- 1二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:33:28
だいたいさぁ
アンタトレーナーの癖に担当とこうして酒飲んでて良いわけ?正確には元担当だけどさ
……いやさ
アンタのトレーナーとして覚悟が足んないとかじゃなくてさ?
アタシとこうしてサシで飲んでたらさ
言われない?
週刊誌とか何やらでさ
シチーと元トレーナー朝まで密会〜とかさ
アタシアンタのこと心配してんだからね?
アンタ人との距離感割と狂ってんじゃん……?
いつかセクハラ扱いとかされそうだからさぁ
マジで心配なんだよね
どっかにアンタの事良いって言ってくれる女の人居たら良いけどさ
気をつけなよ?そういうのさ
もう出来ることならアタシがアンタと結婚すりゃ変な報道もされないだろうけどさ
マジで気をつけなよ?
アタシみたいに受け入れてくれるの希少だかんね?
酒が入って過保護になるシチーさって良いべ? - 2二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:41:59
過保護というか何というか……
- 3二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:43:18
でもシチトレだからなあ……
こういうところでクソボケかましそうで - 4二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:44:12
もう少し熟れたゴールドミソジーください
- 5二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:01:30
- 6二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:06:23
シチーのこういうシチュ大好き
- 7二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:08:29
- 8二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:37:52
「だいたいさぁ、アンタなんでこんなに時間があるわけ?」
そろそろ目が据わりはじめたゴールドシチーがそんな事を言いだしたのは四杯目のジントニックが空になった頃だった
すいませーん、と店員を呼んで流れるように追加注文へ
「アンタはどうすんの?また生中?」
すっかり自分もおかわりするのが前提のように言ってくるシチーに苦笑しつつ手元のジョッキを干す
少し経って新たな生中とジントニックがやって来て、グラスを合わせた後にシチーはもう一度質問してきた
「おかしいじゃん、アタシの担当やってた時のアンタは殆どプライベートなんかなかったでしょ?」
「いつでもアタシのトレーニングプラン組んでさ、それがモデルの仕事やアタシの寝坊やワガママで狂ってもすぐに修正してさ、それでアタシが寮に帰ってから夜中まで書類仕事してた」
知ってたんだからね、と拗ねた様に呟いてジントニックを流し込む姿はすっかり大人の女性だったが、その形の良い唇を尖らせるようにして横を向いて頬杖をつく動きはあの頃と何も変わっていなかった
「で?」
ジントニックを半分あけたシチーが更に据わった目でこちらを睨む
「アンタなんでこんなに時間があるわけ?
今じゃチーム担当して4人も担当居るんでしょ?
その内の1人は重賞バだってのに」
……こんなとこでアタシなんかの相手しててその子らの事ちゃんと見られてんの?
擦れたような呟きがかろうじて耳に届いた
さて、どう話をしたものか
シチーは余り分かって居ないようだが、俺のチームにおける『ゴールドシチー』は当に生ける伝説だ
阪神JFまでのティアラ路線から大幅に方針転換して皐月賞とダービーをかっ攫い、翌年には春天とジャパンカップを征した堂々たるG15勝ウマ娘だ
これより上となると最早三冠バやグランドスラム、シニア春秋三冠といった大偉業を達成しているレジェンドしかいないクラスである
そんな偉大なるOGが今でも俺に足繁く会いに来て、その態度がいかにも思わせぶりなのを見て年頃のウマ娘達が掛かり気味にならないはずが無かった
- 9二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:38:07
今日だって本来は安田記念出走に向けて担当の特訓をする予定だったのだが
『トレーナー?シチー先輩から呼ばれてるんでしょ?
なら早く行く!!』
『安田に向けての〇〇ちゃんの調整はアタシらがなんとしてでもやり通すから!ね!〇〇ちゃん!』
『オス!シチーさんとトレーナーの為ならアタシも粉骨砕身安田記念に向けて限界まで鍛え上げる所存です!!』
『ということで』
『『『さっさとプロポーズしてきやがれこのヘタレトレーナー!!!!』』』
シチーから連絡がある度にこんなやり取りが我がチーム内では繰り返されている
全くたまったものではない
お陰で今も鞄に入れっぱなしのマネージャーさんから聞き出したシチーお気に入りのブランドの指輪は渡せず仕舞でもう4ヶ月が経過している
「で、アンタホントなんでアタシにこんな時間までつきあってんの
安田に向けてのあの子らのトレーニングどうするつもりなんだよ?」
その渡したい相手はこうして目の前でお冠だ
お姫様のご機嫌を麗しゅうするには一体どうしたものやら
こんな感じですか!分かりません!
- 10二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:40:40
- 11二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:46:30
- 12823/05/31(水) 09:35:20
紅白の大きな花束を抱えて現れたゴールドシチーは満面の笑顔だった
「〇〇ちゃん、安田記念勝利おめでとう
これであなたもG1ウマ娘の仲間入りだね」
「オ、オス!ありがとうございます!!」
「うわー、すっごいきれい!流石シチー先輩!センスが違いますね!
……そこのトレーナーとは違って……」
「ホントにきれーい!
ですよね!勝利のご褒美とか言ってジャージで焼肉に連れて行くような奴とは違って!」
あれだけ喜んで店の上カルビを食い尽くす勢いでがっついていた奴らとは思えない酷い言われようだ
特にそこの上級生二人
お前らトレーニングにずっと付き合ってたからって勝った本人よりがっついていたじゃないか
シチーも困ったような苦笑いを浮かべてこちらに目線を送っている
「俺のセンスの善し悪しはまあどうでも良いとして」
シチーの目線が痛い
センスを磨けと言いたいのだろうがこちらはトレーナーとしてのセンス磨きだけで精一杯の身の上なので勘弁してもらいたい
「わざわざ来て貰って済まないな、感謝するよシチー
コイツらもシチーから直に祝って貰ったと言うのは良い思い出になるだろうしな」
そう言ってガチガチに緊張しているG1ウマ娘の頭を荒っぽく撫でてやる
「あわわわわ」
本人は目を回しているが、奢りで食った焼肉に文句をつけた先輩共の分までぐりぐりと撫で回してやる
「止めてやんなよ、〇〇ちゃん目まわしてんじゃん」
撫でくり回していると笑顔のシチーに止められるが、よく見ると目が笑っていない
どうもご機嫌斜めのようだよく見ると耳を絞らないように根元に微妙に力が入っているし……
確かにG1を獲ってきてくれた選手への扱いとしちゃ乱暴だったな、と反省して手を離す
耳から力が抜けたのを見るにこれで正解だったようだ
- 13823/05/31(水) 09:38:24
「よし、贈呈式も終わったことだし、皆でメシでも行くか!
シチーもオフなら一緒に来て欲しいがどうだ?
花束のお礼もしたいし、コイツらもシチーから色々話を聞ける良い機会だろうし!」
今日はこの後特に予定も無いのでそう提案すると
「あ、トレーナーゴメン
アタシら明日のオフ朝イチから安田記念勝利祝いでこの子と(千葉ねずみの国)へ行く予約いれちゃってるの
アトラクションの予約とかもあるから今日は早寝して朝イチの電車で出なきゃなんで、シチー先輩には申し訳ないんですがトレーナーのお守りお願いして構わないでしょうか?」
「わかった、コイツはアタシがしっかり管理しとくからアンタ達は楽しんできなよ」
「ありがとうございます!シチー先輩!!」
俺の意志に無関係なところで決められていくこの後の予定
まあシチーと居るといつものことではあるのだが
「さて、じゃこの子らの邪魔してもアレだからさっさと行こうか
アタシいつものとこが良いんだけどアンタは?」
「コイツらがそれで良いなら俺は構わんが、シチーは良いのか?
