懐かしい夢を見た。

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:23:12

    複数人で河川敷で花火をする夢だ。
    おかっぱ頭のどこか気怠そうな男性が、赤い髪をした活発そうな少女が、ピンクに近い赤い髪をした青年が、
    銀髪で片目を隠したスーツを着た青年が、同じくスーツを着た女性が、皆、楽しそうに笑っている。

    そして、赤みがかかった栗色の髪を結った、浴衣を着た少女。
    その少女と二人で手持ち花火に火をつけ無邪気に笑いあっている。

    もう、顔も思い出せないけれど、皆大切な友人であったはずだ。

    「蓬、起きろ。そろそろ行くぞ」
    どこかから声がかけられる。

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:26:02

    先ほどの夢に出てきた赤髪の青年によく似た姿の彼はガウマ。
    かつて、「怪獣優生思想」という集団と戦い、世界を守ったそうだ。
    現在は「新世紀中学生」という組織で宇宙をめぐり活動している。
    彼の仲間は、彼のことを「レックス」と呼ぶが、自分に対しては「ガウマ」と呼んでくれと言われたのでそれに従っている。

    ガウマに急かされ、起き上がる。
    どうやら少し眠っていたらしい。変な姿勢で眠ったせいか少し体が痛い。
    ここ最近、眠ることなどなかったが、疲れがたまっていたのだろうか。

    ああ、それにしても本当に懐かしいユメを見た。
    もう"5000年"も前のことなのに今になって思い出すなんて。

    あの浴衣の少女。
    何より大切で、誰よりも愛していたはずの少女。
    彼女はなんという名前だっただろうか。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:28:13

    あー好きだわこの時点で

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:30:59

    偶然甦ったミイラとロボットに乗って彼女ができてミイラになったユニバース?

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:34:29

    「ガウマさん、少し聞きたいことがあるんですけど」
    別の宇宙へ移動中の今、少し暇ができたので彼に尋ねてみる。

    「おぉ。どうした蓬?」
    「実は…」

    自分は昔のことをおぼろげにしか覚えていないが、彼なら何か知っているかもしれない。
    夢にガウマに似た人物が出てきたため、そう考え、夢の内容を話してみた。

    「あぁ、懐かしいな。みんなで花火したなぁ。
    確かその日は蓬たちの町で祭りやってて、でもいつものことながら怪獣が出てきて、
    ナイトとゴルドバーン、それと俺たちみんなが力を合わせてその怪獣をやっつけたんだ。
    んで、そのあと皆で祭りに向かったんだが、間に合わなくてよぉ。
    蓬、お前があの時みんなで花火をしようって言い出したんだぜ。
    んで、買い出し行って、お前の夢の通り、みんなで花火をしたんだ。

    …やっぱり、覚えてないのか?」
    ガウマは思い出を楽しそうに話していたが、こちらに尋ねるときの表情は悲しげなものだった。

    「…すみません。みんなで花火をした、ってとこはなんとなく記憶にあるんですけど。一緒にした人の名前とか顔は何も。」

    「…本当に何も覚えてないのか?暦は?ちせは?」
    尋ねてくるガウマの顔も辛そうな表情になる。
    だが、おそらくは人名だろうか。それを出されてもいまいちピンとこない。

    「…すみません。」
    だからそう答えるしかない。
    名前を聞けば何か引っかかりがあるかと思ったが、残念ながらそうではなかったらしい。

    「…夢芽のことも覚えてないのか、蓬。」

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:40:06

    >>4

    偶然甦ったミイラとロボットに乗って彼女ができてミイラになって甦ったけど記憶がほとんどないユニバースです

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 07:52:14

    夢芽。
    その名前を聞いたとき、胸の奥がざわついた。

    『傷、治んないや』
    『ずっと消えない痕になるといいね』
    『なんでよ?』
    『何十年経ってもきっと忘れないと思うから』

    唐突に思い出したそんな会話。
    弾かれたように自分の手の甲を見る。

    そこに刻まれた不思議な形の傷痕見て呟く。
    「夢、芽…?」
    おそらく今まで何度も口にしてきたのであろう大切な名前。口にすると、心が暖かな気持ちになった。

    「蓬!?夢芽のことは覚えてるのか!?」
    ガウマが興奮した様子で尋ねる。
    そこで蓬は、自分が涙を流していることにようやく気付いた。

    「あ、いえ、覚えてるわけではないんですけど…。
    その名前を聞いたり、口にしたりするとなんか懐かしい気持ちになるというか…。すみません。突然泣いたりして」
    涙を拭いながら答える。
    ガウマは蓬が泣き止むまで、そっと頭を撫でていてくれた。

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 08:11:42

    蓬は、5000年前に一度死んだ。
    といっても、戦いの中で倒れたわけではない。
    怪獣優生思想との戦いは、仲間たちと乗り越えた。
    別の宇宙へ迷い込んだ際も、そこでできた友人や、元の世界の仲間たちと宇宙の脅威を退けた。
    記憶にはないが、その後の人生は平和過ごし、きっと穏やかな最期だったはずだ。

    だが、蓬は蘇った。
    自分が一度死んでいたこと、自分の名が「ヨモギ」であること、そして自分の力のこと。
    それ以外についてはほとんど思い出せなかった。

    蓬が蘇ったそこは、かつて暮らしていた世界と似ていたようだった。
    「ようだった」というのも、偶然蓬を見つけてくれたガウマたちが言っていたからで、蓬自身にはその実感はない。

    ガウマと出会った際、彼は蓬がその世界にいることに驚きつつも再会を喜んでくれた。
    そして、蓬の記憶がないことを聞きまた驚いたのだが、保護してくれたのだ。

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 08:22:23

    ガウマたちに保護されてから蓬は「新世紀中学生」の、特にガウマの任務を手伝うようになった。
    彼らは時折別の宇宙へ降り立ち、その宇宙の脅威を排除する。
    ガウマが「ダイナレックス」に変身する姿に蓬は記憶がないにもかかわらず、すんなりと受け入れることができた。

    ダイナレックスは非常に強力ではあったが、それでも苦戦する相手は少なくなかった。
    グリッドナイトや他の新世紀中学生が一緒の時であれば強力して立ち向かうこともできたが、
    ガウマ一人の時は苦戦を強いられることも珍しくなかった。

    ある時、ガウマ一人での任務で敵と戦闘になった際、蓬は自分の能力について考えていた。

    (この能力なら、ガウマさんを手伝えるかもしれない)

    そう考えた蓬は、右手を伸ばし人差し指と中指、薬指と小指を合わせてVサインを作る。

    かつて、怪獣優生思想が使った怪獣を掴んで操る能力。
    蓬にもその能力の才能が見られ、これまで数度蓬や友人たちの危機を救った。

    だが、5000年の眠りはその能力にも変化を齎した。
    「インスタンス・ドミネーション」

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 08:23:25

    割と原作でも蓬が何らかの理由で蘇っちゃうのは有り得そうだよね。
    怪獣使いの力を使っちゃってるわけだし

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 08:30:54

    蓬がそうつぶやくと、どこからか青い竜人型のロボットが現れた。

    ダイナソルジャー・ライジングブルー。

    可能性の世界で生まれたもう一体のダイナソルジャー。

    それを呼び出し操ることが、今の蓬の力だった。


    <ダイナソルジャー…!?蓬、なんでそいつを…>

    「話は後です、ガウマさん。まずは敵を倒しましょう」


    記憶はなくとも体が覚えているのか、蓬のダイナソルジャーRBの操縦技術は目を見張るものがあった。

    ダイナソルジャーRB自体には主だった火力兵装はない。

    だが小柄な体躯を活かした素早い動きで敵の注意を引き、その隙にダイナレックスで攻撃するというコンビネーションで敵を撃破した。


    初めてガウマと共闘してから、蓬はガウマの任務を手伝うようになった。

    とはいえ、このころからガウマの任務には他の仲間も同行することが増えたので、蓬が手伝うこと自体はそこまで多くなかった。

    これは蓬が知らぬことだが、ガウマは蓬に能力を使わせないため、ナイトや他の新世紀中学生に任務に同行するよう依頼をしていたのだ。

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 08:32:51

    すみません。夜中から勢いで書き始めたので書き溜めが尽きました。初めてなので続き遅くなるかもしれませんがご容赦いただけますと幸いです。

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 09:38:01

    大変好みなストーリーです。応援させていただきます

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 09:39:37

    保守

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 16:34:31

    ある日、任務で降り立ったユニバースで、宿をとり夜を過ごしていると、
    新世紀中学生の制服を脱ぎ、カジュアルな恰好をしたガウマがやってきた。

    「蓬、今いいか…?」
    「ガウマさん…」
    突然の来訪にもさして驚いた様子もなく、蓬はガウマを部屋へと招き入れた。

    「すまんな、こんな夜中に。もしかしてもう寝るところだったか?」
    時刻はもうすぐ新しい日付になろうかというところ。
    本当はもう少し早く来るつもりだったと、申し訳なさそうにガウマは言う。

