タフと刃牙のクロスSSを描いたんだァ

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:31:37

    読んで感想を聞かせてもらおうかァ
    ちなみに時系列とかこうなった経緯は考えてないらしいよ

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:32:01

    富士山の麓、俗に言う“富士の樹海”。
    樹海のとある場所に存在する木々の開けた広場にて、男と老人が向かい合っていた。
    男は背丈こそ小さかったものの、着ている作務衣から覗く厚い胸板や太い首、俗に“柔道耳”と呼ばれる潰れた耳からは、男が何らかの武術の心得を持っていることを読み取ることが出来る。
    対する老人の風貌に変わったところはない。
    近所を散歩している最中のご隠居が、何かの拍子に神隠しにでもあったかのようであった。
    二人に共通しているのは、性別が男であること、武術家―それも“柔よく剛を制す”を旨とする柔術の使い手であること、そして死合いを好んでいることである。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:32:29

    「では…組ませていただきます」
    「ええよ」
    老人―渋川は、やや左足を前に出したほどで、泰然自若に構えている。
    それに対し、男―朝昇は開いた両手を肩の高さに構えると、すり足でじりじりと渋川との距離を詰め始めた。
    後五歩踏み込めば渋川の襟をつかむことが出来る。
    後四歩。
    後三歩。
    後二歩。
    後一歩のところまで朝昇が踏み込んだその時である。
    「シッ!」
    するどい呼気と共に、渋川の顔面目掛けて朝昇の拳が走っていた。
    「!」
    渋川が左に飛びのく。
    紙一重で躱した渋川の頬が裂け、赤い血が噴き出した。
    しかし、朝昇の攻撃はまだ終わっていなかった。
    「渋川さんのような古流の柔術家には眉を顰められてしまうかもしれませんが…」
    渋川が飛びのいた距離をフットワークで詰めると、ワンツー、フック、アッパーなど様々な種類のパンチを組み合わせて渋川を追い詰めていく。
    「最近の柔術家はボクシングも学ぶのです」
    朝昇のコンビネーションは付け焼刃のそれでは無かった。
    それは、朝昇が黒竜寺に入寺する前に所属していた総合格闘技のジムである「SHOOT FIGHTING ACADEMY」で学んだものであった。
    しかしそれ以上に上手かったのが、朝昇の戦略であった。
    試合開始直後から自らが柔術家であることを印象づけておき、打撃の匂いをギリギリまで悟らせない。
    渋川を手強い柔術家と見たが故の戦略であった。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:32:59

    逃げる渋川と追う朝昇。
    二人の濃密な鬼ごっこは、渋川の背が樹木の幹にぶつかることで終わりを迎えた。
    むろん朝昇の計算の内である。
    黒竜寺で年間千を越える試合をこなしている朝昇は、樹海の何が自分を利するのかを知り尽くしていた。
    逃げ場を失った渋川の顎目掛けて、朝昇が拳を繰り出したその瞬間。
    「当身七分投げ三分」
    朝昇の体は宙に飛んでいた。
    「りぃ~~~ぱな古流柔術よ」
    朝昇は、自分が何をされたのか分からなかった。
    朝昇の体は宙を舞い、数メートル後方の地面に落下した。
    朝昇はとっさに受け身を取り、素早く渋川の方に向き直る。
    視界から渋川が消えていた。
    そのことに朝昇が気付くのと同時に、朝昇の右手首を枯れ木のような手が掴んでいた。
    その手は渋川のものだった。
    渋川は吹き飛ぶ朝昇に老人とも思えない敏捷さで追随し、朝昇の死角に潜り込んだのだ。
    「うま~~~く踊りなさいよ」
    次の瞬間、朝昇の天地がひっくり返っていた。
    「さもなきゃ圧し折れるでなぁッッッッ!!!!!」
    渋川が朝昇を投げたのだ。
    朝昇の体が地面に叩きつけられる。
    「かはっ」
    下は草地だったためそこまでのダメージは無かったが、それでも朝昇は自分の体が軋む音を聞いた。
    「ほいなッ」
    再び朝昇の体が宙を舞っていく。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:33:22

