- 1二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:05:22
以前こちらのスレにssを載せていましたが、スレが落ちたので新しくスレを立てて載せ直します。
ここだけ…|あにまん掲示板ユニバースになったグリッドマンと一体化した結果スパイダーマンNWHのピーターみたいにみんなの記憶から響裕太の存在が消えた世界ラストシーンでジャンクショップを訪れた裕太が六花の頬の傷をみてもう、六花たち…bbs.animanch.comエミュ甘め、解釈違いなど、問題点が多いと思いますがご容赦ください
ちなみにスレ主は、ビター気味のハピエン好きです
- 2二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:06:49
待ってました
- 3二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:09:11
建乙
期待 - 4二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:13:20
俺にしか、出来ないこと。
俺の、やるべきこと。
でも、俺は…
-----------------
〈グリッドォ…、ビーム!〉
「ギャォォォォ…‼」
巨人の腕から発射された光線が、怪獣を飲み込んでいく。怪獣は光線の中でもがき、何とか脱出しようとするが、絶大な威力の光線の前にはそれも無駄に終わり、最後には消滅していく。
それを最後まで見届けた巨人は、怪獣に破壊された街を見回すと、胸の装甲を展開して、街を目掛けて先ほどとは違う光線を放った。
〈フィクサー…、ビーム!〉
光線に触れた街が、たちどころに元の姿を取り戻していく。
瓦礫は消え、吹き飛ばされた建物たちが元の位置に戻る。
そうして街の修復を確認した巨人は、今度は自分自身に光を纏わせていく。
グリッドビームとフィクサービーム。破壊と修復の力を併せ持ち、怪獣を倒して、街を治す。そんな、夢のヒーロー
その名はグリッドマン。ハイパーエージェントとして数々の宇宙を渡り歩き、怪獣と戦う使命を持った存在である。
「おーおー、もう片付けちまいやがった」
街の片隅で、新世紀中学生の四人がグリッドマンの戦いを見守っていた。
「や、やはり、強くなっている。それほど弱い怪獣ではなかった」
「それに裕太君が来てからは、その場で変身できるもんね」
かつてグリッドマンは実態を持たないエネルギー体で、実体化して戦うにはジャンクという古いパソコンが必要だったが、一つの手段をもって、それを克服していた。
「だが、このところ戦い詰めだ。そろそろ…」
マックスの言葉を遮るように、グリッドマンの体は光を纏ったまま収縮していき、やがて一人の少年の姿を形作った。 - 5二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:15:15
「フゥ……お疲れ、グリッドマン」
彼の名は響裕太、グリッドマンに変身し、グリッドマンと共に戦う。赤い髪が特徴の少年である。
今はパソコンに代わり、彼自身が媒体となって、グリッドマンの実体化するためのトリガーとなっている。
『裕太、最近無理をしすぎているのではないか?』
アクセプターの点滅と共に、グリッドマンが裕太に問いかける。
グリッドマンが心配するのも無理はない。裕太はここ最近、休むことなく戦っている。おまけについ最近、大きな戦いを終えた後だ。実態を持たないグリッドマンはともかく、あくまで生身である裕太には、疲労とダメージが確実にたまっていた。
「大丈夫だよ、グリッドマン。世界を守るためにやらなきゃいけないことだから。それに……もう俺の帰りを待ってくれる人は、いないからさ」
裕太のその言葉に、グリッドマンは心底申し訳ない気持ちになった。彼の人生を滅茶苦茶にした原因である自分が、それ以上何を言えるのか。
グリッドマンユニバースという未曾有の危機を解決してから一年、響裕太を取り巻く環境は大きく変化した。
宇宙規模に拡大したグリッドマンとのアクセスフラッシュによって、二人の肉体は完全に一体化することになり、グリッドマンと響裕太は一心同体となった。
それ以来、裕太はグリッドマンと共に数々の世界を渡り歩いて戦う、新世紀中学生の「ジャンク」として活動している。
新世紀中学生たちと同じく黒いスーツを着て、一体化した影響か、瞳は青と黄のオッドアイになっていた。
しかし、裕太にとって最も大きな変化は、一体化による大きすぎる代償だった。 - 6二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:17:30
「お疲れさん」
裕太に追いついた新世紀中学生の四人を代表して、ボラーが裕太を労う。
「裕太、あまり勝手な行動をするな」
労いに続いて、マックスが叱るような口調で言う。裕太がハイパーエージェントとして活動してからは、よくマックスが彼を窘める。
「ごめん、でも本当に最近怪獣が多くてさ、みんなはなるべく温存しててほしいんだよ」
「そ、そのことだが」
裕太の弁明に合わせてキャリバーが話題を変えようとする。これもいつもの流れだ
「レックスの調査で、最近怪獣が頻発する原因がわかったらしい。これから奴と合流しよう」 - 7二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:21:32
-----------------
「よぉ大将。それに、ジャンク。お疲れさん」
パサルートを越えた先で、新世紀中学生のもう一人のメンバー、レックスが皆を出迎える。しかし、どこか神妙な表情を浮かべている。
新世紀中学生のメンバーの中で、レックスだけが裕太をジャンクと呼ぶ。彼もまた、本来とは違う名を名乗っているからだろうか
「レックス、怪獣の原因が分かったそうだな」
「ん?おお、早いとこ話しちまうか」
マックスに促され、レックスが話を始めようとする。一瞬、裕太に気遣うような視線を向けた。
「グリッドマンが宇宙になっちまった事件、その黒幕のことを覚えてるか?」
「覚えてるも何も…、マッドオリジンですよね?」
忘れるはずがない。裕太にとっては仇と言って差し支えない存在だ。
「あぁ、皆で必死こいてようやく倒したそのマッドオリジンが原因だ。」
「奴が甦ったということか⁉」
「いや、問題は消滅したはずの残滓だ。それが徐々にあの世界で高まってる。最近現れた怪獣は、その残滓がユニバースを越えて暴れ始めたことが原因だ」
「何だと⁉ということは…」
マックスを肯定するようにレックスは頷き、裕太に向かって言う。
「ジャンク、いや裕太。あの世界に、また危機が迫ってる」 - 8二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:23:45
「ちょっと待てよ、ユニバースを越えちまうぐらい残滓が高まってるのに、何で大元のユニバースで怪獣が出ないんだよ⁉」
ボラーの指摘は当然出る疑問だ。残滓が発生している中心ではなく、その外側から怪獣が出現し始めるなど、自然な現象ではない。
「な、何者かの意思によってかもしれない。」
「それはまだわからねぇ、とにかく今の段階で言えることは、長い時間をかけて残滓が高まった分、強い怪獣が出来つつあるってことだ」
レックスたちの会話、特にキャリバーの言葉に、裕太は拳を握る。まさか再び、あの世界に危機をもたらそうとする者がいるのか。
「裕太くん、大丈夫?」
ハッと顔を上げてヴィットを見る。珍しくヴィットが神妙な表情で裕太を見ていた。
「グリッドマンの意識があれば、僕らだけでも戦える。裕太くん、無理について来ることないよ」
ヴィットが続ける。彼だけでなく、マックスにキャリバー、ボラーとレックスもまた、裕太を気遣う視線を送る。
「ありがとうございます、ヴィットさん。でも、これまでにない強力な怪獣が現れるかもしれないし、グリッドマンがいないとフィクサービームで街を直せない、俺も行きますよ。」
裕太の言葉に、表情を明るくさせる者はいなかった。 - 9二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:25:16
「そうか、姿を取り戻したんだな >>1 !!」
- 10二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:25:49
あの事件によってグリッドマンと一体化した裕太は、存在すらグリッドマンと同一になったことで、新世紀中学生の一員として戦い始めた。
しかし、裕太が新世紀中学生となった最大の理由は別にあった。
グリッドマンと一体になったことで、他の人間たちの記憶から、響裕太の存在が消滅してしまったのだ。
クラスメイトや両親はもちろん、親友の内海。そして、六花にも…
忘れられた悲しみに耐えきれず、使命を言い訳にして、逃げるようにその世界を去った。ジャンクと名を変えたのは、自分の役割を名前に当てはめたのもあるが、自虐も多分に含まれていた。 - 11二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:27:48
-----------------
パサルートを抜けると、裕太の眼前には見慣れた光景が広がっていた。懐かしい故郷の風景ではなく、怪獣が街を破壊する姿である。
「もう暴れ始めてる!」
『裕太!アクセスフラッシュだ!』
グリッドマンの呼びかけに応えて袖をまくる。露になったプライマルアクセプターが装着された左腕を縦に構え、右腕をクロスした。
「アクセスッ…フラッシュ!」
その瞬間、裕太の体が光に包まれ、体積を増していく。その光が徐々にグリッドマンを形作り、体に色彩が宿った。
〈超電導キックッ‼〉
「グオァァァァァ」
変身して即、怪獣の首に蹴りを見舞う。この世界に戻る原因となった怪獣に、手心など加えるつもりはなかった。
〈グリッドォォォ…〉
怪獣を睨むように、左腕の手甲が光る。腕の矛先を向け、必殺の光線を放つ。
〈ビィィーーム!〉
光線が怪獣を貫き、爆発と共に吹き飛ばした。
爆炎が収まり、怪獣の撃退を確認すると、破壊された街に目を向け、修復の光線を放つ。
〈フィクサー…ビーム!〉
光のシャワーが、街の隅々にまで行き届き、瞬く間に怪獣の痕跡を消していった。
街の全快を見届けると、いつもと同じように、グリッドマンは光に包まれて縮小し、響裕太の姿を作っていった。 - 12二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:28:54
「………」
変身を解き、元に戻った裕太は、一年ぶりに戻ってきたツツジ台を見回す。そこで裕太は、自分がいるのが見覚えのある公園であることに気づいた。
(ここは確か…六花とアイスを買いに行って…)
勇気を出して六花に告白しようとした時に、幽霊…もといアンチの邪魔が入った場所である。
(帰ってきた…、俺は帰ってきたんだ…)
公園の遊具を見つめ、かつて自分が過ごした日々に思いを馳せる。
すると、遠くから二つの足音が近づいてきた。収縮していくグリッドマンの光を追ってきたのだろう。
「「グリッドマン!」」
曲がり角から現れたその二人は、忘れるはずもない、内海将と宝多六花だった。
「りっ…!」
思わず名前を呼びそうになり、咄嗟に唇をかむ。
彼女はもう自分のことは覚えていない、頭ではわかっているが、今もなお想い続けるその人を目にすると、何かを期待せずにはいられなくなる。
だが、彼女の表情を一目見て、希望はたやすく打ち砕かれた。
「誰…?」
怪訝そうにつぶやくその一言に、最後の希望も消え去った。自分は果たして、平静でいられていただろうか。
再会の喜びと、やはり去来した絶望が涙腺を刺激する。それでも、こみあげてくる涙をこらえ、裕太は二人に笑って言う。
「初めまして、新世紀中学生のジャンクです」 - 13二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:30:59
今日はここまで
出来る限り早く更新できるようにしますが、保守のご協力をお願いします - 14二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:43:39
今更だけど画像もう少し詰めれば良かった
サムネだと耳しか写らん - 15二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 21:46:35
復活うれしい
楽しみに待ってます - 16二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:42:22
【SIDE:六花】
季節は秋、私たちは学園祭の後片付けに奔走していた。
「六花さん、段ボールってどこに集めればいいんだっけ?」
クラスメイトにして、グリッドマン同盟の仲間、内海くんが尋ねてくる。
「あー、体育館の前だと思うよ」
「体育館か、ありがとう六花さん。」
この後片付けを終えると、私たち3年生はいよいよ、受験に向けて本格的に動き始める。
「あ、そうだ六花さん、また告白されたってホント?」
思わず振り返る。内海くんには言ってなかったのに、きっとはっすだな
「もうすぐ受験なのに、今から誰かと付き合うなんてできないよ。彼女がいる内海君にはわかんないだろうけどさー」
「まぁ…、それもそうか」
内海くんがそう言ったその時、学校中に轟音が響く。 - 17二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:43:34
「なに今の音⁉」
「窓見ろ窓!」
「やっば~怪獣じゃん!」
怪獣の出現に、粛々と片付けに徹していた学生たちが一気に騒ぎ始める。
「怪獣が、出てきた…」
「六花さん、ジャンクに行こう!グリッドマンが待ってるかも!」
「わ、わかった内海くん!」
怪獣の出現にしばらく呆然としていたが、ハッとした内海くんに呼びかけられ、共にジャンクに向かって走り出そうとする。
その時だった
〈超電導キックッ‼〉
上空から巨人が現れ、怪獣に蹴りを見舞った。
それは後ろ姿でもわかるほど見慣れた。頼もしい背中だった。
「グリッドマン⁉」
突然現れた巨人の姿に安心しつつも、頭には疑問符が浮かぶ。
(どうして?グリッドマンはジャンクが無いと…)
驚愕に固まっているうちに、グリッドマンはあっという間に怪獣を倒してしまった。
「グリッドマン…、一体どうやって」
驚きを口にする内海くん。たしかグリッドマンは、ワープホールのような空間から現れていたはずだ。しかし今回は、何もない場所からいきなり現れたように見えた。
さらに驚くべきことに、グリッドマンは光に包まれ、その場に縮まるように、小さくなっていった。
「とりあえず、あの光のところに行ってみよう。公園のあたりだ」
その提案に私は頷き、公園に向かって走り出す。 - 18二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:44:38
-----------------
「「グリッドマン!」」
公園に差し掛かるや否や、内海くんと一緒に名前を呼ぶ。とはいえ、公園に等身大のグリッドマンが佇んでいたら、正直吹き出していたと思う。
しかし、そこにいたのは、見覚えのないスーツ姿の少年だった。
「りっ…!」
少年は、何かを言いかけて口を紡ぐ。服をよく見ると、新世紀中学生の人たちが着るスーツによく似ている。新しいメンバーだろうか。そう思って、思わず疑問を声に出してしまった。
「誰…?」
その瞬間、ガラスにヒビが入ったような、そんな表情を一瞬見せる。
当然の疑問を口にしたはずなのに、なぜかとんでもない間違いを犯してしまったような気がした。
その表情を隠すように、少年はすぐに柔らかい笑みを私たちに見せる。
なぜか、その笑みにひどく胸が痛んだ。
「初めまして、新世紀中学生のジャンクです」 - 19二次元好きの匿名さん23/05/23(火) 23:45:09
今日はここまでと言ったな
あれは噓だ - 20二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 01:47:28
復活おつです!
