【閲覧注意】ここだけ或人×唯阿または大二×唯阿・祢音→景和スレ Part2.5

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 21:58:19

    スレタイ通り或人×唯阿または大二×唯阿・祢音→景和の関係について語るスレです

    落ちていたので、立てました
    前スレ主さんとは別人です
    (前スレ主さん、立てるつもりだったのならすみません)

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 21:58:57
  • 3二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:00:17

    >>1

    スレ立てありがとうございます!

    書き手ですが規制で投稿できず…

    保守がてら、前スレのどういうふうに景和と祢音を成就させようか.沙羅さんにも幸せになってほしいので大二をどのように関わらせるか.の妄想の産物を再投下








     「俺は諦めない…!!いつか必ず…この世界の幸せを…!」

     景和が消えた。

     「景和ーーーっっ!」

     沙羅はその場で泣き崩れる。

     弟が、消えた。目の前で。


     『次なる審判は明日の正午、心して備えよ』

     空に響く邪神の声も聞こえない。


     沙羅は呆然としたまま動けずにいた。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:00:55

     夜になった。

     避難している人々は皆、とある施設で過ごしていた。

     沙羅はスマホの画面をぼーっと眺めている(けれど、その瞳はなにも映っていない)。
     ふと、通話履歴を見て“景和”の文字が眼に飛び込んできた瞬間、衝動的に電話を掛けた。
     出るはずのない弟。コール音だけが耳を通る。数十回の呼び出し音の後、
     【お掛けになった電話…】――ぷつ。
     音声アナウンスが流れ始めた途端、沙羅は電話を切った。スマホを軽く投げる。無機質な声なんて聞きたくない。

     膝を抱えて、ぼんやり自分の爪先を見遣る。

     『たとえ小さくても、幸せは誰にだって平等にあるべきなんだ!』。――弟の、景和の、声が、脳裏を過る。

     沙羅は無意識のうちにスマホを手に取る。無意識的に電話帳を開き、無意識的にある人の連絡先を探す。そして、目に留まったのは…――“五十嵐大二”。
     そこで、ハッとする。


     ―――私…なにを…

     一体、自分は何をしようとしたのだろう。大二に、電話…?え、どうして??どうして…彼に…
     大二に電話を掛けて?それで?――ドウシヨウトイウンダ…

     五十嵐くんは景和のお友達…だけれど、私は彼と2回しか逢っていない…
     たった2回 逢っただけの、私が、彼に、電話してどうするの…
     彼は景和のお友達…だけれど、
     彼と私は…なんでもない…。


     沙羅はスマホの電話帳を閉じ、膝に顔を埋める。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:05:19

     すると、蘇る記憶。
     『お父さん…お母さん…!』
     『逃げろ!沙羅!』
     『誰か…娘を…!』
     『やだ…!やめて…!
      お父さん!お母さん!』
     頭を振っても、振り払えない辛い光景。耳を塞いでも、聴こえてくる悲痛な叫び。

     『皆を…助けるまでは…倒れないから!』
     怪物に囚われた自分を救ってくれた弟の言葉を思い出す。

     ―――景和…っ

     弟が消えるところと両親が怪物に襲われているところが頭のなかで繰り返される。…何度も、何度も。
     『たとえ小さくても、幸せは誰にだって平等にあるべきなんだ!』。『俺は諦めない…!!いつか必ず…この世界の幸せを…!』。――景和の叫びが、頭のなかをぐるぐる駆け巡る。
     心のなかはもう…ぐちゃぐちゃだ。


     気がつけば、沙羅はスマホの通話ボタンを押していた。
     いま、何時だろう。わからないけれど、真っ暗だから夜中よね…――出ないよね…
     もし100回コールして出なかったら、もう掛けないから…だから、だから、――沙羅は呼び出し音を聴きながら、誰にでなく言い訳をする。
     コール音だけが沙羅の耳に響くなかたぶん100回くらい鳴らしたかなと思い、切ろうとした、そのとき…

     『……はい…』
     繋がった。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:06:17

     『もしもし…』
     電話に出てくれるとは思ってなくて。反応が遅れた。
     「っ、もしもし…。五十嵐くん…?」
     声が震える。
     『はい…… !その声は…景和さんのお姉さんですか?』
     「あ、うん… そうだよ…
      …夜中に…ごめんね…?
      番号は…弟から聞いて…」
     つっかえつつ、一気に捲し立てる。…彼になにを言われる(突っ込まれる)のか不安で彼が口を挟む隙を与えないように。していたのに…
     『どうしました?』
     いとも簡単に何事かあったと悟られ、思いのほか気遣わしげな声色で言葉を掛けられ、焦る。
     「……な、なんでもないの…!
      間違えて掛けちゃった!ごめんねー」
     内心の動揺を隠して、そう返した、けれど、彼は納得してくれるだろうか…。
     誤魔化し切れる気がしなくて、
     「じゃあねーおやすみなさいー」
     沙羅は慌てて通話を切った。

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:07:00

     失礼すぎる。不自然すぎる。変な人と思われた。
     でも…――


     『どうしました?』
     こんな夜中に電話したのに、あんなやさしい声で気遣われたら…――泣きついてしまいそうだから…

     気づいたら、大二に電話を掛けていた。さっきも、電話帳で彼の連絡先を探していた。――その理由が、いま、はっきりとわかったから。

     ―――私…五十嵐くんにすがりたかったんだ…


     自分は無意識下で大二を頼ろうとしていた。
     そのことを自覚して、彼に申し訳なくて居た堪れなくて恥ずかしくて…。
     甘えちゃ駄目。困らせちゃ駄目。沙羅は自分にそう言い聞かせる。


     『皆の幸せは…俺が守る!
      俺が守るんだ!俺が!』
     ―――景和、帰ってきてよ…

     沙羅は心のなかで呟いて、瞳(め)を閉じた。

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:07:51

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  • 9二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:10:19

     ツーツーツー…――途切れた通話の音が大二の耳を通る。


     『じゃあねーおやすみなさいー』。
     大二はスマホを手に、景和の姉の、電話を切る直前の声を思い返す。
     慌てた様子だった。
     夜中に掛けたことを申し訳なく思ったのかもしれない、けれど、
     それだけではない。直感的にそう察する。

     『……な、なんでもないの…!
      間違えて掛けちゃった!ごめんねー』
     間違えて掛けた…?彼女はもしもし…五十嵐くん…?と言っていた。自分に掛けてきた、と受け取っていいだろう。
     間違い電話でなく自分宛に電話してきたとするなら、彼女は自分に何か用があったということになる。しかもこんな時間に掛けてきたのだ、緊急を要するものの可能性が高い。

     彼女はこうも言っていた。…“夜中”に…ごめんね…と。
     彼女からの電話を取ったときは既に空が白々としていた。夜中というより明け方だ。――時間の把握が曖昧になっている…?
     口振りははっきりしていたから寝惚けていたとは考えられない。眠りが浅くて目が覚めたか、なかなか寝付けなかったか、もしかすると一睡もできなかったか、のいずれかか…。寝惚けている訳でなく時間があやふやなのだとすると、今が何時であるか確認するのを忘れる程 頭が回らない状態なのではないか。もしそうなら…なにか不安なことがあるのではないか、と大二は考える。
     眠れなくて誰かと話をするのなら、相手は身近な人――彼女の場合、弟である景和が順当。なのに、彼女は弟以外の人間にわざわざ電話を掛けてきた。…ここから導き出される推測は、景和と会話できる状況にない…

     ―――景和さんの身に何かあった…?!

     『……な、なんでもないの…!』
     そう言った彼女の、声が震えていた、気がして。

     大二は景和の姉に急ぎコールバックする。

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:10:32

     『…もしもし』
     景和の姉は電話にすぐ出てくれた。
     「もしもし、五十嵐です。今、電話いいですか?」
     『う、うん…。
      あの、ごめんね…深夜に電話して…』
     「いえ。もうすぐ起きる時間だったので…」
     彼女からの電話は目覚ましアラームより早かったものの、あと1時間程で起きるようになっていた(ちなみに…沙羅は100回くらい鳴らしたと思っているが、実際は30回もコールしていない)。
     『 そうなの…?』
     「はい、だから気にしないで下さい。
      それより…」
     大二は一呼吸 置いて、尋ねる。
     「大丈夫ですか」
     『…ぇ……』
     電話越しの、彼女の声が掠れている、気がして。
     「先刻(さっき)の電話…なにかあった感じがしたから…」
     言葉を選んで、相手の出方を窺う。
     彼女から返ってきたのは――
     『……平気よ…』
     平気、か…――大二はなにか起こったと確信する。
     “平気”とは、何が起こっても動じない、落ち着いている様子を指す。“何かが起こった”ことが前提の言葉。
     「今からお家に伺っても…?」
     『! …ごめん、いま出先だから…!』
     「休日のこんな朝早くから…」
     仕事だろうか…。景和から彼女は週休2日制の会社に勤める普通のサラリーマンと聞いている。休日出勤がなくはないだろうけれど、現在の時刻は朝の5時。休みの日に早朝も早朝から会社と謂うのは…考え難い。
     「いま、どこです?」
     『…ごめんなさい』
     「あ…! 切れた…」
     そこへ向かいます…と大二が言う前に通話は途切れてしまった。

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:11:19

     大二は彼女の住む街へ行くことに決めた。

     休みをもらうべく、ヒロミに事情を話す。
     当日の休暇取得申出の為、理由を説明したのだが…景和は仮面ライダーということ,おそらく仮面ライダーとしての闘いのなかで彼の身に何か起きたと考えられること,景和の姉が気掛かりなことを告げると、ヒロミはその街が危険に晒されているかの調査ということなら世界平和維持を掲げるブルーバードの理念に則ったものであるからそれは任務に相当する。よって休暇の申請は必要ないということとなった。
     出立時に狩崎からあるものを受け取り、大二は景和達の住む街へと急行する。

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:12:17

     或人は、レンタルされているヒューマギアの定期メンテナンスで複数のクライアントを訪問した帰り、見知った人と遭遇し声を掛けた。
     「祢音ちゃん!」
     「…?どちら様ですか?」
     「え」
     不思議そうな表情(かお)の祢音に面食らう。
     「……失礼しますね…」
     そう言って、祢音が去って行った。

