- 1二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:37:02
めっちゃ可愛い
※ 妄想で本編の続きまで書いてます
※ モブ♂→スレッタ、苦手な方は注意
スレッタ•マーキュリー。
学園にやってきたかと思えばグエル•ジェタークと決闘してホルダーの座を勝ち取り、乗っていた機体はガンダムで、地球寮+ミオリネ•レンブランで立ち上げた株式会社ガンダムのメンバーで。
学園の平凡な生徒であるオレと比べて、本人の控えめな性格とは裏腹にとても目立つ生徒だ。
オレは、彼女のことをずっと見ていた。
何故かって言われたら、恥ずかしながら一目惚れというやつだった。
赤い髪に褐色の肌、高めの身長も声も性格も好きだ。
顔なんかはちょっと好みからはズレるがたぬき顔、なんて比喩されててもオレは可愛らしいと思う。
とにかく、オレは彼女に一目惚れして学園生活での彼女を見てさらに好きになったわけだが──特に何もアピールしてこなかった。
言い訳ならいくらでも並べられる。
オレはスペーシアンで、彼女は地球寮だから色々話しづらいだとか。
ミオリネ•レンブランの暫定婚約者で、グエル•ジェタークのようなやつも彼女にプロポーズしたり。
他にも学園は激動の時代を迎えたかのように忙しくなり、どうしても彼女と話す機会が作れなかった。 - 2二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:38:18
そんなオレだが、今、そのスレッタ•マーキュリーとテーブルで向かい合っている。
…先日のグエル•ジェタークとの決闘で、彼女はホルダーの座、ガンダムを失った。
エアリアルだったか…あの機体も不調を見せたものの、ジェタークの底力もあり敗北したのだ。
ミオリネ•レンブランとの明るい未来を思い描いて、幸せを疑っていなかった彼女は消えた。
今にも死んでしまいそうな、絶望した顔で学園をふらつく彼女が放っておけなかったオレは、彼女に声をかけた。
──周りには彼女を見て嘲笑うような声があったが、そんなものはどうでもいい。
明日には落ち目の水星女をナンパした男として学園の有名人になっているかもしれない。
それでも、今ここで声をかければ、今まで隙のなかった彼女を自分のものにできるんじゃないかと、純粋な親切に見せかけた打算をもって話しかけたのだ。
- 3二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:39:37
一度声をかけても反応せずに歩き去ろうとしたから正面に立ってもう一度声をかけた。
そこでやっとオレの存在を認識──そもそもオレという生徒が学園にいたことを初めて知ったのかもしれない──してくれた。
ここで少し舞い上がって、ちょっとカッコつけた言い回しでカフェに誘うも拒まれたものだから、何度か粘るとやっと了承してくれた。
カフェまでの道程は緊張し過ぎて覚えていないが、オレを見かけた友人から後から聞いたところによるとロボットみたいだったらしい。
カフェに着いて、テーブルに案内されると彼女はメニューも見ないからオレが注文した。
お小遣いだって多めに持ってきたし、何度か来ていたからお得意さんぶっていいところを見せてみたかったのだ。
もっとも、彼女はそんなことを気にする余裕がなくて空回りしていたのだが。
- 4二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:40:42
コーヒーとショートケーキが来ても、彼女は手をつけようともオレと話そうともしない。
気になっていた女の子にこういう反応のない様子を見せられると正直堪えるが、彼女の今置かれている状況を考えれば仕方ない。
地球寮の連中なら後で励ましたりしてやるだろう、それならオレは彼女の新しいつながりになりたい。
しばらく立ち直れないかもしれないし、そういう時にまた話し相手に選んで欲しい。
そんな下心を滲ませながら、ネットで見た女の子のお話の聞き上手になるべし!というアドバイスを実践することにした。
とは言え彼女は口を開く気分じゃないだろうからオレが上手いこと乗せなければならないが。
……シャディクみたいな美少女囲ってるやつならトークスキルもすごいのかもしれない、正直羨ましい。
- 5二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:42:11
「スレッタ……さん、いきなり誘ってごめん
でも、ちょっと放って置けなくてさ」
呼び捨てにしてみようとしたが、勇気が出ずに結局さん付けになってしまった。
さっそくヘタレてしまったが水星女、なんて呼ぶのは論外だし、とりあえずこれでいくことにする。
「……で」
「ん?」
「なんで、私に話しかけたんですか?
