冥界の王に見初められた花の話【SS】

1二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:48:27

注意
元ネタはありますがかなり話の流れが変わっています
また話の内容の都合上、ウマ娘が神様役で出ますが面倒なので“柱”ではなく”人”で数えています
フラウンスです（重要）

それでもよろしければどうぞ

2二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:48:48

昔々、たくさんの神が住む世界がありました

神はそれぞれ自分たちがつかさどる概念を持ち、高位の神になると領地をもつ者もいました

そんな神々の中に冥界を治める王の地位にいた神がおりました

名前をセイウンスカイと言います

3二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:49:10

ある日、彼女は趣味の釣りをしようと川へ歩いていきました

すると川岸の花畑で少女がお手玉をしていました

その少女は非常にかわいらしく、スカイはすっかり一目惚れしてしまいます

スカイは少女に話しかけます

「こんにちは、はじめましてかな？」

少女はお手玉をやめてスカイに向きなおります

スカイを見た少女の頬がピンク色に染まりました

「は、はい。私はニシノフラワーっていいます」

それからしばらく二人は花に囲まれながら仲睦まじく話をしました

初めて会ったはずなのに二人の口からは話題が途切れませんでした

4二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:49:34

だんだんと日も暮れて辺りが暗くなってきました

しかし二人とも別れの言葉を切り出せずにいました

口を開いたのはスカイのほうからでした

「その、暗くなってきたから私の家に来ない？」

フラワーは花のようにぱあっと微笑んでその提案を受け入れました

冥界にあるスカイの家に着くと、庭にはザクロの実がなっていました

フラワーがその実に触れようと近づきます

スカイはあわてて彼女をザクロの木から離しました

「ダメだよ、フラワー。冥界にある食べ物を食べたら冥界に住まないといけない決まりがあるんだ」

それを聞いたフラワーはにこりと微笑むと、ザクロの実を取ってかぶりつきました

「な、なにしてるの！？」

「だってこれを食べればスカイさんと一緒にいられるんですよね？……ダメ、でしたか？」

スカイを見つめるフラワーのまなざしに押されるようにして二人は家の中に入っていきました

そして二人は末永く幸せに暮らしましたとさ

5二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:49:54

……というわけにはいきませんでした

豊穣をつかさどる神であり、フラワーの母でもあるスーパークリークが寝込んでしまったのです

クリークと仲のいい神々は頭を悩ませました

「アカン……クリークがおらへんと凶作でメシもろくに作れんくなるで」

「それは、困るな……」

「てやんでえ！こうなりゃ冥界に直談判だ！」

こうしてタマモクロス、オグリキャップ、イナリワンの三人は冥界を訪れました

クリークのことを聞いたフラワーは大いに動揺しました

「そんな……私のせいでお母さんが……」

「あわわわ、まだご挨拶にもうかがってないのに……」

スカイはもっと動揺していました

6二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:50:11

「そういうことやからフラワーは連れて帰るで」

「でも、私冥界のものを食べてしまって……」

「なんやてえ！？」

「なにかマズいのかタマ？」

「マズいもなにも冥界のもん食ったら、ってなに食っとるんやオグリぃ！？」

オグリはおいしそうにおにぎりを頬張っていました

「おなかが空いたから……」

「ドアホぉ！」

おずおずとスカイが口を開きます

「あの、それうちで作ったものじゃないので大丈夫だと思いますよ……？」

「……はぁ？」

「タマ、これは自分でお弁当代わりに持ってきたものなんだが……」

「まぎらわしいわ！！！」

7二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:50:30

わいわいと騒がしい中、イナリがぽんと手を打ちます

「そうだ！冥界に留まる期間を作ればいいんじゃねえか？」

「どういうことですか？」

「フラワーが冥界で過ごす時期とあたしらがいる場所で過ごす時期があれば両方で暮らしてるってことにならねえかな？」

「おお！頭ええなあイナリ！」

「へへっ、落語で似た話があったからよ」

「……そないな話あるんか？」

こうしてイナリの案のとおりフラワーは一年のうち四か月を冥界で、残りの期間をもとの場所で過ごすことになりました

これが“冬”という概念ができたきっかけと言われています

8二次元好きの匿名さん21/11/29(月) 21:50:44

……しかし、神々というものはままならないものでして

「スカイ！またお前フラワーに会いに来たんか！」

「だって私がこっちに来ちゃダメとは言われてませんし～」

「お前が来ると色々大変なんや！一応かなり位の高い神様なんやからじっとしとれ！」

「まあまあタマちゃん、いいじゃないですか。スカイさん、また今度フラワーちゃんと一緒に冥界に遊びに行きますね～」

「はい、いつでも大丈夫ですからねお義母さん」

「大丈夫じゃあらへんわ！クリークがおらへんと作物が……っていつの間にかお義母さん呼びになっとる！？」

こんな風に時々神々が行ったり来たりして、暖冬や冷春といった概念も生まれてしまったのでした

めでたしめでたし