花束のお礼もこみなんだから別のとこでもいいんだぞ?」
そう言うとニヤリと挑発的な笑みを浮かべるシチー
「へぇ、良いんだ
ウチの社長や仕事先の接待なんかで連れてって貰った銀座のお高いフレンチとかでも良いの?
アンタが高給取りなのはしってるけど、それでもあの辺は痛いよ?」
得意満面のシチーに黙って両手を挙げて降参を宣言する
「ならいつものとこで良いっしょ!ホラ、行くよ!」
振り向いてご機嫌に尻尾を揺らして歩き出すシチー
ひらひらと後輩どもに手を振る姿は流石現役モデルと言うべきか恐ろしく様になっていた
「じゃ俺も出るから鍵は閉めといてくれ
電気とガスの元は気をつけろよー」
「「「わかったから早く行け!」」」
涙が出るほど温かい言葉を背に受けてシチーの後を追う
全くトレーナーと言っても扱いはいつでもこんなもんだ - 14823/05/31(水) 09:42:30
「もう行った?」
「うん、駐車場の方にトレーナーが見えるから大丈夫」
「よし、OK」
はぁー
あたし達は一斉に息をついた
「シチー先輩圧力強すぎ……」
「何なのあのプレッシャー、アタシら単にトレーナーの横に居るだけじゃん……」
「アタシトレーナーに頭ぐりぐりされてるとき生きた心地しなかったですよぉ……
シチー先輩の目線の温度がみるみるうちに冷え込んでいくのがわかるんですもん……」
「あの目線と耳の力のいれ具合だけで圧かけるのがシチーさんがG15勝もした秘訣の牽制技術なのかな……」
張り詰めた緊張から解放されてどっと愚痴が溢れだす
シチー先輩が来ると毎度毎度こうだ
あのクソボケがウジウジヘタレてるのが一番悪いのだが、シチー先輩もシチー先輩で他の女に対して情け容赦がなさ過ぎる……!
「もうホントさっさとくっついて結婚してくれないかな?身が持たないんですけど?!」
「アタシこのプレッシャーに何度も晒されてるから安田記念で緊張せずに走れた気がします」
「メンタルトレーニングとしては最上位だよね、寿命が縮む事を除けば」
「こっちも凄いよー、見てよこの花束
グラジオラス、キンレンカ、タネツケバナ、月桂樹よ?
勝利祝いとしちゃ普通だけど裏を考えると怖過ぎるよこれ……」
「どう言うこと?」
「花言葉ね、それぞれ意味がタネツケバナは”あなたの勝利を祈る”、月桂樹は”栄光”
ここまでは良いけどグラジオラスが”勝利”と別解釈で”密会”」
「うげー、アタシら浮気相手扱い?」
「んでもってキンレンカが”困難の克服”と別解釈で”貴方を愛しています”」
「「うげー」」
「もう爆発しろよあのクソボケトレーナー
これどう解釈してもシチーさんのあのクソボケを逃がす気は無い宣言じゃん」
そしてこの話題の最後はいつも
「「「さっさとプロポーズしてきやがれあのヘタレトレーナー!!!」」」
この言葉に収束するのだった - 15823/05/31(水) 09:43:14
これで良いですか!!分かりません!
- 16二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 10:52:11
ベネ
- 17二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 19:56:48
良く日に焼けた逞しい手がジョッキの把手を掴む
そのまま流れるように口許へジョッキを運ぶ
少し荒れた薄い唇を開いて中身のビールを流し込む度に、こちらも日焼けした喉と大きく隆起した喉仏が艶めかしく動く
ふう、と息を吐いてジョッキをテーブルに戻す姿もまた力強さを感じさせて
そんなちょっとした動きですらアタシの心を掻き乱して止まない奴はこちらを眺めて困惑したように口を開いた
「シチー?今日はいつもより進んでないみたいだけどもしかして夏バテか?それとも明日仕事で早いのか?」
アタシの事は何でも、それこそ呑み方のペースまで理解してて、その癖アタシの一番理解して欲しい事だけには決して気がつかない
そんな大バカヤローは今日もオンナゴコロを逆撫でする事だけは抜群に上手かった
- 18二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 19:57:17
「別に体調崩す程仕事詰め込んでたりはしねーし
明日も仕事だけど午後からなんで午前中はオフだよ」
自分でも嫌になるほどぶっきら棒にアイツに返事をする
こんな話し方をしてもコイツがアタシの事を嫌う事なんて無いと確信出来る程度には長い付き合いだけど、
こんな話し方をしててアイツの人生の一番になれるかどうかには相変わらず自信が持てなかった
「そうか、なら良いんだ
最近良く飲みに誘ってくれるのは嬉しいんだが、シチーがそれで無理してたりしないかが心配だったんだ」
毎度の如く自分の都合なんてどっかに放り投げて相手の心配ばかりしているコイツの性分は嫌になるほど理解してるけど
「それとも何か飲まなきゃやってられないような事になってたりしてないか?
シチーは努力家で自分に厳しいから、その分抱え込みやすいからな」
「アンタのその一言多いところも変わんないよね
アタシが卒業してモデル専業になって何年やってると思ってんの」
こうやってアタシをいつまで経っても心配しなきゃいけない担当としてしか見てくれないところは大っ嫌いだった
「アタシはその程度で誰かさんに甘えなきゃメンタル保てないような素人じゃねーし」
そうやって強がっていてもコイツがアタシと飲みに行くのを嬉しいと言ってくれた程度で踊り出す心と、ままならない頬の熱さを誤魔化すようにアタシもジントニックを喉の奥に流し込んだ - 19二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 19:58:03
「それでアイツらがな……」
酒が進むに連れてアイツの口も滑らかになっていき、今はこの前スカウトしたばかりの新人がいつもの三人にどんな風に可愛がられているかを面白おかしく話してくれている
でも、そんな話を聞くうちにアタシの気持ちは少しずつ冷え込んでいった
どうしてアタシと居るのに他の子の話をするの?
どうしてアタシ以外のオンナの話をするのにそんなに楽しそうなの?
どうしてアタシだけに四六時中夢中になってくれないの?
どうして、世界はアタシとアンタだけでは居られないの?
「で、あの子が『もう無理ィ~!!』ってなってダートコースでひっくり返ったのを俺と〇〇の二人で保健室に搬送してな、結局アイツら上級生二人は上手いこと言って逃げやがったんだ」
そう言って話にオチをつけて美味しそうにビールを飲むアイツに合わせて、出来るだけ自然に笑いながらジントニックで醜いホンネを無理矢理お腹の奥に流し込む
解ってる
アイツは他のオンナの話をしてるんじゃ無くて、今の担当の話を過去の担当であるアタシにしてくれている
アタシがアイツの担当だった頃と今とがどんな風に変わって、どんな風に変わっていないかを教えてくれようとしている
アイツはアタシにアイツの『今』を教えてくれている
それは卒業して『今』を共有出来ない元担当であるアタシへのアイツから差し出された手だ
この手を掴まなければアタシとアイツの接点は元担当と元トレーナーであるという事以外何も無くなってしまう
互いに互いが『過去』になってしまう
それを惜しむからか、嫌がるからか、アイツはアタシと『今』を共有しようとしてくれている
この手を離さないでいる限り、アタシはコイツと離れることは無いと安心できる - 20二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 19:58:57
でもそれは、この手を繫いだ距離よりも近くに寄り添う事は無いと言うことの裏返しで
コイツの顔を見る度にアタシを支配する願望を、何時ものように声に出さずにアタシは呟いた
”さっさとプロポーズしてきやがれ、このヘタレトレーナー……”
今の関係を前進するために壊す事を恐れて拒絶する、どうしようもなくヘタレでバカなアタシのホンネ
自分から手を伸ばす事を恐れる臆病者のアタシと
何もかもをぶち壊してでもアイツを手に入れたいと泣き喚く赤ん坊のようなアタシ
バラバラの心が軋む音を体中で感じながら、アタシはまた胸の隙間をアルコールで埋めるようにジントニックを流しこんだ
おかわりはこちらでよろしかったですか!分かりません!
