未来へのフルスロットル【ウオダスマー・SS(IF)】

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:05:54

    『ダイワスカーレット、脚の怪我により長期休養』
    そのニュースが流れたのは、トゥインクル・シリーズ年末の大一番、有馬記念の余韻がようやく落ち着いてきた2月の事だった。
    トゥインクル・シリーズにおけるクラシックの二大路線の一つ、”ティアラ”に燦然と輝く記録を打ち立て、遂には有馬記念をも制した”緋色の女王”に突如として襲い掛かった悲劇は、更なる躍進を期待していた大勢のファンに衝撃を与えた。ネットニュースに引退の二文字までもが躍る様相に、トレセン学園も大いに揺れる。彼女を心配する声は、クラスメイト達を中心にして次々と広がっていった。
    けれど、そんな学園の中で、彼女は。スカーレットの宿命のライバルと謳われた、彼女は────。

    「……ここでしたか。ウオッカ」
    「よお、マーチャン」

    ウオッカは、その話題には混ざらずただ一人、学園の屋上で空を見上げていた。冬の澄んだ空気のおかげで、今日の空はいつもより高く、美しい群青色だった。そんなウオッカに、声を掛けたもう一人のライバルが歩み寄る。

    「スカーレットには、会ったのですか」
    「ああ」

    アストンマーチャンの問いかけにも、彼女は振り向かず、空を見上げたまま応えた。腰に手を当てたまま、彼女は変わらず空を見ている。マーチャンは、思わず唇を強く結んだ。一呼吸置いてからそれを解くと、こちらへ振り向かないウオッカに対し、マーチャンは続ける。

    「……スカーレットは、凄い子です。二つのティアラを手にして、そのまま女王さまの称号まで手に入れて、有馬記念も勝って……スカーレットは……」
    「────誰の記憶にも残る、”一番のウマ娘“か?」
    「いいえ、もっと、もっとです。スカーレットは、もっと……」

    ウオッカの言葉を遮るように、マーチャンは首を振った。両の手を拳に変えて、握り締める。そうして、もう一度ウオッカに向き直る。

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:08:41

    「ウオッカにだけ、特別大サービスですよ。マーちゃん、次に思い出のフォトグラフを増やす場所は、もう決めてあるのです」
    「……そっか」

    そこがどんな舞台なのかまでは、マーチャンは敢えて言わなかった。マーチャンは、きっとウオッカなら、言わなくともその場所がどこか分かってくれると思っていたのだ。
    有馬記念より二か月程前、マーちゃん人形と一緒に応援した、秋の盾を二人が競ったあの舞台。その時、ゴール板の目の前で見届けたその瞬間が、マーチャンの瞳に焼き付いていた。きっと、いつまでも忘れられないだろう。
    ふんすと息巻いて、マーチャンは続ける。

    「こう見えて、マーちゃんは希代のスプリンター兼ウルトラスーパーマスコットですので、マーチャンが皆さんの声に応えるのと同じくらい、大勢のファンがマーちゃんの声に応えてくれます」
    「ああ、知ってるよ」
    「なので、マーちゃんはこれから声を挙げます。スカーレットのファンみんなが気付くように、マーちゃんwithファンクラブで鬨の声を挙げます。ウルトラスーパーマスコットなマーちゃんの声が、スカーレットのファンをも動かします。そして、その声は……きっと、きっとスカーレットに届きます……いえ、必ず、必ず届くんです」

    マーチャンの声が、僅かに震える。固くて座り心地の悪い屋上の地面に、空色の雨が一粒こぼれ落ちる。袖で目元を拭ったマーチャンがウオッカに向き直ると、マーチャンは息を呑んだ。マーチャンの方を向いたウオッカは────。

