【SS】琥珀色の約束

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:54:12

     梅雨入れが近い中、五月晴れという、言葉か相応しいようにここ数日は晴天が続き、暑さも増して来ていた。

     トレセン学園にも、その暑さが少しずつ影響が出始めており、噴水広場がある三女神像の周りには涼むために生徒が集まったり、木陰で談笑したりしている姿がちらほらと見えるようになっている。

     トレーナー側でも、トレーニング際に熱中症にならないよう、こまめに水分補給をとるようにしたり、日差しが強い時は生徒と同じく、日焼け止めを塗るなど対策を取るなどしていた。

     「こんにちは、トレーナーさん」
     そんな暑い日の中、元気よく挨拶しながらトレーナー室に入るキタサンブラックの姿があった。

    「あぁ、こんにちは、キタサン」
     いつものように笑顔で返事をするトレーナー。

    「トレーナーさん、お父さんからいい物を貰ったんです」

     そう言って、キタサンは鞄からガサガサと、ペットボトルを取り出して、トレーナーに渡す。渡されたペットボトルには透き通った薄い茶色の液体が入っていた。

     「トレーナーさん、これ何がわかりますか」

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:55:40

     楽しそうな表情を浮かべながら聞いてくるキタサンを見て、トレーナーは何だろうとペットボトルを傾けながら少し考える。

     色合い的には、麦茶や紅茶の類だと思うのだか……、キタサンの様子だと違うだろうなと思いつつ答えた。

    「うーん……。麦茶かな」

    「残念!違います!」
     えへへと笑いながら答えるキタサン。どうやら外れだったらしい。

    「トレーナーさん、蓋をあけて、匂いを嗅いでみてください」

     キタサンに言われた通り、ペットボトルの蓋を回し、匂いを嗅いでみてみる。すると、少し酸味がかかった甘い香りが鼻腔を刺激する。

    「これは……梅か?」

    「正解です!!実はこの時期になると、お父さんの友達から梅を貰うので、それから作った梅ジュースの原液なんですよ!!」

     尻尾を振りながら嬉しそうに語るキタサン。
     彼女の話によると、毎年この時期になると、お裾分けとして梅を貰い、それを氷砂糖と一緒に漬け込み、梅のエキスを抽出した作った物なのだとか。

     そして、今年も梅が届いたため、早速作ってみて、今あるものは昨年作ったものだと言う。

    「良かったら、トレーナーさんにも梅ジュース飲んでみてほしくて、持ってました。さぁさぁ、一緒に飲みませんか」

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:56:22

    「……じゃあ、お言葉に甘えて、頂くとしようか」

     トレーナーがそう言うと、待ってましたと言わんばかりにキタサンはさっさと準備をし始める。 

     2つ紙コップを用意し、ペットボトルから梅シロップを少し入れ、キタサンが持ってきた水筒の冷えた水を注ぎ、軽くかき混ぜる。

     すると、綺麗な琥珀色をした梅ジュースが出来上がっていた。

    「トレーナーさん、どうぞ」

     キタサンから渡された紙コップを受け取ると、キタサンはトレーナーの隣に座ってきた。

    「ありがとう、キタサン」

    「いえいえ。では、いただきましょう」

    「いただきます」

     梅ジュースに口をつけると、ほのかな甘い味の後に、すっきりとした酸味を感じる。

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 21:57:25

     普段、あまりこういった味の飲み物を飲むことはないのだが、とても美味しく感じる。

    「うん、凄い美味しい。こんなに美味しいものが作れるなんて」

    「ふふっ、そう言っていただけると嬉しいです。この少しさっぱりとした酸味が体の疲れを癒してくれるんですよ」

     キタサンは自分が慣れ親しむものをトレーナーさんにも気に入ってもらったのが、嬉しいのか、嬉々として笑顔で語りかける。

    「確かに、体に染み渡るような感じだね。お酒と混ぜても良さそうだね」

    「あははっ、トレーナーさんもイケるクチですか?実はお父さんも梅から梅酒を作ってお弟子さん達と一緒に飲んでるですよ。私は未成年ですから、梅ジュースで我慢してますけど……」

     先程の笑顔からうって変わって、耳をペタと下げながら、少し残念そうに話すキタサン。

    「なら、キタサンが成人したら、ご相伴にあずかるとするよ」

     トレーナーの言葉を聞いて、耳をピンと立て、キタサンの顔が再びパァッと明るくなる。

    「本当ですか!?約束ですよ!!」

    「ああ、約束するよ」

    「やったー!!じゃ、私、楽しみに待ってますから」

     キタサンは満面の笑みを浮かべながら、再び梅ジュースに口をつけ、幸せそうに飲む。

     そんなキタサンを見て、先のことを想像しながら、トレーナーもまた梅ジュースを口に含む。

     梅のさっぱりとした風味が、暑さを少し和らげてくれるような気がした。

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 22:03:45
  • 6二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 22:09:27

    将来一緒にお酒を飲む約束をするの良いね…

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 22:45:11

    小さい頃、実家で梅酒漬けてたなあ
    氷水で割ると美味かったよ
    甘酒みたいなもんだと思ってたんだよ
    小学生にまさか…ねえ…

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/25(木) 22:55:18

    >>6

    感想ありがとうございます。

    お酒って、大人が楽しそうに飲むと未成年にはちょっとした憧れになりますから、そのことを踏まえての約束なんだと思います

  • 9二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 00:29:17

    キタちゃんの可愛らしさが溢れていてすごく良かったです
    大人になってからの約束もいいですね…

  • 10二次元好きの匿名さん23/05/26(金) 05:20:34

    >>9

    感想ありがとうございます。

    キタちゃん可愛く見られたなら良かったです

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています