ここだけダンジョンのある世界の掲示板 番外編

  • 1ヴェルロー組23/05/07(日) 15:48:10

    ここは「ここだけダンジョンのある世界の掲示板」の番外編のようなものです。


    スレ立て時点での現行スレ

    ここだけダンジョンがある世界の掲示板 第3654層|あにまん掲示板前スレhttps://bbs.animanch.com/board/1893100/脳内設定スレhttps://bbs.animanch.com/board/1885637/姉妹スレhttps://b…bbs.animanch.com

    あらすじ

    セントラリアの外れの街ヴェルローに、機侵モンスター『タイラントグレアス』が魔物の軍勢を率いて迫っていた。

    街に集った冒険者達は迎撃の準備を整え、街の近郊にある平原で決戦の時を待つ。

  • 2ヴェルロー組23/05/07(日) 15:58:06

    【周囲を山に囲まれた、昼下がりの平原。冒険者と街の守り人総勢四十名はそこに集い、時を待っていた】

    「やー、懐かしいなあ。合戦の空気」
    【のしかかるような緊張感の支配する場にあって、呑気な口調でそんなことを言うのは先頭に立つ長身の女。その手には槍のような形状の蝙蝠傘を持っている】

    「『水瓶の巫女』殿は合戦の経験者にござったな。加えて数々の"すたんぴいど"の制圧にも貢献しておられるとか。頼もしい限りにござる」
    【言葉を返すのは、同じく先頭に立つ男。極東の装束である袴に身を包んだ剣士である。しかしその服の下からは、包帯が覗いていた】

    「こっちこそ頼りにしてるよ。お侍さん」
    【にっ、と歯を剥いた笑顔を返す『水瓶の巫女』】

    「みんな、準備してくれ!奴らが来たぞ!」
    【そこに街の冒険者の一人、斥候の青年が戻ってきてそう告げる】

    「……っと、お喋りはここまでだねー」

    「そのようにござるな」
    【言葉と共に巫女は傘槍を、浪人は刀を抜き払い、それぞれ構える】

    【青年の言葉通り、程なくして"それ"はやってきた】

  • 3ヴェルロー組23/05/07(日) 16:06:14

    【その数は数百……いや、千を超えるだろうか】
    【遠方からでもはっきりと、その大群の姿は見て取れた】
    【この地とその周辺に生息する魔物を掻き集めてきたかのような、大軍勢。特に目を引くのは、その先頭に集まった火山地帯に生息する火の魔物達と】

    【その後ろに控える、機械仕掛けに半身を蝕まれた巨大な獣竜だった】

    【「なんて数だ……」。誰が発したか、そんな言葉が聴こえた】

    「駄目だよ弱気になっちゃ。合戦は気持ちで負けるとそのまま負けるからね」
    【静かな、しかし不思議とよく通る声で巫女が告げる】

    「左様にござる。まあしかし、心配せずとも良うござろう」
    【続けたのは浪人。遠方の軍勢を見据えながら、こちらも静かにそう告げる】

    【その時、ここまで轟く程の号令の咆哮と共に、魔物の軍勢が雲霞の如く押し寄せてくる】

  • 4ヴェルロー組23/05/07(日) 16:08:40

    【山津波さながらの勢いで押し寄せる大群が、一際大きく開けた地点に到達し】

    「──此方にも"備え"がござる」

    【そこに仕掛けられていた、山程の罠が起動した】

  • 5ヴェルロー組23/05/07(日) 16:17:17

    【爆炎、氷塊、暴風、属性矢の雨、降り注ぐ雷条。一斉に発動したそれらが魔物の軍勢を内側から食い破らんとする】
    【この場所を決戦の舞台に選んだのは、このような罠を仕掛けやすい条件が揃っていたというのが理由の一つだった】