後でゆっくり読ませて頂きます - 21二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 07:35:57
保守
- 22二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 10:48:33
辛い…辛くない?
- 23二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 19:01:48
一日の保守
- 24二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 21:36:48
キッツ…
- 25二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:07:39
再会を果たしたグリッドマン同盟、そこに新世紀中学生の五人も合流し、内海と六花に事情を話すことになった。マッドオリジンの残滓によって、再び迫りくる危機に、二人は表情を引き締める。
また、残滓から発生する怪獣の脅威が予測できないため、戦力は少しでも多いほうが良い。
そこでレックスは、麻中蓬をはじめとしたガウマ隊に協力を仰ぐべく、一度この世界を離れることになった。
「でー、やっぱり皆さんウチに泊まるんですね…」
そして宝多家には、グリッドマン同盟の二人と、新世紀中学生の面々が集結していた。
「また怪獣出るかもしれないじゃん」
「い、異変の正体を、突き止めるまでだ」
「もちろんお店も手伝いますし」
ボラーの釈明に、キャリバーとヴィットも続く。意図してか知らずか、一年前と全く同じ返答に六花は苦笑する。
そこで、六花はふと部屋を見回す。するとジャンクの姿がないことに気が付いた。
「あれ?ジャンクさんは?」
「あー…、あいつは「これ以上の人数が厄介になるのは申し訳ない」って、適当なホテルに泊まるってよ」
「えー…、いまさら一人くらい気にすることないのに…」
今は新世紀中学生の四人だけだが、どうせ蓬たちもここに泊まることになるのだ。ジャンク一人いなくても、それほど違いはない。
「ジャンクさんと、ちょっと話したいことあったのにな…」
六花のその言葉に、新世紀中学生のメンバーが一様に驚いた表情を浮かべた。彼らを代表し、マックスが彼女に尋ねる。
「…ジャンクのことが気になるのか?」
「いやー気になるっていうか、うちの店と同じ名前だからちょっと…、偶然だなと思って」
何とはなしに言う六花に、マックスは少し悲しそうな顔をして「そうか」とだけ返した。 - 26二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:09:39
-----------------
暗い夜道に一人佇む裕太、その視線の先には一軒のマンションがあった。
それは、この世界で自分が暮らしていた住居だった。
グリッドマンとの一体化が、この世界に与えた影響は記憶だけではない。裕太の部屋はその内装を変え、戸籍や母子手帳、カレンダーに記された花丸まで、一縷の望みも許さないとばかりに消失した。
住居だけではない、母校であるツツジ台高校にも、響裕太という人間が在籍していた痕跡は消え去っていた。
「ホテルって、どこにあったかな…」
そう呟いた時、裕太の左ポケットから電子音が鳴った。
携帯の液晶に映っていた名前は、裕太があらゆるものを失ったあの事件で、唯一得たといっていい存在だった。
『もしもし裕太?元気だった?』
「久しぶり、蓬」
電話の相手は、別世界で暮らす友人、麻中蓬だった。
グリッドマンとの一体化は、裕太の世界だけでなく、蓬の世界の住人達にも影響を与えた。しかし、蓬だけは怪獣との結びつきの影響か、記憶を失うことはなかった。
裕太にとっては、時々行う蓬との他愛もない通話が、数少ない楽しみの一つだった。
『ガウマさんから連絡受けてさ…、明日皆でそっちに行くよ』
「ありがとう、心強いよ」
いつもなら、お互いの近況報告となるところだが、事態が事態なのでそうもいかない。
『…あのさ、裕太。』
しばしの沈黙の後、蓬が切り出す。ひどく言い辛そうにしているが、どうしたのだろうか。
『その…、六花さんとは…』
蓬がそう言った刹那、裕太の袖から光が溢れ、Gコールが鳴る。 - 27二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:10:34
『どうした裕太!何の音⁉』
「蓬!怪獣だ、怪獣が現れる!」
『わ、わかった!今すぐガウマさんたちと行く!』
そう掛け合った後に電話を切る。まもなく地震が発生し、怪獣のうめき声が聞こえる。
裕太はすぐさま袖をまくってアクセプターを出し、グリッドマンに呼びかける。
「グリッドマン!」
『裕太!共に戦おう!』
グリッドマンへの返答の代わりに左腕を縦に構え、右腕をクロスした。
「アクセス、フラッシュ!」
裕太の体に、また光が灯った。 - 28二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:12:13
-----------------
裕太がアクセスフラッシュする少し前、ジャンクショップ「絢」の面々も、怪獣の出現を察知していた。
内海に六花、新世紀中学生がジャンクの前に集まると、怪獣に相対するグリッドマンの姿がジャンクに映る。
そこで内海が、昼間に抱いた疑問を口にする。
「そういえば、グリッドマンはジャンクがないと変身できないんじゃありませんでしたっけ?」
これまでグリッドマンは、ジャンクから自分たちが戦闘コードを打ち込むことで、現実世界に現れて戦うことができるようになっていたはずだ。
「あ、えっと…、ジャンクの奴が来てからは、無くても変身できるようになったんだよ」
「なるほど!だからジャンクさんなんですね!」
「そ、そーなんだよ!役割が一緒だからってことで~」
「とにかくジャンクに続け!全員で行くぞ!」
内海の質問にしどろもどろになるボラーをフォローするように、マックスが号令をかける。
「アクセスコード、バトルトラクトマックス!」
「アクセスコード、グリッドマンキャリバー!」
「アクセスコード、スカイヴィッター」
「アクセスコード、バスターボラー!」
四人が光と化し、ジャンクに吸い込まれていく。
その光を目で追っていた六花は、視線の終着点であるジャンクを見て、これが一年間店にあった事実に疑問を抱く。
(ジャンクさんはまだ居なかったのに、なんで事件の後にこれを持っていかなかったんだろ?無いと実体化できないじゃなかったっけ?)
アレクシスケリヴの事件を解決した後、グリッドマンたちはジャンクを持って行ったはずだ。
だが、グリッドマンユニバースの事件が終わっても、それは店の中にあり続けた。ジャンクが加入する前だというのに。
そんな六花の疑問を吹き飛ばすように、街中に轟音が響いた。 - 29二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:13:44
-----------------
〈〈〈〈〈〈超合体超人、フルパワーグリッドマンッ!〉〉〉〉〉〉
新世紀中学生たちとの合体を果たしたグリッドマンは、怪獣に掴みかかる。
だが、圧倒的なパワーを誇るフルパワーグリッドマンでさえ、この怪獣には力負けしてしまう。
「グオォォォォァ!」
〈グッ!なんてパワーだ!〉
〈接近戦は不利だっ!遠距離から仕掛けるぞ!〉
そういうとグリッドマンは、怪獣をいなして距離を取り、ミサイルポットを展開させた。
〈バスターグリッドミサイルッ!〉
その号令と共に、無数のミサイルが怪獣めがけて飛んでいく。
「ガァァァッ!」
ミサイルの轟音に対抗するように、怪獣が咆哮する。それが音波のバリアとなり、ミサイルが防がれる。
しかし、グリッドマンは、ミサイルを撃ちながら、すでに次の行動に移っていた。
〈〈グリッド、キャリバー…〉〉
ミサイルの煙をかき分けて、グリッドマンキャリバーを上段に構えたグリッドマンが、怪獣の眼前に躍り出た。
〈〈エ——ンドッ!〉〉
グリッドマンはそのままの勢いで、刃を渾身の力で振りぬいた。だが…
「ガァ!」
〈何だとっ!〉
袈裟切りにするつもりだった刃は、ガキンと鈍い音を立てて、怪獣の肩口で弾かれてしまった。
〈ダメだっ!刃が通らないっ〉
〈こ、これは…〉
フルパワーグリッドマンを上回る力、ボラーのミサイルを封じる音波攻撃、グリッドマンキャリバーが通らない強靭な表皮。あまりにも都合がよすぎる。 - 30二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:14:46
〈まさかっ…我々の攻撃手段が把握されている⁉〉
〈元がマッドオリジンだから、その性質も受け継いでるんでしょ〉
マッドオリジンはグリッドマンへの執着から、相手の取りうる手段を把握していた。その残滓から生まれた怪獣ならば、グリッドマンの戦いに対する適応力を受け継いでいたとしても不思議ではない。
この世界に戻ってきたとき、最初に戦った怪獣に不意打ちの蹴りを見舞い、八つ当たりのようにすぐに仕留めたのは、実は最も正しい行動だったのだ。
〈どうすんだよ、このままじゃじり貧だぞ!〉
怪獣の性質がわかったところで、対抗策がなければ意味がない。ボラーは焦りを含んだ口調で尋ねた。
〈大丈夫っ!もうそろそろ…〉
「なんとかビーム!」
裕太の言葉を遮るように、怪獣の頭上から珍妙な技名と共にビームが降ってきた。
「ガァァァ!」
不意打ちにはさすがにダメージを受けたか、よろめく怪獣の前に、赤い竜人が現れた。
〈〈〈〈〈ダイナゼノンッ!バトル、ゴー‼〉〉〉〉〉 - 31二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:15:39
今日はここまで
マジでここまで - 32二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 01:56:45
乙です。
明日まで保守しておきます - 33二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 10:43:02
保守
- 34二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 15:29:14
保守
- 35二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 22:45:04
明日も頑張ろうの保守
- 36二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:28:44
【SIDE:蓬】
「っつーわけだ。お前ら、力を貸してくれ」
ガウマさんによって集められた、俺たちガウマ隊。再開の挨拶もほどほどに、ガウマさんに事件の全容を伝えられる。
「勿論わたしは行きます!」
ちせちゃんが、いの一番に賛同する。
「俺もいいけど、蓬くんと南さんは大丈夫?今年受験でしょ?」
暦さんが聞いてくる。グリッドマンユニバースの後、別の職場に何とか就職できたらしいが、もう一度会うときには、また就活中になっていた。
「俺は大丈夫です。そんなに厳しいところは受けませんから」
「私も」
俺の返答に夢芽も続く、俺の彼女は、結構血の気が多い。
「おし!じゃあ今日は準備を整えて、明日皆で行くぞ、一時解散ッ!」
全員の返答を得たガウマさんはニカっと笑い、そう告げた。
ガウマさんの解散令の後、俺はこっそりガウマさんと抜け出し、密かに話始める。
「ガウマさん…」
「蓬…、裕太のことか?」
「はい…、電話ではよく話してるけど、実際の裕太の様子とか、俺全然知らなくて」
「そうか…」
「電話してるって言っても、するのは俺の話ばっかりで、グリッドマンとしての戦いとか、とても聞けなくて…」
「でも、あいつを響裕太に戻してやれるのは蓬だけだ。これからも頼めるか?」
「……もちろんです。ガウマさん」 - 37二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:30:45
ガウマさんとの話を終えると、俺はスマホを取り出して、裕太に電話をかける。
裕太がすべてを失ったあの日、戦いの余波で傷だらけになった立花さんを、遠くから見つめる裕太のあの顔は、今でも忘れられない。
裕太が裕太であったことを繋ぎ止めるために、あの事件の後も、俺は裕太と関わり続けた。
「もしもし裕太?元気だった?」
『久しぶり、蓬』
スマホから聞こえた声は、いつも通りの裕太の声だった。
今はジャンクと名乗っているらしいが、裕太を覚えている人でそう呼ぶのはガウマさんだけだ。きっと裕太の思いを汲んだんだろう。
「ガウマさんから連絡受けてさ…、明日皆でそっちに行くよ」
『ありがとう、心強いよ』
スマホの向こう側から聞こえる裕太の声は、本当にいつも通りに聞こえた。だけど、いつも通りでいられるはずがないんだ。
「あのさ、裕太」
言葉に詰まる。俺がそれを聞いたところで、裕太を苦しめるだけかもしれない。
でも俺は聞かなければいけない。きっとそれを聞けるのは、もう俺だけだから。
『その…、六花さんとは…』
その瞬間、聞きなれない機械音が響いた。突然の音に顔をしかめる。
「どうした裕太!何の音⁉」
『蓬!怪獣だ、怪獣が現れる!』
その声に、言いようのない悲しさを覚える。いつも、そしてつい数秒前まで聞こえていた裕太の声とは、何かが決定的に違っていた。
「わ、わかった!今すぐガウマさんたちと行く!」
そう言って電話を切った。そのままの勢いで、みんなが集まっているところに駆け出していく。 - 38二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 01:31:38
「ガウマさんっ!あっちに怪獣が現れたって裕太がっ!」
「何⁉予定変更だ!今すぐ行くぞ!」
「はい!」
ガウマさんと素早いやり取りを交わす。しかし、夢芽たちはいまだ混乱の最中だ。
「え⁉怪獣が?」
「もう二体目が出てきたんですか⁉」
ちせちゃんと暦さんが、怪獣の出現にしばし動揺するが、すぐに気持ちを切り替える。
ただ、夢芽は違った。
「ゆうた…、誰?」
ひどく怪訝な顔をして夢芽が問う。悪いが、今回はお構いなしだ
「話はあと!行こう、夢芽!」
「う…うん」
俺の問いかけに、夢芽が困惑交じりに応える。いろいろと疑問はあるようだが、ひとまずは怪獣に集中してくれるようだ。
視線を前に向けると、すでにガウマさんがパサルートを開けて、向こうの世界に行く準備を済ませていた。
(待ってろ…裕太!)
