- 1二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 21:13:15
「無礼らぇたモンですよ、私こう見えてチーム・ファーストのトレーナーですよ、理事長・代理なんですよぉ~……聞いてます?」
「ええ聞いてますよ、理子さん」
GWの大連休も、業種によっては並の仕事と変わらない。サービス業なら割増しの忙しさだ。僕らトレーナーも、カレンダー通りに休んだ者はあまり居なかっただろう。
担当の生徒が連休いっぱい里帰りしていたトレーナー達は、自分も里帰りなり休暇を取り得た。が、多くは担当とのトレーニングや研究、あるいはお出掛けに日々を費やしたと聞く。
かく言う僕の担当も、殊更に里帰りを求めてはいなかった。実家が比較的近いために普段から度々顔見せに戻っており、連休の多くはトレーニングを希望したのだ。
とは言え今回は、調子を落とさない程度の練習量に留める事に腐心した。練習場は空きが多めだが、病院はそうでは無いのだ。治療の人手が少ない時に万が一の事があれば、あの子の将来にも響くだろう。
僕自身望まぬ事であるし、……理子さんがどう出るか想像するだに怖ろしい。
そして理子さんもまた、大所帯のファーストの指導に加え、学園の雑多な仕事にURAとの繋ぎと、普段と変わらない仕事ぶり。この週末にやっと休みに入れたので、こうしてお邪魔した訳だが……
少しは発散して貰おうと、酒を過ごしてしまったらしい。お互い大酒のタチではないために、度数の弱いものをさらに割ったのがまずかった。呑んだ量が分かり辛いのは計算外だ。理子さんのかつて無い酔い方を目の当たりにして、どう鎮めたものかと思案している。 - 2二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 21:15:05
「それにしても、『理子ちゃん』とはずいぶん可愛いですね。生徒達に親しまれているじゃないですか」
「ん~……、親しみだけなら結構なんですが。それは貴方のおかげなんですよね……」
「僕ですか?」
「貴方は普段、あの人と話す事ありましたっけ。関西弁の……」
「ああ、確かシンコウウインディの」
「そう、貴方が留守の時にお話しする機会があって……私の事、『初めは少し怖いと思ってたけど丸くなった』って……貴方とお付き合いしてから、です」
少しドキリとした。僕も理子さんも現状、伏せているはずなのだが。
「ファーストの子達が噂していたって。やっぱり態度に出てたんでしょうか」
「それを言ったら僕の方かも。でもいずれはオープンにする事ですし」
「いずれ……!今すぐにでも言いたいです……!貴方と!一緒で!幸せですって言いたい言いたい!」
なんだろう、本当に初めて見るぞ、こんな姿は。可愛い。もっと見ていたい。どんな事喋ってくれるだろうか。
と思いかけたが、これ以上呑ませるのは良くないだろう、片付けるべく切り出した。
「僕も同じ気持ちですよ。……そろそろ明日に備えましょうか、あまり呑むとお風呂も危険ですし」
「ああ、そうですね……」
洗うのは朝でいいだろうと、食器を流し台に運んで戻ると、理子さんが立って待っていた。
「んっ」
両腕を開いてこちらを見つめ、ニッコリ笑っている。可愛いな。これからもたまに呑んで貰おう。
理子さんの腕の下に自分の両腕を差し入れ、優しく抱きしめた。僕の背中にも華奢な両腕が回る。
「……違います」
「ハグじゃ無かったですか」
「それも良いですけど……お風呂入るんですから、ほら、分かって下さい」 - 3二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 21:16:39
ずっと気になる事があった。理子さんの右手の爪に、一枚だけ見慣れない色が入っているのだ。実は大方見当はついており、聞く時を窺っていたのだが。
正に彼女らへの愚痴の中、その日は質問する空気にはならないまま終わった。
――――――――――
もう空は明るくなっている。僕の目を覚まさせた微かな水の音は、雨ではない。
「早いですね。…どうして泣いているんですか」
「私、記憶あるんです。夕べの事。全部」
「僕もです」
「~ッ、恥ずかし……頭痛い」
「可愛かったですよ」
「忘れて下さい」
「ダメです。あ、そうだ。何のかんの言っても、あの子達と仲良くやってますよね。その爪塗って貰ったんでしょ」
「はい。それは良いんですが……何と言うか距離が近くて、戸惑います。よいしょ」
わずかに傷み始めたネイルを、風呂の時も指サックで保護していた。確かに学園に来た頃の理子さんでは、賑やかな子達との交流など想像もつかない。
理子さんが枕元のスマホを取り、その時の写真を開く。塗る前、最中、完成直後、と来て……これは驚いた。
「私がカメラに集中した隙に……全く、あの子たちと来たら……!」
最後に写っていたのは爪を正面に向けた理子さん。両頬に彼女らのキスを受け、目を丸くしていた。
「『ウチらにもLANEで送って♡』なんて、もう恥ずかしくて倒れるかと。……何ニコニコしてるんですか」
「まあ、こんな微笑ましい事が出来るのも今だけですし」
「今、間接キスとか考えてません?」
「 違います」
「なんですか、その“間”は。それにずいぶんご機嫌な反応ですよね?」
「朝……ですから……あ、朝ご飯の支度しましょう。昨日買ったパン焼きますね。水、しっかり飲んで下さい」
「待って下さい、ちょっと……」
枕元の水を身代わりに二日酔いの理子さんの手を抜け出し、冷蔵庫へ向かう。そしてトースターをつけ、手土産のパンを探しながら“自分”と向かい合った。理子さんの所に戻る前に、平常心を取り戻すために。 - 4二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 21:17:23
- 5二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 22:22:55
柔らかくなった理子ちゃんかわいい
- 6二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 23:47:50
生徒想いなのが知れたら人気出ちゃうよね
- 7二次元好きの匿名さん23/05/17(水) 23:49:57
理子ちゃんみたいな見た目した女性が可愛い物好きだったり、生徒思いなのが知られたらそりゃ好かれるに決まっている
多分生徒から餌付けされていく - 8二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 01:00:52
新鮮な代理をいつもありがとう
人に頼るのも甘えるのも隙を見せるのも、時間はかかったけど習得していく理子ちゃん… - 9二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 06:31:19
???「ゆ゙る゙ざ゙ん゙!」
- 10二次元好きの匿名さん23/05/18(木) 07:31:29
公式で酔ってる描写欲しいな 無いだろうけど
- 11123/05/18(木) 18:35:13
レスありがとうございます
ハローさんは外部の大人で、学生抜きだから出来たっぽいですよね
残念だけど他の飲酒シチュは厳しいかな