     どういうこと…?!――或人が戸惑っていると、
     「或人さん」
     呼び掛けられ、声のする方へ目を向ける。
     そこにいたのは…
     「大二くん!」
     或人は大二に駆け寄る。
     「よかった…俺がおかしくなったんじゃないんだ…」
     「はい?」
     「あ、いや…こっちの話。
      それより、ここで逢うなんて奇遇だね!
      俺は取引先訪問の帰り。大二くんは?お仕事?」
     「…えぇ、まぁ。(話していいのかな…)」
     「…ということは…何か事件? 差し支えなければ、話を聞かせてくれる?」
     「……(或人さんを巻き込んでいいんだろうか…)」
     「洩れたらマズいこと??」
     「いえ、そういう訳では…
      (或人さんになら話しても支障はない。
       この街の平和が脅かされているならむしろ手を借りて… 否、でも…)
      ただ、巻き込んでいいのかなって…」
     大二の気遣いに優しいなぁと思うと同時に淋しいと感じ、或人は彼の肩に手を乗せ
     「なに言っているんだよ!俺達、何回も一緒に戦ってきただろ?」
     訴え掛けた。

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:13:02

    このレスは削除されています

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:14:18

     大二は或人に景和の姉から電話があり電話先の彼女が不安そうな様子だったことを話す。
     「景和さんの身になにかあったのかもしれない…それで来たんです。調査の段階なので、なにか起きたという確証はありませんが…」
     「そっか… でも、もしかしたら…先刻(さっき)の祢音ちゃんの感じからして何かあったのかもしれない…」
     「祢音さんに逢ったんですか?」
     「うん、つい先刻ね…。 俺のこと覚えてなかったんだ…」
     「記憶が…消された…?」
     「え、記憶って…意図的に消せるものなの…?? あ!世界改変!」
     「世界…改変…」
     「俺…目が覚めたら‘そこ’がヒューマギアに支配された世界だったことがあるんだ。タイムトラベルできる仮面ライダーと一緒に歴史が改変される分岐点へ行って、色々あって…元の世界に帰って来れたよ…」
     「そうなんですか…。
      この街に世界改変が起きているとしたら、おそらく原因は…“デザイアロワイヤル”」
     「デザイアロワイヤル?」
     「はい。仮面ライダー同士が戦うゲームで…俺はどういう訳か弟が狙われたから兄妹3人で参戦しました。
      …俺はその一度しか関わっていないので“デザイアロワイヤル”のことを詳しくは知りませんけど…兄から聞いた話だと、ゲームの勝者には報酬があるそうで… そのときの勝者は兄と共に戦ってくれた浮世英寿さんという人でした…
      英寿さんがどんな報酬を得たのかわからないですけど」
     大二は思案顔でこう続ける。
     「ゲームの勝者がいるなら敗者もいる…勝者に報酬があるなら敗者にはペナルティがある…そう考えるのが妥当かと」
     「!じゃ、ペナルティが記憶の消失…ってこと?!」
     「仮に勝者の報酬で世界が改変されているとしたら…祢音さんの記憶が消えているのもその影響の可能性が高いですね…」

     もしかしたら…と大二は思う。
     ―――景和さんも…ゲームに負けて、記憶を…
     それで、景和は姉の元を去ったのかもしれない。――大二は一輝が自分達家族のことを忘れ実家から出て行った光景が頭に浮かぶ。

     つらいことが脳裡に蘇り、景和の姉を思う。

     ‘あの’日――‘兄が家を出て行った’あの日のことは忘れないだろう。
     だから、

     ―――行かなくちゃ…逢いに行かなくちゃ…

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:15:18

     「何にしても調べる必要があるな」
     或人にそう言われて、考え込んでいた大二は顔を挙げる。
     「そうですね」
     大二が頷くと或人はスマホのようなもの(大二は知らないがライズフォン)で電話を掛ける。
     「イズ、至急で調べてほしいことがあるんだ。“デザイアロワイヤル”っていうゲームなんだけど…。よろしく!」
     通話を終えると、或人が
     「俺達は二手に分かれよう。俺は祢音ちゃんを探す」
    と提案、大二はそれに乗る。
     「わかりました。祢音さんのことは頼みます」
     「うん。大二くんには桜井くんのお姉さんの方を任せた!」
     「はい。
      併せて今回のゲーム勝者は誰なのか探りたいと思います。…英寿さんが勝者なら見つけ易いんですけど、英寿さん有名人なので」
     《スター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズでお馴染みの浮世英寿さんが行方不明になって1週間…》
     街頭の大型ビジョンから流れるアナウンスに大二と或人は顔を見合わせる。
     「…英寿さんも勝者ではなさそうです…」
     「……だね… 勝者を探す手掛かり、ある?」
     「…思い当たる人がひとり…。
      ‘あの’とき、デザイアロワイヤルに参戦していて景和さん達の仲間と思われる人なんですけど、顔を朧気に憶えているくらいで…名前も… あ!」
     大二は狩崎に渡された端末を取り出す。
     「俺が参加したデザイアロワイヤルのデータをまとめてくれていると言っていたんで、見てみます…。
      ありました!この人です」
     大二は端末に映し出されたデータを或人に見せる。
     「吾妻道長…仮面ライダーバッファ…」
     「じゃあ、彼を見つけて事情を聞こう」
     「でも…、この人、英寿さんや祢音さんみたいに有名人ではないですから捜すのは難しいかと…。
      英寿さんは兄と、祢音さんは妹と、景和さんは俺と行動を共にしていたんですが…この吾妻道長という人とは交流がないので住んでいるところもわかりません。
      端末に保存されているのは、あくまで俺が参戦したゲームに関する報告をデータ化したもののようです… 一応、或人さんのスマホに名前と顔写真だけ転送しますけど、
      或人さんは祢音さんを見つけて下さい」
     「わかった。大二くんは桜井くんのお姉さんのこと宜しく!」
     ふたりは分かれた。

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:16:01

     或人は祢音を探そうと街中へ。
     そうは謂っても…――俺、祢音ちゃんのお家どこか知らないんだよな…と独り言ちて、思い出す。…祢音に付き添って彼女が行き付けのファッションブランドのショップに行ったことを。







    ーーーーーーーーーー

     「或人さーん、この服どうです?景和、可愛いって思ってくれるかなぁ」
     「いや、俺に聞かれても…」
     「ごめんなさいー。でも、男の人はどういう格好が好きなのかわからなくて…他に聞ける人いなくて…」
     「うーん… 彼の好みは俺にはわからないけど…
      祢音ちゃんが好きになった人だ、きっと素敵な人だろうから、祢音ちゃんがどんな格好していようと似合っているって思ってくれるよ」
     「!ありがとう!」

    ーーーーーーーーーー







     ―――祢音ちゃん…まさか、桜井くんの記憶も無くなった なんてこと…ないよな…

     或人は、祢音との遣り取りを思い返し、ショップに向かう。
     (ちなみに、このショッピングに付き添っているところを景和に見られたのだった。)

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:17:17

     大二は景和の家を訪ねようと足を速め、誰かにぶつかった。
     「すみません。急いでいたもので」
     頭を挙げるとそこには――吾妻道長が、立っている。
     「っ! あ、あの…吾妻道長さんですよね…?」
     「誰だ、お前…」
     怪訝そうな顔をする彼に、確かめようと大二はこう答える。
     「俺は…前に一度、デザイアロワイヤルに参加した者です」
     「?!お前…仮面ライダーか?」
     記憶が、ある…!じゃあ、もしかして…この人が今回の勝者…?
     「ミッチー、そいつ誰?知り合い?」
     そこに現れたひとりの女性。
     「否…よく知らない。以前デザイアロワイヤルに参加したことがあるらしい」
     デザイアロワイヤルのことを彼女に話した…この女性も仮面ライダーか…。
     「へぇー、デザロワにねぇ…。 ってことは仮面ライダーじゃん。ミッチー、消さなくていいの?」
     「(?!!なにを…?!)それって、どういう…」
     「あら?デザロワに参加したなら知ってるでしょ、このゲームはライダー同士で戦うって…」
     「!確かに、そういうルールだったけど…! 消すって…」
     「ここはミッチーの願いが叶った世界!」
     ―――やっぱり、この人が…勝者…
     「自分の望みが叶うのが勝者が得られる報酬なのか…」
     「はぁ?今更、何言ってんの??あんた、そんなことも知らずに参加してたの?」
     「俺が参戦したのは一度きりだから…」
     「参加したのは一度…それもデザイアロワイヤル… ――お前…‘あの’ときギーツとつるんでいたリバイスか?」
     「リバイスは俺の兄です」
     「つまり、お前はリバイスの弟… ということは…タイクーンと一緒にいた…ライブ」
     「えぇ、そうです。 景和さんの行方、知りませんか?」
     ―――この人が勝者ならきっと…何らかの情報を持っている…
     景和を捜す手掛かりが掴めるかもしれない…――そうすれば…

     ―――お姉さんを少しは安心させることができる はず…

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:18:00

     「タイクーンなら俺が消した」
     「え…」
     消した…?!
     「どうして…」
     「俺の願いを叶えるのに邪魔だった…。
      タイクーンはこの世界に存在しない。ギーツもな」
     「な…っ」
     英寿も景和も…。
     「そうまでして叶えたい願いって…」
     「それは私ベロバが教えるわ」
     道長の傍らにいる女がにんまり笑う。
     「ミッチーはね、全ての仮面ライダーをぶっ潰す力を欲していたの」
     「ッ!! それを何故、知っている?!」
     「私はミッチーのスポンサーだから!」
     「スポンサー…?」
     「あんた、本当に何も知らないのね…。いいわ、全部 教えてあげる」
     ベロバはニヤッと薄ら笑いを浮かべて話し出す。

     デザイアグランプリは所謂“生き残りゲーム”で、プレイヤーは各々仮面ライダーに変身しジャマトの脅威から街の平和を守りつつラスボスジャマトを倒すのがルール。そうして、勝ち残った者が「デザ神」の称号と共に《理想の世界を叶える権利》を得られる。…というのは表向きで、その正体は次元を超越したリアリティライダーショーであり、デザイアグランプリには“オーディエンス”と呼ばれる多くの観客がいて、プレイヤー達の理想の世界を賭けた死闘を“世界を救うエンターテイメント”と称して提供していたこと,理想の世界を叶える力はデザイアグランプリで犠牲となった人々の幸せを吸収しそれを力の糧とすること――具体的にはデザイアグランプリで犠牲になった人々の幸せは創世の女神の下へ集められ、それが勝者の大きな幸せに変換されていること,そしてその犠牲者の幸せを基にして創世の女神が望み、生まれたのが英寿であることを、大二は知る。

     「っっ」
     衝撃の真相に大二は言葉を失う。
     「そんな、見せ物ショーで…透は……死んだ…ッ」
     道長が、吐き棄てるように言った。
     (!!)
     大二は目を見開くも、道長の怒りと哀しみと苦しみが混ざったような表情が痛々しくて顔を背ける。
     「ミッチーの親友はぁー、前ぇデザグラに参加しててー、他のライダーから暴行を受けてバックル奪われて、ジャマトに襲われて消滅したのよねぇー。だからミッチーは仮面ライダーを憎んでいるの」