そうして俺たちは、再びあの世界に向かった。 - 39二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 10:52:34
蓬が私の知らない友達?と話してるって思ってるんだろうなぁ
- 40二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 20:27:11
保守
- 41二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 01:54:23
ほ
- 42二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 08:39:05
続きを待って保守します
- 43二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 16:28:36
保守
- 44二次元好きの匿名さん23/05/27(土) 20:03:49
保守
- 45二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:43:02
〈待たせたな大将!〉
レックスの言葉と共に、グリッドマンの方を向いたダイナゼノン。
〈一気に決めるぞ!ダイナゼノン・フルバースト!〉
〈待てっダイナゼノンッ!〉
ペネトレーターガンにひるんだ怪獣を見て、全力の集中砲火を怪獣に浴びせる。
しかし怪獣は、ボラーのミサイルを防いだ時以上の咆哮を上げ、フルバーストを防いでしまった。
〈何⁉〉
〈レックス、奴はマッドオリジンと同じだ。我々の攻撃は予測されて対策してくる。長引けばそれだけこちらが不利だ〉
驚くレックスに、キャリバーが先ほどの考察を告げる。
「ならあの時みたいにみんなの力をっ!」
「グリッドナイトとゴルドバーンは今ここにいない。何より、奴はあの戦いで敗れたマッドオリジンの残滓で出来ている。ローグカイゼルグリッドマンでも勝てるかどうか…」
「えぇ⁉じゃあどうするんですか、それじゃ打つ手がっ!」
狼狽えるちせ。彼女のように言葉は発さないが、暦と夢芽、そしてレックスも同じ心情だろう。
しかし、蓬だけはそれを聞いて、少し逡巡した後に言った。
「……ひとつ、俺に考えがあります。予測されても対抗できないように、動きを止めてしまえば良いんです」
「…!蓬、それはダメっ!」
蓬の提案に、彼の意図を察した夢芽が反対する。
「全部の攻撃に対応できるんでしょ⁉そんな強い怪獣の中に入ったら、どうなるかわからないっ!」
「ごめん夢芽、でも今はこれしかない。」
「蓬…」
蓬の覚悟に何も言えなくなる夢芽。そんな彼女を安心させようと、蓬は少し笑みを浮かべた後、表情を引き締めて言う。
「そういうことなんで、動きを止められたらすぐに片を付けてください!」
そういうと蓬は、人差し指と中指、薬指と小指を合わせたままⅤ字に開き、その奥の怪獣に照準を合わせる。
「インスタンスッ…ドミネーション!」 - 46二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:43:43
-----------------
気が付くと蓬は、見知らぬ場所にポツンと一人で佇んでいた。
(なんだこれ…?ここ何処だ?)
かつてインスタンスドミネーションを試みた時に、機械の基盤のような世界に意識が飛んだことがある。
しかし、これはその時とも違う。何の変哲もない街の片隅だった。
周りを見渡してみると、高架下のトンネルのあたりで、赤い髪をした少年と緑がかった髪の少年が、何かを話しているのを見つけた。
(あれは…、内海君と裕太?)
蓬の視線の先で、内海はポケットから何かを取り出す。それを強く握ったまま、裕太に手渡して言った。
『心配なんてしてやらねぇ…、でも、一緒にいてやるよ』
(これは…まさか⁉) - 47二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:44:45
-----------------
〈動きが止まった!決めろ大将!〉
レックスが、体を黄金に染めたグリッドマンに合図を送る。
蓬がインスタンスドミネーションを試みた時、すでにグリッドマンはフルパワーチャージを始めていた。
〈〈〈〈〈〈グリッド、フルパワー…ッ!〉〉〉〉〉〉
グリッドマンキャリバーの剣先から、黄金のエネルギーが噴き出す。それが大きな光剣のビームとなり、怪獣に向けて振り下ろされる。
〈〈〈〈〈〈フィニ——ッシュッ!〉〉〉〉〉〉
「グッ!ギガガッ…ッ」
無論怪獣には、このような攻撃の情報があり、対抗策も持ち合わせていた。しかし、体の自由が利かない状態では、なすすべなく切り裂かれるしかなかった。
「ギギッ…グアァァァ‼」
怪獣は最期に一際大きな呻き声をあげ、爆炎を上げて姿を消した。 - 48二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:46:23
-----------------
「よっしゃあ!さすがグリッドマン!最後には勝ってくれるぜ!」
内海がそう言うと、ジャンクから新世紀中学生とガウマ隊が飛び出してきた。二人しかいなかった店内が、一気に狭くなる。
「ちょっと内海さん!うちらも戦ったんすけど~」
「ごめんごめん!助かったよ!」
ちせの不満に、内海が苦笑しながら返す。
そうして勝利に沸く面々の中で、蓬だけは沈鬱な表情を浮かべていた。
「蓬、大丈夫?体、何ともない?」
それに気づいた夢芽が、心配そうに蓬の顔を覗き込む。
しかし、蓬の顔がすぐれないのは疲労によってではなく、怪獣の中で見た光景からだった。
-----------------
戦いの後、ガウマ隊がジャンクから出てきたのは、この世界に来てすぐ、ジャンクに赴いてからアクセスコードを唱えたためだ。
つまり、ジャンクを介さず変身した裕太は、戦いが終わって変身を解いても、元居た夜道に戻るだけとなった。
『裕太、大丈夫か』
「……ッ」
再び集った仲間たち、力を合わせて掴んだ勝利。しかし裕太の心には、どうしようもない疎外感があった。「来てくれてありがとう!一緒に戦おう!」そう呼びかけたかったが、蓬とレックス以外のガウマ隊にとっては、自分は見知らぬ他人でしかない。
「ジャンクに戻ろうグリッドマン。蓬たちも来てくれてるから」
そう言ってジャンクに向けて歩き出す。
すると、遠くから誰かが歩いてきているのがぼんやりと見えた。 - 49二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:46:53
「ジャンクさん!ジャンクさーん!」
六花が遠くで、自分の名前を呼びながらこちらに歩いてきていた。
「六花…!」
「あ、居た!」
こちらを見つけた六花は、走って向かってくる。
「六花…さん、どうして…?」
「ジャンクさん、店の場所まだわかんないかな~と思って」
入れ違いにならなくて良かった。そう言うと六花は裕太の隣に立って、今歩いてきたほうに向かって歩き出した。
裕太もまた、遠慮がちな足取りで、彼女に続いて歩き出す。
それだけで、すべてが報われた気がした。 - 50二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 05:53:49
昨日の夜投稿するはずが寝落ちしました
なので今日の夜に【SIDE:内海】を載せます - 51二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 15:37:39
保守
- 52二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 21:06:07
保守
- 53二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 22:32:12
【SIDE:内海】
「六花さん行っちゃった…、どこにいるかもわかんないのに…」
ジャンクさんを探してくると言って、六花さんは外に出ていった。グリッドマンがいた場所で大体のあたりは付いているだろうが、入れ違いになる可能性のほうが高いだろう。
「あれ?蓬君もいないな…」
「あーなんか、隊長と話したいことがあるって、外に出ていきました」
言われてみれば、レックスさんの姿もない。彼の風貌はその筋の人にしか見えないが、こんな夜に未成年と歩いて大丈夫だろうか。
「あの、内海さん…、一つ聞きたいことがあるんですけど…」
そんな心配をしていると、夢芽さんが話しかけてきた。
「珍しいな、夢芽さんが俺に聞きたいことなんて」
そう言って向き直る。六花さんとは連絡を取っているらしいが、俺とは全くと言っていいほど無い。
そんな夢芽さんは俺の顔を見て、悄然とした顔で聞いてきた。
「その…、ゆうたって誰のことか分かりますか?」
「…ゆうた?」
「こっちに来る前、蓬が言ってたんです。「怪獣が来ることを裕太が教えてくれた」って、内海さんたちの知り合いかなって」
「そういえば、確かにそんなこと言ってたような」
夢芽さんの質問に、暦さんも記憶を辿りながら続く。
しかし、肝心の質問については、何も心当たりがなかった。
「…いや、俺は知らないや。六花さんにも聞いてみたら?」
「…はい、そうします」
そう言って夢芽さんは、先ほど座っていたソファーに戻って腰を下ろす。俺もとりあえず、六花さんたちが帰ってくるまでPCチェアで休むことにした。 - 54二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 22:34:32
(ゆうた…?雄太、佑太…)
とりあえず、誰かの名前に繋がるかもしれないので、ゆうたから連想できる漢字を頭の中で当てはめてみる。
すると、ボラーさんがこちらを見ていることに気づいた。心なしか、険しい表情をしている気がする。
「ボラーさん、どうかしました?」
「いや、なんでもねぇ」
そう言うとボラーさんは、カウンターチェアごと体を動かしてそっぽを向く。
その背が、なぜだか悲しそうに見えた。
(悠太…、勇太…、裕太…)
再開した連想ゲームが、ある名前にたどり着いた時、俺の脳裏に赤髪の人物が一瞬浮かんだ。
(あれ?なんで今俺、ジャンクさんのこと…)
「ムッ、六花とジャンクが帰ってきたぞ」
ずっと店の外で待機していたマックスさんが、店内の俺たちに向けて告げる。
「おっ、ちゃんと合流できたんだ」
そう言って外に出て、二人を出迎える。
手を振る俺に、同じくらいの手振りで返すジャンクさんと、控えめに手を振る六花さん。
そんな二人の姿を見た時、なぜかとても安心した。 - 55二次元好きの匿名さん23/05/28(日) 22:46:38
短いですが今回はここまで
- 56二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 07:47:29
乙です。
- 57二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 15:22:27
保守
- 58二次元好きの匿名さん23/05/29(月) 23:08:18
保守
- 59二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 01:53:51
「初めまして、新世紀中学生のジャンクといいます」
「どうも、山中暦です」
「南夢芽です」
「飛鳥川ちせっす!よろしくお願いします!」
「…麻中蓬です。よろしく」
見知ったはずの人たちと、もう一度初対面の挨拶をしなければならない苦痛は、何度経験しても慣れるものではない。
本当に見知った蓬とも、初対面の挨拶をしなければならないのは、特に心にきた。
挨拶を済ませて一息つこうとしたところで、ヴィットが密かに裕太に近づいて告げる。
「怪獣の正体がわかったよ、裕太君」
-----------------
暗い夜道を、また再び歩いている。しかし、今度は一人ではないし、隣が六花でもない。裕太に蓬、マックスとヴィット。少し変わった組み合わせだが、マスク以外はまともに見えるマックスと、外見は優男なヴィットの二人なら、他と比べれば不審に思われないだろう。
ボラーとキャリバー、そしてレックスは、六花たちの護衛のためにジャンクに残っている。
「あの…、怪獣の正体がわかったなら、どうして六花たちのいるところで言わないんですか?」
「蓬君に確かめたいことがあるんだってさ」
そういわれて蓬を見る。少し険しい表情の蓬に「もしかして夢芽さんと関係があるのかな」なんて思いながら黙り込む。
その沈黙を埋めるように、マックスが話し始める。
「マッドオリジンの残滓が再び怪獣になったと聞いた時、不思議に思っていた。怪獣は人間の情動から生まれる。なら、その情動は何処から来たものなのか。」
「それに、あんなに強力な怪獣が生まれるには、それだけ強い情動が必要だもんね」
「じゃあ…その情動の元は…?」
裕太の疑問を聞いて、ヴィットが視線を蓬に移す。それに気づいた蓬は、インスタンスドミネーションを試みた時のことを裕太に言う。
「俺、あの怪獣を掴んだ時、意識が飛んだんだ。」
蓬は、怪獣の中で目にしたものを話した。ヴィットが裕太に怪獣の正体の判明を密かに伝えてジャンクを出たのは、現場に赴いて確かめたいことがあったからだ。
蓬は高架下トンネルを確認すると、うんと頷いて言う。 - 60二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 01:55:09
「そう、ここだ。俺が怪獣の中で見たのは」
まだ誰も気に留めていないことだが、先ほど現れた怪獣はまさにここ、高架下のトンネル付近から誕生したのである。
しかし、彼らは蓬から得た情報だけで、結論にたどり着いた。
「まさか、怪獣の元になった情動って…」
裕太もまた、その正体にたどり着いた。
でもそれを信じられなくて、信じたくなくて、縋るようにマックスに視線を向ける。しかし、マックスは裕太を気遣う表情をしながら、無情にもそれを打ち砕いた。
「おそらく、裕太の記憶だ」
「俺の…、記憶?」
「消失するはずの裕太の記憶が、同じく消滅しかけていたマッドオリジンの残滓と結びつき、一年かけて怪獣を生み出したようだ」
グリッドマンユニバースの戦いで、敗北したマッドオリジンの残滓が世界に漂った。しかし、それらはじきに消滅するはずの微弱なものだった。