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:11:07

    「……ウオッカ」
    「悪い、相棒が待ってるからよ。俺、行くわ」
    「ウオッカ……!」
    「そっちは任せたぜ、マーチャン」

    そう声を掛け、ウオッカは屋上を後にした。残されたマーチャンは一瞬呆気に取られたが、そっと目を閉じ、去り際のウオッカの表情をもう一度頭に思い浮かべる。静かに笑みを浮かべ、その瞳はあの時と変わらず、鋭い光を湛えていて。
    マーチャンは目を開けると、胸いっぱいに息を吸い込んで、思い切り吐き出した。

    「……はい。マーちゃん、任されました」

    マーチャンは、両の腕にグッと力を込めでガッツポーズを取ると、懐からスマホを取り出した。

    「こほん。あー、テステス、本日も晴天なり、本日もマーちゃん晴れなり。こんにちは、こんばんは、それかおはようございます。本日は、なんとビッグニュースからお送り致しましょう。今日、マーちゃんはとてもとても大事なお仕事を任されました。それはー……だかだかだかだか……じゃん! ズバリ、応援団長です! 今日からはマーちゃん団長が、みんなにエールを、がんばれを、お届けします。そして────」

    そこで一度息を入れ、お腹に力を込め直す。言葉に想いを乗せるように、静かに語りかける。

    「マーちゃんはこれから、大事な、大切な、大好きな、一番のあの子へ、がんばれを贈ります。きっと、マーちゃん達の所へ、帰ってきてくれると信じて」

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:15:56

    その日、ウオッカは真っ白な病室の前に居た。より正確に言えば、立ち尽くしていた。ウオッカの後ろにある扉の向こう側に居るライバルに会い、ぽつりぽつりと会話を交し、そして────別れ際の言葉と表情が、今なおウオッカの頭の中に響き続けている。

    『……じゃあね、ウオッカ』

    そう口を動かした病室の主を振り返った時、瞳に映った彼女は本当に、本当に穏やかな笑顔で、ウオッカを見送っていた。思わず胸の底から哀しい感情が吹き上げてくる程に。
    この病室を後にしたら、もう二度と彼女に会えないかもしれない。そんな想いがウオッカの胸中を一瞬で支配していた。けれど、ウオッカにはその想いをどうにかする為の言葉も、行動も、何も思い浮かばなかった。

    気付けばウオッカは、寮の自室に帰ってきていた。病室の前から、いつ脚を動かし、どのように戻ってきたのか、あまり覚えていない。ふと顔を上げると、主の居なくなったベッドが綺麗なままで横たわっている。机の上に並べられたアロマや、キラキラした化粧品は、いつもより輝きを失っているように見えた。

    「……俺は」

    ウオッカの胸に、今度は後悔が溢れ出す。あの時、別れの言葉に何の返事もできずに病室の扉を閉めた事が、彼女の心を締め付けていく。

    「俺には、何が────」

    絞り出すように零したその時、ウオッカの胸に火が灯った。ハッとして、思わず目を見開いた。
    自分は求めているのだ。病室のベッドで穏やかに、なのに哀しそうに微笑んでいた彼女に、何か出来ることを探している。何が出来るのかを必死に考えている自分が居る。それは、何故か。

    そうだ、あんなのは、お前じゃねえ。目の前に居る俺に憎まれ口も怒鳴り声一つも上げやしない。いつもなら本当に小さな事から、しょうもない事から始まる罵り合いも無い。何もかも全部終わって解放された、そんな風に言いたげな顔で俺の顔を見ていた。それが本当に、俺とターフで鎬を削り合った最大のライバルか? “緋色の女王”ダイワスカーレットなのか? 誰もがその名を口にする、”一番のウマ娘”か?