    「大丈夫ですよ、眠くないんで」
    特に気にした様子もなく蓬は答えた。
    蓬は特別ガウマに気を遣ったわけではなく本当に眠気を感じていなかった。

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 16:42:02

    「そうか…。それで話なんだが…蓬、お前、あの力はなんだ」
    「なにって…インスタンス・ドミネーション。怪獣を操る力ですよ」
    「それは知っている。だが、あの力は『そこにいる』怪獣を『掴んで』操る力だ。あんな風に『何もない場所から』ダイナソルジャーを『呼び出して操る力』じゃない」
    「まあ5000年…ガウマさんの時代からだと10000年以上ですっけ、それだけ経てば力なんて変わるんじゃないですか?」
    「適当言ってんじゃねえよ。それに、百歩譲って怪獣を召喚して操る力になっていたとしても、お前が呼び出したのは色違いとは言えダイナソルジャーだ。怪獣じゃない」
    「それに関しては俺もよくわかんないんですよね。自分がそういう力があるって知ってて、それを使ったら出てきたのがアレだったんですもん」

    蓬は嘘をついていない。そもそも、それ以上のことは知らないのだ。
    自分には能力があることは知っている。その能力の使い方も知っている。だからそれを使った。
    かつて、怪獣を掴んだ時と同じように。できるからやったまでなのだ。

    「…はぁ。じゃあ次だ。お前、あの力を使ってどこか体おかしくなってたりしてないか?」
    「はぁ…。や、別にどこも痛くはないですけど」
    「痛み以外にもなんか、こう、腹減らなくなったりとか、夜眠れなくなったりとか、そういうの、ないか?」
    「今日も飯は食べましたし、今ガウマさんと話してるから眠くはないですかね」
    蓬は内心マズいなと感じつつ、それはおくびにも出さずに答えた。

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 16:46:57

    5000年の眠りから目覚めた蓬は、わりとすぐに自身の体の異変に気づいた。

    まず、腹が空かない。
    目覚めた直後で手持ちの金も少なかった蓬は、「空腹が限界を迎えたらその時何か食べよう」と考えていた。
    だが何時間経っても空腹は訪れず、一度は今の状況が夢ではないか疑ったほどだ。

    そして次に眠くならない。
    こちらも目覚めた初日は、まあ今まで寝てたようなもんだし1日目くらいは、という楽観的な考えでいたが、
    2日目、3日目と眠くならずに夜を過ごすとなると、流石に自分の体はどこかおかしいと気づき始めた。

    眠らない、腹も減らない体は便利だった。
    ガウマに保護されるまでは、色んなバイトを掛け持ちし当面の活動資金を稼ぐことができたし、目覚めた世界についての情報も集めることができた。

    このことはガウマには伝えていない。
    昔からの悪癖である「別にわざわざ伝えるほどのことではないか」という考えが、蓬の中に浮かんでいた。
    それに、なぜかガウマは蓬に力を使わせたくなさそうなフシがある。
    伝えることで何もさせてもらえなくなるのは、ガウマと一緒に戦えなくなるのはなんとなく嫌だった。

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 19:22:14

    保守

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/06(土) 22:11:31

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 00:38:32

    これは良いSS

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:34:30

    「別に俺はなんともないですよ、心配してくれてありがとうございます」
    これで話は終わりだ、というかのように話題を終了させる蓬。
    ガウマはまだ何か言いたそうだったが、
    「…とにかく、蓬、その力をあんま使うんじゃねえぞ。
    それは理から外れた力だ。今はなんともなくても、今後どうなるかはわからない。
    話はそんだけだ。邪魔したな」
    そう蓬に釘を刺し、部屋を後にした。

    「今後どうなるか、か…。俺はもう、どうかしちゃってるんですよ、ガウマさん」
    ガウマが部屋を出た後、誰にも聞こえないほどの声量で蓬はつぶやいた。

    翌日、蓬はガウマに連れられて町に出た。
    このユニバースの滞在目的は戦いというわけではなく、調査がメインだそうだ。
    蓬は任務と聞いていたが、それは半分嘘だったようだ。ガウマが蓬に気を遣わせないための方便だった。

    「ここは俺たちが出会ったユニバースだ。
    ここで蓬の記憶について調査するためにナイト達と合流することになっている」
    (5000年経っても文明レベルとか、その辺りはそんなに変わらないんだな…)
    ガウマの話を聞きながらそんなことを考えていた。

    「少し町を見て回りながら合流場所まで行くぞ。途中で何か気になることがあれば何でもいってくれ」
    「わかりました。すみません、ガウマさん。他にもやらないといけないことがあるのに…」
    「ンなもん気にすんな。覚えてないだろうが、お前は俺の命の恩人で大事な仲間だからな。
    お前のためなら何だってしてやるよ」
    ガウマはさも当たり前のようにそう言って笑った。

  • 22二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:38:16

    蓬とガウマは町を歩いた。
    商業施設、プール、歩道橋。
    初めて見る、だけど見たことある気がする懐かしい景色。
    そんなちぐはぐな感想を抱きながら二人は進む。
    そして大きな橋を渡り、とある川の堤防までやってきた。

    (あ、アレは…)
    目の前には大きな水門。他の建物と同じ、初めて見るはずの物。

    『今日放課後って時間あったりします?』
    『じゃあさ。9時にまたここに来てくれません?』
    『う~んと…蓬君なら私の話聞いてくれると思って』

    「…」
    ぼんやりと水門を見つめる蓬。
    それを見るガウマの表情に蓬はついぞ気づかなかった。

    「ここだ」
    ガウマに連れられてきたのは橋の下。
    少し見上げると、人一人くらいは横になれそうなスペースがある。

    「…ったく、ナイト達まだ来てねえのか。すまん蓬、もうしばらく待ってくれ」
    「あぁ全然、お構いなく…」

    蓬は、ある一点を見つめながら心ここにあらずといった風な返事をした。

  • 23二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 03:47:40

    「待たせたな、ガウマ」
    「お待たせしましたガウマさん、お久しぶりです」
    現れたのは、銀髪で片目を隠した青年、そして眼鏡をかけた女性だった。
    夢で見たスーツ姿の二人、ナイトと2代目。彼らの名前については事前にガウマから聞かされていた。

    「ナイトお前おっせーよ。2代目もわざわざすんません」
    「いえいえ~。それで、彼が…」
    2代目の視線がこちらに移る。

    「あぁ、どうも…」
    蓬が二人に挨拶をしようとしたその時。

    「…そこから動くな」
    ナイトが腰に下げた剣を握り、底冷えするような声音でつぶやいた。

    「な、ナイトくん!?」
    「おいナイト!てめえ何して…」
    2代目とガウマが動揺の声を上げる中、ナイトだけは油断なく蓬を睨んでいた。

    「ガウマ、どういうことだ」
    「…なんのことだよ」
    「とぼけるな。俺たちは麻中蓬が記憶を失っていると聞き、その原因究明のためにここにやってきた。
    お前は麻中蓬を連れてくると言っていた。だが、そこにいるそいつは"誰だ"」
    「…やめろ」
    「まさか気づいていないわけではあるまい。そいつは…」
    「やめろって言ってんだろ!!!」
    ガウマが叫んだ。その先を言わせてはならない。"蓬"には聞かせてはならないと。
    だが、ナイトは止まらない。彼は事態を呑み込めていない蓬を見ながら言い放った。

    「そいつは麻中蓬ではない。そいつは何者だ」

  • 24二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 12:02:31

    保守

  • 25二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 18:20:42

    保守

  • 26二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:18:41

    楽しませてもらってます

  • 27二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 00:40:33

    続き待ってます

  • 28二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 01:16:53

    ダイナゼノンユニバースの脚本が流出したのかと思ったくらいあり得そうな未来

  • 29二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 02:46:40

    (俺が…"麻中蓬"じゃない?そんなこと…だって…)

    蓬は、ナイトが何を言っているのか理解できなかった。
    いや、本当のところ、自分でも心のどこかで考えていた。考えて、その度に考えないようにしていた。
    自分は麻中蓬だ。少なくとも自分にはその自覚はある。
    だが本当にそうなのだろうか。自分は記憶喪失者だ。僅かに覚えている記憶も本物だという確証がない。持てない。
    もし、その数少ない記憶すら本物でないとしたら自分はいったい何者なんだ。
    今まで目を逸らしてきた事実を突きつけられ、眩暈を覚える蓬。
    そのまま倒れこみそうになった蓬だが、その体を支える者がいた。

    「…大丈夫か?蓬」
    「ガ…ウマ…さん…」

    ガウマは蓬を支えながらナイトに向けて言った。

    「確かに、こいつは俺たちと一緒に戦った蓬とは少し違うかもしれねえ。記憶喪失だってのもあって信用できねえかもしれねえ。
    だがな、俺はこいつと出会ってからこの中で一番長く一緒の時間を過ごしてきた。その俺が断言してやる。
    こいつは"蓬"だ!俺たちの仲間で、俺の命の恩人の、"麻中蓬"だ!!」

    蓬は、ガウマの言葉を困惑しながら聞いていた。
    先ほどナイトはガウマに「気づいていないわけはない」と言った。
    つまり、ガウマも自分に対し何かしら違和感を持っていた、ということになる。
    なのになぜ彼は、得体の知れない自分のことを信じてくれるのか。自分のことを"蓬"と呼んでくれるのか。