- 21二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 20:10:41
- 22二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 23:03:57
- 23二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 23:24:30
うおっすげえ湿度…一足先に梅雨入りか?
- 24二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 09:51:04
- 25823/06/01(木) 20:17:00
ゴールドシチーから長期の撮影の仕事で今年は合宿に顔を出せないと聞いたのはいつもの店でのことだった
「ウチの社長が直々に獲ってきたデカい仕事でさ、大手の化粧品メーカーのアンバサダーとしてアタシを起用してくれるっていうありがたい話なんだけど」
そこで少し言葉に詰まったゴールドシチーは何かを吹っ切るようにジントニックを呷った
からん
「アンバサダーなんてやる事になると、こういう風にアンタと飲みに行くこともあんまり出来なくなるね
拘束時間も大幅に増えるし、言ってみりゃそこのイメージキャラクターじゃん?アンバサダーって
ちょっとでもクライアントの悪いイメージにつながる様な行動は避けなきゃ、プロなんだから」
からん
グラスを弄びながら氷を鳴らすゴールドシチーの横顔は困っているようにも泣いているようにも見えた
ざざーん
波の音が灼熱の砂浜に響く
青い海、白い砂浜、照りつける太陽、水着のウマ娘達と来るとリゾート施設の宣伝のようにも聞こえるが実態は修羅場だった
「「ぬおおおおりゃあァァァ!!!」」
「ホラホラペースおちてんよ!まだ半分残ってんだ!気合入れて引きなよ!!」
「先輩ファイトでーす!〇〇さんから遅れてますよー!」
「「うぬおおをおを!!!」」
大型重機用の特大タイヤを引きずって砂浜を往復する我がチームの精鋭達
目を剥き、歯を食いしばり、大汗を垂らして必死で次の一歩、次の一歩と踏み込むその姿に満足して頷く
時代錯誤と言われそうな光景だがやはり重賞戦線を戦う上で根性と言うのはバカにできない
出走者皆が自分の限界まで鍛え上げたのならば、最後にものを言うのは精神力だ
俺がゴールドシチーと過ごした日々の中で教えられた財産である
その並外れた精神力と勝負根性があったからこそゴールドシチーはG15勝の栄光を掴むに至ったのだから
- 26823/06/01(木) 20:17:46
夕食後、昼間の疲労で八割方寝ている担当達と一人ずつ宿題の進み具合の確認とトレーニングメニューの相談を兼ねたミーティングを行う
幸いなことに今年は宿題を無かったことにしようとする不届き者は居なくて助かる
トレーニングメニューの相談も特に問題なく終了
そして明日からのトレーニングメニューと今日のデータをまとめ終わると毎月一度の秘密の時間がやって来る
テーブルにタブレットを置いてオンライン会議ソフトを立ち上げる
少しの待ち時間の後
『こんばんは、今月もお疲れ様です』
「そちらこそお忙しいところにお時間を割いて頂いてありがとうございます」
シチーのマネージャーさんとの回線がつながった
元々はシチーが現役だった頃にモデル業の間の様子とトレセン内での様子をお互いに報告していたシチーの調子を量る為の連絡会が、シチーの卒業後も俺達二人の共通の夢であるシチーの事をお互いに報告する保護者会染みたものとして続いてきたものだ
お互いに手元には缶ビール
シチーの近況を肴に、穏やかな酒を楽しむのがこの一時のルールだった
「どうですか?アンバサダー就任後のシチーの様子は」
『やはり公式アンバサダー就任と言うことでSNSやメディアでの注目も一気に増えたので大分気疲れしていますね
このタイミングでデマでもなんでも騒ぎにしようとするたちの悪いフォロワーやパパラッチなんかも居ますから……』
「シチーの心配が当たってしまったんですね」
からん
ゴールドシチーが弄んでいたグラスの音が甦る
『そうですね、それにシチーとしてもここまで大きな案件の単独メインは初めてと言うことで、少しでも気を抜く訳にはいかないと余計に張り詰めてしまっているところもあります』
”プロなんだから”
沈んだ表情で、それでも誇り高くきっぱりと言い切ったゴールドシチーの口調が甦る
『シチーにもどうにかして息抜きをして欲しいのですが、夏は小売店のセールの時期と言うことでコスメ業界もイベントや販促キャンペーンに力を入れますから……』
「なかなか自由な時間を取れない訳ですか……」 - 27823/06/01(木) 20:20:11
からん
グラスを弄ぶ、ゴールドシチーの手つきが甦る
『それこそトレーナーさんと一度飲みに行ければ、あの子のメンタルも一気に回復すると思うんですよね』
「ですが、それは……」
『トレーナーさんとなら問題は無いでしょう?
シチーとトレーナーさんが仲が良いのはもう公然の秘密ですし』
「いや、それは……」
『それこそご相談頂いた指輪でも付けて公式な場に二人で顔を出せば、一時は騒ぎになるかもしれませんが貴方達ならお似合いと言うことで祝福の声の方が大きくなると思いますよ?』
ずきり
「お似合い、お似合いですか……」
『はい、誰より昔から貴方達を見てきた私が、そう思いますが?』
「それは、本当にお似合いなんでしょうか?」
『……はい?』
疲れていたのだろうか、それとも酔っていたのだろうか、誰にも言うつもりが無かった汚い本音が口を衝いた
「俺は、シチーに相応しい男なんでしょうか」
『はい、貴方よりシチーの事を一番に考えてくれる、あの子が幸せになれる相手は居ないと思いますよ?』
マネージャーさんの戸惑ったような声音の賛辞が俺には痛かった
「俺は、シチーに慕って貰えるような男じゃないんです」
いつの間にか残りわずかになった缶ビールを一気に呷る
何年か越しの告白は、酷く苦い味がした - 28823/06/01(木) 20:20:30
画面の向こうで戸惑うマネージャーさん相手に言葉を連ねる
「シチーは確かに貴女と俺の育てた世界一のウマ娘です」
訝しげに頷くマネージャーさん
「俺は誠心誠意シチーの為に全てを捧げました
その結果シチーは阪神JF、クラシック2冠、春天そしてジャパンカップの栄誉を手に入れた」
『はい、二人三脚の素晴らしい指導だったと思いますよ』
「でも、その結果シチーはモデル業とレース以外の世界を知らない」
『それは……』
「シチーの自分で選んだ結果だ、そう言うのは簡単です
でも、俺はそのせいで怖くなったんですよ」
『怖い?』
「はい、俺はトレーナー、教育者と言う職業です
その教育者が自分の担当に入れ込みすぎて、担当の自由意志を自己決定の美名の元に蔑ろにして、自分の思い通りになるように担当を洗脳した
そんなトレーナーの屑になってしまったのではないかという思いが消えないんですよ」
マネージャーさんの息を呑む音が聞こえた
「シチーはモデル業で早くから世間に出て行ったとは言え、あの頃はまだ子供でした
そんな子供のそばで、自分だけに頼るように、自分以外のオトコに靡かないように、そんな教育という名の洗脳を施していたんじゃないか、そう思えて仕方ないんです」
罪の告解は、まだ終わらない
この解釈で良かったでしょうか!わかりません!