だが、残滓が消滅しようとする際に、同じく世界から消えかけていた物があった。
消滅寸前でありながら大きく強く、おまけにグリッドマンの情報を多分に持った。マッドオリジンにとってこの上なく都合のいい情動が。
マックスの言葉に、裕太はしばらく俯いた後、自嘲気味に笑って言った。
「じゃあ…、俺のせいじゃないか…!」
「それは違う!」
弱弱しくつぶやく裕太に、蓬が力強く言う。そのまま裕太の肩を掴んで、励ましの言葉を続ける。
「裕太は、世界を守ろうとしたんじゃないか!六花さんたちに忘れられてまでっ!そうまでしたのに怪獣の元になったなんて…、絶対に、裕太のせいなんかじゃない!」
蓬の言葉に、二人も頷く。裕太を責めようとする者など、いるものか。 - 61二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 01:56:11
「それにさ、裕太くん」
ヴィットが口を開く。
「この世界に来る前、この世界でまだ怪獣が暴れ始めてないのは、何者かの意思があるかもって話、したよね」
ヴィットに言われて思い出す。たしかキャリバーがそんなことを言っていた。
「それはきっと、君の意思だよ」
「俺の…意思?」
「記憶だけになっても、君はみんなを守ろうとしてたんだよ」
皆を守りたい。裕太の記憶に残ったその意思が、マッドオリジンの残滓を抑え込んでいた。しかし、ユニバースの外に漏れだした残滓は制御できず、怪獣が出現した。
それがこの事件の、不可解な点の真相であった。 - 62二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 01:56:51
「それに……」
ヴィットに続こうとした蓬は言葉に詰まる。涙を流していたことに今更気づいた。
怪獣の中に入り、その正体を知った時から、蓬はある希望を抱いていたのである。
「それに…、記憶が完全に消えて無くなったわけじゃないっ!なら戻せるかも…、取り戻せるかもしれない!」
もしかしたら、夢芽たちと離れて外に出たのは、これを伝えたかったのかもしれない。
「戻せる…?みんなの、記憶が…?」
芽生えた希望をかみしめるように、裕太は言葉を紡ぐ。心の奥底に封じ込めたはずの感情が、涙となって溢れ出す。
「また内海と、六花と…!」
マックスが、裕太の肩にポンと手を置く。ヴィットもまた、裕太に優しい笑みを向けていた。
「全力を尽くそう」
「ゔっ…ゔっ…、…はい!」
マックスの激励に、嗚咽交じりの声で答えた。 - 63二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 09:58:12
保守
- 64二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 10:23:19
保守
- 65二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 17:27:31
保守
- 66二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 22:45:39
【SIDE:マックス】
「それに…、記憶が完全に消えて無くなったわけじゃないっ!なら戻せるかも…、取り戻せるかもしれない!」
麻中蓬の言葉に、裕太は肩を震わせる。その小さな背中に、身勝手に背負わせてしまったものの大きさを思い知る。
この世界を離れて一年、新世紀中学生のジャンクとして戦う裕太は、ひどく痛々しく見えた。
裕太が裕太であったことを捨てたがっているように見えたからだ。そうなって欲しくなくて、口うるさく叱り続けた。本来、恨み言を言われてしかるべき立場にも関わらず
「戻せる…?みんなの、記憶が…?」
裕太の目から零れ落ちる涙が、地面に染みこんでいく。それをじっと見つめながら、私は眉間にしわを寄せ、考える。
(麻中蓬が、怪獣の中で見た光景は、内海との思い出だった。だが怪獣を倒しても、内海に記憶が戻った様子はない)
今回の事件の怪獣は、裕太が強い情動を抱いた場面、つまりは裕太が大切にしている思い出の一つ一つを元にして生まれている。おそらくは、最初に現れた怪獣もそうだろう。
それならば、怪獣が倒されたら、その記憶は戻るはずではないのか?
そうならないということは、怪獣を倒すことは、記憶の解放には繋がらない可能性が高い。
つまり、怪獣を倒すことで、内海や六花たちの記憶を戻すことは難しい。
「また内海と、六花と…!」
そう考え至りながらも、私は励ますように裕太の肩に手を置く。
たとえ困難でも、不可能であっても、奇跡を信じ、戦おうとする二人がここにいる。ならば、私も共に戦おう。
「全力を尽くそう」
なにより、私も信じたいのだ。奇跡を… - 67二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 22:46:10
短いですが今日はここまで
- 68二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 07:30:38
保守
- 69二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 15:17:16
保守
- 70二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 20:31:39
保守
- 71二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 00:40:24
保守する
- 72二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 07:05:22
保守
- 73二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 14:05:58
保守
- 74二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 19:59:59
保守
- 75二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 02:02:01
ほしゅ
- 76二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 07:48:07
保守
- 77二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 14:23:34
保守
- 78二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 21:09:28
希望を持って保守
- 79二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 22:56:57
ジャンクに帰ってから、マックスは残っていた面々に怪獣の正体について、裕太との関係は伏せたまま告げる。怪獣は、新条アカネやマッドオリジンによって、記憶を消された市民の情動が起こしたものであると。
ちなみに、ボラーとキャリバーにレックスとは、四人が高架下に赴く前に、蓬によって概ね怪獣の正体を共有していた。
「戦闘中も言ったが、怪獣はローグカイゼルグリッドマンをも学習している可能性が高い。そして、麻中蓬のインスタンスドミネーションも、次は対策されるかもしれない」
「そうですよね…、それにあれ以上の怪獣相手じゃ蓬君が心配だ」
暦がマックスの意見に同調しつつ、蓬を気遣う。
「だ、だから次は現れる前に叩く」
暦に対して、キャリバーが呟く。
「何も万全の状態の怪獣が出てくるまで待ってやることはねぇんだ。怪獣が早く現れるために、こっちが手伝ってやりゃいい」
キャリバーの意見を補足して、ボラーがしたり顔で言う。
「そんなこと…どうやって」
「お前らは、それができる奴を知ってるはずだぜ、グリッドマン同盟」
六花の疑問にレックスが答え、マックスに視線を送る。
「人間の情動を解放させ、怪獣を実体化させることができる人物」
「まさか…それって…」
そう言う内海の脳裏には、ある一人の男が浮かんでいた。
その男はかつて、この世界の神様を誑かし、退屈しのぎに怪獣を生み出していた。
「アレクシス・ケリヴだ」 - 80二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 22:58:14
「つまり、アレクシスケリヴの手を借りるってことですか⁉」
「そんなことどうやって…、そもそもどこにいるか知ってるんですか⁉」
内海と六花が不安そうに問う。新条アカネの一件を知る二人からは当然出る不安だ。
一方ガウマ隊の面々は、アレクシスとの面識が薄いため、いまいち会話に参加できていない。
「し、知っている。というより、奴は、我々が封印している」
「「え⁉」」
内海と六花から驚きが漏れる。まさかもうすでに捕えていたとは
「グリッドマンユニバースの事件で、奴はマッドオリジンに取り込まれながらも生き残り、姿をくらました。だが、さすがに破壊と再生の力を同時に受け続けて、すぐに活動し始めることはできなかった。我々は事件後、回復しきっていない奴をいち早く発見することができ、ある場所に封印した。それが、つい最近のことだ」
「い、今はグリッドナイト同盟が、奴を監視している。」
蓬から情報を得て、アレクシスの力が必要だと判断した時、新世紀中学生はすぐにグリッドナイト同盟と連絡を取り、協力を要請していた。
なので今はひとまず、グリッドナイト同盟の到着を待つことになった。 - 81二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 23:00:41
「ジャンクさんは、どうして新世紀中学生になったんですか?」
グリッドナイト同盟の到着を待っている間、裕太たちは、それぞれの生活について話していた。六花たちの学校生活と受験のこと、裕太の新世紀中学生としての任務のこと。
六花に彼氏がいないことに、裕太は密かに拳を握ったりした。
そんな折、ふと夢芽が裕太に聞いてきた。
「どうしてそんなことを?」
「いや、なんとなく、気になっただけです。」
やや棘のある聞き返し方をしてしまっただろうか、夢芽は「変なこと聞いちゃってすいません」と言って目をそらした。
「……好きな人が、いたんです…」
夢芽から聞かれてしばらくの間を開けた後、裕太はポツポツと話し始めた。
一緒にいると言ってくれた親友のこと、今なお想い続ける人のこと。
自分の世界に起きた事件を解決し、その人たちを守るために、自分の存在が忘れられてしまったこと。
適当な作り話でごまかすこともできたのに、なぜ本当のことを言おうと思ったのだろうか。ただ、自分のことを知ってほしかった、覚えてほしかった。
裕太の話が進むごとに、皆の顔は神妙になり、夢芽はいっそう申し訳なさそうな顔になった。
「戻りますよ、いつかきっと。」
気まずい沈黙を打ち破って六花は言う。その好きな人が、自分のことだとは想像もしないまま。
「友だちも、好きな人も、きっと…取り戻せますよ」
六花は優しく、しかし力強く裕太に言った。
「ありがとう、六花さん」
久しぶりに裕太は、心からの笑顔を見せた。
そんなやり取りの後しばらくして、ジャンクの店前に二代目とナイトが現れた。 - 82二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 23:01:42
『よく来てくれた。グリッドナイト同盟』
アクセプターが点滅し、グリッドマンが感謝を伝える。
それをジッと見て、ナイトが呟いた。
「相変わらず、グリッドマンはお前がいないと実体化できないようだな、響裕太」
「…あ!」
ナイトの失言に気づいた二代目が、彼を肘で小突く。
「裕太…?ジャンクさんのことですか⁉」
「………っ」
夢芽が怪訝な顔つきで問いかけるが、ナイトは黙ったまま答えない。だが、さすがのナイトも「しまった」と思っているであろうことが、表情から窺える。
「ナイトさん!二代目さん!それで、アレク…シス?とはどうなったんですか⁉」
「そ、そうそう!アレクシス・ケリヴの件ですね?」
慌てて蓬がフォローに入り、二代目が話題を変える。
その様子に夢芽は、釈然としていなさそうな顔をしながらも、ソファーに座りなおす。
「結果から先に言うと、協力には応じてくれるようです」
「本当ですか⁉」
二代目のその返答に、蓬は表情を明るくする。だが、二代目は神妙な顔を深くしながら続ける。
「ただし、条件があると…」
「条件?」
二代目は頷き、裕太に向き直って言う。
「ジャンクくん。アレクシス・ケリヴが、君と話したいそうです」 - 83二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 23:03:50
【SIDE:夢芽】
「相変わらず、グリッドマンはお前がいないと実体化できないようだな、響裕太」
それは、単なる軽口だったんだろう。だからこそ、真実なんだろう。
「裕太…?ジャンクさんのことですか⁉」
「………っ」
ナイトさんは答えない。しかし「やっちまった」と思っていることは、表情から容易に読み取れた。
「ナイトさん!二代目さん!それで、アレク…シス?とはどうなったんですか⁉」
「そ、そうそう!アレクシス・ケリヴの件ですね?」
蓬が間に入る。あからさまに話題を逸らそうとしているその姿が、どうも面白くない。とはいえ、今一番重要なのは、アレクシス何とかの事なのは確かなので、ひとまずここは引き下がり、ソファーに腰かけて思案にふける。
まず思い出すのは、こちらに来る直前に蓬が発した一言だ。
『ガウマさんっ!あっちに怪獣が現れたって裕太がっ!』
(ジャンクさんの本当の名前は響裕太で、蓬と知り合いで、グリッドマンに変身できて…)
蓬がグリッドマンの関係者と知り合える機会は、あのユニバースの事件が最後で、今日まで会っていない。こっそり新世紀中学生の人たちと関わる可能性はなくもないが、私に黙ってそんなことをする理由がない。
ジャンクさんがもし女性だったのなら話は変わるが、その場合は別の問題が発生するので、考えないことにする。
(もしかして、裕太さんがいた宇宙って、ここなんじゃないの?)