     気持ちはわからなくはない…。仮面ライダーを怨みたくもなるだろう。でも。
     だけど…

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:19:00

     「それで、ジャマトグランプリ略してジャマグラを開催して…ミッチーは浮世英寿と桜井景和を消したのよ」
     道長が仮面ライダーを憎む気持ちはわからなくはない、けれど。だからって…英寿や景和に矛先を向けるのは筋違いではないかと思う。

     そんなことして…友人が帰って来ると思っているのか…喜ぶと思っているのか…。――その問い掛けを大二は呑み込む。
     他人に言われなくても本人がわかっているはずだから。わかっていても、苦しみに飲まれて哀しみに打ちひしがれて怒りに駆られて…‘この’道しか見い出せなかったのかもしれないとも思う。それでも…

     「あ、そうそう。鞍馬祢音は戦意喪失で不戦敗よ」
     大二があれこれ考えを巡らせるなか、ベロバは訊いてもいないことをべらべらとしゃべる。
     「あるところに鞍馬あかりという女の子がいました。その少女は11年前に誘拐され犯人に殺されました。少女の父親はデザイアグランプリのスポンサーになる代わりに“自分が理想とする娘・祢音が生きている世界”を願い、創世の女神に鞍馬祢音を創ってもらったのでした。めでたしめでたし」
     「 …っ」
     あまりの事実に何も言えない大二を余所に、ベロバはね?おもしろいでしょ?と続ける。
     「鞍馬祢音は、本来ならどの世界にも実在しない。創世の女神の力で創られた人間なのよ。
      それを知って、あの娘(こ)ったらね…アイデンティティがぶっ壊れてメンタルがボロボロになって戦意喪失してデザグラから逃げたの!ウケるー!!」
     ベロバは可笑しくて仕方がないといった感じで嗤(わら)う。
     (なに笑っているんだ…っっ)
     大二は憤りを覚え、黙れよッと言おうとして、ベロバに冷ややかな視線を投げている道長に気づき。
     もしかしたら…‘こちら側’に引き戻せるかもしれない―― 一縷の望みを賭け、大二は道長に語り掛ける。
     「吾妻さん、ひとつ確認したいことが…」
     「は?!私が話してる途中でしょーが!聞きたいことがあるなら私に… ―― 「俺がいま話している相手は吾妻さんだ」
     大二は言外におまえは引っ込んでいろと滲ませ、ベロバを黙らせる。

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:20:21

     「吾妻さん、景和さんや英寿さんがいなくなったら…家族とか友人・知人とか哀しむ人がいると思いませんでしたか」
     親友を亡くして道長が哀しみ――その哀しみは想像を絶するけれど――に暮れただろうことは察するに余りあって、だから彼だって想像はできるはずだ。
     仮面ライダーに憎しみを抱く気持ちもわからないではない。ただ…ひとつだけ――確認しておきたい。

     果たして…道長の返答は…
     「そんなの…考えたこともなかった…」
     乾いたもので。
     空虚な眼(まなこ)で応える彼に
     「………そう…ですか……」
     大二は遣る瀬なくなる。
     「……わかったよ」
     呟いて一瞬 俯き、顔を挙げて道長を見る。
     そして、大二は…
     「いまのあんたには…なにも通じないってことが…!」
     ツーサイドライバーを取り出す。

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:21:17

     或人は祢音を見つけ出すべく彼女の行き付けのショップを目指していると、ジャ~···ジャ···と意味不明な言語を発する怪物と遭遇した。
     「何だ、こいつら?!」
     その怪物達が襲い掛かってくる。或人は躱して、ゼロツードライバーにプログライズキーをセットした。
     「変身!」
     けれど、何の反応もしない。
     (変身できない?!!なんで?!)
     焦る或人はしかし怪物達が街の人に襲い掛かろうとするのを見て、人々を助ける為、火中に飛び込んでいった。





     大二はツーサイドライバーを装着する。
     「何、そのドライバー? あんた、デザイアドライバー持ってないのね…
      デザグラはデザイアドライバーにライダーコアIDをセットしてエントリーが完了するの。コアIDもデザイアドライバーもないあんたに参加資格はない…だから、仮面ライダーには変身できないわよ」
     「何…?!」
     「言葉でも力ずくでもミッチーを捩じ伏せられなくてカワイソーw」
     ベロバが愉快そうに笑い声を立てる。
     「まぁ、変身したところでミッチーに勝てると思えないけど!
      ミッチー、ただの人間じゃないもの…ミッチーはね半分ジャマトだから」
     「?!?!」
     「ミッチーはデザグラで負けて消滅し掛けたの。ゾンビレイズバックルのお蔭か息を吹き返したけど、そこはジャマトを栽培するジャマーガーデン。
      そこから脱出しようとしたところをジャマトライダーの襲撃を受け、半壊したコアIDをドライバーに突っ込んで強引に変身!何とか撃破したけど別のジャマトライダーが現れて大ピンチのミッチー…!
      だけどそこでヤられないのがミッチー、倒したジャマトライダーのジャマトバックルを使い、ジャマトフォームに変身…!! その影響でミッチーはジャマトになり掛け…今に至る っと!
      ゾクゾクしない?私はする… だから、私をゾクゾクさせてくれるミッチーのこと気に入っているの」
     ベロバは道長の肩に手を乗せる。
     「気安く触るな」
     道長に手を払われても気に留める様子はなく
     「わかったら、お家へ帰りな。…尤も生きて帰れば…だけど!」
     ベロバは不敵に笑う。と同時に、大量のジャマトが発生した。

  • 22二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:22:19

     迫り来る怪物。逃げ惑う人々。
     或人は怪物にまっしぐらにぶつかり、食い止める。
     「逃げて…!早く!!」
     襲われている人を逃がした或人は怪物に投げ飛ばされ、瓦礫の山へ。
     瓦礫の中に崩れた建物の塀――かなり大きい塀を見つけ、武器の代わりにと持ち上げようとして…
     (重っ… 無理か…)
     断念。
     すぐ先にカーブミラーが転がっているのが目に入り、手に取った。
     或人はそれを持って怪物と応戦する。カーブミラーを振り被って怪物に当てると…ミラーの取付部が曲がった。
     (うあおー、曲がっちゃった…! けど、まだいける!)
     構わずもう一度、殴り付ける。すると…
     「折れたぁ?!」
     ミラー部分からバキッと折れた。折れた箇所からギザギザの鋼が剥き出しになり断面は凸凹だ。
     或人は直棒になったそれを振り回し怪物に刺した。怪物は少しダメージを受けたのか動きが僅かに鈍る。その隙に或人は退避する。

     別方向からまた怪物が現れる。或人は怪物達から距離を図り、時に鋼の棒で蹴散らしながら、逃走する。
     けれど、多勢に無勢。じりじりと追い詰められていく。
     壁際に攻め込まれ、怪物と揉み合っているうちに鋼鉄棒を奪われた。
     ―――しまった…ッ
     怪物が大剣を振り下ろそうとした、そのとき…

     bang!
     銃声が、鳴った。

     怪物はその銃弾に倒れる。

     或人は顔を上げる。
     そこには――
     「刃さん!」
     ショットライザーを片手に佇む唯阿の姿があった。

  • 23二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:22:50

    このレスは削除されています

  • 24二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:24:17

     大二の前で大量に出現したジャマトが街中へ侵攻しようとしている。それを阻止すべく大二は駆け出す(その際に「おい、何をしているんだ?」「あら、不服?あいつ、ミッチーの願いの邪魔になりそうだから消えてもらおうと思って…」「……勝手にしろ」という道長とベロバの遣り取りを耳にした)。



     大二は住民を襲おうとしているジャマトの前に立ち塞がる。
     敵怪人の攻撃を避(よ)けながら、人々を避難させる。人々を避難誘導しつつ怪人と闘う、けれど、人々を庇いながらの交戦は敵の攻撃を回避するだけで精一杯だ。

     ふと見ると逃げている男性にジャマトの魔の手が伸びている。大二はジャマトに飛び掛かり、押さえ付ける。
     「今のうちに逃げて下さい!」
     男性を無事に避難させられた大二だけれど、振り払われて地に叩きつけられる。
     転がりながら、大二はバットバイスタンプを出し
     「バット!」
     自分の身体に直接 押印する。
     「大二!どうするつもりだ?!」
     身体から分離し現出したカゲロウに大二はこう言う。
     「俺ひとりじゃ、全員を無事に避難させられない…!手を貸してくれ!!」
     「あ?悪魔が人を助けるかよ…」
     「守り切れたら、さくらにカレーを作るよう言うから!頼む!」
     「…チッ 悪魔使いが荒いなァ…お兄様に似てきたんじゃねェか?」
     「無駄口 叩いてないで、行くぞ!」
     「ケッ 約束、忘れんなよ!!」
     大二はカゲロウと共にジャマトの大軍に突っ込んでいく。



     「へぇ、あいつ、体内に悪魔 飼ってるんだぁ… おもしろいかも…」
     少し遠くから高みの見物をしているベロバがほくそ笑んだことを大二は知らない。

  • 25二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:25:00

     「大丈夫か、社長さん!」
     唯阿は或人に駆け寄る。
     「大丈夫だよ。ありがとう」
     肯く或人を連れて唯阿は倉庫に逃げ込んだ。

     ふたりは倉庫の陰で怪物が通り行くまで遣り過ごす。
     「ところで、刃さんはどうしてここへ?」
     「ソルド達が妙な悪意を感知してな…調査に来た」
     「そっか。 お蔭で助かったよ…どういう訳か変身できなくてさ…」
     「そのようだな…私も変身できない。 ショットライザーは通用するみたいだが…」
     唯阿はこれからどうするか思案する…ところで、或人がこう漏らす。
     「……大二くん、大丈夫かな…」
     「! 彼の仕事柄を考えればそうだな、この街に来るか…」
     「うん… 桜井くんのお姉さんから連絡があって…仮面ライダーとしての戦いのなかで桜井くんの身に何か起きたんじゃないかってブルーバード隊員として来たんだって…」
     「そうか…(無茶をしていないといいが…)」
     「いまイズに調べてもらっているんだけど…桜井くんは“デザイアロワイヤル”ってゲームをしているらしいんだ」
     「デザイアロワイヤル…」
     「ライダー同士で戦うゲームで…大二くんはそのゲーム中に桜井くんに何かあったんじゃないかって思っているみたい…」
     「ゲーム、か… (!もしかすると…)社長さん、」
     「?」
     「ゲームということは参加条件があるのかもしれないぞ」
     「!!なるほど!それで仮面ライダーに変身できない…」
     「可能性はある」
     「 大二くんも多分、変身できないだろうから…心配だな…」
     「そうだな…」
     大二の身を案じる唯阿であった。

  • 26二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:25:17

    以上、前スレのss再投でしたー
    (一部ミスがあったので修正しました)