- 29二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 21:38:12
- 30二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 22:08:41
- 31823/06/01(木) 22:15:32
『そんな事は無いと思うのですが
当時の私からみても、トレーナーさんとシチーの間の絆は確かなものがありましたし、シチーは自分からトレーナーさんに惹かれて行ったようにしか思えませんでした』
マネージャーさんの戸惑ったような言葉が俺に刺さる
「そこなんです」
『そこ、とは?』
「思春期の多感な子供を夢に寄り添うように見せかけてトレーナーとしての栄誉のために利用して、利用しやすいように狭い世界の中しか見せないようにして、狭い世界の中で俺にしか頼れないという思いを抱かせて依存させることで言うことを聞かせる」
まるでテロリストが自爆テロ要員を教育するように
そう自嘲する俺を眺めてマネージャーさんは何も言えないようだった
「お解りですか?
俺は、シチーの俺を想ってくれる心を信じることは出来ても、その心がどこから芽生えたのかを信じられない」
俺はシチーの走りに惚れたつもりだったが、その判断にトレーナーとしての打算が無かったと胸を張って言うことが出来るのか
そんな男がシチーに指輪を渡す資格があるのか
「俺は、俺のためにシチーの人生を利用した屑トレーナーなんです」
自責の念に堪えかねた、屑の自分勝手な独白は終わった
『はぁ……』
居心地の悪い沈黙を、マネージャーさんのため息が破る
『バカですか貴方は
いえ、バカと言ったらバカに失礼ですね』
やっと、この屑を断罪してくれる人が
『ならなんで貴方はわざわざシチーの好きなブランドを私に尋ねてから指輪を買ったんですか?』
現れる事はなかった
- 32823/06/01(木) 22:16:34
「それ、は、俺はシチーのトレーナーなんだから、シチーの為に、行動するのが、当たり前で」
『今は、”元”担当ですよ?
貴方はもうシチーのトレーナーではありませんよ?』
そう言われたとき、全身が総毛立つような恐怖が俺を襲った
「俺、は、シチーの、シチーが、シチーを」
『ですから』
そう言って少し溜めた後にマネージャーさんは
『なれば良いんですよ、ゴールドシチーのパートナーに』
そう言って笑った
「パートナー、に?」
『ええ、この際ですから言わせて貰いますが』
そう言って一気に缶ビールを呷ったマネージャーさんは
『貴方、童貞ですね』
とんでもない方向から爆弾を投げつけてきた
「え?は!?え?!」
『ああ、何も言わないで結構、今のリアクションでわかりました』
そう言って2本目の缶ビールを開けるマネージャーさん
カシュッ
ゴッゴッゴッゴッゴッ
タン!
『オンナとまともに付き合った事のある男が、そんなクソみたいな身勝手な理由で、ヘタレて逃げるわけないです』
据わった目で俺を糾弾するマネージャーさんの目は、俺の思っていたのとはまるで違う方向で鋭かった - 33823/06/01(木) 22:17:31
『良いですか?童貞さん』
有無を言わさぬマネージャーさんの迫力に、思わず背筋を伸ばして正座する
『例え最初が打算であっても、自分の事を本当に道具か金づるとしか思ってない相手に心底惚れる程アホな女はそう多くないですよ』
にっこり
後の人生を振り返ってみても、この時ほどマネージャーさんの笑みが怖いと思ったことは無かった
『シチーは、賢い子です
貴方がどんな思惑で最初近づいたにせよ、本当に自分に惚れ込んでくれていない相手をあそこまで信用するようなバカじゃありません』
ゴッゴッゴッゴッゴッ
ダン!!
カシュッ
『例え貴方がオンナの事なんか枝毛の先程も解ってないクソ童貞であったとしても』
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ
ダン!
カシュッ
『あの子にとっては貴方は!
自分の人生を掛けた夢を叶える為に!
全力で助けてくれた白馬の王子様なんです!
どうしようもないクソ童貞であったとしても!!』
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ
ダンダンダン!!
『わかりましたか!
オンナの敵にすらなれない!
オンナの気持ちを弄んでる自覚にすら欠ける!
頭と言動と肉体強度のおかしいクソ童貞さん!!』
ダン! - 34823/06/01(木) 22:18:32
「ほねみにしみてよくわかりましてございます」
俺に出来ることは誠心誠意の土下座だけだった
『では、貴方のするべき事は解りましたね?クソ童貞さん?』
「全身全霊で、心よりの誠意を込めて、シチーに指輪を渡させて頂きます」
『よろしい、これで貴方はクソ童貞からほんの少しだけマシなクソ童貞に昇格しました』
「……ありがとうございます……」
言い返したい気持ちはあるが、何を言っても自爆にしかならない事は理解できていた
『私から貴方に言うことはあと一つだけです』
「はい」
もう一度画面に向かって正座して背筋を伸ばす
『さっさとプロポーズしてきやがれ、このヘタレトレーナー』
マネージャーさんの真っ赤な笑顔と刺し殺されそうな鋭い目線は本当に怖かった
こんな内容ですがホントに良かったのでしょうか!わかりません!
- 35二次元好きの匿名さん23/06/01(木) 22:22:57
あなたがシチーのマネージャーで良かった
- 36二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 10:05:35
すっごくいい
- 37二次元好きの匿名さん23/06/02(金) 12:19:24
惚れ込んでおいて逃げてんじゃねーぞ
せめてちゃんと振られろ
シチーに判断させろ
そういうこったな - 38二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 00:11:10
- 39二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 09:29:57
秋のシーズンが開幕し、我がチームからは上級生2名が今年こそ重賞ウマ娘に!そしてあわよくばG1を!との意気込みでオールカマーへの登録申請を行っていた頃
「……久しぶり」
俺は人生最大の山場を迎えていた
マネージャーさんに説教を貰った前回の報告会の日から半月後、夏合宿を終えてトレセン学園へと帰ってきた俺はその日にシチーへと1通のメッセージを送った
”9/7の夜に二人で飲みに行きたい
シチーと俺との二人だけで”
たった28文字を入力するのにこんなに神経を使ったのは産まれて初めてだった
「……久しぶり」
「……シチー、お疲れ」
当日の待ち合わせ場所で顔を合わせてみると何故かシチーの方もやたらと反応がぎこちない
俺の方もジャケットの右ポケットの中でこれでもかと存在感を主張する指輪に気をとられ、緊張でガチガチになりそうな自分を必死で抑え込んでいつも通りにシチーをエスコートしようとする
- 40823/06/03(土) 09:30:50
「じゃあ行くか、予約したのはシチーの前言ってたお店だから、場所はわかるだろ?」
「……それは良いんだけど、なんでいつものとこじゃなくていきなり銀座なの?