そこまでたどり着いた時、おそらくは私だけが捉えた姿が思い浮かんだ。
『いやー受験がもうすぐなのに、誰かと付き合うなんて考えてられないよ』
六花さんがそう言った時、ジャンクさんが密かに拳を握って喜んでいたことを私は見ていた。
『……好きな人が、いたんです…』
(もしかして、ジャンクさんの好きな人って…) - 84二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 23:04:40
今日はここまで
少し間が開いてしまってすいません - 85二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 08:10:57
問題ないです
- 86二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 10:25:00
盛り上がってきたな…
- 87二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 16:03:39
保守
- 88二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 21:48:41
保守
- 89二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 21:58:59
ほし
- 90二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:00:02
ここはコンピューターワールド。裕太にとってはもう見慣れた、電子回路のような世界。その片隅で、ブラックホールと見紛うような禍々しいパサルートが開いていた。
「この先の空間で、我々はアレクシス・ケリヴを封印しています」
二代目が、隣にいる裕太に言う。
グリッドナイト同盟はアレクシスに、封印からの解放を引きかえに交渉をした。
それに対し、アレクシスは裕太との一対一での会話を要求し、それに応じた裕太が一度世界を離れ、ここにいるということである。
「新条アカネなら、奴を制御することもできただろうが…」
ナイトが苦々し気な表情で言う。アレクシスの協力を得なければならないことは、彼にとっては不本意なことだろう。
「そう何度も神様の手を借りるわけにはいかないよ」
裕太は苦笑しながらそう言うと、アクセプターを外し、アンチに預ける。
「それじゃあ行ってきます。何かあったらすぐに呼びますね」
心配そうな顔の二代目とナイトに軽い笑みを見せ、裕太はパサルートに入っていった。 - 91二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:00:51
-----------------
黒いパサルートに入ってしばらく進むと、その先で不気味な靄が浮かんでいた。
裕太がそれに近づくにつれて、その靄は大きさを増し、やがて見覚えのある姿を作っていく。
『初めまして、と言ったほうが良いかな? 響裕太…いや、ジャンク君』
思えば、裕太とアレクシスの関わりはないに等しかった。新条アカネの件はもちろん、グリッドマンユニバースでも共闘はしたものの、言葉は交わさなかった。
その事件の後に、アレクシスを再度封印した戦いにも裕太は参加していたが、とても面識を持てるような戦いではなかった。
「そう…なるね…」
『どうしても、君と二人きりで話したくてねぇ』
アレクシスが友人のような砕けた口調なのに対し、裕太は依然、警戒を保ったままだ。
『君の身に起きたことは、あらかた知っているよ?世界を救うために戦ったにも関わらず、ひどい仕打ちを受けたものだ』
裕太を気遣う言葉とは裏腹に、露骨に嫌味たらしい口調で言う。裕太の反応を伺って楽しもうとしているのだろう。
しかし、そんなアレクシスにも動じずに、まっすぐに貫いてくる裕太の眼に、アレクシスは少し考えなおした様子を見せた後、姿勢を正して話し直す。
『君はもっともグリッドマンに影響を与えた人間といえる。』
『だが君は?許可なく体を2か月間も奪われ、その罪悪感の尻拭いをし、その結果自分に関する全ての記憶を周りから抹消することになった。そして今も、グリッドマンと共に終わりの見えない戦いに身を投じている。』
『グリッドマンによって人生を滅茶苦茶にされた君が、なぜ彼と共に戦う?』
そう問いかける姿には、先ほどまでの人間を唆す悪魔のような気配は鳴りを潜めていた。まっすぐに問いかけ、諭すような、泰然とした様子だった。
それに対し、裕太は少し考えこんだ後、やはりまっすぐな輝く眼を見せて言う。 - 92二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:01:41
「それが…、俺にしかできない、俺のやるべきことだから…かな?」
「悲しくないって言ったら噓になるけど、グリッドマンに恨みなんてないよ」
「あの時だってそうだ。俺ならグリッドマンを助けられる。俺ならみんなを守れる。たとえ死んだとしても、六花たちが無事だったなら、悔いなんてないと思ってた。」
「でも、蓬に言われて、また元に戻れるかもって思ったら、未練というか、悔いっていうか、それがどうしようもないくらい溢れてきた。」
俺にしか、出来ないこと。
俺の、やるべきこと。
でも、俺は…
「俺は内海と一緒にいたい。内海に、一緒にいてほしい。」
「俺は、六花が好きだ。この気持ちを、ちゃんと伝えたい」
「それが、俺のやりたいことだ。今回は誰のためでもない、自分のために戦いたい」
それを聞いたアレクシスは、くすりと笑った。しかし、そこに侮辱はなく、確かな満足を得ることができたような笑みだった。
『救世と救済、その動機を、あくまで友愛と恋愛に求めるか……実に、良い情動だ』
そういうとアレクシスは、一歩前に出て、裕太に告げる。
『いいだろう、君に協力しようじゃないか』 - 93二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:04:02
-----------------
黒いパサルートを抜けて、裕太とアレクシスはグリッドナイト同盟の元に戻ってくる。
「アレクシス…ケリヴ…」
『やぁやぁ、久しぶりだねぇアンチくん』
敵意を隠そうともしないナイトに対し、あくまでアレクシスは“友好的“な態度で接する。そんな態度に、持っていたアクセプターを裕太に返しながら、ナイトは増々表情を険しくする。
「それで?何をどうすればいいの?」
そうアレクシスに問いかけながら、裕太はカチャカチャとアクセプターを装着し直す。
『響裕太くん、君が今までこの街で生きてきて、最も強い情動を抱いたと思う場所はどこかね?』
「一番強い情動?」
『ああ、情動が強ければ強いほど、怪獣も強くなる。今回の場合、怪獣を倒すだけでなく、マッドオリジンの残滓も片づけなければならない。そのためには、ユニバースに漂う情動で最も強いものを選び、その情動から生まれる怪獣に残滓を集中させなければならない』
だから最も強いものでなければならないんだよ。とアレクシスは言う。
『難しく考えなくていい、要するに、一番感情が揺れ動いた場所、ということだ』
『探すのは、高校一年の4月からでいいはずだ。それ以前の記憶は、アカネくんによって作られたものだからね』
それを受けて、裕太は考え込む。この世界で暮らして、一番心が動いた時…
思い返せば、色々な思い出があった。
内海が一緒にいると言ってくれた時
六花がお兄さんのアパートに入っていくのを見た時
六花や内海と別のクラスになってしまった時
目覚めた時に、六花と内海が親しげに話しているのを見た時
そして…… - 94二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:05:29
「たぶん…ツツジ台高校だと思う」
思い至ったように顔を上げ、裕太は告げる。
『一応理由を聞いてもいいかな?』
「球技大会の日のツツジ台高校で、俺は六花を好きになったから…」
そう言って裕太は、あの日の思い出を語りだす。
「一年の球技大会の日、空き時間に六花と二人で話したんだ。」
「黒くて、長くて、休んだ友達のハチマキを届けるんだって言って、開けっ放しの体育館から漏れる歓声を聞きながら、風を含んだ六花の黒い髪が、教室の遮光カーテンと一緒になびいてた。」
「俺は、その姿を見て、六花のことが好きになったんだ」
「ふふっ」
その思い出話に、二代目がほほ笑む。今更恥ずかしくなって、顔が赤くなる。
「場所が学校なら、夜のうちに始めたほうがいいですね」
二代目の提案の下、真夜中に始めることが決まった。 - 95二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:07:21
-----------------
ツツジ台高校、ここも一年ぶりだ。真夜中のため、校舎内の全ての電灯は落とされ、校外の道路に設置されている街灯だけが、辛うじて校舎の輪郭を映している。
「見回ってみたところ、校内に人はいないようだ」
ナイトが言う。アレクシスもまた、学校の外をぐるりと回って、納得したように続く。
『確かに、ここからは君の強い情動を感じるねぇ』
「では、始めましょう。裕太くん、ナイトくん、準備はいいですか?」
二代目の問いかけに、裕太は頷く。
「ではアレクシス、お願いします」
『了解した、では…』
アレクシスの双眸から、赤い光が灯る。それはこれまで、数多くの怪獣を実体化させ、グリッドマンユニバースでは、逆転の一手となった言葉である。
『インスタンス、アブリアクションッ!』
そう唱えた瞬間、校舎の上空の暗闇の空が、僅かに歪み、そこから降ってきた怪獣が、校舎を段ボールのように押しつぶして、雄叫びを上げる。
「グルルゥゥァァ‼」
歪、そう形容するのがふさわしい怪獣だった。片側だけが肥大した腕はシオマネキを連想させ、体全体は部位ごとにそれぞれ異なる怪獣を継ぎはいだような、奇妙な姿だった。
「出たな」
『では、始めようか』
そう言うとアレクシスは巨大化し、ナイトはグリッドナイトに変身する。
「私も参加させていただきます!」
二代目もまた巨大化して、分離変形したサウンドラスを着込んでいく。
裕太はその三人をじっくりと眺めた後、両腕を体の正面でクロスさせ、叫ぶ。
「アクセスッ…フラッシュ!」 - 96二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:08:23
-----------------
裕太のアクセスフラッシュの少し前、ジャンクの前で待機していたグリッドマン同盟と新世紀中学生、そしてガウマ隊もまた、怪獣の出現を確認していた。
「全員で行くぞっ!」
マックスの号令の下、新世紀中学生の四人がジャンクの前に並び立つ。
「アクセスコード、バトルトラクトマックス!」
「アクセスコード、グリッドマンキャリバー!」
「アクセスコード、バスターボラー!」
「アクセスコード、スカイヴィッター」
その号令の後、四人の体が光に包まれ、ジャンクに吸い込まれていく。
続いて、ガウマ隊の五人が、ジャンクの前に立つ。
「お前ら、準備はいいか?」
レックスの問いかけに、蓬、夢芽、暦、ちせが頷く。
「アクセスコード、ダイナレックス!」
五人の光が、新世紀中学生を追って、ジャンクに入っていった。
「頼んだぞ!みんな!」
あっという間に人気のなくなったジャンクで、内海が画面の中の皆に呼びかけた。 - 97二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:11:30
-----------------
夜の街中に、フルパワーグリッドマン、グリッドナイト、ダイナレックス、サウンドラス、そしてアレクシスが並び立った。
その錚々たる軍団を前にしても、怪獣はもがくように暴れるだけで、意に介した様子がない。
〈グリッドォォォ…〉
〈ナイト爆裂ッ…〉
〈必焼大火炎…〉
これ幸いと言わんばかりに、フルパワーグリッドマン、グリッドナイト、ダイナレックスが、怪獣に向けた攻撃を溜める。
〈ビームッ!〉
〈光波弾ッ!〉
〈レックスロアー!〉
三体の放つ渾身の一撃、その螺旋に怪獣は抵抗することもなく吹き飛ばされ、力なく仰向けに倒れた。
「あれ? やった…?」
〈油断するなっ!〉
マックスが呼びかける。彼の脳裏に浮かんでいるのは、かつて退治した怪獣のことだ。
〈な、中から別の怪獣が出るかもしれん〉
キャリバーもまた、マックスと同じ懸念を口に出す。
「ちょっと見てください!あの怪獣、溶けてます!」
ちせが叫ぶ。よく見ると、倒れた怪獣の体が、ドロドロに溶け始めていた。
それを注意深く観察しているうちに、怪獣はそのまま溶けて消えてしまった。
「何だったんだ?あの怪獣」
「これで…終わり?」
蓬と夢芽が、困惑気味に言う。
その刹那、背後で光が弾けた。 - 98二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:12:55
「なんだ⁉」
「新しい…怪獣⁉」
振り返った先には、もう一体の怪獣が佇んでいた。先ほどの怪獣と姿こそ似ているが、偏った四肢は均整の取れたバランスとなり、継ぎはぎのように見えていた体も、グラデーションがかった調和の取れた姿だった。
〈アレクシスッ!てめぇがなんかやったのか⁉〉
ボラーが怒鳴り声で問う。しかしアレクシスは、それに意を介さず、怪獣を眺めて言う。
『あの怪獣からは、とてつもなく大きな情動を感じる。先ほどのそれとは、比べ物にならないほどの…』
そこまで言った後、グリッドマン…否、裕太の方を見る。
⦅何か見落としがあったようだねぇ⦆
アレクシスがそう思案しているうちに、ガウマから奇妙な音が聞こえた。
〈ガッガガガガガガガ…〉
〈どうしたレックス⁉〉
グリッドナイトが驚愕の声を上げた。ガウマからの音に合わせて、ダイナレックスがまるで画面バグを起こしたようにぼやけ、徐々に消えてしまったのである。
〈グリッドマン!〉
二代目の声にグリッドナイトが振り返ると、フルパワーグリッドマンもまた、ダイナレックスと同じようにぼやけ、本体のグリッドマンだけを残し、アシストウェポンは消えてしまった。
当のグリッドマンと裕太もまた、困惑を隠しきれない様子で自分の両手を見ている。
「一体何が…?」
〈まさか…! ジャンクが壊れたのか…?〉