  • 30二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 02:48:48

    「蓬」
    ガウマは、真剣な表情で蓬を見た。
    「世の中には、人として守らなきゃならないものが三つある。約束と、愛と、あと一つは、なんだ?」

    それはかつてガウマが何度か口にした言葉。
    怪獣の襲来や、それ以外の要因でついぞ蓬は三つ目を聞くことができなかった。
    だが、蓬はその三つ目が自然と口から出た。

    「…賞味期限です。」

    なぜ自分は三つ目を知っていたのか。
    ここに来るまでガウマとはそんな話はしたことはなかった。
    だが、この言葉は知っている。覚えている。

    その言葉を聞き、ガウマはニッと笑い、蓬の頭を撫でた。
    「正解だ。覚えてんじゃねえか」

    その言葉に蓬は堪えていたものがあふれ出した。
    ああ、この人は本当に変わらない。
    優しくて、かっこよくて、頼りになる隊長だ。

    改めてガウマはナイトに向き直り言い放った。

    「こいつは蓬だ。他の何者でもない」
    「ガウマ、お前のことは割と信用している。だがイレギュラーをこのまま放置しておくわけにもいかない」
    世界を守るものとして、ナイトの言い分は尤もだった。
    だがガウマも負けじと言い放った。
    「こいつがなんかしたときは俺が命をかけてでも止めてやる!だからお前はぜってえ手ぇ出すんじゃねえ!」

  • 31二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 02:52:12

    ガウマとナイトの間に緊張が走る。
    自分という異物のせいで二人が仲違いしてほしくない。
    蓬は何か言わねば、と口を開きかけたその時。

    「ストップ。もういいじゃないですか、ナイトくん」
    一触即発だった空気には似つかわしくない、おっとりとした声が場に響いた。
    その瞬間、今までナイトが纏っていた殺気が霧散した。

    「…2代目」
    「確かに彼は私たちが知る蓬さんではありません。ですが彼の本質は蓬さんによく似ています」
    2代目は蓬を見ながらそういった。

    「驚かせてしまってすみません。ガウマさん、蓬さん。ナイトくんは蓬さんを試したんです」
    「試した…?俺を…?」
    2代目は頷く。

    「先ほども言いましたが、私たちはあなたとここで出会ったとき、私たちが知る"麻中蓬"とは似て非なる存在だと感じました。
    そんな人間が記憶喪失だと言うんですから、流石に少しは用心しないといけません。
    そこでナイトくんは、あえてあなたを動揺させ、傷つけるようなことを言い、その際の行動を見て判断しようとしたのですよ」
    「2代目、それ以上は」
    「あなたが何かしらの手段で暴れるようなら、その時点で脅威とみなし排除することも検討していました。
    結果的にはあなたは細かい部分では私たちの知る蓬さんとは違いますが、本質は似ているという結論に至りました」
    まぁ最初からそんなことにはならないと思ってましたが、という呟きは隣にいるナイトにしか聞こえなかった。
    2代目は優しく微笑んだ、かと思えば申し訳なさそうな表情になった。
    「…すみません。ナイトくん不器用なので、こんな荒っぽいやり方になってしまって」
    「…」
    ナイトはやや居心地の悪そうな空気を出しながら蓬とガウマを見た。

    「…とにかく。お前たちは信用する。早速そこの麻中蓬について調査を始めるぞ」
    「お前な…まあいい、信じてくれたならそれでいい。よろしく頼むぜ、二人とも」

  • 32二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 11:10:35

    保守

  • 33二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 18:36:28

    蓬の生まれ変わりなのかそれとも…

  • 34二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 20:22:53

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 23:18:38

    ナイトくんや2代目が一目で麻中蓬ではないとわかる何かがあるんだよな・・・
    似て非なると言ってるし、姿が別人とかじゃないと思うが
    ガウマさんも発見したときには蓬と思わないと声をかけてないだろうし

  • 36二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:05:31

    「調査するにあたって、今のお前の状態について詳しく聞いておく必要がある。麻中蓬、今のお前について包み隠さず全て話せ」
    「わかりました」

    蓬は記憶にある限り全ての自分の情報を二人に伝えた。
    目覚めてからガウマに出会うまでのこと、自分の能力のこと。
    そして、ガウマにも話していなかった体の異変のこと。

    蓬の体に起きている異変について話した時、ガウマは頭痛をこらえるようにしながら問うた。
    「なんか様子がおかしいと思ってたが…。なんで今まで黙ってた」
    「だって話したらガウマさん、俺にもう戦うなって言うでしょ?」
    「当たり前だ!そんな状態になってるのをわかってて力を使わせるわけにはいかねえだろ」
    「だからですよ。俺は、自分にできることがあるのに何もしないで居たくないです」

    蓬はガウマの目を見ながらはっきりと告げた。
    ガウマは頭を掻きながら言った。
    「まあどうせ言っても聞かなかっただろうしな。変なとこで頑固だしなお前。だが蓬」
    蓬に向き直るガウマの表情は真剣だった。
    「前にも言ったがその力は理から外れた力だ。今後も使い続けて、体の異変がもっと悪化するかもしれない。
    これからは本当に使うべきだと思った時にだけその力を使うと約束してくれ」
    ここまでまっすぐに言われると蓬もはぐらかすことはできなかった。
    「…わかりました。すみません、わがまま言って」

    二人の会話の横で、ナイトはある一点が気になり考え込んでいた。
    (5000年前に一度死に目覚めた、だと…?だが、しかし…)
    「ナイトくん…」
    2代目も同じところが引っかかっているのだろう。ナイトは頷き返した。
    「一度、彼らにも会ってもらいましょう。そこで全員に話を聞いてもらったほうが早そうです」

  • 37二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:08:18

    読んでいただいてありがたいですが、平日だと展開を進められるほど話考える時間がなさそうで、進みが遅くなりそうです。すみません…。なるべくお待たせしないようには頑張りますのでご容赦いただけますと幸いです。

  • 38二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 12:16:10

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 18:56:13

    ガウマと同じ状況なのかそれとも?

  • 40二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:35:12

    偶然良いSSに会えるとは…俺も読者の輪に参加させてもらおう

  • 41二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 01:01:01

    「お二人とも、少しいいですか?」
    2代目は蓬とガウマに声をかけた。

    「まず、今回の蓬さんに起きた事象は今までに例がないものです。情報が少なすぎて今の段階では正直何もわかりません」
    お力になれずすみません、と2代目は申し訳なさそうに言った。
    かつてガウマも5000年前から甦ったという。だが、その時彼には昔の記憶があった。
    あの時とは状況が違いすぎる。いくら宇宙を渡ることができるグリッドナイト同盟でも未知の事象はそう簡単には解決できなかった。

    「今日のところは蓬さんはこの町の探索を続けてください。
    記憶喪失というのは何をきっかけに記憶が戻るかわかりません。町の風景が刺激になって何か思い出すかもしれません。
    ガウマさん、あなたは蓬さんにご一緒してあげてください。私たちは何かしら情報を集めてみます。
    こちらから連絡するので、その時またここに集まって、お互いの調査結果を報告するという形で行きましょう」
    つまり一旦解散して各々で情報を集めるということだろう。

    「わかりました。すみません、2代目さんたちに手間かけさせてしまって…」
    「いえいえ、気にしないでください。困ったときはお互いさまですから~」
    「そうだ麻中蓬、2代目の優しさに感謝しろ。寝るときは足を向けて寝るな」
    ナイトは冗談か本気かわからない口調で言うのを蓬は苦笑いで返すしかなかった。

    話はまとまったので、ガウマと蓬はグリッドナイト同盟の二人と別れ、町の散策に向かった。
    だが少し歩いたところで、二人を呼び止める声があった。

    「あれ?隊長?よもさん?」

  • 42二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 01:05:25

    「おぉ、ちせ。何してんだこんなとこで」
    現れたのは飛鳥川ちせ、ガウマ隊の一員であり、黄金の竜、ゴルドバーンを友達にもつ不登校少女。

    「これからみんなで遊び行くんすよ~。その待ち合わせ場所がこの辺りなんす」
    「なるほどな。お前らが元気そうで何よりだ」
    「隊長こそ元気そっすね。ていうか隊長、こっち来るなら連絡くださいよ~。それならガウマ隊みんなで遊びにいったのに!」
    「すまんすまん。色々立て込んでてな」
    ガウマとちせが話している光景を蓬は、あの服寒くないんだろうか、と全く関係ないことを考えながら聞き流していた。

    自分にも昔はああやって仲良くしてくれる友人がいたのだろうか。
    そんな暗い考えに入り込みそうになったとき、ちせの視線がこちらに向いた。

    「ていうかよもさん、今日なんか用事あるって南さんから聞きましたけど隊長の手伝いだったんすね。
    南さん、『蓬、私と遊ぶのより大事な用事あるとかありえなくない?』って言って怒ってましたよ~?」
    「あ、あぁ、うん、ごめん。」
    南さん。その名前を聞いた途端、蓬の思考は回らなくなってしまった。
    うまく答えることができないのは記憶喪失だけが原因ではないだろう。
    「いや冗談すよ、冗談。…どしたんすかよもさん。なんか変っすよ。困りごとっすか?」
    「あぁ、ちせ。いま蓬はちょっと…」
    事情を知らないちせに説明しようとしたガウマだが、それを遮る声があった。