    前スレでは私の妄想文にお付き合いいただきありがとうございます
    このスレでも皆さんと楽しく盛り上がれたらと思います
    宜しくお願い致します


    ↓ここから続きです

  • 27二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:26:19

    ※注意※
    ・一部過激な表現あり
    ・大二ピンチ



     「皆さん、こっちです!」
     大二はジャマトの襲撃から住民を庇い、避難させる。
     「うぉらッ」
     そんな大二を横目に、カゲロウはジャマトに対しキックやパンチを喰らわせている。背後からの攻撃を躱し、膝蹴りをお見舞いする。

     大二は次々とジャマトを薙ぎ倒していくカゲロウを見遣って、お蔭で避難誘導し易いと有り難く思う。

     不意に、蹲って泣いている小さな女の子が大二の視界を掠める。親とはぐれて逃げ遅れたのか、パパー!ママー!と叫んでいる。そこへ、その女の子を狙って複数のジャマトが迫っているのが見て取れた。
     ―――危ないッ!
     大二は女の子の元へ走り、その子を抱き締め、ジャマトの攻撃から護る。
     ザシュッ
     大二はジャマトに背を斬られた。
     「(う゛…っ) だ、大丈夫…?逃げて…」
     大二は痛みに耐え、女の子に言葉を掛ける。女の子は恐怖のあまり声が出ないのか無言で首を縦に振り、一目散に走り去った。

     大二の背中はがら空きのまま。そこを見逃さなかったジャマトに再び斬り付けられる。
     ザクシュッ グサッ
     「うぐぁ…ッ」

     「大二ッ!あいつ…敵の攻撃を諸に…っ」
     カゲロウは気づくも、群がるジャマトが邪魔で大二の処へ行けない。

     大二は、あっという間に多数のジャマトに囲まれ、一斉攻撃を受ける。
     「うぐぉぁぁぁあ、っ、」

  • 28二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:28:11

    >>1

    前スレ主ですが問題ありません

    或人×祢音スレが他の人が立てるようになってから気づいたら荒れてそのまま終わってしまったのが悲しいですがこちらはそのようなことなく長く続くことをお祈りします

  • 29二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:50:07

    スレ主です

    書き手さん、お待ちしてました!

    >>28

    前スレ主さん、快くご了承くださりありがとうございます!

    >長く続くことをお祈りします

    本当にそうですよね!皆さんで盛り上がっていきましょう!

    ありがとうございます

  • 30二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:55:19

     「あらー残念。悪魔を飼ってる男っておもしろいとちょっと思ったのに…。
      まっ、生身の人間がジャマトとやり合うだなんて無謀なのよねー。バカな男…」
     ベロバは嘲笑し、興味を失くしたのか
     「帰りましょ、ミッチー」
     道長に言って、その場を立ち去ろうとした、次の瞬間――

     bang!bang!bang!bang!bang!
     銃声が、響いた。

     ベロバが驚いて振り返ると、
     大二の周りにジャマトが倒れている。


     「よかっ、た… 狩崎さんが、改良…してくれた…“これ”…、こいつらにも…効く、みたいだ…」
     大二は手の中のピストルを見ながら呟く。
     出立前に狩崎が手渡してくれた‘この’ピストルは、アリコーン事件後、ギフジュニア等の悪魔獣以外の怪人・怪物との戦闘や仮面ライダーに変身できない状況での敵との闘争にも対応できるよう狩崎が加工したもの。
     「そんなもん持っているなら最初から使え…ッ」
     カゲロウは不機嫌そうに毒吐く。
     「避難…している…人達に、当たったら…どうする、んだよ…」
     大二はそう返し、
     「甘ちゃんが…」
     カゲロウは言い捨てる。


     「ふーん…意外としぶといじゃない…」
     ベロバはニヤリと口角を上げ、
     「あいつ、ぶっ潰しちゃって~」
     たくさんのジャマトを差し向けた。
     「ガンバってね~」
     アッハハハッと高笑いをしてベロバは去ろうとし、道長も背を向ける。

  • 31二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:55:58

     「カゲロウ、ここはっ…任せて…いいか…ッ」
     こっちに向かって来るジャマトを見ながら、大二は投げ掛ける。
     「? …!大二…おまえ、まさか…?!」
     大二の視線の先を辿って、カゲロウは思い至る。
     「なに考えているんだ?! あいつはジャマトとかいう化物になっているんだぜ?!」
     そう、大二が真っ直ぐ見据えているのは…――道長。
     「まだ…、全部…ジャマト、になった…ん、じゃ…な、い…」
     大二はジャマトが街に侵攻しようとするところで、道長が何をしているんだ?とベロバを詰るのを聴いている。祢音の出生の秘密を暴露するベロバに冷たい目を向けるのを見ている。――もしかしたら…説得できるのじゃないか、って可能性を捨てられない。
     「ジャマト(あいつら)は頼んだ」
     大二はこの場をカゲロウに託し、道長を目掛けて走り出す。

     本当に全部ジャマトになったのか、心を失くした悪魔になってしまったのか…――人の心が僅かでも残っているなら…


     大二は立ち去ろうとしている道長の肩を掴み自分の方に身体を向けさせると、拳で彼の顔面を殴った。
     「あんた…、全ての…仮面、ライダーを…ぶっ潰す、力…手に入れて…っ、全て、の…ライダー、を…倒してっ…、――その先にっ…、なにを…ッ、望むんだ…っっ」
     「そういうお前はなにを望む?」
     道長が苦虫を噛み潰したような顔をするのを見(大二にはそう見えた)、ほんの少しでも彼の心を揺さぶることができた気がして…。大二は微かに笑みを浮かべ、こう応える。
     「世界平和…」
     「…!!」
     大二は道長が虚を突かれたふうな表情をしたように感じ、彼はまだ人の心を棄てたんでないのだと思えてその点で胸を撫で下ろす気持ちになる。

  • 32二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:58:00

     ブスッ
     「っっ!」
     突然、大二は背中を刺される。…道長に人の心がまだあると少々安堵していたからか、ジャマトがすぐ後ろまで迫って来ているのに気づかなかった。
     背中から刺された大剣は大二の体躯を貫通している。
     ズブシュッ
     「 ぅ゛ぅう…っ、っ」
     一気に剣を引き抜かれて、大二は地に倒れ込む。
     大二は意識が朦朧とするなか
     「よくもミッチーを殴ったわねッ!!」
     うつ伏せ状態でベロバの罵声を聞く。
     ベロバに足蹴にされ、仰向けにさせられる。
     踏み付けられるのだろうか…とぼんやり思う。なんとか避けなければ…そう考えるものの、身体が言うことを聞かない。
     身動きが取れないまま、大二はベロバに踏まれる。剣で貫かれたお腹を靴のヒールでぐりぐり抉られる。
     「ぐわぁぁっ、は…ッ」
     ベロバが脚を振り上げるのがわかった。
     次は蹴り飛ばされる…ッ!――大二は身構える。

     と、ベロバが吹っ飛んだ。
     何が、起きた…??
     頭が回らず呆然とする大二の、頭上から声が降ってくる。
     「しっかりしなさいよ」
     大二が顔を向ける。
     「花、さん…」
     心配そうにこちらを覗き込む花と目が合う。
     仲間の顔を見て緊張の糸が切れ、大二は気を失った。

  • 33二次元好きの匿名さん23/05/07(日) 22:58:18

    >>28

    書き手です

    前スレ主さん、お世話になりました

    今後とも宜しくお願い致します

  • 34二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 08:01:21

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 14:19:00

    また大二が酷い目に遭っている…

  • 36二次元好きの匿名さん23/05/08(月) 22:19:19

    或人には唯阿さん、大二には花さんが助っ人か…

  • 37二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 08:32:28

    このレスは削除されています

  • 38二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 09:17:19

    一気にデザグラの真相(あと、英寿・景和・祢音・道長の事情)を知った大二…大丈夫かこれ…

  • 39二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 09:18:59

    真相を知って尚、道長にまだ人の心があるかもと思える大二…
    なんというか…優しいな!(甘いとも言う)

  • 40二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 18:00:01

    このレスは削除されています

  • 41二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 20:00:00

    >>38

    大丈夫じゃない

    全てを知ったからには消えてもらう!みたいな展開になるかはわからないけど

    >>39

    甘いのでその隙を突いてボコボコにします

    だから大丈夫じゃない

  • 42二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:58:00

    >>41

    >甘いのでその隙を突いてボコボコにします

    しかも、カゲロウと分離しているから「大二!代われ!」ができない という

  • 43二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 22:19:19

    市民を避難させる為に身を挺してジャマトに生身で立ち向かうのは正義感が振り切れてんのよ…
    銃を持っているなら撃てよ…市民に当たったらどうするって、おま…
    花さんが助けに来てくれてよかったわ

  • 44二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:30:00

    このレスは削除されています

  • 45二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:33:00

    ↑間違って途中送信しちゃった

    或人も唯阿さんも心配しているもんな…

  • 46二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:55:00

    或人社長も大概 無茶するよね
    大二のこと言えないのでは…

  • 47二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 23:58:00

    もしかして唯阿さんの周りにいる男は不破さん含め全員 無茶する奴ばかりなんじゃ…
    うち生存しているふたり(或人・大二)は自己犠牲しがちだし

  • 48二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 10:30:11

    このレスは削除されています

  • 49二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 19:15:19

    このレスは削除されています

  • 50二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 19:17:19

     花は意識を手放した大二に
     「ちょっと待ってて」
     声を掛け、自分が体当たりでぶっ飛ばした女のところに向かう。

     「小娘の分際で…ッ!」
     身体を強かに打った女が立ち上がろうとしている。花は女の前髪を掴み上げる。
     「私は過去にギフの花嫁に選ばれた…その辺の女の子といっしょにしないでほしいわ…」
     「はぁー?花嫁…?何 言ってンの??」
     眉を顰める女の苛立ちなんか意に介さず、花はその女の頬を平手打ちする。