グリッドマンのその言葉に裕太はハッとして、怪獣の足元を見る。その先で、「JUNKSHOP絢」とデザイルされた看板の残骸が転がっていた。
「内海ィ——ッ!六花ァ——ッ!」
悲鳴のように叫んだ声に、応える者は誰もいなかった。 - 99二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:14:08
今日はここまで
怪獣との戦闘描写を端折りすぎ問題が深刻化 - 100二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 09:13:57
保守
- 101二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 19:12:33
更新乙です
- 102二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:56:37
完結したらpixivにまとめて欲しいです
- 103二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:59:01
【SIDE:六花】
「なんか…弱くね?」
あっさりと倒れた怪獣を見て、内海くんが思わず呟く。私もまた、どこか拍子抜けた気分だった。
これまでマックスさんたちに言われて想像していたような、圧倒的なパワーにグリッドマン対策を併せ持ったような、前の怪獣を超えるような強さは感じない。
「完全な状態の怪獣じゃなかったら、こんなもんなのか?」
「アカネのときみたいに、中から怪獣が出てくるかも…」
内海くんと、これまでの経験から起こりうる怪獣の行動を予想し合う。
すると、急に内海くんが驚いた表情をした。
「どうしたの?内海くん?」
「六花さん、あれ……」
内海くんが指さすほうに目を向けると、店の外に誰かが佇んでいた。
「ジャンク…さん?」
その赤い髪は確かにジャンクさんだ。
だけど、服装は違うし、目の色も片方違う。
「おい六花さん、あれってうちの高校の制服じゃね?」
言われてみて気づく。ツツジ台高校の制服は、生徒がそれぞれアレンジを加えていることが多いので、一見制服だとわかりにくい。
「なんでジャンクさんがうちの制服を…?」
不審に思いながら、私たちは恐る恐るジャンクさんに近づく。そんな私たちの足が、店の外に出た瞬間、ジャンクさんの体から赤い光が溢れた。 - 104二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 22:59:57
「「え?」」
その光に貫かれた私の頭に、グリッドマン同盟としての、私たちの戦いが回帰する。
初めてグリッドマンが現れた時のこと、グリッドマンがアンチくんに敗北した時のこと、アレクシスと戦い、アカネを救った時のこと。別のユニバースの夢芽ちゃんたちと出会い、宇宙になってしまったグリッドマンを助け出した時のこと。
でも一つだけ、違う点があった。そこにジャンクさんがいるんだ。
夜の暗闇を切り裂いて走り出した背中、スカイヴィッターから私に差し出した手、スマホの向こうから聞こえた声。
そして、店の前で、顔を真っ赤にしながら私に言った言葉。
ガラス玉のような、青く輝く瞳を持ったその人を、その名前を…
「……裕太?」
その瞬間、裕太の姿をしたモノから、赤い光が弾けた。 - 105二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 23:01:09
短いですが今日はここまで
>>102今のところ、完結したら再度修正して載せる予定です
- 106二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 08:01:01
保守
- 107二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 15:07:31
保守
- 108二次元好きの匿名さん23/06/05(月) 23:28:42
楽しみに保守
- 109二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 07:59:07
保守します
- 110二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 16:56:54
保守
- 111二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 21:57:13
保守
- 112二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:07:31
それは、二年前の九月のことだった。
裕太は大切な話をするために、六花の家の前にいた。偶然通りかかったところを、六花が店に入っていくのを見かけて、思わず呼び止めたのだ。
そして、確かに裕太はその時、六花に大切なことを言ったのだ。
しかしその時、アレクシス・ケリヴに敗れて散り散りになったグリッドマンの一部が裕太に宿り、その影響でその時の記憶は失われてしまった。
今となっては、もう誰も覚えていないその思い出こそが、響裕太の抱いた、最も大きな情動だった。 - 113二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:09:16
-----------------
「内海ィ——ッ!六花ァ——ッ!」
「グォォォォォッガァァァァ!!!」
裕太の慟哭に呼応するように、怪獣が咆哮する。その叫び声だけで、全身が震え、恐怖が呼び起こされる。
しかし、裕太が震えているのは、恐怖故ではなかった。
「内海… 六花… 皆…」
〈裕太くん、気をしっかり持っ…きゃあっ!〉
〈二代目!〉
裕太を励まそうと、怪獣から目をそらした二代目の隙をついて、怪獣が目にも止まらぬ速さで、サウンドラスに強烈なタックルをお見舞いする。
吹き飛ばされたサウンドラスは、崩れたビルに寄りかかり、ぐったりと動かなくなった。
〈貴様ァ‼〉
グリッドナイトが怪獣に掴みかかる。だが、怪獣はものともしない。
「グォォ!」
〈…ぐあぁ!〉
怪獣は片手でもってグリッドナイトを持ち上げ、鞭のように幾度も地面に打ち下ろし、それがぐったりしたのを見て、投げ飛ばした。
『ぬぅん!』
「グガァ!」
グリッドナイトを投げ飛ばした怪獣の背後から、アレクシスが襲い掛かる。
情報の少ないアレクシスの攻撃に、怪獣はややてこずった様子を見せたが、誰の情動も取り込んでいないアレクシスでは、能力が違いすぎる。
そのうちアレクシスは、降り下した腕を容易くつかまれて、胴体に光弾を打ち込まれた。 - 114二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:10:16
『ぐあぁぁぁ!』
あまりの威力に、アレクシスは地面を何回転もしながら吹き飛ばされた。
『ぐぅ…これは、流石にまいったねぇ』
口調こそいつも通りだが、アレクシスは倒れたまま、もぞもぞと動くばかりで立ち上がれそうにない。
そして怪獣は、残ったグリッドマンに狙いを定める。
しかしグリッドマン…裕太は、俯いたまま動こうとしない。
〈戦え!響裕太!〉
〈立て、裕太!立ってくれ!〉
グリッドナイトとグリッドマンが必死に裕太に呼びかける。それでも裕太は動かないまま、膝をついてしまう。
声は聞こえている、呼びかけは届いている。だが、体が動かない。
俯く裕太の視界に影が映る。顔を上げると、怪獣がもう眼前に迫っていた。
グリッドマンが動こうとしないのを見た怪獣は、ゆっくりとその大きな口を開け、光線を放つ。
それでも裕太は、呆然とした様子で、ただ怪獣を眺めていた。
怪獣から発せられた光線が、グリッドマンに近づいていく。
その最中、突如何者かの手が伸び、裕太のアクセプターのボタンを押した。 - 115二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:11:06
-----------------
「ごめんね」
「この世界は、もう私の手を離れちゃった」
「私にできることは、もうこれくらい」
「後は頼んだよ、グリッドマン」 - 116二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:13:13
-----------------
『……ぅた………裕太…!』
聞き覚えのある声に、裕太は目を覚ます。その視界には、グリッドマンの足が映っていた。
「あれ?ここは…」
上体を起こして辺りを見回すと、そこはかつて訪れたことのある、幾何学模様の刻まれた神殿のような場所だった。
『裕太、気が付いたか』
「……グリッドマン…、どうしてここに……」
『わからない…、だがこれで、君と話せる時間ができた』
グリッドマンはそういって、拳を掲げて裕太に言う。
『裕太、立ち上がるんだ!私たちは戦わなければならない!』
「わかってる、わかってるけど……」
少しの沈黙の後、裕太は膝をついたまま、密かに抱いていた疑問を口にする。
「ねぇグリッドマン、俺がこの世界に来てすぐに怪獣が現れ始めたのは、偶然なのかな?」
『……!』
それは、裕太が誰にも言えずに抱えていた懸念。頭に浮かぶたび、必死で心の奥底に沈めていた不安だった。
「もしかしたら俺のせいかも…、マッドオリジンの残滓とかいうのが、俺に反応して活動し始めたのかも…」
そう言いながら裕太が思い出したのは、この世界の帰ってくる前の、自分の言葉だった。
『これまでにない強力な怪獣が現れるかもしれないし、グリッドマンがいないとフィクサービームで街を直せない、俺も行きますよ。』
だが、本心はそれだけではなかった。 - 117二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:14:48
「俺が来たせいで、怪獣が暴れ始めたのかも…」
内海に会いたい、六花に会いたい。そしてもしかしたら…自分のことを思い出してくれるかもしれない。
もしその気持ちのせいで、怪獣が現れたのだとしたら…
「だとしたら俺のせいで、内海と六花が…」
『裕太は悪くない』
弱々しく呟く裕太の言葉を、グリッドマンがはっきりと否定する。
『そう…彼も言っていただろ…』
「蓬のこと?」
『ああそうだ…。麻中蓬、彼には感謝してもしきれない。この一年、君と繋がり続けてくれた』
だが、と言ってグリッドマンは、キッと姿勢を引き締めて、強い口調で裕太に告げる。
『あの高架下で彼が言った言葉は、私が言わなければならなかった。どの口がと思われても、私が君に伝えなければならなかったっ!』
『まだ終わっていない。フィクサービームでジャンクを直せば、レックスたちも元に戻る。内海と六花も、怪獣が現れる前に避難できているかもしれない』
『君はこれまで、良くやってくれた。恨み言を言って当然の立場でありながら、世界のために戦ってくれた』
『だから今回は、今回だけは、私は世界のためではない、君のために戦う!』
そう言ってグリッドマンは、膝をついたままの裕太に手を差し伸べる。
『裕太、君の願いは何だ?』
それを受けた裕太はその手を取り、立ち上がる。
顔を上げたそこには、見慣れた優しい笑みが戻っていた。 - 118二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:16:07
「ありがとう、グリッドマン」
「俺、ずっと怖かったんだ。内海と六花に拒絶されるのが…」
「…でもこうして帰ってきて、内海や六花と話してるうちに、ハイパーエージェントのジャンクとしてじゃなくて、響裕太として二人と話したいって思った」
「俺はやっぱり、二人と一緒にいたい。一緒にいてほしい」
そこまで続けた後、裕太はアレクシスとの会話を思い出す。
「アレクシスにも言ったことだけどね」
『…奴より先に、私に言ってほしかった』
嫉妬じみたグリッドマンの言葉に、裕太はクスリと笑って、左腕のアクセプターをグッと握って言う。
「グリッドマン、俺の願いを言うよ。」
「俺は内海と六花に思い出してほしい。二人と一緒にいたい」
「そのために、これからも戦う」
だから、と言って裕太は、アクセプターをグリッドマンの前に構える。
「グリッドマン、俺と一緒に戦ってくれ!」
『もちろんだ、裕太!』
そう交わして二人は、互いのアクセプターを打ち合わせた。
アクセプターは、心を繋いで一つにする。
今再び、二人が真に一体となる——— - 119二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:17:47
-----------------
グリッドナイトとアレクシスは、不思議な光景を目にした。膝をついて俯いていたグリッドマンの体が、七色に輝き始めたのだ。
その七色の輝きは、光線を吸い込むようになおも輝きを増し、光線を切り裂いて怪獣に襲い掛かった。
怪獣の懐に飛び込むと、その輝きは徐々に人の姿を形作り、怪獣の眼前に迫って拳を振るうような体勢になった。
〈ウォォォォォォ‼〉
「グォォァァ!」
その光の塊は、怪獣を殴り飛ばし、先ほどのグリッドマンとは異なる姿になって顕現した。
それは、グリッドマンユニバースで、すべてのグリッドマン物語を結集させた究極の姿だった。
グリッドマン【ユニバースファイター】———‼ - 120二次元好きの匿名さん23/06/06(火) 22:20:00
今日はここまで
いよいよクライマックスです - 121二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 06:11:16
保守
- 122二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 12:48:02
クライマックス期待
- 123二次元好きの匿名さん23/06/07(水) 22:38:00
保守
- 124二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 06:28:16
保守
- 125二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 16:13:22
保守
