エル、お尻を向けなさい｜あにまん掲示板

1二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:48:10

「と、突然なんデスか……」

　突然のルームメイトのセクハラに、お尻を隠して壁を背に後ずさりする。
　ルームメイトの彼女、グラスワンダーからは日頃から怒られることもあるが、困ったことに今回は全く心当たりがない。
　この寮の自室で、私はベッドの上に胡座をかいてプロレスの雑誌を、彼女は机に向かって不退転をと、各々自由な時間を過ごしていたはずだ。
　マンボも大人しくしているし、もしや鼻歌が何か気に障ったのだろうか……。

「いいから、こっちにお尻を向けない」
「ちょっ……やめてください！　やめ、変態！」

　抵抗を試みるが、びしと脳天に軽いチョップを叩き込まれ、大人しくする他なくなる。こんなもの、横暴という他ない。
　仕方なく背中を向けてお尻を突き出す形で彼女に従うことにした。

「……別にそこまで突き出さなくても」
「なんデスか！？　グラスがこうしろと言いました！　乙女の恥じらいを何だと思ってるんデスか！」

　酷い話だ。
　理由もわからずに尻を向けさせられ、言う通りに従ったら今度は引かれるなんて。

「尻尾ですよ尻尾……やっぱり、ずいぶん毛が汚れているじゃないですか」
「毛？」

　尻尾？
　そういえば、昨日は雨上がりのダートレースに出走して、疲れたのでシャワーは全身の汚れを落とす程度に済ませて、尻尾や髪の毛の先端まではよく洗っていなかったかもしれない。
　自分では特に気にしていなかったが……。

2二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:48:34

「少し待っててくださいね」

　グラスはそういうと、机にかけてあったポーチからブラシや毛づやクリームをぽいぽいと取り出していく。
　小さなポーチの一体どこにそんなスペースがあるのか不思議なものだ。

「はい、あっちを向いててください」
「むぅ……わかりました……」

　言われるがままに彼女に尻尾を向ける。
　ふわりと優しい手付きで尻尾を持ち上げられ、柔らかいブラシの感触が尻尾の付け根から走らされる。

「ちょっとエル、動かさないでください」
「くすぐったいデス……」
「我慢ですよー」

　彼女は先ほどとは打って変わって、随分と優しい口調でなだめるように尻尾を撫でていく。
　ブラシの毛先もそうなのだが、尻尾を撫でるその手付きに、どうにもこうにもむずむずしてしまう。
　ブラッシングが終わると、今度は毛づやクリームを満遍なく塗りたくられる。
　最初のブラッシングと同じように根本から先端まで。
　クリームのひんやりとした感触が尻尾に触れ、自分の意思とは関係なく反射的に尻尾が跳ねてしまう。

「んぎっ！？」

　暴れる尻尾を無理矢理押さえつけるように、ぎゅっと力を込めて握られる。
　先ほどまでの優しさは、メチャメチャ厳しいグラスが不意に見せた優しさだったのかもしれない。

3二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:48:52

キャラ崩れてるエルかわいい

4二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 00:49:10

　刺激に慣れて尻尾が落ち着くと、今度はまた優しく指で揉みしだくようにして、尻尾全体にクリームを馴染まされていく。
　美容院でシャンプーをされているようなふわふわの心地に、思わず眠気が下りてくるようだった。

「さ、終わりましたよエル」
「あうっ！？」

　ぺしんとお尻を叩かれ、夢見心地から現実に引き戻される。
　大して痛みのない叩かれた部分をさすりながら尻尾を確認すると、確かに手入れ前とは見違えるほどに艶々と光を反射した綺麗な毛並みが真っ直ぐに流れている。

「おー！　グラシアス、グラス！　まるでCMのモデルみたいデース！」
「どういたしまして、ちゃんと自分でお手入れしなさいね」

　尻尾を振る度に、自分では見たことのない綺麗な毛並みがふわっと靡(なび)く様に感動すら覚える。
　腰を振って尻尾を動かすことがこんなに楽しいというのは、今までにない経験だ。
　だが、ふとその下のある一ヶ所に目が止まる。
　先ほどまで座っていたベッドの上、シーツの上に。

「……グラス、この……このポロポロ落ちてる汚れ……砂、は？」
「あなたの尻尾から落ちたものですよ。」
「…………」
「…………」

　無言のままにっこりと微笑む彼女の顔には、「知らん」と書いてあるような気がした。
　今度からレースの後は、しっかり汚れを落とそう。
　そう心に強く決めた。