     ―――よくも、あの人を…ッ
     大二を蹴り上げ踏み付けたこの女は絶対に許さない。


     花はブルーバードの一員になってまだ間もないある日の出来事を思い返す。

  • 51二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 19:18:02

    ーーーーーーーーーー

     「あんた、アギレラねッ!」
     花は後方からの呼び掛けに振り返った。
     「やっと…見つけた…ッッ」
     20歳前後と思しき女性がこちらを睨み付け立っていた。
     「弟はデッドマンズに殺された…!」
     「!!」
     「弟は…あんたに、唆されて…っ、デッドマンズに入信したの…っ! それで…スタンプを押されて…ッ、弟は…弟はッ…ッ!!」
     「……」
     「あんたの所為よ…ッ!!」
     多分ギフスタンプを押したのはオルテカだろうけど彼女の怒りは尤もで、花は黙って彼女の心の叫びに耳を傾けた。
     「どうして…弟は死んだのに…っ どうしてっ、あんたはのうのうと生きているのよー…ッ?!!」
     女性がナイフを出し、こっちへ向かってきた。
     「…っ、」
     花は目を瞑った。
     しばらくしても衝撃はない。花は瞼を開ける。
     「そんなものを振り回したら危険ですよ」
     大二が女性の手を掴み、制していた。
     「誰っ、あんた?!」
     「ブルーバードの五十嵐大二です」
     「放してよっ、あの女はッ…私が…ッッ」
     大二は身動ぐ女性からナイフを取り上げ
     「落ち着いて下さい」
     語り掛ける。
     「彼女はブルーバードの一員です。抗議はブルーバード宛に文書で送って下さい」
     「……ッ」
     女性は言い返さず、一礼して走り去った。

  • 52二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 19:19:19

     「……花さん、怪我は…?」
     「大丈夫」
     「なら…、よかった…」
     「…さっきの人の気持ち、わからなくないの」
     「うん…」
     「だから、彼女の言葉、ちゃんと聴かなきゃって…」
     「うん。それで、俺もただ見ているしかなかった… すみません」
     「…(なんで、あんたが謝るのよ…)」
     「 …でも、ナイフは危ないから、止めたんだ。花さんもだけれどあの人自身も負傷する恐れがあるから…」
     「そうね…助かったわ… ありがと」

    ーーーーーーーーーー


     ―――あんなに正しくあろうと優しくあろうとする人に…なんてこと…っっっ!!
     花は女が大二にした仕打ちを許せない。

     女の前髪を掴んだまま、お腹に拳を入れ、身体を沈める。
     女はうぅぅ…ッと呻きながら
     「……ミッ…チー……」
     傍らの男に縋るような声を出す。けれど、ミッチーとやらは考え事でもしている様子で女の方には目もくれず。
     「あんた、男を見る目ないんじゃない?」
     花はよろよろ立ち上がる女に耳元で嫌味を言って、男の真横の壁を目掛けて女を蹴り飛ばす。
     「うご…が…ッ」
     女は壁に激突。
     自身の間近を吹っ飛んだ女とその衝撃音でさすがに気づいたらしい男が
     「お前、何やっているんだ…」
     冷めた眼差しで女を一瞥し、去っていく。
     「待ってよ…」
     その後ろを、女は慌てて追い掛け、撤退していった。

  • 53二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 19:19:50

    >>38

    畳み掛けるように情報が降ってきて戸惑ったろうけれど状況は把握してます


    >>39

    大二は優しくて甘い


    >>41

    ベロバは全てを知ったからには消えてもらう!でなくてどうせ消すから教えてあげるタイプかと

    道長はどうだろう…デザグラに関わらなければ消えろ!はしない気がするけれど


    >>42

    そうなんですよ…避難誘導する為に分離したことが裏目に…


    >>43

    大二はギフジュニアを従えてシェルターの人を脅かしたことを気にしているので前以上に人命救助最優先の思考になってます


    >>47

    >唯阿さんの周りにいる男は不破さん含め全員 無茶する奴ばかり

    確かに!

    >生存しているふたり(或人・大二)は自己犠牲しがち

    ヒーローは多かれ少なかれ自己犠牲精神あるので…

  • 54二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 00:15:03

    このレスは削除されています

  • 55二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 08:21:47

    このレスは削除されています

  • 56二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 18:09:39

    >>52

    ベロ婆さんなかなかひどい目にあってる…

  • 57二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 19:17:17

    >>56

    花は大二を傷つける奴は絶対 許さないウーマンなので…

  • 58二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 19:19:17

     大二は数回 瞬きをして目を醒まし…
     「吾妻道長…ッ」
     起き上がる。途端、背中と腹部に激痛が走る。
     「っっ、」
     「急に起き上がっちゃ駄目よ」
     声を掛けられ、目を遣れば。
     「花さん…」
     そう言えば…駆けつけてくれたのだったと大二は思い出す。そこから先がはっきりしない。意識が飛んでいる。自分はどれくらい気を失っていたのだろうと思う、けれど、
     「どうして…ここへ…?」
     花がここへ来てくれた経緯を尋ねる。
     「あんたのことだから無茶するんじゃないかと思って…」
     「……すみません…」
     「謝らなくていいわ。 それより、なんで変身してないの?」
     「それは…」
     大二は景和達の事情に触れずデザイアグランプリを説明し道長がデザイアグランプリを勝ち抜きデザ神となり仮面ライダーをぶっ潰す力を手に入れたと告げ、自分は参加資格がないのでエントリーできなくて変身不可であることを話す。
     「それで、あんた…その吾妻道長を止めようとジャマトってのと戦ってベロバとかいう女に…」
     「……被害が大きくなる前にどうにかしないと…」
     「いまは安静にしてなさい」
     「だけど…ッ」
     「その身体で無理しないの!」
     と、そこへ
     「情けねーな、大二…」
     「…カゲロウ…」
     相棒の姿。
     「俺は怪人共を蹴散らしたっていうのに…おまえはこのザマかよッ」
     「ごめん、カゲロウ…。でも助かったよ」
     「…ケッ… カレーの約束、守れよっ!」
     カゲロウは大二の内(なか)へ戻っていく。

     お疲れ…カゲロウ…――大二は心の中で言葉を掛けた。

  • 59二次元好きの匿名さん23/05/11(木) 23:52:12

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  • 60二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 10:19:00

     「花さ~ん」
     「玉置、遅い!」
     「すいません…途中で花さんを見失ってしまって…
      って、大二さん?!酷い怪我ですよ?!!」
     「だから早く何とかして!私、手当てとか上手くできないんだから!」
     「は、はいっ! まずは止血しないと!」
     「ごめん、玉置…」
     申し訳なさそうな面(かお)をする大二に、玉置は失礼しますと言って彼のシャツを剥ぐ。背には斬られた痕がいくつもあり、背中右下部からと腹部からの出血が特に酷い(背中から腹を剣で貫かれたのだから当然)。
     「これだけの出血量となるとハンカチだけじゃ足りません…包帯は持ってきてないですし…どうしましょう…」
     それを聞いて花はジャケットを脱ぐ。玉置が慌てて後ろを向く。花は然して気にせず、インナーを脱いで引き裂く。再びジャケットを着、
     「これ、包帯の代わりにならない?」
     破いたインナーブラウスを玉置に突き出した。
     玉置はそのブラウスを受け取り、デイバックからミネラルウォーターとハンカチを出す。
     傷口をペットボトルの水で洗浄。
     「う、っ…」
     染みて大二は小さく呻きながらも耐える。
     玉置は傷口の水分をハンカチで拭き取る。そうして、ブラウスで出血箇所を押さえ、止血する。
     「何か紐みたいなのがあれば…」
    と漏らす玉置に、花はストッキングを脱ぎ手渡す。
     玉置はストッキングをぐるぐる巻きつけブラウスを固定する。
     「応急処置、終わりました」
     「玉置、花さん、ありがとう…」
     大二は礼を言う。
     「いえ。後は横になって…」
     「そうよ。今日はもう休むといいわ。
      明日ブルーバードに戻って医務室でちゃんと治療してもらいましょ」
     花はそう促す。
     けれど、大二は
     「…ブルーバードに戻っている時間はない…!」
     頭を左右に振った。

  • 61二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 19:19:18

     「吾妻道長を止めないと…!!」
     「…止めるってどうやって?!変身できないのに…」
     花は身体を起こす大二を押し留める。
     「どうにかしてエントリーして…」
     「 エントリーは私がするからッ!」
     「話がよくわかりませんけど、おれも力になれるなら…」
     「何を言っているんですか!花さんも玉置もブルーバードの保護観察下にいて…許可なく仮面ライダーに変身はしないことになっている!」
     「……っ…」
     「あ、ごめんなさい…
      でも、保護観察中のふたりをあまり矢面に立たせる訳には…
      俺はギフの遺伝子で怪我の治りが早いから心配いりません…」
     「………」
     「ふたりはブルーバードへ戻ってヒロミさん達に現状報告をして下さい」
     「……わかったわよ…」
     花は頷いて、でも、と続ける。
     「今日は一晩あんたに付き添うから」
     「面倒かけます…」
     「気にしないで」
     頭を下げる大二に、花は笑みを浮かべる。

  • 62二次元好きの匿名さん23/05/12(金) 23:00:00

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  • 63二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 09:07:03

    保守 

  • 64二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 19:38:28

    大二焦り始めてる…

  • 65二次元好きの匿名さん23/05/13(土) 23:58:02

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  • 66二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 10:03:10

    映画ではなかった花や大二達のデザロワ参加はちょっと見てみたいと思った…

  • 67二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 19:19:00

     「何か進展があれば報告するよ」
     「わかったわ。…あまり無茶しないでね」
     「…善処します」
     大二はブルーバードへ戻る花と玉置を見送り、

     「或人さんに連絡しなきゃ」
     或人に電話を掛ける。
     『もしもし、大二くん?』
     「或人さん、いま大丈夫ですか?」
     『いいよ。どうした?そっちも何かあった?』
     「そっち“も”…? 或人さんも何かあったんですね?」
     『うん。人の言語と違う意味不明なことを喋る怪物に遭遇して』
     「おそらく…ジャマト、ですね」
     『ジャマト…?』
     「えぇ」
     大二はデザイアグランプリの真相を語り、直近に行われたのはジャマトグランプリで、そのゲームの途中で祢音は戦線離脱し記憶喪失(流石に彼女が創生の女神に創られた存在であることは言えなかった)、道長が英寿と景和を消しジャマ神となり仮面ライダーをぶっ潰す力を手に入れたと告げ、デザイアドライバーとライダーコアIDがないとゲームにエントリーできないことを伝える。





     「!! そんな…」
     或人はスマホ越しに聴かされる大二の話に衝撃を受け一瞬 固まったけれど、
     「なるほど…。それで、俺…変身できなかったんだな」
     状況を把握する。
     傍らにいる唯阿も深刻な表情(大二が真相を話し始めてすぐ、スマホのスピーカーをONにしたから一緒に聴いていた)。
     「社長さん、彼と話したい。電話を替わってくれないか」
     唯阿の申し出に或人は肯いて
     「大二くん、刃さんが君と話したいって。電話 替わるね」
     唯阿にスマホを渡す。