    「…蓬?」
    振り返るとそこには、栗色の髪の少女が立っていた。

  • 43二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 01:10:49

    「蓬、何してんのこんなとこで。今日用事あったんじゃないの」
    不満と困惑を含んだ声音で尋ねてくる彼女。
    南夢芽、ガウマ隊の一員で、ダイナウイング操縦担当。そして…。

    「ゆ、め…」
    蓬は信じられないものを見るような目で夢芽を見た。
    それと同時に激しい頭痛が蓬を襲った。
    「痛ッ…!」

    見覚えのない光景が脳内に浮かんでくる。
    傷だらけの仲間たち。壊れて荒れ果てた街並み。
    激しい戦いの果て、怪獣の脅威から世界を守った蓬達。
    だがその代償とでもいうのか、自らの腕の中で横たわったまま動かない最愛の人。
    呼吸が苦しい。動悸も止まらない。
    これが自分が失った記憶だというのか。一体自分の過去に何があったのだろうか。

    「蓬!?ねえ大丈夫!?」
    「しっかりしろ蓬!」
    「よもさん!?大丈夫っすか!?」
    突如苦しみだした蓬に3人ともが驚きと共に近寄ってくる。

    大丈夫、ちょっと頭が痛いだけ、心配しないで。
    だが、答えようとした返事よりも先に蓬の体は動いていた。
    「夢芽…!!」
    蓬は、夢芽を抱きしめていた。

  • 44二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 01:12:45

    「!?!?!?」
    突然の事態に夢芽は顔を真っ赤にして固まってしまった。

    「よ、よもぎ!?ちょっ、待っ!ガウマさんとちせちゃんが見てるから!」
    普段から夢芽から惚気話を聞かされているちせは「何を今更」という目をしていたが、慌てている夢芽は気づかない。
    慌てて蓬を引きはがそうとするが、そこで蓬の体が酷く震えていることに気づいた。

    「…蓬?」
    「ゆめ…ゆめが…!生きて…生きてる…!夢芽…!」
    あの蓬が、泣いている。
    かつて海ほたるで姉の話を聞いて泣いてくれたことがあったが、あの時は男の子のプライドか、泣き顔を隠していた。
    だが今はどうだ。人目など気にせず夢芽を抱きしめながらわんわん泣いている。

    「大丈夫だよ…蓬。私はここにいるから。死んだりしてないから」
    夢芽は蓬が落ち着くまでしばらくの間、彼の頭を撫で続けた。

    「落ち着いた?蓬」
    「うん…ごめん。突然取り乱して。ガウマさんもちせ…ちゃんも変な姿見せてごめん」
    漸く泣き止んだ蓬は、3人に謝罪をした。

    「まあびっくりしなかったって言ったら嘘になるっすけど。なんか変な夢でも見たんすか?」
    「いや、そういうわけじゃないんだが…」
    未だ状況が呑み込めていないちせに対して、ガウマはどう説明するか迷っていた。

    「ガウマさん」
    夢芽はいつになく真剣な表情でガウマの方に向き直り説明を求めた。
    「一体蓬に何があったんですか。ガウマさんは事情を知ってるんですよね。教えてください」

  • 45二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 08:26:28

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 11:38:41

    そういうことかー

  • 47二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 14:46:59

    支援

  • 48二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:18:55

    保守

  • 49二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 01:56:37

    「…というわけだ」
    ガウマは蓬の状態と、ナイトと2代目も合流してこの事象の調査を行っていることを二人に説明した。

    二人は困惑の表情を浮かべたまま、しかしガウマの話は信じてくれたようだった。
    「じゃあ、えっとこちらのよもさんは隊長みたいに一回死んで甦って記憶を失っていると…」
    「で、蓬が元居た世界では私は…えっと、死んじゃってる…んだよね」
    夢芽は蓬の表情を窺いながら訪ねた。
    別世界とはいえ自分が死んでいると聞かされた夢芽の方がショックは大きいだろうに、蓬をまた傷つけないよう気を遣いながら尋ねる様子に思わず苦笑がこぼれた。

    「うん、そうだと思う。さっき夢芽を見た時頭の中に映像が浮かんできたんだけど、多分それが忘れてた記憶なのかな」
    「蓬お前、記憶戻ったのか!?」
    ガウマが蓬を見ながら声を張り上げる。そんな近くで叫ばないでほしい。
    「…声でっか。全部思い出したわけじゃないです。ガウマさんと暦さんとちせちゃんとナイトさんがいて、町はあちこち壊れてボロボロになってて、それで、夢芽が俺の…腕の中で…」
    口に出すと、先ほどよりも鮮明に思い出した。

    荒れ果てた町、冷たくなっていく夢芽の体。そして彼女との最後の会話。

    『…ごめんね、蓬。これ、多分ダメだ…。』
    『…私がいなくなって…すぐ別の女の子と付き合ったりしたら嫌だよ…?化けて出ちゃうかも…』
    『そうだな…ガウマさんみたいに…5000年経っても想っててくれるとうれしいな…』

    それが最後だった。蓬の腕の中の彼女は、まるで眠っているかのようだった。

    思い出せたのはここまでだった。そこから何があったのか、何が原因で自分は死んだのかはいまだ謎のままだ。

  • 50二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 01:59:57

    「少しでも記憶が戻ったんだったらナイト達に知らせたほうがいいか…。俺は二人と連絡を取る。ちせは暦を、夢芽は…この世界の蓬に連絡してすぐ来てもらってくれ」
    「センパイは多分暇してるんで大丈夫だと思いますけど、よもさん来れますかね?南さんのお誘い断るほどの用事だったんすよね?」
    「それなら大丈夫。蓬、来るって」
    即答だった。少し不満げに夢芽が答えた。
    「まあ来てくれるならいいんだが、夢芽、お前なんて言って蓬呼び出したんだ?」
    「別に、普通にガウマさんが呼んでるって言ったらすぐ行くって返ってきましたよ」
    彼女の誘いは断るのに、兄貴分の呼び出しにはすぐ答えるのだ。後で蓬はお仕置きしなければ。
    「あいつ…。まあいい。それじゃいつもの場所に来てくれるようにも言っておいてくれ。俺たちは先に向かうぞ」

    いつもの場所、かつてのガウマの居住場所についた蓬たち。
    そこにはもうナイトと2代目が到着していた。
    その後しばらくして暦、そしてこの世界の蓬が到着した。


    「…」
    "甦っていない方の"蓬は混乱していた。なぜ自分がもう一人いるのか。
    自分と同じ顔をした人がいるという初めての体験で蓬は今までにない居心地の悪さを味わっていた。
    夢芽からはガウマさんが呼んでいるとしか聞かされていないし、その夢芽とちせはなぜか蓬が二人いることを受け入れている。
    別の宇宙の友人である裕太の言葉を借りるなら、世界がおかしくなっているようだ。

    「あの、ガウマさん、これどういう状況ですか?」
    同じく事態を呑み込めていない暦がガウマに尋ねた。同じ状況の仲間がいたので蓬は少しだけ安心した。
    暦の疑問に答えたのは、ガウマではなく2代目だった。
    「今から説明します。そちらの蓬さんの状況、そして私たちが今の時点で調査してわかったことを」

  • 51二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 07:49:10

    理解したわ(理解してない)

  • 52二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 12:04:32

    保守

  • 53二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 18:34:09

    夢芽と死別したユニバースか…

  • 54二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 22:11:10

    保守

  • 55二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 06:12:38

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 12:02:39

    支援

  • 57二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 19:30:39

    保守

  • 58二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 21:55:39

    蘇ってない方の蓬、ヨモギの過去聞いたら共感して泣いてそう

  • 59二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 22:43:30

    座して待つ…

  • 60二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 02:33:28

    支援

  • 61二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 03:25:23

    「まず、蓬さんの状況についてです。彼は現在記憶を失っています。覚えていることは自身が5000年前に一度死に、甦ったこと。そして、ダイナソルジャーを召喚し、それを操ることができる能力を持っていることです」
    2代目は暦と甦っていない方の蓬に向けて簡潔に説明した。

    「5000年前って…それ、ガウマさんと同じ…」
    暦が驚きつつも落ち着いた様子でガウマを見た。
    「ああ、状況としては似ている。だが、俺は甦ったときに記憶はあったし、ダイナゼノンだって俺の能力で召喚してたわけじゃなかったけどな」
    ガウマも、かつて自分たちが行使したものと同じ名前の能力が全く違った効果となっていることに未だ疑問を持っている。

    「それで蓬さん。先ほどガウマさんからお聞きしましたが、記憶が戻ったんですよね?」
    「全部じゃないですけど、思い出しました」
    「思い出した記憶の内容を聞かせてもらえますか?」
    2代目はまっすぐ蓬を見た。
    「…わかりました」
    蓬は思い出した記憶を、信じたくはない出来事について話し始めた。

