【若干シナリオ改変】アストンマーチャンです

  • 1二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:47:16

    夜の砂浜を一歩一歩、海に向かって歩きます。
    なぜそうしているのかと言われれば、マーちゃんにもよくわかりません。
    誰かに呼ばれているからでしょうか?
    つま先が水に触れて、冷たい感触が伝わります。
    このまま進めば、海の中へ……ウマ娘は水中で呼吸できませんので、そうしたら当然生きられません。
    でも、怖くはないのです。
    なぜ?……それはわかっています。
    ヒトも、ウマ娘も。
    生きているものは、みんな等しく流れているから。
    ひとりひとつの舟に乗って、上流から下流へ……
    そしていつか、海に流れていくのです。
    マーちゃんにとってのそれが今だった。
    ただそれだけのことなのです。
    マーちゃんを呼ぶ声に応えるように、脚が歩を進めます。
    止めようとも思いませんし、仮にそうしても止められるものでもない……
    直感よりも深い、心のどこかでそう感じます。
    膝の辺りまで水に浸かってしまいました。
    夜の海は真っ黒で、水面より下の部分は見えません。
    まるで脚がなくなってしまったみたい。
    氷のように冷たい水に、体温が溶けていきます。
    それでもやっぱり怖くはなくて、諦めにも似た奇妙な感覚が心を満たしています。
    もう太ももまで浸かってしまうでしょうか。
    そろそろおしまいなのです。
    心残りは……ちょっぴりだけど、あります。
    もしこのままマーちゃんが海に行ったら……あの人は悲しんでくれるでしょうか?
    ……それとも、他の人と同じように忘れてしまうのでしょうか?
    …………どうせなら最後に、貴方の声が聞きたいかもしれません。
    ……トレーナーさん。

    ───チャン!

  • 2二次元好きの匿名さん23/05/30(火) 23:59:27

    ……?
    幻聴でしょうか?
    それとも走馬灯?

    ───マーチャン!

    ……いえ、違います。
    こんな焦った声で呼ばれた記憶はありません。

    ───アストンマーチャン!

    進もうとする体をなんとか抑えて、後ろを振り返ります。
    そこにいたのは……今一番会いたくて、一番会いたくなかった人。

    ───やっと見つけた……!

    そう言いながら、マーちゃんの方に駆け寄ってきます。
    靴もズボンも、びしょ濡れです。
    ……貴方のレンズには、まだマーちゃんが映っているのですね。
    最後に声が聞けたのは幸せかもしれません。
    そう思って、マーちゃんを呼ぶ誰かの声に身を任せます。
    さようなら。
    それだけ言い残して、お別れする……つもりだったのですが。
    手を掴まれてしまいました。
    なんとかマーちゃんを引き止めようと必死です。
    でもウマ娘とヒトでは力が全く違うので、このままではトレーナーさんまで道連れにしてしまいます。
    ……それは、さすがに嫌です。
    仕方なく立ち止まって、トレーナーさんの眼差しをまっすぐに受け止めます。
    どうして、ここに?

  • 3二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:19:30

    ───まだマーチャンを映していたいから

    それは困りました。
    残念ですが、マーちゃんはここまでなのです。
    ……しょうがないのです。
    そう、みんないつかは海に流される。
    それがちょっと早かっただけなのです。
    ……だから、そんな悲しそうな顔をしないでください、ね?

    ───『アストンマーチャン』には、やり残したことがいっぱいあるはずだ

    やり残した、こと……
    誰よりみんなの記憶に残ること。
    ウルトラスーパーマスコットになること。
    そのために、まずはURAの公式マスコットになること。
    確かにどれも大事でしたけど、もう割り切ったことなのです。
    それに、貴方がいればアストンマーチャンは消えませんから。
    みんなによろしく言っておいてください、トレーナーさん。

    ───嫌だ

    ……いや?

    ───アストンマーチャンはまだ終わりじゃない

    それはつまり、これからもずっとマーちゃんを見たいと

  • 4二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:28:42

    保守

  • 5二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:39:24

    ───ああ

    ……困りました。
    いつのまにか海からの声が小さくなっています。
    それに今は、ほんのちょっぴり……海が怖いかもしれません。
    だから。
    マーちゃんは、まだ海には行けません。
    呼ばれても無視しちゃいます。
    手を引いてくれるトレーナーさんに助けてもらいつつ海からあがると、濡れた脚に空気が触れて熱を奪っていきます。
    せっかくですし、トレーナーさんの体温を貸してもらいましょうか。
    マーちゃんが体を寄せると、トレーナーさんは何も言わずにそっと抱きしめてくれます。
    それがなんだか嬉しくて、少しだけ彼の胸に頬を擦り付けました。

  • 6二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:40:41

    以上、ちょっとしたマーちゃんSSでした
    感想などありましたら、ご自由にレスしていってください

  • 7二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:42:34

    アッ(成仏)

  • 8二次元好きの匿名さん23/05/31(水) 00:56:43

    >>7

    ありがとう……ありがとう……

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