    「───時は満ちたり!!全軍、私に続け!!」
    【戦場に轟く号令と共に水瓶の巫女──異界の英霊が地を蹴り、風の如く駆け出す】

    【鬨の声が上がり、冒険者達はそれに続く】

    【敵方──魔物の軍勢は数が多いものの、ただ一体の"王"に従えられたもの。指揮系統は至って脆弱であり、一度混乱すれば立て直しは困難である】

    【斯くして冒険者達の整えた手筈通りに、戦いは始まった】

  • 6ヴェルロー組23/05/07(日) 16:17:54

    外界神襲来につきしばらく落ちます……
    せっかくスレ立てたのに畜生

  • 7ヴェルロー組23/05/07(日) 16:18:08

    保守の一

  • 8ヴェルロー組23/05/07(日) 16:18:18

    保守の二

  • 9ヴェルロー組23/05/07(日) 16:18:32

    保守の三

  • 10ヴェルロー組23/05/07(日) 16:18:44

    保守の四

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 16:18:46

    しえん

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 16:19:00

    にびょうたらず

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 18:37:53

    このレスは削除されています

  • 14ヴェルロー組23/05/07(日) 18:38:34

    【雨が降りしきる混戦の中で、暴君は静かに戦場を見据えていた】

    【戦場に仕掛けられた大量の罠によって軍勢の兵力は大きく削がれ、敵はその混乱に乗じて一気呵成に畳み掛けてきた】
    【あちらの総数は五十に満たないものの、数の有利で押し潰せない程には手練が揃っている】

    【特に厄介なのは、今の雨を降らせている『水を操る者』と】
    【自身に手傷を負わせ、相当数の手勢を葬った『曲がった刃を振るう者』】
    【この二人の間合いに入った手下達が、次々と薙ぎ倒されていく】

    【またこの二人以外にも、練達した『妖術使い』がいるようだった。先程から雷の雨が降り注いだかと思えば横向きの竜巻が戦場を横断し、獣の形をした炎が暴れている】
    【いずれも他の者が使う『妖術』とは、一線を画した威力】

    【所詮は寄せ集めの烏合の衆とはいえ、徒に兵力を削られるのはまずい。自身もそろそろ動き出すべきか】
    【そう判断した暴君は、その『妖術使い』と思しき黒衣の人間……『棒切れを持った黒衣の人間』を見つけ、地を蹴って牙を剥こうとした】

    【その足が、何かに絡まる。そして飛び込んできた二つの影によってその身を切り裂かれた】

    【つけられた切創のうち片方は、傷口を凍てつかせている】

    【見れば、暴君の前に三人】

  • 15ヴェルロー組23/05/07(日) 19:04:42

    「……速攻で傷が塞がっていくわね」
    【付かず離れずの距離を保ちつつ糸を張り巡らせながら、斬糸は呟いた】
    【先程二人がつけた傷が見る見るうちに塞がっていく。その足元に忍ばせておいた鋼糸も、あっという間に引きちぎられ振りほどかれた】
    【自分とベールメアと幽淵歩き……『死んでも後がある者達』は戦列には加わらずに潜んでおき、開戦と同時に機侵タイラントグレアスに奇襲を仕掛ける。そういう手筈であった】

    「───オオオオオッッ!!」
    【『戦鬼の大剣』による魔装によって魔人の如き膂力を得た幽淵歩きが、降りしきる雨粒を凍結させながら突貫する】
    【暴君はそれを、大鋸のような牙が並んだ顎を以て迎え撃とうとする。音すら聴こえない、却って遅く見えるほどの速度で大顎が戦鬼に迫る】

    『ガッ……!』
    【しかし暴君は、何かに怯んだように急に首を振った】 
    【その隙を逃さず、戦鬼の凍結大剣がその首筋に振り下ろされる】 
    「今だよ、"まま"」
    【暴君の真横にいたベールメアが、闇の秘技『スピリットドレイン』を用いて思考を鈍らせたのだ】

    カッティング.クレイドル
    「『斬尽籠糸』!!」
    【畳み掛けるように、暴君の周囲に鋼糸のドームが展開され、一気に狭まることでその身を斬り刻まんとする】
    【対象を閉じ込め斬り尽す鋼糸の揺り籠──あるいは、殺戮のゆで卵カッター】

    【それは確かに暴君を内側に幽閉し、同時にその肉を切り苛む。鋼糸が骨まで達した手応えがあった】
    『───グオオオオオオ───ッッッッ!!』
    【だが、筋肉の鎧に加えて鉄の血肉を得た暴君を切斬するにはそれだけでは不足だった】