    「…そんな、南さんが…」
    暦は愕然とした表情で話を聞いていた。
    「…そっちの俺は思ったより冷静だね」
    別の宇宙とはいえ最愛の人が死んだ話をされたのに、少しも動揺した様子がない。
    "甦ったほうの蓬"は"甦っていない方の蓬"に対して少し皮肉るように言った。
    「まあ、冷静っていうか、俺は夢芽は生きてるって信じてるから」
    "甦っていない方の蓬"はさも当然というように言った。
    「…あの光景を見てないからそんなことが言えるんだ。あの状態じゃ夢芽はもう…!」

    だが、予想外の人物が蓬の言葉を肯定した。
    「そっちの麻中蓬の言うとおりだ、麻中蓬」

  • 62二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 03:26:02

    「ナイトさん…」
    「いや今のだとどっちのよもさんかわかりづらくないすか?」
    「お前は南夢芽の最期を見たといったな。」
    ちせのツッコミなど意に介さず、ナイトは続ける。

    「だが本当に南夢芽は死んでいたのか?即死だったのではないのだろう。呼吸は?脈は?ちゃんと確かめたのか」
    「いや、でも…」
    あまりに堂々としたナイトの態度に蓬も自身の記憶を疑わしくなっていた。
    確かに蓬は夢芽の最後の言葉を聞いた。だが本当に"最期"の言葉だったのだろうか。
    そもそも、自分が"麻中蓬"だと認識しているの間違いだったのだろうか。

    2代目がナイトの頭に軽くチョップを入れた。
    「こらナイトくん、蓬さんを元気づけたいのは分かりますが言葉足らず過ぎですよ。
    蓬さんもすみません。ナイトくん、悪気はないんです。ただ、本当に確証を得るまで希望を捨ててはいけないって言いたいんですよ」
    「すみません。2代目」
    ナイトは淡々と謝り、蓬に向き直った。
    「楽観視はするな、だが悲観的にもなりすぎるな」
    「…はい、ありがとうございます」
    その不器用な励ましは、蓬に本当に僅かであるが希望を齎した。

    2代目が全員を注目させるために手をたたいた。
    「さて、それでは次は私たちの調査結果の発表と行きましょうか。
    まず、蓬さんが最初に目覚めた世界は、蓬さんが元々生きていた世界ではありません。どこから無理やり飛ばされてきた可能性が高いです。
    記憶の障害もその影響と考えられます。何らかの要因で蓬さんは元々居た世界から、目覚めた世界に飛ばされた。
    その際、夢芽さんのことと、最後に聞いた夢芽さんの言葉が影響して『5000年前から甦った麻中蓬』が誕生したのでしょう」
    「何らかの要因…それってまだわからないんですよね?」
    「すみません。そこまではまだ。ただ、要因さえわかれば帰ることは可能でしょう。そしてここからが重要です。
     うまくいけば、夢芽さんを助けることができるかもしれません」

  • 63二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 03:27:38

    その設定は無理がないかとかいまいちリアリティに欠けてないかとか考えてるせいで遅くなってすみません。なんとか無茶苦茶にならないようにまとめつつできるだけ早く続き書きます。

  • 64二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 10:41:00

    大丈夫。夢みたいなことばかり起こってしまう物語だから

  • 65二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 12:08:38

    支援

  • 66二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 18:13:14

    もっと聞かせてよ 自慢していいよ

  • 67二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 19:39:19

    夢芽を失った蓬はその後どう生きたんだろうか…

  • 68二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 22:03:35

    保守

  • 69二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 23:52:11

    凄い楽しみにしているスレです。応援しています

  • 70二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 04:19:42

    保守

  • 71二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 12:36:48

    保守

  • 72二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 18:16:22

    >>8

    戦いの中で倒れたわけではない。

    怪獣優生思想との戦いは、仲間たちと乗り越えた。

    別の宇宙へ迷い込んだ際も、そこでできた友人や、元の世界の仲間たちと宇宙の脅威を退けた。


    の部分は記憶を失っている蓬にわかるはずないし、ガウマさんがダイナゼノンとユニバースの本編の流れを教えたんかね

    しかし、実際にはこの蓬は何かの戦いで夢芽が命を落とした世界の蓬だったと

  • 73二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 21:22:45

    支援

  • 74二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 06:26:30

    保守

  • 75二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:42:09

    >>63 これもまたユニバース

  • 76二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 18:16:15

    青ソルジャー召喚できるし小説のループ時空から分岐したユニバースとか?

  • 77二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:06:03

    "甦ったほうの蓬"の世界で何があったのか気になる
    続きを楽しみにしています

  • 78二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 00:54:43

    面白いものに出会ってしまった…気長に待ってます

  • 79二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 01:37:24

    支援

  • 80二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 02:25:37

    夢芽を助けることができる。それを聞いた蓬の反応は早かった
    「夢芽を助けるために、俺は何をすればいいですか」
    2代目は変わらず真剣な表情で答えた。

    「今から話すことは結構な割合で賭けのようなものです。あくまで『助けることができる可能性がある』という前提で聞いてください。
    まずいくつか確認したいことがあります。蓬さん、どこかの世界で目覚めた際、所持品などはどうなっていましたか?」
    「所持品…ええと、スマホは持ってました。あと財布に多少のお金と。持ってたのは確かそれくらいです」
    「それはラッキーです。一旦原因は怪獣と仮定して話しますが、怪獣にどこか別の場所に飛ばされる際は意識だけ飛ばされる場合と肉体ごと飛ばされる場合があります。
    今回は肉体ごと飛ばされたようなので、原因となった怪獣を倒せば蓬さんは元の世界に戻れるはずです。
    ただ、蓬さんの記憶が戻らないと原因が明確にできません。なので蓬さんには引き続き記憶を取り戻すために散策などしてもらいます」
    つまり現状ではやることは変わらないようだ。だが2代目の話はここで終わらなかった。

    「次に戻った際の時間についてです。これがある意味一番大事です」
    2代目は持っていた鞄から小さな容器を取り出した。

    「これを私のこのバトンにセットすると『フィクサービーム』という修復光線を使用することができます。本来の使用者程広範囲を修復することは難しいですが、ロボット一機くらいなら修復できますよ」
    「あぁ、前にダイナゼノンを直してくれた時の…」
    暦が懐かしそうに呟いた。かつてダイナゼノンは手痛い損傷を負った時、2代目がフィクサービームを使用してくれたおかげで無事修復されたのだった。

    「これを夢芽さんに使用すれば命を救うことも可能でしょう。怪我でも病気でもなんでも治せるはずです。
    ただし、戻った際に夢芽さん既に亡くなられていた場合は効果がありません。フィクサービームでは死者を甦らせることはできません。戻った時の時間が大事というのはそういうことです」
    つまりは蓬が記憶を取り戻すために時間をかけるごとに夢芽を救う確率は下がっていく。もはやなりふりなど構っていられない。
    「俺にできることならなんでもします。皆さん、俺の記憶を取り戻すために協力してください。お願いします」
    蓬は全員に向け頭を下げた。

  • 81二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 02:28:46

    蓬の決意と願いを聞いた2代目はガウマ隊に向き直った。
    「私たちグリッドナイト同盟は蓬さんに協力します。ガウマ隊の皆さんもどうか力を貸してもらえないでしょうか」
    答えは決まっていた。
    「当たり前だ。仲間のピンチを誰が見過ごすってんだ」ガウマが答える。
    「ですね。最初から決まってます」暦がそれに続く。
    「それに、よもさんが元の世界に戻らないと、南さんほんとに化けて出そうっすからね」ちせが笑う。

    「蓬」
    夢芽は"甦った方の"蓬を呼んだ。
    「蓬は、"私"のことが好き?」
    「うん、好きだよ」
    「ちゃんと告白した?」
    「うん、した。でも、返事聞けてなかったかも」
    「じゃあこんなとこにいちゃダメだね。早く戻って、"私"を助けて、返事聞かなきゃ」
    「うん。ちゃんと"夢芽"を助けるよ、絶対」
    「ん、わかった。手伝う」

    最後に蓬。
    改めて、自分と会話するというのも変な気分だな、などと考えながら蓬は口を開いた。
    「俺の彼女、いい女でしょ?」
    「…ああ、すっげえいい女だよ」
    「そっちの夢芽もきっといい女「ねえ蓬それって浮気?」「南さん今はちょっと黙ったほうがいいっすよ」…あー、ゴホン」
    格好つけた感じにしたかったのにそんな空気じゃなくなってしまった。あと夢芽は別の世界の自分に嫉妬しないでほしい。
    「手伝うよ」"甦っていない方の"蓬が言った。
    「ありがとう」"甦った方の"蓬が言った。
    二人の蓬は拳を軽くぶつけるのだった。