    アイツがここで、終わって良いのか。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:18:06

    「……違う」

    そう、一言呟くと同時に、ウオッカは立ち上がり、駆け出した。あの日と同じスタートラインを目指して、もう一度自分に問いかけてみる。
    “カッコいい”って何だ? 俺の目指してたカッコよさってのは、どんな走りだった?
    そして、トレセン学園の屋上に来たウオッカは、遙か高く、済んだ群青色の空を見上げた。息を整えながら、問いかける。

    「なあ、お前にとっての”一番”って何だ?」

    そして、今度は笑みを浮かべて、まるで空と話すように応える。

    「俺にとっての、”カッコいい”は────」

    それから、ウオッカはシニア級のレースで怒濤の快進撃を見せた。春のヴィクトリアマイルでは後続のウマ娘達を7バ身引き離しての圧勝、続く安田記念では、最終直線で前を塞ぐウマ娘達をまるで縫うように躱して見事1着、安田記念の連覇を達成したのであった。

    特に、安田記念の最終直線での走りはまるで、トゥインクル・シリーズにおけるウオッカの歩みそのもののようだと誰かが言った。桜花賞からダービーへの挑戦を発表した時のように、誰もがそれを疑い、無謀だと思う。けれど、ウオッカは自分の走りを貫いた。誰もが無謀だと思う、そんな常識をブチ破って、彼女らしく、カッコよく。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:19:46

    そして、その歩みを、ウオッカの周囲に居る人達は届け続けた。ある時は巨大な着ぐるみがレース場を練り歩き、またある時は”宿命のライバルへ届け!”と横断幕を作って掲げ、そしてまたある時は、同期のウルトラスーパーマスコットが彼女のトレーナーと共謀し、病室にどでかいスクリーンを持ち込んでまで、誰よりもカッコよく走り続けるウオッカの姿を伝え続けた。

    心も、身体も、すぐに変わる訳ではない。ましてや歩けるようになるまで、剰えかつてのように走れるようになるまでには、どれほどの苦難が待ち受けている事だろうか、それは誰にも分からない。
    それでも、彼女は。モニターの中で力の限り駆けるウオッカの姿を見ていた彼女の緋色の瞳は、少しずつ、少しずつ光を湛え、鋭く前を見据えるようになった。
    じっとライバルを見つめるその姿に、彼女の側に付いていたマーチャンは、確かな希望を抱いていた。

    「マーちゃん応援団、今日の出張応援も大成功です。リハビリテーションルームでのゲリラ応援団は、あの子だけでなく、周りにいる患者さんにもエールを届ける事に成功しました。ぶいぶい。最初は困り顔だったあの子も、最後は一緒になって笑い、それから力強い笑顔で歩く練習をしていました……あの笑顔、桜花賞の時の事を思い出します。今は小さな一歩でも、まっすぐ進んでいけばきっと、きっと辿り着けます。マーちゃん団長は、信じています────以上、録音終わり」

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:22:00

    月日が流れ、ダイワスカーレットが”復帰のための”リハビリを始めたというニュースが流れ始めた頃。12月を目前に控え、風が冷たくなり始めた東京レース場に、ウオッカの姿があった。

    「本当に良かったのですか?」
    「ああ、今日はいい。心配いらねえよ」

    地下まで見送りに来ていたマーチャンの問いかけに、ウオッカは真っ直ぐに前を向いたまま応えた。マーチャンも、ファンも、応援団も、今日は全員がレース場に居た。いつものように病院へ繰り出そうとするマーチャン達を止めたのは、他でもないウオッカだったのである。自身の問いかけに迷い無く応えるその姿に、マーチャンもどこか安心したようにほうと息を付いた。

    「分かりました。ウオッカがそう言うなら、きっと大丈夫です」
    「……マーチャン」
    「はい?」

    振り返ったマーちゃんが不思議そうに首を傾げると、ウオッカは少し逡巡し、マーチャンに向き直る。

    「今日まで、ありがとな。後は任せてくれ」
    「……!!」

    その言葉と、変わらない力強い笑みを浮かべたウオッカの姿に、マーチャンは目を大きく見開いた。そして、思わず瞳に込み上げて来る想いをなんとか我慢してひっこめると、マーチャンもまた、笑顔でウオッカに向き直る。