私なんてもう価値がないのに…学園の人、もうみんな知ってます
エアリアルもミオリネさんもなくなって、周りの人もみんな私をやっぱりダメなやつだって思ってますよ…」
「あー、ストップストップ」
言葉を返してくれるまで時間がかかると思っていたからすぐ会話が成立したのは嬉しかった。
しかし、やはりというかネガティブなことばかり言い出すものだから一旦ストップをかける。
言葉というものは、口にすればさらに自己の中で確立される。
ネガティブな言葉を使えば気分もつられる、逆にポジティブな言葉ならいい気分になる。
…という知識をネットで見かけたことがある。
嫌な気持ちは吐き出してしまって欲しいが、口にする彼女はあまりに辛そうで見てられない。
なので、とにかく褒めて笑顔を見せて欲しい。
幸いというか、オレにとって彼女を褒める言葉はたくさんある。
- 6二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:43:46
凄い良いモブじゃん
- 7二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:43:54
とはいえ、たくさんあっても言葉にするのは恥ずかしい。
けれど、ストップをかけてオレが黙ったままならスレッタ•マーキュリーとの関係はここで終わると直感が告げる。
だから、勇気を出して踏み出すしかない。
「価値ならあるよ、君はその…か、可愛いしさ」
「へっ?」
こんな冴えないやつに言われてもときめかないだろうが、とにかく勢いに乗せて吐き出すことにする。
グエル•ジェタークなんて学園内に伝わるのにプロポーズしたんだ、それに比べればなんとでもなるはずだ。
「あとさ…真面目で頑張り屋で、会社のCMも好きだ
人の役に立ちたいって頑張ってるところとか、優しくて…す、好きだ!」
「い、いや、あの」
満更でもないのか、赤面してちょっと口角が上がっている。
彼女を笑顔にできるかもしれない、そう思うと自分で自分の言葉をコントロールできなくなった。
童貞丸出しだが、自分を止めたくなくなったのもある。
「えっと、それから、笑顔が可愛くて好きだ!ホルダーだった時の制服も似合ってたけど今の制服もなんだか新鮮でいいと思う!決闘も今まで全部見てる、全部カッコよかった!」
たくさんあるつもりだった褒め言葉もすぐに消えてなんだか彼女の気にしてることまでも口をつく。
──ホルダーとか決闘とか今のスレッタに言っても悲しませるだけだ、バカ、オレは何を言ってるんだ。
一度冷静になろうと言葉を止めるが、結局少し間を空けた静けさに耐えられなくなってまた何か言おうとする。
…何を言えばいいのか、自分でも分からない、もう勢いのままに言うしかない。
- 8二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:44:59
- 9二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:46:14
がんばれー
- 10二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:47:25
「オマエ、何してんだァ!!」
オレが一世一代の告白をしようとしたら、とんでもない声量でそれをかき消したやつがいた。
女子の声だがドスが効いてる、何度か聞いたことがあるから振り向かずとも分かる。
地球寮のチュアチュリーとかいうピンク髪の凶暴な女だ。
怖いから印象に残っている、
そいつを皮切りに地球寮の生徒がこっちに寄ってくる。
「スレッタ先輩、大丈夫ですか?」
「スペーシアンに連れてかれて大声でなんか言われてたからよ」
「ほら、地球寮に戻ろう?」
わいやわいやとやってきたと思ったら、地球寮のやつらはスレッタを連れて行こうとした。
…ちょっと待ってほしい。
「いや、タンマ…」
「待つわけねえだろ!スレッタが今どんな気持ちか…何があってもスペーシアンに何か言われる筋合いはねえんだ!」
バカにするためにカフェに連れてったりしねえよ!