  • 82二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 02:31:56

    お待たせして申し訳ないです。休日出勤怪獣に世界を侵略されてました。

  • 83二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 11:29:48

    更新ありがとうございます。休日出勤怪獣との戦いお疲れ様です

  • 84二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 17:14:59

    支援

  • 85二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 19:30:27

    え…なに、この切ないスレ…支援

  • 86二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 21:16:13

    支援

  • 87二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 01:42:25

    支援

  • 88二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 04:05:57

    保守

  • 89二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 09:59:29

    別の世界の自分にも嫉妬しかける夢芽さんはさあ…平常運転か

  • 90二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 12:05:47

    支援

  • 91二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 19:57:36

    楽しみに待ちます

  • 92二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 23:33:54

    支援

  • 93二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 01:42:41

    同じ顔をした二人の少年が、これまた同じように苦笑を浮かべている光景を少し離れた場所から眺める少女がいた。

    「南さんはいつからよもさんがよもさんじゃないって気づいてたんすか?」
    隣にいるちせが尋ねてきた。
    「うーん、割と最初のほうからかな」
    「はぇー、私は全然気づかなかったっすよ。やっぱ一緒にいる時間の差っすかね」
    「まあ具体的にどこがどう変だ、とかはわかんなかったよ。最初に見た時は普通に蓬だと思ったし、急に泣いたときもまた怪獣が出てそれの影響かと思ったもん。
    でも、落ち着いてからあの人と少し話した時、『あぁこの人、私じゃない私を見てる』ってなんとなく感じたんだ」
    ちせがちらりと夢芽の表情を見る。夢芽はとても優しげな表情を浮かべて続ける。
    「多分、あの人にとって別の世界の"南夢芽"は大切な存在で、じゃあそれを取り戻すためには手伝ってあげたいなって思ったんだ。なんか恥ずかしいね」
    「…そっすね。しっかりもう一人の南さんを救ってよもさんとくっつけないとっすね。じゃないと世界が滅んじゃいますし」
    「いや、世界が滅ぶなんて大袈裟じゃない?」
    「いやいや、これがマジなんすよ。実際…」
    「ちせちゃん?」
    「いや~、実際…前に裕太さんと六花さんが喧嘩したときの話してくれたじゃないすか。その時も二人は世界の危機だーって言ってし、つまりそういうことっすよ!」
    「ふーん…」
    どこか誤魔化すような口ぶりのちせに疑問は覚えたが、夢芽はそれ以上追及することはなかった。

    危なかった。ちせは本当に世界の危機を回避した気分となっていた。
    なぜかはわからないが、蓬が夢芽と付き合わないと世界が滅ぶ。その確信はある。
    そして夢芽と付き合わなかった場合、蓬の傍には別の黒髪の女子がいる。その光景もなぜか鮮明に思い浮かぶ。
    それを今の夢芽に話すとどうなるか。それは暦の就活の結果を見るよりも明らかだった。
    夢芽にその話をしなかったのはファインプレーと言えるだろう。人知れずちせは一人の少年の命を救ったのだった。

  • 94二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 01:43:58

    「それはそうと、よもさんが二人いるってのは南さん的にどうなんすか?」
    「どうって?」
    「いや、大好きな彼氏と同じ顔の男がいるのってどんな気分なのかなと」
    「まあ、確かに蓬はかっこいいし優しいしいい匂いするし一緒にいると幸せな気分になるしいざというときは頼りになるし、そんな人が二人もいたらそれはもう最の高だよ」
    「通常運転っすね南さん。そしたら本当はあっちのよもさんが元の世界に戻るの反対じゃないんすか?」
    「うーん、確かに蓬が二人いると私は幸せだけど、こっちの世界の蓬も向こうの世界の蓬もなんか気まずくなりそうだし、それはなんか違うかなって。
    それにさっきも言ったけど向こうの蓬が本当に会いたいのは私じゃないし」
    「なるほど。まあ南さんにはこっちの世界のよもさんがいますし、それで十分ってことすかね」
    「そんなことないよ」
    「ないんすね」
    「蓬が二人いることによって今この空間のハッピーヨモギニウムが倍になってるんだけど、それが失われるのはちょっと悲しい」
    「ハッピー…ヨモ…え?なんすか?」
    「ハッピーヨモギニウム。蓬から発せられる幸せのエネルギー。それを体内に取り込みことによって私たち宇宙の子と神聖大蓬神とを繋ぎ、無限の愛と、無限の調和を…」
    「ストップ!南さん、ストップ!急に早口で喋るのマジ怖いっすよ!」
    「そっか。確かに前に蓬にも言われたっけ。じゃあゆっくり説明するね」
    「いや、大丈夫っす。だいたい、伝わりました」
    「そう?」
    ちせはそれ以上の説明を求めなかった。夢芽の目が怖かったのだ。なんかもうキマってる感じだった。
    「ま、冗談なんだけど」
    「え、あ、な、なんすかもう~。めちゃめちゃビビったっすよ~」
    笑いあう二人の少女。だが知らぬうちに話題に上がっていた少年たちは、なぜかそろって震えるのだった。

  • 95二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 01:44:59

    すみません。ストーリーは進まないんですがどうしても書きたくなって書いてしまいました。本筋の続きもなるべく早く書きます。

  • 96二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 03:22:53

    蓬の一概に気づく夢芽さんは愛が重い

  • 97二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 11:36:42

    寄り道全然オッケーです!

  • 98二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 17:53:43

    こういう浮かれた夢芽さんのよもゆめ成分も大変美味ですので寄り道大歓迎です

  • 99二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 18:05:39

    支援

  • 100二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 21:16:09

    続き期待

  • 101二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 06:38:11

    このレスは削除されています

  • 102二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 07:07:41

    支援

  • 103二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 13:09:13
  • 104二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 20:34:08

    ちせは無意識に小説時空のこと認識してる?

  • 105二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 02:54:10

    保守

  • 106二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 11:09:22

    保守

  • 107二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 18:15:18

    支援

  • 108二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 19:58:50

    支援

  • 109二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 23:42:37

    保守

  • 110二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 10:43:16

    「それでは、ガウマ隊の皆さんも協力してもらうということで。各自で調査を行って、その結果をここで共有しましょう」
    2代目は話を締めくくるようにそう言った。
    一同はそれに賛同したので、そろそろ解散かと思われたその時、暦が手を上げた。

    「あの、いいですか?」
    「はい、何か不明点でもありましたか?」
    「そっちの蓬くんの呼び方とかってどうしたらいいですか?」
    「呼び方、ですか?」
    「1対1で話してる時はまだいいかもしれないですけど、こうやって集まって話したりするときにどっちの蓬くんか混乱しませんかね」
    「たしかに、実際さっき一瞬危なかったっすよ」
    ちせが先ほどのナイトのセリフを思い出しながら続く。
    「だがどちらも麻中蓬だ。片方だけ変えるというのはフェアではないだろう」
    「え、俺も変えるの?」
    「だって向こうの蓬だけ変えるのかわいそうじゃん」
    「いや、そう言われたらそうなんだけど…」
    "甦っていない方の"蓬は軽く抗議の声を上げてみたが、夢芽にあっさりと却下されてしまった。

    「では二人とも呼び名を変えるとして、何かいい案はありますか?」
    「それって今決めないとダメですか?」
    今をしのげばこのまま有耶無耶になってくれるかもしれない。蓬は僅かな希望とともに2代目に尋ねてみた。
    「こういうのは勢いで決めちゃわないとそのまま有耶無耶になっちゃいますからね~。全員集まってる今の間にパパっと決めちゃいましょう!」
    だが、そのような考えなど見透かされていたかのような2代目の回答に蓬は肩を落とした。
    しかし、それまで黙っていた"甦った方の"蓬は手を上げた。
    「あの、呼び方を変えるのは俺だけでいいです。元々俺はこの世界の人間じゃないし、そっちの俺まで名前変えさせるのは悪いしね」

  • 111二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 10:43:52

    「そう言ってもらえると俺はありがたいけど、本当にいいの?」
    "甦っていない方の"蓬からの問いに"甦った方の"蓬はすぐに答えず、ガウマを見て問いかけた。
    「ガウマさん。ガウマさんは今『新世紀中学生のレックス』って名乗ってますよね。それって元々の『ガウマ』って名前は捨てたってことですか?」
    「違うな。確かに俺は新世紀中学生の『レックス』だが、お前らの前では『ガウマ』でもある。まあ呼び方も大事だと思うが、もっと大事なのモンは心だとか振る舞いだとか、その辺だと俺は思うぞ」
    割と大雑把なガウマの回答をおかしく思いつつ、"蓬"は続けた。
    「だそうだよ。だから俺も別に違う名前で呼ばれても大丈夫。『麻中蓬』って名前を捨てるわけじゃないし、それに別の呼ばれ方っていうのもなんか新鮮そうだしね」
    「そっか。わかった。じゃあいい呼び方考えないとね」
    その返事を聞き蓬たちは頭をひねり始めた。

    「そういえば、隊長はなんで『レックス』って名乗ってるんすか?やっぱ隊長がダイナレックスだからっすか?」
    「まあそうな」
    「それじゃあよもさんも同じ方向で考えてみるのはどうっすか?」
    「それで行くと、そっちの蓬くんは今ダイナソルジャーを呼び出して操れるらしいし…『ソルジャー』とかどう?」
    「なんか厳つ過ぎません?」
    「でもかっこいいよ」
    「そうかなぁ」
    「てなわけでどうだ、蓬?」