    【タイラントグレアスはその牙で籠糸に食らいつき、内側から食い破ってくる】

    「……閉じ込めておくことも、できんか」
    【幽淵の戦技が一つ、『幽淵の歩法』で籠糸から脱出した戦鬼が口にする】 

    【次の瞬間。地を蹴って爆発するかのような勢いで突撃してきた暴君の牙によって、その腕が食い千切られた】

  • 16初代『水瓶の巫女』23/05/07(日) 19:16:51

    「『アズール・ヴォルテックス』!」
    【巻き起こった群青の大渦が、火山地帯の魔物達を飲み込んで撹拌する。竜巻のように進行していくそれの通った後には、何も残っていない】 
    【その背後から、大技の隙を突こうと魔物達が飛びかかってきた】
    「……『スプラッシュ』」
    【だがそれは読めていたと、巫女は振り返りざまに傘槍を一閃する】
    【その軌道を水の斬撃が駆け抜け、かなりの強さを誇ったはずのオーガ種の魔物達は一刀の元に斬り伏せられた】

    「……あっちにも、加勢に行きたいんだけどなあ」
    【続けてかかってきたホブ個体率いるゴブリンの一団を円を描くように振るった傘槍で鎧袖一触に薙ぎ払いながら、巫女は『不死身組』の様子をちらと眺めていた】

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 19:32:16

    そんな……ゆで卵カッターが負けた……

  • 18浪人23/05/07(日) 19:35:19

    「──『禍津風』」
    【キン、という鍔鳴りの音と共に、空を裂く一閃がトロール種の魔物を真二つに割る】
    【そこに続くように一帯に吹き荒れた斬撃の嵐は、しかしその一つ一つが針の穴を通すように正確であり、味方の間を縫うように魔物だけを的確に斬り捨てていく】
    「して、味方勢の様子は」
    【大口を開けて噛みつきにきた『火山大鰐亀』の首を一刀の元に斬り落としながら、戦場を見渡す侍】

    【味方はみな、よく戦っていた。今のここに残っただけあって冒険者達は腕利き揃いであり、街の守り人達もこの地域で戦ってきただけに粒が揃っているようだ】
    【ふと、遠方に横向きの竜巻が吹き抜けていった】
    【黒檀の魔女の〈風食みの旋牙〉だ】

    「ふむ。『落ち物』を風の内に取り込み、極小の刃とする旋風にござるか」
    【ゆらゆらと『笹舟』の足運びでバーゲストの群れの間を縫い、その尽くを斬り伏せながら浪人はその技を観察する】
    「良き技なり」
    【そう言うと、浪人は刀を担ぐように構える。眼の前に迫る巨躯の『溶岩地竜』を、気にも留めず】

    「──拙者も、真似をさせてもらうと致そう」
    【言うが早いか、浪人は自身の周囲に円を描くように刀を振るう】
    【その場に、極小の嵐が喚び起こされた】
    【それは周囲に散らばった魔物達の甲殻や折れた武器を取り込んでいき、細かく刻んで極小の刃としていく】
    【巨躯の『溶岩地竜』は、足を止めた獲物目掛けて猛然と飛び込んでいった】

    「───ゼエァァァァァァッッッ!!」
    【裂帛の気合と刃が共に振り抜かれ、嵐が一気に拡がり】
    【程なくして、暴風に攫われ斬り刻まれた魔物達の死骸が空から降り注ぐ】

    【巨躯の『溶岩地竜』は、竜巻を通り抜けた時には既に絶命していた】

  • 19黒檀の魔女23/05/07(日) 19:48:37

    「う……嘘でしょうあの人……」
    【浪人の様子を遠目に眺めながら、魔女は思わず言葉を失った】 
    【上級魔術たる〈風喰みの旋牙〉を、まさか一目見ただけで真似るとは】

    「──おい!ボサッとするな!」
    「!」
    【隣で戦う冒険者の声で、魔女は我を取り戻した】
    【そこに飛びかかってくる、下級吸血種ブラッドサッカーの群れ】

    《立ち塞げ 衛戍の大壁》!」
    【詠唱と共に魔女と吸血種達の間に大きな魔力壁が展開され、その攻撃を押し止める】
    【魔女は続けて群れが壁に激突したそのタイミングで杖を振るい、魔力組成を崩すことで壁を崩壊させる】
    【魔力壁の崩壊に伴って起こった衝撃波が、ブラッドサッカーの群れを吹き飛ばした。実戦魔術技法、『砕ける盾』である】

    「《紅蓮に燃ゆる炎の獣 汝の敵を喰い荒らせ》」
    【続け唱えたのは、火の上級魔術たる〈炎の獣〉】 
    【大狼の形をした業火が走り、ブラッドサッカーの群れを灰に変える】
    【その勢いのまま戦場の中を駆け抜け、通り道にいる敵の尽くを焼き尽くしていく。降りしきる雨をものともしない火勢であった】