  • 68二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 22:17:00

     「もしもし、刃だ。五十嵐くんか?」

     或人から電話を替わった唯阿は大二に呼び掛ける。

     『はい』

     「そちらの状況は?」

     『え』

     「デザイアグランプリの話は聞いていた。

      …君もジャマトと戦ったんだろう?」

     仮面ライダーに変身せず、生身で…。――おそらく無茶をしたのだろうと思いつつ、そこは指摘しないで呑み込む。

     『…。カゲロウのお蔭で何とか倒せました…』

     少し間を空けて、大二から返ってくる。彼は嘘を言わない。全てを話してくれない時もあるがそれは迷惑を掛けないようにとかそういう気遣いの顕れだから責める気はない。

     それに…


     『好きです、刃さん』。――以前、大二に告白された‘あの日’のことが脳裡に蘇る。

     『言わない方がいいとは思います。けど…このままじゃあ…俺は前に進めません。貴女への想いを抱えて、俺は前に進めないです。

      だから…ごめんなさい。我が儘を言います。心だけ、いまここに、置いていかせて下さい。

      そしたら…明日には俺は貴女の仮面ライダーの後輩に戻りますから』

     彼の気持ちを受け容れられなかった自分が、踏み込んでいいのだろうか…彼の心に踏み入っていいのだろうか…

     そんな思いが駆け巡る。


     だから、深く追及せず、話を進める。

     「これからどうする…?」

     『デザイアロワイヤルにエントリーしようか、と。

      デザイアドライバーとライダーコアIDをどうにかして入手しないと…と思ってますが、運営スタッフも消えたようなので主催者だろうベロバに直談判するのが手っ取り早いかなって考えているところです』

     「そうか…」

     無謀なことを…と胸が痛いけれど、やはり<彼の心に立ち入っていいのだろうか…>という葛藤があって。

     だから、

     深く追及しない、代わりに、

     「このまま電話を切らずに、少し待っていてくれ」

     唯阿は、大二に一言 断りを入れ、或人にお願いする。

     「社長さん、ライズフォンでイズに連絡を取って私と繋いでほしい」

  • 69二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 08:20:18

    このレスは削除されています

  • 70二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 17:17:00

     「あ、もしもし、イズ?刃さんが話したいことがあるんだって」
     「電話を替わった、刃だ。
      デザイアロワイヤルのことでイズに頼みがある」
     唯阿は口火を切る。
     「そのゲームに参加するにはデザイアドライバーとライダーコアIDが必要らしいんだが、…ゼアのテクノロジーで複製できないだろうか」

     運営提供の正規アイテムでないと参加を認められないかもしれない、けれど、複製品でエントリーできる可能性はゼロでない。――なら、賭けてみよう。

     …主催に直談判なんて危ない橋、大二に渡らせたくない。

     「あぁ…、うん…、そうか…。…わかった。私も向かう。それじゃ」
     唯阿は、通話を終え、或人に、ありがとう、とライズフォンを返す。

  • 71二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 17:17:19

     「五十嵐くん、待たせた。 社長さんも聞いてくれ」
     唯阿は再び或人のスマホを借りて大二に呼び掛け、或人と大二にこう提案する。
     「イズと連絡を取った。デザイアロワイヤルを調べてルールから成り立ちまで一通りわかったそうだ。真相は五十嵐くんが伝えてくれたものと合致した。
      私がイズに頼んだのは“デザイアドライバーとライダーコアIDを複製できないか”というもの。複製したドライバーとコアIDで参加資格を得られるなら…と思ってな、ゼアのテクノロジーで何とかならないか相談してみたんだ…。
      いまはデザイアドライバーとライダーコアIDのシステムを解析中とのことだ。解析が済み、メカニズムがわかれば…プログラミングを構築できるはず。…今から私も飛電インテリジェンスに行ってくる」
     『凄い…』
     「デザイアドライバーとライダーコアIDの複製は、きっと完成させる。だから…」

     無茶をするなと止めたところで彼は大丈夫と言うだろう。
     この世界を護る為ならその身を差し出す。生命を懸けて、この世を護る。――それが、五十嵐大二。
     覚悟を決めた彼を止めるには…強引にでも理屈で踏み留ませるのが最適と唯阿は考えたのだ。

     「五十嵐くん、」
     唯阿は大二を説得する。
     「デザイアドライバーとライダーコアIDの複製品を仕上げて持って来るから、主催の処へ行くのは止めるんだ。…いいな?」

     『俺は貴女の仮面ライダーの後輩に戻ります』。‘あの日’そう告げた大二なら、きっと、自分の言葉を受け、従ってくれるだろう。
     彼は元々聞き分けがいいのだ、了解してくれるはず。…大二の素直な性格に付け入る言動をし、心苦しいのだけれど。
     ―――彼を危険な目に遭わせたくない…
     だから、だから、…仮面ライダーの先輩としての、私の言葉を呑んでほしい…。

     『…わかりました』
     返ってきた大二の応えに、唯阿は胸を撫で下ろす。
     「複製品が出来たら、連絡する。それじゃまた…」
     唯阿は大二との通話を終え、或人にスマホを返す。

  • 72二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 17:19:19

     そして、或人に向き直る。
     「あなたもだ、社長さん…」

     或人も皆の笑顔を守る為なら己の身を投げ出すことを厭わない。
     誰にも頼らず――幼い頃に父親を亡くしたからか他人(ひと)にどう頼ったらいいのかわからないのかもしれない――、独りで背負い込んで、自身だけの力で何とかしようとする。
     ―――社長さんも無茶をし過ぎる…

     唯阿はショットライザーを或人に手渡す。
     「?! 刃さん、これ…」
     驚いたような顔をする彼に意図を説く。
     「ジャマトに有効だからな。社長さんに貸しておく」
     「いいの?!!」
     「変身できなくても対抗手段として少しは役立つだろう…」
     付け加えると
     「ありがとう!」
     現状にあまりそぐわない程、屈託なくお礼を言ってくる或人に若干の戸惑いを感じつつ
     「っ、だが! ショットライザーがあるからと過信して、敵を深追いしたり…単独で敵陣に突っ込んだり…するなよ?」
     忠告する。
     「わかった」
     そう応える或人に、唯阿は念の為、釘を刺す。
     「私が戻ってくるまで無茶をするな」
     或人が首を縦に振るのを確認して唯阿は、飛電インテリジェンスへ急行する。

  • 73二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:15:17

     景和の姉に逢おう。――大二は当初ここへ来た目的に立ち返る。

     『……な、なんでもないの…!』。――微かに震えたような、彼女の声が、大二の耳に残っている。


     吾妻道長に遭遇し、デザイアグランプリの真相を知り、景和達の事情がわかり、ジャマトと闘い…すっかり足止めを喰らってしまったけれど。

     『……平気よ…』。――大丈夫ですかと尋ねた自分に、僅かに掠れたみたいな声で返した彼女の、胸の内はどうだったのだろう。

     今から景和の姉を訪ねて、デザイアドライバーとライダーコアIDの複製品が出来上がるまでの間は傍にいよう。…彼女が自分のことを憶えているなら。


     大二は、血が止まったから外した包帯代わりのハンカチとインナーブラウスとストッキングを処分し、寝袋を片付けた。


     『……な、なんでもないの…!』。『……平気よ…』。
     残響が、頭の中で木霊する。

     大二は桜井家へ急ぐ。…景和の姉の現在の心境に思いを馳せて。

  • 74二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:15:55

     アパートに着いた大二は、ふぅと息を吐いてインターフォンを押す。
     ピンポ~ン
     やや間があって、はい…と返ってくる。
     よかった、景和の姉は在宅だ。
     ガチャッ
     「……はい…」
     ドアを開け応対に出た景和の姉は、疲れた表情(かお)をしている(ように大二には見えた)。

     以前 逢ったときの朗らかさやほんわかさは鳴りを潜めている気がして…――労しくなる。

     「……どちら様でしょうか…」

     やはり…――忘れられている。その事実に多少なりとも胸が痛むけれど、
     恐る恐るこっちを窺い見る景和の姉を前にして、傷ついた面(かお)を見せる訳にいかない。

     大二は切り替えて、こう告げる。
     「すみません、唐突に。
      俺は景和さんの知り合いで…」
     「! 景和っ、景和を…知っているんですか!!」
     途端、彼女は前のめりになる。相当に焦燥していることが目に見えてわかる。
     「立ち話もなんなので、どうぞ中へ…」
     促そうとする彼女に大二は、
     「いえ、ここで結構です」
     遠慮する。

     いまの景和の姉は大二のことを憶えていないから、彼女にとって自分は見ず知らずの男。そんな人間を易々と家に上がらせて――不用心では…??と少々心配になる。
     それだけ、景和がいなくなって情緒不安定なのだろう。…痛々しい。

  • 75二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:17:00

     「 そうですか…」
     項垂れる彼女を見遣って、誰かにすがりたい気持ちでいっぱいなんだろうか…等と思っていると、
     突然――彼女がふらっと後ろに倒れそうになる。
     大二は咄嗟に彼女の背に手を回し、抱き止める。
     「お姉さん!お姉さんッ!!」
     何度か呼び掛けるも、景和の姉が瞳(め)を開ける様子はなく…。大二は彼女を抱えて桜井家の中に上がった。



     大二は景和の姉をソファに横たわらせ、顔を覗き込む。

     血色が悪い。
     食卓テーブルには何も乗っておらず、台所も料理をした形跡は見受けられない。
     ―――もしかして…ちゃんと食べていない…?!
     弟が心配のあまり、彼女は自身のことを疎かにしているのではないか…。そんな憂慮を抱く。

     彼女から自分の記憶は消されているので不審者と恐がられるだろうから帰るつもりでいた、けれど、
     景和の姉は景和のことが心配で食事も睡眠も充分に摂れていないのだとしたら…
     大二は彼女が目覚めるまでここにいようと決め、ソファの下に座り込む。

  • 76二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:17:19

     どれくらい経っただろう。窓から差し込む光が西陽とわかり、夕方なのだと知る。

     夕陽が眩しかったのか、景和の姉が瞬きをしてゆっくり瞼を上げる。
     「…あれ…?私…、いつの間に…ソファで寝て…??」
     「気がつきました?」
     「! えーっと、あなたは…景和のお知り合いの…」
     「そうです。五十嵐大二と申します」
     よかった…倒れる直前のことは覚えている…。――大二はホッとする。
     「五十嵐大二さん…」
     そう復唱する景和の姉の様子から、大二の記憶が失くなり微々たるものだけれど築いていた関係性はリセットされていると伝わってくる。
     それをどこか淋しく感じながら大二は
     「なにか飲みますか」
     彼女に声を掛ける。
     「……じゃあ、お水を…」
     「はい。持ってきますね」