そうは思ったが、これまでアーシアンが受けてきた差別は結構根深いらしいし、オレよりちっこいが凄みのあるピンク髪の迫力に負けて、結局オレは1人残された。
「お、おのれ、アーシアンども…!」
今まで特に恨みのなかったアーシアンへの怒りがオレの中に生まれた。
- 11二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:48:44
(オアアアアアアアアァァ…!!!)
結局2人分のケーキとコーヒーを平らげて、1人で会計を済ませたオレは、自室のベッドで悶えていた。
今日のオレの行動を振り返ってみたが、やばい。
好きな子をカフェに誘うまではいい。
でも、そこから先が酷すぎる。
褒めて褒めて、そこから突然の告白に移行しようとして失敗。
挙句スレッタは連れてかれて、周りの連中にもオレのだだ滑りは見られてただろうし明日からの学園の目が怖い。
あまりの情けなさに潰れそうだが、オレの言葉でちょっとだけ笑顔を見せたスレッタのことを思い出すと少し落ち着くあたり、自分のちょろさに呆れてしまう。
(でもなあ…)
オレはスレッタとお近づきになって、支えてあげたかったわけだ。
そのためにも彼女のいいところをたくさん上げた。
しかし、アーシアンどもが連れ去った。
このことは複雑ながら嬉しい。
ガンダムに乗れなくともアーシアンどもにとってスレッタは友達で、守ろうとした。
オレにとってはムカつくことだったが、それでも損得抜きで助けようとする仲間が彼女にいることに、安心した。
- 12二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:49:41
めっちゃいいな
応援してる - 13二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:50:26
このモブくんめっちゃ純粋にスレッタちゃんに矢印向けてるの好き
- 14二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:50:31
今回のことはスペーシアンとアーシアンの差別にまるで関わろうとも知ろうともしなかったオレの不手際とでもしておこう。
地球寮の生徒…特にマルタン?だったかを懐柔できればスレッタに近づけるはず、そのためにもアーシアン差別なんてしないであくまで下心を隠して接しておかなければいけない。
それに、今日はカフェでお話しした。
これをキッカケにメッセージでのやりとりを…。
「あ」
思わず声が出る。
オレ、自己紹介すらしてないじゃん。
オレがスレッタのこと一方的に知ってるだけじゃん。
名前も知らない相手からメッセージが来ても、普通はスパムだ。
オレだって見ない。
「グアアァァァァ……!」
呻き声を上げながら枕に顔を伏せる。
なんだかもう、今日は何も考えたくなかった。
- 15二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:53:55
それからしばらく、またしても学園に訪れた激動により、オレは周囲に揶揄われるだけ揶揄われて、スレッタとは話す機会がなかった。
そしてそのまま、水星の女は学園から姿を消した。
そして今、まさに命の危機が迫っている。
「ざけんなよ…!」
またしてもテロリストが学園にやってきた。
厨二病の妄想のような現実がまたしても、だ。
学園の警備はどうなっているのだろうか。
バカみたいな展開だが、実際起きてるならたまったものじゃない。
しかも今回はやたら数が多いし、テロリストとは思えない機体も見かける。
「おおおおおおおっ!」
オレはモビルスーツでなんとかテロリストを撃退しようと銃撃を放つが、実践経験が豊富らしい敵はいかにも慣れた動きで躱してくる。
──勝てねえ
弱気になって少し下がると、見逃さないとでも言うように突っ込んでくる。
(クソッ…!)