    「マーちゃん、ゴールの一番前で、待っていますね」
    「ああ」

    開いた二人の掌が、心地よい音を鳴らす。光の方へ駆けて行くウオッカを、マーチャンはギリギリまで見送るのだった。

    ファンファーレが鳴り、枠杁は順調に進んでいた。不意に、空を見上げる。あの日見上げた時と同じ空の色を瞳に映して、ウオッカはふ、と小さく笑った。
    そして、その笑みを瞬時に仕舞って、ゲートの先だけを見つめて瞳から、指先、脚の先、髪の毛の一本一本まで、全神経を集中させていく。
    そして────ゲートが開き、ウオッカは勢い良くターフへと飛び出した。

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:24:14

    トゥインクル・シリーズのレースはどんなに長距離を走っても全員がゴール板の前を駆け抜けるまでに5分もかからない。その刹那に様々なドラマが生まれ、勝者が決まる。それがウマ娘のレースだ。そのドラマを、栄光を、一瞬たりとも見逃さぬよう、誰もがこの長くて短い刹那を追う。
    既にスプリンターとして優秀な成績を残したマーチャンにとっても、それは同じ。むしろ、電撃の如く駆け抜けるスプリンターであるマーチャンには、この距離のレースは長く感じるかもしれない。それが、ずっと応援してきた二人の親友の為ならば、尚更だ。両の手をしっかり胸の前で組み、マーチャンは祈った。

    「────ウオッカ」

    向こう正面、先行策を取ったウオッカは前から5番手に付けていた。先頭から順に3人のウマ娘が単独で走り、その後ろの集団の先頭にウオッカが陣取るという好位置である。先頭集団が大欅を越え、最終コーナーへ至り前後の差が詰まっても、ウオッカはその位置をキープし続けた。
    そして、ウマ娘達がスタンドの大歓声に迎えられ、全員が長い長い最終直線を前に向いたその瞬間、ウオッカの前を塞ぐ物は何も無かった。残り400の標識を超えて一気にスパートを駆け、あっという間に先頭へと躍り出る。
    だが、ライバル達もそれを黙って見送りはしない。

    『外から10番! 大外から10番が前に襲いかかって来る! だがウオッカ先頭、ウオッカ先頭! しかし突き抜けたウオッカを10番が追い詰める!!』

    ここまで溜めていた力を振り絞って末脚を爆発させ、咆哮のような声を張り上げながら迫る大外のウマ娘。白熱していく実況と、スタンドの大歓声。マーチャンは息を呑み、祈るように組んだ両手に力を込める。大勢のファンが、声を張り上げる。
    その最中、先頭に居たウオッカは前を、ただ、前だけを見ていた。”彼女”の想いが、今までマーチャン達と共に送り続けたエールへの答えが、今、ここにあると信じて。
    だから、ウオッカは一瞬目を閉じて、そして────。

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:28:07

    ────なあ、スカーレット。
    そこに、いるんだろ?

    目を、開く。その時、ウオッカには確かに見えた。真っ白な場所で自身の姿を見ているハズの彼女の、見えない影が。真っ直ぐで力強い脚が。美しい群青色の勝負服が。頂点だけを見据えた緋色の瞳が。決意の輝きを纏ったティアラが。ウオッカの目線の先に、確かにそこに居る。

    その瞬間、真横から響き渡るファンの声援も、後ろから迫るライバル達の大地を揺らす轟音も、ウオッカの周りから消え去った。ただ自分の駆ける音だけが耳から脳裏を貫く。その音を聞きながら、ウオッカは死力を尽くして脚を動かし、腕を振るこの場において不思議な程に心静かに、想いを巡らせた。