     大二は、失礼します、と言って冷蔵庫を開け、中から水の入ったペットボトルを出す。キャップを外し、流し台の水切り籠に伏せられたグラスにミネラルウォーターを注ぐ。

     「お待たせしました」
     グラスを受け取り水を一口 飲んだ彼女に、
     「気分はいかがですか」
     大二は訊く。
     「はい、少し落ち着きました。ご迷惑をお掛けして…ごめんなさい」
     眉根を下げ申し訳なさげな表情(かお)をする彼女に
     「こちらこそ勝手にお家に上がって…すみません」
     大二は頭を下げる。
     「いえいえ!私を運んでくれたんでしょう?謝らないで下さい…」
     「………」
     「………」
     お互い頭を垂れて、黙り込む。

  • 77二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:19:00

     「あの…」
     先に口を開いたのは、景和の姉。
     「景和とはどういうお知り合いで…?」

     そう謂えば記憶を失う前もきちんと説明していなかったなと思い、大二は話すことにした。

     「俺はブルーバードという世界平和維持組織に所属していて…
      景和さんとはある事件で知り合ったんですけど、そのとき助けてもらって…。
      景和さん、世界平和を望んでいるでしょう? それで意気投合して…」
     「!!そうなんですね!
      そっかぁ…景和、同じ願いを持つ人と出逢えたんだ…」
     景和の姉は、嬉しそうにそうなんですね!と微笑んだかと思えば、同じ願いを持つ人と逢えたんだ…と沁々呟く。

     やさしい表情をして淋しげな横顔の彼女に、弟への愛情が見て取れる。
     胸が締め付けらる思いがする。

     「先日から急に景和さんと連絡がつかなくなって…」
     嘘を、言った。本当のこと――お姉さんから電話をもらって気になったから来たなんてこと言えるはずないから。
     「ご自宅の住所を聞いていたから…急にお訪ねしてすみません」
     「そんな、そんな…!
      来てもらって有り難いです」
     「?!」
     「景和と同じ夢を持っている人がいて…景和と出逢ってくれて…景和を心配してくれて…家まで訪ねてきてくれて…。
      景和にあなたみたいなお友達がいてよかった」
     「っ」
     心からよかったと思ってくれているようだと肌で感じて、大二は言葉に詰まる。

     その純粋さが眩しい…

  • 78二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 21:17:17

     お友達、か…。――大二は口内で転がす。
     景和は真っ直ぐだ。真っ直ぐで迷わなくて折れなくて…自分は彼の足元にも及ばない。どこまでも“光”のような人で。
     だから、…お友達 なんて…、自分が‘そんな彼’と、お友達、だなんて…

     「これからもあの子と仲良くして下さいね」
     「……はい…」
     大二は恐縮しかないけれど、辛うじてそう応える。
     「それで、景和さんはいつから帰ってきてないんですか」
     むず痒くて、大二は本題に入る。
     「一週間、です…」
     「一週間も…」
     「何かあったとしか…!事故とか!事件とか!」
     真実(ほんとうのこと)は話せない。景和はジャマトグランプリというゲームの中で消された…という真相を話せる訳ない。
     「…俺が捜します」
     この科白(ことば)は嘘でない。
     何とかして、エントリーして、景和を連れ帰って来る。――これは、大二が本気で思っていることだ。
     だから…
     「私も…捜しに行… ――「駄目です」
     「え…」
     「もし、その間に景和さんが帰って来たら…どうします?  
      帰って来てお姉さんがいなかったら…景和さん心配するでしょう?」
     嘘をまたひとつ。
     だけれど、景和の姉を危険に晒せないから。
     「お姉さんは“ここ”にいて…景和さんが帰って来たときに『おかえりなさい』を言って下さい」
     「…わかりました。景和を…弟を…宜しくお願いします…」
     彼女は涙を堪えて笑みを浮かべていて。心が痛い。

     ―――景和さんはきっと連れ帰ります。
     景和のお姉さんの目尻に残る涙の痕を見つめて、大二は決意を新たにする。

  • 79二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 22:17:00

     大二は自分の携帯番号を記したメモを景和の姉に渡した。

     世界が創り変えられた影響がどこまで及んでいるかわからないけれど、景和から聞いたという大二の連絡先が彼女の電話帳に登録されたままならそこから記憶を取り戻してくれるかもしれないしそれも消されているかもしれない。どちらにしても電話番号は知ってもらっていた方がいい。

     「なにかあったら、ここに連絡下さい。
      それでは俺はこれで…」
     大二が帰ろうとしたら、待って…と呼び止められる。
     「もう遅いし…泊まっていきませんか?」
     「………ぇ……」
     それはマズいのでは…?!
     景和の姉は大二の記憶を消されている。彼女にとって大二は今日が初対面。
     …逢ったその日に家に泊まる??――いやいやいや…マズいでしょ!!
     「それは…さすがに… その、申し訳ないですし…」
     大二は慎重に言葉を選んで答える。
     「!! そ、そうですよね… ごめんなさいー!
      私ったら…初対面の人になに言っているのかしら…?!」
     言った彼女自身も慌てている。無意識のうちに口から飛び出してしまった…ということだろうか…。――冷静に分析しようとする大二だけれど、でも、と続ける景和の姉の言葉に動揺することとなる。
     「どうしてなのかわからないけれど…あなたと初めて逢った気がしなくて」
     !!!
     ―――記憶を消されているはずなのに…どうして…
     大二は心底びっくりする。
     「本当にごめんなさいね」
     お詫びをする彼女に、大二は気になさらないで下さいと返す。
     そうして
     「また明日、伺います。失礼します」
     大二は会釈して、桜井家を後にした。



     ケケラが景和の姉を唆し、デザイアロワイヤルに参加するよう仕向けたのは、その翌日のことである―――。

  • 80二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 23:55:53

    このレスは削除されています

  • 81二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 09:33:03

    保守

  • 82二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 11:18:59

    或人・唯阿・大二がデザロワに参加するフラグ…?

  • 83二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 12:19:00

    このレスは削除されています

  • 84二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 17:19:00

    >>73

    >大二は、血が止まったから外した包帯代わりのハンカチとインナーブラウスとストッキングを処分し、

    出血マジで止まったのか!

  • 85二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 21:17:00

    このレスは削除されています

  • 86二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 21:17:20

    大二&花と道長&ベロバで対比構図になっている…?

  • 87二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 21:19:00

    大二がデザロワに参加したらスポンサーになる花さん…?

  • 88二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 23:00:00

    このレスは削除されています

  • 89二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 23:17:00

    スポンサーじゃなくてサポーターだったわごめん >>87 訂正する

    大二がデザロワに参加したらサポーターになる花さん…?


    或人のサポーターはイズとして唯阿さんのサポーターは誰だろう…

  • 90二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 23:19:00

    ソルド達とか…?

  • 91二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 09:17:01

    沙羅さん、やっぱり大二のことも記憶から消されている…

  • 92二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 10:17:00

    なのに「初めて逢った気がしない」んですね…

  • 93二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 12:16:59

    記憶を消されてもどっか心に引っ掛かるとこがあったんだろな…

  • 94二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 14:17:00

    >>86

    ということは大二と道長、もう一回くらい対戦する?

  • 95二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 14:19:19

    唯阿さん、大二のこと凄く心配している…

  • 96二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 16:55:00

    >>91

    関係性がリセットされちゃったね…

    でも沙羅さんなんか残っているのかな >>93

  • 97二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 17:17:00

    唯阿さん大二からされた告白を大切にしているんだな…

  • 98二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 19:14:27

    このレスは削除されています

  • 99二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 19:15:55

    唯阿さん、或人も大二も無茶するから大変だな…

  • 100二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 19:19:00

     「また明日、伺います。失礼します」
     五十嵐大二が頭を下げ立ち去る。
     パタン、とドアが閉まって。途端にシーンとなるアパートの一室。
     この部屋、こんなに広かったっけ…と沙羅は思う。


     景和が行方不明となって一週間。
     弟が何の連絡もなしに何処かに出掛けることはない。なにかあったに違いない。――心配でなんとかしなきゃと思う、けれど、気持ちが急くばかりで、焦りを感じる。焦れば焦る程どうしたらいいかわからなくて…不安が更に募る。


     そんなとき、訪ねてきた青年――五十嵐大二。
     景和の知り合いと言っていた。景和と同じように“世界平和”を願っているとも。

     この人は信じられる。――直感した。

     『…俺が捜します』。この言葉に力をもらって。だから、どうしたらいいかと焦る気持ちが和らいで、自分も捜しに行きますと思っていたら…『もし、その間に景和さんが帰って来てお姉さんがいなかったら…景和さん心配するでしょう?』と諭され…〈嗚呼この人は景和を本当に心配してくれていて私のことも気遣ってくれているのだな〉と感じて。
     だから、だから…、
     『お姉さんは“ここ”にいて…景和さんが帰って来たときに「おかえりなさい」を言って下さい』言われて『…わかりました。景和を…弟を…宜しくお願いします…』と応えたのだけれど、

     何故だろう…。
     この人は信用できる。そう直感した、のは…何故だろう。景和と同じく“世界平和”を願っているから?景和を心配してくれているから?家まで来てくれたから?…何故かわからない。
     どうしてだろう、初対面なのに初めて逢った気がしないのは…。

  • 101二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 22:17:00

     『泊まっていきませんか?』
     どうしてだろう、あんなこと言ってしまった…。
     どうして、あんなこと言っちゃったのだろう。…これまで男の人に泊まっていってって言ったことないのに、景和以外の男の人を家に泊まらせたことなかったのに。

     言った瞬間(とき)は深く考えずに遅いからと思っただけだけれど。すぐにとんでもないことを口走ったと恥ずかしくなった。

     そして、何故 自分があんなことを提案したのか.いまになって気がついて、戸惑う。
     何故あんな提案をしたのか…――それは…誰かにすがりたかったから…。
     ―――初対面の人に、私は何を考えているのよ…っ
     沙羅は自分を恥じる。
     だけど。
     でも…、――初めて逢った気がしないの…
     どうして…?

     五十嵐大二さん…あなたは誰…?

     混乱するなか、沙羅の頭に、彼の言葉が、響く。
     『また明日、伺います』。


     静まりかえったアパートの小部屋。
     沙羅は床にぺたりとしゃがみ込んだ。


     どこかで蛙の鳴く声がする―――。

  • 102二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 00:55:03

    記憶を消された沙羅さんにとって見ず知らずの男を家に上がらせるのは不用心では…??って心配したり、不審者と恐がられるだろうから帰るつもりでいたり、景和のことで食事も睡眠も充分に摂れてない沙羅さんが気になってやっぱここにいようとしたり、泊まっていきませんか?言われたらそれはさすがに申し訳ないと返して何かあったら連絡下さいと電話番号のメモ渡してまた明日する大二、めっちゃ好青年だな!