それも駅で待ち合わせとかじゃなくて、マネージャーといつも来てる業界人御用達のパパラッチ避けカフェでなんて」
「アンバサダーになったんでパパラッチなんかに騒ぎを起こされたくないって前言ってたからな
マネージャーさんにそこらの対策を聞いたんだ」
今にも裏返りそうな喉を気合で制御して普段通りの声音を作る
首筋と背中の冷や汗がキモチワルイ
「じゃあ、行こうか」
椅子から立ち上がるのってこれで良かったっけ?
さっきから全ての挙動に現実感がない
飛びそうな意識を繋ぎ止める為に俺はシチーに向けて笑いかけた
何故かシチーもやたらと硬い表情をしているように見えた
「予約した”府中”です」
「いらっしゃいませ、承っております」
レストランの受付で予め話を通しておいた偽名を伝える
これもマネージャーさんから教わったテクニックの一つである
「あっきれた、ホントに業界人のやり方じゃん」
小声でシチーが話し掛けてくる
「俺がこんなとこでの対策とか、知るわけがないだろう
マネージャーさんに教わったそのままだよ」
「だからって”府中”ってそのまんまじゃん、ちょっと気が利く奴ならバレバレだよ?」
「そうなのか……」
本職の業界人から見るとまだまだであったらしい
しかしこの店に入ってから、シチーは少し表情の硬さが取れたように見えた - 41823/06/03(土) 09:32:10
「「乾杯」」
チン
昔シチーに教わった通りに、なるべく軽く、音を鳴らさないようにグラスの下の方を合わせる
『そうしないと高級なグラスって薄いからね、こーんな感じでカンパーイ!ってやったら大惨事だもん』
キン!
いつもの店でジントニックと生ビールをそうやって軽くぶつけたときのシチーの得意気な顔を思い出す
記憶の中と比べれば、今日のシチーの表情にはまだ硬さが勝っているように見えた
やたらと香りのよかった食前酒となんか酸っぱかった先付け
何か柔らかくて凄く美味しいような気がした前菜
シンプルな見た目なんだけど物凄く味の濃かったスープ
香ばしくてフワフワだった魚料理
これも少し酸っぱかったシャーベット
噛まなくても飲み込めそうな分厚くて柔らかいローストビーフのようなもの
見たことの無い野菜ばかりなのに美味しかったサラダ
ワインのおかわりと共にやって来た匂いの強いチーズと凄く硬いけど凄く美味しいパンのセット
最後は凄く甘い桃のシャーベットと何か香りの良いケーキのセット
これだけガチガチになっていてすら味の印象が残る辺り高級店って凄く凄い
こうしてコース料理が終了し、最後にコーヒーをウエイターさんが持ってくる
ここまでシチーと俺との間には、ポツリポツリとしか会話は無かった
俺はどのタイミングで指輪を渡せば良いのかしか考えていなかったし、シチーはシチーでそんな俺に何かを察したのか硬い表情を浮かべたままだった
ウエイターさんが下がって行ったのを確認して、俺は勝負に出ることを決めた - 42823/06/03(土) 09:32:50
ぐい
もの凄く熱くて良い香りのするコーヒーを一気に飲み干して覚悟を決める
「シチー、ちょっと聞いてほしいことがある」
姿勢を正してそう切り出すと、シチーが凍り付いたように固まったのがわかった
何を言えばいいのか
プロポーズの言葉は今日までに色んな情報サイト等で山ほど見てどうするか考えてきた
『結婚しよう』『嫁に来ないか』『一緒になろう』『ご家族に挨拶したい』『一生大事にする』
候補だけなら沢山用意してきた
でも、今俺の目の前で硬い表情で言葉を待つゴールドシチーに届くようにどう言えば良いのかなんてわかりはしなかった
もう良い
いつも通りだ
兎に角なんでも良いから気持ちは伝えよう
ダメで元々、屑が棄てられるだけだ!
俺は乱暴にジャケットの右ポケットに手を突っ込んで手が握り心地をすっかり覚えてしまった箱を取り出した
「シチー、受け取ってくれ」
気の利いた言葉なんて、とても言えやしなかった
今にも震え出しそうな右手を必死で抑え込んで、指輪の箱を手のひらに載せてゴールドシチーへと差し出す
シチーのお気に入りのブランドのロゴが小さく入った白い箱は、半年以上の長きに渡り俺の手元で撫で回されてきたせいか少しすすけて見えた - 43823/06/03(土) 09:34:01
- 44二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 09:47:25
次から次へと注文の品が出てくる…
- 45二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 10:50:56
ここに式場を建てよう
- 46二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 11:17:02
絞ったら絞っただけ出てくる…まるで菜種油のようだ
- 47二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 11:21:59
マジかよここにセルフじゃない店があったのか
- 483823/06/03(土) 11:30:02
ありがとう…とてもありがとう、すごくありがとうございます
- 49二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 12:23:05
パーフェクトだ、投稿者。(cv.中田譲治)
- 50二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 16:59:56
今回は銀座の高級店ですから
- 51二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 17:05:29
- 52二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 17:07:27
- 53823/06/03(土) 17:18:00
「じゃ、行こっか」
暫し指輪を抱きしめた後、そう言って立ち上がったシチーの表情は晴れ晴れとして、目元の朱さなど何も気にならないような快活な美しさに満ちていた
「……行くって?」
「いつものとこ、アンタもここじゃ緊張しっぱなしで楽しめないでしょ?
さっきから凄く動きがぎこちなかったし」
先程から指輪を受け取って貰えた安堵感で崩れ落ちそうになっている俺には、ぐうの音も出ない指摘だった
店から出たところでシチーがスマホを取り出す
「電車とかだと色々面倒くさいからタクシー呼ぶよ?
アタシのいつも使ってるとこだし」
「そのくらいなら出すぞ?」
「アンタにも覚えておいてほしいの
こういう機会、これから増えるんだろうし」
そう言ってまた笑うシチーに俺は何も言えなかった
「到着っと」
銀座からの1時間半程の道のりの間、シチーは何も話さなかった
ただ黙って俺の肩に寄り添って頭を預けて、時折目線を合わせて微笑むだけだった
俺も今更になってじわじわと浮かんで来た受け入れられた喜びと安心感で虚脱しそうになっていたので、正直に言えばその方がありがたかった
- 54823/06/03(土) 17:19:34
「じゃ行こっか、いつものとこ」
「シチー、明日は大丈夫なのか?」
「うん、明日明後日は完全オフ貰ってるから
夏の間は凄い仕事詰まってたからね」
そう言って歩き出すシチーの後を追って、俺も気力を奮い立たせていつもの店へと歩き出した
「「カンパーイ」」
ジントニックと生ビールが空中で良い音を立てる
いつもの店のいつもの個室
いつものビールといつものジントニック
府中駅からほど近い、俺達の日常の光景
「とんでもなく緊張してたから何かと思えば、こういうことだったなんてね」
指輪を照明にかざしながら、上機嫌のシチーが笑う
「アンタ、良くこのブランド知ってたね?
