【SS】大人になっても【オリトレ設定】

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:12:04

    ゴールドシップと時を経て再会した、ベテランの元トレーナーが会話するSSです
    頑張ったらきっと良いことがあるとも、それが報われるとも言い切れない世の中ですが、誰かが報われる瞬間を喜べる人間でありたいと思ってしまいます

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:12:24

    トレセン学園近くの川沿いに時々現れる、謎の屋台『黄金船』。
    夕暮れ時のその場所に、1人のウマ娘と男性が共に居た。

    「レース見てたぜ。凄かったなー。何飲むよ?熱燗か?ビールか?…それとも…三鞭酒か?」

    屋台を引いているのは、ゴールドシップ。
    GⅠの舞台で6勝、年度代表バにも輝いた偉大なウマ娘だ。
    引退後、何故かドームツアーと称して世界を回っているらしい。

    「ありがとう。…世界一周、ずっと続けているんだね」

    備え付けのパイプ椅子に座りながら話すこの男性が、彼女の元トレーナー。
    破天荒な記録を残した彼女と別れ、時が経った現在も、トレーナー業を続けている。
    ベテランと呼ばれても差し支えない域に居る彼は、久しぶりの大舞台での勝利を報告にきていた。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:12:58

    「あん?ゴルシちゃんはいつでも夢見る美少女だろーが。それを言うならオメーもまーだトレーナーやってんじゃねーか」

    「そうだね…大きなレースに出る機会は少なくなったのだけれど…やっぱり、嬉しい瞬間を味わうと…僕達が勝って、誰かが喜ぶ瞬間が見られると思うと…辞められなくてね」

    「アタシもおんなじだよ。おもしれーことはやめらんねーからな!」

    「…指導を依頼されることも、スカウトすることも少なくなって…そろそろ潮時か、と思う時もあったのだけどね。長く続けていれば神様が見ていてくれると言うのも違うのだろうけど」

    「何言ってんだ、ここで終わりじゃねーだろ?」

    「…そうだね。あの夜に勝利の美酒は散々味わったから、生搾りジュースにして欲しいかな」

    「あいよ。串焼きハンバーグもおまけだぜ」

    手慣れた手付きでシェイカーをかき混ぜ、同時に備え付けの炭焼き網で火をおこしながら串に焼き目を付けていく。
    徐々についていく焼き目と、醤油ベースの特製ダレの香ばしい匂いが食欲を唆る。

    「うん、やっぱり美味しい」

    「だろ?アンタ専用メニューだぜ」

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:13:41

    ひじを付きながら、串焼きに舌鼓を打つ彼を見るゴールドシップ。
    その顔は何処か、慈愛に満ちていた。

    「また大人になったね。…髪も白くなったかな」

    「オイオイ、オトナノオンナを捕まえてそりゃねーだろーがよ。オメーもオッサンになったな。皺が増えてんぞ」

    膨れた顔で、トレーナーの頬を一つまみするゴールドシップ。

    「流石に歳を取ったからね…」

    頬を摘まれたトレーナーは、穏やかな顔で笑う。

    「…でも、やめねーんだろ?」

    「うん。辞められなくなったよ。…また、かけがえのない存在と出会えたからね」

    「そんじゃ、ゴルシちゃんも閉店できねーな」

    「君には…負けられないね」

    「いつもそうだったろ」

    「…そうだったね、君とはね」

    彼女と過ごした時間は、宝物だったと振り返る彼。
    その在りし日を思い出しながら、決意を新たにする。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:14:14

    「そんじゃ、また100年後な。宇宙で焼きそば焼こーぜ」

    「焼けるかなあ」

    「トレーナー免許と一緒に焼きそば免許も取れよな」

    「知り合いに焼くコツ聞いてみるよ。…それじゃあ、また」

    「今度は担当の子も連れてこいよー」

    「未成年の内から屋台はなあ…」

    「何言ってんだ、ノンアルコールだってあるケンゼンな屋台だぜ」

    「と言うか、君の屋台の出没はいつも突然過ぎるんだよ」

    「出たとこ勝負がいいんだろーが。…オメーなら、分かるだろ?これ、おまけな」

    「……君のことなら、良く、ね。お代は良いのかい?」

    「またアタシが現れたときでいいよ。今度はもっとデカい手土産持ってこいよな」

    「手厳しいなあ」

    「……終わっちゃいねえんだろ」

    「…ああ、これからだからね」

    ガッシリと握手を交わし、飛躍を誓う。
    互いの飛躍を、信じる。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:14:39

    長く続けていれば、報われる世界と言う訳ではない。
    謙虚にやっていれば、機会がやってくる世界と言う訳でもない。
    しかし、この世界に魅了された者は口々に言う。
    「出会いがあるから、次があるから、辞められない」と。

    ─ 大人になっても 終わり ─ 

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:15:16

    年齢や性別を指定しないトレーナーを主体にした話だと、どうしても自己移入してしまい面倒くさい話になる癖があるので、いっそのこと他人だと割り切って描写出来る設定で書いてみました 
    色々元ネタありきになっていますが、気付いても気付かないフリでお願いします
    読んで頂きありがとうございました 

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 02:16:57

オススメ

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