    【全体で見れば冒険者達の有利が続く戦場に、ふと】
    【幾重にも重なる咆哮が轟いた】

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 19:48:46

    さすが万全だと一人でなんとかしそうと言われただけある

  • 21『不死身組』23/05/07(日) 20:00:58

    「───アアアアアッッッ!!」 
    【大剣を振り上げた戦鬼が、雄叫びを上げながら暴君に斬りかかる】
    【暴君はそれを一瞥すると、その長大な尾を振るって戦鬼を迎撃した】

    「──グッ!」
    【咄嗟に大剣を盾にするも、戦鬼の体は大きく吹き飛ばされた】
     「……すまない、『遅れた』!そちらは大丈夫か!?」
    【なんとか受け身を取って打目を抑え、着地した戦鬼が色違いの二人──斬糸とベールメアに声をかける】

    「なんとか持ちこたえたわ!」
    【暴君の四方八方から矢継ぎ早に『螺旋糸槍』を放ちながら、斬糸が答える】

    「私は一回死んだよ」
    【『テラーチャーム』を用いて認識を切りつつ距離を取りながら、ベールメア】

    (埒が明かないな……!)
    【暴君の後ろに駆け込み、下段から霜の斬撃を振り上げながら、幽淵歩きは思考する】
    【この不死人は既に三回死んでいた】

    (………早いところあちらの加勢に行きたいんだが)
    【一瞬にも満たない刹那の間、後方の混戦に意識を裂く】

    【そこには、三体のタイラントグレアスが魔物の群れを率いて現れていた】

  • 22二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 20:03:52

    えええ…増えてる…

  • 23『暴君』23/05/07(日) 20:16:12

    【「趨勢は決した」】
    【眼前の三人を相手取りながら、暴君は思考する】

    【今しがた加勢に現れた者達──本来なら孤高を是とし群れないはずの同族達は、いずれも自身が力で捩じ伏せ従わせた者達だ】
    【だがそれ故に、絶対の信をおける腹心足り得る。自分達の種族が"力"に従順であることを、暴君はよく知っていた】

    【そしてこの戦場の後方にある人間達の拠点にも、魔物達を率いさせたもう一体を送り込んである】

    【今自分を足止めしている者達はなにゆえか死んでも再び立ち上がり、あるいは再び現れるが……それでも数を揃えて攻めれば押し潰すことができるだろう】

    【故に、自軍の勝利は揺るがない】
    【鬱陶しい『鉄の蜘蛛の巣』をその脚の鉤爪で引き裂き、それを張っていたのろまな人間を喰い裂きながら。暴君はそう確信していた】

  • 24『不死身組』23/05/07(日) 20:30:13

    「ッ……!」 
    【蒼い光と舞い散る白い羽。斬糸は即座に回生し、地面を蹴って後方に下がる】

    【それを追うべく踏み込もうとした暴君の足元が一気に凍結し、霜が覆う】
    【続けて暴君の視界を《悪夢のかけら》達が塞ぎ、爆ぜて魔力爆発を起こす。まき散らされた魔力の粒子が目眩ましとなった】

    (……これで実質、回生は使い切ったわね)
    【《星紡斬歌》による回生には、刀身の内側に溜め込まれた権能の力たる《竜の胤》が必要だ】
    【一度使ってしまえば、再び溜まるまでに時を要する】

    【後方の状況も、芳しくはないだろう。単純に敵勢が増えたのと、敵方に大きな戦力が加わった】 
    【そして敵のやり口を鑑みるに、街の方にも敵の手が及んでいる可能性があった】

    (まあでも……)
    【『機侵グレアス』の尻尾を『金城鉄壁』で絡め取り動きを封じ、その隙に他の二人が前方に飛び込む振り下ろし『飛竜斬り』と、死の魔法の奥義が一つ『リーパーカーニバル』を叩き込む様子を見ながら、斬糸は思考する】

    (……街の心配『だけは』しなくていいわね)

  • 25『街』23/05/07(日) 20:44:37

    【暴君の腹心たるタイラントグレアス達の中でも特に力と知能に優れた一体──仮に『副官』とする──は暴君の指示を受け、加勢に現れた軍勢とほぼ同等の大群を率いて街を襲撃した】