    俺も、お前も、そういうトコなんだよな。しょうもない事で喧嘩して、テイオーやマヤノにからかわれて。それでもターフに立てばお互い譲れないモンがあって、それを貫こうと悩んで、迷って、やっと答えを見つけて、そいつを全力でぶつけ合って、俺たちは進み続けた。なのに、今。お前はここにはいない。
    だけどな、スカーレット。俺、分かっちまったんだよ。言ったら絶対めんどくさい事になるから口が裂けても言わねーけど、口を開けば”一番、一番”で、その”一番”しか見えてないヤツを、お前だけの”一番”を貫き続けた最高にカッコいいライバルを、もっと最高にカッコよく差し切ったその瞬間にしかない、俺だけの”カッコいい”が確かにあるんだって。

    だからさ、スカーレット。

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:28:35

    ウオッカの目が見据えていたのは、ただ一つ。大外からすぐ側に迫ってくるウマ娘ではない。勿論、目の前に”いる”宿命のライバルでもない。その先にある、たった一つの光のみ。
    だから、ウオッカはその幻を、欠片の迷い無く差し切った。

    “一番”取り返しに来いよ。そん時までは。

    東京レース場、芝2400m・左回り。写真判定にまで持ち込まれたそのレースの着差は、奇しくもあの日と同じ────。

    この2cmは、誰にも譲ってやらねえからな。

    刹那、歓声がターフを包み込む。ゴール板の前にいたマーチャンを先頭に、応援団が歓喜の声を挙げた。
    その中で、全てを出し切ってターフに倒れ伏し全身で息をしていたウオッカは、身体をターフに転がすと、どこまでも高く、青い空を見上げ、笑った。
    憎まれ口で悔しさと賞賛を突き付けてくる真っ直ぐな人差し指と美しい群青色の勝負服を思い出しながら、握った右の拳を解くと、空に向かって自身の人差し指を天高く突き上げるのだった。

  • 11二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:30:16

    あれからあっという間に1年が経って、再び、東京レース場。秋の盾の栄誉を賭け、強者達が集う。その中にはウオッカと、マーチャンの姿もあった。

    「マーチャンも出てくるとは思わなかったぜ」
    「満を持した二度目の直接対決。レース場のボルテージは前回以上にうなぎさん。となれば、二人と一緒にマーちゃんも話題に混ぜて貰いたいと思っておりまして」

    ふんすふんすと息巻くマーチャンに、ウオッカは思わず笑みをこぼす。

    「このままマイル・スプリント路線で行くモンだと思ってたけどな。まさかここまで来るとは」
    「ふっふっふ、マーちゃんはウルトラスーパーマスコットなので、トレーナーさんのお力添えがあれば距離適性を伸ばすのもお手のものなのです。どやや」
    「お、おう。すげえな、それは……」
    「それに────」

    そこでマーチャンは、静かに微笑んで、感慨も一入に頷いた。

    「マーちゃん、次はここで、三人で思い出を……いえ、伝説を残すと決めていましたので」
    「そっか」

    ウオッカがマーチャンに応えるように微笑むと、地下バ道の奥から足音が聞こえた。2人にとってはお馴染みの、大勢のファンにとっては久しく見ていなかった群青色の勝負服。真直ぐに前を見据える緋色の瞳。その表情は、相変わらず不敵な笑みを浮かべて。

  • 12二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:31:50

    「よお、随分長い休みだったな。脚は鈍ってないだろうな?」
    「むむ、いけません。ここでマーちゃん指導入ります。まずは”お帰り”ですよ、ウオッカ」

    そう言ってウオッカの頬をマーチャンが指で突く。彼女は変わらない二人の姿に、安堵の笑みを浮かべていた。本当はウオッカも分かっている。ここに帰ってきた彼女に、”一番のウマ娘”に、そんな手抜かりがある訳がない。
    それに、”お帰り”と言うのは、このレースの決着が付いた後と決めていた。