リロードの一瞬の隙を突いて、敵が迫る。
ジェタークあたりなら打破どころかこんなピンチに陥らないだろうが、オレは違う。
なんの抵抗もできず、奇跡も起こらず、ブレードで機体ごと斬られた。
- 16二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:54:50
- 17二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:55:29
(ああ、でもやっぱり)
死の迫る寸前、脳裏に浮かぶのは少女のことだった。
スレッタ•マーキュリー。
せめて、彼女に想いを伝えたかった。
振られたっていい、グエルの野郎だけずるい。
目を瞑る、ブレードが己を潰そうとする瞬間など見る勇気はない。
『させませんよ』
彼女の声が聞こえた。
スレッタ•マーキュリーの声が。
目を開くと、敵のモビルスーツが両腕を切り裂かれる瞬間が見えた。
そしてそのまま、パイロットのいる胸部を貫き絶命させる。
あまりにも鮮烈で、目が離せない。
いとも簡単に命を奪いつつも、それでいて惹きつけるなにかがあった。
「大丈夫ですか!?」
機体の沈黙を確認すると、スレッタはエアリアルではない、初めて見る機体から出て、オレのもとに駆け寄った。
傷を見ると、青ざめた。
正直なのも彼女のいいところだ、やはり助かる可能性はないくらいの傷なのだ。
- 18二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:58:22
「お、オレのこと…おぼ、えて…」
「覚えてます、カフェに誘ってくれた人!私、あの時嬉しくて、お礼を言いたかった…!」
「よ、よがっだ…」
スレッタの言葉は耳にスッと入ってくるが、オレ自身が口の中に血が湧いてきてうまく話せない、もう時間がないからちゃんと話しておきたいのに。
「オレさ…き、みのごとが好きだった…」
「……」
「ひとめ、ぼれで…ずっと君と仲良くしたい、って」
「私は…」
「わがっで、る、応え、ら…ないって
でも、オレが言い、だかった、だげ…」
「………」
「さ、最期、に会えて、オレ、ちょっと、う、うれ、じ…」
最後まで言い切れない、急に意識が遠のく。
あまりにもあっさりと、まるで自然な流れかのように、オレは死んだ。
恋した人の腕の中、最後まで相手の顔を網膜に刻むかのように、目を開けたまま、彼は死んだ
- 19二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:59:16
どうして……どうして
- 20二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 21:59:48
好きなら意地でも生きろよ
好きな子の目の前で死ぬなよー - 21二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 22:00:18
スレッタ•マーキュリーはあの時のことを思い出す。
何もかもを失って、幽鬼のように彷徨っていたことを。
そして、絶望の中で彼に話しかけられて、連れられるままカフェに行ったことを。
憧れていたシチュエーションだったけど、とても喜べなかった。
でも、彼の言葉で少し気持ちが明るく慣れた。
『ガンダムに乗れるだけが君の魅力じゃない!』
それを聞いた時は、疑う気持ちがあった。
でも、地球寮のみんなが勘違いだったけどガンダムに乗れない自分を助けてくれた。
そこから少しずつ自分のことを認めて、迷って、自分が進むべき道を探してきた。
色々あったけれど、ここまで来た。
(重い)
腕の中にいる彼の亡骸を地面に寝かせると、腕を交差させて瞼を閉じさせる。
死の重さを、スレッタは感じていた。
ミオリネを守るときも、母親に言われたままだった時も、感じなかった命の重さ。
それを、己に恋した少年の遺骸で実感した。
これを知って何も感じずにいることは、できない。
見ないふりをしてしまうこともできない。
- 22二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 22:08:33
「ありがとう、ございました」
名前も知らないあなたに、助けてもらった。
あなたが私をどれだけ好きかはわからない。
けれど、私は花嫁を迎えに行くと、家族も諦めないと決めた。
だから応えない、応えられない。
一度は遥か遠くに離れた、けどここまで来た。
だから私はそこに行く、全てを諦めない。それが私が選んだ道だ。
私は正しくなくてもいい、でも一緒に考えてほしい。間違えても隣にいたい。
私はミオリネさんが好きだ。
言われるがままの私しか知らないミオリネさんが欲張りな私を見たら、驚かせちゃうかもしれない。
でも、やっぱりあなたを諦められない。
だから、助けに行くよ。
ねえ、ミオリネさん。
お母さんに言われたからじゃない。
もうすぐ行くよ、待っていて。
「パーメットスコア──」
これから見るものもたくさんあるはず。
その時隣にいてほしいのは、あなただ。
おわり
- 23二次元好きの匿名さん23/05/09(火) 22:48:26
純愛モブくん普通によかった
スレッタのことただ好きなモブでも力になってる感じがいい