人気なのは間違いないけど、割とアクセに詳しくなきゃ名前も知らないようなブランドなのに」
からかうような目線を受けて、正直にマネージャーさんに教わったと白状する
「だっせー、そんな時までマネージャーに頼りっぱなしかよ」
けらけらと陽気に笑うシチー
仕方ないだろう、俺にどんなデザインの指輪をシチーが喜ぶか、ヒントも無しに選べるようなセンスは無いんだ
そんな俺のぼやきを聞いてまたけらけらと笑うシチー
その左手の薬指は会話の間中、照明にかざされっぱなしだった
いつものビールとジントニック
二人揃って飲み干して、おかわりを注文する
杯を重ねていくうちに、なんの疑問も無くこの光景が”いつもの日常”だと考えていたことに今更ながら気付く
俺は、シチーが隣にいるこの光景が日常だと感じるくらい、二人で居ることを当然に思っていたんだ
そりゃあマネージャーさんもクソ童貞と言うはずだ
そんな風に当然隣に居るもんだなんてシチーに甘えながら、シチーの気持ちを信じられないなんて身勝手な事を言っていたのだから
そう反省しながら流し込む、いつもの生ビールはいつも通りに本当に美味かった - 55823/06/03(土) 17:21:12
「で、聞きたいんだけどさ」
そんな俺の感慨は
「アンタ、アタシに隠してることない?」
シチーの追及によりあっさり吹き飛んだ
「隠してること、か?」
「うん、指輪をくれた事はホントに嬉しい
アンタはアタシの夢をまた一つかなえてくれたの
今でも夢見てるみたい」
でもね
そう言ってジントニックを呷るゴールドシチー
「夏前までプロポーズとかしてくれそうな、そんな気配の全く無かったアンタがいきなりこんな行動起こすなんてアタシには信じられない
アンタがこうと決めたら一直線なのはアタシが一番よくわかってるけど、こうと決めるまでやたらに悩むのもアタシが一番よくわかってるから」
そう穏やかに話すゴールドシチーの目は
「で、何を隠してるの?」 全く笑っていなかった
「そんな、俺がシチーに隠すような事なんか……」
「嘘」
斬り捨てるような声だった
「ならなんでアンタは」
追及するような眼差しだった
「アタシが指輪を受け取った事に喜ぶんじゃなくてホッとしてるの?
まるでやらなきゃならないからやった、みたいに
まるで、アタシを誤魔化そうとするみたいに」
哀しみを抑え込むような表情だった - 56823/06/03(土) 17:21:32
- 575223/06/03(土) 17:22:56
ありがとう、ありがとう…
- 58二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 19:44:17
シチトレがシチーに隠し事できないの解釈一致
伊達に慧眼持ってない - 59823/06/03(土) 19:44:44
「そんな、ことは」
喉がひりつく、頭が白熱する、視界がぐらりと歪む
『まるでやらなきゃならないからやった、みたいに』
そうだ、シチーが望んでいるように思えたから、マネージャーさんに尻を叩かれたから、担当のあいつらにやいのやいの言われたから
俺が、シチーが喜ぶ顔を、見たかったから
『まるで、アタシを誤魔化そうとするみたいに』
ちがう、誤魔化そうなどとはしていない
俺はいつでも、シチーが喜んでくれることを
シチーが望んでいることを
シチーがなりたいと思う自分になるために俺の出来ることを
シチーの夢をかなえるために俺が出来ることを
シチーの為になると、俺が思ったことを
夢に向かって進むシチーを支える、ただその為にやるべきことを
その為だけに俺はいるんだ
「そんな事は無い、俺はシチーに隠している事なんか無い」
シチーが夢に辿り着く
それだけが俺の望み、俺の喜び、俺の誇り、俺の生き方、俺の楽しみ、俺の責任、俺の満足、俺の全て
俺のなりたかった、トレーナー像
- 60823/06/03(土) 19:45:30
「俺はただ、シチーに喜んで欲しかっただけで」
ただ、担当の幸せの為に生きるシステムとしてのトレーナーという、一箇の自動装置
俺はどのようになってもいい、シチーが夢を掴んで幸せに成れるのならば
シチーが生きる上での障害を全て除いてやろう
シチーを害するものは全て俺が打ち倒してやろう
シチーが挫折することがないように鍛え抜いてやろう
シチーのやりたいことを全て出来るように俺が道筋を整えてやろう
「シチーに幸せになって貰いたいと、ただそれだけを思っていたんだ」
混じりっ気無しの俺の本心 は、先程指輪を照らした照明の下に並べ立ててみると、酷く安っぽく思えた
「そう、本当にそう思ってくれてるの?」
左手を右手で強く握りしめて、俺と目線を合わせようとしないシチー
「本当だ、シチーが幸せになること、それが俺の最高の喜びなんだ」
じゃあさ
そう呟いたシチーの声は
「アタシが指輪を受け取って、アンタは本当に心から嬉しかったの?」
もちろんだ、シチーが喜んでくれたんだから嬉しかったにきまってる
そう答えようとしても、何故か声は出せなかった
俺は、心から、嬉しかった、のか?
解らない
シチーが、喜んでくれた
それが嬉しかったのは間違いない
ただ、『シチーの喜んでくれたこと』が嬉しかったのか
『俺の指輪をシチーが受け取ってくれたこと』が嬉しかったのか
どちらの比重が重かったかと言えば圧倒的に前者だった - 61823/06/03(土) 19:45:53
俺は、俺が、俺の、俺からの、
喜びって、なんだ?
シチーの感情と係わらない、俺の、俺自身の喜怒哀楽とは何だ?
俯き加減のシチーを前に、俺は何一つ答える事が出来ずにいた - 62823/06/03(土) 19:46:46
俺の喜びとは何だ?
シチーが喜んでくれることが俺の幸せだったし、それは今でも変わらない
ならどうして?
どうしてシチーに喜んで貰うために用意した指輪がシチーにこんな顔をさせている?
シチーに幸福になって貰いたいと、マネージャーさんに聞いて必死で考えた指輪が今では禍禍しさを放って見える
なぜ、俺は、シチーを幸せに出来ないんだ?
俺はシチーの為のトレーナーなのに
「アンタさ」
惑乱している俺に再度シチーは語り掛けた
「アタシが担当だった頃殆どプライベートとか無かったでしょ?」
懐かしむような、哀しむような、痛々しいものを見るようなそんな表情で
ふるふると小刻みに揺れる耳に必死に力を込めて真っ直ぐに前を向いて
おれを、みつめて - 63823/06/03(土) 19:47:32
「あの頃のアタシはまだほんの子供で、アンタに何もかも頼りきってた
アンタがいなきゃアタシはダメになってた
アタシは、アンタに育てて貰って幸せだったし今も幸せにしようと努力して貰えてる」
泣きそうな瞳で、それでも俺から目を逸らさないで
「でも、アタシはアンタを幸せに出来てた?
アンタにとってアタシは重荷じゃなかった?
今もそう、アタシが一方的にアンタに頼りきってる」
赦されない罪の告解のように
「アタシは、アンタに、なにをしてあげられるの?