    それは異様な光景だった。
    渋川が朝昇の肘に少し手をそえるだけで、朝昇の体が宙を舞い地面に叩きつけられる。
    例えば,ファンタジー作品で巨人が人を蹂躙するときこのような光景になる。
    しかし、それをやっているのは小さな老人なのである。
    渋川のやっていることは、まず朝昇の肘関節に逆方向に力を加えることであった。
    それだけで朝昇の体は反射的に負荷から逃れようと動く。
    そしてその動きにさらに力を加えて加速させ、地面目掛けて叩きつける。
    言葉にすればただそれだけのことである。
    既に朝昇は技の仕組みについて察しがついていた。
    しかし、渋川の細腕から逃れることが出来ないでいた。
    太極拳の修行に、手に鳥を乗せ続ける、というものがある。
    鳥が手から飛び立とうとする気配を察し、手を揺り動かす。
    すると鳥は無意識に手に捕まり、飛び立つことが出来ない。
    それによって、触れ合っている敵の攻撃を察知する「聴勁」や、攻撃を無効化する「化勁」を学ぶのである。
    今、渋川がやっているのは、そういうことであった。
    一度投げられるごとに、朝昇の体にダメージが蓄積していく。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:33:52

    渋川が六度目の投げをしようとしたその時だった。
    「腕一本……差し上げます!」
    朝昇の肘関節がおかしな方向に折れ曲がった。
    それは負荷に耐えきれなかった肘が折れ曲がったわけではない。
    カポン、と小気味いい音を立てて、肘が外れたのだ。
    朝昇は、“朝昇式ボーン・コントロール”によって自ら関節を外したのである。
    「お?」
    不意を突かれた渋川の体が崩れる。
    片腕と引き換えに手に入れた、一秒にも満たない隙。
    それを無駄にする朝昇では無かった。
    朝昇はもう片方の手で渋川の右腕を掴むと、跳躍した。
    朝昇の両足が、二匹の蛇のように渋川の首に巻き付く。
    飛びつき三角絞めだった。
    屈強な大男や神域の達人も、頭に血が通わなければ意識がブラックアウトする。
    それが人体の構造である。
    朝昇の足と自らの腕で頸動脈を締め上げられている渋川も、そのような結末を迎えるはずであった。
    しかし、そうはならなかった。

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:34:22

    「ぬうッ」
    三角締めが極まる瞬間、渋川は左腕を朝昇の両足の間に挟み込み、三角締めの完成を防いだのだ。
    その後両手で朝昇の腰を押し、朝昇の両足に隙間を作り、そこから脱出した。
    それ自体はオーソドックスな三角絞めの対処法であったが、余りにも洗練された動きであった。
    朝昇の肘関節が外れてからここまで2秒もかかってはいない。
    「高専柔道け」
    首筋を撫でながら渋川は言った。
    三角締めとは、元々岡山第六高等学校高専柔道の金光弥一兵衛が発明したものと言われている。
    そのことを踏まえた発言だった。
    「高専柔道の経験もあるのですか?」
    「べ~~けやろう。お前さんが生まれる前から“柔”と名の付くものはやりつくしとるわ」
    外れた肘関節を直しながら、朝昇は感嘆の思いを禁じえなかった。
    闘いを通して、目の前の老人が積み重ねた歴史に触れた為だ。
    (さて、どうするか)
    しかし、それは同時に朝昇の進退が窮まることを表していた。
    渋川の歴史の前では、立ち技も寝技も全てが通用しない。
    ならば渋川に有効なのは、既存の格闘体系に存在しない技。
    数千本の骨を圧し折った朝昇だけがたどり着くことが出来た異形の業。
    朝昇は、己の奥義を出す決心をした。