- 126二次元好きの匿名さん23/06/08(木) 23:30:31
保守
- 127二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 06:36:21
保守
- 128二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 14:39:36
保守
- 129二次元好きの匿名さん23/06/09(金) 23:35:31
保守
- 130二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 07:55:13
保守
- 131二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 16:21:00
保守
- 132二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:56:22
ユニバースファイターとなったグリッドマンの拳が、怪獣を殴り飛ばす。それだけではなく、拳の軌道上の建物が、攻撃と同時に放射されていたフィクサービームによって直っていく。
ツツジ台高校に町のビル、住宅街に至るまで、たちどころに修復していく。
そして、JUNKSHOP「絢」もまた、本来の姿を取り戻した。
〈レックス、ファングッ!〉
「ガァ⁉」
怪獣が驚愕したような呻き声を上げる。ダイナレックスが虚空から突如現れ、肩口にかみついたのだ。
ジャンクが直ったことで、画面バグのように消滅したダイナレックスが、中にいるガウマ隊と共に復帰したのである。
〈〈〈〈ジャンボセイバー…スラァッシュ!〉〉〉〉
ダイナレックスの反対側から、同じく復帰したアシストウェポンがパワードゼノンとなり、電撃を纏った斧による一撃を決める。
「みんな!良かった!」
〈おう!何とか戻ってこれたぜ!〉
帰還を喜ぶ裕太に、ボラーが朗らかに応える。どうやら、消滅してからの事態も把握しているようだ。
〈レックスッロアー!〉
「グルゥォォォ!」
嚙みついた場所から、ダイナレックスが火炎を放つ。ゼロ距離からの立て続けの攻撃に、怪獣はたたらを踏む。
負けじとダイナレックスに向き直ろうとした怪獣を、緑色の光線が出迎えた。
〈メロディックブラスター!〉
「ゴアァ!」
ダイナレックスの後方で、倒れていたサウンドラスが立ち上がっていた。
〈二代目!無事でよかった〉
〈少し意識が飛んだだけです、まだまだ戦えます!〉
〈次はお前が立ち上がる番だ!グリッドナイト!〉
マックスの号令の下、パワードゼノンが分離し、その色を紫に変えながらグリッドナイトと合体する。 - 133二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:57:46
〈〈〈〈〈超合体騎士ッ!フルパワーグリッドナイトォ!〉〉〉〉〉
『おやぁ?私には誰も力を貸してくれないのかい?』
〈うるせぇ!てめぇで立ちやがれ!〉
『やれやれ、つれないねぇ』
ボラーの罵倒じみた檄を受け、アレクシスもまたどっこいしょと立ち上がる。
「二代目さん!ゴル…」
「あっ見てください!あの怪獣…!」
ちせの言葉を遮って暦が叫ぶ。見ると、メロディックブラスターで吹き飛ばされ、倒れていたはずの怪獣の全身が、怪しく光っていた。たちまちその光が肩口から首筋に集まり、これまでとは比べ物にならない迫力で、光線を打ち出そうとする。
〈全員で止めるぞ!〉
怪獣の光線に対し、全員が並び立って対抗しようと力を溜める。
そうして怪獣が光線を放とうとする刹那、上空から黄金の光の柱が降ってきた。
「⁉」
「あれは…!」
怪獣の頭上から黄金の竜が、その翼をはためかせて現れた。その姿を認めると、ちせはパァと表情を明るくして、その友の名を呼ぶ。
「ゴルドバーン…!」
『おやおや、誰か足りない気がすると思っていたら、ここまで隠れていたのかい?』
アレクシスが興味深そうに疑問を口にする。それを受けて、二代目が答えた。
〈これまでの戦いで、怪獣が不意打ちに極端に弱いことがわかりました。それに、あなたが何か良からぬことをする可能性もあったので、念のために、ゴルドバーンには上空で待機してもらっていたんです〉
『やれやれ、意外と食えないねぇ。二代目アノシラス』
二代目の返答に、アレクシスは肩をすくめる。 - 134二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 20:59:02
「ゴルド、バーン……、あ!」
ゴルドバーンを見上げていた裕太が思わず声を上げる。
その青く輝く瞳には、ゴルババーンの背中から、黒髪がなびくのが映っていた。
「内海…! 六花…!」
降下してくるゴルドバーンの背中に、内海将と宝多六花がしがみついているのをはっきりと見つけた。たちまち裕太の眼に涙がたまる。
ジャンクの店の前に現れた裕太の姿をしたモノ。その正体は響裕太の記憶を元に、マッドオリジンの残滓が姿を変えたものだった。
それが怪獣へと変貌する刹那、上空に待機していたゴルドバーンが間一髪二人を救出し、その爆誕から守っていたのだ。 - 135二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:00:03
「裕太ァ!」
「…え?内海⁉」
久しぶりに聞こえた、友からのその呼び名に裕太は面食らった様子で戸惑う。その隙にゴルドバーンは、グリッドマンの真正面に降り立った。
「そこにいるんだろ?グリッドマンの中に!」
「内海…、まさか…!」
驚きと歓喜が混ざった裕太の言葉に、内海は六花の方をちらりと見た後、大きく頷いた。
怪獣は、人間の情動を受けて出現する。ならばその瞬間には、内外にその情動があふれ出しているに違いない。
響裕太の強い情動、それに呼応し集まっていく、この世界に漂っていたマッドオリジンの残滓に取り込まれたあらゆる響裕太の情動。
それを至近距離で味わった内海と六花に、本来戻るはずがない思い出が甦った。
「思い出した!俺も六花さんも…、全部思い出した!」
その言葉に、涙が溢れそうになる。
しかし、内海から六花へ視線を動かした瞬間、裕太の背筋が凍った。
内海の声がかろうじて届く程度に、ゴルドバーンとグリッドマンの距離は離れているにもかかわらず、六花が怒りを湛えた眼でこちらを睨んでいたのがはっきり見えた。 - 136二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:02:38
「お二人とも!早くこちらに!」
サウンドラスを装着した二代目が呼びかける。しかし六花は、グリッドマンから眼を逸らそうとしない。
「響君…」
「り、六花…」
グリッドマン越しに、確かに裕太を睨みつける六花。その鋭さに、裕太は思わず目を背けそうになる。
「なんで…黙ってどっか行ったの?」
「六花…」
「六花さん!気持ちはわかるけど、早く!」
六花の気持ちを最大限くみ取りつつ、内海が促す。それは内海自身、六花と同じ気持ちだからだろう。
六花は一度内海のほうを見て頷いた後、再度裕太の方をキッと見て言う。
「今度はちゃんと帰ってきてっ!じゃないと今度は許さない、絶対許さないから!」
六花の眼から、ポロリと涙が一筋漏れた。
それを見て、今更気づく。
(俺、二人を信じきれてなかったんだ…)
忘れられたことで、拒絶されることを恐れた裕太は、この世界を去り、ハイパーエージェントのジャンクとして活動し始めた。
しかしそれは、二人なら思い出してくれると、信じきれなかったことでもある。
「うん、約束する!絶対に帰ってくる!」
裕太の返事を聞いて、ようやく六花は鋭い目をほぐしてグリッドマンに背を向けた。すぐさまゴルドバーンがサウンドラスの方に向かう。 - 137二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:03:19
〈全員の力を合わせるぞ!〉
グリッドマンが言う。これまでにないほどの強力な怪獣を前にしながら、その声はあまりにも朗らかで、嬉しそうだった。
二人をサウンドラスまで送ったゴルドバーンが分離し、グリッドマンの元へ向かう。もちろん、ダイナレックスも同様だ。
グリッドマンに、ダイナストライカーが装着される。続いてダイナダイバーが、ダイナウイングが、ダイナソルジャーが、ゴルドバーンが
〈〈〈〈〈〈〈超竜王合体超人ッ!〉〉〉〉〉〉〉
黄金の兜のパーツが装着され、その合体を締めくくる。それはグリッドマンユニバースで生まれた。あらゆる物語の集合体、竜の力とも合体した帝王のグリッドマン。
〈〈〈〈〈〈〈ローグカイゼルグリッドマン‼〉〉〉〉〉〉〉
それを見たアレクシスが、いたずらを思いついた子供のように、ニヤリと笑う。 - 138二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:05:49
『どれ、私も加わらせてもらおうか』
「アレクシス⁉」
『先ほど戦ってみて分かったが、私の情報は少ないようだ。その形態に、私の力を合わせれば、奴を倒すことができるかもしれない』
「わ、わかった!頼む、アレクシス!」
ほとんど勢いで裕太が承諾する。それを受けてアレクシスは、わざとらしく笑って言う。
『インスタンス・ユニオンッ!』
そう唱えると、アレクシスの姿が封印時のような靄の塊となり、グリッドマンに宿る。すると、かつてマッドオリジンがアレクシスを取り込んだ時のように、ローグカイゼルグリッドマンの体が黒く染まり、怪しい青がその輪郭を縁取った。
「あれは…、黒いグリッドマン…⁉」
「おい大丈夫か⁉ 乗っ取られてねぇよな⁉」
「だ、大丈夫…だけど…」
『ふむ…ローグカイゼルグリッドマン・ノワール…、いや少し長いか…』
内海の懸念を意に介さず、アレクシスはこの形態のネーミングにご執心のようだ。
〈名前なんて何でもいいっ!早く決めるぞ!〉
『確かに…、倒してからでも考えても遅くはないか…!』
レックスの指示に、アレクシスはズレた同意をする。しかしとにかく、これで全員の意思が同じく怪獣に注がれることになった。
〈一気に決めるぞ!グリッドマン…!〉
〈〈〈〈〈〈バトル、ゴ———ッ‼〉〉〉〉〉〉
その号令に合わせて、グリッドマンが一気に怪獣に飛び込む。 - 139二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:08:47
「グルゥァ!」
〈ウオォ!〉
怪獣とグリッドマンが衝突する。これまで圧倒的なパワーを誇った怪獣だが、グリッドマン、ダイナレックス、アレクシスを合わせた力の前に、初めて押し負けた。
「ゴガァ!」
グリッドマンに押し負け、距離を取った怪獣は姿勢を下げ、二代目に繰り出したタックルを仕掛ける。しかし、グリッドマンは胸の盾を展開し、無数の波紋となって広がる防御膜が、怪獣を弾き飛ばした
〈グリッドォ…、ビームッ!〉
「グギャォォォ‼」
上空に弾き飛ばした怪獣にグリッドビームを放ち、怪獣をさらに空高く運んでいく。
〈サウンドラスッ!フルバースト!〉
〈グリッドナイト、乱れサーキュラーッ!〉
グリッドビームに追従するようにして、フルパワーグリッドナイトの乱れサーキュラーと二代目のフルバーストが、空全体を埋め尽くすほどの圧倒的な弾幕となって、怪獣へと向かった。
しかし、本命はその弾幕ではなかった。
〈〈〈〈〈〈〈〈《ローグ…!〉〉〉〉〉〉〉〉〉
グリッドナイトの乱れサーキュラーとサウンドラスのフルバーストを、怪獣が必死に防ぐ中、弾幕の間を縫って、グリッドマンが怪獣の懐に潜り込む。
〈〈〈〈〈〈〈《カイゼルパワー……!!》〉〉〉〉〉〉〉
その勢いのまま、漆黒のダイナミックブレードは黄金を纏い、なおもパワーを集中させていく。
〈〈〈〈〈〈〈〈《フィニ————ッシュ!!!》〉〉〉〉〉〉〉〉
流星のような光が怪獣に激突し、黄金の火花があふれ出していく。
「ググゥ…ゴォォォァァァ…‼」
〈〈〈〈〈〈〈〈《ウオォォォォ!!!》〉〉〉〉〉〉〉〉〉
「ギャァァォォォ………!」
怪獣はダイナミックブレードを必死につかみ、なんとか逃れようともがいた。しかし、乾坤一擲の刺突、その威力の前にその体は貫かれ、跡形もなく爆散した。 - 140二次元好きの匿名さん23/06/10(土) 21:09:29
今日はここまで
次回がラストです - 141二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 02:35:30
保守
- 142二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 08:12:56
保守
- 143二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 17:04:48
保守
- 144二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 21:32:39
保守
- 145二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:10:23
『しかし、フィクサービームですべて元通りというのも、なんだか味気ないねぇ』
戦いを終え、すっかり元通りになった街の片隅で、アレクシスが呟く。
グリッドマンと怪獣の激闘は終わった。破壊された街はフィクサービームで直され、マッドオリジンの残滓も完全に消滅した。
「今回ばかりは、お前に助けられた」
「約束通り解放してやる。ありがたく思え」
開かれたパサルートの前に佇むアレクシスに、マックスとナイトが告げる。ちなみに二人とも、苦々しげな顔を隠そうともしていない。
『では…、またいずれ会うことになるだろう。ハイパーエージェントの諸君』
そういってアレクシスは、パサルートに入って去っていった。
パサルートを閉じた後、新世紀中学生とグリッドナイト同盟は、決意の表情をさらに引き締めた。
「や、奴は必ずまた見つけて、再び封印する」
だが、そう言ってキャリバーはくるりと背を向け、視界に三人を捉えた。
「い、今はもっと、重要なことがある」
キャリバーの視線の先には、六花と内海、そして裕太がいた。 - 146二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:11:52
-----------------