アンタは、アタシに、何をして欲しいと思ってるの?」
シチーは真っ直ぐに俺を見つめ続けた
一筋の涙を目尻から流して
「アタシは、こんな指輪を貰えるような、アンタに相応しいオンナじゃないの」
血を吐くようにシチーは語り続けた
「今のアタシは、アンタに負担を掛けるだけの『見た目だけのお人形』
アンタの人生を浪費させるだけのお荷物にしかなれないの」
涙を流しても、声が擦れても、決して俺から目を逸らさずに自分への呪詛を吐き続けるシチー - 64823/06/03(土) 19:49:11
- 652123/06/03(土) 19:51:25
- 66二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 19:52:22
やだこの娘…自分のトレーナーとそっくりなこと言ってる…
ひょっとして童貞なんじゃ - 67二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 19:53:45
久しぶりに素晴らしいSS書きを見た
アニメか漫画で見たいまである内容 - 68二次元好きの匿名さん23/06/03(土) 22:03:33
シチーは、抵抗しなかった
初めての彼女の唇は、ジントニックのフレーバーだった
いつもの店を出て、二人肩を並べて歩く
俺の目線の先に丁度シチーの耳の先が来る高さ
その距離が『いつも』より幾分近いのは、俺の気のせいではないと確信する事が出来た
いつもならここで別れるレンタカーとコンビニの間の交差点を通り過ぎて、真っ直ぐ
少しせせこましい住宅街の中を通り抜けて行く
俺の住むトレーナー寮にほど近い清潔だが古いマンションの前に着く
何も言わずに俺の隣を歩いていたシチーが、ほんの少しためらうようにして伏し目がちに目線をこちらへよこしてきた
目線を合わせて、軽く頷いた
決してシチーの視線を逃さないように
シチーが、目線を逸らしてそっと俺のジャケットの裾を摘まんだ
それで十分だった
- 69823/06/03(土) 22:04:22
俺の部屋の前で扉の鍵を取り出す
何度となく繰り返したこの動きがやけに難しい
手の中で鍵が暴れて中々ドアに刺さらない
幾度かの苦戦の後、ようやくドアは開いた
二人して部屋の中に転がり込む
シチーが入ったのを確認した後、震える手で後ろ手に鍵を閉める
ガチャン
ビクリ、とシチーが怯えるように肩を竦めた
その肩を、そっと引き寄せる
シチーは、抵抗しなかった
「ねえ、アタシで、良いの?」
「シチーが良い」
「アタシも、アンタが良い」
腕の中で胸板に縋りつくシチーの肢体は熱かった
シチーがここまで伏せてきた顔をあげる
俺の目を射貫くような頸さで無言で希う
望むところだ
妨げるものは、どこにも無い
二度目に重ねた唇は、昂った二人の間から漂う、獣の薫りがした - 70823/06/03(土) 22:05:31
触れて
撫でて
縋って
縺れて
昂って
穿って
割いて
剝いて
刮いで
舐って
咬んで
抉って
削いで
刻んで
繫いで
ズレていた俺達は、ようやく正対することが出来たのだろう
心から、嬉しかった - 71823/06/03(土) 22:07:36
- 72二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 00:08:47
- 73823/06/04(日) 00:16:49
憑きものが落ちる、と言う言葉がある
何かの切っ掛けで、それまで気がつけなかった事やどうしてもわからなかったことがわかるようになる事を言う表現だ
俺達の今はまさにその言葉にぴったりだった
朝の光が差し込んでくるのを感じて、ぼんやりとした頭で目を開く
昨日の夜はきっちりと閉めていたカーテンが開いている
回らない頭で窓の方を眺めると、窓際に金色の輝きが見えた
「おはよ」
振り向きながら俺に挨拶をしてくれるシチーの笑顔は、メイクなどしていないはずなのに今まで見たことが無いほど輝いていた
- 74823/06/04(日) 00:17:19
昨晩嵐のような一時が終わった後、俺とシチーは抱き合ったまま眠るまでずっと話をしていた
シチーが俺が担当やたづなさん、桐生院さんと話をするのが嫌だったと吐露すれば、
俺はシチーが自分の担当では無いとマネージャーさんに言われたときに感じた絶望を正直にうち明けた
俺がシチーの頑固に何があっても自分の意見を曲げないところを揶揄えば、
シチーは俺の真っ直ぐに相手のためを思って行動すればどんな珍妙な行動でも理解されると言う信念を散々に扱き下ろした
俺がシチーと同じように今の担当達に人生を捧げて触れ合うことは、シチーを裏切るようでとても出来ないと正直に白状すれば、
シチーは俺以外の男と撮影などの仕事で触れ合う度に、自分がプロ意識と言う言い訳に甘えて俺を騙しているように思えて自己嫌悪が止まらなかったと泣いた
俺達は、出会ってから初めてお互いに何も遮るもの無しに、お互いの心の柔らかい場所を探りあっていた
どんなに深い古疵でも、どんなに汚い欲望でも、どれだけ自分の深いところに触れられても気にならなかった
誰にも見せたくないと思っていたものであっても、シチーが、俺が、お互いを理解して、補完して、一つになるための手段だというのなら喜んでさらけ出していった
俺達は、トゥインクルシリーズを戦った3年間で一人と一人から、二人になった
そして出会ってから今までの年月を掛けても近づくことが出来なかった隔たりを、今までの日々の不足分も加えて埋めるように触れ合って、二人から一組になった - 75823/06/04(日) 00:18:06
二人で簡単な朝飯を食べながら今日の予定について話す
「今日は、どうするの?」
「9時からトレーナー室でミーティング、その後に担当それぞれのメニューをこなしていって、午後からはオールカマー出走組の坂路特訓だな」
「それ、アタシも着いていって良い?
あの子達には散々に八つ当たりしたからね、少しでもお詫びしなくっちゃ」
俺は少し考えて
「いや、それはやめておいてくれ」
と言った
「なんで?」
「俺達の関係が変わったのをアイツらに知られたら、重賞レース前のアイツらに集中を乱す浮ついた話題をトレーナー自ら振る事になるからな」
「……アンタがあの子達にそれを隠しておけるとはアタシにはとても思えないんだけど……」
「それに、な」
シチーの顔を見つめて口篭もる俺に
「なに?」
さらりと金の髪を揺らして首を傾げるシチー
「今、シチーに傍にいられると、俺が我慢出来なくなる」
心の底から正直にうち明けた俺の本音は
「バッッッカじゃないの!?!?このおサルさん!!」
真っ赤に染まったシチーに全力で罵倒される事となった
「今晩、お風呂の後でね」
一通り罵倒した後で更に真っ赤になってそう付け加えたシチーに朝から暴走しそうになったのはまた別の話だ
こんな風になりましたがよろしかったでしょうか!わかりません!
- 76二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 01:21:07
秒でバレるんやろなあ
- 77二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 07:13:40
素晴らしいSSじゃないか……
さてはあなた、とてつもない文才があるな?? - 78二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 09:49:30
流石シチー
一から十まで全部欲しいし全部あげたいんだ - 79823/06/04(日) 15:19:38
「あ、また出てるよウチのトレーナー」
夕方の美浦寮のロビーで、友達との雑談に興じていたウマ娘がテレビのワイドショーをチラ見してそう言った
「あー、ゴールドシチーさんと婚約したんだっけ、そっちのトレーナーさん」
「そうそう、いやー、やっとあの二人がくっついてくれてホント助かったよ……」
「……助かったってなに……?」
謎の発言に宇宙の神秘を覗いた表情になる相手をスルーして、あの日の騒動を彼女は思い出していた
9月最初の土曜日の朝
その日トレーナー室に集まっていたウマ娘達は皆そわそわとした落ち着かない態度だった
「よし、それじゃ朝ミーティング始めるぞ」
「「「「……」」」」
返事が返ってこないことに不審を抱くトレーナー
「お前らどうした、朝から揃って黙り込んで」
「「「「…………」」」」
お互いに目線を見交わしてトレーナーに見向きもしない担当達
「何かあるのか?それなら早く言ってくれ
特にそっちの二人、オールカマーまで時間は余り無いんだぞ」
「「「「………………」」」」
不自然な静寂がトレーナー室を満たす
それを破ったのは
「あーー!!もうガマン出来ない!