  • 103二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 00:58:04

    蛙の鳴く声…

  • 104二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 02:33:03

    >>102

    下心が欠片もないなってなった


    >>103

    まぁ…そういうことだよね…

  • 105二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 10:00:00

    書き手です
    皆さん、感想レスありがとうございます

    私事で申し訳ありませんが、今から親の故郷へ行きます 明日の夜に帰宅予定
    それまでss投稿も保守もできません
    宜しくお願い致します

  • 106二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 20:52:21

    >>105

    わかりました

  • 107二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 21:50:02

    >>105

    次の投稿、楽しみにしてます

  • 108二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 23:19:26

    保守

  • 109二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 09:22:17

    このレスは削除されています

  • 110二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 19:00:00

    >>91 >>92 >>93 >>96

    記憶を失っても心に残っている感じを出したくて


    >>95 >>97

    唯阿は告白される前から大二を気に懸けていてそれはいまでも変わっていない という設定


    >>99

    そうですね…

    唯阿さんはVシネ『バルバル』で不破さんに「命を張るのは俺だけでいい」みたいなこと言われたのが忘れられずにいるのですよ…


    >>102 >>104

    大二は純粋なので(Vシネ『Forward』でムラマサにも言われていた)


    >>103 >>104

    今の時季は蛙が鳴くそうでケケラのことの隠喩にもなるなぁと

  • 111二次元好きの匿名さん23/05/19(金) 19:17:00

     翌日。
     沙羅は近所の交番のお巡りさんに景和の件を相談することにした。

     『…俺が捜します』。――五十嵐大二の、その言葉に力をもらって。心配と不安で焦る気持ちが和らぎ、自分にできることが見えてきたから。

     「景和を…弟を捜して下さい!もう一週間も連絡が取れないんで…。 きっと何か事件に巻き込まれたんです!」
     沙羅は必死に訴える。
     けれど、
     心当たりを訊かれて、思い浮かばず
     「いえ…わかりません」
    としか応えられない。
     警察は捜索願を署に提出して下さいと言って、帰っていった。


     夜になった。
     景和がいなくなって、何度目だろう。また夜が来た。
     どこにいるの…?景和…――不安が募る。
     沙羅は膝を抱えて、弟の安否を心配する。

     『お姉さんは“ここ”にいて…景和さんが帰って来たときに「おかえりなさい」を言って下さい』。
     不意に、彼の声が、頭に浮かんできて。

     ―――景和に「おかえりなさい」って言うんだ…

     沙羅は気を確かに持って、

     「睡眠はしっかり摂らなきゃ」
     独り言ちて、瞳(め)を閉じた。

  • 112二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 00:45:35

    このレスは削除されています

  • 113二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 09:17:19

     昏い夜の森で、大二はジャマトと交戦中。


     今日、大二は景和の姉を訪ねるつもりでいた。
     彼女は食事を十分に摂れていない様子だったから何か差し入れを…ってコンビニか何処かで買うべく、野宿した公園を出発しようとしたときだった。

     ジャ~ジャ~と奇声を挙げて奴らが湧いた。
     どうやら、自分はマークされているらしい。
     大二は住民に被害が及ばないよう、人気(ひとけ)のない森へとジャマトを誘い出す。

     ライブに変身できないので、改良ピストルで応戦する。
     1体1体はそこまで強くはないが、数が多い。
     カゲロウと入れ代わりながら闘うも、倒したと思ったら次の一団…その一団を倒したらまた次の一団…と次々にジャマトの群勢が押し寄せ、切りがない。


     気がつけば、すっかり日が暮れていて。
     月明かりを頼りに敵の攻撃を躱し、銃撃する。
     「っ、はぁ…はぁ…ッ」
     疲労が溜まり、息が上がっていく。
     けれど、

     守り抜くんだ…

     景和を姉の元へ連れ帰って…桜井姉弟の日常を守るんだ…――強い意志を持って、大二は立ち向かう。

  • 114二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 10:19:19

     大二は、兄妹に銃を向け一度は家族に別れを告げたことで本当の意味で兄妹の輪に戻るのも家族のあたたかさに触れるのも躊躇う程に家族の大切さが身に沁みるようになったから、景和と景和の姉にはこんな形で離れ離れになってほしくない。


     だから、
     ―――景和さんはきっと連れ帰る!!

     『また明日、伺います』。
     そう言ったんだ!お姉さんに…。

     だから、だから、
     「やられる訳にいかないッ!!」

     大二はピストルを連射し、ジャマトを一掃した。



     「っ、はぁ…はぁ…っ、はぁッ…」
     樹に手を付き、息を整える。
     疲弊した身体を反転させ滑り落ちるようにしゃがみ込むと、幹に背中を預ける。


     『また明日、伺います』。そう言ったのに…。

     ―――ごめんなさい…今日は行けそうにありません…



     見上げれば、丸い月。

  • 115二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 19:52:43

    このレスは削除されています

  • 116二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 21:30:00

    大二の言葉が沙羅さんの支えになっているっぽいけど、その裏で大二が…

  • 117二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 22:17:19

     「ごめんね、姉ちゃん。もう逢えなくなるけど…元気で」
     「待って、景和!独りにしないで…。
      景和ーっ…!!」



     「は…っ…」
     沙羅はガバッと起き上がる。
     「……厭な夢…」
     ぽつり溢した。

     すると突然、蛙が現れて。
     「桜井景和…おまえの弟を取り戻したいか?」
     そう言ってきた。
     「事情を知りたかったら…その箱の中のIDコアに触ってみろ」
     弟のファンだと謂う蛙に促され…、沙羅はライダーコアIDに触れた。…触れてしまったのだった…。

  • 118二次元好きの匿名さん23/05/20(土) 23:30:00

    このレスは削除されています

  • 119二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 04:19:02

    このレスは削除されています

  • 120二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 12:19:17

    あー…沙羅さん…

  • 121二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 17:19:00

    大二が逢いに行けないその日に、沙羅さんケケラに接触される.か…

  • 122二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 19:17:17

     一方、或人は廃ビルに身を潜めていた。ジャマトから逃れる為である。



     唯阿が飛電インテリジェンスへ向かった後、或人は祢音を探すべく心当たりのある彼女の行き付けのファッションブランドショップを訪れた。以前、祢音と一緒に来た際、紹介された祢音の担当店員に最近、彼女が来ていないか尋ねたら、お客様のプライバシーを第三者に話すことはできないと返され、どういう関係か問い詰められた。ジャマトグランプリを制した吾妻道長の願いによって変えられた世界ではやっぱり店員は或人を覚えていないようだ。 祢音の友達と答えるとどんな経緯で親しくなったのかと更に詰め寄られ…どうも不審者と思われているみたいで、或人は祢音とはお見合いで知り合ったと付け加えた。すると、祢音はこれからお見合いすることになっている!と余計に怪しまれ、気まずくなって…。或人はそのショップを出た。
     それから街中を歩いて回ったけれど、祢音を見つけ出せず。ネットカフェに一泊したのが昨晩のこと。


     今日こそ祢音ちゃんを見つけるぞ!と意気込んだところで、ジャマトと遭遇したのだった。

     デザイアロワイヤルが始まったか…

     或人は唯阿が貸してくれたショットライザーでジャマトと闘い。
     いま、廃ビルの奥に隠れている。

     ジャ~ジャ~という不気味な声が遠ざかっていく。
     撒けた…。――或人は一先ずホッとして。

     ―――大二くんは桜井くんのお姉さんに逢えたかな…

     大二のことを気に懸けつつ、夜空に目を遣った。

     そこには、丸い月が、浮かんでいる―――。

  • 123二次元好きの匿名さん23/05/21(日) 19:19:00

     翌日 。
     大二はコンビニで食べ物と飲み物を購入し、桜井家へ急ぐ。
     その道中、思いも寄らない人物と出会(でくわ)す。

     「?!!景和さん?!」
     「大二くん?!」
     「どうして… ジャマトグランプリで消えたんじゃ…」
     「?!! え、なんで…――大二くんがそのこと知って…」
     「お姉さんから連絡もらって…調べに来たんです…
      それで、吾妻道… ――「姉ちゃんっ、そう!そうだよ!姉ちゃんだ!!!」
     大二は、説明している途中で遮る景和に少々困惑しつつも、切羽詰まった彼の様子に彼の姉の身に何事かあったのだと察する。
     「ごめん、大二くん。俺、急いでいるんだ!!」
     大二は走り去っていく景和を呼び止めようとして、けれど、次の瞬間、景和の姿が消えた。
     …どこか――たぶんゲームエリアに強制送還されたのだと推測する。
     これもデザイアロワイヤルのルールなのか…。


     ――― 一体、なにが、起こっているんだ…


     景和の帰還理由、景和の姉の安否…――厭な、予感がする。

     それと、景和が蘇ったのなら…もしかしたら、祢音も記憶を取り戻して参加しているのかもしれない…そして、英寿も――復活しているかもしれない…


     取り敢えず、或人さんに連絡を…と考えた、そのとき。
     「ジャーッ ジャーッ」
     またも、ジャマトの群(むれ)がお出ましだ。
     ふぅ。大二は深呼吸をして。ピストルを構えた。

  • 124二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 01:10:38

    このレスは削除されています

  • 125二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 10:57:26

    変身できないと人間って本当に大変なんだなと改めて思った…

  • 126二次元好きの匿名さん23/05/22(月) 19:19:17

     廃ビルで一晩 過ごした或人は、誰かの悲鳴を聴いて外に飛び出す。
     「何だ、これ…」
     街中でジャマトが暴れている。
     「嘘だろッ?!!また現れた?!」
     或人はショットライザー片手にジャマトの群勢に突っ込んで行く。


     bang…!
     ジャマトを撃つ。
     「逃げて…!!」
     襲われそうになっている人を助ける。その人が逃げ行くのを確認し、群(むれ)を迎え撃つ。

     何とか一軍を退けた、ところで…
     「或人さん…?!」
     呼び掛けられ、或人は振り返る。と、そこには…
     「?!!祢音ちゃん!!」
     祢音が立っていた。
     「どうして、ここに…?」
     こっちに駆け寄り尋ねてくる彼女に或人は、ヒューマギア定期メンテナンス訪問の帰りにこの街に異変を感じ、大二と逢い、手分けして調べて、この世界がジャマトグランプリを制した吾妻道長の願いによって変えられたことを知ったと話す。
     「 そっかぁ… じゃ、大二さんも来ているんだね…」
     「うん、桜井くんのことで桜井くんのお姉さんを心配して…逢いに行くって…」
     「……!(大二さん、知らないよね…沙羅さんも仮面ライダーになったこと)」
     「祢音ちゃんが俺のこと思い出してくれてそこはホッとした」
     「ごめんなさい…」
     「謝らないでいいよ。ジャマトグランプリのルールなんでしょ?」
     「うん… IDコアに触って、全部 思い出したの…」
     「それで?デザイアロワイヤルには…参加しているの?」
     「うん。叶えたい願いがあるから…」
     「そっか…」

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