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:34:51

    すると朝昇の足元の草が、ぐずぐずに腐り始めた。
    その腐食は朝昇を中心として広がっていき、地面にまで及んでいく。
    一分もしない内に、広場は沼地になっていた。
    それは現実の光景では無く、渋川の視界の中での出来事であった。
    渋川が若かりし頃、自らの師である御輿芝老に「真の護身」について尋ねたことがあった。
    御輿芝老はその問いに「危うきに近寄らぬこと」と答えた。
    相手の攻撃を如何に捌くか、そういう場面に出くわす時点で二流。
    真の一流は、そもそも危機にたどり着くことが出来ない。
    御輿芝老が語る「真の護身」とは、そういうものであった。
    それから年を重ねた渋川は「危機のイメージ化」という形で護身を完成させた。
    渋川が危機に近寄ろうとするたび、錠が掛けられた門や溶岩の海がイメージとなって視界に現れ、彼の行く手を阻むのだ。
    ふと渋川は、自分の足に何かが吸い付いていることに気付いた。
    渋川はそれを指で摘むと、目の前まで持っていき凝視した。
    「蛭、か?」
    渋川がそう呟くと、それを聞いた朝昇が凄絶な笑みを浮かべ、掌を渋川の方へと向けた。
    「んかあっ」
    掌は握ったり開いたりを繰り返している。
    渋川にはその掌が、猛毒を持った爬虫類の顎のように見えた。
    朝昇と渋川、両者の間の空気がきりきりと張り詰めていき、ほとんど氷かガラスのようになっていく。
    あと一つ、何かのきっかけさえあれば、空気は爆ぜるはずであった。

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:35:20

    理想的です)
    渋川は思った。
    試合の最中ではあるが、現在争いは起こっていない。
    何故ならお互い何もしていないためだ。
    何もしてこない相手には何もする必要はなく、そこには争いは生まれようはずも無い。
    そこには、護身の理想たる完全平和が実現していた。
    (しかしこれは試合じゃ)
    (おぬしの技とワシの技、どっちが上でもいいと言うにはこの渋川…)
    「若すぎるッッッ!」
    「!」
    瞬間、拮抗は破られていた。
    渋川が朝昇目掛けて走り出したのだ。
    負けじと朝昇も走り出す。
    ぶつかった両者は、絡み合いながら草原を転がっていく。
    死力をつくす二人を、樹海だけが見守っていた。
    (終)

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:37:30

    富士の樹海って鷹ニィの隠れ家なかったスか?

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:42:15

    お前=神
    タフカテというゴミ箱でタフと刃牙のSSを書いたお前は最も輝いているゴミなんや

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:43:43

    >>10

    まあ気にしないで ナボハ族のところにいるかも知れませんから

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 14:54:01

    >>11

    ふうんゴミを司る付喪神ということか

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 15:10:15

    >>10

    すっかり忘れてたのん…

    黒竜寺が富士の樹海にあるからそこからとったんだよね

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 15:33:18

    ええやん

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 18:21:53

    夢枕獏の影響受けてそうっスね

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 18:34:48

    もらっておくのん

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 20:04:10

    >>17

    この宣言は…?

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/14(日) 23:51:17

    >>17

    えっ

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:20:05

    スレ主…あなたは神だ

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:22:13

    すげーよ

    美味いカレーを食べたがってたら美味いカレーが来たレベルなんだよね

    すげーよ

  • 22二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:25:02

    >>1のSS面白いよ

    俺は好きだぜ

  • 23二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:27:24

    >>17

    あわわお前は作画の渡哲也先生

  • 24二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:40:58

    お見事です>>1ボーやはりあなたは私が見込んだ通り素晴らしい物書きだ

  • 25二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 11:45:49

    勝敗をぼかすのには好感が持てる
    だが…決着を見たいという衝動に駆られる!
    クロスSSの悲哀を感じますね

  • 26二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 19:03:34

    あざーす

  • 27二次元好きの匿名さん23/05/15(月) 22:09:12

    ダメ元のage

  • 28二次元好きの匿名さん23/05/16(火) 01:08:04

    打撃の速度で関節を外す男と投げを受けると同時に手首を外す爺がぶつかり合って、明日は柔術注意報だあっ

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