    「行こうぜ」

    ウオッカの言葉を合図に、三人はターフへと脚を運ぶ。その姿が現れると、スタンドを埋め尽くすファンが割れんばかりの歓声を上げた。その声援に背中を押されるように三人は順にゲートに入る。

    『ついに、ついにこの時がやって参りました! あの悲劇のニュースから幾日、どれほどこの時を待ち望んだ事でしょう! “常識外れの女帝”と“緋色の女王”が、再びこの舞台で直接対決するその時が! そして、スプリンターから驚異の転身を果たしたアストンマーチャンを始め、二人との勝負を待ち望んでいた者達がこのターフに集まりました! 誰が勝ってもおかしくはありません! さあ、世紀の対決が、今!!』

    澄み切った青空の下、ゲートが開く。ウオッカも、アストンマーチャンも、そして、ダイワスカーレットも。たった一つの頂点を目指し、力強くターフを駆けていくのだった。

    END

  • 13二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 22:35:55

    以上です。ありがとうございました。史実での大接戦ドゴーンとジャパンカップでの着差が同じだったと知って拵えたお話ですが、思った以上に長くなってしまいました。
    最近はこの3人が一緒に居る事に幸せを感じる今日この頃です。

  • 14二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:00:06

    ウオダスマーの絆、良い……あとマートレはやっぱり着ぐるみ着てアピールしてるんだな

  • 15二次元好きの匿名さん23/05/24(水) 23:26:21

    >>14

    そうか、マートレが居る=マーちゃんが二人と一緒に居る世界線ってコトか

    エエヤン……

  • 16二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 00:19:20

    マーチャンが病気の時は2人が応援団してたんだろうな…
    カッコよく走り続ける姿を見せることがウオッカなりの励ましなんだなって
    この3人の史実準拠の物語をいつか公式でも見たいわ

  • 17二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 06:21:56

    走る姿を見せ続ける事が一番のエールってなんかウマ娘っぽくて好き

  • 18二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 09:56:23

    ウオッカかっけえ……
    最後のレース部分読んでてユメヲカケルが頭に流れた。友達以上仲間でライバルってこの3人にもピッタリな歌詞だと思う。

  • 19二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:23:54

    皆様、読んで頂きありがとうございます。


    >>14

    ウオダスマーの良さと尊さが最近自分の中でかなり来ています。マートレはマーちゃんに協力しつつも通常運転です。


    >>15

    やはりマーちゃんにも幸せになって欲しいので、あちこち違いはありますが基本的に全員のストーリー後という体を取らせて頂きました。


    >>16

    この世界のマーちゃんは感謝祭でもウオダスが忘れてないまであるかもしれません。

    こういう時、ウオッカに限らずウマ娘達が走る姿を見せる事で何かを伝えようとする姿に惚れます。アニメ二期の影響かもしれませんね。


    >>17

    繰り返しになってしまいますが、こういう時ライバルに走りで伝えようとする子、すごくすごいカッコ良いと思います。


    >>18

    レース描写のあるSSを書いたり読んだりしてると結構自動で再生されます@ユメヲカケル。

    友達以上、仲間でライバル。正にその通りです。これ以外にも刺さる歌詞が多いのでウマ娘の楽曲の中では好きな曲です。

  • 20二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 03:33:34

    良い友達だ…

  • 21二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 05:17:59

    おいおい最高のSSに素晴らしいイラストがついちゃってるじゃないか

  • 22123/05/26(金) 09:35:34

    >>20

    ウワーッ!!神絵師!!ありがとうございます!!おはようございます!!

    花の金曜日に最高の目覚めでございました。FAの方、保存させて頂きます。

    ウオッカを見つめるスカーレットの表情を敢えて見せず、想像させる構成が個人的にとっても好きです!

  • 23123/05/26(金) 09:37:35

    >>21

    いやはや、本当に恐れ多い限り……でもすごくすごい嬉しいです。

    最高のSSとのお言葉、ありがとうございます。

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