    【分厚く壁に囲まれた街であったが、手勢の中にはワイバーンを始めとする空を飛べる者達もいた】

    【今平野で戦っているのが敵の本隊であることは間違いない。街にも留守居の敵はいるだろうが、さほど苦労はしないはず】

    【そう考えた副官は、空を飛べる者達に上から侵入するよう指示した。そして自分の率いる群れは街の外壁にあった前後二つの入口のうち、前方から突入しようとした】

    【だが、彼らが街に侵入することはなかった】

    【上からの侵入を試みた者達。前方から攻め入ろうとした本隊】

    【そのいずれもが】

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    【たった一人の敵によって瞬く間に壊滅した】

  • 26『街』23/05/07(日) 20:59:19

    「これで全部かしら」
    【手のひらに燃えていた古の黄金火を消し、街の入口に立って前方に広がる屍の群れを一瞥しながら、旅装の少女は呟く】
    「上に結界を張っておこうという彼女の提案、正解だったわね」
    【黒檀の魔女の提言により、街の外壁に蓋をするように数日がかりで仕掛けられていた巨大結界の術式。それによって空を飛ぶ魔物の侵入が押し止められたことで、ずいぶんと楽ができた】

    「……それにしても、ここが『力を振るえる場所』で良かった」
    【ふう、と溜め息をつきながら、少女は自身の手のひらを眺める】
    【肉体を失い『幽淵』の一部となった自分は、その力を発揮できる場所がごく限られていた】
    【幸いにしてこの街には幽淵へのアクセスポイントたる『灯火』があり、それ故少女もまた仮初めの肉体を得ることができたのだ】

    「戦場の方は大丈夫かしらね。加勢に行けるものなら行きたいのだけれど」

    【何を隠そう、この街に集った冒険者達の中で最も個の武力に秀でるのは、一つの異界の主たるこの少女であった】

    「ま……マジかよ……」「強すぎる……強さの次元が違う……」「ただのモフモフ狂いの姉ちゃんじゃなかったのか……」「エビ好きのお兄さんにケツバットしてた時から只者じゃないと思ってたけど……」
    【後ろでは、街の人々がその一騎当千の戦働きに慄いている】

    「………………」
    【認識のされ方に思うところがあったが、特に口には出さず】
    【手持ち無沙汰になった少女は、悪しきりゅうぐるみ(海賊ver)を愛で始めた】

  • 27『街』23/05/07(日) 21:00:34

    ※フルパワー幽淵の者の戦闘力は深淵勢基準でも結構強いくらい

  • 28糸操の人逸23/05/07(日) 21:01:13

    ギャグキャラかと思われていたキャラがクソ強いとロマンあるよね…………そもそも何でこのお姫様はモフモフ狂いに………???

  • 29人型の影◆yqI2qB.HcI23/05/07(日) 21:07:40

    ケツバットは今持ち出さないであげて街の人!

  • 30『街』23/05/07(日) 21:08:11

    ムフフフ
    ミステリアスなラスボス系ヒロインだったのは初登場時まで
    それ以降はモフモフキチなラスボス(笑)に変身するの

    マジレスすると確か二回目の登場の時にキャラの方向性が定まったと思います

  • 31初代『水瓶の巫女』23/05/07(日) 21:29:41

    「うひょう、さっすがー」
    【タイラントグレアスの噛みつきを躱しながらスクロールをチラ見し、感嘆の声を漏らす】
    「いつか彼女とも戦いたいなあ……」
    【噛みつきからの切り返しに繰り出してきた頭突きは、液状化の神聖術『リキッドボディ』で回避する】

    「……おっと失礼。今はあなたとの戦いが先決だね」
    【その攻撃に合わせて背後から挟撃を仕掛けてきた3体のリザードマンを流水の聖剣『ソード・オブ・レイク』で斬り伏せ、巫女は暴君竜に向き合う】
    「あなた達は多分、あの"王様"の切り札なんだよね?」
    【にっ、と歯を剥いて笑う。聖職者にあるまじき、獰猛な笑みだった】
    「だったらこっちも、切り札を切らなきゃ失礼ってもんだ」

