メイケイエール「どうすりゃいいんだ・・・」

1二次元好きの匿名さん23/05/10(水) 09:22:03

本拠地、中京競馬場で迎えた高松宮記念 
あいにくの不良馬場、直線では勢いを見せず惨敗だった
 競馬場に響くファンのため息、どこからか聞こえる「カノープス行きだな」の声 
無言で帰り始める馬たちの中、今年の1番人気メイケイエールは独りパドックで泣いていた
 G2で手にした栄冠、喜び、感動、そして何より信頼できるマクドナルド・・・ それを今の国内で得ることは殆ど不可能と言ってよかった 
「どうすりゃいいんだ・・・」エールは悔し涙を流し続けた 
どれくらい経ったろうか、エールははっと目覚めた
 どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、冷たい折り返し手綱の感覚が現実に引き戻した 
「やれやれ、帰って調教をしなくちゃな」エールは苦笑しながら呟いた
 立ち上がって伸びをした時、エールはふと気付いた  「あれ・・・？お客さんがいる・・・？」
 パドックから飛び出したエールが目にしたのは、自由席まで埋めつくさんばかりの観客だった 千切れそうなほどに新聞が振られ、地鳴りのようにG1のファンファーレが響いていた 
どういうことか分からずに呆然とするエールの背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた 
「エール、返し馬だ、早く行くぞ」声の方に振り返ったエールは目を疑った 「そ・・・ソダシちゃん？」
「なんだアホ、居眠りでもしてたのか？」 「は・・・繁殖牝馬？」
「なんだエール、かってにレイナスを引退させやがって」 「アパパネノムスメ・・・」　
エールは半分パニックになりながらスコアボードを見上げた 
１番：ストライプ　２番：ファインルージュ　３番：ブルーバード４番：ソダシ　５番：アカイトリノムスメ　６番：内川　７番：ククナ　８番：メイケイエール　９番：エンスージアズム
 暫時、唖然としていたエールだったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった 
「勝てる・・・勝てるんだ！」 
武英から馬具を外され、ゲートへ全力疾走するエール、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・  

翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った