新世紀中学生とグリッドナイト同盟とはまた別の位置で、ガウマ隊の五人もまた、三人を遠くで見つめていた。
しばしの沈黙を経て、夢芽が呟く。
「やっぱり、六花さんがあの人の好きな人だったんだ…」
「夢芽も思い出したの?」
「……ううん」
「……そっか」
首を振る夢芽に、蓬は残念そうに呟いた。
「あの二人の記憶が戻ったのが奇跡みたいなもんで、本来戻らねぇはずだったんだ」
ガウマは言う。その奇跡を起こした怪獣は倒され、マッドオリジンの残滓も、その栄養となった情動も完全に消滅した。
つまり、内海と六花以外の人間が、裕太を思い出すことはもうない…
「でもまぁ、いいじゃねぇか!」
「「「「え⁉」」」」
薄情にも聞こえるその言葉に、思わず四人が聞き返す。するとガウマは、ニカっと笑って言った。
「これから作っていけばいい!」
ガウマらしいその一言に、全員が穏やかな笑みを浮かべて強く頷いた。 - 147二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:14:01
-----------------
「良かったな」という雰囲気で見届けようとする新世紀中学生とグリッドナイト同盟、そして三人を穏やかに見つめるガウマ隊。
しかし当の本人らは、ピンと張りつめた空気で何も言い出せずにいた。
「え、えーと、その…」
言葉が出てこない。
泳いだ裕太の目が浮上しようとするたびに、俯く六花と責めるような内海の眼に刺されて、再び沈んでいく。
それを幾度も繰り返した後、裕太は観念したようにガバリと頭を下げて言った。
「黙っていなくなって、すいませんでした!」
頭を下げて言ったものの、二人からは何も返ってこない。
恐る恐る顔を上げると、内海がポロポロと大粒の涙をこぼしていた。
「内海…」
「…なんだよそのスーツ、全然似合ってねぇぞ…」
涙をぬぐいながら、鼻声で内海は言う。
「…うん、ボラーさんにも最初言われた」
裕太はジャケットを直しつつ「そんなに似合ってないかな…」とやや不服気味に言う。
「…なんつーか、服に着せられてる感じだな」
「えぇ…、一年ぐらい着てるんだけどなぁ」
そこまで交わして、ようやく二人の間に笑みが戻る。
「まぁ…、言いたいことは色々あるけど、俺はこれくらいにしとくわ」
後頭部を搔きながら、穏やかな笑みを湛えて告げる内海。伝えたいこと、怒りたいことは山ほどあるが、俺よりもずっと抱えてる人がいる。だからそう言った後、内海は指をピッと裕太に指して続ける。
「言っとくけど、六花さんは俺の何倍も言いたいことあるからな、覚悟しろよ?」
「う、うん…」
頼りない裕太の返事を聞いて、少し困ったように眉を動かすと、内海はいまだに俯いたままの六花のほうを見る。 - 148二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:15:26
「さ、六花さん…」
「ありがとう、内海くん…」
六花は、自分を気遣ってくれた内海に礼を言った後、俯いたままゆっくりと裕太に近づく。いまだに裕太からは顔が見えないまま、その足取りがだんだん速くなっていくので、殴られると思った裕太は思わず目をつぶる。
しかしその予想は外れ、六花は裕太の胸元に勢い良く飛び込んだ。
「り、六花…!」
「馬鹿ッ!裕太の馬鹿ッ!」
そう言いながら、裕太の胸をだんだんと叩く。
「忘れられたくらいでどこかに行かないでよ!ずっと、一緒にいてよ!」
例え自分が忘れても、そばにいてほしい。白い目で見られても、行かないでほしい。
その願いは、この上なく自分勝手で、この上なく面倒くさくて…
「ちゃんと思い出すから…、絶対思い出すからっ!」
この上なく、裕太への想いで溢れていた。
すすり泣く六花の背を、裕太はそっと抱きしめて、優しく言う。
「ごめん…、もうどこにも行かないから…」
「ぐすっ…絶対だからね…」
その言葉の後、しばらく六花は裕太の胸元で静かに泣いていた。その声が止んだところで、裕太は彼女をゆっくりと引き離す。
訴えるように悲しそうな目をする六花に、裕太は決意を込めた表情で話し始める。
「今、言うことじゃあ、ないかもだけど…」
裕太の顔がみるみる赤く染まる。躊躇と恐れが、折角の決意を溶かそうと忍び寄る。
だが、この気持ちを伝えるために戦ったのだ。アレクシスの手を借り、グリッドマンに励まされ、戦い抜いたのだ。
「一年の時から、ずっと好きでした。この世界を離れてからも、ずっとずっと好きでした。」
「………!」
裕太の決意の告白に、六花は真っ赤に腫らした眼を見開いて驚いた。その後ろでは、内海が少し居心地悪そうに、チラチラと視線を逸らしている。 - 149二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:16:28
「本当に今じゃないでしょ…、あたし、今顔こんなだし…」
「ごめん…」
泣き腫らした自分の顔を自虐して六花は言う。それに対し、裕太は分かりやすく申し訳なさそうな顔をして詫びる。
「でも、良かった…」
「……え、」
予想外の言葉に、裕太はハッと顔を上げた。その先では、六花が泣き腫らした顔に笑顔を宿していた。
なぜ、裕太が何も言わずにいなくなったのかは六花にもわかる。自分に、内海に、忘れられたのが悲しいからだ。
だとすれば、裕太はこの世界にいることで、自分の存在の消失をより明確に理解し、また忘却に悲しんで、世界を去ることになるかもしれない。
「やっと…、裕太がいなくならないって、わかったから…」
だが、自分に想いを伝えてくれたなら、その想いが続く限り、決して裕太はこの世界を無断で去ることはないだろう。
震える声でそう言う六花を見て裕太は、自分が万感の思いでしたはずの告白に、まだ先があったことに気づく。
それに気づいた瞬間、裕太はその想いを、迷わず口にしていた。
「俺と、付き合ってください!!」
先ほど以上に真っ赤に染まる裕太の顔を見て、六花は恥ずかしそうに前髪を指でいじりながら、消え入りそうな声で答えた。
「……はい。お願いします」 - 150二次元好きの匿名さん23/06/11(日) 22:19:40
本編はこれにて
明日エピローグを投稿して、完結となります - 151二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 06:04:10
保守
- 152二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 16:02:09
保守
- 153二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 21:27:13
【エピローグ】
マッドオリジンの残滓が引き起こした事件から一年。
とある世界でまた、夢のヒーローの出番が来ていた。
-----------------
〈グリッドォ…、ビーム!〉
「ギャォォォォ…‼」
グリッドビームが、怪獣を飲み込んでいく。怪獣の消滅を見届けた後、フィクサービームで町を直し、俺はグリッドマンから響裕太に戻る。
あの事件から、さらに一年がたったけど、前よりグリッドマンとうまく戦えるようになった気がする。
「お疲れさん」
ボラーさんが「ご苦労だった」みたいな態度で言ってくる。その後ろには、マックスさん、キャリバーさん、ヴィットさんもいた。
皆の穏やかな顔を見ると、あの頃の自分が、どれだけ皆に気を遣わせていたのかを改めて思い知る。
「このところ戦い詰めだろう、そろそろ休んだらどうだ」
マックスさんは、隙あらば俺を休ませようとしてくる。
正直、そうしたい気持ちは山々なのだが、いまだに見つかっていないアレクシスの仕業かもしれないので、ここは食い下がる。
「ありがとうございますマックスさん。でも怪獣発生の原因を調査しないと…」
「それは我々だけで十分だ、裕太はゆっくり休むと良い」
「いや、でも…」
「十分だ」
何度も食い下がろうとするも、マックスさんが怖いくらい圧をこめて言ってくるし、他の皆もこくこくと頷いているばかりなので、最後にはお言葉に甘えることになった。 - 154二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 21:28:56
-----------------
パサルートを抜けて、見慣れた場所に降り立つ。ここは人通りが少ないので、自然といつも選んで出る場所になっていた。
(ここからちょっと歩かなきゃいけないのが難点だけどね…)
そう思いつつ、ポケットからスマホを取り出して電話をかける。
しばらくコール音が続いた後、喜びであふれた声が聞こえた。
『おう、久しぶり! 裕太』
「内海も元気そうだね」
『電話してきたってことは、帰ってきたのか、今回はどれぐらいいるんだ?』
「みんな気を遣ってくれてさ、一週間くらい戻ってこなくていいぞって」
俺にそう提案してくれたマックスさんの様子を思い出して、思わず笑ってしまう。内海もつられて笑った後、遊びに行く約束をして電話を切る。
話したいことはたくさんあるが、それは直接会ってからしたい。
電話が切れた後、スマホにある連絡先の一覧を見る。世界を渡り歩いて戦っているけれど、俺のスマホに登録されている名前は少ない。新世紀中学生の皆さんもそこにいるが、基本的に業務連絡以外でその名が画面に映ることはない。グリッドナイト同盟の二人も同様だ。
別の世界にいる蓬たちとは、いまだに連絡を取り合っている。偶に恋愛の先輩としてアドバイスを仰いだり、一緒に遊びに行ったりする。
この前、六花をサプライズで温泉デートに連れて行ったときに、蓬と夢芽さんには大変お世話になった。夢芽さんがあんな感じだとは思わなかったけど…
スマホをスワイプしつつ、じっくりとその少ない連絡先を眺めた後に、俺は一番大事な人に電話をかけた。 - 155二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 21:32:24
-----------------
街をしばらく歩いて、ジャンクの店が見え始めたところで、ちょうどジャンクから出てくる人がいた。その人は俺を見つけると、いそいそと走り寄ってくる。
「あっら~響くん久しぶり~、六花中にいるわよ~」
「ママさん、こんにちは」
「ちょっと外出てくるから、どーぞごゆっくり~」
ニヤニヤとそう言って、ママさんは去って行った。相変わらず、嵐のような人だ。
たまにママさんは、全部わかってるんじゃないかと思うときがある。俺みたいな得体のしれない人間を、事情も聴かずに見守ってくれている。懐が深いという言葉では収まらないほどの、懐が深い人だ。
「……」
店に入ると、六花がキッチンのところで、何か作業をしていた。熱中しているのだろうか、やや前かがみになっている。
俺が店内に差す陽を遮ってしまったのだろう。手元が少し暗くなったことに気づいた六花は、こちらを振り返る。すると六花の表情が、たちまち花が咲くようにパァと明るくなる。
その笑顔に、俺の心は躍り、和み、癒され、温まり…
時々、たまらなく不安になる。
二人は俺のことを思い出してくれたけど、俺がグリッドマンと一体化したことは変わらない。さすがに不老不死ってことはないだろうけど、人間と寿命が同じとは思えない。
俺は果たして、皆と同じ時を歩んでいけるんだろうか。十年たって、二十年たって、皆が老いていくのを、俺だけは今のままで見届けることになってしまうんだろうか…
「おかえり、裕太」
その言葉に、思案に沈んでいた思いが、一気に引き上げられる。
そうだ、六花は俺を信じて、想いを受け入れてくれた。それなら、俺は運命が許す限り、いつまでも六花を想い続けよう。
この不安がいつか現実となって、俺たちに牙をむいてくるかもしれない。
でも、その時が来るまでは、皆と一緒にいるために、六花の笑顔を見るために、俺は戦い続ける。
だって俺は…
「ただいま、六花」
俺はハイパーエージェント、響裕太だ - 156二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 21:36:32
【後書き】
『俺はハイパーエージェント・ジャンク』最後までお付き合いしていただき、ありがとうございます。1で挙げているスレに影響を受けて、ほとんど勢いで始めたSSですが、最後まで書けて良かったです。
ちなみにこのSSを書いてる途中で、ノベライズ版を買って映画も2バースしました。
SSを書くうえで、「どこまでやっていいのかわからないからアカネは出さない」ことと「やりたい放題になってしまうから、原作に出てきた戦力だけで怪獣を倒す」ようにしようと決めていましたが、結局どちらも破ってしまいました。なんもかんも怪獣が強すぎたのが悪い。
反省と言えば、書いてみて思ったより裕太を覚えている人が多かったので、もっと減らして裕太を更に追い詰めてもよかったかもしれません。あと蓬のインドミも、決断が速すぎるような感じがしてます。
このスレに投稿したSSは、後日pixivに上げる予定なので、見つけたらよろしくお願いします。
最後に、ここまでお付き合いいただいたこと、重ね重ねお礼申し上げます。 - 157二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 22:10:50
完結お疲れ様です!
これがビター気味のハッピーエンド…楽しませてもらいました! - 158二次元好きの匿名さん23/06/12(月) 23:04:39
是非ともpixivもここに貼ってもらいましたら、pixivでもお気に入りに入れますので、貼って欲しいです。
面白かったです。お疲れ様でした - 159二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 07:37:23
この裕太は日常生活には復帰しなかった?
- 160二次元好きの匿名さん23/06/13(火) 14:52:38
最近のウルトラマンの変身者概念に近い終わり方になったね。最終回後もウルトラマンになれるけど、ほかの仲間とも縁が続いている。そして危機にならばあっちこっち中の宇宙、世界に飛び回る。ビター気味とは言い過ぎじゃないかな?ウルトラマンではよくあるよ。つまりハッピーエンドだね!!
- 161二次元好きの匿名さん23/06/14(水) 01:16:33
両親の記憶が戻ってないならビター気味かな?