    『ソルジャー』。目覚めてから一番長く共にいた相棒。その名を借りることになるとは今まで思っても来なかったが、不思議としっくりきた。
    しっくりきたのだが、制服にパーカーというありふれた格好では『ソルジャー』と名乗るにはあまりに不相応な気がした。
    「それで大丈夫です。でも名前負けしてる感が…そうだガウマさん、ちょっといいですか?」
    そう言ってガウマを連れて物陰に消えていった蓬。
    しばらくすると、ガウマとともにスーツに着替えた"蓬"が戻ってきた。

  • 112二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 10:46:52

    「普段着だとちょっと名前負けしてるかなって思ってさ。ガウマさんに借りてきた」
    「サイズが合うのがあってよかったぜ。結構似合ってんじゃねえか」
    新たな装いの"蓬"の姿に一同は驚きを隠せなかった。

    「蓬くんかっこいいね」
    「センパイよりもスーツ似合ってますね、よもさん」
    「似合ってるかな、ゆ…」
    スーツ姿の蓬を褒める暦とちせ。だが一番感想を言いそうな夢芽が黙っているので、"蓬"は夢芽に尋ねようとした。

    そこには一心不乱に写真を撮る夢芽がいた。
    「ちょっと蓬、ポーズ取ってくれない?腰に手を当てて、そう、そんな感じで…」
    「夢芽さんストップ」
    蓬は、夢中で写真を撮る夢芽の肩に手を置きそれ以上の撮影を制止した。
    「同じ顔だとしても別の男に夢中なのは彼氏的になんかちょっとアレかな~って」
    「じゃあ今度蓬もなんかコスプレしてよ」
    「いいけど夢芽もなんか着てね?」
    「おーいそこ、帰ってからいちゃつけー?」
    すっかり見慣れた二人のやり取りにあきれながらちせがツッコんだ。

    二人のやり取りに苦笑しながら、"蓬"は口にした。
    「改めて、新世紀中学生の『ソルジャー』です。よろしく」
    「まあ臨時メンバーってことになるだろうけどな、よろしく頼むぜ、後輩」
    その瞬間から"蓬"は"新世紀中学生のソルジャー"となったのだった。

  • 113二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 10:48:07

    先日のガウマ隊、グリッドナイト同盟との話し合いから三日が経った。
    その間、各自で何か異変がないか調査を進めていたが、これといった成果は見られなかった。
    遅々として進まない調査に、"蓬"も焦り始めていた。

    「焦るのは分かるが落ち着け、蓬」
    そんな"蓬"を見てガウマは声をかけた。みんなの前では混乱しないように"ソルジャー"と呼ぶが、二人の時は未だ"蓬"と呼んでいた。
    「…わかってます。わかってるんですけど、このまま時間だけ過ぎたら夢芽が…」
    「今日はナイト達や他の新世紀中学生の先輩方も来てくれるらしい、もしかしたら何かわかるかもしれん」
    「…はい」

    集合場所に集まった一同は互いに調査した結果を報告しあったが、今回も特に手がかりがない、という結論だ。
    調査が手詰まりとなってしまい、場に重苦しい空気が流れだす。そんな時だった。

    「あれ…?皆さん、なんか聞こえないっすか?」
    ちせが言ったその時だった。大きな地響きとともに人々の悲鳴が聞こえてきた。
    蓬たちは音の方を見てみると、何か大きなものが町の方から歩いてくるのが見えた。
    「あれは…ダイナゼノン!?」

    歩いてくる大きな物体はダイナゼノンによく似ていたが、所々で異なる部分があった。
    まず色が異なる。ダイナゼノンは赤を基調としたカラーリングだが、目の前に現れたのは白いダイナゼノンだった。
    そして、機体の各部が元々のダイナゼノンと異なる形状をしていた。片腕には巨大な爪が生えており、尻尾まで生えている。そして頭部のアンテナパーツは中央が金色で左右が虹色をしている。
    まるでかつて戦った怪獣、ガギュラを取り込んだかのような見た目をしていた。
    「あれ、ダイナゼノンだよね…?でもなんか色違ってない?」
    「ていうか腕とか違うし尻尾なんて生えてなかったっすよ」
    「ねぇ蓬…あれって」
    「うん。…シズムくんたちの怪獣に似てる」

    その異形のダイナゼノンの登場に、蓬たちは数瞬茫然としていた。しかし、異形のダイナゼノンが腕を天にかざし、大きなエネルギーの刃を作り出した。
    そのまま振り下ろせば町に甚大な被害が出てしまう。最初に動いたのはナイトだった。

  • 114二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 11:23:22

    保守

  • 115二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 19:13:08

    支援

  • 116二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 22:30:21

    敵は怪獣優生思想なのか

  • 117二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 06:48:57

    支援

  • 118二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 16:25:47

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 21:37:04

  • 120二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 23:56:37

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 10:59:44

    支援

  • 122二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 15:54:18

    保守

  • 123二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:56:37

    保守

  • 124二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 06:28:56

    続き待ってます

  • 125二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 16:58:43

    支援

  • 126二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:14:32

    保守

  • 127二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 08:21:39

    保守

  • 128二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 18:48:47

    保守4日目

  • 129二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 23:19:41

    支援

  • 130二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 00:54:49

    「ーーーッ!!」

    気迫とともにグリッドナイトに変身する。グリッドナイトは両手に紫色の光輪を生み出し、振り下ろされるエネルギー刃を受け止めた。

    <グッ、なんて重さだ…!!>

    辛うじて受け止めたグリッドナイトだったが、受け止めた状態から押し返すことができないでいた。


    「ナイトさん!!ガウマさん、俺たちも早くダイナゼノンに!!」

    「わかってる!!アクセスコード・ダイナレックス!!」

    ガウマが叫ぶとその体が光に包まれた。そして入れ替わるようにダイナレックスが頭上から現れた。

    着地したダイナレックスに全員で乗り込むと、即座に変形を行い、ダイナゼノンの姿となる。


    <<<<<合体竜人!ダイナゼノン!!バトルゴー!!!!!>>>>>


    全員の掛け声とともにグリッドナイトを押さえつけている異形のダイナゼノンに向け走り出す。

    <ダイナセイバー!!>

    そのまま異形のダイナゼノンの側面から豪快に斬りかかる。

    しかし、敵はその見た目からは思いもよらない俊敏な動作で攻撃をかわし、ダイナゼノンたちから距離を取った。


    <あいつ…思ったよりすばしっこいな!>

    <油断するな、やつは速さだけでなく、パワーも凄まじい。攻撃は受けるな。可能な限り躱すんだ。無理な時はどうにか受け流せ>

    <ああ!行くぜェ!!>


    再び異形のダイナゼノンに向かって走り出すダイナゼノン。

    脚部からミサイルを放ちながら距離を詰めていく。異形のダイナゼノンは悠然と立ったままで避けようともしない。

    <舐めやがって!食らえ!バーストミサイルキーーーック!!!>

    ミサイルと渾身の蹴りも命中するかと思われたその瞬間、先ほど見せたような素早い動きでダイナゼノンの攻撃を躱した異形のダイナゼノン。

    蹴りを放った直後の隙だらけのダイナゼノンに向け、異形のダイナゼノンはパンチを繰り出した。

    何の変哲もないパンチではあったが、ナイトを押さえつけるほどのパワーを持った者からの一撃をまともに食らい、ダイナゼノンは殴り飛ばされてしまった。

  • 131二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 00:56:20

    <ぐああああ!!!>

    「いってぇ…夢芽、無事!?」

    「なんとか…ちせちゃんと暦さんは大丈夫ですか?」

    「俺もなんとか…」

    「ちょっと目が回りそうになったっすけど大丈夫っす…。でも、あのダイナゼノン擬き、めちゃめちゃ強くないっすか?」

    ちせの言う通り、あの異形のダイナゼノンは信じられないほどのパワーとスピードを備えている。

    このまま戦っていてもこちらの攻撃は当たらないだろう。


    「ナイトさんと合体して戦えたらいいんだけど…!」

    蓬は怪獣を油断なく見ながら呟いた。

    カイゼルグリッドナイトであればあのパワーやスピードにも対抗し得るかもしれない。しかし、理由はわからないがゴルドバーンがここにはいないためそれはできなかった。


    <すまねぇ!ゴルドバーンは先輩方の応援に向かってもらってる!!先輩方に連絡はしたがすぐに来れるかはわからねえ!>

    <居ないものは仕方あるまい。我々だけでどうにかするぞ>

    そう言って構えるグリッドナイトとダイナゼノン。

    異形のダイナゼノンは両手にエネルギー刃を生成し、ダイナゼノンたちに向け動き出した。


    ダイナゼノンたちと異形のダイナゼノン、両者の戦いを"蓬"は頭痛を堪えながら見ていた。

    自分はあの白いダイナゼノンを知っている。しかしどこでそれを見た。

    思い出せ、思い出せ"麻中蓬"。"蓬"は意識の手綱を握りながら必死に記憶を手繰り寄せた。


    怪獣優生思想が生み出した最後の怪獣、ガギュラを倒した蓬たち。

    これで戦いは終わりだと、仲間たちで労いあおうとしたその時だった。

    ガギュラはまだ死んではいなかったのだ。今にも崩れてしまいそうなボロボロの体で、それでも蓬たちに襲い掛かってきた。

    蓬たちも迎え撃とうとはした。だが疲弊した状態での戦闘は長く続かず、ついにダイナゼノン、グリッドナイトは倒れてしまった。

    しかし、同じタイミングでガギュラも力尽きた。しばらく警戒しても動かない。これで本当に終わり、そう思った時だった。


    <ーーーーーー!>


    新たに現れた怪獣がガギュラの亡骸を食らっていた。

  • 132二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:13:00

    お待たせして本当にすみません。言い訳のしようもなく書くのが遅いのが原因です。

  • 133二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:13:24

    お待たせして申し訳ありません。言い訳のしようもなく書くのが遅いのが原因です。

  • 134二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 10:50:00

    更新感謝!

