーナ。昨年に続いて連覇!14番のヴィルシーナ」
    掲示板の1番上には、私の番号。
    さぁ、やることがいっぱいね。ファンに応えて、ライブをして、取材があって。
    ジェンティルドンナに、ありがとうを言わなくちゃ。

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:05:31

    お目汚し失礼いたしました。
    取り敢えずここで力尽きました。
    気が向いたら蛇足投稿します。

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:06:20

    ありがとう…

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:29:50

    >>12

    気に入っていただけて何よりです。

    こちらこそありがとうございます。

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/28(日) 00:32:42

    VM勝ったここから宝塚、エリ女挟んで有馬とドンナとの激重感情ぶつけ愛が続くんだね…

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