アタシ言うよ!?言っちゃうよ!?!?」
オールカマー出走組の一人だった
- 80823/06/04(日) 15:20:45
「な、何があった?」
余りの勢いに引け腰のトレーナー
その姿に勢い良く指を指して
「トレーナー!アンタが聞くから言わせて貰うけど!!
ホントなら絶対にこんな形で聞きたくないんだけど!!」
朝の新鮮な空気をつんざいて
「シチーさんと何かあったのは解るんだけどさあっ!!」
ジャージと見比べても差が見つからないほど真っ赤になったウマ娘の
「なんでカラダと服装の消臭はバッチリなのに、ミーティングの資料から全力でシチーさんとトレーナーの汗の臭いがしてるのさ!!
それも如何わしい類の汗とせ、あ、た、体液の臭いが!!??」
乙女の尊厳を投げ捨てた渾身の絶叫が響き渡った
「……は?」
ぽかんと口を開けて間抜けな顔をさらすトレーナー
「とぼけんな!!このスケベ親父!!」
限界を超え更に真っ赤になって絶叫する担当
その後ろでこちらも負けず劣らずの顔色で沈黙を貫く残り三名
しかし耳は三人ともバッチリ全力でトレーナーの方を向いている
「え?は?し、資料から臭いが?」
ようやく事態を把握したのかこちらも真っ赤になって口篭もるトレーナー
しかし筋骨隆々のアラサー男性の赤面姿など一人除いて誰得なのか
「ムダに乙女な反応すんなキショイ!
朝っぱらからトレーニング前の乙女になんてもん嗅がせてんのさ!!
これが高度なセクハラなんだったらアタシら喜んで警察呼ぶよ!!??」
言いたいことは全て言い切ったのか、耳を完全に絞って肩で息をしつつトレーナーを涙目で睨み付ける乙女(自称)が一人
迫力はないがその内容が内容だけにトレーナーが出来ることは一つしか無かった - 81823/06/04(日) 15:21:40
「待て、これには訳があってだな……」
「どんな訳が有るのかは全員解ってんの!!
それ以外にこんな臭いがする理由なんて無いじゃん!!
アタシらが聞きたいのはシチーさんがいるのになんでこんな有様の資料をケアせず放置して持ってきて、こんなもん配ってアタシらにセクハラしてるのかって事!!」
再度沸騰したのか再び乙女の絶叫が響き渡る
トレーナーには黙って頭を抱えて応援を呼ぶしか出来ることは無かった
「……ゴメン、アタシが浮かれ過ぎてた
ホントゴメン、カバンはチェックしてたんだけど中身はチェック漏れてたわ……
今更何言ってもダメなのは解ってるけれど本当に御免なさい……」
「その、俺も悪かった……」
緊急で呼び出されたシチーと二人並んでトレーナー室の床に正座して、担当達に謝罪する
正直に言うと人間の俺には何も感じられないのでどう悪かったのかは解りようがないのだが、シチーを一人矢面に立たせたままでいるのは気が引けた
「シチーさんがトレーナーとそうなった事には全力でお祝い言わせてもらいますけど、それはそれとしてデリカシーってものをもって下さい」
完全に吹っ切れたのか正座する俺とシチーの前に腕組みして仁王立ちする乙女(自称)
こら後ろの三人
頷いてないで少しはフォローしてくれお願いいたします
「良いですかシチーさん」
「はい」
「正直そこの筋肉ダルマに惚れるとか目玉どこに付けてんだとか
人間のデリカシー皆無な鼻で臭いが判るわけ無いんだからしっかりフォローしてくれとか
アタシらに散々無駄なプレッシャー掛ける位ならさっさと押し倒せ、ああ、昨日やっとこさ押し倒し終わったンですねお疲れさまですとか
言いたいことはまだ山ほど有りますが」
シチーが本気で泣きそうになっているが、ここで助けに入っても事態は悪化するだけなのは明らかだ
弱い俺を許してくれ、シチー - 82823/06/04(日) 15:22:36
「そこのヘタレの管理を出来るのはシチーさんしかいないんですからしっかりして下さい
後輩一同、シチーさんとトレーナーを全力で応援します
おめでとうございます」
そういって四人はシチーへと暖かい祝福の拍手を贈ったのだった
「あ、トレーナーにはまだ説教があるからね」
OH……
「……アタシを助けてくれなかった事は後で追求するからね……」
OH……
そんなこんなの大騒ぎを思い出しているとテレビの中ではシチーさんとトレーナーが二人揃ってレポーターのインタビューを受けていた
『お二人の出会いは選手とトレーナーとしてだったとのことですが、ご交際はいつ頃からでしたか?』
『アタシが卒業して4年後位からですね、それまでこの人はアタシのことを教え子としてしか見てくれてなかったので』
『それでは、ゴールドシチーさんからアプローチしたと?』
『押して押して押しまくりました(笑)』
『なるほど(笑)おめでとうございます』
「どのへんが押しまくりだったんだよ……」
「え、実際は違ったの?シチーさんしょっちゅう来てたのに」
『トレーナーさんもそのゴールドシチーさんの猛アプローチに降参してお付き合いを始めたと言うことですね』
『ええ、シチーの猛攻にやられましたね(笑)』
『(無言で軽く肩を叩く)』
『(笑)お熱いところをありがとうございます
これからもどうぞお幸せに』
「マスコミによる情報操作だあ……」
「ねえねえ、実際のところってどんな感じだったの?」
興味津々な様子だが、こんなチームの恥を広めるつもりは無い - 83823/06/04(日) 15:23:35
『それでは、ご婚約に至られたということで、その時はどのようなお言葉でプロポーズされたのでしょうか?』
『どのようなって、ねえ?(笑)』
『ええ、ただ単に指輪をこう、「受け取ってくれ」って渡しただけでした』
『お二人の間には多くの言葉は必要ないと言うことですか、これまたお熱いところをありがとうございます
どうぞお幸せに』
「……逃げやがったな、あのヘタレ……」
「え、何何、それどう言うことなの?」
なんか横で盛り上がってる奴がいるけどアタシはそれどころではない
明日のミーティングで奴に一言言ってやらねばならぬ
「「「「さっさとプロポーズしてきやがれ、このヘタレトレーナー」」」」
と、チーム全員で
婚約会見式場ではダメでしょうか!わかりません!!
- 84823/06/04(日) 15:27:17
以上でゴールドワイフコースのお料理(ハッピーエンド)は終了でございます!
お味は如何でしたでしょうか!!
またのご利用をお待ちしております!!
ありがとうございました!!
以下前作の宣伝
多分ファル子はフラッシュの脳にもこれ叩き込んでる|あにまん掲示板フラッシュの人生のフルコースにハムカツをねじ込んでる。bbs.animanch.comフラッシュがファル子に泣かされて餌付けされるお話(語弊)
- 85二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 15:31:50
こちらこそこんな素晴らしいものを書いてくださってありがとうございます!!!
次作があるかわかりませんが楽しみにしています!!!! - 86二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 16:16:14
レースに関係しない事になるとツメが甘くなるトレーナーは大好きです
ありがとうございます - 87二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 16:59:26
両方共面倒くせえ…
- 88二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 17:09:24
お似合いだよコイツら
お幸せにな!!!! - 89二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 17:55:25
秒でバレてて草
- 90二次元好きの匿名さん23/06/04(日) 23:49:07
トレーナーと愛バは引かれ合う……