  • 135二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 20:06:04

    更新ありがとうございます!!これからも保守しますので大丈夫ですよ

  • 136二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 22:47:57

    更新きてた!ありがとうございます!

  • 137二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 08:54:07

    続くと信じてた保守

  • 138二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 19:07:00

    保守

  • 139二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 02:01:57

    とりあえず保守

  • 140二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 11:51:25

    保守

  • 141二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 13:48:42

    すみません。実家帰る用事が出来てしばらく更新できない日が続きます。スレが残ってたらそのまま続き書きますが、落ちてたら次スレ立てて続き書こうと思います。

  • 142二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 21:48:07

    了解しました。お疲れ様です
    できるだけ維持するようにします

  • 143二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 06:36:00

    ギリギリで保守

  • 144二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 16:13:13

    保守

  • 145二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 22:48:43

    保守

  • 146二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 09:55:12

    支援

  • 147二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 21:27:09

    保守(あぶねえ)

  • 148二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 08:10:20

    保守

  • 149二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 18:46:25

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 22:56:02

    保守

  • 151二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 08:39:28

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 19:00:51

    保守

  • 153二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 23:37:36

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 08:56:45

    (いつか続きが来ると信じて)保守

  • 155二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 19:25:22

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 05:07:32

    保守

  • 157二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 14:11:00

    保守

  • 158二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 23:01:51

    保守

  • 159二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 09:04:10

    保守

  • 160二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 19:11:46

    160レス目に保守(大丈夫かな?)

  • 161二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 23:43:36

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 10:23:48

    保守

  • 163二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 19:18:12

    更新は出来なくても生存報告(まだスレを閲覧してるかどうか)は知りたいな

  • 164二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 23:56:07

    >>141

    ここから一週間以上だし、そろそろとは思いたい

  • 165二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 00:47:05

    怪獣が怪獣を食らっている。新たに現れた怪獣は、ゲームのへんしんするモンスターのような見た目だったため、取り込んだという表現が正しいだろうか。

          

    新たに現れた怪獣に対して、蓬たちは抗おうとした。だが、ナイトはもう変身する体力が残っておらず、蓬たちもダイナゼノンを動かす気力が残っていなかった。

    ガギュラを食らったその怪獣は辺りにエネルギーを放出し蓬たちを吹き飛ばした。

    これ以上暴れさせるわけにはいかない。崩れ落ちそうになる体に鞭を打ち、蓬は自らに備わった理外の力を行使した。


    「インスタンス・ドミネーション!!」


    掴んだ。しかし、掴んだ感覚はあるものの怪獣を操ることができない。

    戸惑う蓬のことなど眼中にない様子の怪獣は傷付いたダイナゼノンに近づいた。そして、あろうことかダイナゼノンもガギュラと同じように食らい始めたのだった。

    怪獣に飲み込まれていくダイナゼノンを蓬たちはただ茫然と見ていることしかできなかった。この世界の蓬はダイナソルジャーRBを相棒としていたが、分離していたため運よく吸収を免れていた。

    ダイナゼノンが全て飲み込まれた直後、怪獣に変化が起きた。

    スライムのような見た目が変化していき、まず腕が生えた。片腕には見る者を震え上がらせる禍々しい巨大な爪が生えている。

    次に脚、その次には頭部と形成された段階で蓬は思わず声をこぼした。

    「な…んだアレ…」

    形成された頭部が、ダイナゼノンとそっくりであった。


    <ーーーーーーー!!>


    最後に尻尾を生やしたダイナゼノン擬きの怪獣はその存在を誇示するかのように大きな咆哮を上げた。その雄叫びは衝撃波となり蓬たちに襲い掛かった。


    <ーーーーーー!>

    全員が動けない中、ゴルドバーンがその身を盾に変え、衝撃波から全員を守った。

    だが、あまりの威力にゴルドバーンも衝撃波が止んだタイミングで崩れ落ちてしまった。

    「ゴルドバーン…!」

    ちせの悲痛な叫びが響く。ゴルドバーンは生きてはいるようだが、弱々しく返事をするのみだった。

    「すまねぇ、助かった…!お前ら!全員無事か!?」

    ガウマの叫びに各自が状況を確認する。暦、ちせは無事。ナイトも2代目に支えられるようにして立っているが生存している。

    夢芽の姿が見えない。蓬は必死に辺りを見回すと少し離れた位置で夢芽が倒れていた。

  • 166二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 00:47:52

    「南さん!!!」
    目の前の怪獣のことなど目もくれず、一目散に夢芽のもとに駆け寄る蓬。

    「南さん!!しっかりして南さん!!」
    「こんな時まで…南さん…?名前で呼んでよ…私もさ…"蓬"って呼ぶから…」
    「…っ!夢芽!しっかりして!すぐ病院に…!」
    「どこもいっぱいでしょ…。それに…あぁ、ごめん、蓬。これ、多分ダメだ…」
    「なに弱気なこと言ってんの…!今すぐ行けば間に合うから…すぐ連れて行くから…!!」
    「…私がいなくなったからって…すぐ別の女の子と付き合ったりしたら嫌だよ…?化けて出ちゃうかも…。そうだな…ガウマさんみたいに…5000年経っても想っててくれるとうれしいな…」
    「そんなこと…するわけないじゃん…。俺が好きなのはこれからもずっと夢芽だけだよ…。5000年経っても10000年経っても夢芽だけだよ…!」
    「そっか…それなら…」

    最後の言葉を言い終える前に夢芽は目を閉じた。絶望感と無力感で茫然としていた蓬だったが、不意に頬に衝撃が走った。
    「…え?」
    「手荒な真似をしてすみません。ですがまだ絶望するには早いですよ、蓬さん」
    2代目はそう言うと手に持ったステッキに何かを差し込み、夢芽にかざした。
    ステッキから出る謎の光を夢芽に浴びせながら2代目は続ける。
    「それは…?」
    「これはあくまで時間稼ぎです。フィクサービームを当てるか、あるいは急いでちゃんとした病院に連れて行かなければ手遅れになります」

    手遅れ、その言葉で再び蓬は目眩を起こしそうになる。しかし今度は踏みとどまった。
    ダイナゼノンは取り込まれてしまい、ナイトもゴルドバーンも動けない。ガウマ隊の中であの怪獣に対抗できる手段を持っているのは自分だけだ。
    みんなを守るため、そして何より夢芽を救うために、自分にしかできないことは、自分がやらなければならない。
    「…俺が時間を稼ぎます。その間に夢芽を病院にお願いします」
    「…蓬!?お前何言って…」
    「承知した。麻中蓬、無理はしすぎるなよ。行くぞお前たち」

    蓬は怪獣に向き直った。もう一度怪獣を操ってみる。それが駄目だった時は、吸収を免れたもう一機のダイナソルジャーで何とかするしかない。
    「インスタンス・ドミネーション!!」
    そこで蓬の意識は途絶えた。

  • 167二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 00:51:31

    長期間の保守ありがとうございます。あわせて、すみません。本来なら昨日時点で実家から戻ってきていたはずなんですがコロナにかかってしまい滞在が伸びてます。実家のPCから投稿できたので少し書き進めた分を投稿します。関係ないですが熱出てる中ダイナソルジャー動かしてた蓬くんってすごいんだなぁって思いました。

  • 168二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 01:11:10

    お帰り!って思ってたらマジか。それはSS投稿どころじゃねえ。お大事に。

  • 169二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 08:02:55

    更新ありがとうございます!
    コロナ大変ですね、どうか無理せず体を休めてください

  • 170二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 17:29:17

    おお!大変な中、投稿ありがとうございます!
    どうかお大事に!

  • 171二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 21:42:01

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 07:42:53

    保守

  • 173二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 18:11:01

    保守

  • 174二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 23:33:59

    保守

  • 175二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 08:43:25

    速やかな回復を祈ります

  • 176二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 19:36:26

    保守

  • 177二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 04:23:24

    レス数ヤバそうにになったら最悪次スレだけスレ主に貼って貰うだけでも良いかも

  • 178二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 14:22:02

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:50:17

    すみません。コロナも落ち着いて動けるようになったので実家から戻ってきました。頑張って完結まで書ききれるよう頑張ります。

  • 180二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 21:53:00

    >>179

    おかえりなさい!お疲れ様です!

    どうか、お体を大切に、無理せず続けてください

  • 181二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 08:06:35

    >>179 朗報嬉しい。無理せず頑張ってください

  • 182二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 16:52:08

    保守

  • 183二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 22:36:39

    保守

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