【SS】ひっつき虫

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:21:28

    「いや~、トレーナー、お互いひっつき虫だらけですな~」

    「ははっ、そうだね」
     
    綺麗な青空が見えて、清々しいほどの晴れ間の下、担当ウマ娘のマチカネタンホイザとお互い服に黒色や緑色の植物、ひっつき虫があちこちについていた。
     こうなった経緯としては、河川敷でタンホイザと一緒に散歩していると、リードから外れた犬を捕まえるよう頼まれ、その犬を追いかけるのに、草が茂っているところを突っ切って追いかけていたら、引っ付き虫が大量についたというわけだ。無事に犬を捕まえて、飼い主のところに届けた後に、お互いに服を見てみると大量にくっついているひっつき虫が着いている状態だったのだ。

    「……とりあえず、取れるところから取ってみるか」

    「らじゃ、らじゃですー」
     
    そう言って、お互い取れる範囲でくっつき虫を服から取っていく。くっつき虫が着くなんて、もう何年前だろうか。小学生の頃はくっつき虫を投げて、くっつけさせるみたいなことをしていたなと少し思い出にふけながら、服から除いたくっつき虫を手のひらに集めながら、あらかた取ったところでタンホイザの方に声をかける。

    「よし、こんなもんかな?タンホイザは取れたか?」

    「おお~、トレーナーもいっぱい取れましたなぁ。私もこんぐらい取れましたよー」


     そう言って、タンホイザは自分の手の平を俺に見せてきた。彼女の手にも自分と同じぐらいくっつき虫があった。それを見た俺はちょっとだけ笑みを浮かべた。

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:22:09

    「おぉ!たくさんあるじゃないか!」

    「えへへ~、これだけも着いていたのは、驚きですなぁ」
    そう会話したところで、タンホイザの方を見ると、彼女のトレードマークの帽子にもくっつき虫がまだ付いているのに気が付き。

    「タンホイザ、帽子にもまだついてるよ」

    「おお、なんと、なんと。まだ、ついてましたか。トレーナー、帽子にくっついているのとっていだだけませんか」

     タンホイザはそう言って、こちらに頭を差し向ける。俺は彼女の頭に手を添えるようにして、くっつき虫を取ってあげることにした。

    「いくぞ……」
    「いつでもどうぞ、どうぞ」

     ゆっくりと帽子の くっつき虫を取り始める。よく見ると、タンホイザの耳の後ろの方にもくっつき虫が着いている。

    「タンホイザ、耳の後ろにもついているから、取るよ」

     一声をかけて、タンホイザの耳を触る。自分の耳と違い、温かく柔らかい感触だった。そして、耳かきをする時のように優しく撫でるような感
    じで取ってあげた。

    「全部、取ったよ」

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:22:44

    「トレーナー、ありがとう。トレーナー、もしかしたら、尻尾の方にもまだついてるかも。よかったなら、尻尾も確かめてくれませんか」

    「ああ、いいよ」

     そう言うと、彼女はくるりと回って、俺に背中を向け、尻尾を前に持ってきた。タンホイザの髪の毛と同じ明るい茶色い毛並みの尻尾を軽く持ち上げ、優しく尻尾を撫でながら引っ付き虫をとっていく。こうやって、触ってみるとほんとに自分と体の作りが違うのだなと改めて感じてしまう。

    「トレーナー、私の尻尾はどうですか。ふぁさ、ふぁさでしょう」

    「そうだね……、なんか、すごくモフモフしていて気持ちいいよ」

    「ほほう、それは光栄ですなぁ」

     タンホイザは嬉しそうに尻尾を揺らす。それを見ていると、なんだか猫みたいだなと思ってしまう。そんなことを考えているうちにあっという間に全ての引っ付き虫が取れた。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:23:35

    「ふぅー、これで全部取り終えたかなぁ」

    「ご苦労様です。おお、尻尾が軽くなった気がします。いやぁ、お互い大変でしたなぁ」

    「ああ、本当に。なんか疲れた」

     河川敷に腰掛けて、お互いに顔を見合わせる。すると、急に笑いが込み上げてきて二人とも笑い始めた。

    「いやぁ、まさかひっつき虫まみれになるとは思いませんでしたな~」

    「ははっ、本当だよ。でもまぁ、こういう日があっても悪くはないんじゃないかな?」

    「確かに……、たまにはひっつき虫だらけになるのもいいかもしれませんなぁ。…そうだ。トレーナー」

    そう言って、タンホイザは腕に抱き着いてきて、

    「えへへ、ひっつき虫を見てたら、ひっつきたくなりました。ひっついていたら、なんだか元気がでませんか〜。しばらくこのままでいましょ~」
    と笑顔で提案してきた。その提案に少し恥ずかしさを覚えながらも、彼女の体温を感じながら河川敷でのんびり過ごすことにした。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:27:05

    くっつき虫はウマ娘の尻尾とかつくんだろうかなと思いながら書いてみました

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:33:52

    凄くほのぼのしていて読んでいて心がほっこりしました

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/04(木) 21:41:37

    ろくな交通手段が無い時代はウマ娘にひっつくのが一番生息域を広げるのに効率がよかったんだろうな

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