    【暴君竜は巫女の言葉を待たず、地を踏み割る勢いで突進してきた。下に向けられた顎が重機の如く地面を捲りあげている】

    【だが、その顎が巫女を喰い裂くことはなかった】
    【ばしゃり、という音と共にその姿が消えたからだ】

    【ばしゃり、ばしゃり、ばしゃり】
    【その水音は止むことなく続く】
    【巫女が、雨粒から雨粒へと周囲を高速移動しているのだ】

    【続けて、周囲の魔物達が次々と斃れていく】
    【雨の代わりに、空から水でできた剣が降り注いでいたからだ】

    【そしてそれらは、暴君竜の周囲を囲い込む剣の檻となっていた】

    【雨粒から雨粒へ移動していた巫女は剣から剣へと移動し、空中にあるそれらを手に取り斬撃を繰り出してきた】
    【水の聖剣による、全方位からの偏差攻撃。それら一つ一つが、必殺の威力】

    【暴君竜は、地に斃れ伏した】

  • 32人型の影◆yqI2qB.HcI23/05/07(日) 21:44:53

    鯖が不安定だから先にメモ帳に書いてからコピーしたほうがいいかもしれない…

  • 33浪人23/05/07(日) 21:45:47

    「前門の虎、後門の狼……」
    【自身の置かれた状況を客観視し、浪人は呟いた】

    【前方から猛然と突撃してくるのは、暴君竜の一体】
    【その巨体と膂力に加え、かなりの速度が乗っている。まともに轢かれれば肉片となろう】
    【後方から攻め寄せてくるのは、魔物の軍勢。眼の前の暴君竜が率いて現れた手勢の殆どだ。手負いの自分では、突破するのは容易ではないだろう】

    【ならば、と】
    【浪人は、前方に突撃した】
    「武士の道、剣のみに非ず!」
    【刀を、腰に納めて】

    【暴君竜の顎を躱しその足元へと踏み入れた浪人は、あろうことか。暴君竜の片足が地面を離れて態勢が不安定になったほんの一瞬の隙を突き、足をかけて腕を挟み込み】
    「───せいっ!!」
    【暴君竜の体を、その進行方向へと投げ飛ばした】

    【暴君竜のその巨体に手勢は為す術もなく押し潰され、暴君竜自身も少なからぬダメージを負った】

    【それでもよろよろと起き上がった暴君竜が振り返ると、浪人は刀を上段に構えて待っていた】

    「───参られよ」

    【この相手は自分が突撃してくるのを待っている。それを察した暴君竜はしかし、躊躇うことはなかった】
    【体を沈め、全力を以て助走をつけた上で再び牙を剥いて突撃する】

    「……一意、専心!!」
    【対する浪人はただ『斬る』の一意のもと縮地の足運びを以て踏み込み、ただ無骨に、愚直に振り下ろす】

    【果たして振り下ろされた『一意の太刀』は暴君竜の頭骨を叩き斬り、なおも衰えぬその勢いのまま大地をも割った】

  • 34浪人23/05/07(日) 21:46:43

    >>32

    それでやってます

    気がついたら十分二十分経ってるんだよね怖くない?

  • 35人型の影◆yqI2qB.HcI23/05/07(日) 21:48:35

    よかった、消えた文はなかったんだ…
    大体気合い入れた書き込みって推定30分はかかる気がします

  • 36黒檀の魔女23/05/07(日) 22:03:04

    「《放てよ灼熱、猛き奔流 遮る全てを焼き尽くせ》!」
    【竜首の幻影から暴君竜目掛け、岩をも溶かす紅蓮の炎条が撃ち込まれる】

    『──グオオオオッッッ!!』
    【ドラゴンブレスの再現たる火の上級魔術を受けその身を灼かれながらもなお、暴君竜は突撃してきた】
    「………!」
    【そしてその顎は、黒檀の魔女を──】

    【──捉えることはなかった。その足元に描かれていた、〈七里の歩み〉の魔法陣が作動したからだ】

    「今だ!撃て!」
    【そこに響く号令。周囲の冒険者達、そして街の守り人達が一斉に火力を集中させる】
    【飛び来る矢、投槍、火球、雷条、あるいは砲弾。それらは暴君竜の逃げ場を塞ぎ、その身に突き刺さっていく】

    『───ッッガアアアアアッッッ!!』
    【だがそれでもまだ、暴君竜は斃れなかった。大地を踏みしめ、頭を持ち上げようとする】

    【そこへ】

    「《宙に画すは淵の矩 満たすは尽きぬ深き蒼 光届かぬ溟の匣》」
    【詠唱が響く。それに続いて、暴君竜の頭部を囲い込むように水の線が正方形を描き──】

    「──《捕らえ、砕き、押し潰せ》」
    【瞬時にその内側を満たした爆発的に押し寄せる水が、暴君竜の見た最期の光景となった】

  • 37『暴君』23/05/07(日) 22:08:51

    【次々に斃されていく腹心達を目にし、暴君は怒りの咆哮を上げた】
    【「同族だからと期待していたが、所詮頼れるのは己だけか」とでも言うように】

    【そしてその怒りをぶつけるように眼の前にいる、何やら先程新たな鎌を取り出した『人間擬き』を食い千切ろうとする──】

  • 38ベールメア23/05/07(日) 22:13:12

    【ベールメアに向かって繰り出された、暴君の噛みつき。如何に魔力で体を構成された《見果てぬ夢》であろうと受ければ一溜りもないであろう、呪文詠唱も間に合わない速度の一撃】

    【だが、その一撃はベールメアは引き裂くことはなく】
    【代わりに暴君自身を引き裂いた】

    「……『ヘルズパニッシュ』」
    【ベールメアが取り出したのは『死術の大鎌』。詠唱した魔法をキープしておけるこれを用い、『ヘルズパニッシュ』を発動したのだ】

  • 39ヴェルロー組23/05/07(日) 22:22:39

    【闇の使徒の切り札の一つたる呪詛返しを受けてなお、鉄に蝕まれた暴君は斃れない】
    【引き裂かれた暴君の体から、鉄の触手のようなものが現れその傷を塞いでいく】
    【なんとか倒れ込むまいと、地面を踏み締めようとした暴君はしかし】

    【突如として足元を覆った霜によって、その場に縫い留められる】
    【その現象を引き起こしたのは、異形の鎧に身を包んだ戦鬼。呪氷の大剣を地面に突き立て、その脚で大地を踏みしめている】
    【次の刹那、地面に張った霜が爆砕し、その衝撃波によって下から暴君を叩き据える】

    【続けてそこに飛来したのは断空の斬撃と、激流の巨大聖剣】
    【後方の剣士二人による援護である】

    【更に地面から出現した無数の光糸が損傷著しい暴君の肉体を貫き、その場に縫い止める】
    【揺らめく白光の片翼。天使の贋作と成った糸の刺客によるもの】

    【そして、最後の一撃を叩き込むのは───】

  • 40黒檀の魔女23/05/07(日) 22:46:38

    【目の前に、光の糸に縫い止められた機侵タイラントグレアスがいる】 
    (………不思議ね)
    【失敗は許されない状況にありながら、魔女の精神はどこまでも澄み渡っていた】

    「……《砲金の檻、遥けき巨骸》
    《黒書は我が手に、綴るは終尾》」
    【これから放つのは、魔女が自ら練り上げ、遂に完成を見た魔術】
    「《毒持ち侍る蛇蝎の女怪》
    《死霧を散らす昏き凶風(まがかぜ)》」
    【奈落の概念を始点とし、自らの得手とする魔術の数々。そのエッセンスを取り込んで昇華させた代物】
    「《来たれ、交われ、薪となれ》」
    【自身の特性たる『海の概念』への適性を活かし、『深淵に潜む何か』の概念を加え」
    「《九の暗月、十の烈日 廻り奔りて時を削ぎ》」
    【極東の冥界……『地獄』及び『裁きの炎』の概念で強化し】
    「《淵に座す者、罪灼く業火 涅の牙以て因業を断つ》」
    【……この地を襲った脅威。眼の前にいる機侵の暴君から、最後のヒントを貰った魔術】
    【その名は】

       タルタロス.ブレイカー
    「〈奈落に燃ゆる暗き魂〉」

    【まず、大地が割れた】
    【続けてその巨大な裂け目から、黒い焔が噴き出す。地獄の業火の如き勢い。神狩りの炎の如き重さ】
    【それは伸び、うねり、先端が二つに分かたれた形を取って暴れまわる】
    【龍か、大蛇か、あるいは猟犬かもしれない"何か"を象る】
    【そしてその"何か"は──深淵に潜む『未知』そのものは、縫い止められた暴君に牙を剥き】

    【黒炎の顎を以て、その身を"削り取った"】

  • 41ヴェルロー組23/05/07(日) 22:51:13

    (……ああ……上手くいったわ……)

    【機侵の暴君が遂に討ち果たされ、辺りに歓声が響く中】
    【魔女はその場にへたり込んだ】

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